JP4597897B2 - 冷間引抜き加工方法、及び引抜き材製造方法 - Google Patents

冷間引抜き加工方法、及び引抜き材製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属の管、線又は棒等の素材の冷間引抜き方法及び該金属の管、線又は線等の引抜き材製造方法に関する。さらに詳しくは、加工に供される被加工材に高い潤滑性を有する潤滑被膜を形成して引抜き加工し、それにより摩擦を低減し、例えば加工動力を減らしたり、摩耗や焼付きの抑制による工具の寿命延長及び製品品質を向上させたりすることのできる冷間引抜方法及び引抜き材製造方法に関する。
一般に金属管、金属線又は金属棒の冷間引抜き加工では、素材と工具との金属接触により生ずる摩擦を低減し、焼き付きやかじりを防止する目的で、液状または固体状の潤滑剤が使用されている。通常、冷間での引抜き加工に使用される潤滑剤は、被加工材及び工具の材質、加工方法、面圧、加工速度、表面粗度、作業環境等に応じて使い分けられ、大別すると二種類ある。一つは、素材表面に物理的に付着させる潤滑剤で、もう一つは化学反応により素材表面にキャリア被膜を生成させた後、滑剤を付着させる潤滑剤である。
物理的に付着させる潤滑剤としては、例えば鉱油、植物油または合成油を基油にして極圧剤を添加したもので素材表面に付着させた後そのまま引抜き加工を行うのものを挙げることができる。また、他にも、金属石けん、黒鉛又は二硫化モリブデン等の固体潤滑剤をバインダー成分と共に水に分散させたもので、被加工材表面に付着させた後乾燥して引抜き加工を行うものもある。これらの潤滑剤は塗布や浸漬により潤滑被膜を形成でき、液管理もほとんど必要がない等の利点がある。
他方、化学反応により形成される潤滑剤による処理はいわゆる化成被膜処理と呼ばれるものであり、化学反応により素材表面にキャリアとしての役割を持つリン酸塩等の被膜を生成させた後、滑剤としてステアリン酸ナトリウムやステアリン酸カルシウム等の反応石けんまたは非反応石けん等による処理が行われる。この種の潤滑剤は、キャリアとしての化成被膜と滑剤との二層構造を持っており、高い耐焼き付き性を示す。そのため潤滑剤として伸線、伸管、鍛造などの塑性加工分野において非常に広い範囲で使用されてきた。
しかしながら、化成被膜処理は化学反応であるため、化学反応性に乏しい物質の処理が難しく、処理可能なものについても複雑な液管理が必要である。加えて、形成される化成被膜上に滑剤を塗布するため、水洗や酸洗いまでを含めると多数の処理工程が必要である。また、処理の際に使用される洗浄水や化成被膜から多量の廃液が出ること及び化学反応を制御するため加熱が必要であることから、設備投資や操業に多額の費用がかかる。
以上のような問題点を解決するため、例えば特許文献1には、水溶性樹脂被膜を形成する塑性加工用潤滑剤が開示され、薄鋼板に代表される素材表面の保護とプレス成形時の潤滑性向上のためにプレス成形用に使用できるとしている。また、特許文献2には、エチレンオキシド由来のポリエーテル部分を含むポリエーテルポリエステル又はポリエーテルポリウレタンの水溶液または有機溶剤溶液を、金属のパイプ、線、板などの加工に用いることが開示されている。
特開昭47−39965号公報 特開平3−231995号公報
しかし、特許文献1に記載の潤滑剤では、プレス成形時には、防錆も兼ねた潤滑油を別に使用するのが普通であり、もともとこのような水溶性樹脂被膜そのものには、塑性加工時に必要な十分な潤滑性を見出せなかった。また、特許文献2に記載の潤滑剤では、金属と潤滑被膜との密着性が十分ではないため、負荷が高い場合や、焼付きが発生しやすい金属材料を塑性加工する場合には、潤滑性が不足することがあった。さらには、金属管や棒線の場合、一般的な浸漬による塗布方法では、液ダレが生じ、上部は薄膜となり焼き付きを生じやすく、下部は厚膜になり過ぎて乾燥不良が生じたり、乾燥不良による焼き付きなどが生じ易い等の問題があった。
そこで本発明は、化成処理による下地を必要としない高い潤滑性を有する潤滑被膜を適した態様に形成させるとともに、該潤滑被膜が形成された素材の引抜き加工性を向上させることのできる冷間引抜き加工方法及び引抜き材製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、上記課題を解決するため次のような知見等を得て本発明を完成させた。ここで、「被加工材」とは、引抜き加工される前における、金属の「素材」表面に潤滑皮膜等の「層」が形成された材料を意味するものとする。
本発明者らは、被加工材の冷間引抜き加工において高い潤滑性を得るため、樹脂系被膜を用いた潤滑法について検討した。一般に、樹脂からなる潤滑被膜が高い潤滑性を有するには、滑りを与える潤滑機能と被膜を守る保護機能の両者が必要である。すなわち、金属の冷間引抜き加工では、被加工材と工具との摩擦面で、しごきを与えられながら被加工材表面積が急激に拡大されるため、潤滑剤には、これらの変化に追随して常に摩擦面を覆う展性や延性、及び圧力に耐える強度が要求される。しかしながら、これらの機能を単層の被膜に兼備させるのは実質的に困難とされていた。
そして本発明者らは鋭意検討の結果、金属管、金属線又は金属棒等の冷間引抜き加工において、特定構造を有する樹脂と特定構造を有するワックスを組み合わせ、これをある特定の方法で被膜形成することにより、加工条件の厳しい引抜き加工においても高い耐焼付き性を得ることを究明して本発明を完成させた。詳しくは次のような知見に基づくものである。
滑りを与えるワックス粒子が分散された保護機能の高い樹脂の層を形成させる。これにより、厳しい加工条件でも十分に強度が得られ、膜切れを起こすことがなく、かつせん断に対しては分散されたワックスにより潤滑機能を有する被膜となり加工時の摩擦抵抗を下げることができる。そして具体的には、以下の知見を得た。
・ 潤滑被膜が素材表面に形成され、ワックス粒子が分散された樹脂の層を備え、該層の樹脂が30℃未満のガラス転移温度を有し、さらに該潤滑被膜全体を100質量%としたときに、樹脂が30〜99質量%で含有されると高い耐焼付き性能を示す。
・ 上記の樹脂として、典型金属元素及び/又は、遷移金属元素のうち少なくとも1つの元素で架橋したアイオノマーを用いることで更に高い耐焼付き性能を示す。
さらに上記潤滑被膜を形成する方法に関しても次のような知見を得た。
・ 潤滑被膜を均一かつ厚膜に形成するために、該潤滑被膜を形成するための組成物の素材への供給直後における該組成物の乾燥を速く行い、溶媒の成分を速く蒸発させる。これにより供給された組成物の全体の粘度を上げ、液だれし難くすることができる。そしてこれにより好適な潤滑被膜を形成することができる。組成物の粘度が低いままであると、液ダレにより上部が薄膜となる一方で下部には液が溜まり、膜厚が不均一なる上、上部では厚膜を確保することが難しくなる。
・ 所定の条件を満たした潤滑皮膜を形成するための組成物を素材に供給した場合の液膜を送風乾燥や温風乾燥等の方法で乾燥すると、供給された組成物の液膜は一様に少しずつ乾燥されるのではなく、まず空気に触れている最表層から溶媒が蒸発し、固体である潤滑被膜を形成する。その結果、最表層のみが固体で、残りは液体といった状態になり、内側の溶媒は蒸発し難くなる。これによって、乾燥が不十分な状態や、乾燥に長時間を要するなどの問題が生じる。これに対して、素材の表面を予め所定の温度に予熱してから組成物を供給することによって上記問題を解決することができる。これは、かかる方法により供給された組成物の液膜の素材に近い側(内側)から加熱されて乾燥することによるものである。そして最表層には蒸発を妨げるような固体の膜が生成せず、迅速に乾燥することができる。その結果、乾燥初期の溶媒の蒸発が円滑に進行し、組成物の液の粘度が速く上昇し、液だれしなくなる。これによって、均一かつ厚い潤滑被膜を形成することができる。
以下、本発明について説明する。
請求項1に記載の発明は、金属の素材表面に潤滑被膜が形成された被加工材を冷間引抜き加工する方法であって、潤滑被膜を形成するために素材に供給される組成物が、溶媒と、ガラス転移温度が30℃以下で典型金属元素及び遷移金属元素のうちの少なくとも1種の金属元素を含む化合物及び/又はそのイオンにより架橋されるとともに、組成物の固形分を100質量%とした場合に、25〜99質量%含有される樹脂と、ワックス粒子とを含有し、素材に組成物を供給する際に、該素材を表面温度で予め50〜130℃に加熱しておくことを特徴とする冷間引抜き加工方法を提供することにより前記課題を解決する。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の冷間引抜き加工方法で、組成物に含まれる全成分のうちの固形物成分が、該組成物全体を100質量%とした場合に、10〜60質量%で含有されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の冷間引抜き加工方法で、素材の加熱が高周波誘導加熱法により行われ、素材を高周波誘導加熱装置のコイル内を移動させて通過させることにより該加熱が行われるとともに、その直後に組成物を素材に供給することを特徴とする。
ここで、「直後」とは、加熱の後に時間をおかず、かつ、他の工程を入れずに組成物の供給をおこなうことをいい、時間的な制約はなく素材の温度が所定温度の下限を下回らないうちに組成物が供給されればよいが、実用上1分以内が望ましい。
請求項4に記載の発明は、引抜き加工工程を有する金属の引抜き材を製造する方法であって、引抜き加工工程前に、素材を表面温度で50〜130℃に加熱する加熱工程と、加熱工程の後工程で、加熱された素材に潤滑被膜を形成するための組成物を供給する供給工程と、供給された組成物を乾燥する乾燥工程とを有し、組成物は、溶媒と、ガラス転移温度が30℃以下で典型金属元素及び遷移金属元素のうちの少なくとも1種の金属元素を含む化合物及び/又はそのイオンにより架橋されるとともに、組成物の固形分を100質量%とした場合に、25〜99質量%含有される樹脂と、ワックス粒子とを含有することを特徴とする金属の引抜き材製造方法を提供することにより前記課題を解決する。
また、以上各発明において、焼付きが問題となる面や特定部分において上記条件を満たすものであれば本発明の冷間引抜き加工方法及び引抜き材製造方法とすることができる。特に、素材が管である場合にあっては管内外面共に上記条件を満たすのが好ましい。
本発明によって、金属の管、線又は棒等の素材の冷間引抜き加工方法及び金属の管、線又は棒等の引抜き材製造方法において、化成処理による下地を必要としない高い潤滑性を有する潤滑被膜を好適な態様で形成させることができる。これにより、化成被膜に比べて設備投資、液管理等を減らすことができる。そして、加工における加工動力の低減、摩耗や焼付きの抑制による工具の寿命延長及び製品品質を向上させることも可能となる。
以下、本発明の最良の形態、及びその好ましい範囲等について説明する。なお、本発明において、「(メタ)アクリル系」は、アクリル系及びメタクリル系を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
本発明は、所定の条件を有する素材並びに該素材表面に供給される所定の組成物により得られた潤滑被膜を有する被加工材の引抜き加工の方法及び、これにより管、線又は棒等である引抜き材を得る製造方法を提供するものである。以下にその内容を説明する。
(1)素材
はじめに素材について説明する。本発明に適用される素材の材質は特に限定されるものではない。通常、鉄、炭素鋼、ステンレス鋼等の鋼及び鉄合金であるが、その他、「インコネル」(商品名)、チタン、チタン合金、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、及び銅合金等の非鉄金属でもよい。また冷間引抜き加工に用いられる素材の製造方法についても特に限定なく、連続鋳造法または造塊法によって、スラブやビレットまたは鋼塊に鋳造され、これらから継目無鋼管を製造する場合には、例えばビレットを押出成型したり、管の場合には傾斜ロール式のピアサで穿孔圧延して製管してもよい。
また素材の形状は特に限定されるものではないが、通常の管、線及び棒の冷間引抜き加工における素材形状であればよい。
上述したように本発明の引抜き加工方法及び引抜き材製造方法では、素材を予め加熱しておき、該加熱された素材に後述の組成物を供給する。予熱における素材の表面温度は50〜130℃が好ましい。50℃未満では供給された組成物の乾燥性向上の効果が十分に得られないことがある。また130℃より高い温度では、組成物を供給した際に発生する蒸気が激しいため、液がはじかれ、組成物が素材に適切に付着しない、又は組成物が発泡してしまうなどの問題を生じることがある。より好ましい範囲は60〜90℃である。予熱の方法については後で説明する。
かかる予熱をすることにより、組成物の供給直後の乾燥を迅速に行い、溶媒を蒸発させることで供給された組成物全体の粘度を上げ、液だれしにくくすることができる。これにより潤滑被膜を均一かつ厚膜に形成することが可能となる。これは、組成物の粘度が低いままであると、素材の上部に供給された該組成物は液ダレにより薄膜となり、下部に組成物の液がたまり、厚膜になる。従って潤滑被膜の厚さが不均一となるうえ、上部では厚膜を確保することが難しくなる。
また、素材に潤滑被膜を形成するに先立って、該素材にアルカリ脱脂剤等による脱脂、水洗、又は塩酸等による酸洗等の前処理を行うことが好ましい。かかる前処理をすることによって、表面を清浄にしておくことができる。これにより、潤滑被膜の密着性を向上させることができる。また、土砂等のコンタミネーションによる引抜き加工後の傷の発生を防止することもできる。通常は、脱脂、水洗、酸洗、再水洗の順に前処理が行われるが、その順序は特に限定されるものではない。上記前処理は常法により行えばよく、特に限定されるものではない。
さらに、形成される潤滑被膜の密着性を高めるために、素材の表面粗度を高めておくことが有効である。素材の表面粗度を高める方法として例えば、上述の酸洗にもその効果があるが、この他にも、例えば、粗い研磨紙や金属ブラシ等による研削、ショットブラスト、ショットピーニング等の機械的な方法がある。さらには、リン酸マンガンやリン酸亜鉛等によるリン酸系化成処理、シュウ酸塩系化成処理等も有効である。
(2)組成物
次に組成物について説明する。本発明では、上述したように予熱された素材に対して、以下に説明する組成物を供給することにより潤滑被膜を形成させる。
組成物は、溶媒中に、ガラス転移温度が30℃以下の樹脂と、ワックス粒子とを含有する。上述のように、従来の化成被膜処理では、形成される化成被膜上に滑剤を塗布するため、水洗や酸洗までを含めると、多数の処理工程が必要である。これに対し、組成物を用いて潤滑被膜を形成すれば、化成処理及びこれに付随する酸洗や水洗を省略することができる。その結果、簡便に潤滑被膜を形成することができ、また、従来の化成被膜処理で生じる廃棄物による環境汚染を防止でき、さらに、かかる廃棄物処理のための設備を設けることも省略することができる。
「溶媒」としては、例えば、水、アルコール類、エーテル系溶媒、アセテート系溶媒、ケトン系溶媒、ヒドロキシアミン類、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を併用して使用することができる。溶媒は、強靭な樹脂の層を形成することに関与していると考えられる。溶媒として、水又は少なくとも水を含む溶媒を用いると、より確実に強靭な潤滑被膜を形成することができるので好ましい。少なくとも水を含む溶媒としては、例えば、水と水以外の上記溶媒とで構成される混合溶媒が挙げられる。より具体的には、例えば、水と上記アルコール類とで構成される水−アルコール系溶媒等が挙げられる。
この中でアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ベンジルアルコール、フェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチルジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、及びグリセリン等が挙げられる。
また、エーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキル類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
アセテート系溶媒としては、上述のアルコール類、あるいは水酸基を有するエーテル系溶媒のアセチル化物等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−3メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
ヒドロキシアミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、N−(β−アミノエチル)イソプロパノールアミン、N、N−ジエチルイソプロパノールアミン等が挙げられる。
次に「樹脂」について説明する。本発明において、組成物に含有される「樹脂」のガラス転移温度は30℃以下、好ましくは26℃以下、さらに好ましくは23℃以下、より好ましくは15℃以下、特に好ましくは10℃以下である。また、ガラス転移温度の範囲の下限については適宜設定することができ、その一例として−85℃が挙げられる。ガラス転移温度が30℃を超える場合、冷間引抜き加工開始直後の摩擦面の表面積の拡大に潤滑被膜が追随できず、脆性破壊を生じてしまい、摩擦面より脱離することが多くなる。
上記ガラス転移温度は、JIS K7121「プラスチックの転移温度測定方法」に準じた方法、又は動的粘弾性測定で測定することができる。また、樹脂が(メタ)アクリル系樹脂の場合、重合予定の各エチレン性不飽和モノマーのホモポリマーのガラス転移温度から、FOXの式によりガラス転移温度を算出することもできる。なお、上記ガラス転移温度は、樹脂の種類等を適宜選択することにより変化させることもできる。さらには、可塑剤を使用し、外部可塑化することで低下させることも可能である。
用いられる樹脂の種類は特に限定されるものではない。従って樹脂は、未架橋重合体であっても、架橋重合体であってもよい。後者の場合は、典型金属元素及び遷移金属元素のうちの少なくとも1種の金属元素を含む化合物及び/又はそのイオンにより架橋された樹脂等を好ましく適用することができる。典型金属元素としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム及び亜鉛等が挙げられる。これらのなかでも、アルカリ土類金属、アルミニウム及び亜鉛から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、遷移金属元素としては、例えば、鉄、銅等を挙げることができる。
また、具体的な樹脂の種類としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂及びフッ素系樹脂等が挙げられる。上述のようなガラス転移温度が30℃以下の樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。かかる特定の樹脂を含む樹脂の層とすることにより、潤滑機能の高い被膜とすることができる。
(メタ)アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーの1種又は2種以上を重合して得られるものであれば、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。また、その構造及び種類について特に限定はない。アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びオクチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4);メトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、及びメトキシブチル(メタ)アクリレート等の低級アルコキシ低級アルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ低級アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド;N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、及びN−ブトキシメチルメタクリルアミド等のN−非置換又は置換(特に低級アルコキシ置換)メチロール基を有する(メタ)アクリルアミド;ホスホニルオキシメチル(メタ)アクリレート、ホスホニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びホスホニルオキシプロピル(メタ)アクリレート等のホスホニルオキシ低級アルキル(メタ)アクリレート;アクリロニトリル;アクリル酸、メタクリル酸等の1種又は2種以上が挙げられる。なお、上記の低級アルコキシ及び低級アルキルとは、通常、それぞれ炭素数が1〜5のアルコキシ及びアルキルを意味し、好ましくは炭素数が1〜4、より好ましくは1〜3である。
また、(メタ)アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーの1種又は2種以上と、スチレン、メチルスチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルトルエン、及びエチレン等の他のエチレン性モノマーの1種又は2種以上との共重合体であってもよい。その場合には、アクリル系モノマーからなる単位を30モル%以上含有する共重合体が好ましい。この共重合体としては、典型金属元素及び遷移金属元素のうちの少なくとも1種の金属元素を含む化合物及び/又はそのイオンにより架橋されたアイオノマー等が挙げられる。典型金属元素としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム及び亜鉛等が挙げられる。これらのなかでも、アルカリ土類金属、アルミニウム及び亜鉛のうちの少なくとも1種であることが好ましい。また、遷移金属元素としては、例えば、鉄、銅等が挙げられる。
ウレタン樹脂は、ウレタン結合(−NHCOO−)を有する合成樹脂であり、一般にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物と活性水素基を2個以上有するポリオールとの重付加反応によって得られるものを用いることができる。上記ポリオールは、例えば、ポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルポリオールが挙げられる。上記ウレタン樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、3−メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、及びグリセリン等の低分子量ポリオールと、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の多塩基酸との反応によって得られる末端に水酸基を有するポリエステル化合物の1種又は2種以上が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、3−メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、及びグリセリン等のポリオール、又はこれらのエチレンオキシド及び/若しくはプロピレンオキシド高付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン/プロピレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、並びにポリブタジエンポリオール等の1種又は2種以上が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、直鎖脂肪族、分岐脂肪族、脂環式及び芳香族ポリイソシアネートの1種又は2種以上が挙げられる。具体的には、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートエステル、水添キシリレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート等の1種又は2種以上が挙げられる。
ポリエステル樹脂は、エステル結合を有する合成樹脂であり、一般に、カルボキシル基を2個以上有する多塩基酸とヒドロキシル基を2個以上有するポリオールとの縮合反応によって得られるものを用いることができる。ポリエステル樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、及びヘキサヒドロフタル酸等の1種又は2種以上が挙げられる。一方、ポリオールとしては、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールが挙げられ、より具体的には、例えば、ウレタン樹脂の項で詳述したポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールが挙げられる。
酢酸ビニル樹脂は、酢酸ビニルの重合によって得られる樹脂である。また、酢酸ビニル樹脂は、ポリ酢酸ビニル樹脂中の50%未満の酢酸ビニル単位が加水分解された樹脂も含む。また、酢酸ビニル樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体だけでなく、酢酸ビニルと他のモノマー(例えば、エチレン等のオレフィン)とを共重合して得られ、酢酸ビニル単位が50モル%以上である共重合体も含む。酢酸ビニル樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリビニルアルコール樹脂は、通常、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる。ポリビニルアルコール樹脂は、完全加水分解物のみならず50%以上の加水分解度のポリビニルアルコール樹脂も使用できる。さらに、ポリビニルアルコール樹脂は、エチレン単位を含み、このエチレン単位が50モル%以下である共重合体も含む。ポリビニルアルコール樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリアミド樹脂は、アミド結合を有する合成樹脂であり、一般にカルボキシル基を2個以上有する多塩基酸と、アミノ基を2個以上有するポリアミンの縮合反応によって得られるものを用いることができる。多塩基酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。一方、ポリアミンとしては、ヒドラジン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサンジアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、ジアミノベンゼン、トリアミノベンゼン、ジアミノエチルベンゼン、トリアミノエチルベンゼン、ジアミノエチルベンゼン、トリアミノエチルベンゼン、ポリアミノナフタレン、ポリアミノエチルナフタレン、及びこれらのN−アルキル誘導体、N−アシル誘導体等が挙げられる。ポリアミド樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
フッ素系樹脂は、分子中にフッ素を含有する樹脂であれば、その種類には特に限定はない。フッ素系樹脂としては、例えば、分子中にフッ素を含有する(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。また、フッ素系樹脂は、他の共重合可能な単量体との共重合物でもよい。フッ素系樹脂としてより具体的には、例えば、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合物、ポリアクリル酸トリフルオロメチル、ポリアクリル酸ペンタフルオロエチル、(メタ)アクリル酸フルオロアルキル−(メタ)アクリル酸アルキル共重合物等が挙げられる。フッ素系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の引抜き加工方法及び引抜き材製造方法に適用される組成物に含有される樹脂としては、上記各樹脂の1種又は2種以上で構成される樹脂の他、上記各樹脂の1種又は2種以上と他の樹脂とで構成される複合樹脂でもよい。この複合樹脂としては、例えば、上記各樹脂の1種又は2種以上と他の樹脂原料とを混ぜ合わせて得られる樹脂、及び各種樹脂のグラフト化、ブロック化等を行い、1分子内に異なる置換基を有する複数のモノマー由来の構造を有する複合樹脂を使用することができる。また、成膜後に有機架橋又は金属によるイオン架橋される樹脂を使用することができる。
組成物におけるガラス転移温度が30℃以下の樹脂の含有割合は、該組成物の固形分を100質量%とした場合に、25〜99質量%であり、好ましくは29.5〜90質量%、さらに好ましくは30〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%、特に好ましくは30〜60質量%である。この含有割合が25質量%未満の場合、引抜き加工時において、潤滑被膜が被加工材の表面積の拡大に十分に追随することができない。一方、この含有割合が99質量%より大きくなる場合には、耐焼付き性、成形性、及び加工性等の性質の大幅な向上は認められず、経済的な利益が認められ難い。
ガラス転移温度が30℃以下の樹脂を溶媒中に懸濁又は分散させる際の形態は特に限定されない。例えば、ガラス転移温度が30℃以下の樹脂の溶融液でもよく、あるいは、水、有機溶媒(アルコール、鉱油、ミネラルスピリット、メチルエチルケトン、及び「フロン」(商品名)等)、又は水と有機溶媒との混合溶媒に溶解又は分散させた溶解液又は分散液でもよい。また、樹脂の一部を含む含有液を2種以上調製し、使用時に混合する形態でもよい。
次にワックス粒子について説明する。組成物に含有される「ワックス粒子」は、潤滑被膜成分として、加工時に発生する熱により融解し、被膜の滑り性を向上させる作用を有する。ワックス粒子の構造や種類については特に限定されない。ワックス粒子としては、例えば、天然ワックス及び/又は合成ワックス等を好ましく使用することができる。より具体的には、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムワックス、(酸化)ポリエチレン、(酸化)ポリプロピレン、カルナバワックス、モンタンワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ラノリン等の1種又は2種以上を挙げることができる。また、本発明におけるワックス粒子には、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂も含む。
また、ワックス粒子の物性については特に限定はない。例えば、ワックス粒子の平均粒径は、必要に応じて種々の範囲とすることができる。ワックス粒子の平均粒径として通常は10μm以下(例えば、0.001〜10μm)、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.001〜1μmである。平均粒径を上記範囲とした場合、被膜の強度を低下させずに、被膜に滑り性を付与することができるため好ましい。また、ワックス粒子は、100℃において固体又は粘度が10mPa・s以上、好ましくは20mPa・s以上、さらに好ましくは100mPa・s以上である。この場合、冷間引抜き加工において、さらには焼付きが発生しやすい厳しい加工条件においても、より優れた潤滑性を発揮するため好ましい。
組成物におけるワックス粒子の含有割合は、組成物の固形分を100質量%とした場合に、0.5〜74.5質量%であることが好ましく、より好ましくは9.5〜70質量%、さらに好ましくは19.5〜69.5質量%、より好ましくは29.5〜69.5質量%である。この含有割合が上記範囲内である場合、さらには焼付きが発生しやすい厳しい加工条件においても、より優れた潤滑性を発揮するため好ましい。
ワックス粒子を溶媒中に懸濁又は分散させる際の形態は特に限定されない。例えば、ワックス粒子の水ディスパージョンや水エマルジョンを溶媒中に含有させてもよいし、ワックス粒子をそのまま含有させてもよい。
次に微粒子について説明する。本発明に適用される組成物には、引抜き加工時の潤滑効果を向上させるため、必要に応じて微粒子を含有させることもできる。かかる微粒子を含有させることにより、形成された潤滑被膜のせん断強度および付着強度が高まる他、加工界面に微粒子が介在することにより、金属間接触が抑制され、焼付き防止効果が一層顕著になるので好ましい。
微粒子としては、例えば、それ自体が潤滑性を有するときに、摩擦を軽減させる作用が期待できる固形潤滑剤が挙げられる。このような固形潤滑剤として具体的には、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、ステアリン酸カルシウム、マイカ、黒鉛、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)その他の潤滑性樹脂及び酸素欠陥ペロブスカイト構造を持つ複合酸化物(SrCa1−xCuO等)等が挙げられる。その他、炭酸塩(NaCO、CaCO、MgCO等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩等)、ケイ酸塩(MSiO〔M:アルカリ金属、アルカリ土類金属〕等)、金属酸化物(典型金属元素の酸化物、遷移金属元素の酸化物、及びそれらの金属元素を含む複合酸化物〔Al/MgO等〕等)、硫化物(PbS等)、フッ化物(CaF、BaF等)、炭化物(SiC、TiC)、窒化物(TiN、BN、AlN、Si等)、クラスターダイヤモンド、及びフラーレンC60又はC60とC70との混合物のように、摩擦係数を極端に低下させることなく金属間の直接接触を抑制して、焼付防止作用が期待できる微粒子等も挙げられる。上記典型金属元素の酸化物としては、例えば、Al、CaO、ZnO、SnO、SnO、CdO、PbO、Bi、LiO、KO、NaO、B、SiO、MgO及びIn等が挙げられる。これらのなかでも、典型金属元素がアルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛であるものが好ましい。上記遷移金属元素の酸化物としては、例えば、TiO、NiO、Cr、MnO、Mn、ZrO、Fe、Fe、Y、CeO、CuO、MoO、Nd及びH等の酸化物が挙げられる。これらのなかでも、遷移金属元素が、鉄、銅であるものが好ましい。
なお、組成物中の樹脂に含まれる解離基が遊離形態(例えば、遊離カルボキシル基)である場合には、この遊離基と反応性のある微粒子(例えば、金属化合物)の使用を避けるか、又は遊離基との反応による微粒子の溶解を見越して、その分だけ過剰に微粒子を使用すればよい。また、上記微粒子は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、微粒子の平均粒径についても特に限定はなく、必要に応じて種々の範囲とすることができる。微粒子の平均粒径は通常、10μm以下(例えば、0.001〜10μm)、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。微粒子がフレーク状の場合、その平均粒径は、最大粒径の平均値とする。また、微粒子の種類によっては、幅広い粒径分布を持つものもあるが、体積で微粒子全体の80%が上記範囲内に入っていれば、所望の効果が得られる。微粒子の平均粒径を0.005μm以上とすると、粒子同士が樹脂中で凝集することを抑制し、均一分散が容易になると共に、使用後に微粒子の除去処理が容易になるので好ましい。一方、微粒子の平均粒径を10μm以下とすると、付着強度が向上し、その結果、金属間接触による焼付き防止効果が向上するので好ましい。
上記の平均粒径を有する微粒子は市販されており、一緒に使用する樹脂及び/又はワックスへの分散性等を考慮して、市販品の中から適宜選択すればよい。市販品(カッコ内は平均粒径)の例としては、シーアイ化成製の「NanoTek」からAl(33nm)、TiO(30nm)、Fe(21nm)、ZnO(31nm)、Y(20nm)、CeO(11nm)、Mn(38nm)、SiO(12nm)等、日本触媒製の「シーホスターKE」(非晶質シリカ)からP10(70〜130nm)、P50(0.48〜0.58μm)、P100(0.9〜1.1μm)等、エスイーシー製の「SECファインパウダーSGP」(高純度人造黒鉛3μm)、日本アエロジル製のSiOから「AEROSIL 50」(30nm)、「AEROSIL 200」(12nm)、「AEROSIL 300」(7nm)、Alから「C」(13nm)、TiOから「T805」及び「P25」(共に21nm)等、日産化学社製のSiOから「スノーテックス C」及び「スノーテックス N」(共に20nm)等、石原テクノ製の超微粒子酸化チタンから「TTO−55(B)」(30〜50nm)等、神島化学工業製の活性炭酸カルシウムから「カルシーズP」(0.10μm)、「カルシーズPL10」(0.09μm)、「PLS2301」(40nm)、軽質炭酸カルシウムから「EC」(1.0〜2.0μm)等、東京プログレスシステムから入手できる「クラスターダイヤモンド」(5nm)等、ダイキン工業製のPTEFから「ルブロンLDW−40」(0.18μm)、「L−2」(5μm)等、三井・デュポンフロロケミカルの「テフロン(登録商標)」から「TLP−10F−1」(2μm)等、住友セメント製のSiC(10nm)、ZrO(30nm)、大阪造船所製の「二硫化モリブデンCパウダー」(1.2μm)等が挙げられる。
また、微粒子を含有させる場合、組成物における微粒子の含有割合は特に限定されず、必要に応じて適宜調整することができる。具体的には、組成物中の固形分を100質量%とした場合に0.01〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.05〜1質量%である。微粒子の含有割合を上記範囲とすることにより、乾燥した際に形成される被膜のせん断強度や付着強度を向上させることができるので好ましい。
上記微粒子を混合させる場合の混合方法は、微粒子が均一に分散した組成物が得られる限り特に制限されない。例えば、微粒子が、樹脂の合成に用いる反応成分と反応性を持たない微粒子であれば、樹脂の合成時に微粒子を含有させてもよい。また、溶媒に溶解又は分散させた樹脂及びワックス粒子に固体微粒子を同時に混合する方法により行うことができる。
次に極圧添加剤について説明する。組成物には、引抜き加工時の潤滑効果をさらに向上させるため、必要に応じて極圧添加剤を含有させることもできる。かかる極圧添加剤を含有させることにより、極圧潤滑領域での潤滑性能が向上し、焼付き防止効果が一層顕著になるので好ましい。
極圧添加剤としては、例えば、硫黄系極圧添加剤、リン系極圧添加剤、塩素系極圧添加剤等が挙げられる。なお、これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。硫黄系極圧添加剤としては、例えば、硫化オレフィン類、硫化エステル類、チオカーボネート類、ジチアゾール類、ポリチアゾール類、チオール類、チオカルボン酸類、チオコール類、硫黄、(多)硫化ナトリウム等が挙げられる。また、リン系極圧添加剤としては、例えば、トリポリリン酸ナトリウム等の縮合リン酸塩及びトリクレジルホスフェート等の(亜)リン酸エステル等が挙げられる。さらに、塩素系極圧添加剤としては、例えば、塩素化パラフィン、塩素化脂肪油、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン−アクリル共重合物等が挙げられる。
組成物における極圧添加剤の含有割合は、組成物の固形分を100質量%とした場合に、0.5〜74.5質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜70質量%、さらに好ましくは5〜69.5質量%である。この極圧添加剤の含有割合が上記範囲である場合、極圧潤滑領域での潤滑性能をより向上させることができ、さらには、焼付き防止効果を一層向上させることができるため好ましい。
可塑剤について説明する。ガラス転移温度が30℃以下の樹脂を溶媒中に懸濁又は分散させる場合、必要に応じて可塑剤を用いてもよい。かかる可塑剤を用いることにより、ガラス転移温度が30℃以下の樹脂を均一に懸濁又は分散させることができる。さらには、ガラス転移温度が30℃以下の樹脂のガラス転移温度を低下させることもできる。可塑剤は特に限定されず、樹脂用の可塑剤として一般的に使用されている化合物を使用できる。具体的には、例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル類、トリメリット酸トリアルキル、(亜)リン酸エステル、塩素化パラフィン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
次に界面活性剤について説明する。本発明の引抜き加工方法又は引抜き材製造方法に適用される組成物において、ガラス転移温度が30℃以下の樹脂及びワックス粒子を溶媒中に懸濁又は分散させる場合、必要に応じて界面活性剤を用いることもできる。かかる界面活性剤を用いることにより、樹脂及び上記ワックス粒子を均一に懸濁又は分散させることができる。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び陽イオン性界面活性剤のいずれをも用いることができる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン(エチレン及び/又はプロピレン)アルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール(若しくはエチレンオキシド)と高級脂肪酸(例えば、炭素数12〜18の直鎖又は分岐脂肪酸)とから構成されるポリオキシエチレンアルキルエステル、並びにソルビタンとポリエチレングリコールと高級脂肪酸(例えば、炭素数12〜18の直鎖又は分岐脂肪酸)とから構成されるポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等が挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩、及びジチオリン酸エステル塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸型及びベタイン型のカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、並びにリン酸エステル塩等が挙げられる。陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、溶媒、樹脂、ワックス粒子、微粒子、極圧添加剤、界面活性剤及び可塑剤以外にも、一般的な塑性加工油剤に添加されている添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、pH調整剤、粘度調整剤、防腐剤、架橋剤及び消泡剤等が挙げられる。また、必要に応じて他の極圧添加剤、油性剤等を併用しても差し支えない。さらに、組成物には、ガラス転移温度が30℃を超える樹脂が含有されていてもよく、含有されていなくてもよい。なお、ここで「含有されていない」には、上記のように、全く含まれない場合だけでなく、本発明の目的を損なわない範囲でガラス転移温度が30℃を超える樹脂が極微量含有されている場合も含む。
組成物中の以上のような固形物については、該組成物に対して10〜60質量%が好ましい。これにより、乾燥性を高めることができる。10質量%未満では、組成物中の溶媒分が多くなりすぎて材料を予熱しても乾燥がスムーズに行われず、被膜化する前に液だれしてしまうことがある。また、60質量%より高い固形物含有率では、液の粘度が高すぎ、組成物を素材に適切に供給することが難しくなることがある。
本発明は、以上のような素材及び組成物により潤滑被膜を形成しておこなう金属材の引抜き方法を提供するものである。これにより、化成処理による下地を必要としない高い潤滑性を有する好適な態様の潤滑被膜を形成させるとともに、該潤滑被膜が形成された素材の引抜き加工性を向上させることのできる冷間引抜き方法とすることができる。
(3)引抜き材の製造方法
次に本発明の引抜き材製造方法の1つの実施形態について説明する。本発明の引抜き材製造方法は、引抜き加工工程を有するとともに、該引抜き加工工程の前に、上記した条件で素材を加熱する加熱工程と、該加熱工程により加熱された素材に上記組成物を供給する供給工程と、該供給された組成物を乾燥させる乾燥工程とを備えている。以下にそれぞれについて説明する。
加熱工程は、上記のように素材を所定温度に予熱する工程である。素材の到達温度については、上述の記載が該当する。予熱方法には特に限定はなく、必要に応じて種々の方法を用いることができる。これには例えば、温風炉に素材を入れて加熱する方法や、温水槽に浸漬して加熱する方法等を挙げることができる。ここで、炉や槽の温度を所定の温度に設定し、素材をその中で十分な時間保持すれば、所定温度の素材温度が得られる。また、これらの炉や槽で加熱する場合、素材温度は表面から上昇していくので、炉や槽の温度を所定温度より高く設定し、材料の保持温度をコントロールすることで表面を所定温度に到達させ、内部はその温度より低い温度にすることもできる。その他の加熱方法としては、所定温度より高い温度の温風を素材に吹きつけて昇温する方法やバーナー等で直接加熱する方法を挙げることができる。いずれも温度と単位面積あたりの加熱時間等をコントロールすることで所定温度が得られる。また、素材を送りながらオンラインで加熱する方法も利用可能である。例えば、高周波誘導加熱による方法や、直接通電加熱による方法などを用いて、素材を送りながら上記の加熱域を通過させることで素材を昇温させることができる。なお、直接通電加熱とは、素材に陽極と陰極を接触させ、両極間に電流を流すことで加熱する方法で、管、棒、線材をオンラインで加熱する場合には、移動する素材の表面に穴型のローラからなる電極を押し当てて通電するなどの方法がある。高周波誘導加熱では高周波の周波数、高周波電圧などの加熱条件と単位面積当たりの加熱時間をコントロールすることで所定の温度にすることができる。直接通電加熱でもローラと素材の接触形状、電圧などの通電条件と単位面積当たりの加熱時間をコントロールすることで素材を所定温度にすることができる。
供給工程は、上記組成物を予熱された素材の表面に供給する工程である。ここで、組成物を供給する方法には特に限定はなく、必要に応じて種々の方法を用いることができる。例えば、素材の表面にはけで塗布したり、素材を組成物に浸漬したり、ブラシで塗ったり、スプレー塗布したり、又は流しかけ等の任意の方法を採用することができる。組成物の供給は、素材の表面が引抜き加工用潤滑被膜で十分に被覆されればよく、供給する時間は特に制限はないが、予熱している素材が所定の温度より低下してしまわない間に供給し終える必要がある。従って、素材全体を予熱している場合や所定温度より高めに予熱し所定の温度になってから供給する場合は比較的時間に余裕を持って供給することができる。一方、表面の温度のみを所定の温度に保持している場合は、できるだけ迅速に供給を終了し、表面温度の低下を防ぐことが重要である。なお、表面のみを所定の温度にする方法は、上記のように工程上の制約はあるものの、被膜形成後に素材全体の温度がそれほど高くならないため、引き続いて行う引抜き加工時に素材温度が低いため焼付きを生じにくい。
乾燥工程は、素材に供給された組成物を乾燥させる工程である。具体的には組成物中の溶媒を蒸発させて素材表面に潤滑被膜を形成するものである。乾燥の方法は特に限定はない。上記素材の予熱により乾燥が好ましく進行するので、これを妨げない範囲で付加的に乾燥の手段を適用することができる。よって、自然乾燥させてもよいし、必要に応じて強制乾燥させてもよい。強制乾燥させる場合、紫外線を照射する方法、熱風を当てる方法、高周波加熱して乾燥させる方法等、任意の方法を採用することができる。かかる強制乾燥の条件としては、60〜150℃で10〜60分程度行うのが好ましい。
かかる各工程により素材表面に潤滑被膜が形成される。該潤滑被膜に含有される成分は、上記組成物から溶媒が取り去られたものなので、上記組成物に関する記載事項が該当する。また、形成された潤滑被膜の重量、厚さ等については特に限定はなく、必要に応じて種々の範囲とすることができる。焼付きを防ぐ観点からは1g/m以上が好ましく、また、コストの観点から30g/m以下であることが好ましい。より好ましくは3〜20g/mであり、さらに好ましくは5〜15g/mである。
本発明は、以上のように形成された潤滑被膜を有する素材である被加工材を引抜き加工する引抜き材製造方法を提供するものである。これにより、化成処理による下地を必要としない高い潤滑性を有する好適な態様の潤滑被膜を形成させるとともに、該潤滑被膜が形成された素材の引抜き加工性を向上させることのできる引抜き材製造方法を提供することができる。
次に実施例によりさらに詳しく説明する。ただし、本発明は本実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1では、各種条件に基づいて製作した管である被加工材ついて、引抜き加工を行い焼付き発生の有無を評価した。はじめに条件を示す。
<組成物>
表1に本実施例で適用される潤滑被膜形成のための組成物の成分を示した。
Figure 0004597897
ここで、表1中に表記した各成分の種類A〜Fは次の通りである。
Aは組成物No.1に用いられる本発明例に該当する樹脂であり、ガラス転移温度(Tg)が5℃である。具体的には次のようなものである。すなわち、撹拌機、温度計及び還流コンデンサー付のセパラブルフラスコに、水250質量部、ラウリル硫酸ナトリウム0.5質量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5質量部を仕込み、撹拌下に、窒素置換しながら80℃迄昇温した。その後、内温を80℃に保ち、重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加し、溶解後、メタクリル酸メチル0.45質量部、アクリル酸ブチル0.5質量部、メタクリル酸0.05質量部、及びラウリルメルカプタン0.01質量部の混合液を仕込み、1時間反応させた。次いで、反応終了後、予め、メタクリル酸メチル45質量部、アクリル酸ブチル50質量部、メタクリル酸5質量部、及びラウリルメルカプタン1質量部の混合液、並びに水20部に過硫酸カリウム1質量部を溶かした水溶液を、4時間かけて連続的に添加し、反応させた。添加終了後、さらに4時間の熟成を行い、このエマルションを常温まで冷却した。その後、カルシウム架橋剤32.9質量部を30分かけて滴下した。次いで、85℃で6時間加温して架橋反応を進行させた後、常温まで冷却し、固形分20質量%になるように水で調整し、樹脂溶液を調製した。なお、上記カルシウム架橋剤は、乳鉢でよくすりつぶした酸化カルシウム5質量部と、水95質量部とからなる分散液である。
Bは、組成物No.2に用いられるガラス転移温度(Tg)が46℃の樹脂である。すなわち、Tgは30℃より高い。具体的には第一工業製薬株式会社製、水性ウレタン樹脂(固形分:30質量%)を適用した。
樹脂A、Bの樹脂溶液における樹脂分のガラス転移温度は、上記のように各々5℃、46℃である。樹脂Aのガラス転移温度は、FOXの式より算出した値であり、架橋前の樹脂分のガラス転移温度である。また、樹脂Bのガラス転移温度は、当該製品パンフレットに掲載されていた値である。
Cは、組成物No.1及びNo.2のいずれにも用いられるワックス成分である。具体的には、水75質量部、酸化ポリエチレン(軟化点:138℃、100℃での形態:固体)20質量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル5質量部、及び水酸化カリウム0.2質量部を高圧容器に加え、160℃で3時間撹拌後、常温まで冷却して、乳化されたワックス溶液(固形分:25%)を調製した。また、ワックス粒子の平均粒径は、0.05μmである。
Dは、組成物No.1及びNo.2のいずれにも用いられる溶媒であり、具体的には水である。
Eは、組成物No.1に用いられる溶媒である。具体的には、大日本インキ化学工業株式会社製のジエチレングリコールモノエチルエーテルを使用した。
Fは組成物No.1のみに添加される微粒子で、酸化カルシウムである。具体的には、和光純薬工業株式会社製の酸化カルシウムをボールミルにより微粒子化したものを使用した。
<素材>
素材は、外径25.4mm×内径21.4mm×長さ800mmであるSUS304相当のステンレス鋼管を使用した。該ステンレス鋼管は溶体化処理した後、酸洗いにより表面の粗面化処理がされた。
<潤滑被膜の形成>
表1に示した組成物No.1及びNo.2を上記素材に供給し、潤滑被膜を形成させた。その条件を表2に示す。
Figure 0004597897
表2からわかるようにZ1の条件では、予熱後のサンプルは素材の内部まで所定の温度になっていると考えられ、Z2の条件では表面は所定温度で素材内部はそれより低い温度になっていると考えられる。また、この試験では、迅速に塗布するという点を重視してハケ塗りを採用した。そのため、膜厚を正確にコントロールすることが困難であったため、各条件で被膜が形成された試験材を多数作り、それらの膜厚を膜厚計(MiniTest3100、エレクトロ・フィジック社製)で計測し、乾燥後の平均膜皮膜重量が20±2g/mであったもののみを採用した。なお、Z1及びZ2に関しては10分の乾燥で十分であったが、Z3については、20分で表面が乾燥し、内部には未乾燥部位があるように見受けられた。
<引抜き加工>
図1には引抜き加工の概要を模式的に示した。引抜き加工では、被加工材である管3、3の外側を加工するダイス1、1と内側を加工するプラグ2との間に挟み、図1に矢印Aで示した方向に引っ張ることによりその径を減ずる加工をする。従って、管3、3の径に対するダイス1、1及びプラグ2の径等によってその加工度(減面率等)が変わる。本実施例ではa〜hの8種類のダイス及びプラグの組み合わせの引抜き加工をそれぞれ製作した被加工材について行った。表3に具体的な値を示した。なお、引抜き速度は6m/分で行った。
Figure 0004597897
<評価基準>
焼付き性の評価は、焼付きの有無を目視により判断しておこなった。評価基準は、減面率が43.9%である表3に符号eで示したダイス及びプラグによる引抜き加工以上の減面率で加工しても焼付きが生じなかった場合を「○」とした。一方、それより低い減面率でも焼付きが発生した場合を「×」とした。
次に結果について説明する。表4に結果を一覧で示した。
Figure 0004597897
表4からわかるように、本発明例に該当する試験番号1−1及び2−1については、
減面率の高い加工においても焼付きが発生しなかった。一方、比較例はいずれも低い減面率の引抜き加工で焼付きが発生した。以上より、本実施例では本発明の効果が顕著に現れている。
(実施例2)
実施例2として、別の予熱方法の検討を行った。材質がSUS304で寸法が直径54mm、肉厚3mm、長さ600mmの短い鋼管を準備し、表1に示したNo.1の組成物を用いて、表5に示すような条件で潤滑被膜を形成させた。その後の形成された潤滑被膜の乾燥状態を調べるために、該潤滑被膜を鋭利な刃物で引掻いて目視調査した。
Figure 0004597897
表5において、記号Z7で表した形成方法では、高周波誘導加熱法により素管の予熱を行った。高周波誘導加熱は富士電波工業株式会社製FRT−30−380Hを用い、380kHz、10kWの条件で加熱した。また、加熱に用いたコイルは鋼管(直径8mm)で直径60mmに曲げ加工したものを用いた。試験に使用した装置では試験材を移動させることはできないが、移動させながら加熱することを想定して短時間で所定の90℃に達するような設定で加熱した。さらには、管全長(600mm)を均一に加熱出来るようなコイル形状ではないため、コイルが取り巻いている位置の上下10mm、計20mm幅のみで被膜を評価した。評価基準は、乾燥工程後の乾燥状態において、完全に乾燥している場合を「○」、乾燥していない場合を「×」とした。また、その時の表面温度も測定した。表面温度は接触式温度計を用いた。表6に結果を示す。
Figure 0004597897
表6からわかるように、記号Z4、Z5、及びZ7で良好な乾燥状態を得ることができた。特に、記号Z7で示した高周波加熱では設定の条件で十分に乾燥した被膜が得られた。また、表面温度については、当該記号Z7の例である高周波加熱したもので38℃と最も低い温度となった。これは、高周波加熱では表面層が優先的に加熱され、所定の90℃になり、内部はそれより低い温度であったため、全体を90℃にするDの方法より冷えやすかったと考えることができる。このことは、上述の通り、引抜き加工時の焼付き防止という観点から好ましい。
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う、冷間引抜き加工方法及び引き抜き材の製造方法も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
実施例1における管の引抜き加工についてその概要を模式的に示した図である。
符号の説明
1 ダイス
2 プラグ
3 被加工材(加工後は引抜き材)

Claims (4)

  1. 金属の素材表面に潤滑被膜が形成された被加工材を冷間引抜き加工する方法であって、
    前記潤滑被膜を形成するために前記素材に供給される組成物が、
    溶媒と、
    ガラス転移温度が30℃以下で典型金属元素及び遷移金属元素のうちの少なくとも1種の金属元素を含む化合物及び/又はそのイオンにより架橋されるとともに、前記組成物の固形分を100質量%とした場合に、25〜99質量%含有される樹脂と、
    ワックス粒子と、を含有し、
    前記素材に前記組成物を供給する際に、該素材を表面温度で予め50〜130℃に加熱しておくことを特徴とする冷間引抜き加工方法。
  2. 前記組成物に含まれる全成分のうちの固形物成分が、該組成物全体を100質量%とした場合に、10〜60質量%で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の冷間引抜き加工方法。
  3. 前記素材の前記加熱が高周波誘導加熱法により行われ、前記素材を高周波誘導加熱装置のコイル内を移動させて通過させることにより該加熱が行われるとともに、その直後に前記組成物を前記素材に供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の冷間引抜き加工方法。
  4. 引抜き加工工程を有する金属の引抜き材を製造する方法であって、
    前記引抜き加工工程前に、
    金属の素材を表面温度で50〜130℃に加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程の後工程で、加熱された前記素材に潤滑被膜を形成するための組成物を供給する供給工程と、
    供給された前記組成物を乾燥する乾燥工程と、を有し、
    前記組成物は、
    溶媒と、
    ガラス転移温度が30℃以下で典型金属元素及び遷移金属元素のうちの少なくとも1種の金属元素を含む化合物及び/又はそのイオンにより架橋されるとともに、前記組成物の固形分を100質量%とした場合に、25〜99質量%含有される樹脂と、
    ワックス粒子と、を含有することを特徴とする金属の引抜き材製造方法。
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