JP4592305B2 - 消化管トランスポーター機能抑制剤 - Google Patents

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Description

本発明は、乳由来成分を有効成分とする消化管トランスポーター機能抑制剤および消化管トランスポーター機能抑制剤を配合した消化管トランスポーター機能抑制用飲食品に関する。
鉱工業で使用される化学薬品類や、農業で使用される収穫量や作業性を重視した農薬類などが開発され、世界中の土壌、河川、海洋、空気などが汚染されているといっても過言ではない。環境ホルモンと呼ばれる生体ホルモンに類似した作用を有する環境汚染物質による健康障害が社会問題となっている中、このような環境汚染物質を含まない農産品や食品の生産が広く望まれている。近年、有機栽培や無農薬をセールスポイントにした農産品や食品などが上市されているが、そのほとんどは過去数年の間だけ農薬や抗生物質などの化学物質を使用していないという極めて限定的な無農薬使用制限を設定した商品である。また、こうした化学物質は、環境中における残存年数が極めて長期にわたるものもあり、完全に化学物質を含まない自然食品を生産することは極めて困難な状況にある。
このように、食物中には、人にとって有益なものだけではなく、多くの有害となる物質も含まれている。食物は、摂取された後、消化酵素によって分解され、小腸から吸収される。消化管においては、上皮細胞膜表面にさまざまなトランスポーターが発現しており、栄養成分の吸収のみならず、生体にとって異物となる物質を排出する機能をもっている。食物中の水溶性物質について、必要な栄養素は特異的なトランスポーターによって吸収され、それ以外は体外へと排泄される。しかし、脂溶性物質については、単純拡散によって栄養吸収細胞の細胞膜を透過するため、小腸上皮細胞に防御機能がなければ、有害物質は細胞内に吸収される。肝臓には解毒機構があり、有害な生体異物は酸化・還元・水解され、グルタチオン、グルクロン酸、硫酸との抱合によって水溶性物質に変換され、胆汁中に排泄される。しかし物質によってはこの解毒機構によってさらに毒性を増す場合もあり、食物中の有害な脂溶性物質から身を守るには小腸からの吸収を防ぐのが最善の策である。小腸上皮では、MDR1やMRP3を代表とするさまざまなトランスポーターが生体異物の輸送にかかわっている。
多剤排出トランスポーターとして最初に同定されたのが、ヒトとマウスのMDR1遺伝子である(例えば、非特許文献1および2参照。)。MDR1発現ベクターを薬剤感受性細胞に導入すると細胞はさまざまな抗がん剤に対して耐性になることが明らかになり、さまざまな脂溶性の化合物をATP加水分解のエネルギーを利用して細胞内から細胞外へ排出するポンプとして機能することが明らかになった(例えば、非特許文献3参照。)。
MDR1やMRP3はヒトの正常組織では小腸、腎近位尿細管、肝臓の毛細胆管の管腔側、脳と精巣の毛細血管内皮、副腎皮質、妊娠時の子宮及び胎盤などで発現しており、また、造血幹細胞など多くの幹細胞で発現している。
MDR1やMRP3は有害な脂溶性物質が体内に吸収されるのを防ぐだけでなく、血流中に入ってしまった生体異物あるいは有害な代謝物を、尿中、胆汁中に排泄する(例えば、非特許文献4および5参照。)。
MDR1やMRP3はATP加水分解のエネルギーを用い、基質を濃度勾配に逆らって細胞外へ排出する。その反応機構は次のように予想されている。まず、輸送基質の結合によって引き起こされた構造変化がATP加水分解を誘導し、切り離されたγリン酸がADPより先にATP結合部位から遊離する。ATP加水分解によって引き起こされた構造変化によって、輸送基質は高親和性結合部位から細胞外を向いた低親和性結合部位へ移され細胞外へ放出される。(例えば、非特許文献6参照。)。
このように、摂取した食品を消化分解し、栄養成分として体内に吸収する臓器である消化管においては、上皮細胞膜表面にさまざまなトランスポーターが発現しており、栄養成分の吸収のみならず、生体にとって異物となる物質を排出する機能をもっているが、最近では、食品として摂取した成分が、このトランスポーター機能にさまざまな影響を与えることが明らかとなってきた。本発明者らは、食品に由来するさまざまな成分について、腸管上皮細胞のトランスポーターに与える影響を鋭意検討したところ、乳由来の成分がMDR1やMRP3などのトランスポーターの機能を阻害し、生体異物の血中移行を抑制することを見出し、本発明をなすにいたった。
従来から、不溶解性の食物繊維などは、消化管の管腔内において脂溶性物質を吸着することにより、それらの吸収を阻害することが知られていることから、代表的な食物繊維についても同様の検討を行った。その結果、こうした食物繊維には腸管のトランスポーターに作用する物質は見出されず、乳由来の成分に特徴的な作用であることが確認できた。
シー・チエン(Chen C.)外、Cell,47,381-389(1986) 植田和光外、J.Biol.Chem.,262,505-508(1987) 植田和光外、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,3004-3008(1987) 植田和光、蛋白質 核酸 酵素、46巻、5号、588-595(2001) エー・セニアー(A.Senior)外、FEBS.Lett.,377,285-289(1995) チェソン・リー(Tiesong Li)外、Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., 285, G602-G610, 2003
本発明は、食品素材として使用可能な安全な物質であって、長期的に経口摂取することができ、直接的に消化管トランスポーターの機能を抑制して、生体異物の消化管での血中移行を抑制することのできる消化管トランスポーター機能抑制剤や、消化管トランスポーターの機能を抑制して生体異物の消化管での血中移行を抑制する消化管トランスポーター機能抑制用飲食品を得ることを課題とする。
本発明の消化管トランスポーター機能抑制剤および消化管トランスポーター機能抑制剤を配合した消化管トランスポーター機能抑制用飲食品は、これを摂取すると消化管トランスポーターによる生体異物の血中移行を抑制する作用を有するので、環境中のさまざまな構造の有害物質の体内への進入を防御することができる。
本発明者らは、これらの問題点を鑑み、広く食品素材に含まれている消化管トランスポーター機能抑制作用を示す物質について、鋭意、探索を進めていたところ、乳由来成分が消化管トランスポーターの機能を阻害し、生体異物の血中移行を抑制することを見出した。そして、この乳由来成分を消化管トランスポーター機能抑制剤として、また消化管トランスポーター機能抑制用飲食品の有効成分として利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の消化管トランスポーター機能抑制剤の特徴は、乳由来成分により消化管トランスポーターの作用を抑制することにある。これら乳由来成分を直接的に消化管トランスポーターに作用させると、顕著に消化管トランスポーターの機能を抑制し、生体異物の血中移行を抑制することを見出した。
すなわち、本発明は、乳由来成分からなる消化管トランスポーター機能抑制剤に関する。
また、本発明は、乳由来成分を配合した消化管トランスポーター機能抑制用飲食品に関する。
本発明の消化管トランスポーター機能抑制剤および消化管トランスポーター機能抑制用飲食品は、消化管トランスポーターの機能を抑制し、消化管トランスポーターによる生体異物の血中移行を抑制する作用を有するので、これを摂取すると環境中のさまざまな構造の有害物質の生体内への進入を防御することができる。特に、有効成分が乳由来成分であるので、安全性が高く、長期間、安価かつ大量に投与することができる。
消化管の上皮細胞は非常に短いターンオーバーを繰り返しており、常に新しい上皮細胞と置き換わっている。したがって、生体にとって異物となる物質が血液中に移行しないように、異物を上皮細胞内に蓄積し、細胞ごと体外に排泄するメカニズムは、生体を異物から守るために非常に重要である。上述のように、小腸上皮では、MDR1をはじめ、MRP1,3,5などのさまざまなトランスポーターが生体異物に対する防御にかかわっており、生体異物を細胞内から細胞外へ排出するポンプとして機能している。したがって、これらのトランスポーターの機能を抑制すれば、上皮細胞内から細胞外へ排出する機能が抑制され、上皮細胞中に有害物質が蓄積され、新しい上皮細胞に置き換わる際に、有害物質も脱落して排出される。
上皮細胞は、ほぼ毎日の様に新しい上皮細胞に置き換わるので、トランスポーターの機能を抑制することにより上皮細胞内に蓄積された有害物質も上皮細胞と共に排出されることとなり、生体中に蓄積されたままになったり、血中に移行して生体内に取り込まれたりすることはない。
最近では、食品として摂取した成分が、このトランスポーター機能にさまざまな影響を与えることが明らかとなってきた。本発明者らは、食品素材として使用可能なトランスポーター機能抑制作用を有する物質を得るために、食品に由来するさまざまな成分について、腸管上皮細胞のトランスポーターに与える影響を鋭意検討したところ、乳由来成分がMDR1やMRP3などさまざまなランスポーターの機能を阻害し、生体異物の血中移行を抑制することを見出し、本発明をなすにいたった。
乳由来成分が他のタンパク質や食物繊維などと異なり、環境ホルモンなどの異物の生体内への吸収を抑制することは新たな知見である。さまざまな化学物質に汚染されている可能性のある食品を摂取する上で、本発明の消化管トランスポーター機能抑制剤および消化管トランスポーター機能抑制用飲食品は産業上の利用価値が高い。
不溶解性の食物繊維などは、消化管の管腔内において脂溶性物質の吸収を阻害することが従来から知られているので、小麦ふすまやグアガムなどの代表的な食物繊維についても同様の検討を行ったが、こうした食物繊維には腸管のトランスポーターに作用する物質は見出されず、乳由来の成分に特徴的な作用であることが確認できた。
本発明の消化管トランスポーター機能抑制剤及び消化管トランスポーター機能抑制用飲食品の有効成分である乳由来成分は、原料の入手が容易であり、常に一定の品質が得られ安全であり、複雑な工程を必要としないで安価に製造でき、また大量調製することができる。
乳由来成分を含む物質としては、バターミルク、カゼイン、乳清タンパク質濃縮物、および発酵乳培養上清を用いて、これらの物質が消化管トランスポーターの機能を阻害し、生体異物の血中移行を抑制することを見出したが、これらの乳由来を含む物質は、酸添加、酵素添加、加熱、濃縮、乾燥、脱塩、乳酸菌による分解などの過程を経たものであることから、乳由来成分のすべてに消化管トランスポーターの機能を阻害し、生体異物の血中移行を抑制する効果があると考えられる。なお、原料の乳としては牛乳がもっとも大量に入手しやすく好ましいが、ヤギやヒツジ等、他の哺乳類の乳であっても良い。
これらの、バターミルク、カゼイン、乳清タンパク質濃縮物、発酵乳培養上清、及び、その他の乳由来成分を含む物質の製造法は公知の方法によって行われたもので良い。また、市販品を用いることもできる。
これらの乳由来成分を含む物質は、乾燥して粉末としてそのまま経口的に摂取したり、あるいはその他の経口に適した投与形態としてヒト、あるいは場合によっては動物に投与される。
本発明の消化管トランスポーター機能抑制剤を投与するに際しては、有効成分の乳由来成分を含む物質を常法に従い、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤等に製剤化して用いることができる。さらには、これらの乳由来成分を含む物質をそのままあるいは製剤化した後、これを栄養剤や飲食品等に配合して、消化管トランスポーターの機能を阻害し、生体異物の血中移行を抑制する栄養剤や飲食品とすることも可能である。なお、乳由来成分を含む物質は、熱に対して比較的安定なので、乳由来成分を含む物質を通常行われるような条件で加熱殺菌し製剤化して用いることもできる。さらには、これらの乳由来成分を含む物質を栄養剤や飲食品等に配合して、通常行われるような条件で加熱殺菌して用いることも可能である。
本発明の消化管トランスポーター機能抑制剤の投与量は、乳由来成分の安全性がきわめて高く、大量に供給できるので、有効量以上であれば特に上限はない。
また、年齢、治療効果および病態等により異なるが、生体異物の血中移行を抑制する効果を得るためには、本発明の消化管トランスポーター機能抑制剤、及び消化管トランスポーター機能抑制用飲食品の有効量として、成人において、固形物換算で乳由来成分を含む物質を500mg/日以上、経口摂取することが望ましい。そして、消化管トランスポーター機能抑制剤には、乳由来成分を含む物質を固形物換算で0.5〜100mg/100mg、消化管トランスポーター機能抑制用飲食品には、乳由来成分を含む物質を固形物換算で0.5〜10g/100g、配合することが望ましい。 10g/100gより多いと本来の食品の風味を損なう可能性があり、0.5g/100gより少ないと有効量の摂取が困難となるため好ましくない。
このように、本発明の消化管トランスポーター機能抑制剤あるいは消化管トランスポーター機能抑制用飲食品を摂取することにより、消化管トランスポーターの機能を阻害し、生体異物の血中移行を抑制することができる。
以下に実施例および試験例を示し、本発明についてより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
試験例1
(トリブチルスズ(TBT)の透過性抑制)
ヒト結腸腺癌Caco-2細胞を透過性膜(Transwell; Corning-Costar社製)上で2週間培養し、小腸上皮細胞様に分化させた。Caco-2細胞の刷子縁膜側にトリチウム(3H)標識したトリブチルスズ(TBT)5pmolを添加し、37℃で2時間培養後、基底膜側の培養液100μlを回収して液体シンチレーションカウンターで透過した3H-TBT量を測定した。本方法はJ. Biol. Chem., 268, 14991-14997, 1993に記載されている方法に準じたものである。試料であるそれぞれの食品成分は、消化管の管腔側に相当する刷子縁膜側に3H-TBTと同時に添加した。
試料である食品成分としては、バターミルク(雪印乳業社製)、Naカゼイン(ALANATE191、日本エヌゼットエムピー社製)、乳清タンパク質濃縮物(WPC)(サンラクトN2、太陽化学社製)、発酵乳培養上清、大豆タンパク質(フジピュアSP、不二製油社製)、小麦タンパク質(プロスターA、日本新薬社製)、小麦ふすま(ウイートブラン、日清製粉社製)、大豆多糖類(ソヤファイブ、不二製油社製)、コーンスターチ(豊年コーンスターチ、ホーネン社製)、グアガム(ビストップ、三栄源エフ・エフ・アイ社製)を、細胞培養液に0.1%濃度で添加した。発酵乳培養上清は、乳酸菌(L. gasseri SP株)およびビフィズス菌(B. longumSP株)を脱脂乳培地で培養し、培養物を10,000 ×g、30分間遠心分離し、その上清を採取して調製した。
結果を図1に示した。バターミルク、Naカゼイン、WPCおよび発酵乳培養上清等の乳由来成分を含む物質をトリブチルスズ(TBT)と同時に添加した場合の透過率は、乳由来成分を含まない他の食品成分をトリブチルスズ(TBT)と同時に添加した場合の透過率に比較すると顕著に低いことが示されている。その結果、バターミルク、Naカゼイン、WPCおよび発酵乳培養上清などの乳由来成分を含む物質に、トリブチルスズ(TBT)透過を抑制する作用があることが確認された。
試験例2
(トリブチルスズ(TBT)の細胞内蓄積促進)
ヒト結腸腺癌Caco-2細胞を24穴マイクロプレートで2週間培養し、小腸上皮細胞様に分化させた。Caco-2細胞をハンクス塩溶液(Hanks’ balanced salt solution:HBSS、Sigma社製)で洗浄した後、トリチウム(3H)標識したトリブチルスズ(3H-TBT)を含むHBSSを加えて、37℃で2時間培養した。細胞表面をHBSSで洗浄し、TritonX-100(Sigma社製)で細胞を溶解した後、液体シンチレーションカウンターで細胞内に蓄積された3H-TBT量を測定した。試料であるそれぞれの食品成分は、消化管の管腔側に相当する刷子縁膜側に3H-TBTと同時に添加した。本方法はJ. Biol. Chem., 268, 14991-14997, 1993に記載されている方法に準じたものである。
試料である食品成分としては、試験例1と同じ、バターミルク、Naカゼイン、乳清タンパク質濃縮物(WPC)、発酵乳培養上清、大豆タンパク質、小麦タンパク質、小麦ふすま、大豆多糖類、コーンスターチ、グアガムを細胞培養液に0.1%濃度で添加した。
結果を図2に示した。バターミルク、Naカゼイン、WPCおよび発酵乳培養上清などの乳由来成分を含む物質をトリブチルスズ(TBT)と同時に添加した場合の細胞内の蓄積率は、乳由来成分を含まない他の食品成分を同時に添加した場合の細胞内の蓄積率に比較して顕著に高いことが示されている。その結果、バターミルク、Naカゼイン、WPCおよび発酵乳培養上清などの乳由来成分を含む食品成分に、トリブチルスズ(TBT)の細胞内蓄積を増加させる作用が確認された。
試験例3
(ダウノマイシン(Daunomycin)の細胞内蓄積促進)
Caco-2細胞に発現しているトランスポーターMDR1の基質であるダウノマイシン(Daunomycin、明治製菓社製)をトリチウム(3H)で標識し、試験例2で用いた方法に準じて、試料である食品成分がMDR1に与える影響について調べた。すなわち、小腸上皮細胞様に分化させたCaco-2細胞をハンクス塩溶液(Hanks’ balanced salt solution:HBSS、Sigma社製)で洗浄した後、トリチウム(3H)標識したDaunomycin(3H- Daunomycin)を含むHBSSを加えて、37℃で2時間培養した。細胞表面をHBSSで洗浄し、TritonX-100(Sigma社製)で細胞を溶解した後、液体シンチレーションカウンターで細胞内に蓄積された3H-Daunomycin量を測定した。
試料であるそれぞれの食品成分は、消化管の管腔側に相当する刷子縁膜側に3H-Daunomycinと同時に添加した。試料である食品成分としては、バターミルク、Naカゼイン、乳清タンパク質濃縮物(WPC)、発酵乳培養上清、大豆タンパク質、小麦タンパク質、小麦ふすま、大豆多糖類、コーンスターチ、グアガムを、細胞培養液に対して0.1%濃度で添加した。
結果を図3に示した。バターミルク、Naカゼイン、WPCおよび発酵乳培養上清等の乳由来成分を含む食品成分をダウノマイシン(Daunomycin)と同時に添加した場合の細胞内の蓄積率は、他の乳由来成分を含まない食品成分を同時に添加した場合の細胞内の蓄積率に比較すると顕著に高かった。その結果、バターミルク、Naカゼイン、WPCおよび発酵乳培養上清等の乳由来成分を含む物質に、ダウノマイシン(Daunomycin)の細胞内蓄積を増加させる作用が確認された。
したがって、酸カゼイン、Naカゼイン、WPCおよび発酵乳培養上清等の乳由来成分を含む物質には、消化管の上皮細胞に発現しているMDR1などのトランスポーターの働きを抑制する作用のあることが明らかとなった。
試験例4
(メソトレキセート(Methotrexate)の細胞内蓄積促進)
Caco-2細胞に発現しているトランスポーターMRP3の基質であるメソトレキセート(Methotrexate)の蛍光標識体(Fluorescein methotrexate:F-MTX、Molecular Probes社製)を用い、試験例2で用いた方法に準じて、試料である食品成分がMRP3に与える影響について調べた。すなわち、小腸上皮細胞様に分化させたCaco-2細胞をハンクス塩溶液(Hanks’balanced salt solution:HBSS、Sigma社製)で洗浄した後、1μM F-MTXを含むHBSSを加えて、37℃で2時間培養した。細胞表面をHBSSで洗浄し、1% SDS溶液で細胞を溶解した後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で細胞内に蓄積されたF-MTX量を測定した。すなわち、Inertsil ODSカラム(GL Sciences社製)に溶媒(0.1M 酢酸アンモニウム/アセトニトリル(7:3)を1 ml/minの流量で流し、分光蛍光光度計650-10(日立製作所社製、励起波長497nm、蛍光波長518nm)でF-MTX量を定量した。本方法は、Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., 285, G602-G610, 2003に記載されている方法に準じたものである。
試料であるそれぞれの食品成分は、消化管の管腔側に相当する刷子縁膜側にF-MTXと同時に添加した。試料である食品成分としては、バターミルク、Naカゼイン、乳清タンパク質濃縮物(WPC)、発酵乳培養上清を細胞培養液に0.1%濃度で添加した。
試験結果を表1に示す。バターミルク、Naカゼイン、WPCおよび発酵乳培養上清等の乳由来成分を含む試料をF-MTXと同時に添加した場合の細胞内の蓄積率は、乳由来成分を添加しない場合の細胞内の蓄積率に比較すると顕著に高かった。その結果、バターミルク、Naカゼイン、WPCおよび発酵乳培養上清等の乳由来成分を含む物質に、MTXの細胞内蓄積を増加させる作用が確認された。
したがって、バターミルク、Naカゼイン、WPCおよび発酵乳培養上清等の乳由来成分を含む物質には、消化管の上皮細胞に発現しているトランスポーターMRP3の働きを抑制する作用のあることが明らかとなった。
(消化管トランスポーター機能抑制剤の製造)
Naカゼイン(ALANATE191、日本エヌゼットエムピー社製)100gに、含水結晶ぶどう糖 93.4g、炭酸カルシウム5g、シュガーエステル1g、香料0.5gを加え、混和した後、打錠機でタブレット状に打錠して、本発明の消化管トランスポーター機能抑制剤を製造した。
(消化管トランスポーター機能抑制剤の製造)
乳清タンパク質濃縮物(WPC)(サンラクトN2、太陽化学社製)100gに、含水結晶ぶどう糖 93.4g、炭酸カルシウム5g、シュガーエステル1g、香料0.5gを加え、混和した後、打錠機でタブレット状に打錠して、本発明の消化管トランスポーター機能抑制剤を製造した。
(消化管トランスポーター機能抑制用乳飲料の製造)
乳酸菌(L. gasseri SP株)およびビフィズス菌(B. longum SP株)をそれぞれ脱脂乳培地で38℃、4時間培養し、発酵乳を調製した。この発酵乳を10,000 xg、30分間遠心分離して、その上清を、 1 l当たり200mlとなるように生乳に添加し、均質圧力120kg/cm2でホモジナイズした後、 75℃で15秒間加熱殺菌して、本発明の消化管トランスポーター機能抑制用乳飲料を製造した。
(消化管トランスポーター機能抑制用乳酸飲料の製造)
乳清タンパク質濃縮物(WPC)(サンラクトN2、太陽化学社製)510gを、乳酸でpH3.2に調整した脱イオン水50 lに溶解した後、砂糖1kg、香料10gを溶解して、90℃で15秒間加熱殺菌を行った。これを50 mlずつ蓋付きガラスビンに密封充填し、消化管トランスポーター機能抑制用乳酸飲料を製造した。
(消化管トランスポーター機能抑制用ビスケットの製造)
バターミルク粉(雪印乳業社製)0.5(重量)%、小麦粉 50.0(重量)%、砂糖 20.0(重量)%、食塩 0.5(重量)%、マーガリン 12.5(重量)%、卵 12.0(重量)%、水 3.7(重量)%、炭酸水素ナトリウム 0.1(重量)%、重炭酸アンモニウム 0.2(重量)%、炭酸カルシウム 0.5(重量)%の割合で原料を混合し、ドウを作成して成型した後、焙焼して、消化管トランスポーター機能抑制用ビスケットを製造した。
(消化管トランスポーター機能抑制用ゼリーの製造)
乳清タンパク質濃縮物(WPC)(サンラクトN2、太陽化学社製)1.0(重量)%、果糖 20.0 (重量)%、グラニュー糖 15.0(重量)%、水飴 5.0(重量)%、寒天 1.0(重量)%、香料 0.11(重量)%、カルシウム 0.1(重量)%、水 57.79(重量)%の割合で原料を混合した後、容器に充填し、加熱滅菌して、消化管トランスポーター機能抑制用ゼリーを製造した。
トリブチルスズ(TBT)の透過性に及ぼす食品成分の影響を示す。 トリブチルスズ(TBT)の細胞内蓄積に及ぼす食品成分の影響を示す。 ダウノマイシン(Daunomycin)の細胞内蓄積に及ぼす食品成分の影響を示す。

Claims (2)

  1. 乳由来成分を有効成分とする消化管トランスポーター機能抑制剤であって、
    消化管トランスポーターが、MDR1及び/またはMRP3であり、かつ、
    乳由来成分が、バターミルク、カゼイン、乳清タンパク質濃縮物、あるいは発酵乳培養上清のいずれか一種以上である、
    消化管トランスポーター機能抑制剤
  2. 乳由来成分を0.5〜100重量%含有した請求項1に記載の消化管トランスポーター機能抑制剤。


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