JP4208799B2 - 炎症性サイトカイン産生抑制剤 - Google Patents

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Description

本発明は、経口投与に適した炎症性サイトカイン産生抑制用医薬組成物に関する。
ラクトフェリンは、哺乳類の乳、涙、唾液、胆汁、精液などの分泌液中、または好中球の二次顆粒に含まれる、分子量約80kDaの鉄結合性糖タンパク質である。X線解析法で2個のローブからなる高次構造が明らかとなり、各々1個ずつ存在する鉄結合部位に、炭酸水素イオンあるいは炭酸イオンの存在下で、3価の鉄イオンがキレート結合する立体構造も報告されている。
さらに、鉄吸収調節作用、抗菌作用、抗炎症作用、抗酸化作用、免疫賦活作用等の多様な生体機能の維持調節を行なっていることが報告されており、生体防御の重要な役割を果たす因子として注目されている。ラクトフェリンの生理活性物質としての認識が高まると共に、食品、飼料、医薬品等への応用も実現化されつつある。
ラクトフェリンが最も多く含まれるのはヒトの初乳であり、5〜10mg/mlの高濃度で存在する。常乳でも1〜2mg/mlのラクトフェリンを含むことから、乳児は誕生後数日の間、1日約3g、その後も1日約1gのラクトフェリンを乳から摂取している計算になる(例えば、非特許文献1参照)。乳児においては、ラクトフェリンは消化酵素による加水分解を完全には受けず、抗体との反応性あるいは鉄との結合性を維持した状態で便から検出されるという報告(例えば、非特許文献2,3参照)があり、消化管内で先述の生理効果を発揮していることが予想される。
しかしながら、ラクトフェリンはもちろんのこと、一般に牛乳・乳製品を摂取する場合、乳児が摂取する場合と成人が摂取する場合において、消化管の発達の程度が異なることは、その効果を評価する際に念頭に置いておかなければならない。例えば、乳児と成人では胃酸や消化酵素の分泌量、小腸における吸収能力等に大きな差がある。
発達した消化管においてラクトフェリンが消化酵素による分解を受けることにより、様々な問題を生ずることが指摘されている(例えば、特許文献1参照)。
ラクトフェリンを経口摂取する場合に生じる問題の一つとして、その効果を発揮するには、大量の摂取が必要であるということがある。例えばC型肝炎患者に牛乳のラクトフェリンを一日当たり3.6gと大量に経口投与すると病状の改善が認められるが、一日当たり1.8gでは有意な病態の改善が認められていないため、実用化が阻まれている。また、マウスの抗癌剤投与によるバクテリアルトランスロケーションから菌血症を惹起する系で、ラクトフェリン経口投与によるバクテリアルトランスロケーション阻止効果は再現性が乏しい。これらの結果は経口摂取されたラクトフェリンの多くが消化酵素の影響を受け易く、体内に吸収されることが困難であり、本来の機能を発揮し得ないことを示している。
特に、経口摂取されたラクトフェリンが小腸から取り込まれた後、吸収されて血中やリンパ中に運ばれ、生体内で生理活性作用がより効果的に発揮できるようになるには、経口摂取されたラクトフェリンが消化酵素の影響を受けても活性が低下することなく小腸に確実に運ばれなければならない。
このような問題を解決するためには、ラクトフェリンが消化酵素による分解を受けても活性が低下しないようにすることが望まれる。先述の特許文献1では、腸において溶解してラクトフェリンが放出されるような腸溶性製剤とする改善策が開示されており、この腸溶性製剤の摂取により、ラクトフェリン単独での摂取よりも高い機能が確認されている。消化酵素の影響を受け易いラクトフェリンが、腸溶性製剤にすることにより、腸管上皮細胞やパイエル板から効率よく取り込まれて血中に入り、腸管循環し、効果を発揮しやすい状態にあることが示唆される。
生理活性タンパク質であるラクトフェリンが未変化で胃を通過し、小腸に流入すると、これまで未知であった作用を発揮したり、作用が確実に発現したりすることに加え、投与量の減少が見込まれる。そのため、消化酵素による分解を受けても活性が低下しないようにすることが望まれていた。しかしながら、腸溶性製剤のような錠剤やカプセル剤という形態は、健康食品、いわゆるサプリメントとしての応用は可能であるが、錠剤という形態に抵抗感を感じる人は少なくない。したがって、通常の食品の形で摂れるように、一般の食品に添加可能であり食品加工工程を経ても生理活性や品質を損なわないもの、例えば加熱にも耐性があるような形態がさらに望まれていた。また、錠剤やカプセル剤は加工価格が高いという問題点もあり、日常容易に摂取するのに実用性が低かった。
次に、炎症性サイトカインの背景技術について述べる。
炎症性サイトカインとはリンパ球やマクロファージなどから産生され、細菌やウイルス感染、腫瘍、組織損傷に伴う炎症反応に関与する物質である。例えばインターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−6(IL−6)、腫瘍壊死因子(TNF−α)、GM−CSF等がある。これらのサイトカインは生体内で肝臓に働き、急性期タンパク質の合成と分泌を誘導したり、好中球の内皮細胞への接着を亢進させるほか、インターロイキン−8(IL−8)、MCP−1などのケモカインを誘導することによって炎症部位に好中球、単球、あるいはリンパ球を遊走させ、炎症を惹起する作用がある(例えば、非特許文献4参照)。
ラクトフェリンの炎症性サイトカイン産生抑制作用に関してはこれまでにいくつかの報告がある。ラクトフェリンは、IL−1、TNF−α等のサイトカインがリポポリサッカライド(LPS)によって生体内のヒト単球から放出されるのを抑止することが知られている(例えば、非特許文献5参照)。また、エンドトキシン注入の24時間前にマウスにラクトフェリンを静注した結果、エンドトキシンにより誘導されるTNF−αおよびIL−6の血清中濃度の上昇を阻害したことが報告されている(例えば、非特許文献6参照)。これらのメカニズムは十分解明されていないが、ラクトフェリンが直接LPSに結合することにより、全身性の反応を阻害しているものと考えられている。以上のようにラクトフェリンにはLPS誘導性の炎症性サイトカインの過剰な産生を抑制することが確認されている。
また、ラクトフェリン自身のみでなく、ラクトフェリン由来ペプチドも炎症性サイトカイン産生抑制作用をもつことが開示されている。すなわち、ウシラクトフェリンのトリプシン加水分解物でカットオフ値が10,000ダルトンである炎症性サイトカイン抑制ペプチド、WQWR(アミノ酸残基41〜44位)、EDLIWK(アミノ酸残基283〜288位)、ETAEEVK(アミノ酸残基352〜358位)およびLGAPSITCVR(アミノ酸残基48〜57位)とCRのC残基がS−S結合したペプチドLGAPSITC(−CR)VRが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
炎症性サイトカインの過剰産生により引き起こされる病態には、全身性炎症反応症候群、慢性関節リュウマチなどの膠原病、アレルギー疾患、動脈硬化、インスリン抵抗性、糖尿病などの代謝性疾患や、多発性硬化症、移植片対宿主症、ウイルス肝炎、HIV感染などの感染症等があり、炎症性サイトカインの過剰な産生を抑制することは、これら病態の予防、治療、改善、再発防止に非常に有益となりうる。そのため、過剰な炎症性サイトカインの産生を抑制できるような成分、さらにはそれを含む飲食品が強く望まれていた。
特開2002−161050 特開2004−155751 高橋敞敏、New Food Industry,33(3),73,1991 Spik G et al., Acta Paediatr. Scand.71,979,1982 Goldman AS et al.,Pediatr.Res.,27,252,1990 生化学辞典,第3版,東京化学同人,1998年 Crouch SP et al.,Blood,80,235−240,1992 Machnicki M et al., International Journal of Experimen tal Pathology, 74,433−439,1993
本発明は、従来のラクトフェリン単独の経口投与に比して、ラクトフェリンの
炎症性サイトカイン産生抑制作用をより効果的に生体内で発揮できる方法を導き
出し、かつ連続摂取可能で、摂取に伴う副作用がほとんどない炎症性サイトカイ
ン産生抑制用医薬組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、ラクトフェリンの炎症性サイトカイン産生抑制作用について鋭意検討を重ねた結果、一般にラクトフェリンの食品への応用がしやすい形態において、炎症性サイトカイン産生抑制剤に消化酵素による分解を受けても活性が低下しないようにするためには、ラクトフェリンが持つ生理効果を損なわないで修飾することが必要であるという結論に達した。そして、ラクトフェリンと鉄を含む溶液とを混合して鉄-ラクトフェリンの形態にすることにより、この鉄-ラクトフェリンが消化酵素による分解を受けても活性が低下しないようになること、さらに、ラクトフェリンに一定の割合で、炭酸及び/又は重炭酸と鉄とが結合した鉄-ラクトフェリン結合体あるいは鉄-ラクトフェリン複合体にすることにより、消化酵素による分解を受けても活性が低下しないようになることを見出した。
本発明の鉄−ラクトフェリンは、ペプシン、トリプシンを用いた人工消化試験により、通常のラクトフェリンと比べて消化が限定的であることを確認した。
経口的に摂取されたラクトフェリンは胃内でペプシン消化を受け易く、ラクトフェリシンという塩基性の強いペプチド断片が生成し、抗菌作用などの生物活性を示すことが知られている。その一方で、経口摂取されたラクトフェリンの多くはそのままでは消化を受けるため、本来の機能を発揮し得ない可能性がある。本発明者らは、鉄−ラクトフェリンとすることで消化酵素による分解が限定的となり、ラクトフェリン分子が小腸のレセプターまで達し、吸収され、活性を失うことなく炎症性サイトカイン産生抑制作用を発揮することを見出した。
本発明では、このラクトフェリンに確認されていた炎症性サイトカイン産生抑制作用が、酵素による消化で消失する一方、鉄−ラクトフェリンでは酵素による分解を受けても炎症性サイトカイン産生抑制作用が活性を失うことなく残存することを見出したものである。鉄−ラクトフェリンは安全性も確認され、さらに鉄独特の収斂味もなく、ラクトフェリン素材として一般の飲食品に配合し、摂取することに適している。背景技術の項で言及した機能性ペプチドとしてラクトフェリンを摂取するという方法もあるが、乳タンパク質加水分解物から該ペプチドを単離精製することは経済的な面から実用的ではない。また、ペプチドで摂取することよりも、ラクトフェリンそのものを摂取することのほうが、よりイメージは良いと考えられる。
さらに、本発明者らは、炎症性サイトカイン産生抑制の機能について様々な可能性を考えて、従来より知られているラクトフェリンが直接LPSに結合して、すなわちラクトフェリンとLPSの共存下で炎症性サイトカイン産生を抑制する評価系に加えて、ラクトフェリンが直接LPSに結合しない、すなわちラクトフェリンとLPSの非共存下で炎症性サイトカイン産生を抑制する評価系での評価を行った。前者は実際に起こっている炎症を抑える治療ということを考慮したモデル系であるのに対して、後者はこれから起こる炎症の予防ということを考慮したモデル系に相当する。
ラクトフェリンとLPSの非共存下で炎症性サイトカイン産生を抑制する評価系において、鉄−ラクトフェリンが消化酵素による分解を受けることにより、炎症性サイトカイン産生抑制作用が飛躍的に高まることを本発明者らは見出した。
このことは、鉄−ラクトフェリンを経口的に摂取した場合に、消化管内で消化酵素による分解を受けることでその分解物がより強い炎症性サイトカイン産生抑制作用を発揮することを示唆している。そこで、本発明者らは、動物実験を行って鉄−ラクトフェリンを経口摂取した場合に炎症性サイトカイン産生抑制効果があることを確認した。
したがって、鉄-ラクトフェリンを経口摂取することにより、炎症の予防から治療まで幅広く効果を発揮することができる。
本発明は、鉄−ラクトフェリンを有効成分とする炎症性サイトカイン産生抑制
用医薬組成物である。
また、本発明は鉄−ラクトフェリンが、ラクトフェリン1分子当たり、少なくとも3原子の鉄を保持した鉄−ラクトフェリンである炎症性サイトカイン産生抑制用医薬組成物である。
さらに、本発明は、鉄−ラクトフェリンが、ラクトフェリンに、炭酸及び/又は重炭酸と鉄とが結合した鉄−ラクトフェリン結合体及び/又は鉄−ラクトフェリン複合体である炎症性サイトカイン産生抑制用医薬組成物である。
本発明により、経口投与する場合に効果的に生理活性を発揮させることのできる炎症性サイトカイン産生抑制用医薬組成物が提供される。

ラクトフェリンは、通常、1分子当たり鉄を2原子キレート結合する。本発明で使用する鉄−ラクトフェリンは、ラクトフェリンに特定の処理を行うことにより、ラクトフェリン1分子当たり少なくとも3原子の鉄を安定に保持できるようにしたものである。このような鉄−ラクトフェリンは従来より知られている。例えば、ラクトフェリン溶液に鉄塩を添加し、アルカリを加えて溶液のpHを高めることによって得られる、鉄を安定に保持したラクトフェリン粉末(特開平7−17825号公報)、ラクトフェリンのアミノ基に重炭酸イオンを介して鉄が結合した耐熱性ラクトフェリン−鉄結合体(特開平6−239900号公報)、あるいはラクトフェリンに一定の割合で、炭酸及び/又は重炭酸を含む溶液と、鉄を含む溶液とを添加して得られる鉄−ラクトフェリン複合体(特開平7−304798号公報)等が知られている。
本発明で使用することができる鉄−ラクトフェリンは、これらいずれの鉄−ラクトフェリンであっても良い。鉄−ラクトフェリンは、鉄とラクトフェリンとが結合した状態のものであって、鉄とラクトフェリンとが結合しているか、あるいは他の物質を介して鉄とラクトフェリンとが結合しているものであって、いわゆる、鉄がイオン状態で存在していないものであれば良い。特にラクトフェリン類に炭酸及び/又は重炭酸を含む溶液と鉄を含む溶液とを添加して得られる前記の「鉄−ラクトフェリン結合体」や「鉄−ラクトフェリン複合体」を例示することができ、これらの鉄−ラクトフェリンを使用することが望ましい。これらの鉄−ラクトフェリンは、耐熱性を有しているので、医薬品や飲食品に添加し加工する際に加熱処理しても炎症性サイトカイン産生抑制能の低下が起こり難いという特徴を有している。また、これらの鉄−ラクトフェリンは、鉄の収斂味や金属味等が全く無いという特徴を有しているので、風味上の問題も全くない。
上述したような鉄−ラクトフェリンを製造する際に使用することができる鉄としては、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、乳酸鉄、クエン酸鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄アンモニウム、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、塩化第二鉄、硝酸第一鉄、硝酸第二鉄等を例示することができる。
本発明の炎症性サイトカイン産生抑制剤及び炎症性サイトカイン産生抑制用飲食品に用いる鉄−ラクトフェリンを製造する際に使用することができるラクトフェリンとしては、ウシ由来のラクトフェリンが入手の容易さから最も望ましい。さらに各種哺乳動物のラクトフェリンはそれぞれが高いホモロジーのアミノ酸配列を有することが知られているので、ヒト、スイギュウ、ヒツジ、ヤギ等のラクトフェリンでも得ることができる。
本発明の炎症性サイトカイン産生抑制剤の投与は、投与目的、疾患の種類、症状によって異なり、特に限定されないが、剤型は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、液剤等にして直接投与したり、食品や飲水に混ぜて投与することができ、経口的に投与することが望ましい。また、これらの剤型は、従来から知られている通常の方法で製造することができる。製剤上許可されている担体や賦型剤等と混合して成型する。
また本発明の炎症性サイトカイン産生抑制用飲食品は、鉄−ラクトフェリンを牛乳、乳飲料、発酵乳、ジュース、ゼリー、ビスケット、パン、飴、麺類、ソーセージ等の飲食品、さらには、各種粉乳の他、乳幼児食品、栄養組成物等に配合する。
これらの剤及び飲食品は、炎症性サイトカインの産生抑制能を有するので、炎症性サイトカインの過剰産生により引き起こされるさまざまな病態の予防、治療、改善、再発防止に非常に有益となりうる。
本発明の炎症性サイトカイン産生抑制能を発揮させるための投与量は、投与目的、疾患の種類、症状によって異なり、特に限定されないが、鉄−ラクトフェリンを一日当たり1〜5,000mg、好ましくは4〜1,000mg、さらに好ましくは10〜200mg、摂取できるよう配合量等を調整すれば良い。ラクトフェリンは日常摂取されているものであり、本発明において使用される量では毒性は知られていない。
以下に実施例及び試験例を示し、本発明についてより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
(鉄−ラクトフェリンの調製)
陽イオン交換樹脂のスルホン化キトパール(富士紡績社製)400gを充填したカラム(直径5cm×高さ30cm)を脱イオン水で十分洗浄した後、このカラムに未殺菌脱脂乳40L(pH6.7)を流速25ml/minで通液した。通液後、このカラムを脱イオン水で十分洗浄し、続いて0.7M塩化ナトリウムを含む0.02M炭酸緩衝液(pH7.0)で洗浄した後、0.98M塩化ナトリウムを含む0.02M炭酸緩衝液(pH7.0)で樹脂に吸着した画分を溶出した。そして、この溶出液を逆浸透(RO)膜により脱塩して、濃縮した後、凍結乾燥してラクトフェリン粉末11gを得た。なおこのラクトフェリン粉末には、ラクトフェリンが93重量%含まれていた。
このようにして得られたラクトフェリン10μmolと重炭酸ナトリウム1.2molとを含む溶液1LをA液として作製した。硫酸第二鉄を鉄イオンとして1.5mmol含む溶液1LをB液として作製した。A液にB液を加えた後、分子量5,000カットの限外ろ過膜にて脱塩、濃縮し、模擬緩衝液(pH8.9)にて鉄濃度が94mg/100mlになるように希釈して、鉄−ラクトフェリンを得た。
このようにして得られた鉄−ラクトフェリンは、溶液100ml当たりラクトフェリンを0.9g及び鉄を94mg含有しており、そのまま本発明の炎症性サイトカイン抑制剤として利用可能である。
試験例1
(人工消化鉄−ラクトフェリンのパターン解析)
実施例1で得られた鉄−ラクトフェリン及びラクトフェリンを0.2Mグリシン−塩酸緩衝液でpH4.0に調整し、ラクトフェリンのタンパク質1gあたりペプシン(ペプシンA、Porcine stomach mucosa由来、4,500 units/mg、SIGMA社)20mgを添加し、37℃で2時間反応させた。その後、水酸化ナトリウムでpH7.5に中和し、トリプシン(タイプI、Bovine pancreas由来、11,000 units/mg、SIGMA
社)20mgを添加し、37℃で3時間反応させた。これらの人工消化物の分解パターンは10−25%グラジエントゲル(TEFCO社)を用いた、ポリアクリルアミド電気泳動を行い、CBB染色にて確認した。なお、ここでいう人工消化とは、消化酵素のペプシン、トリプシンにより加水分解を行うことである。
対照として、実施例1で得られた鉄−ラクトフェリン及びラクトフェリンに、上記の酵素を添加しない以外は同様の処理を行い、未消化物の分解パターンを得た。この分解パターンを図1に示す。
図1にみられるように、ラクトフェリンの未消化物では、分子量8万の位置にインタクトな分子が確認できる。そして鉄−ラクトフェリンの未消化物も分子量が変わることなく同位置に同様に確認できる。一方、人工消化物に関しては、ラクトフェリンではほとんどが分子量1万以下の低分子となり、分子量4.3万の位置に一つのフラグメントが残存するのみであった。一方、鉄−ラクトフェリンではインタクトな分子も残存し、さらに分子量5.2万、4.3万、3.5万、2.5万、2万、1.5万の位置に複数の特徴的なフラグメントが量的にも多く残存していた。このように鉄−ラクトフェリンはラクトフェリンに比べて消化酵素による消化が限定的であることがわかった。さらにこの消化を受けた状態においても鉄は沈殿することなく可溶化状態であることも確認できた。
試験例2
(THP−1細胞におけるIL−6産生に対する影響‐LPS共存下‐)
ヒト単球細胞株THP−1細胞(急性単球性白血病患者由来)を用いて鉄−ラクトフェリンのLPS誘導性のIL−6産生に対する影響を調べた。試験例1で作製した人工消化物を用いてTHP−1細胞に添加するという試験を行った。鉄−ラクトフェリンを経口摂取したときに、生体内で酵素による消化を受けた状態で、免疫担当細胞に働きかける状態の細胞実験でのモデル化を試みたものである。
実施例1及び試験例1で作製したラクトフェリン、人工消化ラクトフェリン、鉄−ラクトフェリン、人工消化鉄−ラクトフェリン間で比較した。THP−1細胞(大日本製薬社)を10%熱処理ウシ血清(FBS、インビトロジェン社)ならびにβ―メルカプトエタノールを含むRPMI−1640培地(ニプロ社)、5%CO2、37℃で培養した。分化したTHP−1細胞に、LPS刺激への感受性を高めるために、IFN−γを200U/mlになるように添加した後24時間培養した。その後、LPSを1μg/ml濃度で含むRPMI−1640培地に交換し、1.5×105細胞/ウェルになるように96穴プレートに100μl/ウェル播種した。さらに30分後に試験例1で作製した上記のラクトフェリン、人工消化ラクトフェリン、鉄−ラクトフェリン及び人工消化鉄−ラクトフェリンの各試験物質を終濃度各1、10、100μg/mlになるように各ウェルに100μl/ウェル添加し、24時間培養した。培養後、培養液を適度に希釈し、培養液中のIL−6濃度を、ELISAキット(Pharmingen社)で測定した。測定結果を図2に示す。
図2にみられるように、LPSを予め培地に添加してIL−6を誘導し、その培地に試験物質も共に添加すると、ラクトフェリンではIL−6産生は濃度依存的に抑制されていることが認められた。しかしながら、人工消化ラクトフェリンではその効果は消失していることがわかった。一方、鉄−ラクトフェリンではラクトフェリンと同様に抑制が確認され、さらにその人工消化物においても効果が保持されていることがわかった。
試験例3
(THP−1細胞におけるIL−6産生に対する影響−LPS非共存下−)
LPS非共存下で、ヒト単球細胞株THP−1細胞(急性単球性白血病患者由来)を用いて鉄−ラクトフェリンのLPS誘導性のIL−6産生に対する影響を調べた。試験例2と同様に、培養したTHP−1細胞に、IFN−γを400 U/mlになるよう添加し、1.5×105細胞/ウェルになるように96穴プレートに100μl/ウェル播種した。そこへ試験例1で作製したラクトフェリン、人工消化ラクトフェリン、鉄−ラクトフェリン及び人工消化鉄−ラクトフェリンの各試験物質を終濃度が各100μg/mlになるように各ウェルに100μl/ウェル添加し、24時間培養した。その後3回洗浄し、LPSを0.5μg/ml濃度で含むRPMI−1640培地200μl/ウェルに交換し、さらに24時間培養した。培養後、培養液を適度に希釈し、培養液中のIL−6濃度を、ELISAにて測定した。測定結果を図3に示す。
図3にみられるように、試験物質を予め培地に添加し、その後十分な洗浄の後、LPSを培地に添加してIL−6を誘導すると、ラクトフェリン添加群では、未消化物にはIL−6抑制作用は認められず、人工消化物にはごく弱いIL−6抑制作用が認められた。鉄−ラクトフェリン群では、未消化の状態でも若干IL−6抑制作用は認められたが、人工消化物では強いIL−6抑制作用が確認された。このことは、鉄−ラクトフェリンの消化酵素による消化作用により、IL−6産生抑制活性の高い機能性フラグメントが生成したことを示している。なお、LPSと試験物質が非共存であるため、このIL−6産生抑制作用は、試験物質とLPSとの結合によるものではないことが推察される。
試験例4
(経口投与による腫瘍壊死因子(TNF−α)産生抑制作用)
マウスを用いて鉄−ラクトフェリンのTNF−α産生に対する影響を調べた。5週齢の雄ddYマウス(日本エスエルシー社)に固形飼料および飲水を1週間自由摂取させ馴化させた。1群10匹として、体重の平均値が等しくなるようにラクトフェリン投与群(1.5mg/マウス)、鉄−ラクトフェリン投与群(1.5mg/マウス)を設けた。飼料は5日間連続して1日2回ゾンデを用いて経口投与した。最終投与から2時間後、眼窩採血し、末梢血リンパ球(PBMC)を単離した。PBMCはLPSを1μg/ml濃度で含むRPMI−1640培地で1.5×105細胞/ウェルになるよう希釈して96穴プレートに播種し、24時間培養した。培養後、培養液を適度に希釈し、培養液中のTNF−α濃度を、ELISAキット(GT)により測定した。マンホイットニー検定による統計学的処理により、有意差を検定した。結果を図4に示す。
図4にみられるように、鉄−ラクトフェリン投与群のTNF−α濃度は、ラクトフェリン投与群に対して、有意に低下(*p<0.05)していた。つまり、鉄−ラクトフェリンの経口摂取で炎症性サイトカインであるTNF−α産生を抑制できることを示している。
(鉄−ラクトフェリン含有炎症性サイトカイン産生抑制用飲料の製造)
実施例1で得られた鉄−ラクトフェリン20g、糖類100g、アスコルビン酸1g、クエン酸1g、及び香料適量に、水を加えて、総量1kgとし、ろ過滅菌後、瓶に100mlずつ無菌的に充填して、本発明品である炎症性サイトカイン産生抑制用飲料を製造した。
(鉄−ラクトフェリン含有炎症性サイトカイン産生抑制用乳飲料の製造)
実施例1で得られた鉄−ラクトフェリン10g、脱脂粉乳100g、バター20g、及び水を加えて、総量1kgとし、ろ過滅菌後、瓶に100mlずつ無菌的に充填して、本発明品である炎症性サイトカイン産生抑制用乳飲料を製造した。
ペプシン、トリプシンを用いた、ラクトフェリン、鉄−ラクトフェリンの人工消化パターンをポリアクリルアミド電気泳動法にて解析した結果を示す。対照として上記の酵素を添加しない未消化物のパターンを示す。 THP−1細胞における、LPS共存下でのラクトフェリン、人工消化ラクトフェリン、鉄−ラクトフェリン及び人工消化鉄−ラクトフェリンのLPS誘導IL−6産生に対する影響を示す。 THP−1細胞における、LPS非共存下でのラクトフェリン、人工消化ラクトフェリン、鉄−ラクトフェリン及び人工消化鉄−ラクトフェリンのLPS誘導IL−6産生に対する影響を示す。 ラクトフェリン、鉄−ラクトフェリンの経口摂取後の末梢血単核球のLPS誘導性TNF−αの産生に対する影響を示す。

Claims (2)

  1. ラクトフェリン1分子当たり、少なくとも3原子の鉄を保持した鉄−ラクトフェリンを有効成分とする炎症性サイトカイン産生抑制する為の医薬組成物
  2. 鉄−ラクトフェリンが、ラクトフェリンに、炭酸及び/又は重炭酸と鉄とが結合した鉄−ラクトフェリン結合体及び/又は鉄−ラクトフェリン複合体である請求項1記載の炎症性サイトカイン産生抑制する為の医薬組成物
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