JP4598922B2 - 防水兼用化粧材接着仕上げ工法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の内外装に適用できる防水兼用化粧材接着仕上げ工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート、ALC及び押し出し成形セメント板等を用いた建築物の一般外壁、斜壁、浴室、トイレ、厨房及びプール等には通常タイル・石材等の化粧材が取り付けられることが多いが、その際下地材の表面に防水対策を施す必要がある。特に下地材が傾斜面に形成されている斜壁の場合には垂直面より面積が大きく、降雨水量も多いため完全な防水性能が要求される。又、内壁や床面であっても浴室、トイレ、厨房及び屋内プール等のように水を使用する箇所には、化粧材を取り付ける際に高度の水密性・防水性に仕上げなければならない。
【0003】
このような下地材表面の防水手段としては、従来例えば(a)アスファルト防水層を形成する、(b)水和凝固型の塗膜を形成する、(c)ケイ酸質系塗布防水材を使用する、(d)図4のように接着増強剤入りセメントペーストを塗った後、接着増強剤入りモルタルを塗って防水層とする等が知られている。(d)の場合、使用する接着増強剤は、通常アクリル又はエチレン酢ビエマルジョン或は合成ゴムラテックス系のものであり、混入量はそれぞれメーカー規定の仕様による。又、(a)、(b)、(c)の場合塗膜又は防水材の上に塗るモルタルは、(d)で使う接着増強剤入りのモルタルと同じものが用いられる。
【0004】
上記従来例での化粧材接着性能は(d)≒(c)>(b)>(a)の順になるが、化粧材として暗色のタイル等を張る時は、熱応力が大きくなるので防水性を多少犠牲にしても(d)にするか、又はモルタルを薄く塗る場合化粧材の脱落防止策を施す。モルタルの総塗り厚は、10mm以上20mm以下を標準とする。塗り厚が20mm以上に厚くなると化粧材が剥離し易くなるので、図3に示すようにステンレスワイヤメッシュA(2〜3φ、100〜150□)をアンカーBで止め、モルタルCに埋め込む等の脱落防止処置をする。タイルの場合は、裏面に空隙を作らないように張り、それでもタイル張り面からエフロレッセンス(結晶化した白色物質)が生じるような場合にはシラン系等の浸透性吸水防止剤を塗布する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
斜面壁等の下地材には漏水防止のため防水処理が施されているが、その防水層の接着力が低下して化粧材の浮き上がり現象が発生し、著しい場合は剥離が見られる事例もある。剥離位置は下地材と防水層(メッシュ、不織布等を含む)の界面、モルタルと防水層の界面等全て防水層の界面で生じている。斜面壁は一般の垂直壁に比べて日射を強く受けるため、大きな熱応力が働いて下地コンクリートに施工した防水層が剥離することがある。特に、タイルの場合は、熱膨張・収縮により防水層との界面に繰り返しのせん断応力が作用し剥離が促進される。又、防水層との関係で伸縮目地が基準通り施工されず、適正に防水機能を果たしていない場合が多い。
【0006】
従来工法のうち、図2のようにポリマーセメント防水の上にタイル張りする工法では、下地材のひび割れや下地パネル・タイル張り層の温度ムーブメントに対して追従性が悪く漏水し易いし、ずれが生じて剥離を生じ易い問題がある。又、ポリマーセメント防水、ラスモルタル(防水層貫通)、その上にタイル張りを行う工法では、同じく下地材のひび割れや下地パネル・タイル張り層の温度ムーブメントに対する追従性が悪くなり、更に防水層を傷付ける、ラスの腐食が生じる、SUSメッシュを使用すると高価になる等の問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みなされたもので、下地材のひび割れ、下地パネル・タイル張り層の温度ムーブメントに対する追従性に優れると共に、ラス等を用いることなくタイル等の化粧材と防水層及び下地材との接着力を向上させるようにした防水兼用化粧材接着仕上げ工法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための具体的手段として、本発明は、下地コンクリートの表面に防水材と接着剤とを積層し、前記接着剤にタイル・石材等の化粧材を接着して仕上げる場合であって、下地コンクリートの傾斜面または垂直面へ施工できて0.5mm以上のひび割れとムーブメントに追従可能なエラストマー系塗膜防水材を下地コンクリートの表面に塗布して防水層を形成した後、その上にエラストマー系接着剤を介して化粧材を接着し、エラストマー系塗膜防水材よりなる前記防水層とこの防水層の上に配した前記エラストマー系接着剤とで、前記下地コンクリートの0.5mm以上のひび割れと化粧材層の温度ムーブメントとに対して追従可能にしたことを特徴とする防水兼用化粧材接着仕上げ工法を要旨とする。
又、前記エラストマー系接着剤は、下地コンクリートの傾斜面または垂直面へ施工したエラストマー系塗膜防水材の上に施工でき、化粧材の接着強度が40N/cm 以上であることを要旨とするものである。
【0009】
本発明は、エラストマー系塗膜防水材による防水層の形成と、エラストマー系接着剤による化粧材張りとの組み合わせにより、下地材のひび割れ、下地パネル・タイル張り層の温度ムーブメントに対する追従性を良好にし、且つ化粧材の接着性を向上させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る防水兼用化粧材接着仕上げ工法の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1において、1は下地コンクリートであって表面が傾斜面に形成され、この傾斜面にエラストマー系塗膜防水材2を塗布し、その上にエラストマー系接着剤3によりタイル化粧材4を張り付ける。
【0011】
具体的な作業手順としては、先ず下地コンクリート1の表面調整を行う。この表面調整は、下地コンクリート1の不陸調整工程・脆弱性除去と、ひび割れ1a、パネル接合部・コンクリート打ち継ぎ部(図略)及びひび割れ誘発目地等のシーリング処理工程と、乾燥工程とを含む。
【0012】
次いで塗膜防水工程を行う。これはエラストマー系塗膜防水材2を、下地コンクリート1の表面に適量の塗布量で塗布し、必要に応じて下塗り用としてウレタン系、シラン系等のプライマー(図略)を塗布する。エラストマー系塗膜防水材2は、下地コンクリート1の傾斜面及び垂直面へ施工できる材料で、0.5mm以上のひび割れ1aとムーブメントに追従できるものを用いる。
【0013】
塗膜防水工程後にゴム状に硬化させてから、エラストマー系接着剤3でタイル化粧材4を張り付ける。この張付工程において、エラストマー系接着剤3が硬化してから、必要に応じて目地モルタル5を施工する。更に、伸縮目地にはシーリング材を(図略)施工する。エラストマー系接着剤3は、前記エラストマー系塗膜防水材2の上に施工できる材料で、タイル化粧材4の接着強度が40N/cm以上有するものを用いる。
【0014】
本発明による効果を確かめるために実験を行った。その実験結果を表1に示す。
【表1】
Figure 0004598922
ここで、塗膜防水材の接着強さは、モルタル/防水材/タイル接着剤という層構成の試験体による接着試験の結果を示す。
タイル接着剤の接着強さは、モルタル/接着剤/タイルという層構成の試験体による接着試験の結果を示す。
【0015】
この試験結果によると、ひび割れ追従性に関しては実施例1〜3の場合が良好であった。即ち、1成分形ウレタン系の塗膜防水材と、2成分形変成シリコーン・エポキシ系タイル接着剤との組み合わせ(実施例1)、1成分形変成シリコーン系の塗膜防水材(プライマー塗布)と、2成分形変成シリコーン・エポキシ系タイル接着剤との組み合わせ(実施例2)、及び1成分形ウレタン系の塗膜防水材と、1成分形ウレタン・エポキシ系タイル接着剤との組み合わせ(実施例3)である。タイルの接着強さは、40N/cm以上であることが要求されるが、実施例1と2が190N/cm、実施例3が140N/cmであっていずれも3倍以上の充分な接着強度が得られた。
【0016】
前記実施形態では、コンクリート下地の表面が傾斜面の場合を説明したが、垂直面の場合でも本発明を適用することが可能であり、又外壁のみならず浴室、トイレ、厨房及び屋内プール等の内壁や床等にも適用することができる。
【0017】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、塗膜防水材としてエラストマー系のものを使用したので、下地コンクリートに対する追従性が良好であり、このため防水層の信頼性が高く、漏水故障を生じることがなく、更に化粧材の接着剤としてエラストマー系のものを用いることで、下地コンクリートと化粧材との接着性が良好となり、このため化粧材の剥離や剥落が生じず、安全性が高い等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る防水兼用化粧材接着仕上げ工法の実施形態を示す概略断面図
【図2】従来工法の実施例を示す概略断面図
【図3】従来工法でワイヤーメッシュを用いた例を示す概略断面図
【図4】従来工法での防水処理例を示す概略断面図
【符号の説明】
1…下地コンクリート
2…エラストマー系塗膜防水材
3…エラストマー系接着剤
4…タイル化粧材
5…目地モルタル

Claims (2)

  1. 下地コンクリートの表面に防水材と接着剤とを積層し、前記接着剤にタイル・石材等の化粧材を接着して仕上げる場合であって、下地コンクリートの傾斜面または垂直面へ施工できて0.5mm以上のひび割れとムーブメントに追従可能なエラストマー系塗膜防水材を下地コンクリートの表面に塗布して防水層を形成した後、その上にエラストマー系接着剤を介して化粧材を接着し、エラストマー系塗膜防水材よりなる前記防水層とこの防水層の上に配した前記エラストマー系接着剤とで、前記下地コンクリートの0.5mm以上のひび割れと化粧材層の温度ムーブメントとに対して追従可能にしたことを特徴とする防水兼用化粧材接着仕上げ工法。
  2. 前記エラストマー系接着剤は、下地コンクリートの傾斜面または垂直面へ施工したエラストマー系塗膜防水材の上に施工でき、化粧材接着強度が40N/cm 以上である請求項1記載の防水兼用化粧材接着仕上げ工法。
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