JP4593725B2 - 易重合性物質の製造方法および精製塔 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、易重合性物質の製造方法およびそれに用いる精製塔に関する。さらに詳細には、易重合性物質の精製方法およびそれに用いる精製塔、蒸留塔内における易重合性物質の重合防止方法およびそれに用いる精製塔に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリル酸、メタクリル酸などの易重合性物質は、容易に重合し易いため重合防止剤の存在下において、精製されている。
【0003】
しかし、例えば易重合性物質を蒸留する際には、これらの物質が蒸留装置内の構成部材の表面に液状で滞留し、重合することが不可避的なことであり、通常、蒸留装置からの抜き出し液をストレーナーを通して重合物を分離したり、あるいは運転を中止して蒸留装置内に蓄積した重合物を人為的に除去することが行われている。
【0004】
かかる問題点を解消するための一手段として、精製装置のトレイ支持部材または充填物支持部材の水平面に液体通過口を設けて易重合性有機化合物の滞留が生じないようにすることが、特開平10−212249号公報に記載されている。
【0005】
また、図1は横型クランプを用いてトレイをサポートリングで固定する従来の方法を説明する図面である。図1において、トレイ1が横型クランプ7を用い、ワッシャ5、ナット4、ボルト6を利用してサポートリング2に固定されている。なお、サポートリング2は蒸留塔内壁3に固定されている。図2は図1で用いられた横型クランプを示す図面である。図2(a)は横型クランプ27の平面図、図2(b)は横型クランプ27の正面図、図2(c)は横型クランプ27の側面図である。図2(a)から明らかなように、横型クランプとは、クランプの水平部分の幅がボルトの軸直径に対し、1.5倍を越える幅であるものをいう。
【0006】
図3は蒸留塔の内壁に固定されたサポートリングにある従来の液体通過口について説明する図面である。図3において、これは塔の上方から見た図面であるが、蒸留塔内壁33に固定されたサポートリング32に滞留した液状物が液体通過口38を経由して落下する。
【0007】
しかし、これらの手段によれば、易重合性有機化合物が液体通過口を通過することから、滞留が少なくなり、ある程度の重合を低減できたが、必ずしも十分とはいえなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明はかかる問題点を解消することを目的とするものであり、蒸留塔を用いて易重合性物質を精製する際に、易重合性物質の重合を低減させる易重合性物質の製造方法および精製塔を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、(a)サポートリングにボルトナットを用いて直接固定されたトレイ、および/または(b)サポートリングに縦型クランプを用いて固定されたトレイを少なくとも一部に有する塔を用いて精製することを特徴とする易重合性物質の製造方法、を提供することにある。
【0011】
さらに、本発明の目的は、ボルトと、ナットと、縦型クランプと、を用いてサポートリングに固定されたトレイを備えることを特徴とする精製塔を提供することにある。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明で精製される易重合性物質とは、通常、不純物を含んでおり、かかる不純物を除去するために精製工程をほどこす際に重合し易い液体であれば特に制限されることはないが、例えば、不飽和カルボン酸および/またはそのエステル、ビニル基含有化合物、およびジオレフィン化合物を例示できる。
【0014】
不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸(以下、(メタ)アクリル酸と称する)などを挙げることができる。不飽和カルボン酸のエステルの具体例として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸の炭素数1〜8のアルキルエステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸の炭素数1〜3のヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステルなどの(メタ)アクリル酸の炭素数2〜4のジアルキルアミノエステル;(メタ)アクリル酸のグリシジルエステルなどを挙げることができる。ビニル基含有化合物の具体例として、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニルなどを挙げることができる。ジオレフィン化合物の具体例として、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどを挙げることができる。
【0015】
本発明でいう精製とは、上記易重合性物質の蒸留、放散、吸収を意味する。ここで、蒸留とは、液体混合物を各成分の蒸気圧の違いを利用して分離する操作であり、具体的には単蒸留、多段蒸留、共沸蒸留、水蒸気蒸留などを挙げることができる。放散とは、溶液に溶けている一つまたは二つ以上の成分を、その成分を含まないガスを溶液と接触させることにより追い出す操作である。また、吸収とは、ガス混合物中の一つまたは二つ以上の成分を溶媒に吸収させる操作である。
【0016】
易重合性物質の精製に用いられる塔は、(メタ)アクリル酸などの易重合性物質が精製できれば特に制限されることはないが、例えば蒸留塔が例示できる。蒸留塔の具体例としては、複数のトレイを内装した多段、例えば3段以上、好ましくは3〜100段のトレイを備える蒸留塔を挙げることができる。
【0017】
多段蒸留塔に内装されるトレイは従来用いられるものであれば制限を受けるものではないが、特に重合防止の点から無堰多孔板トレイが好ましい。また、多孔板の開口率は従来公知のものであれば制限を受けないが、特に易重合性物質の落下のし易さおよび多孔板の強度を維持する観点から10〜60%であることが好ましい。
【0018】
以下、易重合性物質としてアクリル酸を代表例とし、これを蒸留して精製する場合を例に挙げて本発明を説明する。
【0019】
アクリル酸の場合には、プロピレンなどを含む原料ガスを酸化触媒の存在下、分子状酸素含有ガスで接触気相酸化して得られる。アクリル酸を含有した反応生成ガスを吸収塔に導入し、冷却、凝縮してアクリル酸溶液としてえる。かかるアクリル酸溶液には、通常、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、アセトン、アクロレイン、フルフラール、ホルムアルデヒドなどの不純物が含まれている。得られたアクリル酸溶液からアクリル酸よりも沸点の低い軽沸点物を軽沸点物分離塔で除去した後、溶媒分離塔に導入し、ここでアクリル酸を分離し、分離した粗アクリル酸を蒸留塔に導入し、ここで精製してアクリル酸(製品)とする。
【0020】
この場合、蒸留に際しては、通常、複数のトレイを内装した多段の蒸留塔が用いられ、このトレイはトレイ支持部材により蒸留塔内に固定されている。
【0021】
上記トレイ支持部材は、通常、蒸留塔内壁にボルト締めあるいは溶接により固定されたサポートリング、このサポートリングのリングを補強するように、サポートリングの下部に蒸留塔内壁にボルト締めあるいは溶接により固定されたラグ、および必要に応じてトレイを補強するために、ラグにボルト締めあるいは溶接により固定された少なくとも一つのサポートビームにより構成されている。また、トレイを保持できる強度があれば、トレイ支持部材としてサポートリングだけを用いてトレイを支持してもよい。
【0022】
また、流体通過口をサポートリングと蒸留塔内壁との接合部に設けると、壁面を流下する流体により蒸留塔内壁での重合防止効果があることが判明した。流体通過口の個数、形状、サイズなどはサポートリングがトレイを支持するために十分な強度を確保できれば任意に選択することができる。個数については、隣接する流体通過口との間隔が10〜500mm、好ましくは50〜300mm、さらに好ましくは100〜200mmとなるように選択することができる。形状については、半円形、方形、三角形など任意に選択でき、通常、加工の容易さから、半円形または三角形が使用される。サイズは流体が速やかに流下する大きさであればよく、
(相当直径)=4×(開口部断面積)/(開口部周長さ)
で示される相当直径で例示すれば、通常、3〜50mm、好ましくは5〜30mm、さらに好ましくは8〜25mmの大きさが選ばれる。
【0023】
従来は、特開平10−212249号公報に示されるような、流体通過口をサポートリングなどのトレイ支持部材の水平面に設けることで、サポートリング上での液の滞留に起因する重合を防止する方法が採られていたが、蒸留塔壁面での重合に対する効果はなかった。
【0024】
このような流体通過口を設けたサポートリングを用いることにより、より液状物の重合を低減できる。
【0025】
また、トレイ、トレイ支持部材、塔内壁を含む部材の表面がJIS B 0601(−1994)に記載のRyが12.5以下であることが好ましく、より好ましくは3.2以下である。このような表面粗度の部材はその表面を処理することにより達成できる。
【0026】
このような表面処理方法としては、バフ研磨などの機械研磨や電解研磨が挙げられる。バフ研磨は、主として平滑面または光沢面を得る場合に用いれる研磨法であるが、固定研磨剤による粗研磨、半固体ないし遊離研磨剤による中研磨および仕上げ研磨を採用できる。バフ研磨剤は、革や布などの柔軟性材料で研磨する他、トリポリケイ石、酸化クロム、炭化ケイ素、溶融アルミナ、焼結アルミナを研磨剤として含有する油脂性、非油脂性またはスプレー溶剤などを使用することができる。
【0027】
電解研磨は、金属表面を溶解させながら平滑化する方法であり、部材の材質が鉄鋼である場合の電解研磨溶液としては、過塩素酸系、硫酸系、リン酸系、硫酸−リン酸系などを使用することができる。鉄鋼はその組成の相違のみならず、熱処理、加工の程度によりその組織の相違が大きいため、使用する部材に応じて適宜選択することができる。したがって、過塩素酸系の電解質に一般に添加される無水酢酸の量や電解温度、電流密度、電圧、電解時間などは、部材により適宜選択すればよい。なお、機械研磨を行い、さらに電解研磨を行ってもよい。
【0028】
以下、本発明を図面を用いて説明する。
【0029】
図4は蒸留塔内に設置されたトレイを支持するサポートリングの一例を説明する断面図である。図4において、トレイ41は、蒸留塔にボルト締め、溶接などの公知の方法で、蒸留塔内壁43に固着されたサポートリング42上に設置されている。かかるサポートリング42を本発明で用いることができる。
【0030】
図5はトレイをボルトナットによりサポートリングに固定した一例を示す図面である。図5(a)は部分断面図、図5(b)は図5(a)において、上方(ボルトのある方向)から見た図面、図5(c)は図5(a)において、下方(ナットのある方向)から見た図面である。図5において、トレイ51はワッシャ55を介して、ボルト締めによりサポートリング52に固定されている。サポートリング52は蒸留塔内壁53に固定されている。従来の構造と比較して、クランプが用いられていないので、精製の際に、サポートリングとトレイを固定する部分において液が滞留する箇所がほとんどなくなり、ひいては易重合性物質の重合を防止することが可能となる。このように、ここに用いる部材は液の滞留ができる限り短縮できるように、部材の周辺部上面の角を取って丸くし、さらに部材の強度が許す限りその幅を小さくすることが好ましい。
【0031】
さらに、従来の方法では、それぞれのボルト穴とボルトの隙間はナットとワッシャにより塞がれ、ボルトの周辺に液体が滞留して重合しやすかった。図5に示されるように、サポートリングおよびトレイのボルト穴をそれぞれ長穴とし、かつ、ナットおよびワッシャを固定するために十分な強度を維持できる範囲で最小にすることで、ボルトナット部分に液体通過口58を設けることができ、重合防止にも効果があることがわかった。該ボルトナット部分の液体通過口も、前記サポートリングと蒸留塔内壁の接合部に設けられた液体通過口のサイズと同様に相当径で3〜50mm、好ましくは5〜30mm、さらに好ましくは8〜25mmの大きさが望ましい。通常一つのトレイは複数の板で構成されており、これらは相互にまたはサポートリング、サポートビームなどトレイ支持部材に固定される。該固定部分に上記液体通過口を設けてもよい。
【0032】
図6は縦型クランプを用いてトレイをサポートリングに固定する一方法を説明する図面である。図6において、トレイ61が縦型クランプ69を用い、ワッシャ65、ナット64、ボルト66を利用して、蒸留塔内壁63に固定されたサポートリング62に固定されている。図7は、図6で用いられたボルト76を有する縦型クランプ79を示す図面である。図7(a)は縦型クランプ79の平面図であり、図7(b)は縦型クランプ79の正面図、図7(c)は縦型クランプ79の側面図である。図7(a)から明らかなように、本発明でいう縦型クランプ79とは、クランプ79の幅がボルト(軸)76の直径と同等なものをいう。ここでいう同等とはクランプ幅がボルト軸直径の0.5倍以上1.5倍以下であることを意味し、クランプ幅とボルト軸直径が同一またはクランプ幅がボルトボルト軸より狭いことが滞留部が少なくなるため好ましい。このような構成にすることにより、精製の際に、易重合性物質が液状態としてトレイとクランプとの隙間に存在したとしても、従来の構造と比較して、クランプの幅が狭くなっていることから、速やかに落下し、滞留時間が低減でき、ひいては易重合性物質の重合を防止することが可能である。なお、ここでいう縦型クランプは、液状物の滞留時間を短くするために幅部をボルトと同等程度に狭くしたためにクランプの強度が低下するが、クランプの胴部分を長くしてクランプ自体の強度を高めたものである。
【0033】
図8は蒸留塔の内壁と、該内壁に固定されたサポートリングの間に形成された液体通過口について説明する図面である。図8において、これは塔の上方から見た図面であるが、蒸留塔の内壁83に固定されたサポートリング82に滞留した液状物が半円形の液体通過口88を経由し、内壁83の沿って落下する。
【0034】
図9は蒸留塔の内壁と、該内壁に固定されたサポートリングの間に形成された別の液体通過口について説明する図面である。図9において、これは塔の上方から見た図面であるが、蒸留塔の内壁93に固定されたサポートリング92に滞留した液状物が三角形の液体通過口98を経由し、内壁93の沿って落下する。
【0035】
図10は蒸留塔の最下段に設けられた液飛沫衝突板の一例を示す図面である。
図10(a)は無堰多孔板(トレイ)111、112を2枚、図10(b)はディスクアンドドーナッツ式衝突板113、114を、図10(c)は欠円バッフル式衝突板115、116を設けた例を示す図面である。無堰多孔板などの液飛沫衝突板は、通常、一〜三枚または一組から構成されている。このように、蒸留塔110の最下部に衝突板を設けることにより、蒸留塔液面からの液飛沫をカットして、衝突板より上方に設けられたトレイでの重合を防止することができる。該液飛沫衝突板に無堰多孔板トレイを用いる場合は開口率が30〜70%、好ましくは35〜65%、さらに好ましくは40〜60%とする。ディスクアンドドーナッツ式衝突板および/または欠円バッフル式衝突板を用いる場合の衝突板は各板材面積に対し、0%を含む任意の開口部を有し、該材料開口部と切り欠き開口部の合計面積が、塔断面積に対し10〜90%、好ましくは20〜80%、さらに好ましくは30〜70%とする。液飛沫衝突板の蒸留塔塔壁への固定方法は公知の任意の方法を採用することができるが、図5または図6に示す固定方法が、固定部分での重合防止の観点から好ましい。
【0036】
図4〜10に示された方法および上記の内容を適宜組み合わせることにより、易重合性物質の重合をより低減することが可能となる。
【0037】
液飛沫衝突板と、上記の流体開口部を有するサポートリングおよび上記のトレイを組み合わせることにより、さらに易重合性物質を精製する際に重合を低減することが可能となる。
【0038】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0039】
実施例1
開口率23%の無堰多孔板トレイを10段設置した塔径1400mmの蒸留塔の下部に、液飛沫衝突板として開口率40%の無堰多孔板トレイを2段設置し、供給量4000kg/h、留出量2500kg/h、還流量2500kg/h、重合防止剤として還流液にハイドロキノンモノメチルエーテル1kg/h、蒸留塔塔底に酸素10kg/h、塔頂圧力6.0kPa abs、塔頂温度70℃の条件でアクリル酸の精製を行った。
【0040】
無堰多孔板トレイは図5に示されるように、塔壁に溶接されたサポートリングおよびトレイに20×40mmの長穴を開け、それぞれ50×20mmの特殊四角ワッシャおよび特殊四角ナットを長穴の長辺とワッシャ、ナットの長辺が概ね直角をなすようにしてM10(JIS)六角ボルトで固定した。該サポートリングには、塔壁との溶接線上に半径20mmの半円形の流体通過口を20個設けた。2ヶ月の連続稼働の後、装置を停止し内部を点検した結果、塔壁、トレイ上およびトレイ固定部分への重合物の付着が見られなかった。開口率40%の無堰多孔板トレイの最下段裏面に重合物に起因する汚れは見られたものの、開口部の閉塞など蒸留塔の稼働に影響を与えるような異常は見られなかった。
【0041】
実施例2
トレイをサポートリングに固定する際に、図6に示されるように、縦型クランプを用いた以外は、実施例1と同じ装置および条件でアクリル酸の精製を行った。
【0042】
2ヶ月の連続稼働の後、装置を停止し内部を点検した結果、該縦型クランプとトレイの隙間に重合物が付着し、該クランプから落下したと考えられる重合物が下方に位置するトレイの外周部に堆積していた。一段当たりの堆積量は約3kgであったが、2ヶ月の連続稼働中に運転条件が乱れることはなかった。
【0043】
比較例1
トレイをサポートリングに固定する際に、図1に示されるように、横型クランプを用いた以外は、実施例1と同じ装置および条件でアクリル酸の精製を行った。
【0044】
2ヶ月の連続稼働を目標にしていたが、稼働当初から蒸留塔下部の圧力の経時上昇が見られ、1ヶ月後に装置を停止し内部の点検を行った。横型クランプとトレイの隙間に重合物が付着し、該クランプから落下したと考えられる重合物が下方に位置するトレイの外周部に堆積していた。堆積量の一段当たり約50kgであり、堆積した重合物を起点として更なる重合がトレイ上で進行した形跡が見られた。
【0045】
比較例2
サポートリングの塔壁との溶接線上の流体通過口をなくし、トレイは図11に示されるように固定した以外は、実施例1と同じ装置および条件でアクリル酸の精製を行った。図11は、トレイの固定の仕方を説明する図面であり、図11(a)は部分断面図、図11(b)は図11(a)において、上方(ボルトのある方向)から見た図面、図11(c)は図11(a)において、下方(ナットのある方向)から見た図面である。図11において、サポートリング122およびトレイ121にボルト穴として内径11mmの穴を開け、M10(JIS)の六角ボルト126、六角ナット126、ワッシャ126で固定した。
【0046】
2ヶ月の連続稼働を目標にしていたが、稼働当初から蒸留塔下部の圧力の経時上昇が見られ、1ヶ月後に装置を停止し内部の点検を行った。塔壁およびトレイ固定ボルトに重合物が付着し、さらにトレイ外周部に重合物の堆積が見られた。
堆積量は一段当たり約10kgであった。
【0047】
比較例3
開口率40%の無堰多孔板トレイ2段を取り外した以外は、実施例1と同じ装置および条件でアクリル酸の精製を行った。
【0048】
2ヶ月の連続運転を目標にしていたが、稼働当初から蒸留塔下部の圧力の経時上昇が見られ、1ヶ月後に装置を停止し内部の点検を行った。開口率23%の無堰多孔板トレイの最下段の裏面に重合物が付着し、開口部面積のうち約5%が閉塞していた。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、液状物の滞留時間が短縮できるため、蒸留塔内における易重合物質の重合を低減できる。
【0050】
本発明によれば、液飛沫衝突板を設けることにより、蒸留塔内の液面からの液の飛沫を衝突させて上方への上昇を防止して、蒸留塔内における易重合物質の重合を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】横型クランプを用いてトレイをサポートリングで固定する従来の方法を説明する図面である。
【図2】図1で用いられた横型クランプを示す図面である。
【図3】蒸留塔の内壁に固定されたサポートリングにある従来の液体通過口について説明する図面である。
【図4】蒸留塔内に設置されたトレイを支持するサポートリングの一例を説明する断面図である。
【図5】トレイをボルトナットによりサポートリングに固定した一例を示す図面である。
【図6】縦型クランプを用いてトレイをサポートリングを固定する一つの方法を説明する図面である。
【図7】図6で用いられた縦型クランプを示す図面である。
【図8】蒸留塔の内壁と、該内壁に固定されたサポートリングの間に形成された液体通過口について説明する図面である。
【図9】蒸留塔の内壁と、該内壁に固定されたサポートリングの間に形成された別の液体通過口について説明する図面である。
【図10】蒸留塔の最下段に設けられた液飛沫衝突板の一例を示す図面である。
【図11】従来のトレイの固定の仕方を説明する図面である。
【符号の説明】
1、41、51、61、121…トレイ
2、32、42、52、62、82、92、122…サポートリング
3、33、43、53、63、83、93、123…蒸留塔の内壁
4、54、64、124…ナット
5、55、65、125…ワッシャ
6、56、66、76、126…ボルト
7、27…横型クランプ
38、58、88、98…液体通過口
69、79…縦型クランプ
110…蒸留塔
111、112…無堰多孔板
113、114…ディスクアンドドーナッツ式衝突板
115、116…欠円バッフル式衝突板
Claims (7)
- (a)サポートリングにボルトナットを用いて直接固定されたトレイ、および/または(b)サポートリングに縦型クランプを用いて固定されたトレイを少なくとも一部に有する塔を用いて精製することを特徴とする易重合性物質の製造方法。
- 前記トレイが無堰多孔板である請求項1に記載の製造方法。
- 前記サポートリングと前記塔の塔壁との接合部に少なくとも一以上の液体通過口を設けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の製造方法。
- 前記トレイと前記サポートリングの固定部および/または一つのトレイが複数に板で構成されている場合の各々の板と板の固定部に液体通過口を設けることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 蒸留塔下部に液飛沫衝突板を設けてなる蒸留塔を用いて精製することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 蒸留塔に用いるトレイが無堰多孔板である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
- ボルトと、ナットと、縦型クランプと、を用いてサポートリングに固定されたトレイを備えることを特徴とする精製塔。
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