JP4587417B2 - 液体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッド、及び前記液体吐出ヘッドの駆動方法 - Google Patents

液体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッド、及び前記液体吐出ヘッドの駆動方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱エネルギーを液体に作用させることで起こる気泡の発生によって、所望の液体を吐出する液体吐出ヘッド、それに用いられる液体吐出ヘッド用基板、及び液体吐出ヘッドの駆動方法に関する。特に、本発明は、強誘電体材料から構成される機能素子を備えた液体吐出ヘッド、それに用いられる液体吐出ヘッド用基板、及び液体吐出ヘッドの駆動方法に関する。
【0002】
また、本発明は、紙、糸、繊維、布、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミック等の被記録媒体に対して記録を行う、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサ等の装置、さらには各種処理装置と複合的に組み合わされた産業用の液体吐出装置に適用することができるものである。
【0003】
なお、本発明における「記録」とは、文字や図形等のように意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与することだけでなく、パターン等のように意味を持たない画像を付与することをも意味するものである。
【0004】
【従来の技術】
熱等のエネルギーをインクに与えることで、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着させて画像形成を行うインクジェット記録方法が従来知られている。この記録方法を用いる記録装置には、米国特許第4,723,129号明細書等の公報に開示されているように、インクを吐出するための吐出口と、この吐出口に連通するインク流路と、インク流路内に配されたインクを吐出するためのエネルギー発生手段としての電気熱変換体が一般的に配された液体吐出ヘッドが用いられている。この種の記録装置は、品位の高い画像を高速、低騒音で記録することができるとともに、小型かつ高解像度の記録装置を提供することができるという多くの優れた点を有していることから、近年、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の多くのオフィス機器に利用されており、さらに、捺染装置等の産業用システムにまで利用されるようになってきている。
【0005】
上述した従来の液体吐出ヘッドの一構成例を図28に示す。
【0006】
図28に示される通り、この液体吐出ヘッドは、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを与える複数個(図28では1つのみ示す)の発熱体1002が並列に設けられた素子基板1001と、この素子基板1001上に接合された天板1003と、素子基板1001および天板1003の前端面に接合されたオリフィスプレート1004とを有する。天板1003には、各発熱体1002に対応する位置にそれぞれ溝が形成されており、素子基板1001と天板1003とが接合されることで、各発熱体1002にそれぞれ対応する液流路1007が形成される。
【0007】
素子基板1001は、シリコン等の基板上に絶縁および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜または窒化シリコン膜を成膜し、その上に、発熱体1002を構成する電気抵抗層および配線をパターニングしたものである。この配線から電気抵抗層に電圧を印加し、電気抵抗層に電流を流すことで発熱体1002が発熱する。そして、この配線と電極抵抗層の上には、それらをインクから保護する保護膜が形成されており、さらにその保護膜の上にはインク消泡によるキャビテーションから保護する耐キャビテーション膜が形成されている。
【0008】
天板1003は、各発熱体1002に対応した複数の液流路1007および各液流路1007に液体を供給するための共通液室1008を構成するためのもので、天井部分から各発熱体1002の間に延びる流路側壁1009が一体的に設けられている。天板1003はシリコン系の材料で構成され、液流路1007および共通液室1008のパターンをエッチングで形成したり、シリコン基板上にCVD等の公知の成膜方法により窒化シリコン、酸化シリコンなど、流路側壁1009となる材料を堆積した後、液流路1007の部分をエッチングして形成することができる。
【0009】
オリフィスプレート1004には、各液流路1007に対応しそれぞれ液流路1007を介して共通液室1008に連通する複数の吐出口1005が形成されている。オリフィスプレート1004もシリコン系の材料からなるものであり、例えば、吐出口1005を形成したシリコン基板を10〜150μm程度の厚さに削ることにより形成される。なお、オリフィスプレート1004は本発明には必ずしも必要な構成ではなく、オリフィスプレート1004を設ける代わりに、天板1003に液流路1007を形成する際に天板1003の先端面にオリフィスプレート1004の厚さ相当の壁を残し、この部分に吐出口1005を形成することで、吐出口付きの天板とすることもできる。
【0010】
上記構成に基づき、発熱体1002を発熱させると、液流路1007内の発熱体1002と対面する領域である気泡発生領域1010の液体に熱が作用し、これにより発熱体1002上に膜沸騰現象に基づく気泡が発生し、成長する。この気泡の発生に基づく圧力の伝搬や気泡自身の成長が吐出口1005側に導かれ、吐出口1005から液体が吐出する。
【0011】
一方、気泡が消泡過程に入ると、気泡発生領域1010での気泡の収縮体積を補うため、また、吐出された液体の体積分を補うために、上流側すなわち共通液室1008側から液体が流れ込み、液流路1007への液体の充填(リフィル)が行われる。
【0012】
また、本形態の液体吐出ヘッドは、発熱体1002を駆動したりその駆動を制御するための回路や素子を有する。これら回路や素子は、その機能に応じて素子基板1001または天板1003に分担して配置されている。また、これら回路や素子は、素子基板1001および天板1003がシリコン材料で構成されていることから、半導体ウェハプロセス技術を用いて容易かつ微細に形成することができる。
【0013】
このような液体吐出ヘッドを使用した記録装置では、図29に示すように、液体吐出ヘッドを搭載するヘッドキャリッジ2001とプリンター本体2002とはケーブル2003を介して接続され、ヘッドキャリッジ2001が被記録媒体の記録面上を副走査方向に移動することで記録が行われる。このような構造の場合、必然的に、液体吐出ヘッドの電気熱変換体(ヒーター)に電流を供給するための配線が長くなる。そのため、上述のようにヒーターに急峻な電流を流して駆動するタイプのインクジェット記録を採用する液体吐出ヘッドでは、配線インダクタンスの相互作用により電流ノイズが発生しやすいという課題が生じる。また、液体吐出ヘッドの全ノズルが駆動された場合、ヘッドと本体の間、すなわちケーブル2003には瞬間的に数アンペアの電流が流れることとなり、ケーブル2003にはロジック信号が平行して走っていることから、該信号線に誘導結合により電流ノイズがのってしまうという課題も生じる。このような電流ノイズ問題に対して、従来は、キャリッジや中継基板に電流ノイズ対策用コンデンサを搭載して対応していた。
【0014】
一方、近年の高密度記録が進む中、1回で吐出されるインクの量はますます少なくなっており、液体吐出を安定かつ高精度に行うために種々の機構が検討されている。
【0015】
一例として、液体吐出ヘッド基板に温度センサを設けて、該センサの検出結果に応じてヘッド温度を所定の範囲に維持するようにしたものがある。
【0016】
また、液体吐出ヘッドに不揮発性メモリを搭載し、該メモリに液体吐出特性やヘッド状態等のヘッド情報を記憶し、その情報に応じてヘッドの駆動を制御するようにしたものも提案されている。この場合、ヘッド情報を記憶するメモリとしては、EEPROM、フラッシュメモリなどが用いられている。
【0017】
ところで、インクを吐出するためのエネルギーを発生させるための電気熱変換体は、半導体製造プロセスを用いて作製することができる。そのため、上述した電気熱変換素子を使用してインクを吐出するタイプの記録ヘッドは、シリコン基板からなる素子基板上に電気熱変換体を形成し、その上に、インク流路を形成するための溝を形成した、ポリサルフォン等の樹脂やガラス等からなる天板を接合した構成となっている。
【0018】
また、素子基板がシリコン基板からなることを利用し、電気熱変換体を素子基板上に構成するだけでなく、電気熱変換体を駆動するためのドライバや、電気熱変換体をヘッドの温度に応じて制御する際に用いられる温度センサおよびその駆動制御部等を素子基板上に構成したものもある(特開平7−52387号公報等)。このようにドライバや温度センサおよびその駆動制御部等を素子基板上に構成したヘッドは実用に供されており、記録ヘッドの信頼性の向上及び装置の小型化に寄与している。
【0019】
一方、上述したようなヘッドの構成とは別の構成を有した液体吐出ヘッドを図30に示す。図30は、液体吐出ヘッドの構成を液流路方向に沿った断面図で示したものである。この液体吐出ヘッド(以下、「液体吐出ヘッド」あるいは「記録ヘッド」と標記する。)は、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを与える吐出エネルギー発生素子としての、複数個(図30では、1つのみ示す)の発熱体3002が並列に設けられた素子基板3001と、この素子基板3001上に接合された天板3003と、素子基板3001および天板3003の前端面に接合されたオリフィスプレート3004とを有することに加え、可動部材を備えたものである。
【0020】
なお、素子基板3001、天板3003、オリフィスプレート3004等の基本構成は図28の液体吐出ヘッドと同様の構成であるため、ここでの説明は省略する。
【0021】
図30に示される液体吐出ヘッドには、上述の通り、液流路3007を吐出口3005に連通した第1の液流路3007aと、発熱体3002を有する第2の液流路3007bとに分けるように、発熱体3002に対面して配置された片持梁状の可動部材3006が設けられている。可動部材3006は、窒化シリコンや酸化シリコンなどのシリコン系の材料で形成された薄膜である。
【0022】
この可動部材3006は、液体の吐出動作によって共通液室3008から可動部材3006を経て吐出口3005側へ流れる大きな流れの上流側に支点3006aを持ち、この支点3006aに対して下流側に自由端3006bを持つように、発熱体3002に面した位置に発熱体3002を覆うような状態で発熱体3002から所定の距離を隔てて配されている。この発熱体3002と可動部材3006との間が気泡発生領域3010となる。
【0023】
上記の構成に基づき、発熱体3002を発熱させると、可動部材3006と発熱体3002との間の気泡発生領域3010の液体に熱が作用し、これにより発熱体3002上に膜沸騰現象に基づく気泡が発生して成長する。この気泡の成長に伴う圧力は可動部材3006に優先的に作用し、可動部材6は図30に破線で示されるように、支点3006aを中心に吐出口3005側に大きく開くように変位する。可動部材3006の変位もしくは変位した状態によって、気泡の発生に基づく圧力の伝播や気泡自身の成長が吐出口3005側に導かれ、吐出口3005から液体が吐出する。
【0024】
つまり、気泡発生領域3010上に、液流路3007内の液体の流れの上流側(共通液室3008側)に支点3006aを持ち下流側(吐出口3005側)に自由端3006bを持つ可動部材3006を設けることによって、気泡の圧力伝播方向が下流側へ導かれ、気泡の圧力が直接的に効率よく吐出に寄与することになる。そして、気泡の成長方向自体も圧力伝播方向と同様に下流方向に導かれ、上流より下流で大きく成長する。このように、気泡の成長方向自体を可動部材によって制御し、気泡の圧力伝播方向を制御することで、吐出効率や吐出力または吐出速度などの根本的な吐出特性を向上させることができる。
【0025】
一方、気泡が消泡過程に入ると、可動部材3006の弾性力との相乗効果で気泡は急速に消泡し、可動部材3006も最終的には図30に実線で示した初期位置に復帰する。このとき、気泡発生領域3010での気泡の収縮体積を補うため、また、吐出された液体の体積分を補うために、上流側すなわち共通液室3008側から液体が流れ込み、液流路3007への液体の充填(リフィル)が行われるが、この液体のリフィルは、可動部材3006の復帰作用に伴って効率よく合理的かつ安定して行われる。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
コンデンサによる電流ノイズ除去効果は、電流エネルギーを消費する部分(ヒーター)に近いほど高い。しかしながら、従来は、電流ノイズ対策用コンデンサは大容量である必要性から大型コンデンサを必要とした。そのため、通常では、その配置スペースが必要なため、電流ノイズ対策用コンデンサはキャリッジや中継基板に設けられているのが実情であった。
【0027】
電流ノイズを効果的に除去するためには、コンデンサを液体吐出ヘッド用基板上等、ヒーターにより近い部分に配置する必要がある。特に、最近では、液体吐出ヘッドの高速化、高密度記録に伴って、ヘッド基板に瞬間的に流れる電流(ヒータ駆動電流)の量がますます増加しており、このような状況から、電流ノイズ対策のためには、コンデンサはより容量の大きなものとし、よりヒーターに近い部分に配置する必要があったが、具体的な解決方法はなかった。
【0028】
他方、近年の液体吐出装置の低価格化に伴って液体吐出ヘッドにおいてもコスト削減が図られているが、前述したようなEEPROM、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリはヘッド基板上に別部品として構成するようになっているため、低コスト化を図ることが困難であった。
【0029】
また、最近では、各種センサをヘッド内に配置してその検出結果をリアルタイムにフィードバックしながら液体吐出用ヒーターの駆動条件を制御するような試みもなされており、この場合、メモリに対する情報の書き込みおよび読み出しを頻繁に行う必要があることから、上記のような不揮発性メモリでは、近年のヘッドの高速化に対応することが困難であった。
【0030】
さらにまた、前述した素子基板に設けられた温度センサは主に素子基板の温度を測定することが目的であったが、近年の液体吐出ヘッドの高密度化に伴って、基板の温度よりもインク自身の温度や濃度等の状態あるいは種類が記録に与える影響が大きくなってきた。そのためのセンサ機能が高精度である必要性も生じている。
【0031】
また、図30を参照して説明した構成の液体吐出ヘッドでは、可動部材は気泡の成長および消泡に伴って変位するものの、可動部材を能動的に変位させることはできなかった。したがって、可動部材の変位速度は気泡の成長速度および消泡速度に依存し、可動部材をそれらの速度以上の速度で変位させることができなかった。そのため、可動部材の応答性の向上を図ることができず、ひいては液体吐出ヘッドによる記録速度の高速化を図ることができなかった。
【0032】
本発明は以上に鑑みてなされたものであり、その目的は、電流ノイズを十分に除去することができるとともに低コスト化を図ることができる液体吐出ヘッド、それに用いられる液体吐出ヘッド用基板、及び液体吐出ヘッドの駆動方法を提供することにある。
【0033】
本発明のさらなる目的は、ヘッドの高速化および低コスト化に対応することのできるメモリ構造を持つ液体吐出ヘッド、それに用いられる液体吐出ヘッド用基板、及び液体吐出ヘッドの駆動方法を提供することにある。
【0034】
本発明のさらなる目的は、吐出する液体の状態を精度よく検出することによって、安定した吐出を可能とする液体吐出ヘッド、それに用いられる液体吐出ヘッド用基板、及び液体吐出ヘッドの駆動方法を提供することにある。
【0035】
本発明のさらに別の目的は、記録ヘッド内に配された可動部材の応答性の向上を図ることができ、さらに記録速度の高速化を図ることができる液体吐出ヘッド、及び液体吐出ヘッドの駆動方法を提供することにある。
【0036】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の液体吐出ヘッド用基板は、液体に吐出エネルギーを与えることにより液体を吐出させる液体吐出ヘッドに用いられ、電気エネルギーを前記吐出エネルギーに変換するためのエネルギー変換素子が形成された半導体基板を有する液体吐出ヘッド用基板において、上記半導体基板に強誘電体材料よりなる機能素子が形成されていることを特徴とする。
【0037】
また、本発明の液体吐出ヘッドは、互いに接合されることで、液体を吐出するための複数の吐出口とそれぞれ連通する複数の液流路を構成する第1および第2の基板を有し、該第1および第2の基板の一方または両方に強誘電体材料よりなる機能素子が形成されていることを特徴とする。
【0038】
上記の液体吐出ヘッド用基板および液体吐出ヘッドにおいて、上記機能素子は、上記半導体基板上に少なくとも第1のバリア層、強誘電体材料膜、第2のバリア層が積層されたものであることは好ましい構成である。
【0039】
すなわち、強誘電体材料膜は還元環境に置かれた場合、還元されやすく寿命などの観点で耐性が十分でなくなり、長期にわたって信頼性高くその機能を得ることができなくなってしまう可能性がある。例えば、液体吐出ヘッドを製造する場合に用いられる成膜法のCVDにおいて、液体吐出ヘッドの保護膜(例えばSiN等)を形成する際に発生する水素イオン等の雰囲気による還元環境や、反応性のある膜、例えば通常使用されるPt電極によって強誘電体材料膜を挟んだ場合、電極と強誘電体材料膜との接触界面が還元環境となり、強誘電体材料膜が還元されやすい。このような還元環境を回避する目的で上述のようにバリア層によって挟持する構成とすることはこのましい。
【0040】
この場合、第1および第2のバリア層が、上記液体吐出ヘッドを構成する発熱抵抗層やキャビテーション膜を含む酸化膜、窒化膜で構成されていることは好ましい。
【0041】
特に液体吐出に寄与する駆動素子としてヒーターを利用するヘッド構成においては、発熱抵抗層をTaSiN、TaNなどのヒーター材料をスパッタリング成膜によって形成する工程を備えている。スパッタリング成膜工程は、CVD成膜工程などで発生した水素イオンなどの発生がなく還元環境にならず強誘電体材料膜を還元雰囲気に曝すことなく、発熱抵抗層や耐キャビテーション膜形成時に強誘電体材料膜のバリア層を形成することができる。また、発熱抵抗層や耐キャビテーション膜は記録ヘッドの特性として十分な耐久性を備えたものであり、このような膜を強誘電体材料膜のバリア層に利用することは組成が安定しており耐久性の観点で好ましい。
【0042】
また、発熱抵抗層や耐キャビテーション膜の成膜と同時に強誘電体材料膜のバリア層を形成すれば、個々の膜を別に成膜するより製造工程の工程数の削減を図ることもでき、また製造装置も同じものを用いることができるため装置の共有化による製造装置コストの低減効果も得られる。すなわち、発熱抵抗層や耐キャビテーション膜の形成と同一の手法によって強誘電体材料膜のバリア層を形成することができ、発熱抵抗層や耐キャビテーション膜材料をそのままバリア層として活用できる。
【0043】
なお、製造装置の共有化の観点に着目してみると、例えば、発熱抵抗体としてTaSiNをスパッタリング成膜で形成する場合は、スパッタリング装置におけるヒーター層形成時にはTaSiターゲットをN雰囲気中でスパッタリングするが、同じ装置を利用してターゲットをSiとしN雰囲気中でスパッタリングすることで非常に安定なSiN膜(CVDでは成形することができない成膜工程に起因する水素を含まない膜)を強誘電体材料膜のバリア層とすることができる。
また、ヒーター層形成スパッタリング装置を用い、ターゲットをTiなどの金属としN雰囲気中でスパッタリングしTiN膜を強誘電体材料膜のバリア層とすることもできる。各種の金属と窒素、酸素とを反応させ安定した膜を形成することが可能である。このようにインクジェットヘッドの成膜装置を流用し、ターゲットのみ交換することでも有効なバリア層を形成することが可能であり、水素イオンなどの還元環境に曝すことなく、安定な膜を形成できる。
【0044】
ヒーター層の形成だけでなく、例えば耐キャビテーション膜として用いられているTaなどの材料をそのまま利用して耐キャビテーション膜の成膜装置を利用してN雰囲気中でスパッタリングを行うことでバリア層を形成することも可能である。成膜方法はスパッタリングでありCVDのように水素イオンの発生がなく強誘電体材料膜が還元される環境に曝されることがなく、安定した耐キャビテーション膜と同一の材料と窒素、酸素を反応させてバリア層を構成するので安定したバリア層を構成でき、スパッタリング装置のターゲットは耐キャビテーション層と同一であり、同一装置を用いて同一工程でバリア層を構成できるため量産性に優れ、製造工程の簡略化を図れる効果を有する。
【0045】
さらに、ヒーター層下部に配置される配線層の上部層などに用いられるTiW、TaNなどアルミ等の配線層に生じる熱によるヒロック防止膜をスパッタリングする、あるいは窒素、酸素雰囲気中でスパッタリングすることで強誘電体材料膜のバリア層とすることも可能である。成膜方法はスパッタリングでありCVDのように水素イオンの発生がなく強誘電体材料膜が還元される環境に曝されることがなく、安定したヒロック防止膜と同一の材料、あるいは窒素、酸素を反応させてバリア層を構成するので安定したバリア層を構成でき、スパッタリング装置のターゲットはヒロック防止層と同一であり、同一装置を用いて同一工程でバリア層を構成できるため量産性に優れ、製造工程の簡略化を図れる。
【0046】
なお、記録ヘッドのヒーター層がHfB2など、ヒーター層とその保護層であるSiN、SiOなどの層との密着性が比較的良くない場合に設けられるTiなどの金属膜を密着層として介した構成の記録ヘッドでは、密着層を構成する金属を窒素、酸素雰囲気中で強誘電体材料膜に対してスパッタリングして成膜することでバリア層とすることも可能である。成膜方法はスパッタリングでありCVDのように水素イオンの発生がなく強誘電体材料膜が還元される環境に曝されることがなく、安定した密着層と同一の材料と窒素、酸素を反応させてバリア層を構成するので安定したバリア層を構成でき、スパッタリング装置のターゲットは密着層と同一であり、同一装置を用いて同一工程でバリア層を構成できるため量産性に優れ、製造工程の簡略化を図れる。
【0047】
なお、第1および第2のバリア層は、発熱抵抗層や耐キャビテーション膜を含む酸化膜、窒化膜の膜厚方向で強誘電体材料膜に近い部分の酸素、窒素の割合を高くすることは好ましい。また、これらの酸素、窒素の割合は、バリア層の膜厚方向で連続的に変化させても良いし、断続的に変化させても良い。
【0048】
また、上記機能素子は、コンデンサ、不揮発性メモリ、圧電素子、可動部材のいずれかの形態をとるように構成してもよい。
【0049】
特に、前記可動部材が、強誘電体材料からなる薄膜と、該薄膜の両面に設けられた電極とを有し、該両電極間に電圧が印加されると自由端が前記素子基板側あるいは前記素子基板に対して反対の方向へ変位するように構成されていることは好ましい。
【0050】
可動部材を強誘電体材料によって構成された本発明の液体吐出ヘッドによれば、可動部材を気泡の圧力による変位とは独立して能動的に変位させることが可能となる。そのため、気泡が発生する前や消泡する前に可動部材を予め所定の方向に変位させることにより、可動部材の応答性が向上するため、液体吐出ヘッドによる記録速度の高速化を図ることが可能となる。
【0051】
また、前記薄膜は、Pb-Zrx-Ti1-xO3、(Pb,La)-(Zr,Ti)O3、Sr-Bi2-Ta 25、SrTiO3、BaTiO3、あるいは(Ba-Sr)TiO3からなる構成とすることが好ましい。
【0052】
さらに、前記両電極のいずれか一方の表面に、電界中に置かれても歪みを生じない材料で形成された変位補助層が設けられている構成とすることにより、可動部材の変位量をより増加させることが可能となる。
【0053】
上記機能素子を構成する強誘電体材料は比誘電率が大きいことから、容量の大きなコンデンサを形成することができ、基板に造り込む場合の配置スペースも少なくて済む。本発明によれば、その機能素子が電流ノイズ対策用のコンデンサとしてヘッドを構成する基板に直接形成されるので、ヒーターにより近い部分で電流ノイズ対策を行うことが可能となり、しかも、その配置スペースも少なくて済む。加えて、容量も大きいことから、前述の課題で述べたような電流増加に伴う電流ノイズの問題にも対応することが可能である。
【0054】
また、強誘電体材料を用いて構成される不揮発性メモリは、従来用いられていたEEPROM、フラッシュメモリに代表される不揮発性メモリと比較し、高速性、低消費電力、高集積性などに優れていることが知られている。本発明によれば、その特徴を有する強誘電体材料を用いて構成される不揮発性メモリが用いられているので、ヘッドの駆動制御、例えば各種センサをヘッド内に配置してその検出結果をリアルタイムにフィードバックしながら液体吐出用ヒーターの駆動条件を制御する際の処理が高速になり、前述の課題で述べたような近年のヘッドの高速化に対応することが可能となる。
【0055】
また、強誘電体材料は圧電性を有することから圧電素子として利用することができる。本発明によれば、その強誘電体材料よりなる機能素子を圧電素子として用いて、液体中を伝わる圧力の変化を検出するように構成されているので、その検出結果を用いることにより、より細かいヘッドの駆動制御が可能になる。
【0056】
一方、強誘電体材料に電圧を印加することで、変位を起こすことを利用することもできる。具体的にはその変位を利用して、インクを吐出させたり、オリフィスのメニスカスの制御等に利用できる。変位しやすくするために、可動部材を設けてその部分に強誘電体材料を設けることもできる。これはインクの圧力を検知して印字制御を行う構成とほとんど同じでできるため、組み合わせて構成してもよい。また、変位を大きくするために積層構造としてもよい。
【0057】
上述した機能素子は、ヘッドを構成する基板(素子基板、天板)を製造する過程において同時に造り込むことができるので、機能素子を形成するために特別な成膜装置を用いる必要はない。
【0058】
上述の発明のうち、機能素子を構成する第1および第2のバリア層が耐キャビテーション膜や発熱抵抗層を含む酸化物、窒化物で構成されるものにおいては、ヘッドを構成する基板(素子基板、天板)を製造する過程において膜の兼用が可能であるので、製造工程数およびコストを低く抑えることが可能である。
【0062】
また、本発明の液体吐出ヘッドの駆動方法は、液滴を吐出するための吐出口と、該吐出口に液体を供給するために前記吐出口に連通された液流路と、該液流路に充填された前記液体に気泡を発生させるための気泡発生素子が備えられた基板と、前記基板の前記気泡発生素子に対面する位置に、前記基板との間に間隙を有し、前記吐出口側を自由端として前記基板に支持固定された可動部材とを有し、前記可動部材が、強誘電体材料からなる薄膜と、該薄膜の両面に設けられた電極とを有し、該両電極間に電圧が印加されると自由端が前記素子基板側あるいは前記素子基板に対して反対の方向へ変位するように構成されており、前記気泡を発生させることにより生じる圧力によって、前記可動部材の自由端を前記基板とは反対の方向に変位させて、前記圧力を前記吐出口側に導くことにより前記吐出口から前記液体の液滴を吐出させる液体吐出ヘッドの駆動方法であって、前記発熱体の駆動と前記可動部材の駆動とを互いに独立して行うことを特徴とする。
【0063】
上記のように前記発熱体の駆動と前記可動部材の駆動とを互いに独立して行うことにより、気泡が発生する前や消泡する前に、可動部材を独立して能動的に駆動して所定の方向に変位させることにより、可動部材の応答性が向上し、液体吐出ヘッドによる記録速度の高速化を図ることが可能となる。
【0068】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0069】
図1は、本発明の液体吐出ヘッド用基板に形成される、強誘電体材料よりなる機能素子の概略断面構造図である。この機能素子は、Pb(Zr、Ti)O3[PZT:チタン酸ジルコン酸鉛]等からなる強誘電体材料膜32の上下面に保護膜としてのバリア層33が形成され、さらにその上下面に電極(不図示)が配されてコンデンサ、FeRAM、圧電素子、可動部材などを構成するものである。
【0070】
上記機能素子をノイズ対策用コンデンサとして用いた場合、強誘電材料は比誘電率が大きいため、ヒータ駆動電流ノイズ対策に特に有効である。この場合、容量が数μFのコンデンサを形成することができる。また、上記機能素子をFeRAMとして用いた場合は、その記録速度は従来用いられていたEEPROM、フラッシュメモリに代表される不揮発性メモリと比較して非常に速いことから、前述の課題で述べたような液体吐出ヘッドの高速化に対応するメモリを構成することができる。さらにまた、上記機能素子を圧電素子として用いた場合は、液体中を伝わる圧力の変化を検出することができ、より安定した吐出制御が可能になる。加えて、機能素子を可動部材として用いた場合は、インクの吐出動作に対する可動部材の応答性を向上でき、記録速度の高速化を図ることが可能になる。
【0071】
以下、上述の液体吐出ヘッド用基板を備える液体吐出ヘッドの具体的な構成について説明する。
【0072】
はじめに、本発明に適用可能な液体吐出ヘッドの構造として、液体を吐出する複数の吐出口と、互いに接合されることでそれぞれ吐出口と連通する複数の液流路を構成するための第1の基板および第2の基板と、電気エネルギーを液流路内の液体の吐出エネルギーに変換するために各液流路内に配された複数のエネルギー変換素子と、エネルギー変換素子の駆動条件を制御するための、機能が異なる複数の素子あるいは電気回路とを有し、上記素子あるいは電気回路がその機能に応じて第1の基板と第2の基板とに振り分けられている液体吐出ヘッドの説明を行う。
【0073】
本発明に適用可能な液体吐出ヘッドの一形態の基本構成は、図28に示した通りであり、図28に関する説明は前述した通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0074】
以下に、液体吐出ヘッドの素子基板が半導体ウェハプロセス技術を用いて形成される点について説明する。
【0075】
図2は、本形態の液体吐出ヘッドに用いられる素子基板の要部の断面図である。図2に示すように、本形態の液体吐出ヘッドに用いられる素子基板1では、シリコン基板301の表面に、蓄熱層としての熱酸化膜302および、蓄熱層を兼ねる層間膜303がこの順番で積層されている。層間膜303としては、SiO2膜またはSi34膜が用いられている。層間膜303の表面に部分的に抵抗層304が形成され、抵抗層304の表面に部分的に配線305が形成されている。配線305としては、Alまたは、Al-Si,Al-CuなどのAl合金配線が用いられている。この配線305、抵抗層304および層間膜303の表面に、SiO2膜またはSi34膜から成る保護膜306が形成されている。保護膜306の表面の、抵抗層304に対応する部分およびその周囲には、抵抗層304の発熱に伴う化学的および物理的な衝撃から保護膜306を守るための耐キャビテーション膜307が形成されている。抵抗層304表面の、配線305が形成されていない領域は、抵抗層304の熱が作用する部分となる熱作用部308である。
【0076】
この素子基板1上の膜は半導体の製造技術によりシリコン基板301の表面に順に形成され、シリコン基板301に熱作用部308が備えられている。
【0077】
図3は、図2に示す素子基板1の主要素子を縦断するように素子基板1を切断した模式的断面図である。
【0078】
図3に示すように、P型導電体であるシリコン基板301の表層にはN型ウェル領域422およびP型ウェル領域423が部分的に備えられている。そして、一般的なMOSプロセスを用いてイオンプラテーションなどの不純物導入および拡散によって、N型ウェル領域422にP-MOS420が、P型ウェル領域423にN-MOS421が備えられている。P-MOS420は、N型ウェル領域422の表層に部分的にN型あるいはP型の不純物を導入してなるソース領域425およびドレイン領域426や、N型ウェル領域422の、ソース領域425およびドレイン領域426を除く部分の表面に厚さ数百Åのゲート絶縁膜428を介して堆積されたゲート配線435などから構成されている。また、N-MOS421は、P型ウェル領域423の表層に部分的にN型あるいはP型の不純物を導入してなるソース領域425およびドレイン領域426や、P型ウェル領域423の、ソース領域425およびドレイン領域426を除く部分の表面に厚さ数百Åのゲート絶縁膜428を介して堆積されたゲート配線435などから構成されている。ゲート配線435は、CVD法により堆積した厚さ4000Å〜5000Åのポリシリコンから成るものである。これらのP-MOS420およびN-MOS421からC-MOSロジックが構成されている。
【0079】
P型ウェル領域423の、N-MOS421と異なる部分には、電気熱変換素子駆動用のN-MOSトランジスタ430が備えられている。N-MOSトランジスタ430も、不純物導入および拡散などの工程によりP型ウェル領域423の表層に部分的に備えられたソース領域432およびドレイン領域431や、P型ウェル領域423の、ソース領域432およびドレイン領域431を除く部分の表面にゲート絶縁膜428を介して堆積されたゲート配線433などから構成されている。
【0080】
本形態では、電気熱変換素子駆動用のトランジスタとしてN-MOSトランジスタ430を用いたが、複数の電気熱変換素子を個別に駆動できる能力を持ち、かつ、上述したような微細な構造を得ることができるトランジスタであれば、このトランジスタに限られない。
【0081】
P-MOS420とN-MOS421との間や、N-MOS421とN-MOSトランジスタ430との間などの各素子間には、5000Å〜10000Åの厚さのフィールド酸化により酸化膜分離領域424が形成されており、その酸化膜分離領域424によって各素子が分離されている。酸化膜分離領域424の、熱作用部308に対応する部分は、シリコン基板301の表面側から見て一層目の蓄熱層434としての役割を果たす。
【0082】
P-MOS420、N-MOS421およびN-MOSトランジスタ430の各素子の表面には、厚さ約7000ÅのPSG膜またはBPSG膜などから成る層間絶縁膜436がCVD法により形成されている。熱処理により層間絶縁膜436を平坦化した後に、層間絶縁膜436およびゲート絶縁膜428を貫通するコンタクトホールを介して第1の配線層となるAl電極437により配線が行われている。層間絶縁膜436およびAl電極437の表面には、厚さ10000Å〜15000ÅのSiO2膜から成る層間絶縁膜438がプラズマCVD法により形成されている。層間絶縁膜438の表面の、熱作用部308およびN-MOSトランジスタ430に対応する部分には、厚さ約1000ÅのTaN0.8[hex]膜から成る抵抗層304がDCスパッタ法により形成されている。抵抗層304は、層間絶縁膜438に形成されたスルーホールを介してドレイン領域431の近傍のAl電極437と電気的に接続されている。抵抗層304の表面には、各電気熱変換素子への配線となる第2の配線層としての、Alの配線305が形成されている。
【0083】
配線305、抵抗層304および層間絶縁膜438の表面の保護膜306は、プラズマCVD法により形成された厚さ10000ÅのSi34膜から成るものである。保護膜306の表面に形成された耐キャビテーション膜307は、Taをターゲットとするスパッタリング法で形成される厚さ約2500ÅのTaなどの膜から成るものである。
【0084】
次に、素子基板および天板への回路や素子の振り分け構成について説明する。
【0085】
図4は、本形態の液体吐出ヘッドの回路構成を説明するための図であり、同図(a)は素子基板の平面図、同図(b)は天板の平面図である。なお、図4(a)および(b)は、互いの対向面を表わしている。
【0086】
図4(a)に示すように、素子基板1には、並列に配列された複数の発熱体2と、画像データに応じてこれら発熱体2を駆動するドライバ11と、入力された画像データをドライバ11に出力する画像データ転送部12と、発熱体2の駆動条件を制御するために必要な、液体の状態または特性を検出するセンサ13とが設けられている。本形態のヘッドでは、センサ13は、液流路7ごとの液体の状態または特性を検出するために、各発熱体2に対応して液流路7ごとに設けられている。
【0087】
画像データ転送部12は、シリアルに入力される画像データを各ドライバ11にパラレルに出力するシフトレジスタ、およびシフトレジスタから出力されるデータを一時記憶するラッチ回路で構成される。なお、画像データ転送部12は、各発熱体2に個別に対応して画像データを出力するものでもよいし、発熱体2の並びを複数のブロックに分け、ブロック単位に対応して画像データを出力するものでもよい。特に、1つのヘッドについて複数のシフトレジスタを備え、記録装置からのデータの転送を複数のシフトレジスタに振り分けて入力するようにすることで、印字速度の高速化に容易に対応することもできる。
【0088】
一方、図4(b)に示すように、天板3には、前述したように液流路および共通液室を構成する溝3a,3bが形成される他に、素子基板1に設けられたセンサ13を駆動するセンサ駆動部17と、センサ駆動部17により駆動されたセンサからの出力結果に基づいて発熱体2の駆動条件を制御する発熱体制御部16とが設けられている。なお、天板3には、外部から共通液室に液体を供給するために、共通液室に連通した供給口3cが開口している。
【0089】
さらに、素子基板1および天板3の接合面の、互いの対向する部位にはそれぞれ、素子基板1に形成された回路等と天板3に形成された回路等とを電気的に接続するための接続用コンタクトパッド14,18が設けられている。また、素子基板1には、外部からの電気信号の入力端子となる外部コンタクトパッド15が設けられている。素子基板1の大きさは天板3の大きさよりも大きく、外部コンタクトパッド15は、素子基板1と天板3とを接合したときに天板3から露出する位置に設けられている。
【0090】
上記のように構成された素子基板1と天板3とを位置合わせして接合すると、各液流路に対応して発熱体2が配置されるとともに、それぞれの接続用パッド14,18を介して素子基板1および天板3に形成された回路等が電気的に接続される。この電気的接続は例えば、接続用パッド14,18に金バンプ等を載せて行う方法があるが、それ以外の方法でもよい。このように、素子基板1と天板3との電気的接続を接続用コンタクトパッド14,18によって行うことで、素子基板1と天板3との接合と同時に、上述した回路同士の電気的接続を行うことができる。素子基板1と天板3との接合後に、液流路7の先端にオリフィスプレート4を接合し、これにより液体吐出ヘッドが完成する。
【0091】
次に、本発明の特徴である、電流ノイズ対策用コンデンサ、不揮発性メモリ、圧電素子、可動部材を上述のPZT等の強誘電体材料により構成した実施形態をそれぞれ説明する。
【0092】
<強誘電体材料を用いてコンデンサを構成した例>
図5は、本発明の一実施形態の液体吐出ヘッドの素子基板に形成される回路素子の構成を示す図で、(a)は素子基板を上面から見た場合の各回路素子のレイアウトを示す図、(b)は電源層とグランド層がオーバーラップした部分の断面構造を示す図である。
【0093】
図5(a)に示すように、素子基板1には、発熱体2(不図示)が複数配列されたヒーター列2’およびこれらを駆動するためのドライバ11が形成されるとともに、これら回路素子と接続される電源層30およびグランド(GND)層31が積層されている。
【0094】
電源層30とGND層31とがオーバーラップした部分(オーバーラップ部34)では、図5(b)に示すように、電源層30とGND層31との間に強誘電体材料膜32が形成されており、これによりコンデンサを構成している。強誘電体材料膜32の電源層30およびGND層31との界面には、それぞれバリア層33が形成されている。このバリア層33を設ける理由は以下のとおりである。
【0095】
強誘電体材料は、水素との反応により還元されて、強誘電性が著しく劣化してしまう。この還元性雰囲気は、強誘電体材料膜を形成後に層間絶縁膜や、保護膜を成膜する際に発生し易い。液体吐出ヘッド用基板の形成においては、量産性やインクに対する保護性能の観点で、層間絶縁膜や、保護膜としてプラズマCVDを用いたSiN膜が使用されており、これはSiH4(シラン),NH3(アンモニア)などの還元性雰囲気中で行われる。その際には、水素プラズマが発生すると同時に、膜中に水素を含有し易くなり、それらが強誘電体特性の劣化に影響を与える。そこで、これを防止するため、バリア層33が形成されている。
【0096】
上述のように構成される素子基板1の等価回路の略図を図6に示す。この図6から分かるように、上述のオーバーラップ部34に形成されたコンデンサ34’はヒータ電源ラインとGNDラインの間に挿入された構成となっている。このコンデンサ34’は、強誘電材料膜を用いたことにより、限られたスペースに容量の大きなコンデンサを構成することができる。この構成によれば、コンデンサ34’をヒーターにより近い部分に形成することができ、ヒーター駆動電流ノイズはコンデンサ34’で十分に除去されることになる。
【0097】
先に述べた通り、基板素子1は図2および図3に示した構造を有し、半導体プロセスを利用して各回路素子が形成される。この製造過程において、コンデンサ34’を素子基板1上に同時に造り込むことができ、これによりコストが大幅に削減される。また、この場合、コンデンサ34’を構成する強誘電体材料膜32の保護膜であるバリア層33を、図3に示した抵抗層304の発熱に伴う化学的および物理的な衝撃から保護膜306を守るために設けられた耐キャビテーション膜307や抵抗層304を含む酸化膜、窒化膜で形成することで、さらにコスト削減を図ることができる。つまり、強誘電体特性の劣化を防止するために、液体吐出ヘッド用基板の製造プロセスを活用することにより、工程の増加を防止し、コスト削減を図ることができる。
【0098】
以上の点について、図7を参照してさらに説明する。図7は熱作用部及びコンデンサ部の層構成を示すものである。
【0099】
図7に示される通り、熱作用部は基板上に下から順に下部配線層601、配線層のヒロックを防止するヒロック防止層602、層間膜603、発熱抵抗層604、上部配線層605と積層されて構成されている。一方、コンデンサ部は基板上に下から順に下部配線層601が形成され、その上に熱作用部において配線層のヒロックを防止するヒロック防止層602として形成された層を上層に形成される強誘電体層の配線層に対する保護を目的としたバリア層602aとして配置され、そしてその上層に強誘電体層606が配置され、その上部に熱作用部において発熱抵抗層604として形成された層を下部の強誘電体層606の保護を目的としたバリア層604aとして配置され、その上に上部配線層605が積層されて構成されている。実際には、この上に更に保護膜や耐キャビテーション膜等が形成されるが、図7では熱作用部とコンデンサ部を同一の工程で同時に形成することを説明するものであり、それらの層は省略されている。
【0100】
熱作用部とコンデンサ部における各対応する層は、同一の工程で同時に形成されるものである。すなわち、基板上に熱作用部を構成する目的で下部配線層601を形成する。そして、配線層におけるヒロックを防止する目的のヒロック防止層602をその上に積層する。そして、層間膜603を形成し、コンデンサ部を形成する部分に対しては強誘電体材料層606を形成する。その後発熱抵抗層604を形成し、上部配線層605を形成する。このとき、強誘電体材料層606に対しては熱作用部を構成するヒロック防止層602が強誘電体材料層606の下部のバリア層、発熱抵抗層604が強誘電体材料層606の上部のバリア層として機能することになり、記録ヘッドの熱作用部を構成する層、特にヒロック防止層602、発熱抵抗層604がそのままコンデンサ部の強誘電体層の配線層に対するバリア層として利用することができる。このように熱作用部の製造工程をそのまま利用してコンデンサ部のバリア層を形成することができる。
【0101】
なお、強誘電体層606の形成は高温で行われ処理される必要があるため、配線層に用いられる材料としてはCu、Cu−Si、Pt、Ir、Ni、Auなどの金属やIrO2、RuO2などの酸化物からなる高融点材料が使用されることが好ましい。特に、半導体素子を形成した後の工程で熱作用部を構成する膜と同時に成膜する場合には高温による配線層の損傷を防止する目的から高融点材料が使用されることが好ましい。加えて、強誘電体層606が配線層と直接接触することで還元されて劣化されてしまうことを防止する目的で構成されるバリア層の存在が一層有効となり、熱作用部の製造と同時に形成されるような本発明の構成とすることはより好ましい。
【0102】
なお、液体吐出に寄与する駆動素子としてヒーターを利用するヘッド構成においては、発熱抵抗層604を、TaSiN、TaNなどのヒーター材料をスパッタリング成膜によって形成する工程を備えている。スパッタリング成膜工程は、CVD成膜工程などで発生した水素イオンなどの発生がなく還元環境にならず強誘電体材料膜を還元雰囲気に曝すことなく、発熱抵抗層604や耐キャビテーション膜形成時に強誘電体材料膜606のバリア層を形成することができる。また、発熱抵抗層604や耐キャビテーション膜は液体吐出ヘッドの特性として十分な耐久性を備えたものであり、このような膜を強誘電体材料層606のバリア層に利用することは組成が安定しており耐久性の観点で好ましい。
【0103】
また、発熱抵抗層604や耐キャビテーション膜の成膜と同時に強誘電体材料膜606のバリア層を形成すれば、個々の膜を別に成膜するより製造工程の工程数の削減を図ることもでき、また製造装置も同じものを用いることができるため装置の共有化による製造装置コストの低減効果も得られる。すなわち、発熱抵抗層604や耐キャビテーション膜の形成と同一の手法によって強誘電体材料膜606のバリア層を形成することができ、発熱抵抗層604や耐キャビテーション膜材料をそのままバリア層として活用できる。
【0104】
なお、製造装置の共有化の観点に着目してみると、例えば、発熱抵抗体としてTaSiNをスパッタリング成膜で形成する場合は、スパッタリング装置におけるヒーター層形成時にはTaSiターゲットをN雰囲気中でスパッタリングするが、同じ装置を利用してターゲットをSiとしN雰囲気中でスパッタリングすることで非常に安定なSiN膜(CVDでは成形することができない成膜工程に起因する水素を含まない膜)を強誘電体材料膜606のバリア層とすることができる。また、ヒーター層形成スパッタリング装置を用い、ターゲットをTiなどの金属としN雰囲気中でスパッタリングしTiN膜を強誘電体材料膜606のバリア層とすることもできる。各種の金属と窒素、酸素とを反応させ安定した膜を形成することが可能である。このようにインクジェット記録ヘッドの成膜装置を流用し、ターゲットのみ交換することでも有効なバリア層を形成することが可能であり、水素イオンなどの還元環境に曝すことなく、安定な膜を形成できる。
【0105】
ヒーター層の形成だけでなく、例えば耐キャビテーション膜として用いられているTaなどの材料をそのまま利用して耐キャビテーション膜の成膜装置を利用してN雰囲気中でスパッタリングを行うことでバリア層を形成することも可能である。成膜方法はスパッタリングでありCVDのように水素イオンの発生がなく強誘電体材料膜606が還元される環境に曝されることがなく、安定した耐キャビテーション膜と同一の材料と窒素、酸素を反応させてバリア層を構成するので安定したバリア層を構成でき、スパッタリング装置のターゲットは耐キャビテーション層と同一であり、同一装置を用いて同一工程でバリア層を構成できるため量産性に優れ、製造工程の簡略化を図れる効果を有する。
【0106】
さらに、ヒーター層下部に配置される配線層の上部層などに用いられるTiW、TaNなどアルミ等の配線層に生じる熱によるヒロック防止膜602をスパッタリングする、あるいは窒素、酸素雰囲気中でスパッタリングすることで強誘電体材料膜606のバリア層とすることも可能である。成膜方法はスパッタリングでありCVDのように水素イオンの発生がなく強誘電体材料膜606が還元される環境に曝されることがなく、安定したヒロック防止膜602と同一の材料、あるいは窒素、酸素を反応させてバリア層を構成するので安定したバリア層を構成でき、スパッタリング装置のターゲットはヒロック防止層602と同一であり、同一装置を用いて同一工程でバリア層を構成できるため量産性に優れ、製造工程の簡略化を図れる。
【0107】
なお、液体吐出ヘッドのヒーター層がHfB2など、ヒーター層とその保護層であるSiN、SiOなどの層との密着性が十分で良くない場合に設けられるTiなどの金属膜を密着層として介した構成の液体吐出ヘッドでは、密着層を構成する金属を窒素、酸素雰囲気中で強誘電体材料膜に対してスパッタリングして成膜することでバリア層とすることも可能である。成膜方法はスパッタリングであり、CVDのように水素イオンの発生がなく強誘電体材料膜が還元される環境に曝されることがなく、安定した密着層と同一の材料と窒素、酸素を反応させてバリア層を構成するので安定したバリア層を構成でき、スパッタリング装置のターゲットは密着層と同一であり、同一装置を用いて同一工程でバリア層を構成できるため量産性に優れ、製造工程の簡略化を図れる。
【0108】
なお、第1および第2のバリア層は、発熱抵抗層604や耐キャビテーション膜を含む酸化膜、窒化膜の膜厚方向で強誘電体材料膜606に近い部分の酸素、窒素の割合を高くすることは好ましい。また、これらの酸素、窒素の割合は、バリア層の膜厚方向で連続的に変化させても良いし、断続的に変化させても良い。
【0109】
なお、ヒータが接続される電源層とロジック回路が接続される電源層が別々に形成される場合は、コンデンサ34’と同様の構成のコンデンサを、ロジック回路の電源ラインとGNDラインとの間にも設けることが望ましい。
【0110】
本形態では、コンデンサ34’は素子基板1に直接形成されているが、コンデンサ34’を配置スペースに余裕のある天板3側に形成するようにすれば、設計上の自由度が向上する。この場合は、コンタクトパッドを介した接続構造により、天板3に形成されたコンデンサが素子基板1側に形成されたヒータまたはロジック回路の電源ラインとGNDラインとの間に接続されるようにする必要がある。
【0111】
<強誘電材料を用いて不揮発性メモリを構成した例>
図8は、本発明の一実施形態の液体吐出ヘッドの素子基板に形成される回路素子の構成を示す図である。
【0112】
素子基板1には、発熱体2が配列されたヒーター列2’と、発熱体2を駆動するドライバ11と、発熱体2の駆動条件を制御するために必要な、液体の状態または特性を検出するセンサ13と、センサ13の出力をそれぞれモニタしその検出結果に応じて発熱体2への印加エネルギーを制御する駆動制御回路36と、センサ13の検出結果に応じてランク分けされたコード値、予め測定されている各発熱体2による液体吐出量特性(一定温度で、所定のパルス印加における液体吐出量)をヘッド情報として記憶し駆動制御回路36に出力するFeRAM35と、センサ13を駆動するとともにその出力である検出結果をFeRAM35へ記憶させるセンサ処理部37とが設けられている。
【0113】
駆動制御回路36は、パルスジェネレータ、バッファ等から構成される。センサ13としては、液体の状態または特性として、液体の温度の変化、液体の圧力、液体中に含まれる成分、または液体の水素イオン濃度指数(PH)等を検出するセンサが用いられる。
【0114】
FeRAM35は、前述の図1に示した構成の機能素子より構成される強誘電体メモリである。強誘電体メモリの一例として、『「Pb(Zr,Ti)O3膜による強誘電体メモリの開発」、中村孝、応用物理、第67巻、第11号(1998)』に開示されている強誘電体メモリのセル構造を図9に示す。
【0115】
この強誘電体メモリのセル構造は、図9(a)に示すように、プレートライン(下部電極)352、強誘電体350、上部電極351を順次積層してなる強誘電体キャパシタがビットライン353およびワードライン354とともに半導体基板上に形成された構成となっている。このセル構造を用いて、図9(b)に示すような1T1C型セル、図9(c)に示すような2T2C型セルを構成することができる。
【0116】
上記のように構成された素子基板1と天板は、その接合面において、互いの基板に形成された回路等が接続用コンタクトパッドを介して接続される。このようにして素子基板1と天板とを位置合わせして接合することで、液体吐出ヘッドが構成される。
【0117】
以上の構成の液体吐出ヘッドでは、まず、液体の状態がセンサ13により各液流路ごとに検出され、その結果がFeRAM35に記憶される。駆動制御回路36は、そのFeRAM35に記憶されたデータに応じて各発熱体2のプレヒートパルス幅を決定するとともに、入力画像データ信号に応じて各発熱体2の駆動パルスを決定する。この駆動制御回路36で決定されたプレヒートパルス、及び予め決められたヒートパルスが発熱体2に与えられると、発熱体32では、プレヒートされた後、液体を発泡させるためのエネルギーが与えられる。このようにして、センサでの検出結果に応じてプレヒート幅を制御することで、液体状態にかかわらず液体の吐出量を各吐出口で一定にすることができる。
【0118】
FeRAM35に記憶されるヘッド情報としては、上述した液体状態の他に、吐出する液体の種類(液体がインクの場合には、インクの色等)も含めることもできる。液体の種類によってはその物性が異なり、吐出特性が異なるからである。また、センサ13が複数設けられる場合(例えば各ノズル単位に設けられる場合)には、各センサの特性の固体差を補正するために、各センサの特性をヘッド情報としてFeRAM35に予め記憶しておき、駆動時にその情報を利用して駆動条件を制御するようにしてもよい。これらのヘッド情報のFeRAM35への記憶は、この液体吐出ヘッドの組立後に不揮発的に行ってもよいし、この液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出装置の立ち上げ後に装置側から転送されることで行ってもよい。
【0119】
本形態では、FeRAM35は素子基板1に形成されているが、スペースに余裕のある天板側に形成するようにしてもよい。一例として、FeRAMが天板側に形成された液体吐出ヘッドの構成を図10に示す。
【0120】
図10に示す例では、発熱体132に発泡エネルギーを与える前に発熱体132をプレヒート(液体を発泡させない程度の予備的な加熱)するもので、液体の温度を検出するセンサ(図10では不図示)での検出結果に応じて、発熱体132のプレヒートパルス幅を制御する。
【0121】
図10(a)に示すように、素子基板131には、一列に配列された発熱体132と、ドライバとして機能するパワートランジスタ141と、パワートランジスタ141の駆動を制御するためのAND回路139と、パワートランジスタ141の駆動タイミングを制御するための駆動タイミング制御ロジック回路138と、シフトレジスタおよびラッチ回路で構成される画像データ転送回路142と、液体の温度を検出するセンサとが、半導体プロセスを用いて形成されている。
センサは、各液流路ごと、すなわち発熱体132ごとに設けられている。
【0122】
駆動タイミング制御ロジック回路138は、装置の電源容量を少なくする目的で、全ての発熱体132を同時に通電するのではなく発熱体132を分割駆動して時間をずらして通電するためのものであり、この駆動タイミング制御ロジック回路138を駆動するイネーブル信号は、外部コンタクトパッドであるイネーブル信号入力端子145k〜145nから入力される。
【0123】
また、素子基板131に設けられる外部コンタクトパッドとしては、イネーブル信号入力端子145k〜145nの他に、発熱体132の駆動電源の入力端子145a、パワートランジスタ141の接地端子145b、発熱体132を駆動するエネルギーを制御するために必要な信号用の入力端子145c〜145e、ロジック回路の駆動電源端子145f、接地端子145g、画像データ転送回路142のシフトレジスタに入力されるシリアルデータの入力端子145iおよびこれに同期するシリアルクロック信号の入力端子145h、ラッチ回路に入力されるラッチクロック信号の入力端子145jがある。
【0124】
一方、図10(b)に示すように、天板133には、発熱体132の駆動タイミングを決定するとともにセンサ143からの出力をモニタしその結果に応じて画発熱体132のプレヒート幅を決定する駆動信号制御回路146と、各発熱体に対応するプレヒート幅を選択するための選択データをヘッド情報として記憶し駆動信号制御回路146に出力するFeRAM149とが形成されている。このFeRAM149は上述の図8のFeRAMと同様の構造のものである。
【0125】
また、接続用コンタクトパッドとして、素子基板131および天板132には、外部から上記発熱体132を駆動するエネルギーを制御するために必要な信号用の入力端子145c〜145eと駆動信号制御回路146とを接続する端子144b〜144d,148b〜148d、駆動信号制御回路146の出力をAND回路139の一方の入力端子に入力させるための端子148a等が設けられている。
【0126】
以上の構成において、まず、液体の温度がセンサにより各液流路ごとに検出され、その結果がFeRAM149に記憶される。駆動信号制御回路146では、FeRAM149に記憶された温度データおよび選択データに応じて、各発熱体132のプレヒートパルス幅を決定し、端子148a,144aを介してAND回路139に出力する。一方、シリアルで入力された画像データ信号は、画像データ転送回路142のシフトレジスタに記憶され、ラッチ信号によりラッチ回路にラッチされて、駆動タイミング制御回路138を介してAND回路139に出力される。
【0127】
画像データ信号がAND回路139に出力されることで、駆動信号制御回路146で決定されたプレヒートパルス、及び予め決められたヒートパルスが発熱体132に与えられる。これにより発熱体132は、プレヒートされた後、液体を発泡させるためのエネルギーが与えられる。このようにして、センサでの検出結果に応じてプレヒート幅を制御することで、温度状態にかかわらず液体の吐出量を各吐出口で一定にすることができる。
【0128】
なお、図10で説明した液体吐出ヘッドでは、さらに、抵抗値センサとして発熱体132と同様にして素子基板131に形成されたランクヒータ143と、天板133に形成された、ランクヒータ143を駆動するためのセンサ駆動回路147とを有する。そして、センサ駆動回路147とランクヒータ143とを接続する端子144g,144h,148g,148hが、素子基板131及び天板133に形成されている。これは、ランクヒータ143で検出された抵抗値に基づいて発熱体132に印加するパルスのパルス幅を決定するためのものであり、駆動信号制御回路146は、ランクヒータ143からの出力をモニタし、その結果に応じて発熱体132への印加エネルギーを制御する。また、FeRAM149は、ランクヒータ143で検出された抵抗値データあるいは抵抗値からランク分けされたコード値、および予め測定されている各発熱体132による液体吐出量特性(一定温度で、所定のパルスを印加したときの液体吐出量)をヘッド情報として記憶し、駆動信号制御回路146に出力する。
【0129】
ランクヒータ143を利用した発熱体132への印加エネルギーの制御について説明する。まず、ランクヒータ143の抵抗値が検出され、その結果がFeRAM149に記憶される。ランクヒータ143は発熱体132と同様にして形成されたものであるので、その抵抗値は実質的には発熱体132と同じであり、ランクヒータ143の抵抗値を発熱体132の抵抗値とみなす。駆動信号制御回路で146では、FeRAM149に記憶された抵抗値データ及び液体吐出量特性に応じて発熱体132の駆動パルスの立ち上がりデータ及び立ち下がりデータを決定し、端子148a,144aを介してAND回路139に出力する。これによりヒートパルスのパルス幅が決定され、画像データが、画像データ転送回路142から駆動タイミング制御回路138を介してAND回路139に出力されることで、駆動信号制御回路146で決定したパルス幅で発熱体132への通電が行われる。その結果、発熱体132には、ほぼ一定のエネルギーが印加される。
【0130】
<強誘電材料を用いて圧力センサを構成した例>
本出願人は、図30で示したように、液流路内に、気泡の圧力伝搬方向を下流側へ導く可動部材を設けた液体吐出ヘッドを提案している。ここでは、可動部材に強誘電材料より構成された圧力センサを設けた液体吐出ヘッドの例を説明する。
【0131】
図11は、本発明の一実施形態である液体吐出ヘッドの液流路方向に沿った断面図である。
【0132】
本形態の液体吐出ヘッドは、前述の図28に示した構成の液体吐出ヘッドに、発熱体2によって生成される気泡の圧力伝搬方向を下流側へ導く可動部材6を設けた構成となっている。図30におけるものと同等な基本構成を有する可動部材6は、液流路7を吐出口5に連通した第1の液流路7aと、発熱体2を有する第2の液流路7bとに分けるように、発熱体2に対面して配置された片持梁状の薄膜であり、窒化シリコンや酸化シリコンなどのシリコン系の材料で形成される。この可動部材6は、液体の吐出動作によって共通液室8から可動部材6を経て吐出口5側へ流れる大きな流れの上流側に支点6aを持ち、この支点6aに対して下流側に自由端6bを持つように、発熱体2に面した位置に発熱体2を覆うような状態で発熱体2から所定の距離を隔てて配されている。この発熱体2と可動部材6との間が気泡発生領域10となる。
【0133】
上記構成に基づき、発熱体2を発熱させると、可動部材6と発熱体2との間の気泡発生領域10の液体に熱が作用し、これにより発熱体2上に膜沸騰現象に基づく気泡が発生し、成長する。この気泡の成長に伴う圧力は可動部材6に優先的に作用し、可動部材6は図11に破線で示されるように、支点6aを中心に吐出口5側に大きく開くように変位する。可動部材6の変位もしくは変位した状態によって、気泡の発生に基づく圧力の伝搬や気泡自身の成長が吐出口5側に導かれ、吐出口5から液体が吐出する。
【0134】
つまり、気泡発生領域10上に、液流路7内の液体の流れの上流側(共通液室8側)に支点6aを持ち下流側(吐出口5側)に自由端6bを持つ可動部材6を設けることによって、気泡の圧力伝搬方向が下流側へ導かれ、気泡の圧力が直接的に効率よく吐出に寄与することになる。そして、気泡の成長方向自体も圧力伝搬方向と同様に下流方向に導かれ、上流より下流で大きく成長する。このように、気泡の成長方向自体を可動部材によって制御し、気泡の圧力伝搬方向を制御することで、吐出効率や吐出力または吐出速度等の根本的な吐出特性を向上させることができる。
【0135】
一方、気泡が消泡工程に入ると、可動部材6の弾性力との相乗効果で気泡は急速に消泡し、可動部材6も最終的には図11に実線で示した初期位置に復帰する。このとき、気泡発生領域10での気泡の収縮体積を補うため、また、吐出された液体の体積分を補うために、上流側すなわち共通液室8側から液体が流れ込み、液流路7への液体の充填(リフィル)が行われるが、この液体のリフィルは、可動部材6の復帰作用に伴って効率よく合理的かつ安定して行われる。
【0136】
上記可動部材6には、可動部材6の変位により液体を発泡させた際の気泡の圧力を検出する圧力センサ素子200が設けられている。圧力センサ素子200は、前述の図1に示した構成と同様の、強誘電材料よりなる圧力センサである。この圧力センサ素子200では、可動部材6のひずみに応じて分極電荷が変化し、該変化量が液体に作用する圧力の変化として検出される。この圧力センサ素子200の検出結果を、前述の図4に示した発熱体制御部および図10に示した駆動制御回路にフィードバックして発熱体を制御することにより、吐出制御を安定して行うことができる。
【0137】
次に、気泡発生領域10に面して設けられた、圧力センサを有する可動部材6について、図12および図13を参照して説明する。
【0138】
図12(a)は圧力センサを有する可動部材6を備えたノズルを素子基板1に垂直に流路方向に沿って切断した断面図であり、図12(b)は図12(a)において発熱体2で液体に発生した気泡に伴って変位する可動部材6の様子を示している。また、図13は各液流路に配設された可動部材6の圧力センサに対する電気配線を示すために素子基板1に平行な方向に沿って切断した断面図である。
【0139】
図12に示すように可動部材6内に、各電極201にリード配線202と繋がった電極201が両端に形成された圧力センサ素子200が作り込まれている。本例では、センサ素子が効率的に屈曲するように、圧力センサ素子200の上部の可動部材を図12のように一部除去してある。また図13に示すように、各液流路における可動部材6の圧力センサ素子200の両端の電極201のうち、一方の電極はこれと同じ他の圧力センサ素子の一方の電極と共に共通配線202aに繋がっており、もう一方の電極は各可動部材に個別に設けられたセグメント配線202bに繋がっている。
【0140】
次に、フォトリソグラフィプロセスを利用した、圧力センサを有する可動部材6の製造方法について説明する。
【0141】
図14及び図15は、図12及び図13に示した可動部材の液体吐出ヘッドへの製造方法の一例を説明するための図であり、図14及び図15では、図11及び図12に示した液流路7の流路方向に沿った断面が示されている。図14及び図15に基づいて説明する製造方法では、素子基板1上に可動部材6を形成してなるものと、天板に流路側壁を形成してなるものとを接合することで、図11に示した構成の液体吐出ヘッドを製造する。従って、この製造方法では、可動部材6が作り込まれた素子基板1に天板を接合する前に、その天板には流路側壁が作り込まれる。
【0142】
まず、図14(a)では、素子基板1の発熱体2側の面全体に、発熱体2との電気的な接続を行うための接続用パッド部分を保護するための第1の保護層としてのTiW膜76をスパッタリング法によって厚さ約5000Å形成する。
【0143】
次に、図14(b)では、TiW膜76の表面に、間隙形成部材71aを形成するためのAl膜をスパッタリング法によって厚さ約4μm形成する。間隙形成部材71aは、後述する図15(c)の工程において、SiN膜72aがエッチングされる領域までに延在されている。
【0144】
形成されたAl膜を、周知のフォトリソグラフィプロセスを用いてパターニングすることで、そのAl膜の、可動部材6の支持固定部に対応する部分のみを除去し、TiW膜76の表面に間隙形成部材71aを形成する。従って、TiW膜76表面の、可動部材6の支持固定部に対応する部分が露出することになる。この間隙形成部材71aは、素子基板1と可動部材6との間の間隙を形成するための、Al膜からなるものである。間隙形成部材71aは、図11に示した発熱体2と可動部材6との間の気泡発生領域10に対応する位置を含む、TiW膜76の表面の、可動部材6の支持固定部に対応する部分を除く部分全てに形成されている。従って、この製造方法では、TiW膜76の表面の、流路側壁に対応する部分にまで間隙形成部材71aが形成されている。
【0145】
この間隙形成部材71aは、後述するようにドライエッチングにより可動部材6を形成する際のエッチングストップ層として機能する。これは、TiW膜76や、素子基板1における耐キャビテーション膜としてのTa膜、および抵抗体上の保護層としてのSiN膜が、液流路7を形成するために使用するエッチングガスによりエッチングされてしまうからであり、それらの層や膜のエッチングを防止するために、このような間隙形成部材71aを素子基板1上に形成する。これにより、可動部材6を形成するためにSiN膜のドライエッチングを行う際にTiW膜76の表面が露出することがなく、そのドライエッチングによるTiW膜76および、素子基板1内の機能素子の損傷が間隙形成部材71aによって防止される。
【0146】
次に、図14(c)では、間隙形成部材71aの表面全体および、TiW膜76の、露出した面全体に、プラズマCVD法を用いて、可動部材6を形成するための材料膜である厚さ約2.5μmのSiN膜72aを、間隙形成部材71aを被覆するように形成する。
【0147】
次に、SiN膜72a上の圧力センサ素子200が形成される部分に、周知の半導体プロセスを用いて、Ta、Ti等からなる第1および第2のバリア層をスパッタリング法によって形成し、Pb(Zr,Ti)O3からなる誘電体材料膜をスパッタリング法あるいはCVD法によって形成し、前述の図1に示したように積層された圧電素子膜200aを形成する。
【0148】
次に、図15(a)に示すように、圧電素子膜200aの両端部に対してそれぞれ、AlもしくはCu/Wでリード配線202a、202bをパターニングする。続いて、図15(b)では、SiN膜72aの表面全体に、プラズマCVD法を用いて、可動部材6を形成するための材料膜である厚さ約2.0μmのSiN膜72bを、ポリシリコン膜200a及びリード配線202a,202bを被覆するように形成する。
【0149】
次に、SiN膜72bの表面に、スパッタリング法によりAl膜を厚さ約6100Å形成した後、形成されたAl膜を、周知のフォトリソグラフィプロセスを用いてパターニングし、SiN膜72b表面の、可動部材6に対応する部分に第2の保護層としてのAl膜(不図示)を残す。但し、後述のドライエッチングの際に圧電素子膜200aの一部が露出されるように、圧電素子膜200a上のSiN膜72bの表面の一部には前記第2の保護層としてのAl膜(不図示)は残さない。この第2の保護層としてのAl膜は、可動部材6を形成するためにSiN膜72a及び72bにドライエッチングを行う際の保護層(エッチングストップ層)すなわちマスクとなる。
【0150】
そして、図15(c)では、誘電結合プラズマを使ったエッチング装置を用い、前記第2の保護層をマスクにしてSiN膜72a及び72bをパターニングすることで、そのSiN膜72a及び72bの残った部分で構成される可動部材6を形成する。そのエッチング装置ではCF4とO2との混合ガスを用いており、SiN膜72a及び72bをパターニングする工程では、図11に示したように可動部材6の支持固定部が素子基板1に直接固定されるようにSiN膜72aの不要な部分を除去する。可動部材6の支持固定部と素子基板1との密着部の構成材料には、パッド保護層の構成材料であるTiW、および素子基板1の耐キャビテーション膜の構成材料であるTaが含まれる。
【0151】
次に、図15(d)では、酢酸、りん酸および硝酸の混酸を用いて、可動部材6に形成したAl膜からなる前記第2の保護層や、Al膜からなる間隙形成部材71aを溶出して除去し、素子基板1上に可動部材6を作り込む。その後、過酸化水素を用いて、素子基板1に形成したTiW膜76の、気泡発生領域10およびパッドに対応する部分を除去する。
【0152】
以上のようにして、圧力センサ素子を有する可動部材6が設けられた素子基板1が製造される。ここでは、図11に示したように可動部材6の支持固定部が素子基板1に直接固定されているものを製造する場合で説明したが、この製造方法を適用して、可動部材が台座部を介して素子基板に固定された液体吐出ヘッドを製造することもできる。この場合、図14(b)に示した間隙形成部材71aを形成する工程の前に、可動部材の、自由端と反対側の端部を素子基板に固定するための台座部を素子基板の発熱体側の面上に形成する。この場合でも、台座部と素子基板との密着部の構成材料には、パッド保護層の構成材料であるTiW、および素子基板の耐キャビテーション膜の構成材料であるTaが含まれる。
【0153】
その後、他方の素子基板3である天板側においては、電気的な接続用パッドが形成された表面上に、金バンプ等を形成し、凸電極部を形成する。そして、図示しないが、天板側の凸電極と、素子基板1側の凹電極間で、金属の共晶を利用した接合を行った。この際、両側の金属種は、同種金属を採用した方が接合時の温度・圧力を低減でき、かつ、接合強度を高めることができる。
【0154】
最後に、エキシマレーザを用いて、フェイス全面に設置したコンタクトマスクを介して、オリフィス5を形成することで液体吐出ヘッドが完成する。
【0155】
上述した製法例では、流路側壁9を天板3側に形成しておく場合を説明したが、フォトリソグラフィプロセスを用いて、素子基板1への可動部材6の形成と同時に、流路側壁9を素子基板1側に形成してもよい。
【0156】
上記圧力センサ素子からの出力をモニターするための回路の一例を図16に示す。図16に示す回路では、記録液発泡時の圧力による圧電素子膜200aの変位に伴う起電力を電圧計206によって測定することにより、可動部材6の変位量及び発泡の圧力が計測可能となる。この回路において、Vout端子の電圧は圧電素子膜200aの起電力である。よって、このVout出力を前述の素子基板1に形成されたFeRAMにフィードバックする。この場合も、駆動信号制御回路で、このフィードバックされた信号をもとに駆動パルスの切り替えや選択を行うことで常に安定した発泡圧力を得ることができる。
【0157】
上述のように、良好な画像品位を得るために発熱体2の駆動を制御しても、共通液室内に気泡が発生し、これが液体のリフィルとともに液流路内に移動してくると、共通液室内には液体が存在するにもかかわらず、液体が吐出されないという不具合が発生する場合がある。
【0158】
そこで、これに対処するために、各液流路内の可動部材6に設けた圧力センサで発泡状態の異常が検出されたらその結果を後述の吸引回復操作を制御する回路に出力させる処理回路を素子基板1又は天板3に設けてもよい。そして、この処理回路からの出力に基づき、後述の液体吐出記録装置側のインク吸引手段で、液体吐出ヘッド内の液体を吐出口から強制的に吸引するようにすれば、液流路内の気泡を除去することができる。
【0159】
なお、本形態では、圧力センサ素子200は可動部材に造り込まれているが、発熱体2の膜沸騰に伴って発生する気泡によって液体に作用する圧力の変化、インクの流れの淀み等、検出対象に応じて天板または素子基板の最適な場所に設けることが望ましい。例えば、図17に示すように、液流路7内に、強誘電材料より構成される圧力センサ素子200’を設けてもよい。この場合、圧力センサ素子200’は、液体の流れを妨げないような構造とすることが望ましい。
【0160】
上述した本形態の液体吐出ヘッドによれば、近年の液体吐出ヘッドの高密度化に伴って生じていた以下のような従来の問題も解決される。
【0161】
液体吐出ヘッドの高密度化により液体の吐出量が少なくなっており、これに伴って、従来では大きな問題とはならなかったようなインクの状態等に起因する吐出量の差が、吐出量のばらつきとして目立つようになってきていた。このため、従来の液体吐出ヘッドの温度センサの配置では、より正確なインクの状態等を検出することが困難であった。その理由は、従来の液体吐出ヘッドの温度センサは、電気熱変換体、駆動制御部とともに、半導体ウェハプロセス技術を用いて素子基板の表面に平面的に形成されていたものであるが、素子基板の表面近傍は、インクの流れが淀み易く、また、電気熱変換体からの熱の影響により大きな温度勾配をもつためであると考えられる。本形態によれば、そのようなインクの流れの淀み、電気熱変換体からの熱の影響等を受けるとなく、より細かな液体吐出制御を行うことができる。
【0162】
圧力センサーについて説明したが、圧電素子である強誘電材料に電圧を印加することで、変位を起こすことを利用することもできる。具体的にはその変位を利用して、インクを吐出させたり、オリフィスのメニスカスの制御等に利用できる。変位しやすくするために、弁構造を設けてその部分に強誘電材料を設けることもできる。これはインクの圧力を検知して印字制御を行う構成とほとんど同じでできるため、組み合わせて構成してもよい。また、変位を大きくするために積層構造としてもよい。
<強誘電材料を用いて可動部材を構成した例>
次に、強誘電材料を用いて可動壁を構成した実施形態について図面を参照して説明する。
【0163】
図2は、本発明の液体吐出ヘッドにおける素子基板のインク路に相当する部分の断面図を示すものである。図2において、符号301はシリコン基板、符号302は蓄熱層であるところの熱酸化膜を示す。符号303は蓄熱層を兼ねる層間膜であるところのSiO2膜またはSi34膜、符号304は抵抗層、符号305はAlまたはAl-Si、Al-Cu等のAl合金配線、符号306は保護膜であるところのSiO2膜またはSi34膜を示す。符号307は抵抗層304の発熱に伴う化学的・物理的衝撃から保護膜306を守るための耐キャビテーション膜を示す。また、符号308は、電極配線305が形成されていない領域の抵抗層304の熱作用部を示す。
【0164】
これらの駆動素子は、半導体技術によりSi基板に形成され、熱作用部が同一基板に更に形成される。
【0165】
図3に、液体吐出ヘッドにおける素子基板の主要素子を縦断するように切断したときの模式的断面図を示す。
【0166】
P導電体のSi基板301に、一般的なMOSプロセスを用いイオンプラテーション等の不純物導入および拡散によりN型ウェル領域422にP-MOS420、p型ウェル領域423にN-MOS421が構成される。P-MOS420およびN-MOS421は、それぞれ厚さ数百Åのゲート絶縁膜428を介して4000Å以上5000Å以下の厚さにCVD法で堆積したpoly-Siによるゲート配線435およびN型あるいはP型の不純物導入をしたソース領域425、ドレイン領域426等で構成され、それらP-MOSとN-MOSによりC-MOSロジックが構成される。
【0167】
また、素子駆動用N-MOSトランジスタは、やはり不純物導入および拡散等の工程によりP-ウェル基板中にドレイン領域431、ソース領域432およびゲート配線433等で構成される。
【0168】
なお、本形態では、N-MOSトランジスタを使った構成で説明しているが、複数の発熱体を個別に駆動できる能力を持ち、かつ、上述したような微細構造を達成できる機能を持つトランジスタであれば、これに限らない。
【0169】
また、各素子間は、500Å以上10000Å以下の厚さのフィールド酸化により、酸化膜分離領域423を形成し、素子分離されている。このフィールド酸化膜は、熱作用部308下においては一層目の蓄熱層434として作用する。
【0170】
各素子が形成された後、層間絶縁膜436が約7000Åの厚さにCVD法によるPSG(Phospho Silicate Glass)、BPSG(Boron-doped Phospho Silicate Glass)膜等で堆積され、熱処理により平坦化処理等をされてからコンタクトホールを介し、第1の配線層となるAl電極437により配線が行われている。その後、プラズマCVD法によるSiO2膜等の層間絶縁膜438を10000Å以上15000以下の厚さに堆積し、更にスルーホールを介して、抵抗層304として約1000Åの厚さのTaN0.8,hex膜をDCスパッタ法により形成した。その後、各発熱体への配線となる第2の配線層Al電極を形成した。
【0171】
次に、保護膜306は、プラズマCVDによるSi34膜が、約10000Åの厚さに成膜される。最上層には、耐キャビテーション膜107がアモルファスタンタルによって約2500Åの厚さに堆積される。耐キャビテーション膜307の材料としては、金属膜よりも導電性の弱いアモルファス金属を選択した。また、耐キャビテーション膜307の材料として、更に導電性が弱く、比誘電率が比較的高い絶稼材料である窒化物(BN,TiN)や炭化物(WC,TiC,BC)等を用いてもよい。
【0172】
図18は本発明の液体吐出ヘッドの一実施形態の基本的な構造を説明するための、液流路方向に沿った断面図、図19は図18に示した液体吐出ヘッドの一部を破断して示す斜視図である。
【0173】
本実施形態の液体吐出ヘッドは、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを与える気泡発生素子である複数個(図18では1つのみ示す)の発熱体2が並列に設けられた素子基板1と、この素子基板1上に接合された天板3を有する。
【0174】
素子基板1は、シリコン等の基体上に絶縁および蓄熱を目的とした酸化シリコン膜または窒化シリコン膜を成膜し、その上に、発熱体2を構成する電気抵抗層および配線電極をパターニングしたものである。この配線電極から電気抵抗層に電圧を印加し、電気抵抗層に電流を流すことで発熱体2が発熱する。
【0175】
天板3は、各発熱体2に対応した複数の液流路7および各液流路7に液体を供給するための共通液室8を構成するためのもので、天井部分から各発熱体2の間に延びる流路側壁9が一体的に設けられている。天板3はシリコン系の材料で構成され、液流路7および共通液室8のパターンをエッチングで形成したり、シリコン基板上にCVD等の公知の成膜方法により窒化シリコン、酸化シリコン等の流路側壁9となる材料を堆積した後、液流路7の部分をエッチングして形成することができる。
【0176】
天板3の先端面には壁部が設けられており、この壁部には、各液流路7に対応しそれぞれ液流路7を介して共通液室8に連通する複数の吐出口5が形成されている。
【0177】
さらに、この記録ヘッドには、液流路7を第1の液流路7aと第2の液流路7bとに分けるように配置された片持梁状の可動部材6が設けられている。可動部材6は、強誘電体薄膜6aと、その両面に設けられた電極6bと、上側の電極6bの表面に設けられた変位補助層としての上部膜6cとを有している。上部膜6cは、電界中に置かれても歪みを生じない材料であるSiNやSiO2等によって形成されている。なお、この変位補助層は下側の電極6bの表面に設けられていてもよい。
【0178】
可動部材6は、液体の吐出動作によって共通液室8から可動部材6の上方を経て吐出口5側へ流れる大きな流れの上流側であって、可動部材6の素子基板1との支持固定部の付近に支点6dを有し、さらに、この支点6dに対して下流側に自由端6eを持つように、素子基板1上に配置されている。なお、発熱体2の上方が気泡発生領域10となる。
【0179】
なお、ここで、「上流」および「下流」とは、液体の供給源から気泡発生領域10(あるいは可動部材6)の上方を経て、吐出口5へ向かう液体の流れ方向に関して、又はこの構成上の方向に関しての表現として表されている。
【0180】
次に、素子基板1および天板3への回路や素子の振り分け構成について説明する。
【0181】
図4は、図18に示した液体吐出ヘッドの回路構成を説明するための図であり、同図(a)は素子基板の平面図、同図(b)は天板の平面図である。なお、図4(a)および(b)は、互いの対向面を表わしている。
【0182】
図4(a)に示すように、素子基板1には、並列に配列された複数の発熱体2と、画像データに応じてこれら発熱体2を駆動するドライバ11と、入力された画像データをドライバ11に出力する画像データ転送部12と、発熱体2の駆動条件を制御するために必要なパラメータを測定するセンサ13とが設けられている。
【0183】
画像データ転送部12は、シリアルに入力される画像データを各ドライバ11にパラレルに出力するシフトレジスタ、およびシフトレジスタから出力されるデータを一時記憶するラッチ回路で構成される。なお、画像データ転送部12は、各発熱体2に個別に対応して画像データを出力するものでもよいし、発熱体2の並びを複数のブロックに分け、ブロック単位に対応して画像データを出力するものでもよい。特に、1つのヘッドについて複数のシフトレジスタを備え、記録装置からのデータの転送を複数のシフトレジスタに振り分けて入力するようにすることで、印字速度の高速化に容易に対応することもできる。
【0184】
センサ13としては、発熱体2の近傍の温度を測定する温度センサや、発熱体2の抵抗値をモニタするための抵抗センサ等が用いられる。
【0185】
噴射される液滴の吐出量を考えた場合、その吐出量は主に液体の発泡体積に関係する。液体の発泡体積は、発熱体2およびその周辺の温度によって変化する。そこで、温度センサによって発熱体2および周辺の温度を測定し、その結果に応じて液体吐出のためのヒートパルスを印加する前に、液体を吐出しない程度の小さいエネルギーのパルス(プレヒートパルス)を加え、そのプレヒートパルスのパルス幅や、その出力タイミングを変更することにより発熱体2および周辺の温度を調整して、一定の液滴を吐出するようにして画像品位を維持することが行われる。
【0186】
また、発熱体2における、液体を発泡させるのに必要なエネルギーを考えた場合、放熱条件が一定であれば、そのエネルギーは発熱体2の必要な単位面積当たりの投入エネルギーと発熱体2の面積の積で表わされる。これにより、発熱体2の両端にかかる電圧、発熱体2を流れる電流およびパルス幅を、その必要なエネルギーが得られる値に設定すればよい。ここで発熱体2に印加される電圧については、液体吐出装置本体の電源により電圧を供給することにより、ほぼ一定に保持することができる。一方、発熱体2を流れる電流については、発熱体2の抵抗値が、素子基板1の製造過程における発熱体2の膜厚のばらつき等により、ロットにより、あるいは素子基板1によって抵抗値が異なってくる。従って、印加されるパルス幅が一定で、発熱体2の抵抗値が設定よりも大きい場合はその流れる電流値が小さくなり、発熱体2に投入されるエネルギー量が不足してしまい、液体を適正に発泡させることができなくなる。逆に、発熱体2の抵抗値が小さくなると、同じ電圧を印加しても電流値が設定値よりも大きくなる。この場合には、発熱体2により過剰なエネルギーが発生され、発熱体2の損傷や短寿命につながるおそれがある。そこで、抵抗センサによって発熱体2の抵抗値を常にモニタし、その値により電源電圧やヒートパルス幅を変化させ、発熱体2にほぼ一定のエネルギーが印加されるようにする方法もある。
【0187】
一方、図4(b)に示すように、天板3には、前述したように液流路および共通液室を構成する溝3a,3bが形成される他に、素子基板1に設けられたセンサ13を駆動するセンサ駆動部17と、センサ駆動部17により駆動されたセンサからの出力結果に基づいて発熱体2の駆動条件を制御する発熱体制御部16とが設けられている。なお、天板3には、外部から共通液室に液体を供給するために、共通液室に連通した供給口3cが開口している。
【0188】
さらに、素子基板1および天板3の接合面の、互いの対向する部位にはそれぞれ、素子基板1に形成された回路等と天板3に形成された回路等とを電気的に接続するための接続用コンタクトパッド14,18が設けられている。また、素子基板1には、外部からの電気信号の入力端子となる外部コンタクトパッド15が設けられている。素子基板1の大きさは天板3の大きさよりも大きく、外部コンタクトパッド15は、素子基板1と天板3とを接合したときに天板3から露出する位置に設けられている。
【0189】
ここで、素子基板1および天板3への回路等の形成手順の一例について説明する。
【0190】
素子基板1については、まず、シリコン基板上に、上記ドライバ11、画像データ転送部12およびセンサ13を構成する回路を半導体ウェハプロセス技術を用いて形成する。次いで、前述したようにして発熱体2を形成し、最後に、接続用コンタクトパッド14および外部コンタクトパッド15を形成する。
【0191】
天板3については、まず、シリコン基板上に、上記発熱体制御部16およびセンサ駆動部17を構成する回路を半導体ウェハプロセス技術を用いて形成する。次いで、上述したように、成膜技術およびエッチングによって、液流路や共通液室を構成する溝3a,3bおよび供給口3cを形成し、最後に、接続用コンタクトパッド18を形成する。
【0192】
上記のように構成された素子基板1と天板3とを位置合わせして接合すると、各液流路に対応して発熱体2が配置されるとともに、それぞれの接続用パッド14,18を介して素子基板1および天板3に形成された回路等が電気的に接続される。この電気的接続は例えば、接続用パッド14,18に金バンプ等を載せて行う方法があるが、それ以外の方法でもよい。このように、素子基板1と天板3との電気的接続を接続用コンタクトパッド14,18によって行うことで、素子基板1と天板3との接合と同時に、上述した回路同士の電気的接続を行うことができる。素子基板1と天板3との接合後に、液流路7の先端にオリフィスプレート4を接合し、これにより液体吐出ヘッドが完成する。
【0193】
なお、図18に示したように本実施形態の液体吐出ヘッドは可動部材6を有しているが、この可動部材6についても、上述のようにして素子基板に回路等を形成した後、フォトリソグラフィプロセスを用いて素子基板1上に形成される。可動部材6の形成工程については以下に説明する。
【0194】
このようにして得られた液体吐出ヘッドをヘッドカートリッジや液体吐出装置に搭載する場合には、図20に示すように、プリント配線基板23が搭載されたベース基板22上に固定し、液体吐出ヘッドユニット20とされる。図20において、プリント配線基板23には、液体吐出装置のヘッド制御部と電気的に接続される複数の配線パターン24が設けられ、これら配線パターン24は、ボンディングワイヤー25を介して外部コンタクトパッド15と電気的に接続される。外部コンタクトパッド15は素子基板1のみに設けられているので、液体吐出ヘッド21と外部との電気的接続は、従来の液体吐出ヘッドと同様にして行うことができる。ここでは、外部コンタクトパッド15を素子基板1に設けた例について説明したが、素子基板1ではなく天板3のみに設けてもよい。
【0195】
以上説明したように、発熱体2の駆動や制御のための各種回路等を素子基板1と天板3とに両者の電気的接合を考慮した上で振り分けることで、これらの回路等が1つの基板に集中しなくなるので、液体吐出ヘッドの小型化が可能になる。また、素子基板1に設けられた回路等と天板3に設けられた回路等との電気的接続を接続用コンタクトパッド14,18によって行うことで、ヘッド外部への電気的接続部の数が減り、信頼性の向上、部品点数の削減、ヘッドのより一層の小型化を実現することができる。
【0196】
また、上述した回路等を素子基板1と天板3とに分散させることで、素子基板1の歩留まりを向上させることができ、その結果、液体吐出ヘッドの製造コストを下げることができる。さらに、素子基板1および天板3を、シリコンという同一材料をベースとした材料で構成しているため、素子基板1と天板3との熱膨張係数が等しくなる。その結果、発熱体2の駆動により素子基板1および天板3が熱膨張しても両者にずれは生じなくなり、発熱体2と液流路7との位置精度が良好に維持される。
【0197】
本実施形態では上述の各回路等をその機能に応じて振り分けているが、この振り分けの基準となる考え方について以下に述べる。
【0198】
各発熱体2に個別またはブロック単位に電気配線接続で対応する回路は、素子基板1に形成する。図4に示した例では、ドライバ11および画像データ転送部12がこれに相当する。各発熱体2には駆動信号がパラレルに与えられるので、その信号分だけ配線の引き回しが必要となる。従って、このような回路を天板3に形成すると、素子基板1と天板3との接続数が多くなり接続不良が発生する可能性が高くなるが、素子基板1に形成することで、発熱体2と上記回路との接続不良が防止される。
【0199】
制御回路などアナログ的な部分は、熱の影響を受け易いことから、発熱体2が設けられていない基板すなわち天板3に設ける。図4に示した例では、発熱体制御部16がこれに相当する。
【0200】
センサ13は、必要に応じて素子基板1に設けてもよいし、天板3に設けてもよい。例えば抵抗センサである場合には、抵抗センサは素子基板1上に設けないと意味がなかったり測定精度が低下したりするため素子基板1に設ける。また、温度センサの場合には、ヒータ駆動回路の異常による温度上昇などを検知する場合には素子基板1上に設けることが好ましいが、後述するインクを介しての温度上昇によりインクの状態を判断したい場合には、天板3、或いは素子基板1と天板3との双方に設けることが好ましい。
【0201】
その他、各発熱体2に個別にもブロック単位にも電気配線接続で対応していない回路、必ずしも素子基板1に設けなくてもよい回路、天板3に設けても測定精度には影響しないセンサ等は、素子基板1および天板3のいずれか一方に集中しないように必要に応じて素子基板1または天板3に形成する。図4に示した例では、センサ駆動部17がこれに相当する。
【0202】
上記の考え方に基づいて各回路やセンサ等を素子基板1と天板3とに設けることで、素子基板1と天板3との電気的接続数をできるだけ少なくしつつも、各回路やセンサ等をバランスよく振り分けることができる。
【0203】
次に、本実施形態の液体吐出ヘッドの可動部材の製造方法について、図21を参照して説明する。図21は、図18に示した液体吐出ヘッドにおける可動部材の製造工程を示す、液流路方向に沿った断面図である。
【0204】
まず、図21(a)に示すように、素子基板1の耐キャビテーション層501の上に、可動部材6を変位させる駆動信号を与えるための一方の電極配線となる、Cu-Siからなる膜厚が3000Åの配線層502を形成する。そして、所望の電極配線が形成するために、配線層502パターニングおよびエッチングを行う。次に、この配線層502の上に、SiN膜からなる膜厚が5000Åの中間層503を形成する。
【0205】
次に、同図(b)に示すように、素子基板1の上面全体に、CVD法によって温度350℃の条件でPSG膜504を形成する。PSG膜504の膜厚は1〜20μmであり、この膜厚は図18に示した素子基板1と可動部材6とのギャップに相当する。PSG膜504の膜厚をこのような範囲とすることにより、記録ヘッドにおける液流路全体のバランス上、可動部材6による液体吐出効率向上の効果が顕著に現れる。
【0206】
次に、PSG膜504をパターニングするために、PSG膜504の表面にスピンコート等によりレジストを塗布した後、露光および現像を行い、そのレジストのうちの可動部材6が固定される部分に相当する部分を除去する。続いて、PSG膜504のうちのレジストで覆われていない部分を、バッファードフッ酸によるウェットエッチングによって除去する。その後、PSG膜504の表面に残っているレジストを、酸素プラズマによるアッシングによって、あるいは素子基板1をレジスト除去剤に浸すことによって除去する。これにより、PSG膜504の一部が素子基板1の表面に残され、後の工程で可動部材6と素子基板1との空間に相当する型部材が作り込まれる。
【0207】
次に、同図(c)に示すように、SiNからなる膜厚が5000Åの保護層505を形成し、上述した中間層503および保護層505のパターニングおよびエッチングを行う。
【0208】
次いで、同図(d)に示すように、可動部材6の駆動信号を与えるためのCu-Siからなる膜厚が3000Åの電極層506をスパッタリング法により形成し、同様にパターニングおよびエッチングを行う。これにより、電極層506が配線層502に接続され、下側の電極6b(図18参照)が形成される。
【0209】
次に、次に形成する強誘電体層507を電極層506から保護するためのバリア層510をスパッタリングによって形成した後、同図(e)に示すように、RFスパッタリング法により、Pb(Zr0.5Ti0.5)O3からなる膜厚が1μmの強誘電体層507を形成する。次いで、成膜された強誘電体層507のパターニングおよびエッチングを行うことにより、強誘電体層507を可動部材6に相当する形状に形成する。
【0210】
続いて、強誘電体層507上に電極層508に対する保護層としてのバリア層511をスパッタリングによって形成した後、同図(f)に示すように、可動部材6の駆動信号を与えるもう一方の上側の電極6bを成す電極層508を、Cu-Siによって膜厚が3000Åとなるように形成する。次に、電極層508を保護するために、SiNからなる膜厚が3000Åの保護層509を形成する。次に、可動部材6の変位をより大きくするために、SiNからなる膜厚が6000Åの上部膜510を形成する。
【0211】
最後に、素子基板1と可動部材6との間の気泡発生領域10(図18参照)に相当する部分を形成するために、型部材として残っているPSG膜504をバッファードフッ酸によるウェットエッチングによって除去する。これにより、同図(g)に示すように、素子基板1と可動部材6との間にギャップが形成される。
【0212】
以上の工程により、本実施形態の可動部材6が作成される。
【0213】
ここで、本実施形態の液体吐出ヘッドの可動部材の他の製造方法について、図22を参照して説明する。図22は、本製造方法に用いられるECRプラズマCVD装置を示す概略図である。
【0214】
本製造方法では、可動部材6の強誘電体薄膜6aを(Ba-Sr)TiO3で構成し、ECRプラズマCVD法を用いて形成する。これ以外は、図21を参照して説明した製造方法と同様に行う。
【0215】
ECRプラズマCVDによって形成される強誘電体薄膜6aの材料には、Ba(DPM)2[bis-dipivaloylmethanate barium]、Sr(DPM)2、Ti(O-i-C374およびO2が用いられる。Ba(DPM)2およびSr(DPM)2は、それぞれ融点に近い高温で、図22に示すようにArガスをキャリアとして装置のチャンバー内に供給される。また、Ti(O-i-C374は、キャリアガスであるArガスによってハブリングすることにより、装置のチャンバー内に供給される。一方、O2ガスも装置のチャンバー内に供給される。
【0216】
次に、チャンバー内に2.54GHzのマイクロ波を導入して、これらの材料をプラズマ化させる。これにより、これらの材料はチャンバー内に配置された基板の表面に到達し、強誘電体材料から成る強誘電体薄膜6aが形成される。
【0217】
なお、上記では、可動部材6の強誘電体薄膜6aをスパッタリング法あるいはECRプラズマCVD法を用いて形成する方法について説明した。しかし、強誘電体薄膜6aの形成はこれらの製法に限られず、これらの他にもプラズマCVD法、熱CVD法、MOCVD(Molecular Organic CVD)法等を用いて形成することが可能である。
【0218】
また、強誘電体薄膜6aの材料には、上記に示したものの他に、PZT:Pb-Zrx-Ti1-xO3、SBT:Sr-Bi2-Ta25、SrTiO3、BaTiO3、PLZT:(Pb,La)-(Zr,Ti)O3等を用いることができる。強誘電体薄膜6aの組成は、膜厚方向に関して、連続的に変化させてもよいし、断続的に変化させてもよい。
【0219】
[本形態の液体吐出ヘッドの液体吐出の基本原理]
次に、本発明のような液体吐出ヘッドによる液体吐出の基本槻念について、図23を参照して具体的に説明する。
【0220】
図23は、本発明の液体吐出ヘッドによる吐出方法を説明するための、流路方向の断面図である。
【0221】
図23に示すように、吐出口5は液流路7の端部域に配置され、可動部材6は吐出口5の上流側に配置されている。吐出口5に直接連通している液流路7内には、共通液室8から供給される液体が満たされている。可動部材6は、可動部材6に設けられた上下の電極6b間に電圧を印加することにより、強誘電体薄膜6aに発生する歪み力によって変位可能である。特に本実施形態では、液体の流れ方向に関して、上下の電極6b間に電圧を印加すると強誘電体薄膜6aの長さが伸縮するのに対し、上部膜6cの長さは電極6b間への電圧の印加にかかわらず一定であるため、薄膜6aと上部膜6cとの間に生じる長さの差によって可動部材6に歪み力が発生し、これによって可動部材6を大きく変位させることができるようになっている。
【0222】
可動部材6は、電極6b間に電圧を印加すると薄膜6aが収縮して素子基板1側へ変位し、また、両電極6b間に上記の場合とは正負が逆の電圧を印加すると薄膜6aが伸長して天板3側へ変位する。また、可動部材6は、気泡発生領域10に発生した気泡の成長および収縮に伴っても、天板3側あるいは素子基板1側へ変位可能である。
【0223】
まず最初に、図23(a)に示す初期状態では、液体自身が有している表面張力により、液体が吐出口5から少し突出した状態になっている。
【0224】
次に、両電極間6bに電圧を印加することにより強誘電体薄膜6aが収縮し、同図(b)に示すように、可動部材6が素子基板1側へ変位する。それに伴って、吐出口5から突出していた液体の液面が液流路7内に一定距離後退した状態になる。これにより、各液体吐出動作毎の液体吐出量を安定させることが可能となる。
【0225】
同図(c)では、発熱体2に熱発生エネルギーが与えられ、気泡発生領域10に気泡50が生じる直前に、可動部材6の両電極6b間に同図(b)の場合とは逆の電位をかけることにより、強誘電体薄膜6aを逆方向に歪ませることで、可動部材6を天板3側に変位させておく。その後、成長した気泡50は、直前に変位し後方(上流側)の障壁となっている可動部材6の所で止まっており、発生した圧力波によって流れを持った液体は、可動部材6よりも後方へは流れないようになっている。
【0226】
つまり、液体の加熱発泡に先立って、両電極6b間に上記とは正負が逆の電圧を印加し、可動部材6を予め天板3側に変位させておくことが好ましい。これにより、上流側への液体の流れが遮断され、液体を下流側の吐出口5へ効率的に送ることができ、吐出口5からの液体吐出効率を向上させることができる。
【0227】
発熱体2の表面全体に発生した気泡が急速に成長していくと膜状となり、その後、発生初期のきわめて高い圧力による気泡の膨張を続けていくと、同図(c)に示す気泡50のように最大発泡径まで成長する。
【0228】
次に、飛翔液体(液滴)が吐出口5における液体表面から離別する瞬間に、両電極6b間に当初と正負が同じ電圧を印加することにより、同図(d)に示すように可動部材6を素子基板1側に変位させる。この作用により、吐出口5側から液流路7内に各吐出動作毎に同一の量の液体が引き戻される。これにより、吐出口5付近の液体が飛翔液体(液滴)に追随するようにして尾引き形状となる現象や、主液滴の後にサテライト液滴である小液滴が飛翔する現象を無くすことができる。さらに、上流側からの液体のリフィルがより高速に行われる。
【0229】
また、同図(c)と(d)とに示す状態の間において、両電極6b間に当初と正負が同じ電圧を印加することにより、同図(c)に示す状態から同図(d)に示す状態へ至る時間、すなわち可動部材6が天板3側へ最大に変位した状態から可動部材6が素子基板1側に変位するまでの時間を短くすることができ、液体吐出周波数を向上させることが可能となる。
【0230】
最後に、可動部材6が自身の弾性力で元の位置に戻ると、液体吐出ヘッドは再び初期状態となる。
【0231】
図24は、図23で示した本発明の吐出原理を実施するために、発熱体2や可動部材6内に設けられた電極6b等に入力する信号のタイミングチャートを示している。
【0232】
本実施形態では、まず最初に、VALVE信号をハイレベル(以下、「Hレベル」という。)にして、弁である可動部材6をGNDレベルにする。そして、プレヒート信号を印加すると、弁がヒータである発熱体2側に変位し、吐出口におけるメニスカスを後退させる。その後、プレヒート信号の印加を終了させた後に、VALVE信号をローレベル(以下、「Lレベル」という。)にして弁の誘電体膜6aの電荷をディスチャージさせ、弁をGNDレベルに設定することにより、弁を元の位置に戻す。
【0233】
次に、メインヒート信号を印加させることで吐出口5から液滴を吐出させる。
このとき、弁は気泡の後方成長を止める働きをする。
【0234】
次に、VALVE信号をHレベルにして、弁をGNDレベルにする。そして、プレヒート信号を印加すると、弁がヒータ側に変位し、液流路への液体のリフィル速度を促進させる。その後、VALVE信号をLレベルにして、弁を元の位置に戻す。
【0235】
以上、本発明の基本的な構成についての実施形態を説明したが、以下に、上述した回路等の具体的な例について説明する。
【0236】
〈発熱体への印加エネルギーを制御する例〉
図25は、センサ出力に応じて発熱体への印加エネルギーを制御する例の素子基板および天板の回路構成を示す図である。
【0237】
図25(a)に示すように、素子基板131には、一列に配列された発熱体132と、ドライバとして機能するパワートランジスタ141と、パワートランジスタ141の駆動を制御するためのAND回路139と、パワートランジスタ141の駆動タイミングを制御するための駆動タイミング制御ロジック回路138と、シフトレジスタおよびラッチ回路で構成される画像データ転送回路142と、発熱体132の抵抗値を検出するセンサとしての吐出ヒータ用ランクヒータ143とが形成されている。
【0238】
駆動タイミング制御ロジック回路138は、装置の電源容量を少なくする目的で、全ての発熱体132を同時に通電するのではなく発熱体132を分割駆動して時間をずらして通電するためのものであり、この駆動タイミング制御ロジック回路138を駆動するイネーブル信号は、外部コンタクトパッドであるイネーブル信号入力端子145k〜145nから入力される。
【0239】
また、素子基板131に設けられる外部コンタクトパッドとしては、イネーブル信号入力端子145k〜145nの他に、発熱体132の駆動電源の入力端子145a、パワートランジスタ141の接地端子145b、発熱体132を駆動するエネルギーを制御するために必要な信号用の入力端子145c〜145e、ロジック回路の駆動電源端子145f、接地端子145g、画像データ転送回路142のシフトレジスタに入力されるシリアルデータの入力端子145iおよびこれに同期するシリアルクロック信号の入力端子145h、ラッチ回路に入力されるラッチクロック信号の入力端子145jがある。
【0240】
一方、図25(b)に示すように、天板133には、吐出ヒータ用ランクヒータ143を駆動するためのセンサ駆動回路147と、吐出ヒータ用ランクヒータ143からの出力をモニタしその結果に応じて発熱体132への印加エネルギーを制御するための駆動信号制御回路146と、吐出ヒータ用ランクヒータ143で検出された抵抗値データあるいは抵抗値からランク分けされたコード値、および予め測定されている各発熱体132による液体吐出量特性(一定温度で、所定のパルス印加における液体吐出量)をヘッド情報として記憶し駆動信号制御回路146に出力するメモリ149とが形成されている。
【0241】
また、接続用コンタクトパッドとして、素子基板131および天板132には、吐出ヒータ用ランクヒータ143とセンサ駆動回路147とを接続する端子144g,144h,148g,148h、外部から上記発熱体132を駆動するエネルギーを制御するために必要な信号用の入力端子145c〜145eと駆動信号制御回路146とを接続する端子144b〜144d,148b〜148d、駆動信号制御回路146の出力をAND回路139の一方の入力端子に入力させるための端子148a等が設けられている。
【0242】
以上の構成において、まず、発熱体132の抵抗値が吐出ヒータ用ランクヒータ143で検出され、その結果がメモリ149に記憶される。駆動信号制御回路146では、メモリ149に記憶された抵抗値データおよび液体吐出量特性に応じて発熱体132の駆動パルスの立ち上がりデータおよび立ち下がりデータを決定し、端子148a,144aを介してAND回路139に出力する。一方、シリアルで入力された画像データは、画像データ転送回路142のシフトレジスタに記憶され、ラッチ信号によりラッチ回路にラッチされて、駆動タイミング制御回路138を介してAND回路139に出力される。これにより、立ち上がりデータおよび立ち下がりデータに応じてヒートパルスのパルス幅が決定され、このパルス幅で発熱体132への通電が行われる。その結果、発熱体132にはほぼ一定のエネルギーが印加される。
【0243】
上述の説明では、吐出ヒータ用ランクヒータ143を抵抗センサとして説明したが、例えば、素子基板131の温度あるいは発熱体132の蓄熱の程度を検知するための温度センサとし、この温度センサでの検出結果に応じてプレヒートパルス幅を制御することもできる。
【0244】
この場合には、液体吐出装置の電源が投入された後、予め測定されている液体吐出量特性と、吐出ヒータ用ランクヒータ143で検出された温度データに応じて、駆動信号制御回路146は各発熱体132のプレヒート幅を決定する。メモリ149には、各発熱体132に対応するプレヒート幅を選択するための選択データが記憶されており、実際にプレヒートを行う際に、メモリ149に記憶されている選択データに従ってプレヒート信号が選択され、これに応じて発熱体132がプレヒートされる。このようにして、温度状態にかかわらず液体の吐出量が各吐出口で一定になるようにプレヒートパルスを設定して印加することができる。なお、プレヒート幅を決定する選択データの保存は、例えば液体吐出装置の起動時等に一度だけ行えばよい。
【0245】
図25に示した例では、1つの吐出ヒータ用ランクヒータ143を設けた例を説明したが、センサとして、抵抗センサおよび温度センサの2つのセンサを設け、それぞれの出力に応じてヒートパルスおよびプレヒートパルスの双方を制御することで、画像品位をより向上させることもできる。
【0246】
さらに、メモリ149に記憶されるヘッド情報としては、上述した発熱体の抵抗値データ等の他に、吐出する液体の種類(液体がインクの場合には、インクの色等)も含めることもできる。液体の種類によってはその物性が異なり、吐出特性が異なるからである。これらのヘッド情報のメモリ149への記憶は、この液体吐出ヘッドの組立後に不揮発的に行ってもよいし、この液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出装置の立ち上げ後に装置側から転送されることで行ってもよい。
【0247】
また、図25に示した例では、吐出ヒータ用ランクヒータ143を素子基板131に設けているが、吐出ヒータ用ランクヒータ143が温度センサである場合には、天板133に設けてもよい。メモリ149についても、素子基板131側のスペースが許せは、天板133ではなく素子基板131に設けてもよい。
【0248】
上述のように、良好な画像品位を得るために発熱体132の駆動を制御しても、共通液室内に気泡が発生し、これが液体のリフィルとともに液流路内に移動してくると、共通液室内には液体が存在するにもかかわらず、液体が吐出されないという不具合が発生する場合がある。
【0249】
そこで、これに対処するために、詳細は後述するが、各液流路内(特に発熱体32の近傍)での液体の有無を検出するセンサを設け、さらに、このセンサで液体がないことが検出されたらその結果を外部に出力させる処理回路を天板133に設けてもよい。そして、この処理回路からの出力に基づき、液体吐出装置側で、液体吐出ヘッド内の液体を吐出口から強制的に吸引するようにすれば、液流路内の気泡を除去することができる。上記の液体の有無を検出するセンサとしては、液体を介しての抵抗値の変化により検出するものや、液体が存在しない場合の発熱体の異常昇温を検出するものを用いることができる。
【0250】
次に、上記に説明した液体吐出ヘッドが搭載された液体吐出ヘッドカートリッジを、図26を参照して概略説明する。図26は、前述した液体吐出ヘッドが搭載された液体吐出ヘッドカートリッジを示す斜視図である。
【0251】
本実施形態の液体吐出ヘッドカートリッジ571は、前述した液体吐出ヘッド572と、液体吐出ヘッド572に供給されるインク等の液体を収容する液体容器573とを有している。液体容器573に収容された液体は、不図示の液体供給路を通って液体吐出ヘッド572の共通液室(図11等参照)に供給される。
【0252】
なお、この液体容器573は、液体の消費後に液体を再充填して使用してもよい。このためには、液体容器573に液体注入口を設けておくことが望ましい。また、液体吐出ヘッド572と液体容器573とは一体であってもよく、あるいは分離可能としてもよい。
【0253】
以上、説明した各実施形態の構成が適用される液体吐出ヘッドの構造は、図示された構造に限られるものではなく、熱エネルギーを利用する種々の液体吐出ヘッドに適用可能である。例えば、記録素子として、液体を吐出するための熱エネルギーを発する発熱素子、又は記録紙を発色或いはインク保持体からインクを転写或いは昇華させるための熱エネルギーを発生する発熱素子を備える記録ヘッドにも適用することができる。
【0254】
また、上述の説明では、強誘電体材料よりなる機能素子を用いたコンデンサ、FeRAM、圧電素子、可動部材をそれぞれ別々に設けた実施形態を説明したが、これら実施形態の構成を組み合わせて液体吐出ヘッドを構成するようにしてもよい。
【0255】
強誘電体材料よりなる機能素子は天板、素子基板のいずれに設けてもよいが、強誘電体材料は温度によりその誘電率に影響がでることを考慮すると、比較的温度の影響が小さい天板側に配置することが望ましい。
【0256】
次に、上記説明した液体吐出ヘッドが搭載された液体吐出装置を、図27を参照して説明する。図27は、前述の液体吐出ヘッドが搭載された液体吐出装置の概略構成を示す斜視図である。
【0257】
本実施形態の液体吐出装置581は、図26を参照して説明した液体吐出ヘッドカートリッジ571が、駆動モータ582の正逆回転に連動して駆動力伝達ギア583,584を介して回転するリードスクリュー585の螺旋溝586に対して係合されたキャリッジ587上に搭載されている。液体吐出ヘッドカートリッジ571は、駆動モータ582の動力によってキャリッジ587とともにガイド588に沿って矢印aおよびb方向に往復移動される。図示しない記録媒体供給装置によってプラテン589上を搬送される被記録媒体Pを押さえる紙押さえ板590は、キャリッジ587の全移動領域に渡って被記録媒体Pをプラテン589に対して押圧する。
【0258】
リードスクリュー585の一端の近傍には、フォトカプラ591,592が配設されている。これらはキャリッジ587のレバー587aのこの域での存在を確認して駆動モータ582の回転方向切り換え等を行うためのホームポジション検知手段である。図27において、符号593は、液体吐出ヘッドカートリッジ571の液体吐出ヘッドのうち、吐出口が設けられている前面を覆うキャップ部材594を支持する支持部材である。また、符号595は、液体吐出ヘッドから空吐出等されてキャップ部材594の内部に溜まったインクを吸引するインク吸引手段である。このインク吸引手段595により、キャップ内の開口部(不図示)を介して液体吐出ヘッドの吸引回復が行われる。
【0259】
符号596はクリーニングブレードであり、符号597はクリーニングブレード596を前後方向(上記キャリッジ587の移動方向に直交する方向)に移動可能にする移動部材であり、クリーニングブレード596および移動部材597は本体支持体598に支持されている。上記のクリーニングブレード596はこの形態に限らず、他の周知のクリーニングブレードであってもよい。符号599は吸引回復操作にあたって吸引を開始するためのレバーであり、キャリッジ587と係合するカム600の移動に伴って移動し、駆動モータ582からの駆動力がクラッチ切り換え等の公知の伝達手段で移動制御される。液体吐出装置581には、液体吐出ヘッドに設けられた発熱体(図11等参照)に液体を吐出させるための駆動信号を付与したり、前述した各機構の駆動制御を司ったりする記録信号供給手段としての記録制御部(不図示)が、装置本体内に設けられている。
【0260】
液体吐出装置581では、図示しない被記録媒体搬送装置によりプラテン589上を搬送される被記録媒体Pに対し、液体吐出ヘッドは被記録媒体Pの全幅にわたって往復移動しながら液体を吐出し、被記録媒体Pにその吐出された液体を付着させることで被記録媒体Pに記録を行う。
【0261】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ヒーター(エネルギー変換素子)により近い部分で電流ノイズ対策を行うことができるので、電流ノイズを十分に除去することができる。よって、ヘッド基板上に形成された回路または素子への電流ノイズの影響をより効果的に防止することができ、液体吐出制御をより安定、かつ、高精度に行うことができる。さらに加えて、大容量のコンデンサを限られたスペースに形成することができるので、大電流ノイズに対応することができるとともに、ヘッドの小型化を図ることができる。
【0262】
また、本発明によれば、強誘電体材料を用いたことにより、大容量で、高速性に優れた不揮発性メモリを形成することができるので、従来のヘッドに比べて、より高速に記録を行うことができる。また、各種センサをヘッド内に配置してその検出結果をリアルタイムにフィードバックしながら液体吐出用ヒーターの駆動条件を制御する処理についても高速に行うことができるので、上記高速記録に加えて、より安定した液体吐出制御を行うことができる。
【0263】
また、本発明によれば、強誘電体材料よりなる圧電素子によって、液流路での液体の状態が、液体の流れの影響やエネルギー発生素子が発する熱の影響が少ない状態で検出される。このように液体の状態を精度よく検出することができるので、液体を安定して吐出させることができ、ヘッドの駆動制御をより細かくを行うことができる。
【0264】
また、本発明は、可動部材が、強誘電体体材料からなる薄膜と、薄膜の両面に設けられた電極とを有し、両電極間に電圧が印加されると自由端が素子基板側あるいは素子基板に対して反対側へ変位するように構成されているので、可動部材を気泡の圧力による変位とは独立して能動的に変位させることができるため、可動部材の応答性が向上し、記録速度の高速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液体吐出ヘッド用基板に形成される、強誘電体材料よりなる機能素子の概略断面構造図である。
【図2】液体吐出ヘッドに用いられる素子基板の要部の断面図である。
【図3】素子基板の主要素子を縦断するように素子基板を切断した模式的断面図である。
【図4】液体吐出ヘッドの回路構成を説明するための図であり、(a)は素子基板の平面図、(b)は天板の平面図である。
【図5】本発明の一実施形態の液体吐出ヘッドの素子基板に形成される回路素子の構成を示す図で、同図(a)は素子基板を上面から見た場合の各回路素子のレイアウト図、同図(b)は電源層とグランド層がオーバーラップした部分の断面構造図である。
【図6】図5に示す素子基板の等価回路の概略を示す図である。
【図7】本発明の液体吐出ヘッドの熱作用部とコンデンサ部の層構成を示す概略断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態の液体吐出ヘッドの素子基板に形成される回路素子の構成を示す図である。
【図9】強誘電体メモリのセル構造を示す図である。
【図10】FeRAMが天板側に形成された液体吐出ヘッドの一構成例を示す図である。
【図11】本発明のさらに他の実施形態である液体吐出ヘッドの液流路方向に沿った断面図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る、圧力センサを有する可動部材を備えたノズルを最もよく表した断面図で、同図(a)は可動部材の変位前の状態を示す図、同図(b)は可動部材が気泡に伴って変位する状態を示す図である。
【図13】各液流路に配設された可動部材の圧力センサに対する電気配線を示すために素子基板に平行な方向に沿って切断した断面図である。
【図14】同図(a)〜(d)は素子基板上に、圧力センサ素子を有する可動部材を形成する方法を説明するための工程図である。
【図15】同図(a)〜(d)は素子基板上に、圧力センサ素子を有する可動部材を形成する方法を説明するための工程図である。
【図16】圧力センサ素子からの出力をモニターするための回路の一例を示す図である。
【図17】液流路内における立体構造部の配置の他の例を説明する斜視図である。
【図18】本発明の液体吐出ヘッドのさらに別の実施形態の基本的な構造を説明するための、液流路方向に沿った断面図である。
【図19】図18に示した液体吐出ヘッドの一部を破断して示す斜視図である。
【図20】図18に示した液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出ヘッドユニットの平面図である。
【図21】図18に示した液体吐出ヘッドにおける可動部材の製造工程を示す、液流路方向に沿った断面図である。
【図22】本発明の液体吐出ヘッドの可動部材の他の製造方法に用いられるECRプラズマCVD装置を示す概略図である。
【図23】本発明の液体吐出ヘッドによる吐出方法を説明するための、流路方向の断面図である。
【図24】図23に示した本発明の吐出原理を実施するために、発熱体や可動部材内に設けられた電極部等に入力する信号のタイミングチャートである。
【図25】センサ出力に応じて発熱体への印加エネルギーを制御する例の素子基板及び天板の回路構成を示す図である。
【図26】本発明の液体吐出ヘッドが搭載された液体吐出ヘッドカートリッジを示す斜視図である。
【図27】本発明の液体吐出ヘッドが搭載された液体吐出装置の概略構成を示す斜視図である。
【図28】従来の液体吐出ヘッドの一形態を示す断面図である。
【図29】従来のバブルジェット記録装置の概略構成図である。
【図30】従来の液体吐出ヘッドの他の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 素子基板
2 発熱体
2’ 発熱体列
3 天板
3a,3b 溝
3c 供給口
4 オリフィスプレート
5 吐出口
6 可動部材
6a 支点
6b 自由端
6c 強誘電体薄膜
6d 電極
6e 上部膜
7 液流路
7a 第1の液流路
7b 第2の液流路
8 共通液室
9 流路側壁
10 気泡発生領域
11 ドライバ
12 画像データ転送部
13 センサ
14,18 接続用コンタクトパッド
15 外部コンタクトパッド
16 発熱体制御部
17 センサ駆動部
20 液体吐出ヘッドユニット
21 液体吐出ヘッド
22 ベース基板
23 プリント配線基板
24 配線パターン
25 ボンディングワイヤー
30 電源層
31 GND層
32 強誘電材料膜
33 バリア層
34 オーバーラップ部(コンデンサ部)
34’ コンデンサ(オーバーラップ部)
35 FeRAM
36 駆動制御回路
37 センサ処理回路
50 気泡
71a 間隙形成部材
72a,72b SiN膜
76 TiW膜
131 素子基板
132 発熱体
133 天板
138 駆動タイミング制御ロジック回路
139 AND回路
141 パワートランジスタ
142 画像データ転送回路
146 駆動信号制御回路
147 センサ駆動回路
149 FeRAM(メモリ)
200,200’ 圧力センサ素子
200a 圧電素子膜
201 電極
202 リード配線
202a 共通配線
202b セグメント配線
206 電圧計
301 シリコン基板
302 熱酸化膜
303 層間膜
304 抵抗層
305 配線
306 保護膜
307 耐キャビテーション膜
308 熱作用部
350 強誘電体
351 上部電極
352 プレートライン(下部電極)
353 ピットライン
354 ワードライン(ゲート電極)
420 P-Mos
421 N-Mos
422 N型ウェル領域
423 P型ウェル領域
424 酸化膜分離領域
425,432 ソース領域
426,431 ドレイン領域
428 ゲート絶縁膜
430 N-Mosトランジスタ
433,435 ゲート配線
437 Al電極
436,438 層間絶縁膜
501 耐キャビテーション膜
502 配線層
503 中間層
504 PSG膜
505,509 保護層
506,508 電極層
507 強誘電体層
510 上部膜
571 液体吐出ヘッドカートリッジ
572 液体吐出ヘッド
573 液体容器
581 液体吐出装置
582 駆動モータ
583,584 駆動伝達ギア
585 リードスクリュー
586 螺旋溝
587 キャリッジ
587a,599 レバー
588 ガイド
589 プラテン
590 紙押さえ板
591,592 フォトカプラ
593 支持部材
594 キャップ部材
595 インク吸引手段
596 クリーニングブレード
597 移動部材
598 本体支持体
600 カム
601 下部配線層
602 ヒロック防止層
603 層間膜
604 発熱抵抗層
605 上部配線層
606 強誘電体層
P 被記録媒体

Claims (11)

  1. 液体に吐出エネルギーを与えることにより液体を吐出させる液体吐出ヘッドに用いられ、電気エネルギーを前記吐出エネルギーに変換するためのエネルギー変換素子が形成された半導体基板を有する液体吐出ヘッド用基板において、
    前記半導体基板に強誘電体材料よりなる機能素子が形成され、
    前記機能素子は、前記半導体基板上に積層された第1のバリア層、強誘電体材料膜、第2のバリア層を少なくとも有し、
    前記第1バリア層または前記第2のバリア層が、熱による作用によって液体に気泡を形成して液体を吐出させる形式の液体吐出ヘッドにおける熱作用部保護のための保護膜の密着性を向上させる密着層材料を含む膜で構成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
  2. 液体に吐出エネルギーを与えることにより液体を吐出させる液体吐出ヘッドに用いられ、電気エネルギーを前記吐出エネルギーに変換するためのエネルギー変換素子が形成された半導体基板を有する液体吐出ヘッド用基板において、
    前記半導体基板に強誘電体材料よりなる機能素子が形成され、
    前記機能素子が、前記半導体基板上に形成される電源ラインとグランドラインとの間を接続するように形成されたコンデンサであり、
    前記電源ラインを形成する電源層と前記グランドラインを形成するグランド層とが積層されており、これらの層が重なる部分において前記コンデンサが形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
  3. 液体に吐出エネルギーを与えることにより液体を吐出させる液体吐出ヘッドに用いられ、電気エネルギーを前記吐出エネルギーに変換するためのエネルギー変換素子が形成された半導体基板を有する液体吐出ヘッド用基板において、
    前記半導体基板に強誘電体材料よりなる機能素子が形成され、
    前記機能素子が、前記液体吐出ヘッド内の液体に作用する圧力を検出するように構成された圧電素子であることを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
  4. 液体に吐出エネルギーを与えることにより液体を吐出させる液体吐出ヘッドに用いられ、電気エネルギーを前記吐出エネルギーに変換するためのエネルギー変換素子が形成された半導体基板を有する液体吐出ヘッド用基板において、
    前記半導体基板に強誘電体材料よりなる機能素子が形成され、
    前記エネルギー発生素子に対面する位置に、前記基板との間に間隙をおいて、前記吐出口側を自由端として前記基板に支持固定された可動部材が配されており、前記可動部材が、強誘電体材料からなる薄膜と、該薄膜の両面に設けられた電極とを有し、該両電極間に電圧が印加されると自由端が前記素子基板側あるいは前記素子基板に対して反対の方向へ変位するように構成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
  5. 前記機能素子が、コンデンサである請求項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
  6. 前記コンデンサは、前記半導体基板上に形成される電源ラインとグランドラインとの間を接続するように形成されている請求項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
  7. 前記電源ラインが、前記エネルギー変換素子の電源ラインである請求項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
  8. 記電源ラインが、前記半導体基板上に形成されたエネルギー変換素子を駆動制御するロジック回路の電源ラインである請求項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
  9. 前記機能素子が、不揮発性メモリである請求項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
  10. 前記不揮発性メモリがFeRAMである請求項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
  11. 前記不揮発性メモリに、前記エネルギー変換素子の駆動条件を制御するためのヘッド情報が記憶される請求項10に記載の液体吐出ヘッド用基板。
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