JPH0873375A - 腸管透過抑制剤 - Google Patents

腸管透過抑制剤

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JPH0873375A
JPH0873375A JP6234282A JP23428294A JPH0873375A JP H0873375 A JPH0873375 A JP H0873375A JP 6234282 A JP6234282 A JP 6234282A JP 23428294 A JP23428294 A JP 23428294A JP H0873375 A JPH0873375 A JP H0873375A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 腸管でのアレルゲン物質などの透過を抑制す
る腸管透過抑制剤を提供する。 【構成】 腸管透過抑制剤の有効成分として、β−ラク
トグロブリンなどのホエー蛋白質またはその分解物や血
清アルブミンまたはその分解物を用いる。 【効果】 この腸管透過抑制剤は、腸管での物質の透過
性を減少させる効果を有するので乳幼児の食物アレルギ
ーなどの予防および治療に有用であり、また、通常の食
品素材として用いられている成分であり安全性も高いの
で、飲食品や医薬品などの素材として適している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ホエー蛋白質またはそ
の分解物を有効成分とする腸管透過抑制剤に関する。ま
た、本発明は、血清アルブミンまたはその分解物を有効
成分とする腸管透過抑制剤に関する。本発明の腸管透過
抑制剤は、腸管でのアレルゲン物質などの透過を抑制す
るので、アレルギー疾患などの予防や治療に有用であ
る。
【0002】
【従来の技術】腸管の上皮細胞間には、粘膜表層細胞同
士を洩れなくシールし、表層細胞の周囲を鉢巻き状に取
り囲んでいるタイト・ジャンクション(Tight Junctio
n) が存在している。そして、イオンなどの低分子物質
は、このタイト・ジャンクションの間を通り抜けて体内
に吸収されることが知られている。また、消化されずに
残った細菌、ウィルス、蛋白質などの巨大分子も腸管の
上皮細胞間を通り抜けて体内に吸収される場合があり、
これが感染症や食物アレルギーを引き起こす原因のひと
つと考えられている。なお、タイト・ジャンクションの
物質に対する透過性は一定でなく、グルコース、サイト
カラシンDなどの存在により変化することが知られてい
る。しかし、これらの物質はいずれもタイト・ジャンク
ションの透過性を緩めるものであり、タイト・ジャンク
ションの透過性を減少させる物質の存在については知ら
れていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、食物ア
レルギーの予防という観点から、腸管上皮細胞間のタイ
ト・ジャンクションの物質透過を抑制する物質につい
て、モデル系を作成し鋭意検討を行ったところ、ホエー
蛋白質またはその分解物がタイト・ジャンクションでの
物質透過を抑制する作用を有することを見出した。そし
て、ホエー蛋白質および/またはその分解物を用いた動
物実験により、アレルゲン物質の透過が抑制されること
を確認し、本発明を完成するに至った。したがって、本
発明は、タイト・ジャンクションの物質透過を抑制する
作用を有し、その結果としてアレルギーなどを予防する
効果を発揮する腸管透過抑制剤を提供することを課題と
する。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明では、腸管透過抑
制剤の有効成分として、ホエー蛋白質、ホエー蛋白濃縮
物(WPC)、ホエー蛋白単離物(WPI)などやそれ
らの分解物をそのまま用いることもできるが、特に、ホ
エー蛋白質中に含まれる血清アルブミンまたはその分解
物やβ−ラクトグロブリンまたはその分解物を用いると
良い。また、血清アルブミンについては、哺乳動物由来
のものであれば使用可能であるが、入手が容易なウシ血
清アルブミン(BSA)を用いると良い。なお、分解物
については、通常、蛋白質の加水分解に用いられる蛋白
質加水分解酵素で加水分解したものでも良いし、あるい
は、酸やアルカリで分解したものでも良い。
【0005】本発明の腸管透過抑制剤を投与するに際し
ては、有効成分のホエー蛋白質またはその分解物をその
ままの状態で用いることもできるが、常法に従って、粉
末、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤など製剤化
して用いることもできる。さらに、この腸管透過抑制剤
を各種栄養剤や食品などに混ぜてアレルギーを予防する
ことも可能である。
【0006】本発明の腸管透過抑制剤の投与量は、年
齢、治療効果、病態などにより異なるが、通常、一人当
たり一回に体重1kg当たり 130mg〜13g の範囲で、一日
一回から数回投与すればよい。
【0007】なお、本発明の腸管透過抑制剤の効果につ
いては、先に本発明者らが確立したタイト・ジャンクシ
ョンの物質透過性を定量する実験系を用いて行った。以
下、その実験系について説明する。
【0008】ヒト結腸癌由来の培養細胞株であるCaco-2
(ATCC HTB37)を 100μg/ml濃度のタイプIコラーゲン
(新田ゼラチン製)溶液でコーティングした透過性膜
(ミリセルCM、ポアサイズ;0.4 μm, 0.6cm2 、ミリ
ポア製)上に撒き、10%ウシ胎児血清(バイオセラム
製)を含むDMEM培地(日本水産製)で一定期間培養
した後、培地を洗浄してハンクス液に置き換え、ミリセ
ルERS(ミリポア製)で経上皮電気抵抗を測定したと
ころ、培養開始48時間で 550Ω・cm2 となった。これ
は、タイト・ジャンクションが形成されて安定化したこ
とを示す。
【0009】一方、10%ウシ胎児血清を含むDMEM培
地に代えて無血清培地(コスモバイオ製)を用い、Caco
-2(ATCC HTB37)を同様に培養して経上皮電気抵抗を測
定したところ、最大値で 160Ω・cm2 であり、タイト・
ジャンクションの形成が不十分であることが判った。そ
こで、この無血清培地にウシ胎児血清を添加し、1時間
処理した後、経上皮電気抵抗を測定したところ、DME
M培地を用いて培養したものと同様の値まで上昇し、タ
イト・ジャンクションが形成されて安定化したことが判
った。したがって、この無血清培地を用いた実験系によ
り、タイト・ジャンクションを形成し、腸管透過抑制効
果を示す物質の選択を行うことができると考えた。図1
に経上皮電気抵抗を測定する実験系を示す。
【0010】
【試験例1】ホエー蛋白質のタイト・ジャンクション形
成促進効果について、上述の実験系により確認した。
【0011】無血清培地を用いてCaco-2(ATCC HTB37)
を透過性膜上で一日培養した後、10%ホエー蛋白質溶液
を無血清培地に添加してさらに培養し、経上皮電気抵抗
を測定した。その結果を図2に示す。
【0012】
【試験例2】ホエー蛋白質中のタイト・ジャンクション
形成促進に有効な画分について、逆相HPLCでホエー
蛋白質を分画し、上述の実験系により確認した。
【0013】なお、逆相HPLCの条件を以下に示す。
カラム:Asahipak ODP-50 10× 250mm (旭化成工業株式
会社製) 、流速:2ml/min.、流動相: 0.1%トリフルオ
ロ酢酸を含む超純水、溶出相:アセトニトリル、グラジ
ェント: 0.1%トリフルオロ酢酸を含む超純水で平衡化
した後、0〜30分までは1%/min.でアセトニトリルを
増加させ、30〜65分でアセトニトリルを直線的に30%か
ら 100%に上げた。試料:ホエー蛋白質1ml。図3に逆
相HPLCのチャートと分画した各画分の番号を示す。
なお、このようにして得られた各画分については、蒸留
水で希釈した後、凍結乾燥を行った。
【0014】無血清培地を用いてCaco-2(ATCC HTB37)
を透過性膜上で一日培養した後、10%濃度となるよう調
製した各画分の溶液を無血清培地に添加してさらに培養
し、経上皮電気抵抗を測定した。その結果を図4に示
す。SDS−ポリアクリルアミド電気泳動の結果、経上
皮電気抵抗が最も高かった第5画分にはβ−ラクトグロ
ブリンが多く含まれており、また、第3画分には血清ア
ルブミンが多く含まれていることが判った。
【0015】
【試験例3】β−ラクトグロブリンのタイト・ジャンク
ション形成促進効果について、上述の実験系により確認
した。
【0016】常法〔R.Aschaffenburg and J.Drewry, Bi
ochem.J., vol.65, p.273 (1957)〕に従って生脱脂乳よ
り得たβ−ラクトグロブリン含有画分を、さらにDEAE-S
ephacel(ファルマシア社製)で精製し、β−ラクトグロ
ブリンを得た。
【0017】無血清培地を用いてCaco-2(ATCC HTB37)
を透過性膜上で一日培養した後、β−ラクトグロブリン
を各濃度で無血清培地に添加してさらに培養し、経上皮
電気抵抗を測定した。その結果、5μmole/lのβ−ラク
トグロブリンを添加することにより、経上皮電気抵抗は
1.4倍以上増加し、また、10μmole/lのβ−ラクトグロ
ブリンを添加することにより、経上皮電気抵抗は2倍以
上増加した。
【0018】
【試験例4】ウシ血清アルブミンのタイト・ジャンクシ
ョン形成促進効果について、上述の実験系により確認し
た。
【0019】無血清培地を用いてCaco-2(ATCC HTB37)
を透過性膜上で一日培養した後、ウシ血清アルブミン
(シグマ製)を各濃度で無血清培地に添加してさらに培
養し、経上皮電気抵抗を測定した。その結果、5μmole
/lの血清アルブミンを添加することにより、経上皮電気
抵抗は2倍以上増加した。
【0020】
【試験例5】血清アルブミン酵素加水分解物のタイト・
ジャンクション形成促進効果について、上述の実験系に
より確認した。
【0021】10%濃度のウシ血清アルブミンを溶解した
蟻酸アンモニウム緩衝液(pH 8.0)に、基質濃度の1/100
量のトリプシンを添加し、37℃で12時間反応させた。そ
して、トリプシンと同量の大豆トリプシンインヒビター
を添加することにより反応を停止し、血清アルブミン酵
素加水分解物を得た。
【0022】無血清培地を用いてCaco-2(ATCC HTB37)
を透過性膜上で一日培養した後、血清アルブミン酵素加
水分解物を無血清培地に添加してさらに培養し、経上皮
電気抵抗を測定した。その結果、5μmole/lの血清アル
ブミン酵素加水分解物を添加することにより、経上皮電
気抵抗は2倍以上増加した。なお、反応停止に用いた大
豆トリプシンインヒビターによる経上皮電気抵抗の変化
は認められなかった。
【0023】
【試験例6】動物実験により、本発明の腸管透過抑制剤
の効果を確認した。実験は一群3匹とし、18日齢のDB
A/2マウス(日本クレア製)を2日間予備飼育した
後、飼料重量の 0.1%及び1%の有効成分を添加した市
販のMF粉末飼料(オリエンタル酵母製)を摂取させ、
7日間飼育した。そして、AIN-76配合 (20%カゼイン
食) の粉末飼料(オリエンタル酵母製)を自由摂取させ
てカゼインを経口投与し、眼底静脈叢より 0.5週 (3日
又は4日) 毎に 100μl 採血して血清中カゼイン特異的
抗体価の変動を測定した。その結果を図5及び図6に示
す。なお、カゼイン特異的抗体価の測定は、以下のよう
に行った。
【0024】ウシαS1−カゼイン(シグマ製)を10μg/
mlの生理的リン酸緩衝液(PBS)に溶解した溶液 100
μl をELISAプレートの各ウエルに添加し、室温に
て2時間放置して、ウシαS1−カゼインを固定した。次
に、0.05%Tween 20を含む生理的リン酸緩衝液(PBS
T)で3回洗浄し、10mg/ml 濃度の血清アルブミン(生
化学工業製) を含む0.1Mクエン酸緩衝液(pH 6.4) 200μ
l を各ウエルに添加した。室温にて2時間放置し、ブロ
ッキングした後、PBSTで3回洗浄し、試料100μl
を各ウエルに添加した。試料は1%血清アルブミン及び
0.05%Tween 20を含む生理的リン酸緩衝液(PBST
B)で血清を 100倍に希釈したものを用いた。4℃にて
17時間放置後、PBSTで3回洗浄し、ビオチン標識抗
マウスIgG(シグマ製)を10,000倍にPBSTBで希
釈したもの 100μl を各ウエルに添加した。室温にて1
時間放置後、PBSTで3回洗浄し、アビジン標識アル
カリフォスファターゼ溶液を 5,000倍にPBSTBで希
釈したもの 100μl を各ウエルに添加した。室温にて
0.5時間放置後、PBSTで3回洗浄し、1Mジエタノー
ルアミン−塩酸緩衝液(pH 9.8)に0.02%塩化マグネシウ
ム及びp-nitrophenyl phosphate 1mg/mlを溶解させた基
質溶液を各ウエルに 100μl 添加し、室温で発色させ、
吸光度(415 nm)を二連で測定した。試料の非特異的吸着
の影響を知るため、カゼイン溶液に替えて、血清アルブ
ミンを10μg/mlのPBSに溶解した溶液 100μl を各ウ
エルに添加し、血清アルブミンを固定したウエルも作成
した。抗体価は一群3匹の吸光値の相乗平均とした。
【0025】図5及び図6に示すように、無添加群では
カゼイン特異的抗体価がカゼイン投与開始後 1.5週で上
昇し始めるのに対し、ホエー蛋白質(WPC)1%添
加、ウシ血清アルブミン(BSA)1%添加、ウシ血清
アルブミン(BSA) 0.1%添加、ウシ血清アルブミン
(BSA)・トリプシン分解物1%添加、ウシ血清アル
ブミン(BSA)・トリプシン分解物 0.1%添加、β−
ラクトグロブリン(b−Lg)1%添加、β−ラクトグ
ロブリン(b−Lg) 0.1%添加の各群では、カゼイン
特異的抗体価が上昇し始める時期が1〜2週間遅れ、ま
た、抗体価も低い値であった。したがって、本発明の腸
管透過抑制剤は、マウスの未熟な腸管において物質の透
過性を減少させ、腸管からのカゼインの生体内への進入
を防止したものと考えられる。このように、食物由来成
分の腸管での透過性を減少させることにより、特に、食
物アレルギー発症に最も影響のある離乳期などに、食物
アレルギーを予防・治療することが可能となる。
【0026】
【実施例1】本発明の有効成分100gとラクトース 65gを
混和し、60メッシュの篩を通した後、アルコール性ポリ
ビニルピロリドン 20gで湿らせ、12メッシュの篩を通し
て乾燥した。そして、タルク 25gと澱粉 10gを加え、常
法により打錠して重量 300mgの錠剤を調製した。
【0027】
【実施例2】本発明の有効成分100g、メチルセルロース
75g、コーンスターチ 40g及び香料を混和し、60メッシ
ュの篩を通した後、アルコール性ポリビニルピロリドン
15gで湿らせ、 0.7mm径ステンレススチールの篩を通し
て顆粒剤を調製した。
【0028】
【発明の効果】ホエー蛋白質またはその分解物、特に、
ホエー蛋白質中に含まれる血清アルブミンまたはその分
解物やβ−ラクトグロブリンまたはその分解物、あるい
は、血清アルブミンまたはその分解物は、タイト・ジャ
ンクションの形成を促進し、腸管での物質の透過性を減
少させる効果を有するので、これらの物質は、乳幼児な
どの食物アレルギーなどの予防および治療に用いる飲食
品や医薬品などの有用な素材である。また、これらの物
質は、通常の食品素材として用いられている成分であ
り、安全性も高いと言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、試験例で用いた経上皮電気抵抗を測定する
実験系を示す。
【図2】は、試験例1で確認したホエー蛋白質のタイト
・ジャンクション形成促進効果について示す。
【図3】は、試験例2で行ったホエー蛋白質の逆相HP
LCによる分画と各画分の番号を示す。
【図4】は、試験例2で確認したホエー蛋白質各画分の
タイト・ジャンクション形成促進効果について示す。
【図5】は、試験例6で確認したホエー蛋白質及び血清
アルブミンの抗体産生抑制効果について示す。
【図6】は、試験例6で確認したβ−ラクトグロブリン
の抗体産生抑制効果について示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 38/00 // A23L 1/30 A A61K 37/18

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホエー蛋白質またはその分解物を有効成
    分とする腸管透過抑制剤。
  2. 【請求項2】 ホエー蛋白質がβ−ラクトグロブリンで
    ある請求項1記載の腸管透過抑制剤。
  3. 【請求項3】 血清アルブミンまたはその分解物を有効
    成分とする腸管透過抑制剤。
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