JP4589760B2 - レーザ加工方法 - Google Patents

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本発明は、レーザ加工方法及びレーザ加工装置に関し、特にパルスレーザビームを用いて複合材料の加工を行うのに適したレーザ加工方法及びレーザ加工装置に関する。
樹脂薄膜への貫通孔の形成、及び溝の形成等を行う際に、炭酸ガスレーザ(赤外)や、YAGレーザの3倍高調波(紫外)が使用されている。炭酸ガスレーザが出力する波長10μm近辺のレーザ光は、1パルスあたりの樹脂加工速度が速く、厚さ100μm程度の樹脂薄膜であれば、数パルスで貫通孔が形成される。しかしながら、回折限界のため、理論的に波長と同程度大きさのビームスポットにしか集光することができない。工業的に安定な穴あけ加工を行うことができるのは、直径40〜50μm程度までである。このため、近年要求が高まりつつある直径数十μm程度の微細な穴あけ加工に対応できない場合がある。
また、金属上の樹脂薄膜を炭酸ガスレーザでアブレーション加工すると、樹脂薄膜に形成した貫通孔の底面に清浄な金属表面が露出せず、厚さ数μmの残渣が残ってしまう。この残渣を除去するために、YAGレーザの3倍高調波が用いられる。また、炭酸ガスレーザでは加工できないような微細な加工を行う際にも、YAGレーザの3倍高調波が用いられる。ところが、紫外域における樹脂の吸収過程が赤外域における樹脂の吸収過程と異なるため、紫外光を用いた加工では、1パルスあたりの加工速度が遅い。このため、1つの貫通孔を形成するために数十〜百パルス程度が必要になる。
特許文献1に、単パルスのレーザビームから複数パルスのパルス列を形成し、加工対象物にある時間間隔で2つのレーザパルスを入射させる加工方法が開示されている。この方法によると、レーザ誘起プラズマの発生効率が高まり、加工効率を向上させることができる。単パルスから複数パルスを生成する他の例として、特許文献2に、Qスイッチモードロックパルスレーザの出射光から光シャッタで切り出したパルス列を用いて、半導体製造用マスクのリペアを行う技術が開示されている。
特許文献3に、赤外レーザビームに、紫外のエキシマパルスレーザビームを重畳させて金属材料表面に入射させるレーザ加工方法が開示されている。通常、赤外レーザビームの多くのパワーが金属表面で反射されるため、効率のよい加工を行うことが困難である。紫外レーザビームによって表面近傍に高密度プラズマを発生させ、このプラズマに赤外レーザビームを吸収させることにより、赤外レーザビームの吸収効率を高めることができる。
特開平11−221684号公報 特開2002−40627号公報 特開2001-1170号公報
樹脂製の母材中に、母材とは成分の異なる材料からなる含有物が分散されている複合材料を加工する場合について考える。複合材料の例として、例えば、樹脂薄膜中にゴム成分またはセラミックスの微粒子が分散されているもの、またはガラスファイバの編み込みシートを樹脂薄膜中に含浸させたもの等が挙げられる。
特許文献1及び2に開示された方法のように、単一波長のレーザビームで複合材料を加工すると、含有物の残渣が残る場合や、含有物だけが優先的に除去されて所望の形状の穴が形成されない場合がある。また、特許文献3に開示された方法は、金属表面の加工方法であり、複合材料の加工に適用した場合に、高密度プラズマの発生や、赤外レーザビームの吸収率の向上といった現象が生じるか否か不明である。また、赤外用と紫外用との2つのレーザ発振器を準備しなければならない。
本発明の目的は、複合材料の加工に適したレーザ加工方法を提供することである。
本発明の一観点によれば、
(a)第1の物質からなる第1の領域と、該第1の物質とは光吸収係数の異なる第2の物質からなる第2の領域とを含む複合材料を準備する工程と、
(b)前記第2の領域よりも前記第1の領域内に深く侵入することにより、該第2の領域よりも該第1の領域を、より深く除去する第1の波長のレーザビームを、前記複合材料に照射して該複合材料の前記第1の領域の一部及び前記第2の領域の一部を除去する工程と、
(c)前記第1の領域よりも前記第2の領域で、より多く吸収されることにより、該第1の領域よりも該第2の領域を、より深く除去する第2の波長のレーザビームを、前記工程(b)で前記複合材料の一部が除去された領域に照射して、該複合材料の前記第1の領域の一部及び前記第2の領域の一部をさらに除去する工程と
を有するレーザ加工方法が提供される。
第1の波長のレーザビームで、第1及び第2の領域の一方を優先的に除去し、第2の波長のレーザビームで、他方を優先的に除去する。これにより、第1の領域と第2の領域との除去速度の平準化を図ることができ、高品質な加工を行うことが可能になる。
図1(A)に、第1の実施例によるレーザ加工装置の概略図を示す。レーザ光源1が角周波数ωのパルスレーザビームを出射する。レーザ光源1は、例えばNd:YAG等の固体レーザ発振器であり、波長1064nmのパルスレーザビームを出射する。レーザ光源1から出射されたパルスレーザビームが2倍高調波発生器2に入射する。2倍高調波発生器2は、入射したパルスレーザビームの波長変換を行い、角周波数ωの基本波と角周波数2ωの2倍高調波とを含むパルスレーザビームを出射する。
このパルスレーザビームが、4倍高調波発生器3に入射する。4倍高調波発生器3は、入射したパルスレーザビームの波長変換を行い、角周波数ωの基本波、角周波数2ωの2倍高調波、及び角周波数4ωの4倍高調波を含むパルスレーザビームを出射する。
基本波、2倍高調波、及び4倍高調波を含むパルスレーザビームが、分岐器5に入射する。分岐器5は、2枚のダイクロイックミラー5a及び5bを含んで構成される。前段のダイクロイックミラー5aは、4倍高調波を反射し、基本波及び2倍高調波を透過させる。後段のダイクロイックミラー5bは、2倍高調波を反射し、基本波を透過させる。後段のダイクロイックミラー5bを透過した基本波は、ビームダンパ6に入射する。すなわち、分岐器5は、入射するパルスレーザビームの4倍高調波と2倍高調波とを、相互に異なる経路に沿って伝搬させる。4倍高調波の伝搬経路を「第1の経路」7と呼び、2倍高調波の伝搬経路を「第2の経路」8と呼ぶこととする。
第1の経路7内に、可変減衰器11fが配置されている。第2の経路8内に、遅延光学系10及び可変減衰器11が配置されている。遅延光学系10は、入射するパルスレーザビームを遅延させる。可変減衰器11及び11fは、入射するパルスレーザビームを減衰させる。折返しミラー14が、第2の経路8に沿って伝搬するパルスレーザビームを反射させることにより、第2の経路8を第1の経路7と交差させる。
第1の経路7と第2の経路8との交差箇所に、ダイクロイックミラーで構成された合成器15が配置されている。合成器15は、第1の経路に沿って伝搬する4倍高調波を透過させ、第2の経路8に沿って伝搬する2倍高調波を反射することにより、両者を、共通の第3の経路16に沿って伝搬させる。
第3の経路16に沿って伝搬するパルスレーザビームが、ガルバノスキャナ等で構成された走査器18により2次元方向に走査される。走査されたパルスレーザビームが、fθレンズ等で構成される集光レンズ19により、加工対象物30の表面に集光される。加工対象物30は、XYステージ等で構成される保持台20に保持されている。保持台20は、加工対象物30を、その被加工面に平行な2次元方向に移動させることができる。
図1(B)に、加工対象物30に入射するパルスレーザビームのタイミングチャートを示す。時刻t0に、4倍高調波のレーザパルスが加工対象物30に入射する。遅延光学系10により付与された遅延時間分遅れて、時刻t1に、2倍高調波のレーザパルスが加工対象物30に入射する。この2つのレーザパルスの入射が、レーザ発振器1の発振周波数と同一の周波数で繰り返される。4倍高調波への変換効率が、2倍高調波への変換効率よりも低いため、4倍高調波のレーザパルスのピークパワーが、2倍高調波のレーザパルスのピークパワーよりも小さい。図1(A)の可変減衰器11及び11fによる減衰量を調整することにより、2倍高調波及び4倍高調波のレーザパルスのピークパワーを変化させることができる。
次に、図2(A)〜図2(E)を参照して、図1(A)に示した実施例によるレーザ加工装置を用いてレーザ加工する方法について説明する。
図2(A)に、加工対象物30の部分断面図を示す。樹脂製の板状母材31内に多数のフィラー32が分散されている。フィラー32は、例えば合成ゴムで形成されている。合成ゴムのフィラー32を分散させることにより、弾力性を高めることができる。
母材31を形成する樹脂、及びフィラー32を形成する合成ゴムの光学的性質について、説明する。
通常、可視域から波長数百nm程度の波長域においては、多くの材料は、波長が短くなるに従って光吸収係数が大きくなる傾向を示す。母材31及びフィラー32も同様の傾向を示す。すなわち、母材31及びフィラー32の、4倍高調波の波長266nmにおける光吸収係数は、2倍高調波の波長532nmにおける光吸収係数よりも大きい。
また、4倍高調波の波長域において、母材31の光吸収係数がフィラー32の光吸収係数よりも小さい。このため、4倍高調波のレーザビームは、フィラー32よりも母材31内に、より深く侵入する。これにより、フィラー32よりも母材31を、より深く除去する。フィラー32への侵入の深さが浅いため、フィラー32は、極薄い表層部しか除去されない。
2倍高調波の波長域において、母材31の光吸収係数がフィラー32の光吸収係数よりも小さい。2倍高調波の波長域における母材31の光吸収係数は、母材が実質的にアブレーションされない程度に小さい。フィラー32は、2倍高調波によってアブレーションされる。このため、2倍高調波のレーザビームは、母材31よりもフィラー32を、より深く除去する。
図2(B)に示すように、加工対象物30に4倍高調波のレーザパルスを入射させる。これは、例えば図1(B)に示したタイミングチャートの時刻t0に対応する。4倍高調波は、母材31及びフィラー32をアブレーションさせる。アブレーション前の状態を破線で示し、アブレーション後の状態を実線で示す。フィラー32は、極薄い表層部しかアブレーションされないため、フィラー32が露出した領域に、凸部33が残る。
図2(C)に示すように、4倍高調波が照射されてアブレーションされた領域に、2倍高調波のレーザパルスを入射させる。これは、図1(B)に示したタイミングチャートの時刻t1に対応する。母材31は、2倍高調波をほとんど吸収しないため、2倍高調波のレーザパルスの照射では、ほとんどアブレーションされない。これに対し、フィラー32は、2倍高調波を吸収するため、アブレーションされる。アブレーション前の状態を破線で示し、アブレーション後の状態を実線で示す。フィラー32が露出していた凸部33の一部が除去され、表面が平坦に近づく。
図2(D)に示すように、4倍高調波のレーザパルスを入射させる。これは、図1(B)に示したタイミングチャートの2周期目の4倍高調波のレーザパルスに対応する。母材31が相対的に深くまで除去され、フィラー32が露出した部分は、相対的に浅くまでしか除去されない。アブレーション前の状態を破線で示し、アブレーション後の状態を実線で示す。フィラー32の露出した領域に凸部34が残る。
図2(E)に示すように、2倍高調波のレーザパルスを入射させる。これは、図1(B)に示したタイミングチャートの2周期目の2倍高調波のレーザパルスに対応する。フィラー32がアブレーションされることにより、表面が平準化される。
上述のように、4倍高調波を照射する工程(図2(B)及び図2(D))では、母材31の方がフィラー33よりも深い領域までアブレーションされる。2倍高調波を照射する工程(図2(C)及び図2(E))では、母材31はほとんど除去されず、実質的にフィラー32のみがアブレーションされる。2つの波長のパルスレーザビームが交互に照射されるため、母材31とフィラー32との除去速度を平準化し、残渣を生じることなく、所望の形状の穴を形成することができる。
上記実施例では、樹脂製の母材31内に、合成ゴム製の球状のフィラー32が分散された加工対象物を加工する方法について説明した。上記実施例は、その他に、第1の物質からなる第1の領域と、第1の物質とは光吸収係数の異なる第2の物質からなる第2の領域とを含む複合材料の加工にも適用することができる。例えば、エポキシ樹脂中にシリカのフィラーが分散されたプリント基板、ガラスファイバを編み込んだシートをエポキシ樹脂に含浸させたガラスエポキシ基板等の穴あけ加工に適用可能である。
第1の物質及び第2の物質の光吸収特性に基づいて、2種類の波長を適当に選択することが好ましい。例えば、2倍高調波と3倍高調波との組み合わせ、2倍高調波と5倍高調波との組み合わせ、4倍高調波と5倍高調波との組み合わせ等の中から、最適な組み合わせを選択すればよい。
また、4倍高調波の照射時に、母材31がレーザエネルギを吸収することにより発生する熱により、フィラー32を溶融または気化させてもよい。この方法によっても、加工速度の向上を図ることができる。
図3(A)に、第2の実施例によるレーザ加工装置の一部の概略図を示す。以下、図1(A)に示した第1の実施例によるレーザ加工装置との相違点に着目して説明する。
第2の実施例では、第2の経路8内にハーフミラー40が挿入され、第2の経路8に沿って伝搬するレーザビームの約半分の成分が、第2の経路8から分岐される。第2の経路から分岐された経路を、「第4の経路」45と呼ぶこととする。第4の経路45を伝搬するレーザビームは、折返しミラー41、遅延光学系10a、可変減衰器11a、折返しミラー42、1/2波長板43を経由して、偏光ビームスプリッタ44に入射する。
偏光ビームスプリッタ44は、第2の経路8内に配置されており、P偏光成分を透過させ、S偏光成分を反射する。第2の経路8に沿って伝搬するレーザビームがP偏光であるとき、第4の経路45を伝搬するレーザビームは、1/2波長板43によりS偏光に変換される。偏光ビームスプリッタ44が、このS偏光を反射することにより、第4の経路45に沿って伝搬するレーザビームが第2の経路8に戻される。
第2の経路8内に配置された遅延光学系10の遅延時間と、第4の経路45内に配置された遅延光学系10aの遅延時間とを異ならせることにより、2倍高調波のレーザパルスを時間軸上で2つに分離することができる。
図3(B)に、第2の実施例によるレーザ加工装置に保持された加工対象物上におけるレーザパルスのタイミングチャートを示す。時刻t0に、4倍高調波のレーザパルスが現れる。時刻t0よりも後の時刻t1及びt2に、それぞれ2倍高調波のレーザパルスが現れる。時刻t1とt2との間隔は、2つの遅延光学系10及び10aの遅延時間の差を調整することにより、変化させることができる。
第1の実施例で説明した加工対象物30の母材31は、2倍高調波をほとんど吸収しないが、そのピークパワーが大きくなると、多光子吸収が生じ、母材31が損傷を受ける場合がある。第2の実施例では、2倍高調波のレーザパルスのピークパワーが小さくなる。このため、2倍高調波を照射する工程における母材31の予期せぬ損傷を防止することができる。
上記第1及び第2の実施例では、波長ごとにレーザ発振器を準備することなく、複数の波長のレーザビームを利用して、高速かつ高品質なレーザ加工を行うことが可能になる。
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
(A)は、第1の実施例によるレーザ加工装置の概略図であり、(B)は、レーザパルスのタイミングチャートである。 第1の実施例によるレーザ加工方法で加工される加工対象物の断面図である。 第1の実施例によるレーザ加工方法を説明するための、加工途中における加工対象物の断面図(その1)である。 第1の実施例によるレーザ加工方法を説明するための、加工途中における加工対象物の断面図(その2)である。 第1の実施例によるレーザ加工方法を説明するための、加工途中における加工対象物の断面図(その3)である。 第1の実施例によるレーザ加工方法を説明するための、加工途中における加工対象物の断面図(その4)である。 (A)は、第2の実施例によるレーザ加工装置の概略図であり、(B)は、レーザパルスのタイミングチャートである。
符号の説明
1 レーザ発振器
2 2倍高調波発生器
3 4倍高調波発生器
5 分岐器
6 ビームダンパ
7 第1の経路
8 第2の経路
10、10a 遅延光学系
11、11a 可変減衰器
14、41、42 折返しミラー
15 合成器
16 第3の経路
18 走査器
19 集光レンズ
20 保持台
30 加工対象物
31 母材
32 フィラー
33、34 凸部
40 ハーフミラー
43 1/2波長板
44 偏光ビームスプリッタ
45 第4の経路

Claims (5)

  1. (a)第1の物質からなる第1の領域と、該第1の物質とは光吸収係数の異なる第2の物質からなる第2の領域とを含む複合材料を準備する工程と、
    (b)前記第2の領域よりも前記第1の領域内に深く侵入することにより、該第2の領域よりも該第1の領域を、より深く除去する第1の波長のレーザビームを、前記複合材料に照射して該複合材料の前記第1の領域の一部及び前記第2の領域の一部を除去する工程と、
    (c)前記第1の領域よりも前記第2の領域で、より多く吸収されることにより、該第1の領域よりも該第2の領域を、より深く除去する第2の波長のレーザビームを、前記工程(b)で前記複合材料の一部が除去された領域に照射して、該複合材料の前記第1の領域の一部及び前記第2の領域の一部をさらに除去する工程と
    を有するレーザ加工方法。
  2. さらに、工程(b)と工程(c)とを交互に繰り返す請求項1に記載のレーザ加工方法。
  3. 前記工程bで照射される第1の波長のレーザビームと、前記工程cで照射される第2の波長のレーザビームとは、同一のレーザ発振器から出射され、少なくとも一方は波長変換されたレーザビームである請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
  4. 前記第1の領域及び前記第2の領域の一方は、母材であり、他方は該母材に埋め込まれたフィラーである請求項1〜3のいずれかに記載のレーザ加工方法。
  5. 前記第1の領域及び前記第2の領域の一方は、母材であり、他方は該母材に埋め込まれたファイバーである請求項1〜3のいずれかに記載のレーザ加工方法。
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