JP4588351B2 - 制振材料 - Google Patents

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Description

本発明は、高い弾性率を保持しつつ良好な振動吸収性能を有する制振材料に関するものである。当該制振材料は、高い貯蔵弾性率(E’)と損失係数(η)を同時に実現することにより、高い弾性率が要求されるファンに使用し、騒音の原因となる振動を減衰したり、スピーカ用振動板として使用し、クリアな音質を維持しつつ共振や残響を抑えたりすることができるなど、また、電気製品の躯体、筐体等の種々の形態において用いることができる。
従来使用しているファン翼は主として金属、セラミックス、硬化プラスチックなどからなり、いずれもファンとしての使用に耐えうる高強度、高弾性率は達成していても、主としてその静粛化においては大きな課題があった。近年、特に情報処理装置の分野において処理能力の顕著な高性能化、小型化が急速に進められており、送風冷却ファンの使用においては装置の処理能力の高性能化に伴う回路の発熱量の増大や、小型化に伴う高速回転から、益々静粛性が求められるようになっている。
電気・電子機器や車両などに用いられる冷却用、または送風用ファンには、稼動時の高負荷に耐えうる材料として、専ら金属や耐衝撃性の高い合成樹脂が用いられている。しかし、これらの材料は、それ自体ではファン翼の発する振動騒音を抑制する機能を十分には有していないため、ファンの振動騒音を低減する試みが別途行われてきた。
ファンの振動騒音を低減するための従来技術としては、流体力学の観点からいかに空気の疎密波を抑制するファン翼の形状にするかという研究が多くなされ、ファン翼の表面形状を工夫し、振動騒音を低減するファン装置の発明が行われている。例えば、特許文献1(特開平9−184497号公報)には、ファン翼の表面に圧電素子を配し騒音を低減するよう変位制御をする発明が記載されている。また、ファンの発する疎密波の位相を検出しこれを打ち消す信号を別途生成する位相制御回路の発明についても研究が進められている。例えば、特許文献2(特開平11−119781号)には、ファジー制御により騒音振動の消音信号を出力する装置の発明が記載されている。
しかしながら上記の従来技術によっても、なお、ファンの発する振動の抑制と送風効率の両者を同時に好適化する形状を実現することが困難であること、又はモータやファンとは別に位相制御のための新たな装置が必要となるためコストがかかるとともに、システム全体の小型化の観点からは望ましいものではないことなどの課題が残されていた。
ファン翼の発する騒音振動を制振材料の使用により低減する研究も従来行われている。例えば特許文献3(特開2002-212417号公報)には、ポリアミド系ポリマーアロイに双極子モーメントを増大させる活性成分を配合した制振性樹脂組成物から成る静音ファンの発明が記載されている。
上記発明によれば、制振材料の機能により任意のファン翼形状において振動低減効果が望めることとなるため、ファン翼自体の形状は送風効率を好適化するという観点から設計できることに加え、特別な制御装置等をも必要としないという利点がある。
しかし、樹脂とゴムとの混合物に代表される制振材料のうち高い制振性を有するものは流動性も高く、弾性率は低くなる。逆にファン翼としての使用に耐えうる程度に弾性率を高めようとすると制振性能が低下するという欠点がある。特許文献3に記載の静音ファンにおいても、ファン翼として必要な弾性率を確保した結果、その制振効果は十分でなく、実施例に見られる最も良好な結果においても騒音レベルの低減は−0.9dB(A)、音圧にして10%弱の制振効果が認められるにとどまっている。
一方、スピーカ用振動板の分野に着目してみると、従来から使用されている材料としては、木材パルプを使ったパルプ系材料、アルミニウムやマグネシウムなどの金属系材料、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を使った高分子系材料、そして炭素繊維やアラミド繊維などの繊維と樹脂から成るコンポジット系材料の4つに大別することができる。
パルプ系材料は軽量かつ適度の内部損失及び弾性率を有しているため長く使用されてきた。しかしパルプ系材料の場合、抄紙から熱成型加工までの工程が複雑で高コストであること、耐水性に劣ることなど幾つかの欠点が指摘されている。
アルミニウムやマグネシウム、チタンなどの金属系材料からなる振動板の場合は、弾性率が極めて高いものの内部損失が極めて低いため、先の入力信号に対する振動が減衰しにくく、残響による音質の低下が問題となる。また、高周波数領域において発生する共振により、高音域の音質が低下することも問題となる。
ポリプロピレンなどの高分子系材料の場合は、内部損失はパルプ系材料より大きくなるものの弾性率が十分でなく、パルプ系材料に比して入力信号に忠実な振動が生じにくいため、クリアな音質の実現が困難である。また、可聴帯域内で共振が発生しやすいことも音質の低下要因となる。更に、その比重が大きく振動板が重くなるという欠点も指摘されている。
繊維と樹脂から成るコンポジット系材料の場合は、パルプ系材料よりも格段に弾性率が高く、クリアでスピード感のある音質が得られる反面、内部損失がこれよりも劣るため残響を素早く減衰させることができないという問題がある。
そこで弾性率、内部損失およびこれらの適度なバランスを確保することによる、より理想的なスピーカ用振動板の研究、開発が進められてきた。
高分子系材料を用いたスピーカ用振動板については、上述のように弾性率が低いという欠点を補い、かつ内部損失の値を適切に維持するため、制振材料をその素材として用いる発明が従来からなされてきた。例えば、特許文献4(特開平5−125161号公報)には、ポリブチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートに代表されるポリブチレンナフタレンジカルボキシレート(PBN)からなるもの、特許文献5(特開平6−225383号公報)には、テトラシクロドデシル−3−アクリレートなどの環状オレフィン系熱可塑性樹脂、またはこれと4−メチルペンテン樹脂を主成分とするもの、特許文献6(特開平7-53825号公報)には、酢酸ビニル−エチレン共重合体と熱可塑性樹脂とを混合してなるもの、 特許文献7(特開平7−59191号公報)には、シンジオタクチック構造のスチレン系熱可塑性樹脂からなるもの、特許文献8(特開平8−140182号公報)には、2−6キシレノールの重合により得られる非結晶のポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン樹脂の混合物、あるいはこれらのグラフト重合体と結晶性のポリアミド樹脂に各種添加剤を配合した熱可塑性樹脂組成物からなるものが、それぞれ記載されている。
しかしながら上記の先行技術のうち、特許文献4,5,7に記載の発明に関する実施例は、いずれも損失係数(η)が0.05程度にとどまり、制振性能が十分なものではなかった。また、特許文献6,8を含む上記のいずれの先行技術についても、当該高分子系制振材料の有する制振機能は、粘弾性材料の粘性効果および無機充填剤との摩擦効果によるものであり、外部からの振動エネルギーを熱エネルギーに変換し、外部に放出させ、振動エネルギーを損失することにより振動吸収を達成するものである。かかる制振材料の制振効果は、構成成分としての高分子化合物のガラス転移点に基づく温度領域の範囲にのみ制限され、かつ減衰時間を任意に制御することが困難であるという難点があり、また、材料の軽量化には限界があった。
前記の難点を解決できる材料として高分子材料に種々の添加剤を配合した制振材料もまた提案されている。例えば、低分子化合物としてトリアゾール系化合物またはヒンダードフェノール系化合物等をポリマーと複合させた制振材料も提案されるに至っている。かかる提案のなかで特許文献9(特開平11−68190号公報)によれば、塩素化ポリエチレンにベンゾチアゾール系化合物を配合してなる制振材料が、特許文献10(特開2000−44818号公報)には塩基性の極性側鎖を有する塩基性ポリマーにヒンダードフェノール系化合物等を含有させた減衰材料が開示されている。また、特許文献11(特開2002−69424号公報)には、比較的高い損失弾性率(E’’)および貯蔵弾性率(E’)を維持しつつ制振性能を向上する有機ハイブリッド系制振材料に関する発明が記載されている。
しかしながら、上記特許文献9および10においては、制振材料の弾性率向上という点については何らの示唆もなく、これらをファンまたはスピーカ用振動板に直接使用することはできない。また制振付与剤として提案されているヒンダードフェノール系化合物は、ブチル基以上の如き炭素数の大きいアルキル基を有するためにマトリックス材料としてのポリマーまたは無機充填剤との相互作用が強くないことから、制振付与剤とポリマーとの相互作用の数が減少するばかりでなく、高温の場合、相互作用の解離が容易に生じ、振動減衰に必要な性能として高い損失正接(tanδ)を示す使用可能温度領域が狭いという難点を有している。さらに、長期間にわたって制振機能を発揮させるための耐久性にも未だ解決すべき点が多く残されている。また、特許文献11においても貯蔵弾性率(E’)として高々1GPa前後を実現するにとどまっており、ファンまたはスピーカ用振動板として使用するには弾性率が十分と言えるものではなかった。
特開平9−184497号公報 特開平11−119781号 特開2002-212417号公報 特開平5−125161号公報 特開平6−225383号公報 特開平7-53825号公報 特開平7−59191号公報 特開平8−140182号公報 特開平11−68190号公報 特開2000−44818号公報 特開2002−69424号公報
以上の理由から、本発明は、常温(20℃)を含む広範囲の温度領域において高い弾性率と損失係数(η)を同時に有する制振材料と、これを用いたファンおよびスピーカ用振動板を提供することを目的とする。特に通常の冷却・送風ファンの材料として求められる3.0GPa以上の貯蔵弾性率(E’)を維持しつつ、0.08を超える高い損失係数(η)を有する制振材料を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討を重ねたところ、有機高分子材料マトリックスと強い相互作用を示す特定のフェノール系化合物を制振付与剤とし、かつ有機充填剤および/または無機充填剤を配合することによって、高い剛性を維持しつつ、良好な制振性能を発揮する有機系制振材料が得られることをつきとめた。また、当該制振材料は広範囲の温度領域において高度の損失係数(η)を示すため、使用可能温度巾の広い制振材料物を提供することができることを見出し、もってこれを材料するファンおよびスピーカ用振動板を成形することにより上記課題を解決することのできる発明の完成に到った。
本発明によれば、有機ポリマーマトリックス材料が制振付与剤ならびに有機充填剤および/または無機充填剤を含有してなる制振材料であって、該制振付与剤が、次の一般式(I);
(一般式(I)において、
Aは、硫黄原子および/または酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜3の鎖状炭化水素基、芳香族基を有する該鎖状炭化水素基または炭素数5〜8の脂環式炭化水素基であり、
Bは硫黄原子および/または酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜3の鎖状炭化水素基であり、
AおよびBは互いに同一でも異なるものでもよく、
1、R2およびR3は、それぞれ炭素数3以下の炭化水素基、アルキロール基またはアルデヒド基であり、互いに同一でも異なるものでもよく、p、qおよびrは、それぞれ0〜3の整数であり、互いに同一でも異なるものでもよく、
Xはハロゲン原子であり、s、tおよびuはそれぞれ0または1であり、互いに同一でも異なるものでもよく、
x、yおよびzは、それぞれ1〜3の整数であり、互いに同一でも異なるものでもよく、nは0〜200である。)
で表される一種または二種以上のレス・ヒンダードタイプのフェノール系化合物であることを特徴とし、かつ20℃環境下において3GPa以上の剛性および0.08以上の損失係数(η)を有する制振材料
が提供される。
さらに、本発明によれば、前記制振材料を成形加工することにより、騒音源となる振動を減衰し静音を実現するファン、およびクリアでシャープな音質を維持しつつも残響を素早く減衰することのできるスピーカ用振動板
が提供される。
本発明は、(1)有機ポリマーマトリックス材料、(2)制振付与剤として一般式(I)により表わされるフェノール系化合物および(3)有機充填剤および/または無機充填剤とを含有する制振材料に関するものであるが、さらに好ましい実施の態様として下記の1)〜5)に挙げるものを包含する。
1)前記有機ポリマーマトリックス材料が、アクリルゴム、エチレンビニルアセテートまたはポリブチレンサクシネートである前記制振材料。
2)前記有機ポリマーマトリックス材料が、重量割合においてアクリルゴム5〜30重量%、ホモポリプロピレン(結晶性ポリプロピレン)50〜80重量%およびアタクティックポリプロピレン(非晶性ポリプロピレン)15〜30重量%の混合物である前記制振材料。
3)前記制振付与剤が、ヒドロキシル基の片隣接位置にメチル基を有するビスフェノール系化合物である前記制振材料。
4)前記制振付与剤が前記有機ポリマーマトリックス材料の重量に対し5〜15重量%の比率で混合してなる前記制振材料。
5)前記有機ポリマーマトリックス材料が重量比においてアクリルゴムもしくはエチレンビニルアセテート5〜30重量%とポリプロピレンもしくはポリエチレン70〜95重量%の混合物であり、該マトリックス材料が制振付与剤として、2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール)、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび4−ビニルフェノールとメチルメタアクリレート共重合体からなる群より選択される少なくとも一種のフェノール系化合物を、有機ポリマーマトリックス重量を基準として5〜15重量%、ならびに充填剤としてマイカ、炭酸カルシウムおよび酸化チタンからなる群より選択される少なくとも一種の無機物を、制振材料の全重量を基準として10〜50重量%含有してなる前記制振材料。
本発明は、前記の如き(1)有機ポリマーマトリックス、(2)フェノール系化合物である制振付与剤および(3)有機充填剤および/または無機充填剤とからなる構成をとり、貯蔵弾性率(E’)≧3GPaを維持しつつ損失係数(η)≧0.08を与える温度領域が常温から高温にわたる広い範囲を有する制振材料物を提供することができる。また、該制振材料をブレード状に成形することにより、過酷な使用環境に耐えうる高弾性率を有しつつも騒音源となる振動を減衰することができる送風・冷却ファンが提供される。さらには該制振材料をコーン状に成形することにより、入力信号に忠実に振動し、クリアな音質を実現すると共に残響を素早く減衰することができ、特に高周波数領域の音質を改善するスピーカ用振動板が得られるものである。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の制振材料の構成成分として有用であり、制振付与剤のマトリックスとして機能する有機ポリマーとしては、所定の分子量、融点を有し、かつ極性側鎖を有するものであれば、特に限定されるものではなく、具体的には、アクリルゴム、ブチルゴム、クロロプレン、SBR(スチレンブタジエンラバー)、熱可塑性エラストマー(エチレンプロピレンゴム)、ポリ乳酸樹脂をはじめ、ポリウレタン樹脂、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル重合体、エチレン−メタアクリレート共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリブチレン等の塩素化ポリオレフィン等の有機ポリマーを挙げることができる。これらは、制振材料の各種用途に応じて任意に選択して使用することができるが、制振付与剤との相互作用が可能な極性基を有するものであり、環境保全にとっても有効なものが好適である。
かかる有機ポリマーとしては、例えば、アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体、アクリレート−メタクレリレート樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂等を挙げることができるが、本発明に係る制振材料にとって、特に好ましい有機ポリマーは、アクリレート−メタクレリレート樹脂、アクリルゴム、ポリ乳酸樹脂またはアクリルゴムとポリ乳酸樹脂との混合物である。
アクリルゴムは、アクリル酸エステルの重合、またはそれを主体とする共重合により得られるゴム状弾性体である。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル等が、また、共重合させる単量体にはメチルビニルケトン、アクリル酸、アクリロニトリル、ブタジエン、メチルメタクリレート等が用いられる。
また、ポリ乳酸樹脂は、通常、乳酸の脱水重縮合により得られる乳酸オリゴマーをさらに解重合により得られるラクチドを開環重合に供することにより製造され、各種の方法により成形加工されるが、生分解性に優れていることから環境保全の対応にとって有用である。
かかるポリ乳酸樹脂としては、重量平均分子量20万〜100万、好ましくは30万〜80万のものを採用することができ、融点150℃以上のものが好適である。また、ポリ乳酸樹脂は、セルロース、澱粉等の多糖類、その他の添加物を10〜50重量%含有させたものが成形性の観点から特に好ましい。
ポリウレタン樹脂としては、主鎖の繰り返し単位中にウレタン結合−NHCOO−を有し、通常、有機ジイソシアナートと高分子ジオールとの重付加反応により得られるものを用いることができる。有機ジイソシアナートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、4,4’−シクロヘキシルメタンイソシアナート等のポリウレタンの製造にとって一般に使用される原料が挙げられる。高分子ジオール、高分子トリオールとしても、特に限定されるものではないが、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレングリコール等のポリエーテルタイプのものを用いることができる。前記有機ポリマーマトリックス材料として好ましいポリウレタン樹脂は、平均分子量500〜10,000、特に、1,000〜7,000の高分子ジオールを含有するものである。
本発明に係る制振材料の有機ポリマーマトリックスとしては、前記の如き各種重合体のうちでも、アクリレート−メチルメタクレリレート系樹脂、アクリルゴム、ポリ乳酸樹脂、またはアクリルゴムとポリ乳酸樹脂との混合物、エチレンビニルアセテート樹脂とアクリルゴムとの混合物が好ましい。
本発明に係る制振材料を構成する成分である制振付与剤は、
次の一般式(I);
で表わされるフェノール系化合物である。
一般式(I)において表わされる化合物は、立体障害の少ないレス・ヒンダードタイプのフェノール系化合物を包含する。かかるレス・ヒンダードタイプのフェノール系化合物を選択することにより、有機ポリマーマトリックス材料との相互作用が著しく進行し、ヒンダードタイプフェノール系化合物に比して最大損失正接(tanδ)が高く、かつ使用可能温度巾が広いという制振作用効果を奏することができることを見出したものである。
前記一般式(I)は、少なくとも2個のフェノール環を有することを示したものであり、かつ、フェノール環を前記AおよびBで示す結合基により連結してなる高分子化合物をも包含したものであることを開示したものである。
式中、Aは、硫黄原子および/または酸素原子を含んでいてもよい短鎖炭化水素基、すなわち、炭素数1〜3の鎖状炭化水素基である。鎖状炭化水素基は、二価炭化水素基であり、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等を挙げることができる。また、これらの炭化水素基に芳香族基を結合したもの、例えばフェニル基を結合したメチレン基
前記炭化水素基にヒドロキシル基を有する芳香族基を結合したもの、例えば、フェノール基を有するメチレン基
を挙げることができる。さらに前記Aとしては、炭素数5〜8の脂環式炭化水素基、例えば、シクロヘキシル基
も挙げることができる。
一般式(I)において、Bは、硫黄原子および/または酸素原子を含んでいてもよい炭素数1〜3の鎖状炭化水素基であり、具体的には二価炭化水素基、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基またはイソプロピレン基であり、AおよびBは、互いに同一または異なるものでもよい。
一般式(I)において、R1、R2およびR3は、それぞれ炭素数3以下の炭化水素基、アルキロール基またはアルデヒド基であり、具体的には、炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基から選択されるアルキル基を、また、アルキロール基としては、例えば、メチロール基、エチロール基を、さらに、アルデヒド基としては、例えば、ホルミル基を挙げることができる。かかるR1、R2およびR3は、互いに同一でもまたは異なるものでもよい。また、R1、R2およびR3の芳香環への結合数を示すp、qおよびrは、それぞれ0〜3の整数であり、1または2が好ましい。かかるp、qおよびrは、互いに同一でもまたは異なるものでもよい。
1、R2およびR3の芳香族環への結合位置は、レスヒンダードタイプフェノール系化合物を実現できれば、任意に決定されたものでよいが、ヒドロキシル基の両隣接位置を同時に占めないものが好ましい。
また、Xはハロゲンを表わし、s、t、uは、それぞれ、10または1であり、互いに同一でも異なるものでもよい。ハロゲンとしては塩素、臭素を挙げることができるが塩素が好ましい。
x、yおよびzは、ヒドロキシル基の芳香環への結合数を示すが、それぞれ1〜3の整数であり、互いに同一でもまたは異なるものでもよい。
また、nは、繰り返し単位
の繰り返し数を表わし、0〜200であり、高分子化合物を包含する。通常、nが0〜10の化合物が用いられるが、10を超えると、制振付与剤としての機能のほかに本発明に係る制振材料の有機ポリマーマトリックスとしての機能も発揮することができる。
かくして、前記一般式(I)で表される化合物として制振作用に顕著なものを以下に例示する。
2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール);
2,2’−メチレンビス(4−エチルフェノール);
2,2’−メチレンビス(4−プロピルフェノール);
2,2’−メチレンビス(4−クロロフェノール);
4,4’−メチレンビス(2,5−ジメチルフェノール);
4,4’−メチレンビス(2−メチル−5−エチルフェノール);
4,4’−メチレンビス(4−メチル−5−プロピルフェノール);
2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−4−メチルフェノール;
2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン;
1,1’ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;
α,α’(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン;
ビス(2−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)メタン;
ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−5−メチルフェニル)メタン;
ビス(3−ホルミル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)メタン;
ビス(4,5−ジヒドロキシ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;
ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン;
ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−5−メチルフェニル]メタン;
1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;
a,a,a’,a’−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン;
2,2’−ビス[4−ヒドロキシ−3,5−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−フェニル]プロパン
以上の如く、本発明に係る制振材料の制振付与剤として前記フェノール系化合物を挙げることができるが、特に好適なものは次に示す如きものである。
2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール);
2,2’−メチレンビス(4−エチルフェノール);
2,2’−メチレンビス(4−プロピルフェノール);
2,2’−メチレンビス(4−クロロフェノール);
4,4’−メチレンビス(2,5−ジメチルフェノール);
4,4’−メチレンビス(2−メチル−5−エチルフェノール);
4,4’−メチレンビス(4−メチル−5−プロピルフェノール);
2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−4−メチルフェノール;2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン;
1,1’ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;
α,α’(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン
さらに好ましいフェノール系化合物は、
2,2’−メチレンビス(4−メチルフェノール);
2,2’−メチレンビス(4−クロロフェノール);
2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン;
1,1’ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン
である。
かかるフェノール系化合物は、制振付与剤として広範囲の温度領域において著しく顕著な制振効果を奏するものであり、比較的単純な化学構造を有するものであるから、煩雑な製造工程を要することなく、従って、低コストで供給することができ、産業に寄与する点も大きい。
かかる制振付与剤は、有機ポリマーマトリックスの重量に対し2〜70重量%、好ましくは、2〜30重量%、さらに好ましくは、5〜15重量%の範囲で採用することができる。制振付与剤の含有量が2重量%を満たさないと制振効果が得られず、一方、70重量%を超えると有機ポリマーマトリックス材料との相分離の弊害のおそれが生ずるからである。
なお、本発明に係る制振材料としては高濃度の制振付与剤を含有するマスターバッチ化されたものを用意し、これを稀釈して調製したものでもよい。この場合において、ベースポリマーとしては、前記の如き極性基の有するものを用いることができ、稀釈用の樹脂としては用途に応じて選択される他種の樹脂、例えば、極性基を有しないポリオレフィン等を用いることもできる。
次に、本発明の制振材料の構成成分として用いられる無機および有機充填剤は、有機ポリマーマトリックスとの相互作用の強い充填剤であれば、無機充填剤、カーボン系フィラーおよび有機充填剤のいずれでも選択することができる。本願発明に係る制振材料は、一般的なファンとしての使用環境に耐え、またスピーカ用振動板としてクリアな音質を実現するため、少なくとも3GPa以上の貯蔵弾性率(E’)を有している必要があることから、その選択および充填量が重要となる。
無機充填剤としては、サポナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、ソットライト、マイカ、ステンレス粉末、トルマリン、BaTiO3、PbTiZrO3 等のSiO2 、Al23 、MgO、Na2O 等を含む層状化合物、タルク、炭酸カルシウム、天然ゼオライト、合成ゼオライト、メソポーラスゼオライト、フレーク状シリカ等が有用である。カーボン系フィラーとしてはケッチェンブラックカーボン、フレーク状グラファイト等を挙げることができる。
特に、好ましい無機充填剤としては、有機ポリマーが酸性の場合、塩基性無機充填剤が好ましい。塩基性無機充填剤としては、例えば、TiO2、MgO、CaO、タルク等を挙げることができる。また、酸性無機充填剤としては層状ケイ酸塩粘土鉱物を使用することができる。層状ケイ酸塩粘土鉱物としては2:1型鉱物が好ましく、特に底面間隔、すなわち、単位構造の厚さ、層面に垂直な方向の周期が比較的大きいもの、例えば、約14〜15Å以上のものを用いることができる。具体的にはマイカのほか、スメクタイト、モンモクロナイト、サポナイト、バーミキュライト等またはこれらの混合物が有用である。
また、有機充填剤としては、ジベンジリデンソルビトール、テトラフルオロポリエチレン、スルフェンアミド類、ベンゾチアゾール類、ベンゾトリアゾール類、グアニジン類、ゲルオールD、セルロース粉末、不織布、木屑、糖、紙、セルロース、FRP等を用いることができる。スルフェンアミド類としては、例えばN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N’−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドおよびN,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のベンゾチアゾリルスルフェンアミド類を挙げることができる。特に好ましいベンゾチアゾリルスルフェンアミド類は、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドである。
ベンゾチアゾール類としては、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等を例示することができる。
また、ベンゾトリアゾール類としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどを例示することができる。
さらに、グアニジン類としては、1,3−ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン等の塩基性窒素を含有するもので例示することができる。
かかる無機充填剤と有機充填剤を併用することにより高水準の損失正接(tanδ)を与える温度範囲を著しく拡大させることができる。
無機充填剤および有機充填剤は、微粒状体、特にフレーク状または繊維状で用いることが好ましく、平均粒径0.1〜200μm、特に40〜100μmのものが振動吸収および音響吸収に寄与するところが大きい。
特に、フェノール系化合物の配合量の一部を有機充填剤で置換し、フェノール系化合物、有機充填剤および無機充填剤を組合せることにより広範囲の温度領域、特に高温領域において高度の損失正接(tanδ)を達成する点で顕著な効果を奏することができる。
また、無機充填剤の配合量は、制振材料全重量基準で2〜70重量%、好ましくは20〜65重量%、更に好ましくは10〜50重量%である。配合量が2重量%に達しないと、十分な振動吸収性能の向上が見られないとともに、本願発明の目的とする3GPa以上の貯蔵弾性率(E’)が得られない。一方、70重量%を超えると相の剥離による強度低下等の難点が生じ、十分な材料強度保持することができないとともに、0.1以上の損失係数(η)を達成することができない。有機充填剤の配合量は、制振材料全重量基準で1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、特に2〜10重量%の範囲において採用することができる。
かかる有機および無機充填剤も制振付与剤と同様に制振付与剤に加えてベース樹脂によりマスターバッチ化された樹脂組成物として用いることができる。
また、本発明に係る制振材料には、有機ポリマーマトリックスとして用いられるベース樹脂に対して、制振材料の貯蔵弾性率(E’)を向上する目的から、他の有機ポリマーを配合することができる。例えば、ベース樹脂とは異なるものを選択すればよいが、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン等を用いることができる。特にその弾性率の高さおよび入手容易性から、ポリプロピレン、ポリエチレン等を用いることができる。
かかる高弾性有機ポリマーをマトリックスに配合することにより、高弾性ポリマーと柔軟な制振材料がハニカムサンドイッチ構造の如き働きをすることで全体として弾性率と内部損失の両者を高めることができるものと考えられる。即ち、高弾性ポリマーがハニカムサンドイッチ構造におけるフェースシートの役割を果たすことで材料全体の剛性を高め、ハニカムコアに相当する柔軟材料が拘束型制振材料として内部損失を高める効果を発揮するため、これらを多層に渡って積層したかの如き当該制振材料は高い剛性と内部損失を両立し得るものと考える。かかる特性に基づき本願発明に係る制振材料は、各構成成分のみならずその配合比率をも好適化することにより、ファンやスピーカ用振動板として要求される3GPa以上の高い貯蔵弾性率を有しつつも0.08を超える損失係数(η)を実現している。
なお、本発明に係る制振材料には、他の添加剤、例えば、滑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等を配合してもよい。
本発明による制振材料の製造方法はすべての化合物を一工程で混合しても良いが、好ましくは二つの工程からなり、工程(a)においては、前記一般式(I)で表わされるフェノール系化合物である制振付与剤、有機ポリマーマトリックス材料ならびに有機充填剤および/または無機充填剤を常温以上の温度で混合する。前記温度としては、特に限定するものではなく、前記有機ポリマーマトリックス材料と制振付与剤とが前記の如き複合化される温度でよいが、具体的には20℃〜180℃、特に、30℃〜100℃の範囲が好ましい。工程(b)においては工程(a)にて得られた混合物を60℃〜200℃の温度条件下でプレスまたは延伸し成形する。工程(b)において、前記有機ポリマーマトリックス材料と制振付与剤ならびに有機充填剤および/または無機充填剤との混合物を成形する際、60℃〜300℃、好ましくは150℃〜250℃の温度条件を採用することが好ましい。
有機ポリマーマトリックス材料と制振付与剤との混合の方法は、特に限定されるものではないが、該有機ポリマーがそのガラス転移点以上の温度に加熱された状態において、混練しながら制振付与剤ならびに有機充填剤および/または無機充填剤を徐々に添加し、添加後混練を継続する。この段階において、ラジカル重合開始剤を添加することができ、これにより有機ポリマーマトリックス材料と制振付与剤を適切に結合させることができ、さらに優れた制振効果を実現することができる。
前記ラジカル重合開始剤としては、無機または有機過酸化物を使用することができるが、一般的には、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクメニル、過安息香酸ターシャリ−ブチル、ヘキシン等でもよい。また、ラジカル重合開始剤の添加量としては0.01重量%〜2重量%、好ましくは0.1重量%〜1重量%の範囲が用いられる。
本発明に係るファンおよびスピーカ用振動板は、前記工程(a)によって得られた混合物を、前記工程(b)において単軸若しくは二軸押出し機により押出し成形、又は金型に射出成形することで成形品として得られる。成形温度としては、通常、約180〜350℃、好ましくは200〜300℃で行う。なお、本発明に係る制振効果を有するファンを成形する場合、ファン全体のみならず、ファン翼のみ、又は軸部分のみについて制振材料を用いてもよい。
以下、本発明について実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。もっとも本発明は、実施例等により何ら限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において得られた制振材料の損失正接(tanδ)の測定には動的粘弾性測定試験装置(アイティ計測制御株式会社製DVA−200S)を使用した。測定は、−50〜100℃の間で、周波数50Hz、昇温速度5℃/分、動的歪み0.1%による引張りモードで行った。試料のサイズは約20mm×5mm×1mmとした。
貯蔵安定性および損失係数ηは、JIS G 0602:1993に準じた中央加振法による測定値をモーダル解析ソフトでフーリエ変換し、共振ピークから半値巾法により求めた。
試験片としては、実施例、比較例とも200mm(l)×10mm(w)×0.8mm(t)のサイズのブレード状に成形したものを用い直接測定した。
ファン稼働時の騒音量およびスピーカ用振動板の周波数特性は、B&K 2060を使用して20〜20000Hzで1/3オクターブ分析することにより求めた。
また、実施例等において使用した各材料を次に示す。
・ホモポリプロピレン;住友ノーブレン(株)製 RW130
・アタクティックポリプロピレン;宇部興産(株)製 RT2316
・アクリルゴム;日本ゼオン(株)製 AR31
・マイカ;クラレ(株) スゾライトマイカ200HK
・カーボン;東海カーボン(株) シーストN300
・2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン:東京化成工業(株)製
・1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン:東京化成工業(株)製
[実施例1]
有機ポリマーマトリックス材料(以下「マトリックス」という。)としてホモポリプロピレン100重量部に対し、アタクティックポリプロピレン53重量部、アクリルゴム27重量部、フェノール樹脂(2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン)21重量部、マイカ130重量部、カーボン3重量部をロールミキサーにて80℃から100℃で10分間良く混合した。その後得られた混合物を押し出し成形機に入れ185℃で金型に導入し、5分間予熱後20MPa(200Kgf/cm)にて10分間加圧成形し20cm×1cm×1mm厚さ品(試料A)、ファン翼Aおよび振動板Aを得た。
評価結果として、表1に試料Aの20℃環境下における、150Hzおよび3000Hzでの損失係数η、貯蔵弾性率E’(GPa)、ファン翼A稼動時の騒音量(dB(A))を示す。また、図1に試験環境温度を変化させた場合における、試料Aの3000Hzでの貯蔵弾性率(E’)および損失係数ηを示す。更に、図2に振動板Aの周波数特性を示す。
本実施例によれば、貯蔵弾性率(E’)として3GPaという高い剛性を維持しつつ、ファン稼動時の騒音を3dB(A)低減するに到った。
[実施例2]
マトリックスとしてホモポリプロピレン100重量部に対し、アタクティックポリプロピレン21重量部、アクリルゴム11重量部、フェノール樹脂(1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン)7重量部、マイカ52重量部、カーボン2重量部をロールミキサーにて60℃から100℃で10分間良く混合した。その後得られた混合物を押し出し成形機に入れ180℃で金型に導入し、10分間予熱後20MPa(200Kgf/cm)にて10分間加圧成形し20cm×1cm×1mm厚さ品(試料B)ファン翼Bおよび振動板Bを得た。
評価結果として、表1に試料Bの20℃環境下における、150Hzおよび3000Hzでの損失係数η、貯蔵弾性率E’(GPa)、ファン翼B稼動時の騒音量(dB(A))を示す。また、図1に試験環境温度を変化させた場合における、試料Bの3000Hzでの貯蔵弾性率(E’)および損失係数ηを示す。更に、図2に振動板Bの周波数特性を示す。
本実施例によれば、貯蔵弾性率(E’)として3.8GPaという高い剛性を維持しつつ、ファン稼動時の騒音を3dB(A)低減するに到った。
比較例
マトリックスとしてホモポリプロピレン100重量部を押し出し成形機に入れ180℃で金型に導入し、10分間予熱後20MPa(200Kgf/cm)にて10分間加圧成形し20cm×1cm×1mm厚さ品(試料C)、ファン翼Cおよび振動板Cを得た。
評価結果として、表1に試料Cの20℃環境下における、150Hzおよび3000Hzでの損失係数η、貯蔵弾性率E’(GPa)、ファン翼C稼動時の騒音量(dB(A))を示す。また、図1に試験環境温度を変化させた場合における、試料Cの3000Hzでの貯蔵弾性率(E’)および損失係数ηを示す。更に、図2に振動板Cの周波数特性を示す。
以上の実施例および比較例の結果から、制振材料を成形してなるファンは、比較例で示すポリプロピレンのみから成るファンと比較して、稼動時の騒音量を低減する効果が認められる。表1より、実施例2においては材料の剛性は比較例1と同一でありながら、−3dB(音圧低減率に換算して約29%)の騒音量の低減効果が認められる。更に、実施例1においては材料の貯蔵弾性率3.0GPaと高い剛性を維持しつつ、−5dB(音圧低減率に換算して約44%)の騒音量の低減効果が発揮されるに至っている。このことはまた、マトリックスと制振性付与剤、又は導電性フィラー、充填材の配合割合を変化させることでファンの使用環境からの要求に応じて、剛性又は制振性能のいずれかをより優先させたい場合にも自由に対応することができることを意味している。
また、図1から、実施例1および2については、常温(20℃)を含む広い温度範囲において貯蔵弾性率(E’)≧3.0GPaかつ損失係数(η)≧0.1を達成しているのに対し、比較例1については損失係数が十分ではないことが読み取れる。なお、同図において、網掛けを施した部分は、15℃以上の温度において貯蔵弾性率(E’)≧3.0GPaかつ損失係数(η)≧0.1を達成している領域を示している。
更に、図2から、実施例1および2に係るスピーカ用振動板について比較例に係る振動板と比較した場合、高周波領域において高い減衰効果により、周波数特性が平坦になっていることが分かる。これは高音域に到るまで歪が小さく、音質が改善された振動板が得られたことを意味している。
本発明は、3GPa以上という高い剛性を有する制振材料と、それを成形してなるファンおよびスピーカ用振動板およびあらゆる躯体、筐体を提供するものである。ファンとしての使用環境に耐えうる剛性を有しつつも損失係数ηを高めることによりファン翼の発する騒音振動を低減することができ、またスピーカ用振動板としては、高い剛性を有することにより入力信号に忠実かつクリアな音を発すると共に、制振効果により残響を素早く減衰するという効果がある。該制振材料は、ファンやスピーカ振動板のほか洗濯機、冷蔵庫等の電気製品、CD、DVD、パーソナルコンピューター等の電子機器、電話受話器、空気取り入れ口、空調ダクトのケーシング等、静粛化や機器の安定稼動の観点から騒音振動の低減が求められる多くの場面においても好適に使用することができる。
実施例および比較例に係る試験片AからCについて、貯蔵弾性率(E’)および損失係数(η)と温度の関係を表わしたものである。 実施例および比較例に係る試験片AからCについて、周波数特性を比較した特性図。

Claims (12)

  1. 有機ポリマーマトリックス材料が制振付与剤ならびに有機充填剤および無機充填剤を含有してなる制振材料であって、
    該有機ポリマーマトリックス材料がアクリルゴムとポリプロピレンとの混合物であって、両者の混合割合がそれぞれ5〜30重量%および70〜95重量%であり、
    該制振付与剤が、次の一般式(I);



    (一般式(I)において、
    Aは、炭素数1〜3の鎖状炭化水素基または炭素数5〜8の脂環式炭化水素基であり、
    1およびR3は、それぞれ炭素数1の炭化水素基であり、pおよびrは、それぞれ0〜3の整数であり、互いに同一でも異なるものでもよく、
    xおよびzは、それぞれ1の整数であり、
    で表される少なくとも一種のフェノール系化合物であり、その含有量が前記有機ポリマーマトリックス材料の全重量に対して2〜70%であり、
    前記無機充填剤の含有量が前記制振材料の全重量基準で2〜70重量%であり、
    前記有機充填剤の含有量が前記制振材料の全重量基準で1〜30重量%であり、
    かつ20℃環境下において3GPa以上の貯蔵弾性率(E’)および0.08以上の損失係数(η)を有することを特徴とする制振材料。
  2. 前記有機ポリマーマトリックスが、結晶性ポリプロピレン、非結晶性ポリプロピレンおよびアクリルゴムの混合物であって、それぞれの混合割合が重量比にして50〜80%、15〜30%、5〜30%である請求項1に記載の制振材料。
  3. 前記無機充填剤がマイカ、炭酸カルシウム、タルク、カーボン、鉄粉および酸化チタンからなる群より選択される少なくとも一種の無機材料である請求項1または2のいずれかに記載の制振材料。
  4. 前記制振付与剤が、立体障害の少ないフェノール系化合物であって、ヒドロキシル基の両隣接位置のいずれにも炭素数4以上の分岐状炭化水素基を有しない化学構造を有する化合物である請求項1から3のいずれかに記載の制振材料。
  5. 前記制振付与剤が、
    2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン;1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンからなる群より選択される少なくとも一種のフェノール系化合物である請求項1から4のいずれかに記載の制振材料。
  6. 前記制振付与剤を表わす一般式(I)中のAが、それぞれヒドロキシル基に対して2位または4位に結合した鎖状炭化水素基である請求項1に記載の制振材料。
  7. 前記一般式(I)中のR1、R3の結合位置が、ヒドロキシル基に対してそれぞれ2位、4位または5位の少なくとも一つであり、互いに同一または異なる位置である(ただし、前記Aが当該位置に結合している場合を除く。)請求項1に記載の制振材料。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の制振材料を成形してなるファン。
  9. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の制振材料を成形してなるスピーカ用振動板。
  10. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の制振材料を成形してなる電気製品用躯体または筐体部材。
  11. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の制振材料を成形してなるコンパクトディスク、フロッピー(登録商標)ディスク用部材。
  12. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の制振材料を成形してなる配管用部材。
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