JP4592877B2 - 化粧シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の壁面内装等に用いられる化粧シートに関し、さらに詳しくは、環境に優しく、耐擦傷性や耐折曲性に優れると共に、難燃性にも優れた化粧シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物の壁面内装等に用いられる化粧シートとしては、紙基材上に塩化ビニル樹脂からなる発泡樹脂層を設けたもの、あるいは、これに意匠性を付与するために絵柄層や凹凸模様を設けたものなどが一般的に用いられている。しかし、塩化ビニル樹脂を用いた化粧シートは、燃焼時には有害な塩化水素ガスを発生するために、一般の焼却炉では焼却処分することができないといった廃材処理の問題や、また火災時には発生する塩化水素ガスを吸引して中毒になるといった問題があり、塩化ビニル樹脂を用いた化粧シートの使用を避けるようになってきた。
【0003】
そこで近年、塩化ビニル樹脂を用いた化粧シートにかわるものとして、塩素等のハロゲン系元素を分子構造中に持たない非ハロゲン系樹脂を用いた化粧シートが使用されるようになってきた。この非ハロゲン系樹脂を用いた化粧シートの代表的なものとしては、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂を用いた化粧シートを挙げることができる。このオレフィン系樹脂は、塩化ビニル樹脂と比較して、焼却処分しても有害な塩化水素ガスを発生することがなく環境に優しい上に、発泡セルの形成に最適な溶融張力を有するために発泡樹脂層を極めて効率良く形成することができ、塩化ビニル樹脂の代替樹脂として広く用いられている。
【0004】
しかし、オレフィン系樹脂で形成した発泡樹脂層は、引き裂き強度や伸びが小さいために、外力が加わったときなどに発泡樹脂層に傷が付き易く、また、折り曲げに対して発泡樹脂層が破断し易いといった問題があった。また、塩化ビニル樹脂からなる化粧シートは、塩化ビニル樹脂自体が自己消火性を有する樹脂であるが、オレフィン系樹脂からなる化粧シートは、オレフィン系樹脂自体が可燃性であり、少なくとも化粧シートに要求される難燃性を付与する必要があり、通常オレフィン系樹脂に水酸化アルミニウムや炭酸カルシウムといった無機充填剤が難燃剤として添加されるが、この無機充填剤の添加量を多くすると、加熱溶融押し出し時の成膜に支障を来たし、加工性を低下させるといった問題や形成した発泡樹脂層の、たとえば、耐スクラッチ性、耐摩耗性、引き裂き強度や伸度などの機械的強度を益々低下させるといった問題が生じる。さらにその上に、発泡セルにバラツキを生じる(発泡効率が悪い)と共にその表面が荒れた状態となり意匠性を低下させるといった問題が生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とすることろは、難燃性を有する環境に優しい化粧シートであって、耐スクラッチ性、耐折曲性に優れると共に、バラツキの少ないほぼ一様な発泡セル形状と滑らかな表面状態を有する発泡樹脂層(発泡効率が良い)を備えた化粧シートを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、紙基材上に、発泡剤と無機充填剤とを少なくとも含む添加剤が添加された熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂層を少なくとも設け、前記熱可塑性樹脂がオレフィン系熱可塑性樹脂とスチレン−エチレン共重合樹脂の混合樹脂からなると共に前記熱可塑性樹脂が100重量部に対して、前記スチレン−エチレン共重合樹脂が10〜30重量部であり、かつ前記スチレン−エチレン共重合樹脂のスチレン含有率が30mol%以上である化粧シートにおいて、前記発泡樹脂層上に直に印刷絵柄層からなる装飾層が設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項1記載の構成とすることにより、発泡樹脂層の皮膜強度を強くすることができ、スクラッチ性、摩耗性、引裂き性や伸び等の機械的強度を向上させることができる。また、難燃剤として添加する無機充填剤の添加量を多くしても加熱溶融押し出し時の成膜性を悪化させることがないために加工性を低下させることがなく、容易に難燃性を付与することができる。また、前記熱可塑性樹脂が100重量部に対して、前記スチレン−エチレン共重合樹脂が10〜30重量部の構成とすることにより、特に優れた発泡樹脂層を形成することができる。すなわち、スチレン−エチレン共重合樹脂の含有量が10重量部未満の場合には、発泡樹脂層の引き裂き強度や伸び、あるいは、耐スクラッチ性や耐摩耗性において、十分に満足できる物性を得ることができず、また、スチレン−エチレン共重合樹脂の含有量が30重量部より多い場合には、発泡樹脂組成物層を加熱発泡させて発泡樹脂層とする際に発泡樹脂組成物の樹脂張力が大き過ぎるために発泡セルが成長せず十分な発泡倍率が得られない。
【0008】
また、前記スチレン−エチレン共重合樹脂のスチレン含有率が30mol%以上である構成とすることにより、発泡樹脂組成物層の表面張力を改善することができ(表面の濡れ性を向上することができ)、コロナ放電処理等の易接着処理を施すことなく印刷して印刷絵柄層等を容易に形成することができる。特に、水性インキで印刷することができ、製造時の揮発性有機化合物の排出量を抑えることができると共に、化粧シートから発生する揮発性有機化合物の臭気をなくすことができる。また、スクラッチ性、摩耗性、引裂き性や伸び等の機械的強度の向上に大きく寄与すると共に、難燃剤として添加する無機充填剤との接着性向上にも大きく寄与する。また、装飾層を設けた構成とすることにより、意匠性を向上させることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の化粧シートにおいて、前記印刷絵柄層が水性インキで印刷形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に説明する。
図1は本発明にかかる化粧シートの第1の実施形態の層構成図、図2は本発明にかかる化粧シートの第2の実施形態の層構成図、図3は本発明にかかる化粧シートの第3の実施形態の層構成図であり、図中の1,1’,1''は化粧シート、2は紙基材、3は発泡樹脂層、4は装飾層、40は印刷絵柄層、41は保護層、42は凹凸模様をそれぞれ示す。
【0011】
図1は本発明の化粧シートの第1の実施形態の層構成図を示したものであり、化粧シート1は、紙基材2上に発泡樹脂層3を形成したものである。前記発泡樹脂層3は発泡剤と無機充填剤とを少なくとも含む添加剤が添加されたオレフィン系熱可塑性樹脂とスチレン−エチレン共重合樹脂の混合樹脂からなる発泡樹脂層形成組成物を前記紙基材2上にTダイ押出機から加熱溶融押し出して積層し、その後に加熱発泡炉で加熱発泡させることにより形成したものである。
【0012】
図2は本発明の化粧シートの第2の実施形態の層構成図を示したものであり、化粧シート1’は、図1に示した第1の実施形態の化粧シート1の前記発泡樹脂層3上に、装飾層4の一つの態様である印刷層40と該印刷層40上に保護層41を設けたものであって、これ以外は第1の実施形態と同じである。
【0013】
図3は本発明の化粧シートの第3の実施形態の層構成図を示したものであり、化粧シート1''は、図2に示した第2に実施形態の化粧シート1’の装飾層4側から装飾層4の他の態様である凹凸模様42を設けたものであって、これ以外は第2の実施例と同じである。
【0014】
次に、本発明の化粧シートについて、さらに詳述する。
まず、本発明の化粧シートを構成する紙基材2について説明する。紙基材2としては、壁紙用の難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジンなどの難燃剤で処理したシート)、あるいは、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの無機質剤を混抄した無機質紙、あるいは、一般紙などの通常壁紙用裏打紙といわれているものを用いることができ、これらの坪量としては20〜300g/m2 、好ましくは30〜120g/m2 である。
【0015】
次に、本発明の化粧シートを構成する発泡樹脂層3について説明する。発泡樹脂層3を形成する樹脂としては、オレフィン系熱可塑性樹脂とスチレン−エチレン共重合樹脂とからなる混合樹脂を用いる。前記オレフィン系熱可塑性樹脂としては、特に限定するものではないが、低温加工性に優れるなどの理由から、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−αオレフィン共重合樹脂、メタロセン触媒を用いて重合した線状低密度ポリエチレン、エチレン−アクリル酸メチル共重体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等の1種ないし2種以上の混合樹脂、あるいは、低結晶性軟質ポリプロピレンやプロピレンとエチレン及び/ないしブテン−1を共重合させた非晶性ポリオレフィン樹脂のいずれか1種ないし混合樹脂が好ましい。
【0016】
また、前記スチレン−エチレン共重合樹脂としては、メタロセン触媒ないしシングルサイト幾何拘束触媒(米国特許第5703187号)によって重合された立体規則性を有するスチレンとエチレンのランダム共重合体が適当であり、より好ましくはスチレン含有率が30mol %以上のものであって、なかでも、長鎖分岐が選択的に導入されたものが適当である。この理由としては、長鎖分岐を選択的に導入することにより、Tダイ押出機等での成膜性を改善することができ、また、スチレン含有率を30mol %以上のランダム共重合体とすることにより、発泡樹脂組成物層の表面張力を改善することができ(表面の濡れ性を向上することができ)、コロナ放電処理等の易接着処理を施すことなく印刷して印刷絵柄層等の装飾層を容易に形成することができる。特に、水性インキで印刷することができ、製造時の揮発性有機化合物の排出量を抑えることができると共に、化粧シートから発生する揮発性有機化合物の臭気をなくすことができる。また、スクラッチ性、摩耗性、引裂き性や伸び等の機械的強度の向上に大きく寄与すると共に、難燃剤として添加する無機充填剤との接着性向上にも大きく寄与する。
【0017】
次に、前記発泡樹脂層3を形成する前記オレフィン系熱可塑性樹脂と前記スチレン−エチレン共重合樹脂との混合樹脂について説明する。この混合樹脂は、前記オレフィン系熱可塑性樹脂のみで発泡樹脂層を形成した場合に生じる問題、すなわち、発泡樹脂層の皮膜強度が弱く、スクラッチ性、摩耗性、引裂き性や伸び等の機械的強度に劣るといった問題、また、難燃性を付与するために難燃剤として添加する無機充填剤の添加量を多くした場合に生じる加熱溶融押し出し時の成膜性が悪化し、加工性が低下するといった問題などを解決するために用いるものである。そのために、前記オレフィン系熱可塑性樹脂に添加されるスチレン−エチレン共重合樹脂は、前記オレフィン系熱可塑性樹脂の改質剤として機能し、前記混合樹脂により形成された発泡樹脂層は、皮膜強度が強く、スクラッチ性、摩耗性、引裂き性や伸び等の機械的強度に優れ、また、難燃性を付与するために難燃剤として添加する無機充填剤の添加量を多くしても加熱溶融押し出し時の成膜性を悪化させることがないために加工性を低下させることがない。前記オレフィン系熱可塑性樹脂と前記スチレン−エチレン共重合樹脂の混合割合は、前記オレフィン系熱可塑性樹脂と前記スチレン−エチレン共重合樹脂の混合樹脂100 重量部に対して、前記スチレン−エチレン共重合樹脂10〜30重量部である。この理由としては、前記混合樹脂100 重量部に対して前記スチレン−エチレン共重合樹脂が10重量部未満の場合は、発泡樹脂層3の引く裂き強度や伸び、あるいは、耐スクラッチ性や耐摩耗性において、十分に満足できる物性を得ることができず、また、スチレン−エチレン共重合樹脂の含有量が30重量部より多い場合には、発泡樹脂組成物層を加熱発泡させて発泡樹脂層3とする際に発泡樹脂組成物の樹脂張力が大き過ぎるために発泡セルが成長せず十分な発泡倍率が得られないためである。
【0018】
次に、発泡樹脂層3に添加する発泡剤について説明する。
発泡剤としては、低沸点の炭化水素を内包した熱膨張型カプセル発泡剤を用いるてもよいが、低コストであると共に、難燃性や自己消火性に優れること等からアゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド等のアゾ系化合物の熱分解型発泡剤が好適である。なお、前記熱分解型発泡剤の前記発泡樹脂層3を形成する混合樹脂に対する添加量は、概ね混合樹脂100 重量部に対して2〜10重量部が適当である。
【0019】
次に、発泡樹脂層3に添加する難燃剤としての無機充填剤について説明する。
無機充填剤として、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、硫酸バリウム、酸化チタン、グラスファイバー等の周知の無機物の1種ないし2種以上の混合物を用いることができる。なお、無機充填剤の前記発泡樹脂層3を形成する混合樹脂に対する添加量は、概ね混合樹脂100 重量部に対して20〜300 重量部が適当である。
【0020】
また、前記発泡樹脂層3には、紫外線による劣化を防止し、耐候性を向上させる目的で、必要に応じて光安定剤としてラジカル捕捉剤、および/ないし、紫外線吸収剤を添加することができる。このラジカル捕捉剤としては、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤が好ましい。この理由としては、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤は、テトラアルキルピペリジンを母核に持ち、紫外線で発生するラジカルを捕捉するラジカル捕捉作用がある他に、ヒドロペルオキシド(ROOH)の不活性作用等の各種作用機構によりその効果が発揮されると推定されており、多機能の安定剤として優れた性能が得られる。ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤の具体例としては、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−トリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラギス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等の他、たとえば、特公平4−82625号公報に開示されている化合物などのヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を挙げることができる。このヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤の添加量としては前記発泡樹脂層3を形成する混合樹脂100 重量部に対して0.01〜3.0 重量部添加するのが適当である。
【0021】
また、紫外線吸収剤としては、たとえば、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−アミル−5'−イソブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−イソブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−イソブチル−5'−プロピルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の2'−ヒドロキシフェニル−5−クロロベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤類、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等の2'−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤類、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン等の2,2'−ジヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等の2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、サリチル酸フェニル、4−tert−ブチル−フェニル−サリシレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤類、2−エチル−ヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、オクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤類等を用いることができる。これら紫外線吸収剤の添加量は、前記発泡樹脂層3を形成する混合樹脂100 重量部に対して、通常0.1 〜10重量部程度である。また、環境に優しい点を考慮すると、上記した紫外線吸収剤の中でも非塩素系の紫外線吸収剤が好ましい。
【0022】
また、前記発泡樹脂層3は、必要に応じて着色してもよく、これに用いる着色剤としては有機顔料、無機顔料のいずれであってもよく、要するに意匠に合わせて任意に用いればよいが、高隠蔽顔料である必要があり、無機顔料、たとえば、二酸化チタン、亜鉛華、弁柄、朱、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック、あるいは、アルミニウム、真鍮等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料等が一般的に好適である。これらは、粉状あるいは鱗片状箔片として、前記発泡樹脂層3を形成する樹脂に添加、分散せしめられる。
【0023】
次に、装飾層4について説明する。装飾層4の一つの態様として、印刷絵柄層40および保護層41がある。前記印刷絵柄層40の形成は、一般的にはグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷等周知の印刷法によりインキにて形成することができる。印刷絵柄としては、木目柄、石目柄、布目柄、皮紋柄、幾何学図形、文字、記号、あるいは、全面ベタ等の印刷絵柄がある。インキとしては、ビヒクルとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等を1種ないし2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものを用いることができるが、環境に優しい化粧シートを考慮すると、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合した非塩素系のビヒクルが好適である。なお、この印刷絵柄層40にも前記発泡樹脂層3と同様に、必要に応じて光安定剤としてラジカル捕捉剤、および/ないし、紫外線吸収剤を添加してもよい
【0024】
次に、前記保護層41について説明する。前記保護層41は、本発明の化粧シート1’,1''の耐スクラッチ性、耐磨耗性、耐薬品性、耐汚染性等を向上させるために設けられるものであり、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、あるいは、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブテン,ポリブタジエン,イソプレン等のポリオレフィンの1種ないしエチレン,プロピレン,ブテン,ブタジエン,イソプレン等のオレフィンの2種以上の共重合体、あるいは、炭素数が4以上のαオレフィンの共重合体、あるいは、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、あるいは、アイオノマー、あるいは、これらの1種ないしそれ以上からなる混合樹脂などの樹脂が適当であり、前記印刷絵柄層40等のように前記保護層41と直接に接する層との接着性等を考慮して、上記樹脂の1種ないし2種以上を混合したものを適宜用いればよい。また、前記保護層41の形成方法としては、たとえば、前記樹脂を溶液化したもの、あるいは、加熱溶融したものを、周知のグラビア印刷法、ロールコート法、あるいは、押し出しコート法等の塗工手段を適宜用いて塗工するなり、あるいは、上記樹脂をフィルム化したものを周知のドライラミネーション法等で貼合することにより形成することができる。この保護層41の厚さとしては、ドライ時で0.5 〜100 μm、通常は1〜15μm程度である。なお、この保護層41にも前記発泡樹脂層3と同様に、必要に応じて光安定剤としてラジカル捕捉剤、および/ないし、紫外線吸収剤を添加してもよいし、また、必要に応じて着色しても構わない。
【0025】
次に、装飾層4の他の態様としての凹凸模様42について説明する。凹凸模様42の形成は、周知の枚葉、あるいは、輪転式のエンボス機を用いて、化粧シートが加熱された状態にある時に、基材2上の最も外側の層からエンボス版で凹凸を施して後に冷却することにより、前記基材2上の最も外側の層から前記発泡樹脂層3にかけて凹凸模様42を形成することができる。この凹凸模様42の形状としては、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0026】
なお、上記した第1〜第3の実施形態は、本発明の化粧シートの代表的な層構成を示したものであって、本発明の化粧シートはこれらに限られるものではなく、たとえば、第2、第3の実施形態で示した発泡樹脂層3の上下ないし上下のいずれかに発泡樹脂層3を形成する樹脂として説明したオレフィン系熱可塑性樹脂、あるいは、オレフィン系熱可塑性樹脂とスチレン−エチレン共重合樹脂との混合樹脂からなる前記発泡樹脂層3を補強するための発泡樹脂補強層(図示せず)を設けてもよい。なお、この発泡樹脂補強層(図示せず)についても、必要に応じて着色剤、難燃剤としての無機充填剤、光安定剤としてのラジカル捕捉剤、および/ないし、紫外線吸収剤を添加することができる。また、前記装飾層4の一つの態様として説明した前記印刷絵柄層40および前記保護層41は、いずれか一つであっても構わない。
【0027】
【実施例】
上記の本発明について、以下に実施例を挙げて、さらに詳しく説明する。
実施例1
坪量70g/m2の壁紙用難燃紙〔(株)興人:WK〕上に、同方向二軸Tダイ押出機から加熱溶融した表1に示す樹脂組成物Aを100 μm厚さに押し出し塗工し、壁紙用難燃紙70g/m2/樹脂組成物A100 μmの積層体を作製し、該積層体の樹脂組成物A面にアクリル系樹脂からなる水性インキ〔大日精化工業(株)製:ハイドリックWP〕でグラビア印刷して砂目模様の印刷絵柄層を形成し、該印刷絵柄層面全面に2液硬化型ウレタン樹脂を周知のグラビア印刷法でドライ時に2g/m2となるように塗工して保護層を形成した。このものを炉内温度180 ℃〜220 ℃の発泡炉で前記樹脂組成物Aを約400 μm厚さに発泡させると共に、前記保護層側から砂目柄模様のエンボス版にてエンボス加工を行い、本発明の化粧シートを得た。
【0028】
実施例2
坪量70g/m2の壁紙用難燃紙〔(株)興人:WK〕上に、同方向二軸Tダイ押出機から加熱溶融した表1に示す樹脂組成物Bを100 μm厚さに押し出し塗工し、壁紙用難燃紙70g/m2/樹脂組成物B100 μmの積層体を作製し、該積層体の樹脂組成物B面にアクリル系樹脂からなる水性インキ〔ザインクテック(株)製:オーデAG〕でグラビア印刷して木目模様の印刷絵柄層を形成し、該印刷絵柄層面全面に2液硬化型ウレタン樹脂を周知のグラビア印刷法でドライ時に2g/m2となるように塗工して保護層を形成した。このものを炉内温度180 ℃〜220 ℃の発泡炉で前記樹脂組成物Bを約500 μm厚さに発泡させると共に、前記保護層側から木目柄模様のエンボス版にてエンボス加工を行い、本発明の化粧シートを得た。
【0029】
実施例3
坪量70g/m2の壁紙用難燃紙〔(株)興人:WK〕上に、同方向二軸Tダイ押出機から加熱溶融した表1に示す樹脂組成物Cを100 μm厚さに押し出し塗工し、壁紙用難燃紙70g/m2/樹脂組成物C100 μmの積層体を作製し、該積層体の樹脂組成物C面にエチレン−酢酸ビニル系樹脂からなるプライマー液〔ザインクテック(株)製:オーデEV〕を周知のグラビア塗工法でドライ時に2g/m2となるように塗工し、該塗工面にアクリル系樹脂からなる水性インキ〔ザインクテック(株)製:オーデKS〕でグラビア印刷して木目模様の印刷絵柄層を形成し、該印刷絵柄層面全面に2液硬化型ウレタン樹脂を周知のグラビア印刷法でドライ時に2g/m2となるように塗工して保護層を形成した。このものを炉内温度180 ℃〜220 ℃の発泡炉で前記樹脂組成物Cを約500 μm厚さに発泡させると共に、前記保護層側から木目柄模様のエンボス版にてエンボス加工を行い、本発明の化粧シートを得た。
【0030】
比較例1
坪量70g/m2の壁紙用難燃紙〔(株)興人:WK〕上に、同方向二軸Tダイ押出機から加熱溶融した表1に示す樹脂組成物Dを100 μm厚さに押し出し塗工し、壁紙用難燃紙70g/m2/樹脂組成物D100 μmの積層体を作製し、該積層体の樹脂組成物D面にアクリル系樹脂からなる水性インキ〔大日精化工業(株)製:ハイドリックWP〕でグラビア印刷して砂目模様の印刷絵柄層を形成し、該印刷絵柄層面全面に2液硬化型ウレタン樹脂を周知のグラビア印刷法でドライ時に2g/m2となるように塗工して保護層を形成した。このものを炉内温度180 ℃〜220 ℃の発泡炉で前記樹脂組成物Dを約400 μm厚さに発泡させると共に、前記保護層側から砂目柄模様のエンボス版にてエンボス加工を行い、比較例とする化粧シートを得た。
【0031】
比較例2
坪量70g/m2の壁紙用難燃紙〔(株)興人:WK〕上に、同方向二軸Tダイ押出機から加熱溶融した表1に示す樹脂組成物Eを100 μm厚さに押し出し塗工し、壁紙用難燃紙70g/m2/樹脂組成物E100 μmの積層体を作製し、該積層体の樹脂組成物E面にエチレン−酢酸ビニル系樹脂からなるプライマー液〔ザインクテック(株)製:オーデEV〕を周知のグラビア塗工法でドライ時に2g/m2となるように塗工し、該塗工面にアクリル系樹脂からなる水性インキ〔ザインクテック(株)製:オーデKS〕でグラビア印刷して木目模様の印刷絵柄層を形成し、該印刷絵柄層面全面に2液硬化型ウレタン樹脂を周知のグラビア印刷法でドライ時に2g/m2となるように塗工して保護層を形成した。このものを炉内温度180 ℃〜220 ℃の発泡炉で前記樹脂組成物Eを約500 μm厚さに発泡させると共に、前記保護層側から木目柄模様のエンボス版にてエンボス加工を行い、比較例とする化粧シートを得た。
【0032】
比較例3
坪量70g/m2の壁紙用難燃紙〔(株)興人:WK〕上に、同方向二軸Tダイ押出機から加熱溶融した表1に示す樹脂組成物Fを100 μm厚さに押し出し塗工したが、膜切れが発生して塗工することができなかった。
【0033】
【0034】
上記で作製した実施例1〜3および比較例1〜3の化粧シートについて、建築基準法施行令(昭和25年政令第338 号)第1条第5号及び第6号の規定に基づき準不燃材料及び難燃材料の指定を行う時に用いる表面試験に準じて加熱試験を行うと共に、耐スクラッチ性、耐折曲性、発泡状態の評価及びコストを比較し、その結果を表2、表3に纏めて示した。
【0035】
【0036】
【0037】
表2、表3の結果からも明らかなように、実施例1〜3の化粧シートは耐スクラッチ性、耐折曲性に優れ、バラツキの少ないほぼ一様な発泡セル形状を有するすると共に滑らかな表面状態を有する発泡樹脂層を得ることができた。さらに、無機充填剤の添加量が多くても、加熱溶融押し出し時の成膜に支障を来たすことがなく、加工性を低下させることがないために、容易に難燃性を付与することができた。また、コスト的にも比較的安価なものとすることができた。
【0038】
【発明の効果】
本発明の化粧シートは、今まで縷々説明してきたが、耐スクラッチ性、耐摩耗性、耐折り曲げ性、難燃性に優れ、環境に優しいという優れた効果を奏すると共に、難燃剤として添加する無機充填剤の添加量を多くしても加熱溶融押し出し時の成膜性を悪化させることがない上に、発泡効率が良く(発泡セル形状が一様な)、滑らかな表面状態を有する発泡樹脂層を得ることができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる化粧シートの第1の実施形態の層構成図である。
【図2】 本発明にかかる化粧シートの第2の実施形態の層構成図である。
【図3】 本発明にかかる化粧シートの第3の実施形態の層構成図である。
【符号の説明】
1,1’,1'' 化粧シート
2 紙基材
3 発泡樹脂層
4 装飾層
40 印刷絵柄層
41 保護層
42 凹凸模様
Claims (2)
- 紙基材上に、発泡剤と無機充填剤とを少なくとも含む添加剤が添加された熱可塑性樹脂からなる発泡樹脂層を少なくとも設け、前記熱可塑性樹脂がオレフィン系熱可塑性樹脂とスチレン−エチレン共重合樹脂の混合樹脂からなると共に前記熱可塑性樹脂が100重量部に対して、前記スチレン−エチレン共重合樹脂が10〜30重量部であり、かつ前記スチレン−エチレン共重合樹脂のスチレン含有率が30mol%以上である化粧シートにおいて、前記発泡樹脂層上に直に印刷絵柄層からなる装飾層が設けられていることを特徴とする化粧シート。
- 前記印刷絵柄層が水性インキで印刷形成されていることを特徴とする請求項1記載の化粧シート。
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