JP4596229B2 - 磁気ランダムアクセスメモリ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,磁気ランダムアクセスメモリ(Magnetic Random Access Memory:以下、「MRAM」という。)に関する。本発明は,特に,MRAMのメモリセルに,より小さい書き込み電流でデータを書き込むことを可能にするための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
MRAMは,高速書き込みが可能であり,且つ,大きな書き換え回数を有する不揮発性メモリとして注目を集めている。
【0003】
典型的なMRAMのメモリセルは,図17に示されているように,固定された自発磁化を有するピン層101と,反転可能な自発磁化を有するフリー層102と,ピン層101とフリー層102との間に介設された非磁性のスペーサ層103とにより構成される磁気抵抗素子104を含む。フリー層102は,その自発磁化の向きが,ピン層101の自発磁化の向きと平行,又は反平行に向くことが許されるように,反転可能に形成される。
【0004】
メモリセルは,1ビットのデータを,フリー層102の自発磁化の方向として記憶する。メモリセルは,フリー層102の自発磁化とピン層101の自発磁化とが平行である”平行”状態と,フリー層102の自発磁化とピン層101の自発磁化とが反平行である”反平行”状態の2つの状態を取り得る。メモリセルは,”平行”状態と,”反平行”状態とのうちの一方を”0”に,他方を”1”に対応付けることにより,1ビットのデータを記憶する。
【0005】
メモリセルからのデータの読み出しは,磁気抵抗効果によるメモリセルの抵抗の変化を検知することによって行われる。ピン層101及びフリー層102の自発磁化の方向は,メモリセルの抵抗に影響を及ぼす。ピン層101とフリー層102との自発磁化の向きが平行である場合には,メモリセルの抵抗は,第1値Rとなり,反平行である場合には,メモリセルの抵抗は,第2値R+ΔRになる。ピン層101及びフリー層102の自発磁化の方向,即ち,メモリセルに記憶されているデータは,メモリセルの抵抗を検知することにより判別することができる。
【0006】
メモリセルへのデータの書き込みは,メモリセルアレイに配設されるワード線及びビット線に書き込み電流を流し,該書き込み電流により生じる磁場によってフリー層102の自発磁化の方向を反転させることによって行われる。
【0007】
データの書き込みに必要な書き込み電流の低減は,MRAMの消費電力の低減の観点から重要である。書き込み電流を低減する技術が,特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたMRAMでは,書き込み電流が流される信号線に高飽和磁化ソフト磁性材料,又は金属−非金属ナノグラニュラ膜を接合することによって磁場が磁気抵抗素子に集中され,これにより書き込み電流が低減されている。
【0008】
書き込み電流を低減するための構造を有する他のMRAMが,特許文献2に開示されている。特許文献2に開示されたMRAMでは,書き込み電流が流される配線としてコイルが使用され,磁気抵抗素子は,該コイルの中に挿入されている。磁気抵抗素子に印加される磁場は,該コイルのターン数に比例するため,より小さな書き込み電流でデータの書き込みを行うことが可能になる。
【0009】
書き込み電流を低減するための構造を有する更に他のMRAMが,米国特許公報である特許文献3と,その日本出願である特許文献4とに開示されている。特許文献3に開示されたMRAMでは,書き込み電流が流される導体の幅が,データ記憶層の幅よりも狭くされている。書き込み電流が流される導体の幅を小さくすることで,導体とデータ記憶層との間のミスアライメントが排除され,書き込み電流によって生成される磁場の漏れが低減され,従って,より小さな書き込み電流でデータの書き込みを行うことが可能になる。
【0010】
本出願に関連し得る更に他の技術が,特許文献5に開示されている。特許文献5に開示された磁気記憶装置では,2つの磁性層に結合制御層が挟まれた構造が使用される。2つの磁性層のうちの一が記憶担体として使用される。該2つの磁性層の上方には,該2つの磁性層が有する自発磁化と平行な方向に駆動線が設けられている。記憶担体へのデータの書き込みが行われる場合,駆動線に電流が流され,記憶担体として使用される磁性層が有する自発磁化と垂直な方向に磁場が印加される。該磁場により,記憶担体として使用される磁性層が有する自発磁化の反転が選択的に容易化される。記憶担体として使用される磁性層が有する自発磁化の反転は,結合制御層を介して該2つの磁性層に働く交換相互作用によって行われる。データ書き込みの際に電流が流される駆動線は,上方に湾曲するように形成されている。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−110938号公報(図4)
【特許文献2】
米国特許第5,742,016号公報
【特許文献3】
米国特許第6,236,590号公報
【特許文献4】
特開2002−118239号公報
【特許文献5】
特開2000−82283号公報(図5)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、MRAMのメモリセルへのデータの書き込みを,より小さな書き込み電流で行うことを可能にするための他の技術を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
以下に、[発明の実施の形態]で使用される番号・符号を用いて、上記の目的を達成するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明の実施の形態]の記載との対応関係を明らかにするために付加されている。但し、付加された番号・符号は、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0014】
本発明による磁気ランダムアクセスメモリは,基板(1,21)と、反転可能な自発磁化を有する強磁性層(8)を含み,前記自発磁化の方向に応じて抵抗が変化し,且つ,前記基板(1,21)の上方に形成された磁気抵抗素子(5,27)と,第1方向(y軸方向)に延設され,前記磁気抵抗素子(5,27)に印加される磁場を発生する電流を流すための配線(11,33)とを備えている。配線(11,33)は、磁気抵抗素子(5,27)よりも基板(1,21)に近く,且つ,基板(1,21)の主面(1a,21a)に垂直な方向からみたときに磁気抵抗素子(5,27)と重ならない第1位置(12a)と、磁気抵抗素子(5,27)の上方にある第2位置(12c)とを通過するように形成されている。このような配線(11,33)の構造により,配線(11,33)に流される電流は,磁気抵抗素子(5,27)の近傍において,基板(1,21)の主面(1a,21a)に水平な方向に流れる水平電流成分と該主面(1a,21a)に垂直な方向に流れる垂直電流成分とを有する。該水平電流成分と該垂直電流成分とが発生する磁場は,磁気抵抗素子(5,27)において方向が一致するために足し合わされ,大きな磁場が磁気抵抗素子(5,27)に印加される。これにより,より少ない書き込み電流でデータの書き込みを行うことが可能になる。
【0015】
配線(11,33)によって発生される磁場の向きは、自発磁化の方向に実質的に一致することが好適である。
【0016】
配線(11,33)は、前記磁気抵抗素子(5,27)よりも前記基板(1,21)に近い第3位置(12e)を通過するように形成され,第1位置(12a)と第3位置(12e)とは、基板(1,21)の主面(1a,21a)に垂直な方向からみて磁気抵抗素子(5,27)をはさむように位置することが好適である。このような配線(11,33)の配置は,垂直電流成分を増大させ,一層に少ない書き込み電流でデータの書き込みを行うことが可能になる。
【0017】
当該磁気ランダムアクセスメモリは,更に、基板(1)を被覆するように形成される第1絶縁膜(2)と、第2絶縁膜(9)とを備え、磁気抵抗素子(5)は、第1絶縁膜(2)の上に形成され、第2絶縁膜(9)は、第1絶縁膜(2)の上に形成され、且つ、磁気抵抗素子(5)の側面に接合して配線(11)と磁気抵抗素子(5)とを絶縁することが好適である。第2絶縁膜(9)が形成されていることにより,配線(11)と磁気抵抗素子(5)との間の絶縁が確保される。
【0018】
第1絶縁膜(4)は,配線形成面(4a,4b)と,磁気抵抗素子形成面(4c)とを有し,磁気抵抗素子形成面(4c)は,配線形成面(4a,4b)よりも基板(1,21)から離れており,磁気抵抗素子(5,27)は,前記磁気抵抗素子形成面(4c)の上に形成され,配線(11,33)の一部は,前記配線形成面(4a,4b)の上に形成されていることが好適である。これにより,配線(11,33)が,磁気抵抗素子(5,27)よりも基板(1,21)に近い第1位置(12a)と磁気抵抗素子(5,27)の上方にある第2位置(12c)とを通過する構造が実現される。
【0019】
配線(11)は,配線形成面(4a)に沿って,第1位置(12a)を通過するように延設される第1配線部分(11a)と,第2絶縁膜(9)の側面に沿って,基板(1)の主面(1a)に実質的に垂直に延設される第2配線部分(11b)と,第2絶縁膜(9,31)の上面に沿って,第2位置(12c)を通過するように延設される第3配線部分(11c)を含むことが好適である。第2配線部分(11b)が基板(1)の主面(1a)に実質的に垂直に延設されることにより,第2配線部分(11b)は磁気抵抗素子(5)に近接される。これにより,磁気抵抗素子(5)に印加される磁場は増大され,より小さな書き込み電流でデータを書き込むことが可能になる。
【0020】
このような構造は、垂直に延設される第2配線部分(11b)の長さが,第3配線部分(11c)の長さよりも長い程度に微細化されたMRAMに特に好適である。高度に微細化されたMRAMでは、第2配線部分(11b)の長さが,第3配線部分(11c)の長さよりも長いことにより、書き込み電流が実効的に抑制可能である。
【0021】
第2絶縁膜(9,31)の側面が,前記基板(1)の主面(1a)に対して斜めにされ,配線(11)は,配線形成面(4a)に沿って,第1位置(12a)を通過するように延設される第1配線部分(11a)と,第2絶縁膜(9)の側面に沿って,基板(1)の前記主面(1a)に対して斜めに延設される第2配線部分(11b)と,第2絶縁膜(9)の上面に沿って,第2位置(12c)を通過するように延設される第3配線部分(11c)とを含むことが好適である。
【0022】
当該磁気ランダムアクセスメモリが,更に,第1方向(y軸方向)と概ね垂直な第2方向(x軸方向)に延設される他の配線(33)を備えている場合,該他の配線(33)は,磁気抵抗素子(5,27)と基板(1,21)との間を通過する第4配線部分(24c)と,第4配線部分(24c)よりも基板(1,21)から離れて位置する第5配線部分(24a,24e)と,第4配線部分(24c)と第5配線部分(24a,24e)との間に介設され,基板(1,21)の主面(1a,21a)に垂直な成分を有する方向に延設される第6配線部分(24b,24d)とを備えていることが好適である。このような他の配線(33)の構造により,該他の配線(33)に流される電流は,磁気抵抗素子(27)の近傍において,基板(21)の主面(21a)に水平な方向に流れる水平電流成分と該主面(21a)に垂直な方向に流れる垂直電流成分とを有する。該水平電流成分と該垂直電流成分とが発生する磁場は,磁気抵抗素子(27)において方向が一致するために足し合わされ,大きな磁場が磁気抵抗素子(27)に印加される。これにより,より少ない書き込み電流でデータの書き込みを行うことが可能になる。
【0023】
強磁性層(8)が第1方向(y軸方向)に実質的に平行で,且つ,基板(1)に実質的に垂直な対称面(8f)に対して鏡面対称である場合、配線(11)の中心線は,積極的に、強磁性層(8)の前記対称面(8f)の上に位置しないように配置されているとが好適である。このような構造は,一層に少ない書き込み電流でデータの書き込みを行うことを可能にする。
【0024】
このとき配線(11)は,基板(1)の主面(1a)に垂直な方向からみたとき,強磁性層(8)の対称面(8f)に垂直な第2方向(x軸方向)における強磁性層(8)の端から第2方向(x軸方向)にはみ出して強磁性層(8)に重ならない部分を有していることが好適である。
【0025】
更に,配線(11)の第2方向(x軸方向)における幅(W)は,前記強磁性層(8)の第2方向(x軸方向)における長さ(L)よりも狭いことが好適である。
【0026】
本発明による磁気ランダムアクセスメモリは,基板(1,21)と、基板(1,21)の上面側に形成され、第1方向(x軸方向)に平行又は反平行に反転可能な自発磁化を有し,且つ,前記自発磁化の方向に応じて抵抗が異なる磁気抵抗素子(5,27)と、第1方向(x軸方向)と実質的に垂直な第2方向(y軸方向)に延設され,磁気抵抗素子(5,27)に印加される磁場を発生する電流を流すための配線(11,33)とを備え、配線(11,33)は、基板(1,21)の上面側から見て磁気抵抗素子(5,27)と重ならない第1位置(12a)と,磁気抵抗素子(5,27)の上方にある第2位置(12c)とを通過するように形成されている。第1位置(12a)は,前記第2位置(12c)よりも基板(1,21)から近い。配線(11,33)は,自発磁化と平行又は反平行な方向の磁場を磁気抵抗素子(5,27)に印加する。このような構造は,自発磁化と平行又は反平行な方向の磁場を大きくし,データの書き込みのために,第2方向(y軸方向)に延設される配線(11,33)に流す必要がある書き込み電流の大きさを低減する。
【0027】
本発明による磁気ランダムアクセスメモリは,基板(1)と,基板(1)の上方に形成され、反転可能な自発磁化を有し,且つ,前記自発磁化の方向に応じて抵抗が異なる磁気抵抗素子(5)と、磁気抵抗素子(5)に印加される磁場を発生する電流を流すための配線(11)とを備えている。配線(11)に流される電流は,基板(1,21)の主面(1a,21a)に平行な方向に流れる平行電流成分と,基板(1,21)の主面(1a,21a)に垂直な方向に流れる垂直電流成分とを有している。磁気抵抗素子(5,27)に印加される磁場の強度の半分以上は,前記垂直電流成分の寄与による。このような磁気ランダムアクセスメモリは,配線(11)に流される電流を有効に利用し,一層に少ない書き込み電流でデータの書き込みを行うことを可能にする。
【0028】
本発明による磁気ランダムアクセスメモリは、基板(1)と、基板(1)を被覆するように形成される第1絶縁膜(4)と、第1絶縁膜(4)の上に形成され,反転可能な自発磁化を有する強磁性層(8)を含み,且つ,前記自発磁化の方向に応じて抵抗が変化する磁気抵抗素子(5)と、基板(1)の主面(1a)に垂直な方向からみたときに磁気抵抗素子(5)と重ならない第1位置(12a)と磁気抵抗素子(5)の上方にある第2位置(12c)とを通過するように形成され,且つ,磁気抵抗素子(5)に印加される磁場を発生する電流を流すための配線(11)と,第1絶縁膜(4)の上に形成され、且つ、磁気抵抗素子(5)の側面に接合して配線(11)と磁気抵抗素子(5)とを絶縁する第2絶縁膜(9)とを備えている。このような配線(11)の構造により,配線(11)に流される電流は,磁気抵抗素子(5)の近傍において,基板(1)の主面(1a)に水平な方向に流れる水平電流成分と該主面(1a)に垂直な方向に流れる垂直電流成分とを有する。該水平電流成分と該垂直電流成分とが発生する磁場は,磁気抵抗素子(5)において方向が一致するために足し合わされ,大きな磁場が磁気抵抗素子(5)に印加される。これにより,より少ない書き込み電流でデータの書き込みを行うことが可能になる。更に、第2絶縁膜(9)が設けられていることにより、配線(11)と磁気抵抗素子(5)との絶縁が確実化される。このような構造は、配線(11)と磁気抵抗素子(5)との距離を小さくし、書き込み電流を一層に低減することにすることに適している。
【0029】
本発明による磁気ランダムアクセスメモリ製造方法は,
基板(1)を被覆する第1層間絶縁膜(4)を形成する工程と,
第1層間絶縁膜(4)の上に,反転可能な自発磁化を有する強磁性層(8)を含み,前記自発磁化の方向に応じて抵抗が変化する磁気抵抗素子(5)を形成する工程と,
磁気抵抗素子(5,27)を第2層間絶縁膜(9)によって被覆する工程と,
第2層間絶縁膜(9)のうちの磁気抵抗素子(5)にオーバーラップしない部分をエッチングする工程と,
第2層間絶縁膜(9)の上面および側面に沿って磁気抵抗素子(5)に磁場を印加する配線(11)を形成する工程とを備えている。第2層間絶縁膜(9)のうち,磁気抵抗素子(5,27)にオーバーラップしない部分がエッチングされることにより,配線(11)のうちの基板(1)に垂直に延伸する部分が長くなり,磁気抵抗素子(5)に印加される磁場を強化する構造が実現される。
【0030】
第2層間絶縁膜(9)のうちの磁気抵抗素子(5)にオーバーラップしない部分をエッチングする工程により,第1層間絶縁膜(4)の一部は露出され,配線(11,33)は,第1層間絶縁膜(4)のうち露出された露出部分に接するように形成されることが好適である。
【0031】
当該磁気ランダムアクセスメモリ製造方法は,更に,第1層間絶縁膜(4)の前記露出部分をエッチングする工程を含むことが好適である。第1層間絶縁膜(4)がエッチングされることにより,配線(11)のうちの基板(1)に垂直に延伸する部分が一層に長くなり,磁気抵抗素子(5)に印加される磁場を一層に強化する構造が実現される。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しながら、本発明によるMRAMの実施の一形態を説明する。
【0033】
(実施の第1形態)
本発明によるMRAMの実施の第1形態では,図1に示されているように,基板1の主面1aに層間絶縁膜2が形成されている。層間絶縁膜2の上には,ワード線3が形成されている。図2に示されているように,ワード線3は,基板1の主面1aに実質的に平行なx軸方向に延設されている。
【0034】
図1に示されているように,層間絶縁膜2及びワード線3は,層間絶縁膜4で被覆されている。層間絶縁膜4は,配線形成面4a,4bと,磁気抵抗素子形成面4cとを有している。配線形成面4a,4bと磁気抵抗素子形成面4cとは,基板1の主面1aに実質的に平行である。磁気抵抗素子形成面4cは,配線形成面4a,4bよりも基板1の主面1aから離れている。ワード線3は,磁気抵抗素子形成面4cと基板1の主面1aとの間に位置する。
【0035】
層間絶縁膜4の磁気抵抗素子形成面4cの上には,磁気抵抗素子5が形成されている。磁気抵抗素子5は,下部強磁性層6と,トンネル絶縁層7と,上部強磁性層8とを含む。下部強磁性層6とトンネル絶縁層7と上部強磁性層8とは,磁気トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction)を形成する。図2に示されているように,上部強磁性層8は,基板1の主面1aに垂直な方向からみたとき,実質的に,x軸方向に長軸を有する楕円形である。下部強磁性層6は,x軸方向に延伸し,図示されない位置に形成されたコンタクトを介してワード線3に接続されている。
【0036】
図3は,磁気抵抗素子5の断面構造を示している。磁気抵抗素子5の下部強磁性層6は,順次に積層された,第1タンタル層6a,アルミ層6b,第2タンタル層6c,初期強磁性層6d,反強磁性層6e,及び固定強磁性層6fを含む。第1タンタル層6a及び第2タンタル層6cは,タンタルで形成されている。アルミ層6bは,アルミニウムで形成されている。初期強磁性層6dは,パーマロイで形成されている。反強磁性層6eは,Ir−Mnで形成されている。固定強磁性層6fは,Co−Feで形成されている。固定強磁性層6fは,自発磁化を有しており,該自発磁化の向きは,反強磁性層6eから受ける相互作用により固定される。
【0037】
トンネル絶縁層7は,下部強磁性層6の固定強磁性層6fの上に形成されている。トンネル絶縁層7は,厚さ方向(z軸方向)にトンネル電流が流れる程度に薄く,トンネル絶縁層7の厚さは,典型的には,1〜3nmである。トンネル絶縁層7としては,プラズマ酸化法によって作成されたアルミナ(Al2O3)膜が使用される。
【0038】
トンネル絶縁層7の上に上部強磁性層8が形成されている。上部強磁性層8は,自由強磁性層8aと,自由強磁性層8aの上に形成されたタンタル層8bとを含む。自由強磁性層8aは,図2に示されているように,+x方向又は−x方向に反転自在な自発磁化8cを有している。当該磁気ランダムアクセスメモリでは,自由強磁性層8aの自発磁化8cの方向としてデータが記憶される。図3を参照して,トンネル絶縁層7の厚さ方向の抵抗は,自由強磁性層8aの自発磁化8cの方向に応じて変化する。該抵抗の変化を検知することにより,当該磁気ランダムアクセスメモリに記憶されているデータの判別が可能である。自由強磁性層8aは,Ni−Feで形成され,タンタル層8bは,タンタルで形成されている。
【0039】
層間絶縁膜4の磁気抵抗素子形成面4cと磁気抵抗素子5とは,層間絶縁膜9によって被覆されている。層間絶縁膜9は,磁気抵抗素子5の側面に接合する。層間絶縁膜9を貫通して上部強磁性層8に到達するように,キャップ層10が形成されている。層間絶縁膜4の配線形成面4a,4bは,層間絶縁膜9によっては被覆されていない。
【0040】
ビット線11が,磁気抵抗素子5の上方を通過して,y軸方向に延伸するように設けられている。y軸方向とは,基板1の主面1aに実質的に平行で,且つ,x軸方向に実質的に垂直な方向である。ビット線11は,層間絶縁膜9により,磁気抵抗素子5の下部強磁性層6から絶縁されている。ビット線11は,キャップ層10を介して磁気抵抗素子5の上部強磁性層8に電気的に接続されている。
【0041】
データの書き込みが行われる場合,ワード線3とビット線11とに書き込み電流が流される。ワード線3に流される書き込み電流は,磁気抵抗素子5の自由強磁性層8aが有する自発磁化8cと垂直な方向に磁場を発生する。自発磁化8cと垂直な方向に磁場が印加されると,自由強磁性層8aの抗磁場は小さくなり,自由強磁性層8aの自発磁化8cの反転が容易化される。この状態でビット線11に書き込み電流が流されると,該書き込み電流は,磁気抵抗素子5の自由強磁性層8aが有する自発磁化8cと平行(又は反平行)の方向に磁場を発生し,所望の方向に自発磁化8cを反転する。
【0042】
ビット線11に流される書き込み電流の低減のために,ビット線11は,下記構造を有するように形成されている。ビット線11は,
(1)層間絶縁膜4の上に形成され,y軸方向に延伸して第1位置12aに到達する水平配線部分11aと,
(2)第1位置12aから層間絶縁膜9の側面に沿って基板1の主面1aに実質的に垂直な方向(z軸方向)に延伸し,第2位置12bに到達する垂直配線部分11bと,
(3)第2位置12bから磁気抵抗素子5の上方にある第3位置12cを通過してy軸方向に延伸し,第4位置12dに到達する水平配線部分11cと,
(4)第4位置12dからz軸方向に延伸し,第5位置12eに到達する垂直配線部分11dと,
(5)層間絶縁膜4の上に形成され,第5位置12eからy軸方向に延伸する水平配線部分11e
とを含んで構成されている。第1位置12a及び第5位置12eは,磁気抵抗素子5よりも基板1の主面1aに近く,且つ,基板1の上方からみて磁気抵抗素子5をはさむように位置している。
【0043】
このような構造を有するビット線11に書き込み電流が流されると,図2に示されているように,z軸方向に延伸する垂直配線部分11bにより磁場13aが発生され,y軸方向に延伸する水平配線部分11cにより磁場13bが発生され,z軸方向に延伸する垂直配線部分11dにより磁場13cが発生される。磁場13a〜13cは,磁気抵抗素子5において方向が一致するため足し合わされ,大きな磁場が磁気抵抗素子5に印加される。従来のMRAMでは,y軸方向に延伸する水平配線部分11cにより発生される磁場13bに相当する分しかデータの書き込みに利用されない。上述のビット線11の構造は,書き込み電流を有効に利用し,大きな磁場を磁気抵抗素子5に印加することを可能にする。従って,より少ない書き込み電流でデータの書き込みを行うことが可能になる。
【0044】
図1を参照して,ビット線11のうちの垂直配線部分11bと垂直配線部分11dとが,基板1の主面1aに垂直な方向(z軸方向)に延伸することは,書き込み電流をより有効に利用できる点で好適である。垂直配線部分11bと垂直配線部分11dとが,z軸方向に延伸することにより,垂直配線部分11bと垂直配線部分11dとを磁気抵抗素子5に近づけることができる。垂直配線部分11bと垂直配線部分11dとが磁気抵抗素子5に接近することにより,磁気抵抗素子5により大きな磁場が印加され,書き込み電流の一層の低減が可能になる。
【0045】
このような構造は微細化されたMRAMに有効であり,特に,メモリセルの面積が小さくされ,水平配線部分11cの長さ(即ち,層間絶縁膜9の上面のy軸方向の2端の距離)が,垂直配線部分11b,11dの長さ(即ち,層間絶縁膜9の上面と層間絶縁膜4の配線形成面4aとの距離)よりも小さくなる程度にまで微細化されたMRAMに有効である。かかる程度まで微細化されたMRAMでは,磁気抵抗素子5に印加される磁場のうち,垂直配線部分11b,11dが寄与する部分が大きくなり,書き込み電流の実効的な低減が可能である。
【0046】
ビット線11が通過する第1位置12aと第5位置12eとが,磁気抵抗素子5よりも基板1の近くに位置することは,一層に少ない書き込み電流でデータの書き込みを行うことが可能になる点で好適である。第1位置12aと第5位置12eとが,磁気抵抗素子5よりも基板1の近くに位置することにより,書き込み電流の,基板1の主面1aに垂直に流れる成分が増大する。これにより,書き込み電流が一層に有効に利用され,少ない書き込み電流でデータの書き込みを行うことが可能になる。
【0047】
第1位置12aと第5位置12eとが基板1に近いほど,ビット線11に流される書き込み電流の基板1の主面1aに垂直な方向に流れる垂直電流成分が大きくなる。第1位置12aと第5位置12eとは,磁気抵抗素子5に印加される磁場の強度の半分以上が該垂直電流成分の寄与となる程度に,基板1に近付けられることが好適である。このような構造は,書き込み電流の一層に有効な利用を可能にし,これにより少ない書き込み電流でデータの書き込みを行うことが可能にする。
【0048】
図4から図9は,本発明の実施の第1形態のMRAMの製造方法を示す。当該MRAMの製造方法は,図4に示されているように,基板1の上方に層間絶縁膜2を形成する工程で開始される。層間絶縁膜2の上には,ワード線3が形成される。続いて,図5に示されているように,ワード線3の上に層間絶縁膜4が成膜された後,層間絶縁膜4の表面がCMP(Chemical Mechanical Polishing)によって平坦化される。
【0049】
層間絶縁膜4の平坦化の後,図6に示されているように,層間絶縁膜4の上に磁気抵抗素子5が形成される。磁気抵抗素子5の形成は,当業者にとって周知の方法で行われ,その詳細は説明されない。続いて,図7に示されているように,層間絶縁膜4と磁気抵抗素子5との上に層間絶縁膜9が成膜された後,層間絶縁膜9の表面がCMPによって平坦化される。
【0050】
続いて,図8に示されているように,層間絶縁膜9を貫通して磁気抵抗素子5に到達するコンタクトホールが形成された後,該コンタクトホールにキャップ膜10が形成される。
【0051】
キャップ層10の形成の後,図9に示されているように,層間絶縁膜9と層間絶縁膜4とがエッチングされる。層間絶縁膜4のエッチングは,層間絶縁膜4の途中で止められ,これにより,層間絶縁膜4には,配線形成面4a,4bと,配線形成面4a,4bよりも基板1の主面1aから離れた磁気抵抗素子形成面4cとが形成される。層間絶縁膜9と層間絶縁膜4とがエッチングされることにより,ビット線11のうちの基板1の主面1aに垂直に延伸する部分がより長くなり,磁気抵抗素子5に印加される磁場を強化する構造が実現される。続いて,配線形成面4a,4b,並びに層間絶縁膜9の側面及び上面に沿ってビット線11が形成され,図1に示されたMRAMの形成が完了する。
【0052】
以上に説明されているように,実施の第1形態のMRAMでは,上述されたビット線11の構造により,磁気抵抗素子5の近傍において,主面1aに水平な方向に流れる水平電流成分と基板1の主面1aに垂直な方向に流れる垂直電流成分とが生まれる。該水平電流成分と該垂直電流成分とが発生する磁場は,磁気抵抗素子5において方向が一致するために足し合わされ,大きな磁場が磁気抵抗素子5に印加される。これにより,より少ない書き込み電流でデータの書き込みを行うことが可能になる。
【0053】
なお,実施の第1形態において,図10に示されているように,層間絶縁膜9と層間絶縁膜4とのエッチングは,エッチングにより形成される側壁が斜めになるように行われることが可能である。このような構造は,ビット線11が曲る角度を緩やかにし,ビット線11の断線を効果的に防止し,更に,ビット線11のエレクトロマイグレーションに対する耐性を向上する。
【0054】
また,実施の第1形態において,図11に示されているように,y軸方向(即ち,上部強磁性層8の自発磁化と垂直な方向)に延設されるビット線11が磁気抵抗素子5の下方に形成され,x軸方向に延設されるワード線3が磁気抵抗素子5の上方に形成され,ワード線3に,基板1の主面に垂直な方向に延設される垂直配線部分3a,3bが設けられることも可能である。
【0055】
しかし,図1に示されているように,y軸方向に延設されるビット線11に,基板1の主面に垂直な方向に延設される垂直配線部分11b,11dが設けられる構成が一層に好適である。上部強磁性層8は,x軸方向(即ち,上部強磁性層8の自発磁化の方向)に長軸8eを有するように形成されるため,図11の構成では,上部強磁性層8の中心とx軸方向に延設されるワード線3の垂直配線部分3a,3bとの距離は遠くなる。従って,ワード線3に垂直配線部分3a,3bを設けても,この垂直配線部分3a,3bが発生する磁場は,上部強磁性層8の中心まで到達しにくい。これは,垂直配線部分3a,3bによる磁場の強化の効率が低いことを意味する。一方,図1の構造では,ビット線11のうちの垂直な方向に延設される垂直配線部分11b,11dと,上部強磁性層8の中心との距離は近くなり,上部強磁性層8の全体について磁場の強化の効果が現れる。従って,図1に示されているように,上部強磁性層8の自発磁化と垂直な方向に延設されるビット線11に,垂直配線部分11b,11dが設けられる構成が好適である。
【0056】
また,図12を参照して,上部強磁性層8はy軸方向に実質的に平行で,且つ,基板1の主面1aに実質的に垂直な対称面8fに対して鏡面対称であるが,ビット線11の中心線11fは,上部強磁性層8の対称面8fに対してx軸方向にオフセットして配置されることが好ましい。このようなビット線11の配置は,書き込み電流の更なる低減を可能にする。ビット線11の中心線11fが,上部強磁性層8の短軸8dに対してx軸方向にオフセットしていることによる書き込み電流の低減の効果は,以下のメカニズムに起因していると推定される。
【0057】
上部強磁性層8の自由強磁性層8aに含まれるドメインには,隣接するドメインの磁化方向を揃えようとする交換相互作用が働いている。この交換相互作用に起因して,自由強磁性層8aの自発磁化8cの反転は,自由強磁性層8aの外縁部のドメインから開始され,その後中心部のドメインに伝搬する振る舞いを示す。自由強磁性層8aの中心部のドメインは,その周囲に存在する全てのドメインから交換相互作用をうけ,その反転を妨げられる。一方,自由強磁性層8aの外縁部のドメインは,ドメインに隣接していない領域を有しているため,周囲のドメインから受ける交換相互作用が小さく,比較的に小さな磁場によって反転する。外縁部のドメインが反転すると,そのドメインに隣接するドメインの反転も容易化されて反転する。このように,ドメインの反転は外縁部から開始され,中心部に伝搬する。
【0058】
ビット線11の中心線11fを上部強磁性層8の対称面8fからオフセットさせることにより,ビット線11が発生する磁場が最大となる位置は,自由強磁性層8aの外縁部に近づき,より小さな書き込み電流で自由強磁性層8aの外縁部にあるドメインの反転を発生させることが可能になる。自由強磁性層8aの外縁部にあるドメインを反転させれば,ドメインの反転は外縁部から中心部に伝搬し,自由強磁性層8aの自発磁化8cが完全に反転する。ゆえに,ビット線11の中心線11fを上部強磁性層8の対称面8fからオフセットさせ,ビット線11の中心線11fを自由強磁性層8aの外縁部に近づけることにより,自由強磁性層8aの自発磁化8cをより少ない書き込み電流で反転することができる。
【0059】
ビット線11は,基板1の主面1aに垂直な方向からみたときに上部強磁性層8の長軸8e(即ち,楕円形である上部強磁性層8のx軸方向における2端を結ぶ線分8e)の一端からx軸方向にはみ出し,上部強磁性層8に重ならない部分を有することが好適である。このようなビット線11の配置は,一層に少ない書き込み電流で自由強磁性層8aの自発磁化8cを反転可能にする点で好適である。上部強磁性層8に対してx軸方向にはみ出すビット線11の配置は,ビット線11が発生する磁場が最大となる位置を,一層に自由強磁性層8aの外縁部に近づける。従って,自由強磁性層8aの外縁部のドメインの反転に必要な書き込み電流が小さくなり,結果として自由強磁性層8aの自発磁化8cの反転に必要な書き込み電流の大きさも小さくなる。
【0060】
x軸方向におけるビット線11の幅Wが,x軸方向における上部強磁性層8の長さL(即ち,長軸8eの長さL)よりも狭いことは,一層に少ない書き込み電流で自由強磁性層8aの自発磁化8cを反転可能にする点で好適である。この効果は,ビット線11の幅Wが狭くなると,ビット線11が発生する磁場が自由強磁性層8aの外縁部のドメインに集中することに起因する。ビット線11が発生する磁場が自由強磁性層8aの外縁部のドメインに集中することにより,自由強磁性層8aの外縁部のドメインの反転に必要な書き込み電流が小さくなる。その結果,自由強磁性層8aの自発磁化8cの反転に必要な書き込み電流の大きさも小さくなる。
【0061】
更に,実施の第1形態において,図13に示されているように,ビット線11の上面に透磁率が高い磁性体層14が形成されることが可能である。磁性体層14は,典型的には,パーマロイで形成される。このような構造は,ビット線11が発生する磁場をビット線11の方に引き付けて磁気抵抗素子5に磁場を集中し,磁気抵抗素子5に大きな磁場を印加することを可能にする。
【0062】
(実施の第2形態)
実施の第2形態では,書き込み電流の一層の低減のために,実施の第1形態のワード線3と異なる構造を有するワード線が使用される。
【0063】
実施の第2形態では,図14に示されているように,x軸方向にワード線24が設けられ,y軸方向にビット線33が設けられる。ワード線24とビット線33とが交差する位置に,磁気抵抗素子27が設けられる。
【0064】
図15は,磁気抵抗素子27を通り,且つ,xz平面に平行な断面B−B’における,実施の第2形態のMRAMの断面構造を示す。基板21の主面21aの上には,層間絶縁膜22が形成される。層間絶縁膜22の上には,凹部形成絶縁膜23が形成されている。凹部形成絶縁膜23は,その一部がエッチングされ,層間絶縁膜22に到達する開口が設けられている。
【0065】
ワード線24が,x軸方向に延伸するように形成されている。ワード線24は,凹部形成絶縁膜23の上面,及び側壁,並びに,層間絶縁膜22の上面に沿って形成されている。即ち,ワード線24は,
(1)凹部形成絶縁膜23の上に形成され,凹部形成絶縁膜23の上面に沿ってx軸方向に延伸する水平配線部分24aと,
(2)水平配線部分24aに接続し,配線部分24aに接続する位置から凹部形成絶縁膜23の側壁に沿って基板1の主面1aに実質的に垂直な方向(z軸方向)に延伸し,層間絶縁膜22に到達する垂直配線部分24bと,
(3)垂直配線部分24bに接続し,層間絶縁膜22の上面に沿ってx軸方向に延伸する配線部分水平24cと,
(4)水平配線部分24cに接続し,凹部形成絶縁膜23の側壁に沿って基板1の主面1aに実質的に垂直な方向(z軸方向)に延伸する垂直配線部分24dと,
(5)垂直配線部分24dに接続し,凹部形成絶縁膜23の上面に沿ってx軸方向に延伸する水平配線部分24e
とを含んで構成されている。
【0066】
このようなワード線24の構造は,書き込み電流をより有効に利用して大きな磁場を磁気抵抗素子27に印加し,より少ない書き込み電流でデータの書き込みを行うことを可能にする。ワード線24に書き込み電流が流されると,垂直配線部分24b,水平配線部分24c,及び垂直配線部分24dは,それぞれ磁場を発生する。垂直配線部分24b,水平配線部分24c,及び垂直配線部分24dが発生する磁場の方向は磁気抵抗素子27において実質的に一致する。従って,垂直配線部分24b,水平配線部分24c,及び垂直配線部分24dが発生する磁場は足し合わされ,大きな磁場が磁気抵抗素子27に印加される。このため,書き込み電流がより有効に利用され,大きな磁場が磁気抵抗素子27に印加される。従って,少ない書き込み電流でデータの書き込みを行うことが可能である。
【0067】
ワード線24の水平配線部分24cを被覆するように,層間絶縁膜25が形成されている。図14に図示された断面C−C’(磁気抵抗素子27を通り,且つ,yz平面に平行な断面)における断面構造を示している図16を参照して,層間絶縁膜25は,配線形成面25a,25bと,磁気抵抗素子形成面25cとを有している。配線形成面25a,25bと磁気抵抗素子形成面25cとは,基板21の主面21aに実質的に平行である。磁気抵抗素子形成面25cは,配線形成面25a,25bよりも基板21の主面21aから離れている。ワード線24の水平配線部分24cは,磁気抵抗素子形成面24cと基板21の主面21aとの間に位置する。
【0068】
層間絶縁膜25には,磁気抵抗素子形成面25cからワード線24に到達する導電性のコンタクト26が形成されている。磁気抵抗素子形成面25cの上には,磁気抵抗素子27が形成されている。磁気抵抗素子27は,コンタクト26を介してワード線24に電気的に接続されている。磁気抵抗素子27は,下部強磁性層28とトンネル絶縁層29と上部強磁性層30とを含む。下部強磁性層28,トンネル絶縁層29,及び上部強磁性層30の断面構造は,実施の第1形態の磁気抵抗素子5の下部強磁性層6,トンネル絶縁層7,及び上部強磁性層8の断面構造と同一である。下部強磁性層28は,方向が固定された自発磁化8cを有する固定強磁性層を含み,上部強磁性層28は,反転自在な自発磁化8cを有する自由強磁性層を含んでいる。図14に示されているように,基板21の上面からみたとき磁気抵抗素子27は,実質的にx軸方向に長い楕円形を有する。
【0069】
図16に示されているように,層間絶縁膜25の磁気抵抗素子形成面25cと磁気抵抗素子27とは,層間絶縁膜31によって被覆されている。層間絶縁膜31は,磁気抵抗素子27の側面に接合する。層間絶縁膜31を貫通して上部強磁性層30に到達するように,キャップ層32が形成されている。層間絶縁膜25の配線形成面25a,25bは,層間絶縁膜31によっては被覆されていない。
【0070】
ビット線33が,磁気抵抗素子27の上方を通過して,y軸方向に延伸するように設けられている。ビット線33は,層間絶縁膜31により,磁気抵抗素子27の下部強磁性層28から絶縁されている。ビット線33は,キャップ層32を介して磁気抵抗素子27の上部強磁性層30に電気的に接続されている。
【0071】
ビット線33の構造は,実施の第1形態のビット線11の構造と同様である。ビット線33は,層間絶縁膜25の配線形成面25a,25b,及び層間絶縁膜31の側壁及び上面に沿って形成されている。即ち,ビット線33は,
(1)層間絶縁膜25の配線形成面25aの上に形成され,配線形成面25aに沿ってy軸方向に延伸する水平配線部分33aと,
(2)水平配線部分33aに接続し,水平配線部分33aに接続する位置から層間絶縁膜31の側壁に沿って基板1の主面1aに実質的に垂直な方向(z軸方向)に延伸する垂直配線部分33bと,
(3)垂直配線部分33bに接続し,層間絶縁膜31の上面に沿ってy軸方向に延伸する水平配線部分33cと,
(4)水平配線部分33cに接続し,層間絶縁膜31の側壁に沿って基板1の主面1aに実質的に垂直な方向(z軸方向)に延伸する垂直配線部分33dと,
(5)垂直配線部分33dに接続し,層間絶縁膜25の配線形成面25bの上面に沿ってy軸方向に延伸する水平配線部分33e
とを含んで構成されている。
【0072】
このようなビット線33の構造は,実施の第1形態のビット線11と同様に,書き込み電流をより有効に利用し,大きな磁場を磁気抵抗素子27に印加することを可能にする。これにより,少ない書き込み電流でデータの書き込みを行うことができる。
【0073】
以上に説明されているように,実施の第2形態のMRAMでは,上述されたビット線33の構造に起因して,ビット線33に流される書き込み電流は,基板21の主面21aに水平な方向に流れる水平電流成分と主面21aに垂直な方向に流れる垂直電流成分とを有している。該水平電流成分と該垂直電流成分とが発生する磁場は,磁気抵抗素子27において方向が一致するために足し合わされ,大きな磁場が磁気抵抗素子27に印加される。これにより,データの書き込みを行うためにビット線33に流すことが必要な書き込み電流が小さくなる。
【0074】
更に,上述されたワード線24の構造に起因して,ワード線24に流される書き込み電流は,基板21の主面21aに水平な方向に流れる水平電流成分と基板21の主面21aに垂直な方向に流れる垂直電流成分とを磁気抵抗素子27の近傍において有している。該水平電流成分と該垂直電流成分とが発生する磁場は,磁気抵抗素子27において方向が一致するために足し合わされ,大きな磁場が磁気抵抗素子27に印加される。これにより,データの書き込みを行うためにワード線24に流すことが必要な書き込み電流が小さくなる。
【0075】
【発明の効果】
本発明により、MRAMのメモリセルへのデータの書き込みを,より小さな書き込み電流で行うことを可能にする技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明による磁気ランダムアクセスメモリの実施の第1形態を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明による磁気ランダムアクセスメモリの実施の第1形態を示す上面図である。
【図3】図3は、磁気抵抗素子5の構造を示す断面図である。
【図4】図4は、実施の第1形態の磁気ランダムアクセスメモリの製造方法を示す断面図である。
【図5】図5は、実施の第1形態の磁気ランダムアクセスメモリの製造方法を示す断面図である。
【図6】図6は、実施の第1形態の磁気ランダムアクセスメモリの製造方法を示す断面図である。
【図7】図7は、実施の第1形態の磁気ランダムアクセスメモリの製造方法を示す断面図である。
【図8】図8は、実施の第1形態の磁気ランダムアクセスメモリの製造方法を示す断面図である。
【図9】図9は、実施の第1形態の磁気ランダムアクセスメモリの製造方法を示す断面図である。
【図10】図10は、本発明による磁気ランダムアクセスメモリの実施の第1形態の変形例である。
【図11】図11は、本発明による磁気ランダムアクセスメモリの実施の第1形態の他の変形例である。
【図12】図12は,本発明による磁気ランダムアクセスメモリの実施の第1形態の更に他の変形例である。
【図13】図13は,本発明による磁気ランダムアクセスメモリの実施の第1形態の更に他の変形例である。
【図14】図14は,本発明による磁気ランダムアクセスメモリの実施の第2形態を示す平面図である。
【図15】図15は,本発明による磁気ランダムアクセスメモリの実施の第2形態を示す断面図であり,図14のB−B’断面の断面図である。
【図16】図16は,本発明による磁気ランダムアクセスメモリの実施の第2形態を示す断面図であり,図14のC−C’断面の断面図である。
【図17】図17は,従来の磁気ランダムアクセスメモリを示す。
【符号の説明】
1:基板
2:層間絶縁膜
3:ワード線
4:層間絶縁膜
4a:配線形成面
4b:配線形成面
4c:磁気抵抗素子形成面
5:磁気抵抗素子
6:下部強磁性層
6a:第1タンタル層
6b:アルミ層
6c:第2タンタル層
6d:初期強磁性層
6e:反強磁性層
6f:固定強磁性層
7:トンネル絶縁層
8:上部強磁性層
8a:自由強磁性層
8b:タンタル層
9:層間絶縁膜
10:キャップ層
11:ビット線
12a:第1位置
12b:第2位置
12c:第3位置
12d:第4位置
12e:第5位置
13a〜13c:磁場
14:磁性体層
21:基板
22:層間絶縁膜
23:凹部形成用絶縁膜
24:ワード線
25:層間絶縁膜
26:コンタクト
27:磁気抵抗素子
28:下部強磁性層
29:トンネル絶縁層
30:上部強磁性層
31:層間絶縁膜
32:キャップ層
33:ビット線
Claims (12)
- 基板と、
前記基板を被覆するように形成される第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜の上に形成され、反転可能な自発磁化を有する強磁性層を含み、且つ、前記自発磁化の方向に応じて抵抗が変化する磁気抵抗素子と、
第1方向に延設され、前記磁気抵抗素子に印加される磁場を発生する電流を流すための配線
と、を備え、
前記第1絶縁膜は、配線形成面と、磁気抵抗素子形成面と、を有し、
前記磁気抵抗素子形成面は、前記配線形成面よりも前記基板から離れており、
前記磁気抵抗素子は、前記磁気抵抗素子形成面の上に形成され、
前記配線の一部は、前記配線形成面の上に形成されており、
前記配線は、前記磁気抵抗素子よりも前記基板に近く、且つ、前記基板の主面に垂直な方向からみたときに前記磁気抵抗素子と重ならない第1位置と、前記磁気抵抗素子の上方にある第2位置と、を通過するように形成されている
磁気ランダムアクセスメモリ。 - 請求項1に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、
更に、
第2絶縁膜
と、を備え、
前記磁気抵抗素子は、前記第1絶縁膜の上に形成され、
前記第2絶縁膜は、前記第1絶縁膜の上に形成され、且つ、前記磁気抵抗素子の側面に接合して前記配線と前記磁気抵抗素子と、を絶縁する
磁気ランダムアクセスメモリ。 - 請求項2に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、
前記配線は、
前記配線形成面に沿って、第1位置を通過するように延設される第1配線部分と、
前記第2絶縁膜の側面に沿って、前記基板の前記主面に実質的に垂直に延設される第2配線部分と、
前記第2絶縁膜の上面に沿って、第2位置を通過するように延設されている第3配線部分と、を含む
磁気ランダムアクセスメモリ。 - 請求項3に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、
前記配線は、前記磁気抵抗素子よりも前記基板に近い第3位置を通過するように形成され、
前記第1位置と前記第3位置とは、前記基板の前記主面に垂直な方向からみたときに前記磁気抵抗素子をはさむように位置し、且つ、前記基板から同じ高さにある
磁気ランダムアクセスメモリ。 - 請求項3に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて,
前記第2配線部分の長さは、前記第3配線部分の長さよりも長い
磁気ランダムアクセスメモリ。 - 請求項1から5のいずれか一に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、
前記磁場の向きは、前記自発磁化の方向に実質的に一致する
磁気ランダムアクセスメモリ。 - 請求項2に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、
前記第2絶縁膜の側面は、前記基板の主面に対して斜めにされ、
前記配線は、
前記配線形成面に沿って、第1位置を通過するように延設される第1配線部分と、
前記第2絶縁膜の側面に沿って、前記主面に対して斜めに延設される第2配線部分と、
前記第2絶縁膜の上面に沿って、第2位置を通過するように延設されている第3配線部分
と、を含む
磁気ランダムアクセスメモリ。 - 請求項1から7のいずれか一に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、
前記強磁性層は、前記第1方向に実質的に平行で、且つ、前記基板に実質的に垂直な対称面に対して鏡面対称であり、
前記配線の中心線は、前記対称面の上に位置しないように配置されている
磁気ランダムアクセスメモリ。 - 請求項8に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、
前記配線は,前記基板に垂直な方向からみたとき前記対称面に垂直な第2方向における前記強磁性層の端から前記第2方向にはみ出して前記強磁性層に重ならない部分を有している
磁気ランダムアクセスメモリ。 - 請求項8に記載の磁気ランダムアクセスメモリにおいて、
前記対称面に垂直な第2方向における前記配線の幅は,前記強磁性層の前記第2方向における長さよりも狭い
磁気ランダムアクセスメモリ。 - 基板と、
前記基板を被覆するように形成される第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜の上に形成され、第1方向に平行又は反平行に反転可能な自発磁化を有し、且つ、前記自発磁化の方向に応じて抵抗が異なる磁気抵抗素子と、
前記第1方向と実質的に垂直な第2方向に延設され、前記磁気抵抗素子に印加される磁場を発生する電流を流すための配線
と、を備え、
前記第1絶縁膜は、配線形成面と、磁気抵抗素子形成面と、を有し、
前記磁気抵抗素子形成面は、前記配線形成面よりも前記基板から離れており、
前記磁気抵抗素子は、前記磁気抵抗素子形成面の上に形成され、
前記配線の一部は、前記配線形成面の上に形成されており、
前記配線は、前記基板の上面側から見て前記磁気抵抗素子と重ならない第1位置と、前記磁気抵抗素子の上方にある第2位置とを通過するように形成され、
前記第1位置は、前記第2位置よりも前記基板から近い
磁気ランダムアクセスメモリ。 - 基板を被覆する第1層間絶縁膜を形成する工程と、
前記第1層間絶縁膜の上に、反転可能な自発磁化を有する強磁性層を含み、且つ、前記自発磁化の方向に応じて抵抗が変化する磁気抵抗素子を形成する工程と、
前記磁気抵抗素子を第2層間絶縁膜によって被覆する工程と、
前記第2層間絶縁膜のうちの前記磁気抵抗素子にオーバーラップしない部分をエッチングして前記第1層間絶縁膜の一部を露出させる工程と、
前記第1層間絶縁膜の前記露出部分をエッチングする工程と、
前記第2層間絶縁膜の上面、側面及び前記エッチング工程によりエッチングされた前記第1層間絶縁膜の露出部分に接するように、前記磁気抵抗素子に磁場を印加する配線を形成する工程
と、を備えた
磁気ランダムアクセスメモリ製造方法。
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