JP4596708B2 - ポリエステルフィルム、その用途およびそれからなる金属ラミネート板、並びにそれからなる金属缶または金属缶蓋 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルムラミネート金属板の構成材料として有用なフィルム、さらにはこのラミネート金属板を用いて製造した金属缶体及び缶蓋材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
飲食料の包装容器の一形態である金属缶は、機械的強度に優れることから、内容物の長期保存が可能であり、また、内容物を高温で充填しそのまま密封したり、レトルト処理等の殺菌処理も容易に行えるため、包装容器としての安全衛生性に対する信頼性も高く、更に加温状態で内容物を保存できたり、使用後の缶体分別回収が比較的容易であるという多くの長所を有するため、近年様々な内容物が充填され多量に使用されている。
【0003】
飲食用金属缶の内面及び外面は、内容物の風味を保ち、金属缶の腐食を防止するため、または缶外面の美粧性向上、印刷面保護を目的として従来より熱硬化性樹脂を主成分とする塗料が塗布されてきた。しかし、このような金属缶は多量の溶剤を使用して製造するため、製造時の脱溶剤による環境面での問題や塗膜中に残留する溶剤による衛生面での問題が生じ、さらに熱硬化時の反応不良で残留するオリゴマーによってフレーバー性が低下するといった問題も生じる。
【0004】
これらの問題点を克服するために、プラスチックフィルムを金属にラミネートする方法が提案されている。プラスチックフィルムを金属板にラミネートした積層体は、いわゆる3ピース缶(以下3P缶と略す)や2ピース缶(以下2P缶と略す)に利用することが提案されている。缶のシームレス化という観点では、2P缶の普及が望まれている。
【0005】
2P缶は、一般的に、プラスチックフィルムがラミネートされた金属板を製缶機で打ち抜き、絞りしごき工程により製造する。この製缶工程において、フィルムは絞りしごきのせん断を受けながら金属板の延展に追従することが要求される。
【0006】
この要求に応えるべく、特定の極限粘度を有するポリエチレンテレフタレート(PET)系ポリエステル樹脂と特定の極限粘度を有するポリブチレンテレフタレート(PBT)系ポリエステル樹脂とを配合した、製缶性に優れたフィルムが提案されている。しかしながら、この画期的なフィルムも、絞り成形後にしごき工程(絞りしごき工程)を行った場合、金属板の延展に十分追従できたとはいえず、金属との接着性も十分ではなく、さらに成形時にフィルムの剥離が生じたり、ミクロクラックが発生する場合もあり、その成形性が十分であるとはいえない。
【0007】
当該フィルムを用いて得られるラミネート金属板や金属缶体からのオリゴマーの溶出量は、熱硬化性樹脂を主成分とする塗料を塗布した金属板や金属缶体からのそれに比べてかなり減少している。さらに減少させるためには、フィルムをラミネートした金属板から製缶した金属容器を加熱処理してフィルムの結晶化度を増加させればよいが、急激に結晶化させると球晶が成長したり、フィルムの剥離が発生する等の問題が生じ、改善が求められる。また、結晶化度がただ高いだけでは、金属板と熱圧着しにくくなるという問題や成形加工しにくくなるという問題もある。
【0008】
上記種々の問題に対して、2つのポリエステルからなる、適度な結晶性(適切な結晶化度)を有するプラスチックフィルムが提案されている。このフィルムは、缶成形時の金属の延展に追従することと、缶内容物のフレーバー性を保持することを両立させており、これは、フィルムが2つのポリエステルからなることと、フィルムが適度な結晶性を有することに起因している。初めフィルムは適度な結晶性を有するが、フィルムを高温で処理することによりエステル交換反応が生じて異なるポリエステルの共重合化が生じ、結晶性が悪化する。このため、製品に加工する間もフィルムの結晶化度を適切な範囲に保つために、例えば、ポリエステルの溶融時間を短縮したり、溶融後の延伸・熱処理工程においてフィルムにかかる熱量を下げるといった工夫がなされている。
【0009】
しかしながら、工業規模での生産性を考慮すると、これら従来法では限界がある。というのは、生産性を向上させるために樹脂の吐出量を上げ、厚みムラなど品質変動が少ないプラスチックフィルムを製造するために押出機の容量を上げ、かつ吐出を安定にするために樹脂の滞留時間を長くする必要があるからである。そのため、上記従来法では必要特性を有するプラスチックフィルムおよびそれから得られる金属缶体などを満足する生産性で得ることは困難である。
【0010】
以上から、金属缶体および缶蓋材として必要な特性を有し、その特性を最終製品に成形加工後も保持し、かつ工業規模での生産性にも優れた、金属ラミネート用プラスチックフィルムが望まれている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
即ち、本発明は、以下の目的を達成することを主たる課題とする。
▲1▼機械的特性に優れ、高結晶化度であっても金属板との熱圧着が可能であり、かつ金属板に熱圧着する際の条件変動に対して、金属板にラミネートしたプラスチックフィルムの品質が変化しにくく、しかも比較的低温でも熱圧着可能な金属ラミネート用フィルムを提供すること。
▲2▼成形加工性(製缶性など)に優れる金属ラミネート用フィルムを提供すること。
▲3▼フィルムを金属板に熱圧着して得られたラミネート金属板やそのラミネート金属板を各種成形加工に付して得られた金属缶体の表面にあるフィルムを結晶化処理しても、フィルムの白化、剥離、ミクロクラックが発生しない、フレーバー性や耐衝撃性に優れた金属ラミネート用フィルムを提供すること。
▲4▼工業規模での生産性も十分満足できる金属ラミネート用フィルムを提供すること。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、特定量のポリエチレンテレフタレート系(以下、PETと略することもある)樹脂(A)(以下、ポリエステル樹脂(A)と略することもある)と特定量のポリブチレンテレフタレート系(以下、PBTと略することもある)樹脂(B)(以下、ポリエステル樹脂(B)と略することもある)とを配合したポリエステル系樹脂組成物からなるフィルムであって、下記(I)および(II)のいずれか一方を満足することを特徴とするポリエステルフィルムが本発明の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
(I)当該フィルムを溶融または軟化させてアルミ板に接着させ、これを270℃雰囲気中に10分放置したフィルムが、示差走査熱量測定(DSC)の180℃以上280℃未満領域において、2つ以上の融点ピークを有する。
(II)280℃雰囲気中に10分放置した当該フィルムが、示差走査熱量測定(DSC)の180℃以上280℃未満領域において、2つ以上の融点ピークを有し、かつフィルムのガラス転移点温度(Tg)が20℃以上60℃未満である。
【0013】
即ち、本発明は、
1) ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)10〜70重量%とポリブチレンテレフタレート系樹脂(B)90〜30重量%とを配合したポリエステル系樹脂組成物からなるフィルムであって、当該フィルムを溶融または軟化させてアルミ板に接着させ、これを270℃雰囲気中に10分放置後のフィルムが、示差走査熱量測定(DSC)の180℃以上280℃未満領域において、2つ以上の融点ピークを有することを特徴とするポリエステルフィルム。
2) 280℃雰囲気中に10分放置したフィルムが、示差走査熱量測定(DSC)の180℃以上280℃未満領域において、2つ以上の融点ピークを有し、かつフィルムのガラス転移点温度が20℃以上60℃未満である、上記1)のポリエステルフィルム。
3) ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)10〜70重量%とポリブチレンテレフタレート系樹脂(B)90〜30重量%とを配合したポリエステル系樹脂組成物からなるフィルムであって、280℃雰囲気中に10分放置した当該フィルムが、示差走査熱量測定(DSC)の180℃以上280℃未満領域において、2つ以上の融点ピークを有し、かつフィルムのガラス転移点温度が20℃以上60℃未満であることを特徴とするポリエステルフィルム。
4) ガラス転移点温度が20℃以上50℃未満である、上記3)のポリエステルフィルム。
5) 金属ラミネート用である、上記1)または4)のポリエステルフィルム。
6) 上記1)または4)のポリエステルフィルムを金属板に貼り合わせることを特徴とする金属ラミネート板。
7) 上記6)の金属ラミネート板を用いることを特徴とする金属缶または金属缶蓋。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
ポリエステル樹脂(A)
本発明において用いられるポリエステル樹脂(A)は、テレフタル酸成分とエチレングリコール成分とを主成分(好ましくは70〜100%、より好ましくは90〜100%)として溶融重縮合反応、あるいは引き続いて固相重合したものである。ポリエステル樹脂(A)は、エチレンテレフタレート(ET)構造を繰り返し単位中に有し、剛直性、耐熱性、透明性などに優れるため、優れた製缶性、光沢性、耐蝕性等を示す。
【0015】
ポリエステル樹脂(A)の極限粘度は、好ましくは0.50〜0.90、より好ましくは0.55〜0.80である。分子量は、重量平均分子量で、好ましくは20,000〜200,000、より好ましくは50,000〜100,000である。重量平均分子量と数平均分子量の比より表される分子量分布は、好ましくは2.0〜10.0であり、より好ましくは2.0〜4.0である。これらの特性値は、後述の測定方法により得られる値である。
【0016】
極限粘度と重量平均分子量のいずれか一方または両方が上記範囲より小さくなると、実用に供することのできる機械的強度を有するフィルムが得られ難くなり、逆に上記範囲を超えるとフィルムの金属板への熱圧着性が低下する傾向がある。一方、分子量分布が上記範囲より小さくなると、製缶時の金属板の延展にフィルムが追従し難くなり、逆に上記範囲を超えるとフィルム中のオリゴマー量が多くなりフレーバー性が損なわれる傾向にある。
【0017】
ポリエステル樹脂(A)は、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜他の成分と共重合することができる。共重合可能な他の酸成分としては、例えば芳香族ジカルボン酸(例えばイソフタル酸、(無水)フタル酸、2,4−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等)、脂環族ジカルボン酸(例えばヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジメタンカルボン酸等)、ヒドロキシカルボン酸(例えば炭素数20〜60のダイマー酸、p−ヒドロキシ安息香酸、乳酸、β−ヒドロキシ酪酸、ε−カプロラクトン等)や多官能カルボン酸(例えば(無水)トリメリット酸、トリメシン酸、(無水)ピロメリット酸等)等を挙げることができる。
【0018】
また、共重合可能な他のアルコール成分としては、例えば脂肪族ジオール(例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグコール、分子量が200〜3,000のポリエチレングリコール、分子量が200〜3,000のポリプロピレングリコール、分子量が200〜3,000のポリテトラメチレングリコール等)、脂環族ジオール(例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイド付加物等)、多官能アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等)等を挙げることができる。
【0019】
ポリエステル樹脂(A)の製造方法としては、公知の方法を採用することができる。たとえば、ポリビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びその低重合体の存在するエステル化反応槽器に、ジメチルテレフタレートとエチレングリコール(必要に応じて他の共重合成分のスラリー)とを連続的に供給し、温度250℃付近で3〜10時間程度反応させることにより、エステル化反応率95%付近のエステル化物を連続的に得る。次いで、これを重合器に移送し、二酸化ゲルマニウム、三酸化アンチモン、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、酢酸亜鉛等の触媒存在下に1.5hPa以下の減圧下、温度250〜290℃で、所望の極限粘度、分子量および分子量分布が得られるまで溶融重縮合反応を行えばよい。また、上記方法により得られたポリエステルを更に通常の方法で固相重合してもよい。
【0020】
ポリエステル樹脂(B)
本発明において用いられるポリエステル樹脂(B)は、テレフタル酸成分と1,4−ブタンジオール成分とを主成分(好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%)として溶融重縮合反応、あるいは引き続いて固相重合したものである。ポリエステル樹脂(B)は、ブチレンテレフタレート(BT)構造を繰り返し単位中に有し、高結晶性を示し、結晶化速度が速く、Tgが低いため、製缶性や美観性に優れる。
【0021】
PBTは次の特性を有する:極限粘度が好ましくは0.60〜2.2、より好ましくは1.0〜1.5、重量平均分子量が好ましくは50,000〜200,000、より好ましくは80,000〜150,000、重量平均分子量と数平均分子量の比である分子量分布が好ましくは1.5〜5.0、より好ましくは2.0〜4.5。
【0022】
極限粘度と重量平均分子量のいずれか一方または両方が上記範囲より小さくなると、実用に供することのできる機械的強度を有するフィルムが得られ難くなり、逆に上記範囲を超えるとフィルムの金属板への熱圧着性が低下する傾向がある。一方、分子量分布が上記範囲より小さくなると、製缶時の金属板の延展にフィルムが追従し難くなり、逆に上記範囲を超えるとフィルム中のオリゴマー量が多くなりフレーバー性が損なわれる傾向にある。
【0023】
また、ポリエステル樹脂(B)は、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜他の成分と共重合できる。他の成分としては、ポリエステル樹脂(A)で挙げたものと同様な化合物が挙げられる。
【0024】
ポリエステル樹脂(B)の製造方法としては、公知の方法を採用することができる。たとえば、1,4−ブタンジオールとジメチルテレフタレート(必要に応じて他の共重合成分)とをエステル交換反応器に仕込み、230℃付近の温度で5時間反応させて、エステル交換反応率が95%付近のものを得る。次いでこれを重合器に移送し、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の触媒存在下に、1.3hPa以下の減圧下、温度220〜280℃で、所望の極限粘度、分子量、分子量分布が得られるまで溶融重縮合反応を行えばよい。また、上記方法により得られたポリエステルを更に通常の方法で固相重合してもよい。
【0025】
ポリエステルフィルム
本発明のポリエステルフィルムは、
ポリエステル樹脂(A)10〜70重量%(好ましくは20〜60重量%、より好ましくは30〜50重量%)と
ポリエステル樹脂(B)90〜30重量%(好ましくは80〜40重量%、より好ましくは70〜50重量%)
とを配合してなるポリエステル系樹脂組成物からなる。
【0026】
本発明の組成物に、ポリエステル樹脂(A)を用いることは、機械的特性、耐衝撃性およびフレーバー性に優れたフィルムを得るために重要であり、ポリエステル樹脂(B)を用いることは、フレーバー性に優れ、高結晶化度であっても金属板との熱圧着(比較的低温でも可能)が可能であるフィルムを得るために重要である。
【0027】
ポリエステル樹脂(A)と(B)の配合比が上記範囲内であることは、成形加工性および工業規模での生産性に優れたフィルムを得るために重要である。ポリエステル樹脂(A)の配合量が上記範囲より少なくなると(ポリエステル樹脂(B)の配合量が上記範囲を超えるのと同義)、耐熱性が低下することにより、製缶性が劣ることになり、逆にポリエステル樹脂(A)の配合量が上記範囲を超えると(ポリエステル樹脂(B)の配合量が上記範囲より少なくなるのと同義)、金属板への接着性が低下する。
【0028】
本発明において、ポリエステルフィルムは、下記(I)および/または(II)の特性を有することが必須である。
(I)本発明のポリエステルフィルムを溶融または軟化させてアルミ板に接着させ、これを270℃雰囲気中に10分放置したフィルムが、DSCの180℃以上280℃未満領域において、2つ以上の融点ピークを有する。
(II)(i)280℃雰囲気中に10分放置した本発明のポリエステルフィルムが、DSCの180℃以上280℃未満領域において、2つ以上の融点ピークを有し、かつ(ii)フィルムのTgが20℃以上60℃未満である。
【0029】
本発明のフィルムが上記(I)および/または(II)の特性を満たすことは、金属板に熱圧着する際の条件変動に対して、金属板にラミネートしたフィルムの品質を変化しにくくするために重要である。この他に、金属缶体の表面にあるフィルムを結晶化処理した場合に、フィルムの白化、剥離、ミクロクラックなどを発生させないためにも重要である。
【0030】
ここでいう融点ピークとは、DSC曲線において、昇温時における結晶の融解に基づく吸熱ピークをいう。
【0031】
上記(I)の「溶融または軟化」は、フィルムが溶融または軟化するのに必要な熱量で処理すればよく、好ましくは180〜250℃、より好ましくは200〜240℃である。フィルムのアルミ板への接着は特に限定されるものではなく常法で行え、例えば、上記範囲の温度に熱したローラーまたは金属板を用いて、金属板と金属ラミネート用ポリエステルフィルムとをローラーを介して張り合わせた後、急冷する。
【0032】
上記(I)および(II)-(i)における処理は、金属ラミネート板から2P缶を得る際にラミネートしたフィルムにかかる負担より大きな負担をフィルムに与える処理である。
【0033】
上記(I)および(II)-(i)は、測定する本発明のポリエステルフィルムに、(I)では「フィルムを溶融または軟化させてアルミ板に接着させ、これを270℃雰囲気中に10分放置」するという処理、(II)-(i)では「280℃雰囲気中に10分放置」するという処理をそれぞれ施した後、当該フィルムに配合されているポリエステル樹脂(A)および(B)の各融点を保持していることを意味する。この特性をフィルムに付与するためには、フィルム中、これらの処理を施す条件下で、ポリエステル樹脂(A)と(B)との間のエステル交換反応等の副反応が生じないようにすればよい。
【0034】
例えばフィルム中でエステル交換反応が生じると、ポリエステル樹脂(A)と(B)の共重合体が生成する。これにより、DSCの180℃以上280℃未満領域において2つ以上の融点ピークが存在しなくなり、ポリエステル樹脂(A)の主成分のET構造がランダム化し、その特徴である剛直性が損なわれることになり、ポリエステル樹脂(B)の主成分のBT構造がランダム化し、その特徴である高結晶性が損なわれることになる。
【0035】
本発明において、ポリエステルフィルム中のポリエステル樹脂(A)と(B)との間のエステル交換反応等の副反応を抑制する手段は様々挙げることができる。以下にその好ましい例を挙げるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、副反応が抑制され、ポリエステルフィルムに本発明の効果を付与することができるのであれば他の方法も用いることができる。又、ここで挙げた方法は組み合わせて用いて行ってもよい。
【0036】
エステル交換反応等の副反応を抑制する手段のひとつとして、フィルム樹脂組成物中に、特定のリン化合物(以下、P化合物ともいう)を配合することが挙げられる。
【0037】
本発明におけるこのP化合物とは、少なくとも分子中にひとつ以上のPとOの結合を有する化合物である。少なくとも分子中にひとつ以上のP−O結合が存在すると、P化合物は、ポリエステル樹脂製造時に用いた、ポリエステル樹脂(A)及び(B)中に存在する金属触媒に配位子として有機金属化学的に結合し、金属触媒の活性を失活させる。この結果、ポリエステル樹脂(A)と(B)との間のエステル交換反応が抑制でき、フィルム中でポリエステル樹脂(A)及び(B)が本来有する特性を生かすことが可能となる。
【0038】
本発明のP化合物としては、有機ホスファイト、有機ホスフィンオキサイド等の有機リンエーテルや有機ホスフェート等の有機リンエステル等を挙げることができる。このようなものの具体的なものとしては、例えば、トリフェニルホスファイト等の芳香族ホスファイト、ビス(アセタデカ)ペンタエリスリトールジホスファイト等の脂肪族ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジベンゾホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエーテル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエーテルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ]エチル]エタノールアミン、ジフェニルイソデシルホスファイト等の脂肪族骨格と芳香族骨格を有するホスファイト、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、エチルジエチルホスホノアセテート、ベンジルエチルホスホネート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリス(2―クロロエチル)ホスフェート等の有機リン酸エステル等を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0039】
本発明のP化合物は、ポリエステルフィルム組成物中に、金属触媒中の金属量[M](mol)に対するP化合物中のリン量[P](mol)([P]/[M])が1以上500以下の範囲内となるように添加するのが好ましい。この範囲より小さくなるとP化合物に対する金属の配位効率が低下する傾向にあり、触媒の失活度が不足し易くなり、この範囲より大きくなると、P化合物が可塑的に働き、フィルムの物性を低下させる傾向にある。より好ましくは1以上100以下、さらに好ましくは3以上100以下である。
【0040】
上記した本発明のP化合物を用いたエステル交換等の副反応を抑制する手段を工業的フィルム生産の場に応用する際には、以下の3点が必要となる。▲1▼P化合物を添加することにより、触媒によるエステル交換反応を抑制すること、
▲2▼P化合物は予めPETに予備混練すること、および
▲3▼混合する際の樹脂ペレットのサイズを制御すること。
【0041】
P化合物としては、ペンタエリスリトール型骨格とホスホン酸骨格の両方を有するものが、副反応を抑制するのに効果的である。また、押出し機内での安定性を考えると、融点は好ましくは200℃以上、好ましくはP化合物の溶融温度未満であり、より好ましくは205℃以上280℃以下であり、分子量は好ましくは200以上、より好ましくは250以上である。
【0042】
これらのP化合物は、予めPETに予備混練し、マスターバッチ化することがより好ましい。マスターバッチ化することにより、エステル交換反応の抑制効果が大きくなる。
【0043】
また、ポリエステル交換反応等の副反応を抑制する手段として、ポリエステル樹脂(A)および(B)をペレット状で添加する方法が挙げられる。この方法では、各樹脂のペレットの1粒あたりの重量が異なることが必須である。例えば、一方の樹脂のペレットの1粒あたりの重量が他方の樹脂のペレットのそれの1.2倍以上が好ましく、より好ましくは1.5倍以上2倍以下である。ポリエステル樹脂(A)のペレットの1粒あたりの重量を増加させることが好ましい。この方法により、両ポリエステル樹脂の溶融タイミングを変えることができ、よりエステル交換反応の抑制効果が発揮される。
【0044】
上記(II)-(ii)は、本発明のポリエステルフィルムのTgを限定しているが、Tgが当該範囲よりも高い場合には製缶時にフィルムが破れる場合があり、低い場合には製缶時の発熱によりラミネート板が型から抜けなくなる。
【0045】
本発明のTgの範囲は、下限は好ましくは20℃以上、より好ましくは35℃以上であり、上限は好ましくは50℃以下、より好ましくは50℃未満である。
【0046】
上記(II)-(ii)を満足するよう、フィルムのTgを特定範囲に制御する手段としては種々挙げられる。例えば、ポリエステル樹脂組成物中の、ETを主成分とするポリエステル樹脂(A)とBTを主成分とするポリエステル樹脂(B)の配合量の割合を特定の範囲に限定することが挙げられる。上記(II)-(ii)を満足するような当該特定の範囲とは、ポリエステル樹脂(A):ポリエステル樹脂(B)が50重量%以下20重量%以上:50重量%以上80重量%以下、好ましくは50重量%以下30重量%以上:50重量%以上70重量%以下の範囲である。ポリエステル樹脂(B)がこの範囲より少なくなると、Tgが60℃以上となり、製缶性が劣り問題が生じる。ポリエステル樹脂(B)がこの範囲より多くなると、Tgが20℃未満となり、フィルム同士のブロッキングや製缶性の低下が起こり問題となる。
【0047】
本発明のポリエステルフィルムは、公知の方法で製造することができる。例えば、ポリエステル樹脂(A)と(B)と本発明のP化合物を配合してフィルムを製造する場合、フィルムの成形時に押出し機中で直接溶融混合してもよいし、両者を一旦溶融混合してチップ化したものを用いてフィルム化してもよい。
【0048】
ポリエステルフィルムは、通常、滑剤を添加して成形してフィルムとされる。滑剤としては、二酸化珪素、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、シリコーン粒子等が挙げられ、中でも無機系滑剤が好ましい。尚、溶融混合に際し、滑剤の他に、必要に応じて、安定剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、帯電防止剤等の添加剤を配合することができる。
【0049】
本発明においては、通常フィルム成形で用いる押出し機を用いることができるが、単軸スクリュー方向、同方向または異方向の二軸スクリュー式のものが好ましく、スクリューの形状や寸法は任意でよい。これらのうち、生産性と品質の安定性の観点から、溶融時間(ポリエステル樹脂(A)、(B)のいずれかが溶融を開始した時点から、溶融物がT−ダイから押出され、冷却ロールに密着するまでの時間)が21分以上あるものが好ましく、より好ましくは29分以上である。溶融時間が21分未満では大量生産での品質の安定性が低下し、品質不良となる傾向にある。ポリエステル樹脂(A)および(B)の劣化の点から、溶融時間が、好ましくは35分以下、より好ましくは30分以下のものが好ましい。
【0050】
本発明のポリエステルフィルムは、例えば、ポリエステル樹脂(A)および(B)(並びに必要に応じてこれら以外の化合物)を十分に乾燥後、押出し機にて両樹脂の融点より10〜80℃高い温度で溶融押出し、T字型あるいは円形口金等を用いて、シート状または円筒状に口金より吐出させ、未延伸フィルムを得る。続いて、この未延伸フィルムを少なくとも1軸方向に延伸する。1軸に延伸する場合はテンターを用いて幅方向に延伸することが望ましい。例えば、好ましくは90℃〜120℃(より好ましくは100℃〜110℃)で、好ましくは3.0〜4.0倍(より好ましくは3.5〜4.0倍)1軸延伸する。2軸に延伸する場合には、延伸ロール等を用いて長手方向に延伸し、続いて幅方向に延伸する逐次2軸延伸、両方向に実質的に同時延伸する同時2軸延伸のいずれでもよい。例えば、長手方向に好ましくは70℃〜110℃(より好ましくは80〜100℃)で、好ましくは2.5〜4.5倍(より好ましくは3.0〜4.0倍)延伸後、幅方向に好ましくは90℃〜120℃(より好ましくは100℃〜110℃)で、好ましくは3.0〜4.0倍(より好ましくは3.5〜3.8倍)延伸する。
【0051】
また、延伸されたフィルムは、本発明の目的を損なわない程度で、熱処理や表面処理等を施してもよい。また。ポリエステルフィルムは、単層であっても多層であってもよい。
【0052】
本発明のポリエステルフィルムは、延伸後(延伸後、さらに処理を行った場合はその後)の厚みが、好ましくは5〜50μm、より好ましくは15〜30μmである。
【0053】
得られたポリエステルフィルムは、金属ラミネート用として用いるのが好ましい。ポリエステルフィルムを金属板に張り合わせることにより、金属ラミネート板を得ることができる。金属ラミネート板の製造方法としては、例えば、ローラーまたは金属板を予め150〜270℃に加熱して、金属板とフィルムとをローラーを介して貼り合わせた後、急冷させ、金属板に接するフィルム表層部が少なくとも金属板と溶融融着させる方法が挙げられる。ラミネート速度は、好ましくは1〜200m/分であり、工業規模で行う場合には130〜200m/分がより好ましい。また、ポリエステルフィルムを金属板に仮接着した後、これを加熱溶融してもよい。
【0054】
本発明の金属ラミネート板は、様々な用途に用いることができるが、金属缶および金属缶蓋に用いるのが好ましい。さらに、本発明の金属ラミネート板は、2P缶や3P缶(特に、2P缶)の原料としても有用である。
【0055】
本発明において、金属板にラミネートした状態にあるフィルム表面の微小領域の硬度は、ダイナミック硬度として表すことができる。ダイナミック硬度とは、島津評論−Vol.50,No3(1993.12)321頁に記載されている通りであり、超微小領域における硬度を表すものである。ダイナミック硬度(DH)は、試料に圧子をあて、押圧力を一定の割合で0から設定荷重まで増加させていくことにより試料に圧子を押し込んでいく過程の試験荷重(P)と押し込み深さ(D)から得られる硬さであり、試料の塑性変形と弾性変形を合わせた状態での特性値になる。DHとDおよびPとの関係は下記式1で表される。
DH=αP/D*D ・・・式1
DH:ダイナミック硬度(gf/μm2)
α:圧子形状による定数
P:試験荷重(gf)
D:押し込み深さ(μm)
【0056】
本発明におけるダイナミック硬度は、金属板にラミネートした状態にあるフィルム表面の硬度であり、フィルム最表面から一定の深さ(0〜5μm)における硬度を指す。本発明のフィルムは、好ましくは0.5〜50gf/μm2であり、より好ましくは0.5〜30gf/μm2であり、さらに好ましくは0.7〜45gf/μm2であり、特に好ましく0.5〜25gf/μm2のダイナミック硬度を有するのが好ましい。製缶性の観点からは、0.5〜30gf/μm2であるのが好ましい。
【0057】
上記範囲より小さくなると、表面微小領域の硬度が柔らかくなるため、微小領域の機械的強度が維持し難くなり、製缶時のフィルム破損が発生し易くなり、一方上記範囲より大きくなると、微小領域の硬度が高すぎて絞りしごき工程および製缶工程において、金属板の延展にフィルムが追従し難くなる。
【0058】
本発明のフィルムのダイナミック硬度を特定の範囲に設計する手段としては、フィルムにポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を含有させ、さらにポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)間のエステル交換反応を抑制する方法が挙げられる。エステル交換反応の抑制は、上記したものと同様な方法で行うことができる。
【0059】
また、本発明のフィルムが、缶成形性とフレーバー性に優れ、かつ成形後にフィルムの白化が生じないようにするためには、結晶化速度および結晶化度を制御すればよい。結晶化速度および結晶化度の制御は、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)が共重合しないようにすればよく、両者のエステル交換反応の抑制などを行えばよい。エステル交換反応の抑制は、上記した方法で行うことができる。
【0060】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体例を示して説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、以下に使用する「部」とは「重量部」のことである。
尚、実施例におけるポリエステルおよびポリエステルフィルムの各特性値は、次のようにして測定した。
【0061】
(a)極限粘度
フェノールと四塩化エタンの等重量混合物を溶媒として、温度20℃で測定した。
【0062】
(b)ダイナミック硬度(DH硬度)
DH硬度は、アルミニウム板に積層する前のポリエステルフィルムと積層後、熱圧着したポリエステルフィルム表面に対して測定した。
機種:島津ダイナミック超微小硬度計DUH201
荷重:0.5gf
負荷速度:0.0145gf/sec
測定温度:25℃
湿度:64%
試験モード:軟質材料測定モード
【0063】
(c)DSC
試料(10mg)を、所定の温度で10分溶融後、急冷し、窒素気流下、−20℃より20℃/分の昇温速度で測定した。所定の温度とは、実施例1〜7に対しては280℃、実施例8〜14に対しては270℃である。また、実施例8〜14については、金属板から剥がしたフィルムを試料とする。
測定には、マックサイエンス社製DSC3100Sを用いた。
180℃以上280℃未満領域において、ポリエステル樹脂(A)由来のピーク(TmA:235〜253℃)とポリエステル樹脂(B)由来のピーク(TmB:205〜235℃)が各々存在するかどうか確認した。上記領域において2点以上のピーク(TmAおよびTmBなど)が存在している場合、エステル交換は生じていないと判定した。観測されたTmAとTmBも判定結果と合わせて記載した。また、上記領域において、融点ピークが2点以上存在していない場合には、エステル交換が生じたと判定した。比較例ではピークが1つしか観測されておらず、その時の数値も表に記載した。
【0064】
(d)分子量(重量平均分子量[Mw]及び数平均分子量[Mn])と分子量分布([Mw]/[Mn])
試料調製
各ポリエステル樹脂15mgをヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム=2/3(v/v)1mlに溶解後、クロロホルム20mlに定溶する。
標準物質としてポリスチレン(TOSOH製)溶液を調製し、GPC校正曲線用試料とした。
分析条件
Column:gmhxl-gmhxl-g2000hxl(TOSOH)
Mobile phase:HFIP/Chloroform=2/98(v/v)
Flow rate : 0.7ml/min
Column Temp : 40℃
Detection Vol : 200ml
測定に用いた装置
GPC:SYDTEM-21(Shodex)
データ処理:SIC-480(SIC,システムインスルメンツ)
【0065】
(e)ガラス転移温度
上記(c)と同様な方法で測定した。
【0066】
(f)製缶性
フィルムサンプルを200℃のアルミ板(厚さ:300μm)にラミネートして仮接着し、これを240℃で再溶融した。再溶融後、深絞り成形および絞りしごき成形に付すことにより、2P缶を得た。2P缶に成形した後のフィルムの剥離、切れ、クラック等の損傷の有無を目視及び蛍光顕微鏡(倍率80倍)で観察し、以下の基準に基づき評価した。
○: 缶体100個のうち、95個以上に損傷なし。
△: 缶体100個のうち、80〜94個に損傷なし。
×: 缶体100個のうち、21個以上になんらかの損傷あり。
【0067】
(製造例)
ポリエステル樹脂(A1)〜(A3)
撹拌機、温度計及び部分還流式冷却器を備えたステンレススチール製反応容器にジメチルテレフタレート1940部、エチレングリコール1364部、酢酸亜鉛1.02部および二酸化ゲルマニウム0.14部を仕込み、160〜220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで、1時間かけて275℃まで昇温しながら反応系を徐々に減圧した。0.2mmHg(約0.27hPa)の減圧下で、所望の特性値が得られるまで反応させ、所望のポリエステル樹脂を得た。
必要に応じて、0.2mmHgの減圧下での反応後に得られた樹脂をブレンダー内に投入し、減圧下で205℃に加熱しながら固相重合し、所望の特性値を有するポリエステル樹脂を得た。
【0068】
ポリエステル樹脂(B1)〜(B4)
撹拌機、温度計及び部分還流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブにジメチルテレフタレート1940部、1,4−ブタンジオール1350部および表1に示す量のテトラ−n−ブチルチタネートを仕込み、160〜220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで、1時間かけて275℃まで昇温しながら反応系を徐々に減圧した。0.2mmHg(約0.27hPa)の減圧下で、所望の特性値が得られるまで反応させ、所望のポリエステル樹脂を得た。
必要に応じて、0.2mmHgの減圧下での反応後に得られた樹脂をブレンダー内に投入し、減圧下で180℃に加熱しながら固相重合し、所望の特性値を有するポリエステル樹脂を得た。
得られたポリエステル樹脂(A1)〜(A3)および(B1)〜(B4)の各種特性値を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
(実施例1〜7)
ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)及び有機リン化合物(C)を表2の組成比で配合し、これを280℃で、径45mm、L/D60の二軸押出し機で溶融混合して押出後、急冷して厚さ190μmの未延伸フィルムを得、さらに長手方向に90℃で4倍に延伸した後、幅方向に235℃で4倍に延伸した。延伸後、175℃で熱処理を行い、冷却して厚さ25μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。
エステル交換反応が生じていないものはいずれも良好な製缶性を示した。
【0071】
(比較例1〜7)
有機リン化合物(C)を除いた以外はすべて、実施例1〜7と同じようにして比較例1〜7のフィルムを得た。得られたフィルムの特性結果を表2に示した。
【0072】
【表2】
【0073】
(実施例8〜14および比較例8〜14)
厚み300μmのアルミニウム板を200℃に加熱し、その片面に実施例1〜7、比較例1〜7のフィルムをそれぞれローラーを介して貼り合わせてラミネートした(ラミネート速度3m/分)。得られたフィルムのDSCおよびDH硬度を測定した結果を表3に示す。
エステル交換反応が生じていないものはいずれも良好な製缶性を示した。
【0074】
【表3】
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、▲1▼機械的特性に優れ、高結晶化度であっても金属板との熱圧着が可能であり、かつ金属板に熱圧着する際の条件変動に対して、金属板にラミネートしたプラスチックフィルムの品質が変化しにくく、しかも比較的低温でも熱圧着可能で、▲2▼成形加工性に優れ、▲3▼フィルムを金属板に熱圧着して得られたラミネート金属板やそのラミネート金属板を各種成形加工に付して得られた金属缶体の表面にあるフィルムを結晶化処理しても、フィルムの白化、剥離、ミクロクラックが発生しない、フレーバー性や耐衝撃性に優れた、▲4▼工業規模での生産性も十分満足できる金属ラミネート用フィルムを提供することができる。
Claims (3)
- ポリエチレンテレフタレート系樹脂(A)20〜50重量%とポリブチレンテレフタレート系樹脂(B)80〜50重量%とを配合し、かつ、少なくとも分子中にひとつ以上のP−O結合を有するP化合物を金属触媒中の金属量[M](mol)に対するP化合物中のリン量[P](mol)([P]/[M])が3以上100以下となるように配合したポリエステル系樹脂組成物からなるフィルムであって、280℃雰囲気中に10分放置した当該フィルムが、示差走査熱量測定(DSC)の180℃以上280℃未満領域において、2つ以上の融点ピークを有し、かつフィルムのガラス転移点温度が20℃以上60℃未満であることを特徴とするポリエステルフィルム。
- ガラス転移点温度が20℃以上50℃未満である、請求項1記載のポリエステルフィルム。
- 金属ラミネート用である、請求項1または2記載のポリエステルフィルム。
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