JP2000343699A - 液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドを用いたヘッドカートリッジおよび液体吐出装置 - Google Patents

液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドを用いたヘッドカートリッジおよび液体吐出装置

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JP2000343699A
JP2000343699A JP15777799A JP15777799A JP2000343699A JP 2000343699 A JP2000343699 A JP 2000343699A JP 15777799 A JP15777799 A JP 15777799A JP 15777799 A JP15777799 A JP 15777799A JP 2000343699 A JP2000343699 A JP 2000343699A
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liquid
flow path
discharge
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liquid flow
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Masahiko Kubota
雅彦 久保田
Akihiro Yamanaka
昭弘 山中
Yoshiyuki Imanaka
良行 今仲
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Canon Inc
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    • B41J2/00Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed
    • B41J2/005Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed characterised by bringing liquid or particles selectively into contact with a printing material
    • B41J2/01Ink jet
    • B41J2/135Nozzles
    • B41J2/14Structure thereof only for on-demand ink jet heads
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    • B41J2/14032Structure of the pressure chamber
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    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
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  • Ink Jet (AREA)
  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 吐出口ごとにインクの性状を把握することに
より、高精細であって高品位な記録を高速に行うことが
できるようにする。 【解決手段】 発熱体2を有する素子基板1に参照電極
210を配置するとともに、素子基板1と接合すること
により吐出口5に連通する液流路7を形成することとな
る天板3に、イオン選択性電界効果トランジスタからな
るイオンセンサ200を設ける。イオンセンサ200に
より、液流路7内のインク中の染料イオンの会合状態を
検知し、適切な制御、例えば発熱体2への駆動パルスの
幅の制御を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱エネルギーや機
械的エネルギーなどのエネルギーを液体に作用させるこ
とにより、所望の液体を吐出する液体吐出ヘッド、この
液体吐出ヘッドを用いたヘッドカートリッジ及び液体吐
出装置に関する。
【0002】また本発明は、上述した液体吐出ヘッドや
ヘッドカートリッジを有し、紙、糸、繊維、布帛、皮
革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス
等の被記録媒体に対して記録を行う、プリンタ、複写
機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を
有するワードプロセッサ等の装置、さらには各種処理装
置と複合的に組み合わせた産業用記録装置に適用できる
発明である。
【0003】なお、本発明における「記録」とは、文字
や図形等の意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与す
ることだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を
付与することをも意味するものである。
【0004】
【従来の技術】熱等のエネルギーをインクに与えること
で、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態
変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって
吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着
させて画像形成を行うインクジェット記録方法が知られ
ている。この種のインクジェット記録方法を用いる記録
装置には、米国特許第4723129号明細書などに開
示されているように、一般的には、インクを吐出するた
めの吐出口と、この吐出口に連通するインク流路(液流
路)と、インク流路内に配されインクを吐出するための
エネルギーを発生するための手段としての電気熱変換体
とが配されている。
【0005】このような記録方法によれば、品位の高い
画像を高速、低騒音で記録することができるとともに、
この記録方法を行うヘッドでは、インクを吐出するため
の吐出口を高密度に配置することができるため、小型の
装置で高解像度の記録画像、さらにはカラー画像をも容
易に得ることができるという多くの優れた点を有してい
る。このため、このインクジェット記録方法は、近年、
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の多くのオフィス機
器に利用されており、さらに、捺染装置などの産業用シ
ステムにまで利用されるようになってきている。
【0006】例えば、特公昭62−48585号公報に
は、ノズル内に複数の発熱素子を設けることにより1つ
の吐出口から吐出される液滴の量を変化できるようにし
た多値出力のカラーインクジェットヘッドが開示されて
いる。ノズル内にn個(n≧2)の発熱素子を設けてそ
れぞれ個別に駆動ドライバに接続し、独立に発熱素子を
駆動できるように構成し、さらに、発熱量がそれぞれ異
なるように各発熱素子の素子サイズを別にする。このと
き、n個の発熱素子による印字ドットは、それぞれ異な
り、同時に駆動させる発熱素子の組み合わせにより、{
nn-1nn-2+…+n2n1+1}通りの印字ドッ
トを形成することができる。つまり、1ノズルで{n
n-1nn-2+…+n2n1+1}値の階調性を得る
ことができる。この素子構成を「多値ヒータ」と称す
る。
【0007】さらに、特開平5−155037号公報に
は、発熱素子およびインク流路は低密度で配列し、イン
タレース駆動により高密度印字を達成する方法が開示さ
れている。
【0008】ところで、インクを吐出するためのエネル
ギーを発生させるための電気熱変換体は、半導体デバイ
スの製造プロセスを用いて作製することができる。その
ため、従来のインクジェットヘッドは、シリコン基板か
らなる素子基板上に電気熱変換体を形成し、その上に、
インク流路を形成するための溝が予め形成されている天
板を接合した構成となっている。天板は、例えば、ポリ
サルフォン等の樹脂やガラスなどからなる。
【0009】また、素子基板がシリコン基板からなるこ
とを利用し、電気熱変換体を素子基板上に構成するだけ
でなく、電気熱変換体を駆動するためのドライバや、ヘ
ッドの温度に応じて電気熱変換体を制御する際に用いら
れる温度センサおよびその駆動制御部等を素子基板上に
構成したものもある。このようにドライバや温度センサ
およびその駆動制御部等を素子基板上に構成したヘッド
は実用に供されており、記録ヘッドの信頼性の向上およ
び装置の小型化に大きく寄与している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、インク
ジェット記録に関し、多方面の製品のそれぞれの分野に
応じた、より高品位な画像の出力の要求が高まってい
る。そこで本発明者らは、より一層高品位な画像の出力
を実現するために、従来以上に吐出口すなわち電気熱変
換体の配列を高密度化することや、電気熱変換体のより
高精度な制御を行うことを検討したところ、以下のよう
な課題を想起するに至った。
【0011】すなわち、上述したように電気熱変換体を
制御するための回路等を全て素子基板上に形成しようと
すると、素子基板が大きくなってしまい、結果的にヘッ
ド自体が大きくなり、また、吐出口の高密度配置の妨げ
になることがある。電気熱変換体が形成された素子基板
はシリコン半導体で構成されるのに対し、インク流路と
なるべき溝が形成された天板は例えばポリサルフォン等
の樹脂で構成されているので、これら両者間の熱膨張率
の差によって、吐出口密度を高めた場合に、電気熱変換
体とインク流路との間にずれが生じることがある。
【0012】さらに、記録に使用するインクの性状が経
時変化することがあるので、より高品位な記録を行うた
めには、インクの性状に応じて電気熱変換体への駆動パ
ルスの幅を変化させたり、インク流路中の性状が変化し
たインクを吐出口側から吸い出して新鮮なインクと置き
換えるいわゆる回復動作を行うことが望ましい。多数の
吐出口を配列した記録ヘッドの場合、例えば罫線を多く
含むような文書を印字することを考えると、それら多数
の吐出口のうち、小数の特定の吐出口のみが高頻度で使
用されることになる。このため、インク流路ごとすなわ
ち吐出口ごとにインクの性状が異なることが予想され、
電気熱変換体への駆動パルスの幅をインク流路ごとに変
えられるようにすることが好ましい。
【0013】本発明の目的は、高精細であって高品位な
記録を高速に行うことができる液体吐出ヘッドと、この
液体吐出ヘッドを利用したヘッドカートリッジおよび液
体吐出装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の液体吐出ヘッド
は、液体を吐出する吐出口と、前記吐出口に連通する液
流路と、前記液流路内に液体に吐出エネルギーを付与す
るエネルギー変換素子とを有する液体吐出ヘッドにおい
て、前記液流路に配置された濃度センサを有することを
特徴とする。
【0015】濃度センサとしては、具体的には、イオン
センサを好ましく使用でき、中でもイオン選択性電界効
果トランジスタを好ましく使用できる。また、エネルギ
ー変換素子としては、電気エネルギーを熱エネルギーに
変換することにより液体中に気泡を発生せしめ、その気
泡の作用力によって液体を吐出口から吐出される電気熱
変換体を好ましく使用できる。
【0016】本発明の液体吐出ヘッドの具体的な態様と
しては、液体を吐出する複数の吐出口と、互いに接合さ
れることでそれぞれ前記吐出口と連通する複数の液流路
を構成するための第1の基板及び第2の基板と、前記エ
ネルギーを前記液流路内の液体の吐出エネルギーに変換
するためのに前記各液流路内に配された複数のエネルギ
ー変換素子とを有する液体吐出ヘッドにおいて、前記第
1の基板上に前記エネルギー変換素子が形成されるとと
もに、前記エネルギー変換素子を駆動させるドライバを
含む前記回路を前記第1の基板上に有し、前記各液流路
ごとに配置された濃度センサを前記第2の基板上に有す
ることを特徴とする液体吐出ヘッドが挙げられる。
【0017】この液体吐出ヘッドにおいて、濃度センサ
としてイオン選択性電界効果トランジスタを使用する場
合には、イオン選択性電界効果トランジスタに対応する
参照電極を第1の基板上に好ましく形成できる。その場
合、エネルギー変換素子の表面に、金属からなりエネル
ギー変換素子をキャビテーションから保護する耐キャビ
テーション膜が形成されているのであれば、その耐キャ
ビテーション膜が参照電極として使用するようにしても
よい。このような耐キャビテーション膜として、例えば
タンタル膜が挙げられる。第1の基板及び第2の基板と
しては、シリコン基板を好ましく使用できる。
【0018】この液体吐出ヘッドでは、濃度センサから
の検出値に基づき、最適なヒートパルスを選択する駆動
信号制御回路を第2の基板上に形成するようにしてもよ
い。
【0019】さらにこの液体吐出ヘッドは、電気熱変換
体に面して液流路内に配置され、液体の流れの下流側に
自由端を有し、電気熱変換体の駆動による気泡の発生に
よる圧力に基づいて自由端を電気熱変換体から遠ざかる
方向に変位させて圧力を吐出口に向かって伝える可動部
材をさらに備えていてもよい。
【0020】本発明のヘッドカートリッジは、本発明の
液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに供給される液
体を保持する液体容器とを有する。
【0021】本発明の液体吐出装置は、本発明の液体吐
出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドから液体を吐出するた
めの駆動信号を供給する駆動信号供給手段とを有する、
あるいは、本発明の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘ
ッドから吐出された液体を受ける被記録媒体を搬送する
被記録媒体搬送手段とを有する。
【0022】なお、本発明の説明で用いる「上流」、
「下流」とは、液体の供給源から気泡発生領域(または
可動部材)を経て、吐出口へ向かう液体の流れ方向に関
して、またはこの構成上の方向に関しての表現として用
いられる。
【0023】
【発明の実施の形態】次に、本発明に適用可能な一実施
形態として、液体を吐出する複数の吐出口と、互いに接
合されることでそれぞれ吐出口と連通する複数の液流路
を構成するための第1の基板および第2の基板と、電気
エネルギーを液流路内の液体の吐出エネルギーに変換す
るために各液流路内に配された複数のエネルギー変換素
子と、エネルギー変換素子の駆動条件を制御するため
の、機能が異なる複数の素子あるいは電気回路とを有
し、上記素子あるいは電気回路がその機能に応じて第1
の基板と第2の基板とに振り分けられている液体吐出ヘ
ッドの説明を行う。ここでは、第1の基板すなわち素子
基板と、第2の基板すなわちインク流路用の溝などが形
成された天板とが、いずれも、シリコン半導体基板によ
って構成されているものとする。素子基板および天板の
双方をシリコン基板によって形成することにより、熱膨
張率の差に起因する素子基板と天板との間のずれの問題
が生じなくなる。
【0024】図1は、本発明の一実施形態である液体吐
出ヘッドの液流路方向に沿った断面図である。
【0025】図1に示すように、この液体吐出ヘッド
は、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを与え
る複数個(図1では1つのみ示す)の発熱体2が並列に
設けられた素子基板1と、この素子基板1上に接合され
た天板3と、素子基板1および天板3の前端面に接合さ
れたオリフィスプレート4と、素子基板1と天板3とで
構成される液流路7内に設置された可動部材6とを有す
る。
【0026】素子基板1は、シリコン等の基板上に絶縁
および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜または窒化シリ
コン膜を成膜し、その上に、発熱体2を構成する電気抵
抗層および配線をパターニングしたものである。この配
線から電気抵抗層に電圧を印加し、電気抵抗層に電流を
流すことで発熱体2が発熱する。すなわちこの発熱体2
は電気熱変換体である。
【0027】天板3は、各発熱体2に対応した複数の液
流路7および各液流路7に液体を供給するための共通液
室8を構成するためのもので、天井部分から各発熱体2
の間に延びる流路側壁9が一体的に設けられている。天
板3はシリコン系の材料で構成され、液流路7および共
通液室8のパターンをエッチングで形成したり、シリコ
ン基板上にCVD等の公知の成膜方法により窒化シリコ
ン、酸化シリコンなど、流路側壁9となる材料を堆積し
た後、液流路7の部分をエッチングして形成することが
できる。
【0028】さらにこの液体吐出ヘッドは、イオン選択
性FET(電界効果トランジスタ)からなるイオンセン
サ200を備えている。イオンセンサ200は、天板3
において、後述する可動部材6の自由端6bよりも下流
側の位置に、第1の液流路7a中の液体に接するように
設けられている。このイオンセンサ200を動作させる
ためには参照電極が必要であり、参照電極210は、素
子基板1の表面において第2の液流路7b中の液体と接
するように設けられている。実際には、参照電極210
としては、後述するように、素子基板1の表面に形成さ
れる耐キャビテーション膜が使用される。
【0029】この構成において、イオンセンサ200と
参照電極210との間には、可動部材6が介在するわけ
であるが、実際には可動部材6の側方に隙間が形成され
ているので(可動部材6が第2の液流路を第1の液流路
から完全に分離するわけではないので)、可動部材6が
図示実線で示す閉鎖位置(初期位置)にあったとして
も、イオンセンサ200の動作に必要なだけの液絡状態
が、第1の液流路7aと第2の液流路7bの間で確保さ
れる。また、第1の液流路7aと第2の液流路7bとで
イオン濃度が異なる場合も考えられるが、イオンセンサ
200が第1の液流路7a側に設けられていることによ
り、イオンセンサ200によって測定される濃度は第1
の液流路7a側での値である。
【0030】オリフィスプレート4には、各液流路7に
対応しそれぞれ液流路7を介して共通液室8に連通する
複数の吐出口5が形成されている。オリフィスプレート
4もシリコン系の材料からなるものであり、例えば、吐
出口5を形成したシリコン基板を10〜150μm程度
の厚さに削ることにより形成される。なお、オリフィス
プレート4は本発明には必ずしも必要な構成ではなく、
オリフィスプレート4を設ける代わりに、天板3に液流
路7を形成する際に天板3の先端面にオリフィスプレー
ト4の厚さ相当の壁を残し、この部分に吐出口5を形成
することで、吐出口付きの天板とすることもできる。
【0031】可動部材6は、液流路7を吐出口5に連通
した第1の液流路7aと、発熱体2を有する第2の液流
路7bとに分けるように、発熱体2に対面して配置され
た片持梁状の薄膜であり、窒化シリコンや酸化シリコン
などのシリコン系の材料で形成される。
【0032】この可動部材6は、液体の吐出動作によっ
て共通液室8から可動部材6を経て吐出口5側へ流れる
大きな流れの上流側に支点6aを持ち、この支点6aに
対して下流側に自由端6bを持つように、発熱体2に面
した位置に発熱体2を覆うような状態で発熱体2から所
定の距離を隔てて配されている。この発熱体2と可動部
材6との間が気泡発生領域10となる。
【0033】上記構成に基づき、発熱体2を発熱させる
と、可動部材6と発熱体2との間の気泡発生領域10の
液体に熱が作用し、これにより発熱体2上に膜沸騰現象
に基づく気泡が発生し、成長する。この気泡の成長に伴
う圧力は可動部材6に優先的に作用し、可動部材6は図
1に破線で示されるように、支点6aを中心に吐出口5
側に大きく開くように変位する。可動部材6の変位もし
くは変位した状態によって、気泡の発生に基づく圧力の
伝搬や気泡自身の成長が吐出口5側に導かれ、吐出口5
から液体が吐出する。
【0034】つまり、気泡発生領域10上に、液流路7
内の液体の流れの上流側(共通液室8側)に支点6aを
持ち下流側(吐出口5側)に自由端6bを持つ可動部材
6を設けることによって、気泡の圧力伝搬方向が下流側
へ導かれ、気泡の圧力が直接的に効率よく吐出に寄与す
ることになる。そして、気泡の成長方向自体も圧力伝搬
方向と同様に下流方向に導かれ、上流より下流で大きく
成長する。このように、気泡の成長方向自体を可動部材
によって制御し、気泡の圧力伝搬方向を制御すること
で、吐出効率や吐出力または吐出速度等の根本的な吐出
特性を向上させることができる。
【0035】一方、気泡が消泡工程に入ると、可動部材
6の弾性力との相乗効果で気泡は急速に消泡し、可動部
材6も最終的には図1に実線で示した初期位置に復帰す
る。このとき、気泡発生領域10での気泡の収縮体積を
補うため、また、吐出された液体の体積分を補うため
に、上流側すなわち共通液室8側から液体が流れ込み、
液流路7への液体の充填(リフィル)が行われるが、こ
の液体のリフィルは、可動部材6の復帰作用に伴って効
率よく合理的かつ安定して行われる。
【0036】また、本実施形態の液体吐出ヘッドは、発
熱体2を駆動したりその駆動を制御するための回路や素
子を有する。これら回路や素子は、その機能に応じて素
子基板1または天板3に分担して配置されている。ま
た、これら回路や素子は、素子基板1および天板3がシ
リコン材料で構成されていることから、半導体ウェハプ
ロセス技術を用いて容易かつ微細に形成することができ
る。
【0037】以下に、半導体ウェハプロセス技術を用い
て形成された素子基板1の構造について説明する。
【0038】図2は、図1に示す液体吐出ヘッドに用い
られる素子基板の断面図である。図2に示すように、本
実施形態の液体吐出ヘッドに用いられる素子基板1で
は、シリコン基板301の表面に、蓄熱層としての熱酸
化膜302および、蓄熱層を兼ねる層間膜303がこの
順番で積層されている。層間膜303としては、SiO
2膜またはSi34膜が用いられている。層間膜303
の表面に部分的に抵抗層304が形成され、抵抗層30
4の表面に部分的に配線305が形成されている。配線
305としては、Alまたは、Al−Si,Al−Cu
などのAl合金配線が用いられている。この配線30
5、抵抗層304および層間膜303の表面に、SiO
2膜またはSi34膜から成る保護膜306が形成され
ている。保護膜306の表面の、抵抗層304に対応す
る部分およびその周囲には、抵抗層304の発熱に伴う
化学的および物理的な衝撃から保護膜306を守るため
の耐キャビテーション膜307が形成されている。この
耐キャビテーション膜307は、上述のように、イオン
センサ200に対する参照電極としても機能するもので
ある。抵抗層304表面の、配線305が形成されてい
ない領域は、抵抗層304の熱が作用する部分となる熱
作用部308である。
【0039】この素子基板1上の膜は半導体の製造技術
によりシリコン基板301の表面に順に形成され、シリ
コン基板301に熱作用部308が備えられている。
【0040】図3は、図2に示す素子基板1の主要素子
を縦断するように素子基板1を切断した模式的断面図で
ある。
【0041】図3に示すように、P導電体であるシリコ
ン基板301の表層にはN型ウェル領域422およびP
型ウェル領域423が部分的に備えられている。そし
て、一般的なMOS(金属−酸化物−半導体)プロセス
を用いてイオンプラテーションなどの不純物導入および
拡散によって、N型ウェル領域422にP−MOSトラ
ンジスタ420が、P型ウェル領域423にN−MOS
トランジスタ421が備えられている。P−MOS42
0は、N型ウェル領域422の表層に部分的にN型ある
いはP型の不純物を導入して形成されたソース領域42
5およびドレイン領域426や、N型ウェル領域422
の、ソース領域425およびドレイン領域426を除く
部分の表面に厚さ数十nmのゲート絶縁膜428を介し
て堆積されたゲート配線435などから構成されてい
る。また、N−MOSトランジスタ421は、P型ウェ
ル領域423の表層に部分的にN型あるいはP型の不純
物を導入して形成されたソース領域425およびドレイ
ン領域426や、P型ウェル領域423の、ソース領域
425およびドレイン領域426を除く部分の表面に厚
さ数十nmのゲート絶縁膜428を介して堆積されたゲ
ート配線435などから構成されている。ゲート配線4
35は、CVD(化学的気相成長)法により堆積した厚
さ400nm〜500nmのポリシリコンからなるもの
である。これらのP−MOS420およびN−MOS4
21からCMOSロジックが構成されている。
【0042】P型ウェル領域423の、N−MOS42
1と異なる部分には、電気熱変換素子駆動用のN−MO
Sトランジスタ430が備えられている。N−MOSト
ランジスタ430も、不純物導入および拡散などの工程
によりP型ウェル領域423の表層に部分的に備えられ
たソース領域432およびドレイン領域431や、P型
ウェル領域423の、ソース領域432およびドレイン
領域431を除く部分の表面にゲート絶縁膜428を介
して堆積されたゲート配線433などから構成されてい
る。
【0043】本実施形態では、電気熱変換素子駆動用の
トランジスタとしてN−MOSトランジスタ430を用
いたが、複数の電気熱変換素子を個別に駆動できる能力
を持ち、かつ、上述したような微細な構造を得ることが
できるトランジスタであれば、このトランジスタに限ら
れない。
【0044】P−MOS420とN−MOS421との
間や、N−MOS421とN−MOSトランジスタ43
0との間などの各素子間には、500nm〜1μmの厚
さのフィールド酸化により酸化膜分離領域424が形成
されており、その酸化膜分離領域424によって各素子
が分離されている。酸化膜分離領域424の、熱作用部
308に対応する部分は、シリコン基板301の表面側
から見て一層目の蓄熱層434としての役割を果たす。
【0045】P−MOS420、N−MOS421およ
びN−MOSトランジスタ430の各素子の表面には、
厚さ約700nmのPSG(リンケイ酸ガラス)膜また
はBPSG(ホウリンケイ酸ガラス)膜などから成る層
間絶縁膜436がCVD法により形成されている。熱処
理により層間絶縁膜436を平坦化した後に、層間絶縁
膜436およびゲート絶縁膜428を貫通するコンタク
トホールを介して第1の配線層となるAl電極437に
より配線が行われている。層間絶縁膜436およびAl
電極437の表面には、厚さ1μm〜1.5μmのSi
2膜から成る層間絶縁膜438がプラズマCVD法に
より形成されている。層間絶縁膜438の表面の、熱作
用部308およびN−MOSトランジスタ430に対応
する部分には、厚さ約100nmのTaN0.8,hex膜か
らなる抵抗層304がDCスパッタ法により形成されて
いる。抵抗層304は、層間絶縁膜438に形成された
スルーホールを介してドレイン領域431の近傍のAl
電極437と電気的に接続されている。抵抗層304の
表面には、各電気熱変換素子への配線となる第2の配線
層としての、Alの配線305が形成されている。
【0046】配線305、抵抗層304および層間絶縁
膜438の表面の保護膜306は、プラズマCVD法に
より形成された厚さ1μmのSi34膜からなるもので
ある。保護膜306の表面に形成された耐キャビテーシ
ョン膜307は、厚さ約250nmのTaなどの膜から
なるものである。
【0047】次に、素子基板1および天板3への回路や
素子の振り分け構成について説明する。
【0048】図4は、図1に示した液体吐出ヘッドの回
路構成を説明するための図であり、同図(a)は素子基
板の平面図、同図(b)は天板の平面図である。なお、
図4(a)および(b)は、互いの対向面を表わしてい
る。
【0049】図4(a)に示すように、素子基板1に
は、並列に配列された複数の発熱体2と、画像データに
応じてこれら発熱体2を駆動するドライバ11と、入力
された画像データをドライバ11に出力する画像データ
転送部12とが設けられている。
【0050】画像データ転送部12は、シリアルに入力
される画像データを各ドライバ11にパラレルに出力す
るシフトレジスタ、およびシフトレジスタから出力され
るデータを一時記憶するラッチ回路で構成される。な
お、画像データ転送部12は、各発熱体2に個別に対応
して画像データを出力するものでもよいし、発熱体2の
並びを複数のブロックに分け、ブロック単位に対応して
画像データを出力するものでもよい。特に、1つのヘッ
ドについて複数のシフトレジスタを備え、記録装置から
のデータの転送を複数のシフトレジスタに振り分けて入
力するようにすることで、印字速度の高速化に容易に対
応することもできる。
【0051】一方、図4(b)に示すように、天板3に
は、前述したように液流路および共通液室を構成する溝
3a,3bが形成されている。後述するように、液流路
に対応する各溝3aには、イオンセンサ200(図4
(b)では不図示)がそれぞれ設けられている。さら
に、天板3には、これらイオンセンサからの出力結果に
基づいて発熱体2の駆動条件を制御する発熱体制御部1
6が設けられている。なお、天板3には、外部から共通
液室に液体を供給するために、共通液室に連通した供給
口3cが開口している。
【0052】さらに、素子基板1および天板3の接合面
の、互いの対向する部位にはそれぞれ、素子基板1に形
成された回路等と天板3に形成された回路等とを電気的
に接続するための接続用コンタクトパッド14,18が
設けられている。また、素子基板1には、外部からの電
気信号の入力端子となる外部コンタクトパッド15が設
けられている。素子基板1の大きさは天板3の大きさよ
りも大きく、外部コンタクトパッド15は、素子基板1
と天板3とを接合したときに天板3から露出する位置に
設けられている。
【0053】ここで、素子基板1および天板3への回路
等の形成手順の一例について説明する。
【0054】素子基板1については、まず、シリコン基
板上に、上記ドライバ11および画像データ転送部12
を構成する回路を半導体ウェハプロセス技術を用いて形
成する。次いで、前述したようにして発熱体2を形成
し、耐キャビテーション膜を形成し、最後に、接続用コ
ンタクトパッド14および外部コンタクトパッド15を
形成する。
【0055】天板3については、まず、シリコン基板上
に、イオンセンサ(とその駆動回路)および発熱体制御
部16を構成する回路を半導体ウェハプロセス技術を用
いて形成する。次いで、上述したように、成膜技術およ
びエッチングによって、液流路や共通液室を構成する溝
3a,3bおよび供給口3cを形成し、最後に、接続用
コンタクトパッド18を形成する。
【0056】上記のように構成された素子基板1と天板
3とを位置合わせして接合すると、各液流路に対応して
発熱体2が配置されるとともに、それぞれの接続用パッ
ド14,18を介して素子基板1および天板3に形成さ
れた回路等が電気的に接続される。この電気的接続は例
えば、接続用パッド14,18に金バンプ等を載せて行
う方法があるが、それ以外の方法でもよい。このよう
に、素子基板1と天板3との電気的接続を接続用コンタ
クトパッド14,18によって行うことで、素子基板1
と天板3との接合と同時に、上述した回路同士の電気的
接続を行うことができる。素子基板1と天板3との接合
後に、液流路7の先端にオリフィスプレート4を接合
し、これにより液体吐出ヘッドが完成する。
【0057】なお、図1に示したように本実施形態の液
体吐出ヘッドは可動部材6を有しているが、この可動部
材6についても、上述のようにして素子基板に回路等を
形成した後、フォトリソグラフィプロセスを用いて素子
基板1上に形成される。可動部材6の形成工程について
は後述する。
【0058】このようにして得られた液体吐出ヘッドを
ヘッドカートリッジや液体吐出装置に搭載する場合に
は、図5に示すように、プリント配線基板23が搭載さ
れたベース基板22上に固定し、液体吐出ヘッドユニッ
ト20とされる。図5において、プリント配線基板23
には、液体吐出装置のヘッド制御部と電気的に接続され
る複数の配線パターン24が設けられ、これら配線パタ
ーン24は、ボンディングワイヤー25を介して外部コ
ンタクトパッド15と電気的に接続される。外部コンタ
クトパッド15は素子基板1のみに設けられているの
で、液体吐出ヘッド21と外部との電気的接続は、従来
の液体吐出ヘッドと同様にして行うことができる。ここ
では、外部コンタクトパッド15を素子基板1に設けた
例について説明したが、素子基板1ではなく天板3のみ
に設けてもよい。
【0059】以上説明したように、発熱体2の駆動や制
御のための各種回路等を素子基板1と天板3とに両者の
電気的接合を考慮した上で振り分けることで、これらの
回路等が1つの基板に集中しなくなるので、液体吐出ヘ
ッドの小型化が可能になる。また、素子基板1に設けら
れた回路等と天板3に設けられた回路等との電気的接続
を接続用コンタクトパッド14,18によって行うこと
で、ヘッド外部への電気的接続部の数が減り、信頼性の
向上、部品点数の削減、ヘッドのより一層の小型化を実
現することができる。
【0060】また、上述した回路等を素子基板1と天板
3とに分散させることで、素子基板1の歩留まりを向上
させることができ、その結果、液体吐出ヘッドの製造コ
ストを下げることができる。さらに、素子基板1および
天板3を、シリコンという同一材料をベースとした材料
で構成しているため、素子基板1と天板3との熱膨張係
数が等しくなる。その結果、発熱体2の駆動により素子
基板1および天板3が熱膨張しても両者にずれは生じな
くなり、発熱体2と液流路7との位置精度が良好に維持
される。
【0061】本実施形態では上述の各回路等をその機能
に応じて振り分けているが、この振り分けの基準となる
考え方について以下に述べる。
【0062】各発熱体2に個別またはブロック単位に電
気配線接続で対応する回路は、素子基板1に形成する。
図4に示した例では、ドライバ11および画像データ転
送部12がこれに相当する。各発熱体2には駆動信号が
パラレルに与えられるので、その信号分だけ配線の引き
回しが必要となる。従って、このような回路を天板3に
形成すると、素子基板1と天板3との接続数が多くなり
接続不良が発生する可能性が高くなるが、素子基板1に
形成することで、発熱体2と上記回路との接続不良が防
止される。
【0063】制御回路などアナログ的な部分は、熱の影
響を受け易いことから、発熱体2が設けられていない基
板すなわち天板3に設ける。図4に示した例では、発熱
体制御部16がこれに相当する。
【0064】その他、各発熱体2に個別にもブロック単
位にも電気配線接続で対応していない回路、必ずしも素
子基板1に設けなくてもよい回路等は、素子基板1およ
び天板3のいずれか一方に集中しないように必要に応じ
て素子基板1または天板3に形成する。
【0065】上記の考え方に基づいて各回路等を素子基
板1と天板3とに設けることで、素子基板1と天板3と
の電気的接続数をできるだけ少なくしつつも、各回路を
バランスよく振り分けることができる。
【0066】次に、本発明の液体吐出ヘッドにおけるイ
オンセンサ200について、図6を用いてさらに詳しく
説明する。なお図6では、説明を簡単にするため、可動
部材の記載を省略している。
【0067】シリコン基板からなる素子基板1の表面に
は発熱体2および参照電極210が形成されている。こ
こではイオンセンサ200の回路構成を明示するために
発熱体2と参照電極210とを分離して描いているが、
実際には、Taからなり発熱体2の表面に形成される耐
キャビテーション膜307(図2参照)が、参照電極2
10として用いられる。
【0068】一方、シリコン基板からなる天板3にはP
型ウェル領域201が形成され、P型ウェル領域201
の表層にN型不純物を導入したソース領域202および
ドレイン領域203が形成されている。P型ウェル領域
201の表面(チャネル領域)とソース領域202およ
びドレイン領域203とを覆うようにゲート絶縁膜20
4が設けられ、さらに、ゲート絶縁膜204の表面に、
窒化シリコン(SiN)からなるイオン感応膜205が
形成されて、イオン選択性FETであるイオンセンサ2
00が構成されている。
【0069】イオン感応膜205がインクと接すること
により、イオン感応膜とインクとの間でインク中のイオ
ン種とその濃度に応じた界面電位が発生する。イオンセ
ンサ200のソース−ドレイン間に所定のバイアス電圧
を印加しておくことにより、界面電位に応じたドレイン
電流が流れる。測定時には、参照電極210とソースと
の間に適当なバイアスを印加しておき、界面電位とこの
バイアスとの和に応じたドレイン電流を観測する。ある
いは、イオンセンサ210をソースフォロア回路として
構成し、抵抗を介して電位として出力を得るようにして
もよい。
【0070】ところで、この種の液体吐出ヘッドで使用
される吐出液体(インク)は、一般に、溶媒としての水
に、染料や顔料を溶解または分散させたものである。具
体的には、カルボキシル基や水酸基を有する染料イオン
や、これらの基を有する分散剤によって親水化された顔
料や、これらの基を付着させた顔料粒子を水に溶解また
は分散させたものである。このような染料あるいは顔料
は、水溶液系であるインク中で、図7(a),(b)に
示すように、水素結合などの比較的弱い結合により、会
合状態を形成する。このような会合状態が数十/数百の
分子間で起こると、仮想的に高分子の色材分子となり、
インクの動的粘度を低下させ、その結果、吐出特性の劣
化をもたらすことになる。
【0071】上述した会合状態が形成されると、見かけ
上、イオンとしてのカルボキシル基や水酸基の活量が低
下することになるとともに、イオン自体の実効的な分子
量が大きくなるため、イオンセンサ20での検出電位に
変化を生じさせることになる。本実施形態の液体吐出ヘ
ッドでは、インク中での染料イオン等の会合状態をイオ
ンセンサ200によって検知し、必要に応じてヘッドの
回復動作等を行って、ノズル中のインクを常に一定の解
離状態にする。また、インクでの会合状態は、ノズルの
使用頻度によってノズルごとに異なることがあるので、
この液体吐出ヘッドでは、ノズルごとにイオンセンサを
配することによってノズルごとに会合状態を検知し、そ
の検知結果に応じて、ノズルごとの発熱体2への駆動パ
ルスの幅を変化させる。
【0072】図8(a)は、イオンセンサでの検知結果
を出力するための回路の一例を示す図であり、図8
(b)は図8(a)の回路をロジック回路として表わし
たものである。ここでは、イオン濃度に応じて発振周波
数が変化する発振回路を説明する。
【0073】MOSトランジスタ220,221を直列
に接続してインバータ回路が構成され、このようなイン
バータ回路222,223を2段、リング状に接続して
発振回路を構成し、さらにインバータ回路223の出力
をバッファとしての1段のインバータ回路224を介し
て取り出すことにより、発振出力としている。インバー
タ回路222の出力(すなわちインバータ回路223の
入力)と接地点との間にイオンセンサ200を挿入して
いる。この回路によれば、イオンセンサ200での検出
電位に応じて発振周波数が変化する。したがって、この
発振周波数を検出することにより、例えば、回復動作を
行わせたり、あるいは、ノズルごとの駆動パルス幅を変
化させたりすることができる。
【0074】この液体吐出ヘッドにおいて、イオンセン
サの位置は、どの位置でインクの会合状態を検知したい
かに応じて、適宜に選択することができる。一般的に
は、吐出口の上流側直前でのインクの状態を知りたいこ
とが多いので、吐出口の直前の位置に設けられる。原理
的には、素子基板1にイオンセンサを設けることも可能
であるが、イオンセンサの出力の変化はせいぜい数mV
から数十mVの程度であるので、大電流パルスで駆動さ
れる発熱部(電気熱変換体)2を有する素子基板1にイ
オンセンサを設けることは必ずしも好ましくない。した
がって、イオンセンサは、天板3あるいは可動部材6に
設けることが好ましい。可動部材6もシリコン系の材料
によって構成されるので、半導体デバイスプロセスを利
用することにより、可動部材6にイオンセンサを設ける
ことは困難ではない。また、天板3あるいは可動部材6
にイオンセンサを設けることにより、素子基板1の表面
の耐キャビテーション膜を参照電極として利用できるこ
ととなり、別途に参照電極を設ける必要がなくなる。
【0075】イオンセンサでの検出電圧値は、ネルンス
ト(Nernst)の式によって支配されるため、温度の関数で
もある。そこで、温度の影響をなくすため、例えば、素
子基板1あるいは天板3に温度センサを設け、温度の測
定値に応じてイオン濃度の測定値を補正するようにして
もよい。このように温度センサを設けた場合には、この
温度センサの出力は、例えば、素子基板1を定温に加温
するために用いたり、温度に応じて発熱体2の駆動パル
ス幅を変化させたりするためにも、使用することができ
る。
【0076】また、流体力学の面から導かれたストーク
ス(Stokes)の法則によれば、イオンのモル伝導度λは、
【0077】
【数1】 (ここで、Z:イオンの電荷数、F:ファラデー定数、
N:単位面積当たりの分子数、η:粘性率、r:イオン
半径)で与えられ、また、イオンの拡散係数Dは、
【0078】
【数2】 (ここで、R:気体定数、T:絶対温度)で与えられ
る。この流体力学のストークスの法則がインク中のイオ
ンの運動に当てはめることができるとする。その際、イ
ンクカートリッジやインクタンクに注入する前に、イン
クのモル伝導度λや拡散定数Dを測定しておいて、液体
吐出ヘッド内に予め設けられているメモリに認識させて
おく。
【0079】インク中の色材成分(染料もしくは顔料)
にのみ着目してみると、イオン半径r、粘性η、電荷数
Zが、可変するパラメータになる。
【0080】さらに、着目したイオンの双極子モーメン
トμは、
【0081】
【数3】 で表わされ、インクの比誘電率εは、
【0082】
【数4】 (ここで、g:隣接分子の相対的な配向で決まる量、
k:ボルツマン定数)で表わされる。
【0083】本実施形態でのイオンセンサを用いて、検
出電位の変化が、(イオンの電荷数Z/イオン半径r)
の比に比例すると考えると、(1)式から、粘性率ηの変
化を相対的に見積もることができる、この粘性率の変化
に応じて吐出特性を一定にするためのパルス制御が、大
変有効な手段になると考えられる。
【0084】次に、ノズルごとのイオンの会合状態の測
定結果に応じて、回復動作を行う、あるいはノズルごと
の発熱体駆動パルスの幅を変化させるための液体吐出ヘ
ッドの具体的な構成について、図9(a),(b)を用
いて説明する。図9(a)は素子基板の平面図であり、
図9(b)は天板の平面図である。図2と同様、図9
(a)と図9(b)とで互いの対向面を図示しており、
図9(b)における点線部は、素子基板と接合した時の
液室及び液流路の位置を示している。
【0085】なお、ここでは、素子基板401に流路壁
401aが設けられた構造のヘッドを例として描いてい
るが、素子基板及び天板の構造に関しては、上述したい
ずれの形態にも適用できるものである。
【0086】図9(a)において、素子基板401に
は、前述したように液流路に対応して並列に配列された
複数の発熱体402と、画像データに応じてこれら発熱
体402を駆動するドライバ411と、入力された画像
データをドライバ411に出力する画像データ転送部4
12が設けられており、ノズルを形成するための流路壁
401aや、共通液室を形成するための液室枠401b
が設けられている。また、素子基板401には、上述し
たように耐キャビテーション膜が設けられており、この
耐キャビテーション膜は、イオンセンサに対する参照電
極としても機能する。
【0087】一方、図9(b)において、天板403に
は、各液流路に対応してそれぞれ設けられたイオンセン
サ413a,413b,…と、各イオンセンサ413
a,413b,…にバイアス電圧を印加して各イオンセ
ンサを駆動するセンサ駆動部417と、イオンセンサの
出力に基づいて発熱体(発熱抵抗素子)の駆動を制限ま
たは停止する制限回路459と、センサ駆動部417及
び制限回路459の信号に基づいて発熱体402の駆動
条件を制御する発熱体制御部416とが設けられるとと
もに、そして、外部から共通液室に液体を供給するため
に、共通液室に連通した供給口403aが開口してい
る。
【0088】さらに、素子基板401および天板403
の接合面の、互いの対向する部位にはそれぞれ、素子基
板401に形成された回路等と天板403に形成された
回路等とを電気的に接続するための接続用コンタクトパ
ッド414,418が設けられている。また、素子基板
401には、外部からの電気信号の入力端子となる外部
コンタクトパッド415が設けられている。素子基板4
01の大きさは天板403の大きさよりも大きく、外部
コンタクトパッド415は、素子基板401と天板40
3とを接合したときに天板403から露出する位置に設
けられている。
【0089】これらは、図4において説明したのと同様
の方法によって回路が形成されている。そして、上記の
ように構成された素子基板401と天板403とを位置
合わせして接合すると、各液流路に対応して発熱体40
2が配置されるとともに、それぞれの接続用コンタクト
パッド414,418を介して素子基板401および天
板403に形成された回路等が電気的に接続される。
【0090】第1の基板(素子基板401)と第2の基
板(天板403)との間には、数十μmというスペース
にインクが満たされるようになっている。そして、天板
403に設けられたイオンセンサ413によって、各ノ
ズルごとに、インクの会合状態が検知される。このと
き、素子基板401と天板403との間にインクが存在
しない場合には、例えばMOS電界効果トランジスタで
のゲートオープンに相当する異常な値が、イオンセンサ
413a,413b,…から出力される。また、インク
の会合状態が適正でないときも、それに応じた値がイオ
ンセンサから出力される。このイオンセンサによる検出
結果に応じて、例えばノズル内にインクがないと判断さ
れたりインク中のイオンの会合状態が著しく正常状態か
ら逸脱していると判断される場合には、前述の制限回路
459により、発熱体402への駆動を制限あるいは停
止したり、本体へ異常を知らせる信号を出力したりする
ことができる。これにより、ヘッドの物理的な損傷を防
止し、常に安定した吐出性能を発揮することのできるヘ
ッドを提供することができる。さらに、ノズル中がイン
クで満たされている場合であっても、インク中のイオン
の会合状態に応じた検出値がノズルごとに得られるの
で、それらの検出値に応じてノズルごとに発熱体への駆
動パルスの幅を変化させることができる。
【0091】本発明の場合には、上述のイオンセンサ、
及び制限回路を半導体ウェハプロセスにより製造するこ
とができるので、最適な位置に素子を配置することがで
きるとともに、ヘッド自体のコストアップをすることな
くヘッドの損傷防止機能を付加することができる。
【0092】またここでは、ノズルごとにイオンセンサ
を設ける構成としているが、発熱体402に対して各イ
オンセンサ413a,413b,413c…は電気配線
接続で対応しているわけではないので、これらイオンセ
ンサを天板403に設けていても配線が複雑になる等の
問題はない。
【0093】次に、フォトリソグラフィプロセスを利用
した、素子基板への可動部材の製造方法について説明す
る。
【0094】図10は、図1に基づいて説明した液体吐
出ヘッドへの可動部材6の製造方法の一例を説明するた
めの図であり、図10では、図1に示した液流路7の流
路方向に沿った断面が示されている。図10に基づいて
説明する製造方法では、素子基板1上に可動部材6を形
成してなるものと、天板に流路側壁を形成してなるもの
とを接合することで、図1に示した構成の液体吐出ヘッ
ドを製造する。したがって、この製造方法では、可動部
材6が作り込まれた素子基板1に天板を接合する前に、
天板に流路側壁が作り込まれる。
【0095】まず、図10(a)では、素子基板1の発
熱体2側の面全体に、発熱体2との電気的な接続を行う
ための接続用パッド部分を保護するための第1の保護層
としてのTiW膜76をスパッタリング法によって厚さ
約500nm形成する。
【0096】次に、図10(b)では、TiW膜76の
表面に、間隙形成部材71aを形成するためのAl膜を
スパッタリング法によって厚さ約4μm形成する。間隙
形成部材71aは、後述する図10(d)の工程におい
て、SiN膜72aがエッチングされる領域までに延在
されている。
【0097】形成されたAl膜を、周知のフォトリソグ
ラフィプロセスを用いてパターニングすることで、その
Al膜の、可動部材6の支持固定部に対応する部分のみ
を除去し、TiW膜76の表面に間隙形成部材71aを
形成する。従って、TiW膜76表面の、可動部材6の
支持固定部に対応する部分が露出することになる。この
間隙形成部材71aは、素子基板1と可動部材6との間
の間隙を形成するための、Al膜からなるものである。
間隙形成部材71aは、図1に示した発熱体2と可動部
材6との間の気泡発生領域10に対応する位置を含む、
TiW膜76の表面の、可動部材6の支持固定部に対応
する部分を除く部分全てに形成されている。従って、こ
の製造方法では、TiW膜76の表面の、流路側壁に対
応する部分にまで間隙形成部材71aが形成されてい
る。
【0098】この間隙形成部材71aは、後述するよう
にドライエッチングにより可動部材6を形成する際のエ
ッチングストップ層として機能する。これは、TiW膜
76や、素子基板1における耐キャビテーション膜とし
てのTa膜、および抵抗体上の保護層としてのSiN膜
が、液流路7を形成するために使用するエッチングガス
によりエッチングされてしまうからであり、それらの層
や膜のエッチングを防止するために、このような間隙形
成部材71aを素子基板1上に形成する。これにより、
可動部材6を形成するためにSiN膜のドライエッチン
グを行う際にTiW膜76の表面が露出することがな
く、そのドライエッチングによるTiW膜76および、
素子基板1内の機能素子の損傷が間隙形成部材71aに
よって防止される。
【0099】次に、図10(c)では、間隙形成部材7
1aの表面全体および、TiW膜76の、露出した面全
体に、プラズマCVD法を用いて、可動部材6を形成す
るための材料膜である厚さ約4.5μmのSiN膜72
aを、間隙形成部材71aを被覆するように形成する。
ここで、プラズマCVD装置を用いてSiN膜72aを
形成する際には、図11を参照して次に説明するよう
に、素子基板1を構成するシリコン基板などを介して、
素子基板1に備えられたTaからなる耐キャビテーショ
ン膜を接地する。これにより、プラズマCVD装置の反
応室内でのプラズマ放電により分解されたイオン種およ
びラジカルの電荷に対して素子基板1内の発熱体2やラ
ッチ回路などの機能素子を保護することができる。
【0100】図11に示すように、SiN膜72aを形
成するためのプラズマCVD装置の反応室83a内に
は、所定の距離をおいて互いに対向するRF電極82a
およびステージ85aが備えられている。RF電極82
aには、反応室83aの外部のRF電源81aによって
電圧が印加される。一方、ステージ85aのRF電極8
2a側の面上には素子基板1が取り付けられており、素
子基板1の発熱体2側の面がRF電極82aと対向して
いる。ここで、素子基板1が有する、発熱体2の面上に
形成されたTaからなる耐キャビテーション膜は、素子
基板1のシリコン基板と電気的に接続されており、間隙
形成部材71aは、素子基板1のシリコン基板、および
ステージ85aを介して接地されている。
【0101】このように構成されたプラズマCVD装置
においては、前記耐キャビテーション膜が接地された状
態で供給管84aを通して反応室83a内にガスを供給
し、素子基板1とRF電極82aとの間にプラズマ46
を発生させる。反応室83a内でのプラズマ放電により
分解されたイオン種やラジカルが素子基板1上に堆積す
ることで、SiN膜72aが素子基板1上に形成され
る。その際、イオン種やラジカルにより素子基板1上に
電荷が発生するが、上述したように耐キャビテーション
膜が接地されていることにより、素子基板1内の発熱体
2やラッチ回路などの機能素子がイオン種やラジカルの
電荷によって損傷することが防止される。
【0102】次に、図10(d)では、SiN膜72a
の表面に、スパッタリング法によりAl膜を厚さ約61
0nm形成した後、形成されたAl膜を、周知のフォト
リソグラフィプロセスを用いてパターニングし、SiN
膜72a表面の、可動部材6に対応する部分に第2の保
護層としてのAl膜(不図示)を残す。その第2の保護
層としてのAl膜は、可動部材6を形成するためにSi
N膜72aのドライエッチングを行う際の保護層(エッ
チングストップ層)すなわちマスクとなる。
【0103】そして、誘電結合プラズマを使ったエッチ
ング装置を用い、前記第2の保護層をマスクにしてSi
N膜72aをパターニングすることで、そのSiN膜7
2aの残った部分で構成される可動部材6を形成する。
そのエッチング装置ではCF 4とO2の混合ガスを用いて
おり、SiN膜72aをパターニングする工程では、図
1に示したように可動部材6の支持固定部が素子基板1
に直接固定されるようにSiN膜72aの不要な部分を
除去する。可動部材6の支持固定部と素子基板1との密
着部の構成材料には、パッド保護層の構成材料であるT
iW、および素子基板1の耐キャビテーション膜の構成
材料であるTaが含まれる。
【0104】ここで、ドライエッチング装置を用いてS
iN膜72aをエッチングする際には、図12を参照し
て次に説明するように素子基板1などを介して間隙形成
部材71aを接地する。これにより、ドライエッチング
の際にCF4ガスの分解により生じるイオン種およびラ
ジカルの電荷が間隙形成部材71aに留まることを防止
して、素子基板1の発熱体2やラッチ回路などの機能素
子を保護することができる。また、このエッチングの工
程において、SiN膜72aの不要な部分を除去するこ
とで露出する部分、すなわちエッチングされる領域に
は、上述したように間隙形成部材71aが形成されてい
るため、TiW膜76の表面が露出することがなく、間
隙形成部材71aによって素子基板1が確実に保護され
る。
【0105】図12に示すように、SiN膜72aをエ
ッチングするためのドライエッチング装置の反応室83
b内には、所定の距離をおいて互いに対向するRF電極
82bおよびステージ85bが備えられている。RF電
極82bには、反応室83bの外部のRF電源81bに
よって電圧が印加される。一方、ステージ85bのRF
電極82b側の面上には素子基板1が取り付けられてお
り、素子基板1の発熱体2側の面がRF電極82bと対
向している。ここで、Al膜からなる間隙形成部材71
aは、素子基板1に備えれたTaからなる耐キャビテー
ション膜と電気的に接続されており、かつ、その耐キャ
ビテーション膜は、前述したように素子基板1のシリコ
ン基板と電気的に接続されており、間隙形成部材71a
は、素子基板1の耐キャビテーション膜やシリコン基
板、およびステージ85bを介して接地されている。
【0106】このように構成されたドライエッチング装
置において、間隙形成部材71aが接地された状態で供
給管84aを通して反応室83a内にCF4とO2の混合
ガスを供給し、SiN膜72aのエッチングを行う。そ
の際、CF4ガスの分解により生じるイオン種やラジカ
ルによって素子基板1上に電荷が発生するが、上述した
ように間隙形成部材71aが接地されていることによ
り、素子基板1内の発熱体2やラッチ回路などの機能素
子がイオン種やラジカルの電荷によって損傷することが
防止される。
【0107】本実施形態では、反応室83aの内部に供
給するガスとして、CF4とO2の混合ガスを用いたが、
2が混合されていないCF4ガスまたはC26ガス、あ
るいはC26とO2の混合ガスなどを用いてもよい。
【0108】次に、図10(e)では、酢酸、リン酸お
よび硝酸の混酸を用いて、可動部材6に形成したAl膜
からなる前記第2の保護層や、Al膜からなる間隙形成
部材71aを溶出して除去し、素子基板1上に可動部材
6を作り込む。その後、過酸化水素を用いて、素子基板
1に形成したTiW膜76の、気泡発生領域10および
パッドに対応する部分を除去する。
【0109】以上のようにして、可動部材6が設けられ
た素子基板1が製造される。ここでは、図1に示したよ
うに可動部材6の支持固定部が素子基板1に直接固定さ
れているものを製造する場合で説明したが、この製造方
法を適用して、可動部材が台座部を介して素子基板に固
定された液体吐出ヘッドを製造することもできる。この
場合、図10(b)に示した間隙形成部材71aを形成
する工程の前に、可動部材の、自由端と反対側の端部を
素子基板に固定するための台座部を素子基板の発熱体側
の面上に形成する。この場合でも、台座部と素子基板と
の密着部の構成材料には、パッド保護層の構成材料であ
るTiW、および素子基板の耐キャビテーション膜の構
成材料であるTaが含まれる。
【0110】上述した例では、流路側壁9を天板3に形
成した場合について説明したが、フォトリソグラフィプ
ロセスを用いて、素子基板1への可動部材6の形成と同
時に、流路側壁9を素子基板1に形成することもでき
る。
【0111】以下に、素子基板1に可動部材6及び流路
側壁9を設けた場合の、可動部材6及び流路側壁の形成
工程の一例について、図13及び図14を参照して説明
する。なお、図13及び図14は、可動部材及び流路側
壁が形成される素子基板の液流路方向と直交する方向に
沿った断面を示している。
【0112】まず、図13(a)では、素子基板1の発
熱体2側の面全体に、発熱体2との電気的な接続を行う
ための接続用パッド部分を保護するための第1の保護層
として、不図示のTiW膜をスパッタリング法によって
厚さ約500nm形成する。この素子基板1の発熱体2
側の面に、間隙形成部材71を形成するためのAl膜を
スパッタリング法によって厚さ約4μm形成する。形成
されたAl膜を、周知のフォトリソグラフィプロセスを
用いてパターニングし、図1に示した発熱体2と可動部
材6との間の気泡発生領域10に対応する位置に、素子
基板1と可動部材6との間の間隙を形成するための、A
l膜からなる間隙形成部材71を複数形成する。それぞ
れの間隙形成部材71は、後述する図14(b)の工程
において、可動部材6を形成するための材料膜であるS
iN膜72がエッチングされる領域まで延在されてい
る。
【0113】間隙形成部材71は、後述するようにドラ
イエッチングにより液流路7および可動部材6を形成す
る際のエッチングストップ層として機能する。これは、
素子基板1におけるパッド保護層としてのTiW層や、
耐キャビテーション膜としてのTa膜、および抵抗体上
の保護層としてのSiN膜が、液流路7を形成するため
に使用するエッチングガスによりエッチングされてしま
うからであり、これらの層や膜のエッチングが間隙形成
部材71により防止される。そのため、ドライエッチン
グにより液流路7を形成する際に素子基板1の発熱体2
側の面や、素子基板1上のTiW層が露出しないよう
に、それぞれの間隙形成部材71における液流路7の流
路方向と直行する方向の幅は、後述する図14(b)の
工程で形成される液流路7の幅よりも広くなっている。
【0114】さらに、ドライエッチング時には、CF4
ガスの分解によりイオン種およびラジカルが発生し、素
子基板1の発熱体2や機能素子にダメージを与えること
があるが、Alからなる間隙形成部材71は、これらイ
オン種やラジカルを受け止めて素子基板1の発熱体2や
機能素子を保護するものとなっている。
【0115】次に、図13(b)では、間隙形成部材7
1の表面、および素子基板1の間隙形成部材71側の面
上に、プラズマCVD法を用いて、可動部材6を形成す
るための材料膜である厚さ約4.5μmのSiN膜72
を、間隙形成部材71を被覆するように形成する。ここ
で、プラズマCVD装置を用いてSiN膜72を形成す
る際には、図11を参照して説明したように、素子基板
1を構成するシリコン基板などを介して、素子基板1に
備えられたTaからなる耐キャビテーション膜を接地す
る。これにより、プラズマCVD装置の反応室内でのプ
ラズマ放電により分解されたイオン種およびラジカルの
電荷に対して素子基板1内の発熱体2やラッチ回路など
の機能素子を保護することができる。
【0116】次に、図13(c)では、SiN膜72の
表面に、スパッタリング法によりAl膜を厚さ約610
nm形成した後、形成されたAl膜を、周知のフォトリ
ソグラフィプロセスを用いてパターニングし、SiN膜
72表面の、可動部材6に対応する部分、すなわちSi
N膜72表面の可動部材形成領域に第2の保護層として
のAl膜73を残す。Al膜73は、ドライエッチング
により液流路7を形成する際の保護層(エッチングスト
ップ層)となる。
【0117】次に、図14(a)では、SiN膜72お
よびAl膜73の表面に、流路側壁9を形成するための
SiN膜74を、マイクロ波CVD法を用いて厚さ約5
0μm形成する。ここで、マイクロ波CVD法によるS
iN膜74の成膜に使用するガスとしては、モノシラン
(SiH4)、窒素(N2)およびアルゴン(Ar)を用
いた。そのガスの組み合わせとしては、上記以外にも、
ジシラン(Si26)やアンモニア(NH3)などとの
組み合わせや、混合ガスを用いてもよい。また、周波数
が2.45GHzのマイクロ波のパワーを1.5kWと
し、ガス流量としてはモノシランを100sccm、窒
素を100sccm、アルゴンを40sccmでそれぞ
れのガスを供給して、圧力が5mTorrの高真空下で
SiN膜74を形成した。また、ガスのそれ以外の成分
比でのマイクロ波プラズマCVD法や、RF電源を使用
したCVD法などでSiN膜74を形成してもよい。
【0118】CVD法によりSiN膜74を形成する際
には、図11に基づいて前述したようなSiN膜72を
形成する方法と同様に、発熱体2の面上に形成されてい
るTaからなる耐キャビテーション膜を素子基板1のシ
リコン基板を介して接地する。これにより、CVD装置
の反応室内でのプラズマ放電により分解されたイオン種
およびラジカルの電荷に対して素子基板1内の発熱体2
やラッチ回路などの機能素子を保護することができる。
【0119】そして、SiN膜74の表面全体にAl膜
を形成した後に、形成されたAl膜を、フォトリソグラ
フィなどの周知の方法を用いてパターニングして、Si
N膜74の表面の、液流路7に対応する部分を除く部分
にAl膜75を形成する。前述したように、それぞれの
間隙形成部材71における液流路7の流路方向と直行す
る方向の幅は、次の図14(b)の工程で形成される液
流路7の幅よりも広くなっているので、Al膜75の側
部が間隙形成部材71の側部の上方に配置されている。
【0120】次に、図14(b)では、誘電結合プラズ
マを使ったエッチング装置を用いてSiN膜74および
SiN膜72をパターニングして流路側壁9および可動
部材6を同時に形成する。そのエッチング装置では、C
4とO2の混合ガスを用いて、Al膜73,25および
間隙形成部材71をエッチングストップ層すなわちマス
クとして、SiN膜74がトレンチ構造となるようにS
iN膜74およびSiN膜72のエッチングを行う。こ
のSiN膜72をパターニングする工程では、図1に示
したように可動部材6の支持固定部が素子基板1に直接
固定されるようにSiN膜72の不要な部分を除去す
る。可動部材6の支持固定部と素子基板1との密着部の
構成材料には、パッド保護層の構成材料であるTiW、
および素子基板1の耐キャビテーション膜の構成材料で
あるTaが含まれる。
【0121】ここで、ドライエッチング装置を用いてS
iN膜72,24をエッチングする際には、図12を参
照して説明したように素子基板1などを介して間隙形成
部材71を接地する。これにより、ドライエッチングの
際にCF4ガスの分解により生じるイオン種およびラジ
カルの電荷が間隙形成部材71に留まることを防止し
て、素子基板1の発熱体2やラッチ回路などの機能素子
を保護することができる。また、このエッチングの工程
で形成される液流路7の幅よりも間隙形成部材71の幅
の方が広くなっているため、SiN膜74の不要な部分
を除去した際に素子基板1の発熱体2側の面が露出する
ことがなく、間隙形成部材71によって素子基板1が確
実に保護される。
【0122】次に、図14(c)では、酢酸、リン酸お
よび硝酸の混酸を用いてAl膜73,25を加温エッチ
ングすることで、Al膜73,75や、Al膜からなる
間隙形成部材71を溶出して除去し、素子基板1上に可
動部材6および流路側壁9を作り込む。その後、過酸化
水素を用いて、素子基板1に形成したパッド保護層とし
てのTiW膜の、気泡発生領域10およびパッドに対応
する部分を除去する。素子基板1と流路側壁9との密着
部にも、パッド保護層の構成材料であるTiW、および
素子基板1の耐キャビテーション膜の構成材料であるT
aが含まれている。
【0123】以上、本発明の好ましい実施の形態につい
て説明したが、本発明の液体吐出ヘッドは上述したもの
に限定されるわけではない。例えば、可動部材を有しな
い、例えば上述した米国特許第4723129号明細書
に開示されるような液体吐出ヘッドにも適用可能なもの
である。
【0124】さらに、上述の液体吐出ヘッドにおいて第
1の液流路7aと第2の液流路7bとに異なる液体を供
給し、可動部材の位置で両者を混合させ吐出させるよう
に構成した液体吐出ヘッドにも適用可能である。以下、
このような2液混合タイプの液体吐出ヘッドへの適用例
について説明する。
【0125】図15は、2液混合タイプの液体吐出ヘッ
ドの流路方向の断面模式図を示しており、図16はこの
液体吐出ヘッドの部分破断斜視図を示している。
【0126】図15に示す液体吐出ヘッドは、液体に気
泡を発生させるための熱エネルギーを与える発熱体50
2が設けられた基板501上に、発泡液用の第2の液流
路504があり、その上に吐出口511に直接連通した
吐出液用の第1の液流路503が配されている。そし
て、第1と第2の流路の間に、金属等の弾性を有する材
料で構成された分離壁505が配されており、第1の液
流路503内の吐出液と第2の液流路504内の発泡液
とを区分している。
【0127】発熱体502の面方向上方への投影空間
(以下、吐出圧発生領域という。;図15中のAの領域
とBの気泡発生領域を含む)に位置する部分の分離壁
は、スリット508によって吐出口側(液体流れの下流
側)が自由端で、共通液室(125,513)側に支点
が位置する片持梁形状の可動部材506となっており、
気泡発生領域Bに面して可動部材506が配されている
ような構成になっているため、後述するように発泡液の
発泡によって第1液流路側に開口するように動作する
(図中矢印方向)。
【0128】吐出口511に近接して、第1の液流路5
03の天井部分には、第1の液流路503内の吐出液に
接するようにイオンセンサ520が形成されている。ま
た、イオンセンサ520に対向するように、基板501
の表面に、参照電極521が形成されている。この参照
電極521には、発熱体502の表面に形成されるTa
からなる耐キャビテーション膜を使用してもよい。
【0129】図16においても、発熱体502としての
電気熱変換体と、この電気熱変換体に電気信号を印加す
るための配線電極514とが配された基板501上に、
第2の液流路504を構成する空間を介して分離壁50
5が配置されていることが理解されよう。図16では、
説明を簡単にするため、イオンセンサおよび参照電極は
示されていない。
【0130】図17は、上述の可動部材506と第2の
液流路504との配置関係を説明するための図であり、
図17(a)は可動部材506を上方から見た図であ
り、図17(b)は、分離壁505を外した第2の液流
路を上方から見た図である。そして、図17(c)は、
可動部材506と第2の液流路504との配置関係をこ
れらを垂ねることで模式的に示した図である。なお、い
ずれの図も下方が吐出口が配されている方向になってい
る。
【0131】第2の液流路504は発熱体502の前後
で狭窄部509を持っており、発泡時の圧力が第2の液
流路504を伝って逃げることを抑制するような室(発
泡室)構造となっている。従来のように、発泡を生ぜし
める流路と液体を吐出するための流路とが共通するヘッ
ドで、発熱体より液室側に発生した圧力が共通液室側に
逃げないように狭窄部を設ける場合には、吐出する液体
のリフィルを充分考慮して、狭窄部における流路断面積
があまり小さくならない構成を採る必要があった。
【0132】しかし、本発明において、第2の液流路に
流れる液体の消費を低くした場合には、第2の液流路5
04の吐出圧発生部への充填量は少なくて良い。従っ
て、上述の狭窄部509における間隔を数μm〜十数μ
mと非常に狭くでき、第2の液流路で発生した発泡時の
圧力をあまり周囲に逃がすことがなく、集中して可動部
材側に向けることができ、この圧力を可動部材506を
介して吐出圧力として利用するため、より高い吐出エネ
ルギー効率、吐出圧力をさらに向上させることができ
る。
【0133】なお、上述した実施例では、発泡流路が複
数個並列されるその並列方向において搾られた狭窄部5
09を吐出流路の始端と終端付近に対応した位置に配し
たが、これは発熱体502の近傍の流路方向前後位置に
配置するようにしてもよい。また、狭窄部509に挟ま
れる発泡流路の長さは、発熱体502の液体流れ方向長
さの1.5〜2倍程度であるのが望ましい。さらに、狭
窄部509の搾り具合は、発泡流路の幅の1/4〜1/
2程度が好ましい。この実施例では、15μmとしてい
る。なお、狭窄部509は上述の並列方向に直交する方
向に搾るようにしてもよい。
【0134】発熱体502としては、40×105μm
の形状のものを用い、可動部材506はこの発熱体50
2が配された前後室を覆うような状態で配されている。
なお、発熱体502や可動部材506の大きさや形状お
よび配置は、これに限られることなく、発泡液と吐出液
との所定の混合割合が得られ、発泡時の圧力を吐出圧と
して有効に利用できる形状および配置にすればよい。
【0135】本実施例においては、厚さ15μmのドラ
イフィルムを基板上に配し、パターニングすることで発
泡流路4を構成する流路壁を形成している。しかし、こ
れに限られることなく、流路壁の材質としては発泡液に
対しての耐溶剤性があり、流路壁形状を容易に形成でき
るものであればよい。その様な材質として、上述のドラ
イフィルムに加えて、シリコンを使用することができ、
さらに、液体レジスト、ポリサルフォン、およびポリエ
チレン等の樹脂、金、ニッケル等の金属、ガラスなどが
挙げられる。
【0136】また、第1の液流路503等は、吐出口5
11を有するオリフィスプレートと、第1の液流路50
3を形成する複数の液流路溝および複数の液流路溝に共
通に連通し第1の液体を夫々の液流路溝に供給するため
の第1の共通液室512を構成する凹部とを一体に有す
る溝付天板を分離室505に接合することで形成した。
【0137】可動部材を有する分離壁505は厚さ3〜
5μmのニッケルで形成したが、分離壁を構成する材質
は発泡液と吐出液に対して耐溶剤性があり、可動部材と
して良好に動作するための弾性を有し、微細なスリット
が形成できるものであればよい。これらの材料として
は、シリコン系の材料や、ニッケル、金等の金属やポリ
エチレン等の樹脂が挙げられる。また、分離壁の厚さ
は、分離壁としての強度を達成でき、可動部材として良
好に動作するという観点からその材質と形状等を考慮し
て決定すればよいが、大まかに0.5〜10μmが望ま
しい。
【0138】また、可動部材を形成するためのスリット
の幅は本実施例では2μmとしたが、発泡液と吐出液と
が異る液体であり、可動部材の非作動時の両液体の混液
を防止したい場合は、スリット幅を両者の液体間でメニ
スカスを形成する程度の間隔とし、夫々の液体同士の流
通を抑制すればよい。例えば、発泡液として2cP(セ
ンチポアズ)程度の液体を用い、吐出液として100c
P以上の液体を用いた場合には、5μm程度のスリット
でも混液を防止することができるが、さらに、3μm以
下にすることが望ましい。
【0139】本実施例においては、発熱体として電気信
号に応じて発熱するハフニュウムポライドや窒化タンタ
ル等の発熱抵抗体を発熱部として有するものを用いた
が、これに限られるものではなく、発泡液に対して吐出
液を吐出させるに十分な気泡の発生を生じさせるもので
あればよい。例えば、発熱部としてレーザ等の光を受け
ることで発熱するような光熱変換体を有する発熱体でも
良い。なお、発熱体は発熱部だけでなく発熱部を液体か
ら保護する保護膜をも含んでも良い。
【0140】次に図18を用いて、図15に示す2液混
合タイプの液体吐出ヘッドの動作を説明する。
【0141】前述の発熱体502が駆動されることで発
生した熱が、第2の液流路の気泡発生領域内の発泡液に
作用することで、発泡液に特公昭61−59914号公
報に記載されているような膜沸騰現象を生じさせ、気泡
を発生させる。この気泡発生に伴う圧力が吐出圧発生部
に配された可動部材506側に集中して伝搬し、気泡の
成長を伴って可動部材506が図18(a)の状態から
図18(b)のように第1の液流路側に変位する。この
可動部材506の動作によって第1の液流路と第2の液
流路とが気泡の介在をもって大きく連通し、気泡の発生
に基づく圧力波が第1の液流路の吐出口側の方向に主に
伝わる。この圧力波の伝搬と、可動部材の機械的変位に
よって、吐出液体に対し発泡液体が所定の割合で混合し
た状態で液体が吐出口から吐出される。
【0142】この液体吐出ヘッドにおいて、従来の構成
のヘッドに比べて高い吐出エネルギー効率で、また高い
吐出圧でインクを吐出することができるのは、次のよう
な現象およびこれらの現象の相互作用によるものである
と考えられる。
【0143】まず、前述の可動部材506の変位によっ
て、第2の液流路504内で発生した吐出圧の内、可動
部材506側に伝わる吐出圧のほとんどが、第1の液流
路503のしかも吐出口方向に開放される、つまり第2
の液流路504で発生した吐出圧の伝搬方向が可動部材
506により吐出口方向に変換されること。また、気泡
の発生に伴う圧力によって動作する可動部材506の機
械的変位によって、第1の液流路503の吐出圧発生領
域の吐出液が押されることで吐出力が発生することが考
えられる。なお、可動部材506の動作時、可動部材5
06の発熱体側に気泡が存在するため可動部材の動作を
抑制する流体の抵抗が少なく、可動部材506の動作が
応答性良く滑らかに行われることもこれらの効果に寄与
していると考えられる。
【0144】次に、気泡が収縮するに伴って可動部材5
06が図18(a)の位置まで戻ると共に第1の液流路
503では吐出された吐出液体量に見合う量の吐出液体
が上流側から供給される。この吐出液体の供給は前述の
可動部材506が閉じる方向であるため、吐出液体のリ
フィルが可動部材で妨げられることがない。この様に本
実施例の構成では、第1の液流路503の上流側の吐出
液は、ほとんどバック波の影響を受けることがないため
上流から下流への液体流れの一方向性が強く、リフィル
も良好に行われる。また、第2の液流路504内の発泡
液は、上述のようにあまり使用されないためリフィルも
わずかの量で終了する。
【0145】上述の実施例の構成によると、吐出液と発
泡液とを別液体とし、発泡液の発泡で生じた圧力によっ
て、吐出液を発泡液との所定の混合割合の下に吐出する
ことができる。このため従来、熱を加えても発泡が十分
に行われにくく吐出力が不十分であったポリエチレング
リコール等の高粘度の液体であっても、この液体を第1
の液流路503の供給し、発泡液に発泡が良好に行われ
る液体(エタノール:水=4:6の混合液、1〜2cP
程度等)を第2の液流路504に供給することで良好に
吐出させることができる。さらに、本発明のヘッドの構
造においては先の実施例で説明したような効果をも生じ
るため、さらに高吐出効率、高吐出圧で高粘性液体等の
液体を吐出することができる。
【0146】また、加熱に弱い液体の場合においても、
この液体を第1の液流路503に吐出液として供給し、
第2の液流路504で熱的に変質しにくく良好に発泡を
生じる液体を供給すれば、加熱に弱い液体に熱的な害を
与えることなく、しかも上述のように高吐出効率、高吐
出圧で吐出することができる。
【0147】このように発泡液と吐出液との混合が行わ
れる場合、両者の混合比を所定の割合に制御すること
が、高品位の記録を行うために必要である。図15に示
す液体吐出ヘッドの場合、吐出口511に近接してイオ
ンセンサ520が設けられているので、混合後の液体に
おけるイオン濃度を検知することができる。混合比は、
例えば、発熱体502に対する駆動パルスの幅や尖頭電
圧を変化させることによって制御できるから、イオンセ
ンサ520での検出結果をフィードバックすることによ
り、発泡液と吐出液との混合割合を常に一定のものとす
ることができる。
【0148】以下に、上述の各実施例で説明した流路構
造をする液体吐出ヘッド、ヘッドカートリッジ、液体吐
出装置を説明する。
【0149】図19は複数の吐出口611とこれに連通
する液流路を有する液体吐出ヘッド616を示すもの
で、この液体吐出ヘッドは発熱体602が複数設けられ
た基板601と、前述の可動部材606を発熱体602
に対応して持つ分離壁605と、この分離壁上に設けら
れた複数の液流路603となる溝を構成する流路壁61
5が設けられた天板614とで構成されている。ここに
は図示していないが、液流路ごとに、イオン選択性電界
効果トランジスタからなるイオンセンサが設けられ、ま
た、このイオンセンサに対向するように参照電極が設け
られている。
【0150】図20は、図19で示した液体吐出ヘッド
616とこの液体吐出ヘッドに供給するための液体を保
持するインク容器とを有するヘッドカートリッジ617
を示している。なお、このインク容器はインク消費後
に、インクを再充填して使用することが可能である。
【0151】図21は、前述の液体吐出ヘッドを搭載し
た液体吐出装置の概略構成を示している。本実施例の液
体吐出装置のキャリッジHCは、液体タンク部670と
液体吐出ヘッド部660とが着脱可能なヘッドカートリ
ッジを搭載しており、被記録媒体搬送手段で搬送される
被記録媒体680の幅方向に往復移動する。
【0152】不図示の駆動信号供給手段からキャリッジ
上の液体吐出手段に駆動信号が供給されると、この信号
に応じて液体吐出ヘッドから被記録媒体に対して記録液
体が吐出される。
【0153】また、本実施例の液体吐出装置において
は、被記録媒体搬送手段とキャリッジを駆動するための
駆動源としてのモータ681、駆動源からの動力をキャ
リッジに伝えるためのギア682、683およびキャリ
ッジ軸685等を有している。この記録装置およびこの
記録装置で行う液体吐出方法によって、各種の被記録媒
体に液体を吐出することで良好な画像の記録物を得るこ
とができた。
【0154】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、液流路に
接して濃度センサ、好ましくはイオンセンサを配置する
ことにより、吐出口ごとにインクの性状を把握すること
が可能になって、高精細であって高品位な記録を高速に
行うことができるようになるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である液体吐出ヘッド構造
を説明するための、液流路方向に沿った断面図である。
【図2】図1に示した液体吐出ヘッドに用いられる素子
基板の断面図である。
【図3】図2に示した素子基板の主要素子を縦断するよ
うに素子基板を切断した模式的断面図である。
【図4】図1に示した液体吐出ヘッドの回路構成を説明
するための図であり、(a)は素子基板の平面図、
(b)は天板の平面図である。
【図5】図1に示す液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出
ヘッドユニットの平面図である。
【図6】イオンセンサを説明する図である。
【図7】(a),(b)は、インク中の染料イオンの会
合状態を説明する図である。
【図8】(a)はイオンセンサが組み込まれた発振回路
を説明する回路図、(b)はこの発振回路をロジック回
路として表わす回路図である。
【図9】イオンセンサの出力を利用して制御を行う例の
素子基板および天板の回路構成を示す図である。
【図10】素子基板上に可動部材を形成する方法を説明
するための図である。
【図11】プラズマCVD装置を用いて素子基板上にS
iN膜を形成する方法を説明するための図である。
【図12】ドライエッチング装置を用いてSiN膜を形
成する方法を説明するための図である。
【図13】素子基板上に可動部材及び流路側壁を形成す
る方法を説明するための図である。
【図14】素子基板上に可動部材及び流路側壁を形成す
る方法を説明するための図である。
【図15】2液混合タイプの液体吐出ヘッドの断面模式
図である。
【図16】図15の液体吐出ヘッドの部分破断斜視図で
ある。
【図17】図15の液体吐出ヘッドの可動部材と第2の
液流路の構造を説明するための図である。
【図18】可動部の動作を説明するための図である。
【図19】複数の液流を有する液体吐出ヘッドの部分破
断斜視図である。
【図20】本発明のヘッドカートリッジを説明するため
の図である。
【図21】本発明の液体吐出装置の一例を示すための図
である。
【符号の説明】 1 素子基板 2 発熱体 3 天板 4 オリフィスプレート 5 吐出口 6 可動部材 7 液流路 200 イオンセンサ 210 参照電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 今仲 良行 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2C056 EA06 EA23 EB08 EB29 EC08 EC42 EC43 FA03 FA10 HA05 HA17 KD06 2C057 AF24 AF34 AF43 AG30 AG46 AG52 AG83 AK07 AL14 AM14 AM18 AP02 AP14 AP53 AQ02 BA05 BA13

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液体を吐出する吐出口と、前記吐出口に
    連通する液流路と、前記液流路内に液体に吐出エネルギ
    ーを付与するエネルギー変換素子とを有する液体吐出ヘ
    ッドにおいて、 前記液流路に配置された濃度センサを有することを特徴
    とする液体吐出ヘッド。
  2. 【請求項2】 前記濃度センサがイオンセンサである請
    求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  3. 【請求項3】 前記濃度センサがイオン選択性電界効果
    トランジスタである請求項1に記載の液体吐出ヘッド
  4. 【請求項4】 前記エネルギー変換素子が、電気エネル
    ギーを熱エネルギーに変換することにより、前記液体中
    に気泡を発生せしめ、該気泡の作用力によって前記液体
    を前記吐出口から吐出される電気熱変換体である、請求
    項1乃至3いずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
  5. 【請求項5】 液体を吐出する複数の吐出口と、互いに
    接合されることでそれぞれ前記吐出口と連通する複数の
    液流路を構成するための第1の基板及び第2の基板と、
    前記エネルギーを前記液流路内の液体の吐出エネルギー
    に変換するためのに前記各液流路内に配された複数のエ
    ネルギー変換素子とを有する液体吐出ヘッドにおいて、 前記第1の基板上に前記エネルギー変換素子が形成され
    るとともに、前記エネルギー変換素子を駆動させるドラ
    イバを含む前記回路を前記第1の基板上に有し、 前記各液流路ごとに配置された濃度センサを前記第2の
    基板上に有することを特徴とする、液体吐出ヘッド。
  6. 【請求項6】 前記濃度センサがイオンセンサである請
    求項5に記載の液体吐出ヘッド。
  7. 【請求項7】 前記濃度センサがイオン選択性電界効果
    トランジスタであり、前記イオン選択性電界効果トラン
    ジスタに対応する参照電極が前記第1の基板上に形成さ
    れている請求項5に記載の液体吐出ヘッド。
  8. 【請求項8】 前記エネルギー変換素子の表面に、金属
    からなり前記エネルギー変換素子をキャビテーションか
    ら保護する耐キャビテーション膜が形成され、前記耐キ
    ャビテーション膜が前記参照電極として機能する請求項
    7に記載の液体吐出ヘッド。
  9. 【請求項9】 前記耐キャビテーション膜がタンタルか
    ら構成される請求項8に記載の液体吐出ヘッド。
  10. 【請求項10】 前記濃度センサからの検出値に基づ
    き、最適なヒートパルスを選択する駆動信号制御回路が
    前記第2の基板上に形成されている請求項5乃至9いず
    れか1項に記載の液体吐出ヘッド。
  11. 【請求項11】 前記エネルギー変換素子が、電気エネ
    ルギーを熱エネルギーに変換することにより、前記液体
    中に気泡を発生せしめ、該気泡の作用力によって前記液
    体を前記吐出口から吐出される電気熱変換体である、請
    求項5乃至10いずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
  12. 【請求項12】 前記電気熱変換体に面して前記液流路
    内に配置され、前記液体の流れの下流側に自由端を有
    し、前記電気熱変換体の駆動による気泡の発生による圧
    力に基づいて前記自由端を前記電気熱変換体から遠ざか
    る方向に変位させて前記圧力を前記吐出口に向かって伝
    える可動部材をさらに備える請求項11に記載の液体吐
    出ヘッド。
  13. 【請求項13】 前記第1の基板及び前記第2の基板が
    それぞれシリコン基板から構成されている請求項5乃至
    12いずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
  14. 【請求項14】 吐出口に連通した第1の液流路と、液
    体に熱を加えることで前記液体に気泡を発生させる発熱
    体が設けられた第2の液流路と、前記第1の液流路と前
    記第2の液流路との間に配され、液体の流れの下流側に
    自由端を有し、前記第2の液流路内での気泡の発生によ
    る圧力に基づいて前記自由端を前記第1の液流路側に変
    位させて、前記圧力を前記第1の液流路に伝える可動部
    材とを有する液体吐出ヘッドにおいて、 前記吐出口と前記可動部材の自由端位置との間で前記第
    1の液流路に壁面に形成されたイオンセンサを有し、 前記第1の液流路の供給される第1の液体と前記第2の
    液流路に供給される第2の液体とを、前記第2の液体の
    気泡発生に伴い、ともに前記吐出口から吐出するように
    構成されたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  15. 【請求項15】 前記イオンセンサがイオン選択性電界
    効果トランジスタである請求項14に記載の液体吐出ヘ
    ッド。
  16. 【請求項16】 前記イオンセンサによって前記第1の
    液体と前記第2の液体との混合比を検知し、その検知結
    果に応じて前記発熱体の駆動条件を変化させる請求項1
    4または請求項15に記載の液体吐出ヘッド。
  17. 【請求項17】 前記発熱体が、電気信号を受けること
    で熱を発生する電気熱変換体である請求項14乃至16
    いずれか1項に掲載の液体吐出ヘッド。
  18. 【請求項18】 請求項1乃至17のいずれか1項に記
    載の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドに供給され
    る液体を保持する液体容器とを有するヘッドカートリッ
    ジ。
  19. 【請求項19】 請求項1乃至17のいずれか1項に記
    載の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドから液体を
    吐出するための駆動信号を供給する駆動信号供給手段と
    を有する液体吐出装置。
  20. 【請求項20】 請求項1乃至17のいずれか1項に記
    載の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドから吐出さ
    れた液体を受ける被記録媒体を搬送する被記録媒体搬送
    手段とを有する液体吐出装置。
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DE60016503T DE60016503T2 (de) 1999-06-04 2000-06-02 Flüssigkeitsausstosskopf, Flüsigkeitsausstossvorrichtung und Verfahren zur Herstellung eines Flüssigkeitsausstosskopfes
US09/587,053 US6474769B1 (en) 1999-06-04 2000-06-02 Liquid discharge head, liquid discharge apparatus and method for manufacturing liquid discharge head
EP00112010A EP1057634B1 (en) 1999-06-04 2000-06-02 Liquid discharge head, liquid discharge apparatus and method for manufacturing liquid discharge head

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100925100B1 (ko) * 2001-09-29 2009-11-05 휴렛-팩커드 컴퍼니(델라웨어주법인) 프린트헤드 및 그 제조 방법

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100925100B1 (ko) * 2001-09-29 2009-11-05 휴렛-팩커드 컴퍼니(델라웨어주법인) 프린트헤드 및 그 제조 방법

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