JP4591672B2 - 透明導電膜形成用塗布液及び透明導電膜 - Google Patents
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しかしながら、これらに使用する膜形成装置は真空容器をベースとするため非常に高価であり、また、基板成膜毎に製造装置内の成分ガス圧を精密に制御しなければならないため、製造コストと量産性に問題があるという欠点があった。
この方法では、透明導電膜形成用塗布液の基板上への塗布、乾燥、(加熱)硬化という簡単な製造工程でITO透明導電膜を形成することができるという利点があり、具体的には、ITO微粒子を含有するシリカゾル液(特許文献1参照)や、ITO微粒子とバインダー用シリケートと極性溶媒からなる塗布液(特許文献2参照)を用いて、ガラス等の基材上にスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング等の方法で塗布・乾燥・焼成してITO透明導電膜を形成する製造方法が知られている。
このため、該塗布液はスピンコーティング等で用いるためにエタノールを65〜89%程度含んでおり、特許文献1と同様に乾燥速度が速すぎてインクジェット印刷装置のノズル詰まりを起こす問題、及び前述の塗膜欠陥(にじみ)を生じる問題があり、インクジェット印刷には適用するのは難しかった。
上記の目的を達成するため、本発明が提供する透明導電膜形成用塗布液において、その請求項1に係る発明は、導電性酸化物微粒子と、無機バインダーと、溶媒とからなるインクジェット印刷用透明導電膜形成用塗布液であって、
・前記導電性酸化物微粒子の平均粒径は10〜100nmであり、
・前記無機バインダーはゾル状のシリカを主成分としており、且つ、前記無機バインダーの平均重量分子量(ポリスチレン換算)は3000〜150000であり、
・前記導電性酸化物微粒子に対する前記無機バインダーの配合割合は、該導電性酸化物微粒子100重量部に対し、2〜10重量部であり、
・前記溶媒には、γ−ブチロラクトンが20〜90重量%含有されており、更にエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、水から選択された少なくとも1種類以上が70重量%以下含有されていることを特徴とするものである。
本発明では、導電性酸化物微粒子、無機バインダー、溶媒を含む透明導電膜形成用塗布液において、無機バインダーの平均重量分子量、溶媒の種類や組成を最適化することで、特にインクジェット印刷法等に適用された場合に、優れた膜特性を有する透明導電膜を形成できることを見出して発明を完成するに至っている。
ここで、γ−ブチロラクトンを10〜90重量%としたのは、γ−ブチロラクトンが10重量%未満では、上記導電性酸化物微粒子の分散安定性が悪化すると同時に成膜性も悪くなるため、安定してインクジェット印刷を行えなくなる可能性があるからであり、一方、γ−ブチロラクトンが90重量%を超えると、印刷後の乾燥時にハジキを生じ易くなり、成膜性が悪化するからであり、これを防止するために界面活性剤等を添加することもできるが、その添加量を多くする必要が生じ、得られる透明導電膜の抵抗値や膜強度に悪影響を与えるからである。
ここで、γ−ブチロラクトンが10〜90重量%としたのは、上記と同様の理由によるものであり、また、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、水から選択された少なくとも1種類以上が80重量%以下としたのは、80重量%を超えると、導電性酸化物微粒子、及び無機バインダーの塗布液への配合を考慮すると、γ−ブチロラクトンの量が10重量%未満となり、前述と同様の問題が生じるからである。
また、ノズル部分での溶剤乾燥によるノズル詰まりを防止するため、沸点の低いエタノール等の溶媒は適用できず、上記したように、沸点:100℃以上、好ましくは150℃の溶媒を主要溶媒成分として用いる必要がある。更に、沸点:220℃以上の溶媒を10〜30%含有していると、ノズル詰まりを効果的に防止でき、好ましい。
ITO透明導電膜の導電性は、焼成温度が高いほどITO粒子の粒成長が促進されるので向上する。乾燥・焼成雰囲気については大気雰囲気でも良いが、窒素等の不活性雰囲気や水素等を少量含む還元雰囲気で焼成を行えばキャリア密度が増加して大幅に導電性が向上するので好ましい。上記方法により得られる透明導電膜は、表面抵抗値が100〜10000Ω/□で、膜の透過率が90%以上の特性を有する。
[実施例]
尚、上記シリカゾル液は、メチルシリケート51(コルコート社製商品名)を19.6g、ジアセトンアルコール75.4g、1重量%硝酸水溶液5gと混合し、SiO2(酸化ケイ素)固形分濃度が10重量%で、重量平均分子量が22000のものを調製して得ている。
この透明導電膜形成用塗布液の粘度は2.9mPa・sで、室温に3日間放置しても導電性酸化物微粒子の凝集、あるいは沈降は見られず、インク外観の変化も認められなかった。この透明導電膜形成用塗布液をソーダライムガラス基板上にインクジェット印刷したところ、ノズル詰まりもなくインク吐出性は良好で、かつ形成された塗布膜にはハジキもなく、インク広がり性も適正で、十分にインクジェット印刷可能であった。尚、この透明導電膜形成用塗布液の粘度はB型粘度計を用いて測定した。
インクジェット印刷での大面積ベタ印刷が容易でなく、後記するこの透明導電膜の特性評価(透過率、ヘイズ、表面抵抗値)のための試料採取が困難であるので、透明導電膜の形成をスピンコーティング法で行いこれを評価試料とした。すなわち、上記透明導電膜形成用塗布液を、ソーダライムガラス基板(10cm×10cm×3mm-t)上の全面にスピンコーティング(基板温度:25℃、500rpm×30秒)し、120℃で30分間乾燥した後、窒素雰囲気中300℃で30分間焼成して透明導電膜を得た。この透明導電膜の膜厚は約270nmであった。
尚、これらは同様の透明導電膜形成用塗布液を使用しているので、インクジェット印刷法等を採用しても、スピンコーティング法を採用しても、得られた透明導電膜における膜の特性には変わりはない。
この透明導電膜形成用塗布液の粘度は2.9mPa・sで、室温に3日間放置しても導電性酸化物微粒子の凝集、あるいは沈降は見られず、インク外観の変化も認められなかった。この透明導電膜形成用塗布液をソーダライムガラス基板上にインクジェット印刷したところ、ノズル詰まりもなくインク吐出性は良好で、かつ形成された塗布膜にはハジキもなく、インク広がり性も適正で、十分にインクジェット印刷可能であった。
この透明導電膜形成用塗布液の粘度は2.9mPa・sで、室温に3日間放置しても導電性酸化物微粒子の凝集、あるいは沈降は見られず、インク外観の変化も認められなかった。この透明導電膜形成用塗布液をソーダライムガラス基板上にインクジェット印刷したところ、ノズル詰まりもなくインク吐出性は良好で、かつ形成された塗布膜にはハジキもなく、インク広がり性も適正で、十分にインクジェット印刷可能であった。
この透明導電膜形成用塗布液の粘度は3.9mPa・sで、室温に3日間放置しても導電性酸化物微粒子の凝集、あるいは沈降は見られず、インク外観の変化も認められなかった。この透明導電膜形成用塗布液をソーダライムガラス基板上にインクジェット印刷したところ、ノズル詰まりもなくインク吐出性は良好で、かつ形成された塗布膜にはハジキもなく、インク広がり性も適正で、十分にインクジェット印刷可能であった。
この透明導電膜形成用塗布液の粘度は2.9mPa・sで、室温に3日間放置しても導電性酸化物微粒子の凝集、あるいは沈降は見られず、インク外観の変化も認められなかった。この透明導電膜形成用塗布液をソーダライムガラス基板上にインクジェット印刷したところ、ノズル詰まりもなくインク吐出性は良好で、かつ形成された塗布膜にはハジキもなく、インク広がり性も適正で、十分にインクジェット印刷可能であった。
この透明導電膜形成用塗布液の粘度は11.5mPa・sで、室温に3日間放置しても導電性酸化物微粒子の凝集、あるいは沈降は見られず、インク外観の変化も認められなかった。この透明導電膜形成用塗布液をソーダライムガラス基板上にインクジェット印刷したところ、ノズル詰まりもなくインク吐出性は良好で、かつ形成された塗布膜にはハジキもなく、インク広がり性も適正で、十分にインクジェット印刷可能であった。
この透明導電膜形成用塗布液の粘度は5.8mPa・sで、室温に3日間放置しても導電性酸化物微粒子の凝集、あるいは沈降は見られず、インク外観の変化も認められなかった。この透明導電膜形成用塗布液をソーダライムガラス基板上にインクジェット印刷したところ、ノズル詰まりもなくインク吐出性は良好で、かつ形成された塗布膜にはハジキもなく、インク広がり性も適正で、十分にインクジェット印刷可能であった。
この透明導電膜形成用塗布液の粘度は8.2mPa・sで、室温に3日間放置しても導電性酸化物微粒子の凝集、あるいは沈降は見られず、インク外観の変化も認められなかった。この透明導電膜形成用塗布液をソーダライムガラス基板上にインクジェット印刷したところ、ノズル詰まりもなくインク吐出性は良好で、かつ形成された塗布膜にはハジキもなく、インク広がり性も適正で、十分にインクジェット印刷可能であった。
[比較例1]
この透明導電膜形成用塗布液の粘度は3.1mPa・sで、室温に3日間放置しても導電性酸化物微粒子の凝集、あるいは沈降は見られず、インク外観の変化も認められなかった。この透明導電膜形成用塗布液をソーダライムガラス基板上にインクジェット印刷したところ、ノズル詰まりもなくインク吐出性は良好だったが、形成された塗布膜に著しいはじきを生じ、スピンコーティング評価でも均一な透明導電膜が得られなかったため、透明導電膜の特性評価は行わなかった。
尚、イソホロン(沸点:215.2℃、表面張力:32.3dyn/cm[20℃]、粘度:2.62mPa・s[20℃])は、水と自由混合せず、20℃において水に1.2重量%溶解する溶媒である。
[比較例2]
この透明導電膜形成用塗布液の粘度は2.9mPa・sで、室温に1日間放置すると導電性酸化物微粒子の凝集、沈降が見られ、この透明導電膜形成用塗布液をソーダライムガラス基板上にインクジェット印刷したところ、ノズル詰まりが生じたため、透明導電膜の特性評価は行わなかった。
[比較例3]
この透明導電膜形成用塗布液の粘度は3.0mPa・sで、室温に3日間放置しても導電性酸化物微粒子の凝集、あるいは沈降は見られず、インク外観の変化も認められなかった。この透明導電膜形成用塗布液をソーダライムガラス基板上にインクジェット印刷したところ、ノズル詰まりもなくインク吐出性は良好で、かつ形成された塗布膜にはハジキもなく、インク広がり性も適正で、十分にインクジェット印刷可能であった。
[比較例4]
この透明導電膜形成用塗布液の粘度は2.9mPa・sで、室温に3日間放置しても導電性酸化物微粒子の凝集、あるいは沈降は見られず、インク外観の変化も認められなかった。この透明導電膜形成用塗布液をソーダライムガラス基板上にインクジェット印刷したところ、ノズル詰まりもなくインク吐出性は良好で、かつ形成された塗布膜にはハジキもなく、インク広がり性も適正で、十分にインクジェット印刷可能であった。
[比較例5]
具体的な評価基準としては、先ず、表面抵抗値については、適用するデバイスによりその要求特性は異なるが、各種ディスプレイデバイスに適用される透明電極の中で、適用可能な限界値から判断して、表面抵抗値が10,000Ω/□以下を良好とした。
次に、ヘイズ値については、各種ディスプレイにおいて、視認性や画像の鮮明さから規定される値として、ヘイズ値が2.0以下を良好とした。
また、透明導電膜の強度については、膜をツメで擦り、その傷のつき具合を目視で判断し、全く傷つかないものを○、少し傷つくものを△、著しく傷つくものを×、として耐擦傷性を評価した。
更に、インク外観評価については、導電性酸化物微粒子の凝集、沈降物の発生、透明な上澄み部分の形成などのいずれの項目についても問題のない場合に良好とした。
それらの結果を表1に示す。
透明導電膜の透過率(%)
=[(透明導電膜付ガラス基板ごと測定した透過率)/(ガラス基板の透過率)]×100
各実施例と比較例1を比べると明らかな通り、各実施例の本発明の導電膜形成用塗布液は、溶媒に所定量のγ−ブチロラクトンを用いているか、又はγ−ブチロラクトンを所定の溶媒で置換しているため、塗布液の粘度が約3〜12mPa・sとインクジェット印刷に適しており、導電性酸化物微粒子の凝集・沈降も含めインク外観の変化が見られず、かつ、ノズル詰まり、インク吐出性、ハジキ、インク広がり性等の面から見てインクジェット印刷が可能で、優れた透明導電膜を形成できるのに対し、比較例1の透明導電膜は塗布膜にハジキを生じ、均一な膜が得られていないことがわかる。
Claims (8)
- 導電性酸化物微粒子と、無機バインダーと、溶媒とからなる透明導電膜形成用塗布液であって、
・前記導電性酸化物微粒子の平均粒径は10〜100nmであり、
・前記無機バインダーはゾル状のシリカを主成分としており、且つ、前記無機バインダーの平均重量分子量(ポリスチレン換算)は3000〜150000であり、
・前記導電性酸化物微粒子に対する前記無機バインダーの配合割合は、該導電性酸化物微粒子100重量部に対し、2〜10重量部であり、
・前記溶媒には、γ−ブチロラクトンが20〜90重量%含有されており、更にエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、水から選択された少なくとも1種類以上が70重量%以下含有されている
ことを特徴とするインクジェット印刷用透明導電膜形成用塗布液。 - 前記導電性酸化物微粒子は、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛のいずれか一つ以上を主成分として含有していることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット印刷用透明導電膜形成用塗布液。
- 前記酸化インジウムを主成分とする導電性酸化物微粒子は、インジウム錫酸化物微粒子であることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット印刷用透明導電膜形成用塗布液。
- 前記酸化インジウムを主成分とする導電性酸化物微粒子は、酸素含有雰囲気下で加熱処理されて得られた黄緑色系、又は黄色系微粒子であることを特徴とする請求項2又は3に記載のインクジェット印刷用透明導電膜形成用塗布液。
- B型粘度計で測定した25℃における粘度が、2〜30mPa・sであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット印刷用透明導電膜形成用塗布液。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット印刷用透明導電膜形成用塗布液を、基材に塗布、乾燥、硬化させて得られることを特徴とする透明導電膜。
- 前記塗布が、インクジェット印刷であることを特徴とする請求項6に記載の透明導電膜。
- 表面抵抗値が100〜10000Ω/□で、膜の透過率が90%以上であることを特徴とする請求項6又は7に記載の透明導電膜。
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