JP2001058411A - 液体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッド、ヘッドカートリッジ、前記液体吐出ヘッドを有する液体吐出装置、記録ヘッド、前記液体吐出ヘッドの駆動方法、および液体吐出ヘッドの製造方法 - Google Patents

液体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッド、ヘッドカートリッジ、前記液体吐出ヘッドを有する液体吐出装置、記録ヘッド、前記液体吐出ヘッドの駆動方法、および液体吐出ヘッドの製造方法

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Akihiro Yamanaka
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Sadayuki Sugama
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電流ノイズを十分に除去することができると
ともに低コスト化を図ることができる液体吐出ヘッド等
を提供する。 【解決手段】 液体吐出ヘッド用基板は、液体に吐出エ
ネルギーを与えることにより液体を吐出させる液体吐出
ヘッドに用いられ、電気エネルギーを前記吐出エネルギ
ーに変換するためのエネルギー変換素子が形成された半
導体基板を有する。この半導体基板には、少なくとも第
1のバリア層33、強誘電材料膜32、第2のバリア層
33が順次積層されてなる機能素子が、電源ノイズ対策
用コンデンサとして設けられている。各バリア層33
は、液体吐出ヘッドを構成する基板を保護するために設
けられるキャビテーション膜材料を含む膜で構成されて
いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱エネルギーを液
体に作用させることで起こる気泡の発生によって、所望
の液体を吐出する液体吐出ヘッド、それに用いられる液
体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッドの製造方法、液体
吐出ヘッドの駆動方法、ヘッドカートリッジ、その液体
吐出ヘッドを有する液体吐出装置、並びに記録ヘッドに
関する。特に、本発明は、強誘電体材料から構成される
機能素子を備えた液体吐出ヘッド、それに用いられる液
体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッドの製造方法、液体
吐出ヘッドの駆動方法、ヘッドカートリッジ、その液体
吐出ヘッドを有する液体吐出装置、並びに記録ヘッドに
関する。
【0002】また、本発明は、紙、糸、繊維、布、金
属、プラスチック、ガラス、木材、セラミック等の被記
録媒体に対して記録を行う、プリンタ、複写機、通信シ
ステムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワー
ドプロセッサ等の装置、さらには各種処理装置と複合的
に組み合わされた産業用の液体吐出装置に適用すること
ができるものである。
【0003】なお、本発明における「記録」とは、文字
や図形等のように意味を持つ画像を被記録媒体に対して
付与することだけでなく、パターン等のように意味を持
たない画像を付与することをも意味するものである。
【0004】
【従来の技術】熱等のエネルギーをインクに与えること
で、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態
変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって
吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着
させて画像形成を行うインクジェット記録方法が従来知
られている。この記録方法を用いる記録装置には、米国
特許第4,723,129号明細書等の公報に開示されて
いるように、インクを吐出するための吐出口と、この吐
出口に連通するインク流路と、インク流路内に配された
インクを吐出するためのエネルギー発生手段としての電
気熱変換体が一般的に配された液体吐出ヘッドが用いら
れている。この種の記録装置は、品位の高い画像を高
速、低騒音で記録することができるとともに、小型かつ
高解像度の記録装置を提供することができるという多く
の優れた点を有していることから、近年、プリンタ、複
写機、ファクシミリ等の多くのオフィス機器に利用され
ており、さらに、捺染装置等の産業用システムにまで利
用されるようになってきている。
【0005】上述した従来の液体吐出ヘッドの一構成例
を図28に示す。
【0006】図28に示される通り、この液体吐出ヘッ
ドは、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを与
える複数個(図28では1つのみ示す)の発熱体100
2が並列に設けられた素子基板1001と、この素子基
板1001上に接合された天板1003と、素子基板1
001および天板1003の前端面に接合されたオリフ
ィスプレート1004とを有する。天板1003には、
各発熱体1002に対応する位置にそれぞれ溝が形成さ
れており、素子基板1001と天板1003とが接合さ
れることで、各発熱体1002にそれぞれ対応する液流
路1007が形成される。
【0007】素子基板1001は、シリコン等の基板上
に絶縁および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜または窒
化シリコン膜を成膜し、その上に、発熱体1002を構
成する電気抵抗層および配線をパターニングしたもので
ある。この配線から電気抵抗層に電圧を印加し、電気抵
抗層に電流を流すことで発熱体1002が発熱する。そ
して、この配線と電極抵抗層の上には、それらをインク
から保護する保護膜が形成されており、さらにその保護
膜の上にはインク消泡によるキャビテーションから保護
する耐キャビテーション膜が形成されている。
【0008】天板1003は、各発熱体1002に対応
した複数の液流路1007および各液流路1007に液
体を供給するための共通液室1008を構成するための
もので、天井部分から各発熱体1002の間に延びる流
路側壁1009が一体的に設けられている。天板100
3はシリコン系の材料で構成され、液流路1007およ
び共通液室1008のパターンをエッチングで形成した
り、シリコン基板上にCVD等の公知の成膜方法により
窒化シリコン、酸化シリコンなど、流路側壁1009と
なる材料を堆積した後、液流路1007の部分をエッチ
ングして形成することができる。
【0009】オリフィスプレート1004には、各液流
路1007に対応しそれぞれ液流路1007を介して共
通液室1008に連通する複数の吐出口1005が形成
されている。オリフィスプレート1004もシリコン系
の材料からなるものであり、例えば、吐出口1005を
形成したシリコン基板を10〜150μm程度の厚さに
削ることにより形成される。なお、オリフィスプレート
1004は本発明には必ずしも必要な構成ではなく、オ
リフィスプレート1004を設ける代わりに、天板10
03に液流路1007を形成する際に天板1003の先
端面にオリフィスプレート1004の厚さ相当の壁を残
し、この部分に吐出口1005を形成することで、吐出
口付きの天板とすることもできる。
【0010】上記構成に基づき、発熱体1002を発熱
させると、液流路1007内の発熱体1002と対面す
る領域である気泡発生領域1010の液体に熱が作用
し、これにより発熱体1002上に膜沸騰現象に基づく
気泡が発生し、成長する。この気泡の発生に基づく圧力
の伝搬や気泡自身の成長が吐出口1005側に導かれ、
吐出口1005から液体が吐出する。
【0011】一方、気泡が消泡過程に入ると、気泡発生
領域1010での気泡の収縮体積を補うため、また、吐
出された液体の体積分を補うために、上流側すなわち共
通液室1008側から液体が流れ込み、液流路1007
への液体の充填(リフィル)が行われる。
【0012】また、本形態の液体吐出ヘッドは、発熱体
1002を駆動したりその駆動を制御するための回路や
素子を有する。これら回路や素子は、その機能に応じて
素子基板1001または天板1003に分担して配置さ
れている。また、これら回路や素子は、素子基板100
1および天板1003がシリコン材料で構成されている
ことから、半導体ウェハプロセス技術を用いて容易かつ
微細に形成することができる。
【0013】このような液体吐出ヘッドを使用した記録
装置では、図29に示すように、液体吐出ヘッドを搭載
するヘッドキャリッジ2001とプリンター本体200
2とはケーブル2003を介して接続され、ヘッドキャ
リッジ2001が被記録媒体の記録面上を副走査方向に
移動することで記録が行われる。このような構造の場
合、必然的に、液体吐出ヘッドの電気熱変換体(ヒータ
ー)に電流を供給するための配線が長くなる。そのた
め、上述のようにヒーターに急峻な電流を流して駆動す
るタイプのインクジェット記録を採用する液体吐出ヘッ
ドでは、配線インダクタンスの相互作用により電流ノイ
ズが発生しやすいという課題が生じる。また、液体吐出
ヘッドの全ノズルが駆動された場合、ヘッドと本体の
間、すなわちケーブル2003には瞬間的に数アンペア
の電流が流れることとなり、ケーブル2003にはロジ
ック信号が平行して走っていることから、該信号線に誘
導結合により電流ノイズがのってしまうという課題も生
じる。このような電流ノイズ問題に対して、従来は、キ
ャリッジや中継基板に電流ノイズ対策用コンデンサを搭
載して対応していた。
【0014】一方、近年の高密度記録が進む中、1回で
吐出されるインクの量はますます少なくなっており、液
体吐出を安定かつ高精度に行うために種々の機構が検討
されている。
【0015】一例として、液体吐出ヘッド基板に温度セ
ンサを設けて、該センサの検出結果に応じてヘッド温度
を所定の範囲に維持するようにしたものがある。
【0016】また、液体吐出ヘッドに不揮発性メモリを
搭載し、該メモリに液体吐出特性やヘッド状態等のヘッ
ド情報を記憶し、その情報に応じてヘッドの駆動を制御
するようにしたものも提案されている。この場合、ヘッ
ド情報を記憶するメモリとしては、EEPROM、フラ
ッシュメモリなどが用いられている。
【0017】ところで、インクを吐出するためのエネル
ギーを発生させるための電気熱変換体は、半導体製造プ
ロセスを用いて作製することができる。そのため、上述
した電気熱変換素子を使用してインクを吐出するタイプ
の記録ヘッドは、シリコン基板からなる素子基板上に電
気熱変換体を形成し、その上に、インク流路を形成する
ための溝を形成した、ポリサルフォン等の樹脂やガラス
等からなる天板を接合した構成となっている。
【0018】また、素子基板がシリコン基板からなるこ
とを利用し、電気熱変換体を素子基板上に構成するだけ
でなく、電気熱変換体を駆動するためのドライバや、電
気熱変換体をヘッドの温度に応じて制御する際に用いら
れる温度センサおよびその駆動制御部等を素子基板上に
構成したものもある(特開平7−52387号公報
等)。このようにドライバや温度センサおよびその駆動
制御部等を素子基板上に構成したヘッドは実用に供され
ており、記録ヘッドの信頼性の向上及び装置の小型化に
寄与している。
【0019】一方、上述したようなヘッドの構成とは別
の構成を有した液体吐出ヘッドを図30に示す。図30
は、液体吐出ヘッドの構成を液流路方向に沿った断面図
で示したものである。この液体吐出ヘッド(以下、「液
体吐出ヘッド」あるいは「記録ヘッド」と標記する。)
は、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを与え
る吐出エネルギー発生素子としての、複数個(図30で
は、1つのみ示す)の発熱体3002が並列に設けられ
た素子基板3001と、この素子基板3001上に接合
された天板3003と、素子基板3001および天板3
003の前端面に接合されたオリフィスプレート300
4とを有することに加え、可動部材を備えたものであ
る。
【0020】なお、素子基板3001、天板3003、
オリフィスプレート3004等の基本構成は図28の液
体吐出ヘッドと同様の構成であるため、ここでの説明は
省略する。
【0021】図30に示される液体吐出ヘッドには、上
述の通り、液流路3007を吐出口3005に連通した
第1の液流路3007aと、発熱体3002を有する第
2の液流路3007bとに分けるように、発熱体300
2に対面して配置された片持梁状の可動部材3006が
設けられている。可動部材3006は、窒化シリコンや
酸化シリコンなどのシリコン系の材料で形成された薄膜
である。
【0022】この可動部材3006は、液体の吐出動作
によって共通液室3008から可動部材3006を経て
吐出口3005側へ流れる大きな流れの上流側に支点3
006aを持ち、この支点3006aに対して下流側に
自由端3006bを持つように、発熱体3002に面し
た位置に発熱体3002を覆うような状態で発熱体30
02から所定の距離を隔てて配されている。この発熱体
3002と可動部材3006との間が気泡発生領域30
10となる。
【0023】上記の構成に基づき、発熱体3002を発
熱させると、可動部材3006と発熱体3002との間
の気泡発生領域3010の液体に熱が作用し、これによ
り発熱体3002上に膜沸騰現象に基づく気泡が発生し
て成長する。この気泡の成長に伴う圧力は可動部材30
06に優先的に作用し、可動部材6は図30に破線で示
されるように、支点3006aを中心に吐出口3005
側に大きく開くように変位する。可動部材3006の変
位もしくは変位した状態によって、気泡の発生に基づく
圧力の伝播や気泡自身の成長が吐出口3005側に導か
れ、吐出口3005から液体が吐出する。
【0024】つまり、気泡発生領域3010上に、液流
路3007内の液体の流れの上流側(共通液室3008
側)に支点3006aを持ち下流側(吐出口3005
側)に自由端3006bを持つ可動部材3006を設け
ることによって、気泡の圧力伝播方向が下流側へ導か
れ、気泡の圧力が直接的に効率よく吐出に寄与すること
になる。そして、気泡の成長方向自体も圧力伝播方向と
同様に下流方向に導かれ、上流より下流で大きく成長す
る。このように、気泡の成長方向自体を可動部材によっ
て制御し、気泡の圧力伝播方向を制御することで、吐出
効率や吐出力または吐出速度などの根本的な吐出特性を
向上させることができる。
【0025】一方、気泡が消泡過程に入ると、可動部材
3006の弾性力との相乗効果で気泡は急速に消泡し、
可動部材3006も最終的には図30に実線で示した初
期位置に復帰する。このとき、気泡発生領域3010で
の気泡の収縮体積を補うため、また、吐出された液体の
体積分を補うために、上流側すなわち共通液室3008
側から液体が流れ込み、液流路3007への液体の充填
(リフィル)が行われるが、この液体のリフィルは、可
動部材3006の復帰作用に伴って効率よく合理的かつ
安定して行われる。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】コンデンサによる電流
ノイズ除去効果は、電流エネルギーを消費する部分(ヒ
ーター)に近いほど高い。しかしながら、従来は、電流
ノイズ対策用コンデンサは大容量である必要性から大型
コンデンサを必要とした。そのため、通常では、その配
置スペースが必要なため、電流ノイズ対策用コンデンサ
はキャリッジや中継基板に設けられているのが実情であ
った。
【0027】電流ノイズを効果的に除去するためには、
コンデンサを液体吐出ヘッド用基板上等、ヒーターによ
り近い部分に配置する必要がある。特に、最近では、液
体吐出ヘッドの高速化、高密度記録に伴って、ヘッド基
板に瞬間的に流れる電流(ヒータ駆動電流)の量がます
ます増加しており、このような状況から、電流ノイズ対
策のためには、コンデンサはより容量の大きなものと
し、よりヒーターに近い部分に配置する必要があった
が、具体的な解決方法はなかった。
【0028】他方、近年の液体吐出装置の低価格化に伴
って液体吐出ヘッドにおいてもコスト削減が図られてい
るが、前述したようなEEPROM、フラッシュメモリ
などの不揮発性メモリはヘッド基板上に別部品として構
成するようになっているため、低コスト化を図ることが
困難であった。
【0029】また、最近では、各種センサをヘッド内に
配置してその検出結果をリアルタイムにフィードバック
しながら液体吐出用ヒーターの駆動条件を制御するよう
な試みもなされており、この場合、メモリに対する情報
の書き込みおよび読み出しを頻繁に行う必要があること
から、上記のような不揮発性メモリでは、近年のヘッド
の高速化に対応することが困難であった。
【0030】さらにまた、前述した素子基板に設けられ
た温度センサは主に素子基板の温度を測定することが目
的であったが、近年の液体吐出ヘッドの高密度化に伴っ
て、基板の温度よりもインク自身の温度や濃度等の状態
あるいは種類が記録に与える影響が大きくなってきた。
そのためのセンサ機能が高精度である必要性も生じてい
る。
【0031】また、図30を参照して説明した構成の液
体吐出ヘッドでは、可動部材は気泡の成長および消泡に
伴って変位するものの、可動部材を能動的に変位させる
ことはできなかった。したがって、可動部材の変位速度
は気泡の成長速度および消泡速度に依存し、可動部材を
それらの速度以上の速度で変位させることができなかっ
た。そのため、可動部材の応答性の向上を図ることがで
きず、ひいては液体吐出ヘッドによる記録速度の高速化
を図ることができなかった。
【0032】本発明は以上に鑑みてなされたものであ
り、その目的は、電流ノイズを十分に除去することがで
きるとともに低コスト化を図ることができる液体吐出ヘ
ッド、それに用いられる液体吐出ヘッド用基板、液体吐
出ヘッドの製造方法、液体吐出ヘッドの駆動方法、ヘッ
ドカートリッジ、その液体吐出ヘッドを有する液体吐出
装置、並びに記録ヘッドを提供することにある。
【0033】本発明のさらなる目的は、ヘッドの高速化
および低コスト化に対応することのできるメモリ構造を
持つ液体吐出ヘッド、それに用いられる液体吐出ヘッド
用基板、液体吐出ヘッドの製造方法、液体吐出ヘッドの
駆動方法、ヘッドカートリッジ、その液体吐出ヘッドを
有する液体吐出装置、並びに記録ヘッドを提供すること
にある。
【0034】本発明のさらなる目的は、吐出する液体の
状態を精度よく検出することによって、安定した吐出を
可能とする液体吐出ヘッド、それに用いられる液体吐出
ヘッド用基板、液体吐出ヘッドの製造方法、液体吐出ヘ
ッドの駆動方法、ヘッドカートリッジ、その液体吐出ヘ
ッドを有する液体吐出装置、並びに記録ヘッドを提供す
ることにある。
【0035】本発明のさらに別の目的は、記録ヘッド内
に配された可動部材の応答性の向上を図ることができ、
さらに記録速度の高速化を図ることができる液体吐出ヘ
ッド、ヘッドカートリッジ、その液体吐出ヘッドを有す
る液体吐出装置、および前記液体吐出ヘッドの駆動方法
を提供することにある。
【0036】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の液体吐出ヘッド用基板は、液体に吐出エネ
ルギーを与えることにより液体を吐出させる液体吐出ヘ
ッドに用いられ、電気エネルギーを前記吐出エネルギー
に変換するためのエネルギー変換素子が形成された半導
体基板を有する液体吐出ヘッド用基板において、上記半
導体基板に強誘電体材料よりなる機能素子が形成されて
いることを特徴とする。
【0037】また、本発明の液体吐出ヘッドは、互いに
接合されることで、液体を吐出するための複数の吐出口
とそれぞれ連通する複数の液流路を構成する第1および
第2の基板を有し、該第1および第2の基板の一方また
は両方に強誘電体材料よりなる機能素子が形成されてい
ることを特徴とする。
【0038】上記の液体吐出ヘッド用基板および液体吐
出ヘッドにおいて、上記機能素子は、上記半導体基板上
に少なくとも第1のバリア層、強誘電体材料膜、第2の
バリア層が積層されたものであることは好ましい構成で
ある。
【0039】すなわち、強誘電体材料膜は還元環境に置
かれた場合、還元されやすく寿命などの観点で耐性が十
分でなくなり、長期にわたって信頼性高くその機能を得
ることができなくなってしまう可能性がある。例えば、
液体吐出ヘッドを製造する場合に用いられる成膜法のC
VDにおいて、液体吐出ヘッドの保護膜(例えばSiN
等)を形成する際に発生する水素イオン等の雰囲気によ
る還元環境や、反応性のある膜、例えば通常使用される
Pt電極によって強誘電体材料膜を挟んだ場合、電極と
強誘電体材料膜との接触界面が還元環境となり、強誘電
体材料膜が還元されやすい。このような還元環境を回避
する目的で上述のようにバリア層によって挟持する構成
とすることはこのましい。
【0040】この場合、第1および第2のバリア層が、
上記液体吐出ヘッドを構成する発熱抵抗層やキャビテー
ション膜を含む酸化膜、窒化膜で構成されていることは
好ましい。
【0041】特に液体吐出に寄与する駆動素子としてヒ
ーターを利用するヘッド構成においては、発熱抵抗層を
TaSiN、TaNなどのヒーター材料をスパッタリン
グ成膜によって形成する工程を備えている。スパッタリ
ング成膜工程は、CVD成膜工程などで発生した水素イ
オンなどの発生がなく還元環境にならず強誘電体材料膜
を還元雰囲気に曝すことなく、発熱抵抗層や耐キャビテ
ーション膜形成時に強誘電体材料膜のバリア層を形成す
ることができる。また、発熱抵抗層や耐キャビテーショ
ン膜は記録ヘッドの特性として十分な耐久性を備えたも
のであり、このような膜を強誘電体材料膜のバリア層に
利用することは組成が安定しており耐久性の観点で好ま
しい。
【0042】また、発熱抵抗層や耐キャビテーション膜
の成膜と同時に強誘電体材料膜のバリア層を形成すれ
ば、個々の膜を別に成膜するより製造工程の工程数の削
減を図ることもでき、また製造装置も同じものを用いる
ことができるため装置の共有化による製造装置コストの
低減効果も得られる。すなわち、発熱抵抗層や耐キャビ
テーション膜の形成と同一の手法によって強誘電体材料
膜のバリア層を形成することができ、発熱抵抗層や耐キ
ャビテーション膜材料をそのままバリア層として活用で
きる。
【0043】なお、製造装置の共有化の観点に着目して
みると、例えば、発熱抵抗体としてTaSiNをスパッ
タリング成膜で形成する場合は、スパッタリング装置に
おけるヒーター層形成時にはTaSiターゲットをN雰
囲気中でスパッタリングするが、同じ装置を利用してタ
ーゲットをSiとしN雰囲気中でスパッタリングするこ
とで非常に安定なSiN膜(CVDでは成形することが
できない成膜工程に起因する水素を含まない膜)を強誘
電体材料膜のバリア層とすることができる。また、ヒー
ター層形成スパッタリング装置を用い、ターゲットをT
iなどの金属としN雰囲気中でスパッタリングしTiN
膜を強誘電体材料膜のバリア層とすることもできる。各
種の金属と窒素、酸素とを反応させ安定した膜を形成す
ることが可能である。このようにインクジェットヘッド
の成膜装置を流用し、ターゲットのみ交換することでも
有効なバリア層を形成することが可能であり、水素イオ
ンなどの還元環境に曝すことなく、安定な膜を形成でき
る。
【0044】ヒーター層の形成だけでなく、例えば耐キ
ャビテーション膜として用いられているTaなどの材料
をそのまま利用して耐キャビテーション膜の成膜装置を
利用してN雰囲気中でスパッタリングを行うことでバリ
ア層を形成することも可能である。成膜方法はスパッタ
リングでありCVDのように水素イオンの発生がなく強
誘電体材料膜が還元される環境に曝されることがなく、
安定した耐キャビテーション膜と同一の材料と窒素、酸
素を反応させてバリア層を構成するので安定したバリア
層を構成でき、スパッタリング装置のターゲットは耐キ
ャビテーション層と同一であり、同一装置を用いて同一
工程でバリア層を構成できるため量産性に優れ、製造工
程の簡略化を図れる効果を有する。
【0045】さらに、ヒーター層下部に配置される配線
層の上部層などに用いられるTiW、TaNなどアルミ
等の配線層に生じる熱によるヒロック防止膜をスパッタ
リングする、あるいは窒素、酸素雰囲気中でスパッタリ
ングすることで強誘電体材料膜のバリア層とすることも
可能である。成膜方法はスパッタリングでありCVDの
ように水素イオンの発生がなく強誘電体材料膜が還元さ
れる環境に曝されることがなく、安定したヒロック防止
膜と同一の材料、あるいは窒素、酸素を反応させてバリ
ア層を構成するので安定したバリア層を構成でき、スパ
ッタリング装置のターゲットはヒロック防止層と同一で
あり、同一装置を用いて同一工程でバリア層を構成でき
るため量産性に優れ、製造工程の簡略化を図れる。
【0046】なお、記録ヘッドのヒーター層がHfB2
など、ヒーター層とその保護層であるSiN、SiOな
どの層との密着性が比較的良くない場合に設けられるT
iなどの金属膜を密着層として介した構成の記録ヘッド
では、密着層を構成する金属を窒素、酸素雰囲気中で強
誘電体材料膜に対してスパッタリングして成膜すること
でバリア層とすることも可能である。成膜方法はスパッ
タリングでありCVDのように水素イオンの発生がなく
強誘電体材料膜が還元される環境に曝されることがな
く、安定した密着層と同一の材料と窒素、酸素を反応さ
せてバリア層を構成するので安定したバリア層を構成で
き、スパッタリング装置のターゲットは密着層と同一で
あり、同一装置を用いて同一工程でバリア層を構成でき
るため量産性に優れ、製造工程の簡略化を図れる。
【0047】なお、第1および第2のバリア層は、発熱
抵抗層や耐キャビテーション膜を含む酸化膜、窒化膜の
膜厚方向で強誘電体材料膜に近い部分の酸素、窒素の割
合を高くすることは好ましい。また、これらの酸素、窒
素の割合は、バリア層の膜厚方向で連続的に変化させて
も良いし、断続的に変化させても良い。
【0048】また、上記機能素子は、コンデンサ、不揮
発性メモリ、圧電素子、可動部材のいずれかの形態をと
るように構成してもよい。
【0049】特に、前記可動部材が、強誘電体材料から
なる薄膜と、該薄膜の両面に設けられた電極とを有し、
該両電極間に電圧が印加されると自由端が前記素子基板
側あるいは前記素子基板に対して反対の方向へ変位する
ように構成されていることは好ましい。
【0050】可動部材を強誘電体材料によって構成され
た本発明の液体吐出ヘッドによれば、可動部材を気泡の
圧力による変位とは独立して能動的に変位させることが
可能となる。そのため、気泡が発生する前や消泡する前
に可動部材を予め所定の方向に変位させることにより、
可動部材の応答性が向上するため、液体吐出ヘッドによ
る記録速度の高速化を図ることが可能となる。
【0051】また、前記薄膜は、Pb-Zrx-Ti1-x
3、(Pb,La)-(Zr,Ti)O3、Sr-Bi2-
Ta 25、SrTiO3、BaTiO3、あるいは(Ba
-Sr)TiO3からなる構成とすることが好ましい。
【0052】さらに、前記両電極のいずれか一方の表面
に、電界中に置かれても歪みを生じない材料で形成され
た変位補助層が設けられている構成とすることにより、
可動部材の変位量をより増加させることが可能となる。
【0053】上記機能素子を構成する強誘電体材料は比
誘電率が大きいことから、容量の大きなコンデンサを形
成することができ、基板に造り込む場合の配置スペース
も少なくて済む。本発明によれば、その機能素子が電流
ノイズ対策用のコンデンサとしてヘッドを構成する基板
に直接形成されるので、ヒーターにより近い部分で電流
ノイズ対策を行うことが可能となり、しかも、その配置
スペースも少なくて済む。加えて、容量も大きいことか
ら、前述の課題で述べたような電流増加に伴う電流ノイ
ズの問題にも対応することが可能である。
【0054】また、強誘電体材料を用いて構成される不
揮発性メモリは、従来用いられていたEEPROM、フ
ラッシュメモリに代表される不揮発性メモリと比較し、
高速性、低消費電力、高集積性などに優れていることが
知られている。本発明によれば、その特徴を有する強誘
電体材料を用いて構成される不揮発性メモリが用いられ
ているので、ヘッドの駆動制御、例えば各種センサをヘ
ッド内に配置してその検出結果をリアルタイムにフィー
ドバックしながら液体吐出用ヒーターの駆動条件を制御
する際の処理が高速になり、前述の課題で述べたような
近年のヘッドの高速化に対応することが可能となる。
【0055】また、強誘電体材料は圧電性を有すること
から圧電素子として利用することができる。本発明によ
れば、その強誘電体材料よりなる機能素子を圧電素子と
して用いて、液体中を伝わる圧力の変化を検出するよう
に構成されているので、その検出結果を用いることによ
り、より細かいヘッドの駆動制御が可能になる。
【0056】一方、強誘電体材料に電圧を印加すること
で、変位を起こすことを利用することもできる。具体的
にはその変位を利用して、インクを吐出させたり、オリ
フィスのメニスカスの制御等に利用できる。変位しやす
くするために、可動部材を設けてその部分に強誘電体材
料を設けることもできる。これはインクの圧力を検知し
て印字制御を行う構成とほとんど同じでできるため、組
み合わせて構成してもよい。また、変位を大きくするた
めに積層構造としてもよい。
【0057】上述した機能素子は、ヘッドを構成する基
板(素子基板、天板)を製造する過程において同時に造
り込むことができるので、機能素子を形成するために特
別な成膜装置を用いる必要はない。
【0058】上述の発明のうち、機能素子を構成する第
1および第2のバリア層が耐キャビテーション膜や発熱
抵抗層を含む酸化物、窒化物で構成されるものにおいて
は、ヘッドを構成する基板(素子基板、天板)を製造す
る過程において膜の兼用が可能であるので、製造工程数
およびコストを低く抑えることが可能である。
【0059】本発明のヘッドカートリッジは、上記本発
明の液体吐出ヘッドと、該液体吐出ヘッドに供給される
液体を保持する液体容器とを有する。
【0060】本発明の液体吐出記録装置は、上記本発明
の液体吐出ヘッドと、該液体吐出ヘッドから液体を吐出
させるための駆動信号を供給する駆動信号供給手段とを
有し、記録媒体に液体を吐出して記録を行うことを特徴
とする。
【0061】また、本発明の記録ヘッドは、記録素子及
び該記録素子とは異なる機能素子を備えた記録ヘッドに
おいて、前記機能素子は強誘電体材料を有して構成され
ていることを特徴とする。
【0062】また、本発明の液体吐出ヘッドの駆動方法
は、液滴を吐出するための吐出口と、該吐出口に液体を
供給するために前記吐出口に連通された液流路と、該液
流路に充填された前記液体に気泡を発生させるための気
泡発生素子が備えられた基板と、前記基板の前記気泡発
生素子に対面する位置に、前記基板との間に間隙を有
し、前記吐出口側を自由端として前記基板に支持固定さ
れた可動部材とを有し、前記可動部材が、強誘電体材料
からなる薄膜と、該薄膜の両面に設けられた電極とを有
し、該両電極間に電圧が印加されると自由端が前記素子
基板側あるいは前記素子基板に対して反対の方向へ変位
するように構成されており、前記気泡を発生させること
により生じる圧力によって、前記可動部材の自由端を前
記基板とは反対の方向に変位させて、前記圧力を前記吐
出口側に導くことにより前記吐出口から前記液体の液滴
を吐出させる液体吐出ヘッドの駆動方法であって、前記
発熱体の駆動と前記可動部材の駆動とを互いに独立して
行うことを特徴とする。
【0063】上記のように前記発熱体の駆動と前記可動
部材の駆動とを互いに独立して行うことにより、気泡が
発生する前や消泡する前に、可動部材を独立して能動的
に駆動して所定の方向に変位させることにより、可動部
材の応答性が向上し、液体吐出ヘッドによる記録速度の
高速化を図ることが可能となる。
【0064】さらに、前記発熱体を駆動させる前に、前
記可動部材を駆動させて前記可動部材の自由端を前記素
子基板に対して反対の方向に変位させる工程を有する構
成とすることが好ましい。これにより、吐出口から突出
していた液体の液面が液流路内に一定距離後退した状態
になるため、各液体吐出動作毎の液体吐出量を安定させ
ることが可能となる。加えて、上流側への液体の流れが
遮断されて、液体が下流側の吐出口へ効率的に送られる
ため、吐出口からの液体吐出効率が向上する。
【0065】さらには、前記発熱体を駆動させることに
よって前記液体に発生した気泡が消泡する前に、前記可
動部材を駆動させて前記可動部材の自由端を前記素子基
板側に変位させる工程を有する構成とすることにより、
吐出口側から液流路内に各吐出動作毎に同一の量の液体
が引き戻されるため、吐出口付近の液体が飛翔液体(液
滴)に追随するようにして尾引き形状となる現象や、主
液滴の後にサテライト液滴である小液滴が飛翔する現象
を無くすことが可能となる。さらに、上流側からの液体
のリフィルがより高速に行われる。
【0066】また、本発明の液体吐出ヘッドの製造方法
は、液体吐出エネルギー発生素子を備えるとともに強誘
電体材料によって構成される機能素子を備えた液体吐出
ヘッドの製造方法であって、前記液体吐出エネルギー発
生素子の形成工程と同一工程で前記強誘電体材料に対し
て積層されるバリア層を形成することを特徴とする。
【0067】なお、本発明の説明で用いる「上流」「下
流」とは、液体の供給源から気泡発生領域(または可動
部材)を経て、吐出口へ向かう液体の流れ方向に関し
て、またはこの構成上の方向に関しての表現として用い
られる。
【0068】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態について
図面を参照して説明する。
【0069】図1は、本発明の液体吐出ヘッド用基板に
形成される、強誘電体材料よりなる機能素子の概略断面
構造図である。この機能素子は、Pb(Zr、Ti)O
3[PZT:チタン酸ジルコン酸鉛]等からなる強誘電体
材料膜32の上下面に保護膜としてのバリア層33が形
成され、さらにその上下面に電極(不図示)が配されて
コンデンサ、FeRAM、圧電素子、可動部材などを構
成するものである。
【0070】上記機能素子をノイズ対策用コンデンサと
して用いた場合、強誘電材料は比誘電率が大きいため、
ヒータ駆動電流ノイズ対策に特に有効である。この場
合、容量が数μFのコンデンサを形成することができ
る。また、上記機能素子をFeRAMとして用いた場合
は、その記録速度は従来用いられていたEEPROM、
フラッシュメモリに代表される不揮発性メモリと比較し
て非常に速いことから、前述の課題で述べたような液体
吐出ヘッドの高速化に対応するメモリを構成することが
できる。さらにまた、上記機能素子を圧電素子として用
いた場合は、液体中を伝わる圧力の変化を検出すること
ができ、より安定した吐出制御が可能になる。加えて、
機能素子を可動部材として用いた場合は、インクの吐出
動作に対する可動部材の応答性を向上でき、記録速度の
高速化を図ることが可能になる。
【0071】以下、上述の液体吐出ヘッド用基板を備え
る液体吐出ヘッドの具体的な構成について説明する。
【0072】はじめに、本発明に適用可能な液体吐出ヘ
ッドの構造として、液体を吐出する複数の吐出口と、互
いに接合されることでそれぞれ吐出口と連通する複数の
液流路を構成するための第1の基板および第2の基板
と、電気エネルギーを液流路内の液体の吐出エネルギー
に変換するために各液流路内に配された複数のエネルギ
ー変換素子と、エネルギー変換素子の駆動条件を制御す
るための、機能が異なる複数の素子あるいは電気回路と
を有し、上記素子あるいは電気回路がその機能に応じて
第1の基板と第2の基板とに振り分けられている液体吐
出ヘッドの説明を行う。
【0073】本発明に適用可能な液体吐出ヘッドの一形
態の基本構成は、図28に示した通りであり、図28に
関する説明は前述した通りであるので、ここでの説明は
省略する。
【0074】以下に、液体吐出ヘッドの素子基板が半導
体ウェハプロセス技術を用いて形成される点について説
明する。
【0075】図2は、本形態の液体吐出ヘッドに用いら
れる素子基板の要部の断面図である。図2に示すよう
に、本形態の液体吐出ヘッドに用いられる素子基板1で
は、シリコン基板301の表面に、蓄熱層としての熱酸
化膜302および、蓄熱層を兼ねる層間膜303がこの
順番で積層されている。層間膜303としては、SiO
2膜またはSi34膜が用いられている。層間膜303
の表面に部分的に抵抗層304が形成され、抵抗層30
4の表面に部分的に配線305が形成されている。配線
305としては、Alまたは、Al-Si,Al-Cuな
どのAl合金配線が用いられている。この配線305、
抵抗層304および層間膜303の表面に、SiO2
またはSi34膜から成る保護膜306が形成されてい
る。保護膜306の表面の、抵抗層304に対応する部
分およびその周囲には、抵抗層304の発熱に伴う化学
的および物理的な衝撃から保護膜306を守るための耐
キャビテーション膜307が形成されている。抵抗層3
04表面の、配線305が形成されていない領域は、抵
抗層304の熱が作用する部分となる熱作用部308で
ある。
【0076】この素子基板1上の膜は半導体の製造技術
によりシリコン基板301の表面に順に形成され、シリ
コン基板301に熱作用部308が備えられている。
【0077】図3は、図2に示す素子基板1の主要素子
を縦断するように素子基板1を切断した模式的断面図で
ある。
【0078】図3に示すように、P型導電体であるシリ
コン基板301の表層にはN型ウェル領域422および
P型ウェル領域423が部分的に備えられている。そし
て、一般的なMOSプロセスを用いてイオンプラテーシ
ョンなどの不純物導入および拡散によって、N型ウェル
領域422にP-MOS420が、P型ウェル領域42
3にN-MOS421が備えられている。P-MOS42
0は、N型ウェル領域422の表層に部分的にN型ある
いはP型の不純物を導入してなるソース領域425およ
びドレイン領域426や、N型ウェル領域422の、ソ
ース領域425およびドレイン領域426を除く部分の
表面に厚さ数百Åのゲート絶縁膜428を介して堆積さ
れたゲート配線435などから構成されている。また、
N-MOS421は、P型ウェル領域423の表層に部
分的にN型あるいはP型の不純物を導入してなるソース
領域425およびドレイン領域426や、P型ウェル領
域423の、ソース領域425およびドレイン領域42
6を除く部分の表面に厚さ数百Åのゲート絶縁膜428
を介して堆積されたゲート配線435などから構成され
ている。ゲート配線435は、CVD法により堆積した
厚さ4000Å〜5000Åのポリシリコンから成るも
のである。これらのP-MOS420およびN-MOS4
21からC-MOSロジックが構成されている。
【0079】P型ウェル領域423の、N-MOS42
1と異なる部分には、電気熱変換素子駆動用のN-MO
Sトランジスタ430が備えられている。N-MOSト
ランジスタ430も、不純物導入および拡散などの工程
によりP型ウェル領域423の表層に部分的に備えられ
たソース領域432およびドレイン領域431や、P型
ウェル領域423の、ソース領域432およびドレイン
領域431を除く部分の表面にゲート絶縁膜428を介
して堆積されたゲート配線433などから構成されてい
る。
【0080】本形態では、電気熱変換素子駆動用のトラ
ンジスタとしてN-MOSトランジスタ430を用いた
が、複数の電気熱変換素子を個別に駆動できる能力を持
ち、かつ、上述したような微細な構造を得ることができ
るトランジスタであれば、このトランジスタに限られな
い。
【0081】P-MOS420とN-MOS421との間
や、N-MOS421とN-MOSトランジスタ430と
の間などの各素子間には、5000Å〜10000Åの
厚さのフィールド酸化により酸化膜分離領域424が形
成されており、その酸化膜分離領域424によって各素
子が分離されている。酸化膜分離領域424の、熱作用
部308に対応する部分は、シリコン基板301の表面
側から見て一層目の蓄熱層434としての役割を果た
す。
【0082】P-MOS420、N-MOS421および
N-MOSトランジスタ430の各素子の表面には、厚
さ約7000ÅのPSG膜またはBPSG膜などから成
る層間絶縁膜436がCVD法により形成されている。
熱処理により層間絶縁膜436を平坦化した後に、層間
絶縁膜436およびゲート絶縁膜428を貫通するコン
タクトホールを介して第1の配線層となるAl電極43
7により配線が行われている。層間絶縁膜436および
Al電極437の表面には、厚さ10000Å〜150
00ÅのSiO2膜から成る層間絶縁膜438がプラズ
マCVD法により形成されている。層間絶縁膜438の
表面の、熱作用部308およびN-MOSトランジスタ
430に対応する部分には、厚さ約1000ÅのTaN
0.8[hex]膜から成る抵抗層304がDCスパッタ法によ
り形成されている。抵抗層304は、層間絶縁膜438
に形成されたスルーホールを介してドレイン領域431
の近傍のAl電極437と電気的に接続されている。抵
抗層304の表面には、各電気熱変換素子への配線とな
る第2の配線層としての、Alの配線305が形成され
ている。
【0083】配線305、抵抗層304および層間絶縁
膜438の表面の保護膜306は、プラズマCVD法に
より形成された厚さ10000ÅのSi34膜から成る
ものである。保護膜306の表面に形成された耐キャビ
テーション膜307は、Taをターゲットとするスパッ
タリング法で形成される厚さ約2500ÅのTaなどの
膜から成るものである。
【0084】次に、素子基板および天板への回路や素子
の振り分け構成について説明する。
【0085】図4は、本形態の液体吐出ヘッドの回路構
成を説明するための図であり、同図(a)は素子基板の
平面図、同図(b)は天板の平面図である。なお、図4
(a)および(b)は、互いの対向面を表わしている。
【0086】図4(a)に示すように、素子基板1に
は、並列に配列された複数の発熱体2と、画像データに
応じてこれら発熱体2を駆動するドライバ11と、入力
された画像データをドライバ11に出力する画像データ
転送部12と、発熱体2の駆動条件を制御するために必
要な、液体の状態または特性を検出するセンサ13とが
設けられている。本形態のヘッドでは、センサ13は、
液流路7ごとの液体の状態または特性を検出するため
に、各発熱体2に対応して液流路7ごとに設けられてい
る。
【0087】画像データ転送部12は、シリアルに入力
される画像データを各ドライバ11にパラレルに出力す
るシフトレジスタ、およびシフトレジスタから出力され
るデータを一時記憶するラッチ回路で構成される。な
お、画像データ転送部12は、各発熱体2に個別に対応
して画像データを出力するものでもよいし、発熱体2の
並びを複数のブロックに分け、ブロック単位に対応して
画像データを出力するものでもよい。特に、1つのヘッ
ドについて複数のシフトレジスタを備え、記録装置から
のデータの転送を複数のシフトレジスタに振り分けて入
力するようにすることで、印字速度の高速化に容易に対
応することもできる。
【0088】一方、図4(b)に示すように、天板3に
は、前述したように液流路および共通液室を構成する溝
3a,3bが形成される他に、素子基板1に設けられた
センサ13を駆動するセンサ駆動部17と、センサ駆動
部17により駆動されたセンサからの出力結果に基づい
て発熱体2の駆動条件を制御する発熱体制御部16とが
設けられている。なお、天板3には、外部から共通液室
に液体を供給するために、共通液室に連通した供給口3
cが開口している。
【0089】さらに、素子基板1および天板3の接合面
の、互いの対向する部位にはそれぞれ、素子基板1に形
成された回路等と天板3に形成された回路等とを電気的
に接続するための接続用コンタクトパッド14,18が
設けられている。また、素子基板1には、外部からの電
気信号の入力端子となる外部コンタクトパッド15が設
けられている。素子基板1の大きさは天板3の大きさよ
りも大きく、外部コンタクトパッド15は、素子基板1
と天板3とを接合したときに天板3から露出する位置に
設けられている。
【0090】上記のように構成された素子基板1と天板
3とを位置合わせして接合すると、各液流路に対応して
発熱体2が配置されるとともに、それぞれの接続用パッ
ド14,18を介して素子基板1および天板3に形成さ
れた回路等が電気的に接続される。この電気的接続は例
えば、接続用パッド14,18に金バンプ等を載せて行
う方法があるが、それ以外の方法でもよい。このよう
に、素子基板1と天板3との電気的接続を接続用コンタ
クトパッド14,18によって行うことで、素子基板1
と天板3との接合と同時に、上述した回路同士の電気的
接続を行うことができる。素子基板1と天板3との接合
後に、液流路7の先端にオリフィスプレート4を接合
し、これにより液体吐出ヘッドが完成する。
【0091】次に、本発明の特徴である、電流ノイズ対
策用コンデンサ、不揮発性メモリ、圧電素子、可動部材
を上述のPZT等の強誘電体材料により構成した実施形
態をそれぞれ説明する。
【0092】<強誘電体材料を用いてコンデンサを構成
した例>図5は、本発明の一実施形態の液体吐出ヘッド
の素子基板に形成される回路素子の構成を示す図で、
(a)は素子基板を上面から見た場合の各回路素子のレ
イアウトを示す図、(b)は電源層とグランド層がオー
バーラップした部分の断面構造を示す図である。
【0093】図5(a)に示すように、素子基板1に
は、発熱体2(不図示)が複数配列されたヒーター列
2’およびこれらを駆動するためのドライバ11が形成
されるとともに、これら回路素子と接続される電源層3
0およびグランド(GND)層31が積層されている。
【0094】電源層30とGND層31とがオーバーラ
ップした部分(オーバーラップ部34)では、図5
(b)に示すように、電源層30とGND層31との間
に強誘電体材料膜32が形成されており、これによりコ
ンデンサを構成している。強誘電体材料膜32の電源層
30およびGND層31との界面には、それぞれバリア
層33が形成されている。このバリア層33を設ける理
由は以下のとおりである。
【0095】強誘電体材料は、水素との反応により還元
されて、強誘電性が著しく劣化してしまう。この還元性
雰囲気は、強誘電体材料膜を形成後に層間絶縁膜や、保
護膜を成膜する際に発生し易い。液体吐出ヘッド用基板
の形成においては、量産性やインクに対する保護性能の
観点で、層間絶縁膜や、保護膜としてプラズマCVDを
用いたSiN膜が使用されており、これはSiH4(シ
ラン),NH3(アンモニア)などの還元性雰囲気中で
行われる。その際には、水素プラズマが発生すると同時
に、膜中に水素を含有し易くなり、それらが強誘電体特
性の劣化に影響を与える。そこで、これを防止するた
め、バリア層33が形成されている。
【0096】上述のように構成される素子基板1の等価
回路の略図を図6に示す。この図6から分かるように、
上述のオーバーラップ部34に形成されたコンデンサ3
4’はヒータ電源ラインとGNDラインの間に挿入され
た構成となっている。このコンデンサ34’は、強誘電
材料膜を用いたことにより、限られたスペースに容量の
大きなコンデンサを構成することができる。この構成に
よれば、コンデンサ34’をヒーターにより近い部分に
形成することができ、ヒーター駆動電流ノイズはコンデ
ンサ34’で十分に除去されることになる。
【0097】先に述べた通り、基板素子1は図2および
図3に示した構造を有し、半導体プロセスを利用して各
回路素子が形成される。この製造過程において、コンデ
ンサ34’を素子基板1上に同時に造り込むことがで
き、これによりコストが大幅に削減される。また、この
場合、コンデンサ34’を構成する強誘電体材料膜32
の保護膜であるバリア層33を、図3に示した抵抗層3
04の発熱に伴う化学的および物理的な衝撃から保護膜
306を守るために設けられた耐キャビテーション膜3
07や抵抗層304を含む酸化膜、窒化膜で形成するこ
とで、さらにコスト削減を図ることができる。つまり、
強誘電体特性の劣化を防止するために、液体吐出ヘッド
用基板の製造プロセスを活用することにより、工程の増
加を防止し、コスト削減を図ることができる。
【0098】以上の点について、図7を参照してさらに
説明する。図7は熱作用部及びコンデンサ部の層構成を
示すものである。
【0099】図7に示される通り、熱作用部は基板上に
下から順に下部配線層601、配線層のヒロックを防止
するヒロック防止層602、層間膜603、発熱抵抗層
604、上部配線層605と積層されて構成されてい
る。一方、コンデンサ部は基板上に下から順に下部配線
層601が形成され、その上に熱作用部において配線層
のヒロックを防止するヒロック防止層602として形成
された層を上層に形成される強誘電体層の配線層に対す
る保護を目的としたバリア層602aとして配置され、
そしてその上層に強誘電体層606が配置され、その上
部に熱作用部において発熱抵抗層604として形成され
た層を下部の強誘電体層606の保護を目的としたバリ
ア層604aとして配置され、その上に上部配線層60
5が積層されて構成されている。実際には、この上に更
に保護膜や耐キャビテーション膜等が形成されるが、図
7では熱作用部とコンデンサ部を同一の工程で同時に形
成することを説明するものであり、それらの層は省略さ
れている。
【0100】熱作用部とコンデンサ部における各対応す
る層は、同一の工程で同時に形成されるものである。す
なわち、基板上に熱作用部を構成する目的で下部配線層
601を形成する。そして、配線層におけるヒロックを
防止する目的のヒロック防止層602をその上に積層す
る。そして、層間膜603を形成し、コンデンサ部を形
成する部分に対しては強誘電体材料層606を形成す
る。その後発熱抵抗層604を形成し、上部配線層60
5を形成する。このとき、強誘電体材料層606に対し
ては熱作用部を構成するヒロック防止層602が強誘電
体材料層606の下部のバリア層、発熱抵抗層604が
強誘電体材料層606の上部のバリア層として機能する
ことになり、記録ヘッドの熱作用部を構成する層、特に
ヒロック防止層602、発熱抵抗層604がそのままコ
ンデンサ部の強誘電体層の配線層に対するバリア層とし
て利用することができる。このように熱作用部の製造工
程をそのまま利用してコンデンサ部のバリア層を形成す
ることができる。
【0101】なお、強誘電体層606の形成は高温で行
われ処理される必要があるため、配線層に用いられる材
料としてはCu、Cu−Si、Pt、Ir、Ni、Au
などの金属やIrO2、RuO2などの酸化物からなる高
融点材料が使用されることが好ましい。特に、半導体素
子を形成した後の工程で熱作用部を構成する膜と同時に
成膜する場合には高温による配線層の損傷を防止する目
的から高融点材料が使用されることが好ましい。加え
て、強誘電体層606が配線層と直接接触することで還
元されて劣化されてしまうことを防止する目的で構成さ
れるバリア層の存在が一層有効となり、熱作用部の製造
と同時に形成されるような本発明の構成とすることはよ
り好ましい。
【0102】なお、液体吐出に寄与する駆動素子として
ヒーターを利用するヘッド構成においては、発熱抵抗層
604を、TaSiN、TaNなどのヒーター材料をス
パッタリング成膜によって形成する工程を備えている。
スパッタリング成膜工程は、CVD成膜工程などで発生
した水素イオンなどの発生がなく還元環境にならず強誘
電体材料膜を還元雰囲気に曝すことなく、発熱抵抗層6
04や耐キャビテーション膜形成時に強誘電体材料膜6
06のバリア層を形成することができる。また、発熱抵
抗層604や耐キャビテーション膜は液体吐出ヘッドの
特性として十分な耐久性を備えたものであり、このよう
な膜を強誘電体材料層606のバリア層に利用すること
は組成が安定しており耐久性の観点で好ましい。
【0103】また、発熱抵抗層604や耐キャビテーシ
ョン膜の成膜と同時に強誘電体材料膜606のバリア層
を形成すれば、個々の膜を別に成膜するより製造工程の
工程数の削減を図ることもでき、また製造装置も同じも
のを用いることができるため装置の共有化による製造装
置コストの低減効果も得られる。すなわち、発熱抵抗層
604や耐キャビテーション膜の形成と同一の手法によ
って強誘電体材料膜606のバリア層を形成することが
でき、発熱抵抗層604や耐キャビテーション膜材料を
そのままバリア層として活用できる。
【0104】なお、製造装置の共有化の観点に着目して
みると、例えば、発熱抵抗体としてTaSiNをスパッ
タリング成膜で形成する場合は、スパッタリング装置に
おけるヒーター層形成時にはTaSiターゲットをN雰
囲気中でスパッタリングするが、同じ装置を利用してタ
ーゲットをSiとしN雰囲気中でスパッタリングするこ
とで非常に安定なSiN膜(CVDでは成形することが
できない成膜工程に起因する水素を含まない膜)を強誘
電体材料膜606のバリア層とすることができる。ま
た、ヒーター層形成スパッタリング装置を用い、ターゲ
ットをTiなどの金属としN雰囲気中でスパッタリング
しTiN膜を強誘電体材料膜606のバリア層とするこ
ともできる。各種の金属と窒素、酸素とを反応させ安定
した膜を形成することが可能である。このようにインク
ジェット記録ヘッドの成膜装置を流用し、ターゲットの
み交換することでも有効なバリア層を形成することが可
能であり、水素イオンなどの還元環境に曝すことなく、
安定な膜を形成できる。
【0105】ヒーター層の形成だけでなく、例えば耐キ
ャビテーション膜として用いられているTaなどの材料
をそのまま利用して耐キャビテーション膜の成膜装置を
利用してN雰囲気中でスパッタリングを行うことでバリ
ア層を形成することも可能である。成膜方法はスパッタ
リングでありCVDのように水素イオンの発生がなく強
誘電体材料膜606が還元される環境に曝されることが
なく、安定した耐キャビテーション膜と同一の材料と窒
素、酸素を反応させてバリア層を構成するので安定した
バリア層を構成でき、スパッタリング装置のターゲット
は耐キャビテーション層と同一であり、同一装置を用い
て同一工程でバリア層を構成できるため量産性に優れ、
製造工程の簡略化を図れる効果を有する。
【0106】さらに、ヒーター層下部に配置される配線
層の上部層などに用いられるTiW、TaNなどアルミ
等の配線層に生じる熱によるヒロック防止膜602をス
パッタリングする、あるいは窒素、酸素雰囲気中でスパ
ッタリングすることで強誘電体材料膜606のバリア層
とすることも可能である。成膜方法はスパッタリングで
ありCVDのように水素イオンの発生がなく強誘電体材
料膜606が還元される環境に曝されることがなく、安
定したヒロック防止膜602と同一の材料、あるいは窒
素、酸素を反応させてバリア層を構成するので安定した
バリア層を構成でき、スパッタリング装置のターゲット
はヒロック防止層602と同一であり、同一装置を用い
て同一工程でバリア層を構成できるため量産性に優れ、
製造工程の簡略化を図れる。
【0107】なお、液体吐出ヘッドのヒーター層がHf
2など、ヒーター層とその保護層であるSiN、Si
Oなどの層との密着性が十分で良くない場合に設けられ
るTiなどの金属膜を密着層として介した構成の液体吐
出ヘッドでは、密着層を構成する金属を窒素、酸素雰囲
気中で強誘電体材料膜に対してスパッタリングして成膜
することでバリア層とすることも可能である。成膜方法
はスパッタリングであり、CVDのように水素イオンの
発生がなく強誘電体材料膜が還元される環境に曝される
ことがなく、安定した密着層と同一の材料と窒素、酸素
を反応させてバリア層を構成するので安定したバリア層
を構成でき、スパッタリング装置のターゲットは密着層
と同一であり、同一装置を用いて同一工程でバリア層を
構成できるため量産性に優れ、製造工程の簡略化を図れ
る。
【0108】なお、第1および第2のバリア層は、発熱
抵抗層604や耐キャビテーション膜を含む酸化膜、窒
化膜の膜厚方向で強誘電体材料膜606に近い部分の酸
素、窒素の割合を高くすることは好ましい。また、これ
らの酸素、窒素の割合は、バリア層の膜厚方向で連続的
に変化させても良いし、断続的に変化させても良い。
【0109】なお、ヒータが接続される電源層とロジッ
ク回路が接続される電源層が別々に形成される場合は、
コンデンサ34’と同様の構成のコンデンサを、ロジッ
ク回路の電源ラインとGNDラインとの間にも設けるこ
とが望ましい。
【0110】本形態では、コンデンサ34’は素子基板
1に直接形成されているが、コンデンサ34’を配置ス
ペースに余裕のある天板3側に形成するようにすれば、
設計上の自由度が向上する。この場合は、コンタクトパ
ッドを介した接続構造により、天板3に形成されたコン
デンサが素子基板1側に形成されたヒータまたはロジッ
ク回路の電源ラインとGNDラインとの間に接続される
ようにする必要がある。
【0111】<強誘電材料を用いて不揮発性メモリを構
成した例>図8は、本発明の一実施形態の液体吐出ヘッ
ドの素子基板に形成される回路素子の構成を示す図であ
る。
【0112】素子基板1には、発熱体2が配列されたヒ
ーター列2’と、発熱体2を駆動するドライバ11と、
発熱体2の駆動条件を制御するために必要な、液体の状
態または特性を検出するセンサ13と、センサ13の出
力をそれぞれモニタしその検出結果に応じて発熱体2へ
の印加エネルギーを制御する駆動制御回路36と、セン
サ13の検出結果に応じてランク分けされたコード値、
予め測定されている各発熱体2による液体吐出量特性
(一定温度で、所定のパルス印加における液体吐出量)
をヘッド情報として記憶し駆動制御回路36に出力する
FeRAM35と、センサ13を駆動するとともにその
出力である検出結果をFeRAM35へ記憶させるセン
サ処理部37とが設けられている。
【0113】駆動制御回路36は、パルスジェネレー
タ、バッファ等から構成される。センサ13としては、
液体の状態または特性として、液体の温度の変化、液体
の圧力、液体中に含まれる成分、または液体の水素イオ
ン濃度指数(PH)等を検出するセンサが用いられる。
【0114】FeRAM35は、前述の図1に示した構
成の機能素子より構成される強誘電体メモリである。強
誘電体メモリの一例として、『「Pb(Zr,Ti)O
3膜による強誘電体メモリの開発」、中村孝、応用物
理、第67巻、第11号(1998)』に開示されてい
る強誘電体メモリのセル構造を図9に示す。
【0115】この強誘電体メモリのセル構造は、図9
(a)に示すように、プレートライン(下部電極)35
2、強誘電体350、上部電極351を順次積層してな
る強誘電体キャパシタがビットライン353およびワー
ドライン354とともに半導体基板上に形成された構成
となっている。このセル構造を用いて、図9(b)に示
すような1T1C型セル、図9(c)に示すような2T
2C型セルを構成することができる。
【0116】上記のように構成された素子基板1と天板
は、その接合面において、互いの基板に形成された回路
等が接続用コンタクトパッドを介して接続される。この
ようにして素子基板1と天板とを位置合わせして接合す
ることで、液体吐出ヘッドが構成される。
【0117】以上の構成の液体吐出ヘッドでは、まず、
液体の状態がセンサ13により各液流路ごとに検出さ
れ、その結果がFeRAM35に記憶される。駆動制御
回路36は、そのFeRAM35に記憶されたデータに
応じて各発熱体2のプレヒートパルス幅を決定するとと
もに、入力画像データ信号に応じて各発熱体2の駆動パ
ルスを決定する。この駆動制御回路36で決定されたプ
レヒートパルス、及び予め決められたヒートパルスが発
熱体2に与えられると、発熱体32では、プレヒートさ
れた後、液体を発泡させるためのエネルギーが与えられ
る。このようにして、センサでの検出結果に応じてプレ
ヒート幅を制御することで、液体状態にかかわらず液体
の吐出量を各吐出口で一定にすることができる。
【0118】FeRAM35に記憶されるヘッド情報と
しては、上述した液体状態の他に、吐出する液体の種類
(液体がインクの場合には、インクの色等)も含めるこ
ともできる。液体の種類によってはその物性が異なり、
吐出特性が異なるからである。また、センサ13が複数
設けられる場合(例えば各ノズル単位に設けられる場
合)には、各センサの特性の固体差を補正するために、
各センサの特性をヘッド情報としてFeRAM35に予
め記憶しておき、駆動時にその情報を利用して駆動条件
を制御するようにしてもよい。これらのヘッド情報のF
eRAM35への記憶は、この液体吐出ヘッドの組立後
に不揮発的に行ってもよいし、この液体吐出ヘッドを搭
載した液体吐出装置の立ち上げ後に装置側から転送され
ることで行ってもよい。
【0119】本形態では、FeRAM35は素子基板1
に形成されているが、スペースに余裕のある天板側に形
成するようにしてもよい。一例として、FeRAMが天
板側に形成された液体吐出ヘッドの構成を図10に示
す。
【0120】図10に示す例では、発熱体132に発泡
エネルギーを与える前に発熱体132をプレヒート(液
体を発泡させない程度の予備的な加熱)するもので、液
体の温度を検出するセンサ(図10では不図示)での検
出結果に応じて、発熱体132のプレヒートパルス幅を
制御する。
【0121】図10(a)に示すように、素子基板13
1には、一列に配列された発熱体132と、ドライバと
して機能するパワートランジスタ141と、パワートラ
ンジスタ141の駆動を制御するためのAND回路13
9と、パワートランジスタ141の駆動タイミングを制
御するための駆動タイミング制御ロジック回路138
と、シフトレジスタおよびラッチ回路で構成される画像
データ転送回路142と、液体の温度を検出するセンサ
とが、半導体プロセスを用いて形成されている。センサ
は、各液流路ごと、すなわち発熱体132ごとに設けら
れている。
【0122】駆動タイミング制御ロジック回路138
は、装置の電源容量を少なくする目的で、全ての発熱体
132を同時に通電するのではなく発熱体132を分割
駆動して時間をずらして通電するためのものであり、こ
の駆動タイミング制御ロジック回路138を駆動するイ
ネーブル信号は、外部コンタクトパッドであるイネーブ
ル信号入力端子145k〜145nから入力される。
【0123】また、素子基板131に設けられる外部コ
ンタクトパッドとしては、イネーブル信号入力端子14
5k〜145nの他に、発熱体132の駆動電源の入力
端子145a、パワートランジスタ141の接地端子1
45b、発熱体132を駆動するエネルギーを制御する
ために必要な信号用の入力端子145c〜145e、ロ
ジック回路の駆動電源端子145f、接地端子145
g、画像データ転送回路142のシフトレジスタに入力
されるシリアルデータの入力端子145iおよびこれに
同期するシリアルクロック信号の入力端子145h、ラ
ッチ回路に入力されるラッチクロック信号の入力端子1
45jがある。
【0124】一方、図10(b)に示すように、天板1
33には、発熱体132の駆動タイミングを決定すると
ともにセンサ143からの出力をモニタしその結果に応
じて画発熱体132のプレヒート幅を決定する駆動信号
制御回路146と、各発熱体に対応するプレヒート幅を
選択するための選択データをヘッド情報として記憶し駆
動信号制御回路146に出力するFeRAM149とが
形成されている。このFeRAM149は上述の図8の
FeRAMと同様の構造のものである。
【0125】また、接続用コンタクトパッドとして、素
子基板131および天板132には、外部から上記発熱
体132を駆動するエネルギーを制御するために必要な
信号用の入力端子145c〜145eと駆動信号制御回
路146とを接続する端子144b〜144d,148
b〜148d、駆動信号制御回路146の出力をAND
回路139の一方の入力端子に入力させるための端子1
48a等が設けられている。
【0126】以上の構成において、まず、液体の温度が
センサにより各液流路ごとに検出され、その結果がFe
RAM149に記憶される。駆動信号制御回路146で
は、FeRAM149に記憶された温度データおよび選
択データに応じて、各発熱体132のプレヒートパルス
幅を決定し、端子148a,144aを介してAND回
路139に出力する。一方、シリアルで入力された画像
データ信号は、画像データ転送回路142のシフトレジ
スタに記憶され、ラッチ信号によりラッチ回路にラッチ
されて、駆動タイミング制御回路138を介してAND
回路139に出力される。
【0127】画像データ信号がAND回路139に出力
されることで、駆動信号制御回路146で決定されたプ
レヒートパルス、及び予め決められたヒートパルスが発
熱体132に与えられる。これにより発熱体132は、
プレヒートされた後、液体を発泡させるためのエネルギ
ーが与えられる。このようにして、センサでの検出結果
に応じてプレヒート幅を制御することで、温度状態にか
かわらず液体の吐出量を各吐出口で一定にすることがで
きる。
【0128】なお、図10で説明した液体吐出ヘッドで
は、さらに、抵抗値センサとして発熱体132と同様に
して素子基板131に形成されたランクヒータ143
と、天板133に形成された、ランクヒータ143を駆
動するためのセンサ駆動回路147とを有する。そし
て、センサ駆動回路147とランクヒータ143とを接
続する端子144g,144h,148g,148h
が、素子基板131及び天板133に形成されている。
これは、ランクヒータ143で検出された抵抗値に基づ
いて発熱体132に印加するパルスのパルス幅を決定す
るためのものであり、駆動信号制御回路146は、ラン
クヒータ143からの出力をモニタし、その結果に応じ
て発熱体132への印加エネルギーを制御する。また、
FeRAM149は、ランクヒータ143で検出された
抵抗値データあるいは抵抗値からランク分けされたコー
ド値、および予め測定されている各発熱体132による
液体吐出量特性(一定温度で、所定のパルスを印加した
ときの液体吐出量)をヘッド情報として記憶し、駆動信
号制御回路146に出力する。
【0129】ランクヒータ143を利用した発熱体13
2への印加エネルギーの制御について説明する。まず、
ランクヒータ143の抵抗値が検出され、その結果がF
eRAM149に記憶される。ランクヒータ143は発
熱体132と同様にして形成されたものであるので、そ
の抵抗値は実質的には発熱体132と同じであり、ラン
クヒータ143の抵抗値を発熱体132の抵抗値とみな
す。駆動信号制御回路で146では、FeRAM149
に記憶された抵抗値データ及び液体吐出量特性に応じて
発熱体132の駆動パルスの立ち上がりデータ及び立ち
下がりデータを決定し、端子148a,144aを介し
てAND回路139に出力する。これによりヒートパル
スのパルス幅が決定され、画像データが、画像データ転
送回路142から駆動タイミング制御回路138を介し
てAND回路139に出力されることで、駆動信号制御
回路146で決定したパルス幅で発熱体132への通電
が行われる。その結果、発熱体132には、ほぼ一定の
エネルギーが印加される。
【0130】<強誘電材料を用いて圧力センサを構成し
た例>本出願人は、図30で示したように、液流路内
に、気泡の圧力伝搬方向を下流側へ導く可動部材を設け
た液体吐出ヘッドを提案している。ここでは、可動部材
に強誘電材料より構成された圧力センサを設けた液体吐
出ヘッドの例を説明する。
【0131】図11は、本発明の一実施形態である液体
吐出ヘッドの液流路方向に沿った断面図である。
【0132】本形態の液体吐出ヘッドは、前述の図28
に示した構成の液体吐出ヘッドに、発熱体2によって生
成される気泡の圧力伝搬方向を下流側へ導く可動部材6
を設けた構成となっている。図30におけるものと同等
な基本構成を有する可動部材6は、液流路7を吐出口5
に連通した第1の液流路7aと、発熱体2を有する第2
の液流路7bとに分けるように、発熱体2に対面して配
置された片持梁状の薄膜であり、窒化シリコンや酸化シ
リコンなどのシリコン系の材料で形成される。この可動
部材6は、液体の吐出動作によって共通液室8から可動
部材6を経て吐出口5側へ流れる大きな流れの上流側に
支点6aを持ち、この支点6aに対して下流側に自由端
6bを持つように、発熱体2に面した位置に発熱体2を
覆うような状態で発熱体2から所定の距離を隔てて配さ
れている。この発熱体2と可動部材6との間が気泡発生
領域10となる。
【0133】上記構成に基づき、発熱体2を発熱させる
と、可動部材6と発熱体2との間の気泡発生領域10の
液体に熱が作用し、これにより発熱体2上に膜沸騰現象
に基づく気泡が発生し、成長する。この気泡の成長に伴
う圧力は可動部材6に優先的に作用し、可動部材6は図
11に破線で示されるように、支点6aを中心に吐出口
5側に大きく開くように変位する。可動部材6の変位も
しくは変位した状態によって、気泡の発生に基づく圧力
の伝搬や気泡自身の成長が吐出口5側に導かれ、吐出口
5から液体が吐出する。
【0134】つまり、気泡発生領域10上に、液流路7
内の液体の流れの上流側(共通液室8側)に支点6aを
持ち下流側(吐出口5側)に自由端6bを持つ可動部材
6を設けることによって、気泡の圧力伝搬方向が下流側
へ導かれ、気泡の圧力が直接的に効率よく吐出に寄与す
ることになる。そして、気泡の成長方向自体も圧力伝搬
方向と同様に下流方向に導かれ、上流より下流で大きく
成長する。このように、気泡の成長方向自体を可動部材
によって制御し、気泡の圧力伝搬方向を制御すること
で、吐出効率や吐出力または吐出速度等の根本的な吐出
特性を向上させることができる。
【0135】一方、気泡が消泡工程に入ると、可動部材
6の弾性力との相乗効果で気泡は急速に消泡し、可動部
材6も最終的には図11に実線で示した初期位置に復帰
する。このとき、気泡発生領域10での気泡の収縮体積
を補うため、また、吐出された液体の体積分を補うため
に、上流側すなわち共通液室8側から液体が流れ込み、
液流路7への液体の充填(リフィル)が行われるが、こ
の液体のリフィルは、可動部材6の復帰作用に伴って効
率よく合理的かつ安定して行われる。
【0136】上記可動部材6には、可動部材6の変位に
より液体を発泡させた際の気泡の圧力を検出する圧力セ
ンサ素子200が設けられている。圧力センサ素子20
0は、前述の図1に示した構成と同様の、強誘電材料よ
りなる圧力センサである。この圧力センサ素子200で
は、可動部材6のひずみに応じて分極電荷が変化し、該
変化量が液体に作用する圧力の変化として検出される。
この圧力センサ素子200の検出結果を、前述の図4に
示した発熱体制御部および図10に示した駆動制御回路
にフィードバックして発熱体を制御することにより、吐
出制御を安定して行うことができる。
【0137】次に、気泡発生領域10に面して設けられ
た、圧力センサを有する可動部材6について、図12お
よび図13を参照して説明する。
【0138】図12(a)は圧力センサを有する可動部
材6を備えたノズルを素子基板1に垂直に流路方向に沿
って切断した断面図であり、図12(b)は図12
(a)において発熱体2で液体に発生した気泡に伴って
変位する可動部材6の様子を示している。また、図13
は各液流路に配設された可動部材6の圧力センサに対す
る電気配線を示すために素子基板1に平行な方向に沿っ
て切断した断面図である。
【0139】図12に示すように可動部材6内に、各電
極201にリード配線202と繋がった電極201が両
端に形成された圧力センサ素子200が作り込まれてい
る。本例では、センサ素子が効率的に屈曲するように、
圧力センサ素子200の上部の可動部材を図12のよう
に一部除去してある。また図13に示すように、各液流
路における可動部材6の圧力センサ素子200の両端の
電極201のうち、一方の電極はこれと同じ他の圧力セ
ンサ素子の一方の電極と共に共通配線202aに繋がっ
ており、もう一方の電極は各可動部材に個別に設けられ
たセグメント配線202bに繋がっている。
【0140】次に、フォトリソグラフィプロセスを利用
した、圧力センサを有する可動部材6の製造方法につい
て説明する。
【0141】図14及び図15は、図12及び図13に
示した可動部材の液体吐出ヘッドへの製造方法の一例を
説明するための図であり、図14及び図15では、図1
1及び図12に示した液流路7の流路方向に沿った断面
が示されている。図14及び図15に基づいて説明する
製造方法では、素子基板1上に可動部材6を形成してな
るものと、天板に流路側壁を形成してなるものとを接合
することで、図11に示した構成の液体吐出ヘッドを製
造する。従って、この製造方法では、可動部材6が作り
込まれた素子基板1に天板を接合する前に、その天板に
は流路側壁が作り込まれる。
【0142】まず、図14(a)では、素子基板1の発
熱体2側の面全体に、発熱体2との電気的な接続を行う
ための接続用パッド部分を保護するための第1の保護層
としてのTiW膜76をスパッタリング法によって厚さ
約5000Å形成する。
【0143】次に、図14(b)では、TiW膜76の
表面に、間隙形成部材71aを形成するためのAl膜を
スパッタリング法によって厚さ約4μm形成する。間隙
形成部材71aは、後述する図15(c)の工程におい
て、SiN膜72aがエッチングされる領域までに延在
されている。
【0144】形成されたAl膜を、周知のフォトリソグ
ラフィプロセスを用いてパターニングすることで、その
Al膜の、可動部材6の支持固定部に対応する部分のみ
を除去し、TiW膜76の表面に間隙形成部材71aを
形成する。従って、TiW膜76表面の、可動部材6の
支持固定部に対応する部分が露出することになる。この
間隙形成部材71aは、素子基板1と可動部材6との間
の間隙を形成するための、Al膜からなるものである。
間隙形成部材71aは、図11に示した発熱体2と可動
部材6との間の気泡発生領域10に対応する位置を含
む、TiW膜76の表面の、可動部材6の支持固定部に
対応する部分を除く部分全てに形成されている。従っ
て、この製造方法では、TiW膜76の表面の、流路側
壁に対応する部分にまで間隙形成部材71aが形成され
ている。
【0145】この間隙形成部材71aは、後述するよう
にドライエッチングにより可動部材6を形成する際のエ
ッチングストップ層として機能する。これは、TiW膜
76や、素子基板1における耐キャビテーション膜とし
てのTa膜、および抵抗体上の保護層としてのSiN膜
が、液流路7を形成するために使用するエッチングガス
によりエッチングされてしまうからであり、それらの層
や膜のエッチングを防止するために、このような間隙形
成部材71aを素子基板1上に形成する。これにより、
可動部材6を形成するためにSiN膜のドライエッチン
グを行う際にTiW膜76の表面が露出することがな
く、そのドライエッチングによるTiW膜76および、
素子基板1内の機能素子の損傷が間隙形成部材71aに
よって防止される。
【0146】次に、図14(c)では、間隙形成部材7
1aの表面全体および、TiW膜76の、露出した面全
体に、プラズマCVD法を用いて、可動部材6を形成す
るための材料膜である厚さ約2.5μmのSiN膜72
aを、間隙形成部材71aを被覆するように形成する。
【0147】次に、SiN膜72a上の圧力センサ素子
200が形成される部分に、周知の半導体プロセスを用
いて、Ta、Ti等からなる第1および第2のバリア層
をスパッタリング法によって形成し、Pb(Zr,T
i)O3からなる誘電体材料膜をスパッタリング法ある
いはCVD法によって形成し、前述の図1に示したよう
に積層された圧電素子膜200aを形成する。
【0148】次に、図15(a)に示すように、圧電素
子膜200aの両端部に対してそれぞれ、Alもしくは
Cu/Wでリード配線202a、202bをパターニン
グする。続いて、図15(b)では、SiN膜72aの
表面全体に、プラズマCVD法を用いて、可動部材6を
形成するための材料膜である厚さ約2.0μmのSiN
膜72bを、ポリシリコン膜200a及びリード配線2
02a,202bを被覆するように形成する。
【0149】次に、SiN膜72bの表面に、スパッタ
リング法によりAl膜を厚さ約6100Å形成した後、
形成されたAl膜を、周知のフォトリソグラフィプロセ
スを用いてパターニングし、SiN膜72b表面の、可
動部材6に対応する部分に第2の保護層としてのAl膜
(不図示)を残す。但し、後述のドライエッチングの際
に圧電素子膜200aの一部が露出されるように、圧電
素子膜200a上のSiN膜72bの表面の一部には前
記第2の保護層としてのAl膜(不図示)は残さない。
この第2の保護層としてのAl膜は、可動部材6を形成
するためにSiN膜72a及び72bにドライエッチン
グを行う際の保護層(エッチングストップ層)すなわち
マスクとなる。
【0150】そして、図15(c)では、誘電結合プラ
ズマを使ったエッチング装置を用い、前記第2の保護層
をマスクにしてSiN膜72a及び72bをパターニン
グすることで、そのSiN膜72a及び72bの残った
部分で構成される可動部材6を形成する。そのエッチン
グ装置ではCF4とO2との混合ガスを用いており、Si
N膜72a及び72bをパターニングする工程では、図
11に示したように可動部材6の支持固定部が素子基板
1に直接固定されるようにSiN膜72aの不要な部分
を除去する。可動部材6の支持固定部と素子基板1との
密着部の構成材料には、パッド保護層の構成材料である
TiW、および素子基板1の耐キャビテーション膜の構
成材料であるTaが含まれる。
【0151】次に、図15(d)では、酢酸、りん酸お
よび硝酸の混酸を用いて、可動部材6に形成したAl膜
からなる前記第2の保護層や、Al膜からなる間隙形成
部材71aを溶出して除去し、素子基板1上に可動部材
6を作り込む。その後、過酸化水素を用いて、素子基板
1に形成したTiW膜76の、気泡発生領域10および
パッドに対応する部分を除去する。
【0152】以上のようにして、圧力センサ素子を有す
る可動部材6が設けられた素子基板1が製造される。こ
こでは、図11に示したように可動部材6の支持固定部
が素子基板1に直接固定されているものを製造する場合
で説明したが、この製造方法を適用して、可動部材が台
座部を介して素子基板に固定された液体吐出ヘッドを製
造することもできる。この場合、図14(b)に示した
間隙形成部材71aを形成する工程の前に、可動部材
の、自由端と反対側の端部を素子基板に固定するための
台座部を素子基板の発熱体側の面上に形成する。この場
合でも、台座部と素子基板との密着部の構成材料には、
パッド保護層の構成材料であるTiW、および素子基板
の耐キャビテーション膜の構成材料であるTaが含まれ
る。
【0153】その後、他方の素子基板3である天板側に
おいては、電気的な接続用パッドが形成された表面上
に、金バンプ等を形成し、凸電極部を形成する。そし
て、図示しないが、天板側の凸電極と、素子基板1側の
凹電極間で、金属の共晶を利用した接合を行った。この
際、両側の金属種は、同種金属を採用した方が接合時の
温度・圧力を低減でき、かつ、接合強度を高めることが
できる。
【0154】最後に、エキシマレーザを用いて、フェイ
ス全面に設置したコンタクトマスクを介して、オリフィ
ス5を形成することで液体吐出ヘッドが完成する。
【0155】上述した製法例では、流路側壁9を天板3
側に形成しておく場合を説明したが、フォトリソグラフ
ィプロセスを用いて、素子基板1への可動部材6の形成
と同時に、流路側壁9を素子基板1側に形成してもよ
い。
【0156】上記圧力センサ素子からの出力をモニター
するための回路の一例を図16に示す。図16に示す回
路では、記録液発泡時の圧力による圧電素子膜200a
の変位に伴う起電力を電圧計206によって測定するこ
とにより、可動部材6の変位量及び発泡の圧力が計測可
能となる。この回路において、Vout端子の電圧は圧電
素子膜200aの起電力である。よって、このVout
力を前述の素子基板1に形成されたFeRAMにフィー
ドバックする。この場合も、駆動信号制御回路で、この
フィードバックされた信号をもとに駆動パルスの切り替
えや選択を行うことで常に安定した発泡圧力を得ること
ができる。
【0157】上述のように、良好な画像品位を得るため
に発熱体2の駆動を制御しても、共通液室内に気泡が発
生し、これが液体のリフィルとともに液流路内に移動し
てくると、共通液室内には液体が存在するにもかかわら
ず、液体が吐出されないという不具合が発生する場合が
ある。
【0158】そこで、これに対処するために、各液流路
内の可動部材6に設けた圧力センサで発泡状態の異常が
検出されたらその結果を後述の吸引回復操作を制御する
回路に出力させる処理回路を素子基板1又は天板3に設
けてもよい。そして、この処理回路からの出力に基づ
き、後述の液体吐出記録装置側のインク吸引手段で、液
体吐出ヘッド内の液体を吐出口から強制的に吸引するよ
うにすれば、液流路内の気泡を除去することができる。
【0159】なお、本形態では、圧力センサ素子200
は可動部材に造り込まれているが、発熱体2の膜沸騰に
伴って発生する気泡によって液体に作用する圧力の変
化、インクの流れの淀み等、検出対象に応じて天板また
は素子基板の最適な場所に設けることが望ましい。例え
ば、図17に示すように、液流路7内に、強誘電材料よ
り構成される圧力センサ素子200’を設けてもよい。
この場合、圧力センサ素子200’は、液体の流れを妨
げないような構造とすることが望ましい。
【0160】上述した本形態の液体吐出ヘッドによれ
ば、近年の液体吐出ヘッドの高密度化に伴って生じてい
た以下のような従来の問題も解決される。
【0161】液体吐出ヘッドの高密度化により液体の吐
出量が少なくなっており、これに伴って、従来では大き
な問題とはならなかったようなインクの状態等に起因す
る吐出量の差が、吐出量のばらつきとして目立つように
なってきていた。このため、従来の液体吐出ヘッドの温
度センサの配置では、より正確なインクの状態等を検出
することが困難であった。その理由は、従来の液体吐出
ヘッドの温度センサは、電気熱変換体、駆動制御部とと
もに、半導体ウェハプロセス技術を用いて素子基板の表
面に平面的に形成されていたものであるが、素子基板の
表面近傍は、インクの流れが淀み易く、また、電気熱変
換体からの熱の影響により大きな温度勾配をもつためで
あると考えられる。本形態によれば、そのようなインク
の流れの淀み、電気熱変換体からの熱の影響等を受ける
となく、より細かな液体吐出制御を行うことができる。
【0162】圧力センサーについて説明したが、圧電素
子である強誘電材料に電圧を印加することで、変位を起
こすことを利用することもできる。具体的にはその変位
を利用して、インクを吐出させたり、オリフィスのメニ
スカスの制御等に利用できる。変位しやすくするため
に、弁構造を設けてその部分に強誘電材料を設けること
もできる。これはインクの圧力を検知して印字制御を行
う構成とほとんど同じでできるため、組み合わせて構成
してもよい。また、変位を大きくするために積層構造と
してもよい。<強誘電材料を用いて可動部材を構成した
例>次に、強誘電材料を用いて可動壁を構成した実施形
態について図面を参照して説明する。
【0163】図2は、本発明の液体吐出ヘッドにおける
素子基板のインク路に相当する部分の断面図を示すもの
である。図2において、符号301はシリコン基板、符
号302は蓄熱層であるところの熱酸化膜を示す。符号
303は蓄熱層を兼ねる層間膜であるところのSiO2
膜またはSi34膜、符号304は抵抗層、符号305
はAlまたはAl-Si、Al-Cu等のAl合金配線、
符号306は保護膜であるところのSiO2膜またはS
34膜を示す。符号307は抵抗層304の発熱に伴
う化学的・物理的衝撃から保護膜306を守るための耐
キャビテーション膜を示す。また、符号308は、電極
配線305が形成されていない領域の抵抗層304の熱
作用部を示す。
【0164】これらの駆動素子は、半導体技術によりS
i基板に形成され、熱作用部が同一基板に更に形成され
る。
【0165】図3に、液体吐出ヘッドにおける素子基板
の主要素子を縦断するように切断したときの模式的断面
図を示す。
【0166】P導電体のSi基板301に、一般的なM
OSプロセスを用いイオンプラテーション等の不純物導
入および拡散によりN型ウェル領域422にP-MOS
420、p型ウェル領域423にN-MOS421が構
成される。P-MOS420およびN-MOS421は、
それぞれ厚さ数百Åのゲート絶縁膜428を介して40
00Å以上5000Å以下の厚さにCVD法で堆積した
poly-Siによるゲート配線435およびN型ある
いはP型の不純物導入をしたソース領域425、ドレイ
ン領域426等で構成され、それらP-MOSとN-MO
SによりC-MOSロジックが構成される。
【0167】また、素子駆動用N-MOSトランジスタ
は、やはり不純物導入および拡散等の工程によりP-ウ
ェル基板中にドレイン領域431、ソース領域432お
よびゲート配線433等で構成される。
【0168】なお、本形態では、N-MOSトランジス
タを使った構成で説明しているが、複数の発熱体を個別
に駆動できる能力を持ち、かつ、上述したような微細構
造を達成できる機能を持つトランジスタであれば、これ
に限らない。
【0169】また、各素子間は、500Å以上1000
0Å以下の厚さのフィールド酸化により、酸化膜分離領
域423を形成し、素子分離されている。このフィール
ド酸化膜は、熱作用部308下においては一層目の蓄熱
層434として作用する。
【0170】各素子が形成された後、層間絶縁膜436
が約7000Åの厚さにCVD法によるPSG(Phospho
Silicate Glass)、BPSG(Boron-doped Phospho Sil
icate Glass)膜等で堆積され、熱処理により平坦化処理
等をされてからコンタクトホールを介し、第1の配線層
となるAl電極437により配線が行われている。その
後、プラズマCVD法によるSiO2膜等の層間絶縁膜
438を10000Å以上15000以下の厚さに堆積
し、更にスルーホールを介して、抵抗層304として約
1000Åの厚さのTaN0.8,hex膜をDCスパッタ法
により形成した。その後、各発熱体への配線となる第2
の配線層Al電極を形成した。
【0171】次に、保護膜306は、プラズマCVDに
よるSi34膜が、約10000Åの厚さに成膜され
る。最上層には、耐キャビテーション膜107がアモル
ファスタンタルによって約2500Åの厚さに堆積され
る。耐キャビテーション膜307の材料としては、金属
膜よりも導電性の弱いアモルファス金属を選択した。ま
た、耐キャビテーション膜307の材料として、更に導
電性が弱く、比誘電率が比較的高い絶稼材料である窒化
物(BN,TiN)や炭化物(WC,TiC,BC)等
を用いてもよい。
【0172】図18は本発明の液体吐出ヘッドの一実施
形態の基本的な構造を説明するための、液流路方向に沿
った断面図、図19は図18に示した液体吐出ヘッドの
一部を破断して示す斜視図である。
【0173】本実施形態の液体吐出ヘッドは、液体に気
泡を発生させるための熱エネルギーを与える気泡発生素
子である複数個(図18では1つのみ示す)の発熱体2
が並列に設けられた素子基板1と、この素子基板1上に
接合された天板3を有する。
【0174】素子基板1は、シリコン等の基体上に絶縁
および蓄熱を目的とした酸化シリコン膜または窒化シリ
コン膜を成膜し、その上に、発熱体2を構成する電気抵
抗層および配線電極をパターニングしたものである。こ
の配線電極から電気抵抗層に電圧を印加し、電気抵抗層
に電流を流すことで発熱体2が発熱する。
【0175】天板3は、各発熱体2に対応した複数の液
流路7および各液流路7に液体を供給するための共通液
室8を構成するためのもので、天井部分から各発熱体2
の間に延びる流路側壁9が一体的に設けられている。天
板3はシリコン系の材料で構成され、液流路7および共
通液室8のパターンをエッチングで形成したり、シリコ
ン基板上にCVD等の公知の成膜方法により窒化シリコ
ン、酸化シリコン等の流路側壁9となる材料を堆積した
後、液流路7の部分をエッチングして形成することがで
きる。
【0176】天板3の先端面には壁部が設けられてお
り、この壁部には、各液流路7に対応しそれぞれ液流路
7を介して共通液室8に連通する複数の吐出口5が形成
されている。
【0177】さらに、この記録ヘッドには、液流路7を
第1の液流路7aと第2の液流路7bとに分けるように
配置された片持梁状の可動部材6が設けられている。可
動部材6は、強誘電体薄膜6aと、その両面に設けられ
た電極6bと、上側の電極6bの表面に設けられた変位
補助層としての上部膜6cとを有している。上部膜6c
は、電界中に置かれても歪みを生じない材料であるSi
NやSiO2等によって形成されている。なお、この変
位補助層は下側の電極6bの表面に設けられていてもよ
い。
【0178】可動部材6は、液体の吐出動作によって共
通液室8から可動部材6の上方を経て吐出口5側へ流れ
る大きな流れの上流側であって、可動部材6の素子基板
1との支持固定部の付近に支点6dを有し、さらに、こ
の支点6dに対して下流側に自由端6eを持つように、
素子基板1上に配置されている。なお、発熱体2の上方
が気泡発生領域10となる。
【0179】なお、ここで、「上流」および「下流」と
は、液体の供給源から気泡発生領域10(あるいは可動
部材6)の上方を経て、吐出口5へ向かう液体の流れ方
向に関して、又はこの構成上の方向に関しての表現とし
て表されている。
【0180】次に、素子基板1および天板3への回路や
素子の振り分け構成について説明する。
【0181】図4は、図18に示した液体吐出ヘッドの
回路構成を説明するための図であり、同図(a)は素子
基板の平面図、同図(b)は天板の平面図である。な
お、図4(a)および(b)は、互いの対向面を表わし
ている。
【0182】図4(a)に示すように、素子基板1に
は、並列に配列された複数の発熱体2と、画像データに
応じてこれら発熱体2を駆動するドライバ11と、入力
された画像データをドライバ11に出力する画像データ
転送部12と、発熱体2の駆動条件を制御するために必
要なパラメータを測定するセンサ13とが設けられてい
る。
【0183】画像データ転送部12は、シリアルに入力
される画像データを各ドライバ11にパラレルに出力す
るシフトレジスタ、およびシフトレジスタから出力され
るデータを一時記憶するラッチ回路で構成される。な
お、画像データ転送部12は、各発熱体2に個別に対応
して画像データを出力するものでもよいし、発熱体2の
並びを複数のブロックに分け、ブロック単位に対応して
画像データを出力するものでもよい。特に、1つのヘッ
ドについて複数のシフトレジスタを備え、記録装置から
のデータの転送を複数のシフトレジスタに振り分けて入
力するようにすることで、印字速度の高速化に容易に対
応することもできる。
【0184】センサ13としては、発熱体2の近傍の温
度を測定する温度センサや、発熱体2の抵抗値をモニタ
するための抵抗センサ等が用いられる。
【0185】噴射される液滴の吐出量を考えた場合、そ
の吐出量は主に液体の発泡体積に関係する。液体の発泡
体積は、発熱体2およびその周辺の温度によって変化す
る。そこで、温度センサによって発熱体2および周辺の
温度を測定し、その結果に応じて液体吐出のためのヒー
トパルスを印加する前に、液体を吐出しない程度の小さ
いエネルギーのパルス(プレヒートパルス)を加え、そ
のプレヒートパルスのパルス幅や、その出力タイミング
を変更することにより発熱体2および周辺の温度を調整
して、一定の液滴を吐出するようにして画像品位を維持
することが行われる。
【0186】また、発熱体2における、液体を発泡させ
るのに必要なエネルギーを考えた場合、放熱条件が一定
であれば、そのエネルギーは発熱体2の必要な単位面積
当たりの投入エネルギーと発熱体2の面積の積で表わさ
れる。これにより、発熱体2の両端にかかる電圧、発熱
体2を流れる電流およびパルス幅を、その必要なエネル
ギーが得られる値に設定すればよい。ここで発熱体2に
印加される電圧については、液体吐出装置本体の電源に
より電圧を供給することにより、ほぼ一定に保持するこ
とができる。一方、発熱体2を流れる電流については、
発熱体2の抵抗値が、素子基板1の製造過程における発
熱体2の膜厚のばらつき等により、ロットにより、ある
いは素子基板1によって抵抗値が異なってくる。従っ
て、印加されるパルス幅が一定で、発熱体2の抵抗値が
設定よりも大きい場合はその流れる電流値が小さくな
り、発熱体2に投入されるエネルギー量が不足してしま
い、液体を適正に発泡させることができなくなる。逆
に、発熱体2の抵抗値が小さくなると、同じ電圧を印加
しても電流値が設定値よりも大きくなる。この場合に
は、発熱体2により過剰なエネルギーが発生され、発熱
体2の損傷や短寿命につながるおそれがある。そこで、
抵抗センサによって発熱体2の抵抗値を常にモニタし、
その値により電源電圧やヒートパルス幅を変化させ、発
熱体2にほぼ一定のエネルギーが印加されるようにする
方法もある。
【0187】一方、図4(b)に示すように、天板3に
は、前述したように液流路および共通液室を構成する溝
3a,3bが形成される他に、素子基板1に設けられた
センサ13を駆動するセンサ駆動部17と、センサ駆動
部17により駆動されたセンサからの出力結果に基づい
て発熱体2の駆動条件を制御する発熱体制御部16とが
設けられている。なお、天板3には、外部から共通液室
に液体を供給するために、共通液室に連通した供給口3
cが開口している。
【0188】さらに、素子基板1および天板3の接合面
の、互いの対向する部位にはそれぞれ、素子基板1に形
成された回路等と天板3に形成された回路等とを電気的
に接続するための接続用コンタクトパッド14,18が
設けられている。また、素子基板1には、外部からの電
気信号の入力端子となる外部コンタクトパッド15が設
けられている。素子基板1の大きさは天板3の大きさよ
りも大きく、外部コンタクトパッド15は、素子基板1
と天板3とを接合したときに天板3から露出する位置に
設けられている。
【0189】ここで、素子基板1および天板3への回路
等の形成手順の一例について説明する。
【0190】素子基板1については、まず、シリコン基
板上に、上記ドライバ11、画像データ転送部12およ
びセンサ13を構成する回路を半導体ウェハプロセス技
術を用いて形成する。次いで、前述したようにして発熱
体2を形成し、最後に、接続用コンタクトパッド14お
よび外部コンタクトパッド15を形成する。
【0191】天板3については、まず、シリコン基板上
に、上記発熱体制御部16およびセンサ駆動部17を構
成する回路を半導体ウェハプロセス技術を用いて形成す
る。次いで、上述したように、成膜技術およびエッチン
グによって、液流路や共通液室を構成する溝3a,3b
および供給口3cを形成し、最後に、接続用コンタクト
パッド18を形成する。
【0192】上記のように構成された素子基板1と天板
3とを位置合わせして接合すると、各液流路に対応して
発熱体2が配置されるとともに、それぞれの接続用パッ
ド14,18を介して素子基板1および天板3に形成さ
れた回路等が電気的に接続される。この電気的接続は例
えば、接続用パッド14,18に金バンプ等を載せて行
う方法があるが、それ以外の方法でもよい。このよう
に、素子基板1と天板3との電気的接続を接続用コンタ
クトパッド14,18によって行うことで、素子基板1
と天板3との接合と同時に、上述した回路同士の電気的
接続を行うことができる。素子基板1と天板3との接合
後に、液流路7の先端にオリフィスプレート4を接合
し、これにより液体吐出ヘッドが完成する。
【0193】なお、図18に示したように本実施形態の
液体吐出ヘッドは可動部材6を有しているが、この可動
部材6についても、上述のようにして素子基板に回路等
を形成した後、フォトリソグラフィプロセスを用いて素
子基板1上に形成される。可動部材6の形成工程につい
ては以下に説明する。
【0194】このようにして得られた液体吐出ヘッドを
ヘッドカートリッジや液体吐出装置に搭載する場合に
は、図20に示すように、プリント配線基板23が搭載
されたベース基板22上に固定し、液体吐出ヘッドユニ
ット20とされる。図20において、プリント配線基板
23には、液体吐出装置のヘッド制御部と電気的に接続
される複数の配線パターン24が設けられ、これら配線
パターン24は、ボンディングワイヤー25を介して外
部コンタクトパッド15と電気的に接続される。外部コ
ンタクトパッド15は素子基板1のみに設けられている
ので、液体吐出ヘッド21と外部との電気的接続は、従
来の液体吐出ヘッドと同様にして行うことができる。こ
こでは、外部コンタクトパッド15を素子基板1に設け
た例について説明したが、素子基板1ではなく天板3の
みに設けてもよい。
【0195】以上説明したように、発熱体2の駆動や制
御のための各種回路等を素子基板1と天板3とに両者の
電気的接合を考慮した上で振り分けることで、これらの
回路等が1つの基板に集中しなくなるので、液体吐出ヘ
ッドの小型化が可能になる。また、素子基板1に設けら
れた回路等と天板3に設けられた回路等との電気的接続
を接続用コンタクトパッド14,18によって行うこと
で、ヘッド外部への電気的接続部の数が減り、信頼性の
向上、部品点数の削減、ヘッドのより一層の小型化を実
現することができる。
【0196】また、上述した回路等を素子基板1と天板
3とに分散させることで、素子基板1の歩留まりを向上
させることができ、その結果、液体吐出ヘッドの製造コ
ストを下げることができる。さらに、素子基板1および
天板3を、シリコンという同一材料をベースとした材料
で構成しているため、素子基板1と天板3との熱膨張係
数が等しくなる。その結果、発熱体2の駆動により素子
基板1および天板3が熱膨張しても両者にずれは生じな
くなり、発熱体2と液流路7との位置精度が良好に維持
される。
【0197】本実施形態では上述の各回路等をその機能
に応じて振り分けているが、この振り分けの基準となる
考え方について以下に述べる。
【0198】各発熱体2に個別またはブロック単位に電
気配線接続で対応する回路は、素子基板1に形成する。
図4に示した例では、ドライバ11および画像データ転
送部12がこれに相当する。各発熱体2には駆動信号が
パラレルに与えられるので、その信号分だけ配線の引き
回しが必要となる。従って、このような回路を天板3に
形成すると、素子基板1と天板3との接続数が多くなり
接続不良が発生する可能性が高くなるが、素子基板1に
形成することで、発熱体2と上記回路との接続不良が防
止される。
【0199】制御回路などアナログ的な部分は、熱の影
響を受け易いことから、発熱体2が設けられていない基
板すなわち天板3に設ける。図4に示した例では、発熱
体制御部16がこれに相当する。
【0200】センサ13は、必要に応じて素子基板1に
設けてもよいし、天板3に設けてもよい。例えば抵抗セ
ンサである場合には、抵抗センサは素子基板1上に設け
ないと意味がなかったり測定精度が低下したりするため
素子基板1に設ける。また、温度センサの場合には、ヒ
ータ駆動回路の異常による温度上昇などを検知する場合
には素子基板1上に設けることが好ましいが、後述する
インクを介しての温度上昇によりインクの状態を判断し
たい場合には、天板3、或いは素子基板1と天板3との
双方に設けることが好ましい。
【0201】その他、各発熱体2に個別にもブロック単
位にも電気配線接続で対応していない回路、必ずしも素
子基板1に設けなくてもよい回路、天板3に設けても測
定精度には影響しないセンサ等は、素子基板1および天
板3のいずれか一方に集中しないように必要に応じて素
子基板1または天板3に形成する。図4に示した例で
は、センサ駆動部17がこれに相当する。
【0202】上記の考え方に基づいて各回路やセンサ等
を素子基板1と天板3とに設けることで、素子基板1と
天板3との電気的接続数をできるだけ少なくしつつも、
各回路やセンサ等をバランスよく振り分けることができ
る。
【0203】次に、本実施形態の液体吐出ヘッドの可動
部材の製造方法について、図21を参照して説明する。
図21は、図18に示した液体吐出ヘッドにおける可動
部材の製造工程を示す、液流路方向に沿った断面図であ
る。
【0204】まず、図21(a)に示すように、素子基
板1の耐キャビテーション層501の上に、可動部材6
を変位させる駆動信号を与えるための一方の電極配線と
なる、Cu-Siからなる膜厚が3000Åの配線層5
02を形成する。そして、所望の電極配線が形成するた
めに、配線層502パターニングおよびエッチングを行
う。次に、この配線層502の上に、SiN膜からなる
膜厚が5000Åの中間層503を形成する。
【0205】次に、同図(b)に示すように、素子基板
1の上面全体に、CVD法によって温度350℃の条件
でPSG膜504を形成する。PSG膜504の膜厚は
1〜20μmであり、この膜厚は図18に示した素子基
板1と可動部材6とのギャップに相当する。PSG膜5
04の膜厚をこのような範囲とすることにより、記録ヘ
ッドにおける液流路全体のバランス上、可動部材6によ
る液体吐出効率向上の効果が顕著に現れる。
【0206】次に、PSG膜504をパターニングする
ために、PSG膜504の表面にスピンコート等により
レジストを塗布した後、露光および現像を行い、そのレ
ジストのうちの可動部材6が固定される部分に相当する
部分を除去する。続いて、PSG膜504のうちのレジ
ストで覆われていない部分を、バッファードフッ酸によ
るウェットエッチングによって除去する。その後、PS
G膜504の表面に残っているレジストを、酸素プラズ
マによるアッシングによって、あるいは素子基板1をレ
ジスト除去剤に浸すことによって除去する。これによ
り、PSG膜504の一部が素子基板1の表面に残さ
れ、後の工程で可動部材6と素子基板1との空間に相当
する型部材が作り込まれる。
【0207】次に、同図(c)に示すように、SiNか
らなる膜厚が5000Åの保護層505を形成し、上述
した中間層503および保護層505のパターニングお
よびエッチングを行う。
【0208】次いで、同図(d)に示すように、可動部
材6の駆動信号を与えるためのCu-Siからなる膜厚
が3000Åの電極層506をスパッタリング法により
形成し、同様にパターニングおよびエッチングを行う。
これにより、電極層506が配線層502に接続され、
下側の電極6b(図18参照)が形成される。
【0209】次に、次に形成する強誘電体層507を電
極層506から保護するためのバリア層510をスパッ
タリングによって形成した後、同図(e)に示すよう
に、RFスパッタリング法により、Pb(Zr0.5Ti
0.5)O3からなる膜厚が1μmの強誘電体層507を形
成する。次いで、成膜された強誘電体層507のパター
ニングおよびエッチングを行うことにより、強誘電体層
507を可動部材6に相当する形状に形成する。
【0210】続いて、強誘電体層507上に電極層50
8に対する保護層としてのバリア層511をスパッタリ
ングによって形成した後、同図(f)に示すように、可
動部材6の駆動信号を与えるもう一方の上側の電極6b
を成す電極層508を、Cu-Siによって膜厚が30
00Åとなるように形成する。次に、電極層508を保
護するために、SiNからなる膜厚が3000Åの保護
層509を形成する。次に、可動部材6の変位をより大
きくするために、SiNからなる膜厚が6000Åの上
部膜510を形成する。
【0211】最後に、素子基板1と可動部材6との間の
気泡発生領域10(図18参照)に相当する部分を形成
するために、型部材として残っているPSG膜504を
バッファードフッ酸によるウェットエッチングによって
除去する。これにより、同図(g)に示すように、素子
基板1と可動部材6との間にギャップが形成される。
【0212】以上の工程により、本実施形態の可動部材
6が作成される。
【0213】ここで、本実施形態の液体吐出ヘッドの可
動部材の他の製造方法について、図22を参照して説明
する。図22は、本製造方法に用いられるECRプラズ
マCVD装置を示す概略図である。
【0214】本製造方法では、可動部材6の強誘電体薄
膜6aを(Ba-Sr)TiO3で構成し、ECRプラズ
マCVD法を用いて形成する。これ以外は、図21を参
照して説明した製造方法と同様に行う。
【0215】ECRプラズマCVDによって形成される
強誘電体薄膜6aの材料には、Ba(DPM)2[bis-di
pivaloylmethanate barium]、Sr(DPM)2、Ti
(O-i-C374およびO2が用いられる。Ba(DP
M)2およびSr(DPM)2は、それぞれ融点に近い高
温で、図22に示すようにArガスをキャリアとして装
置のチャンバー内に供給される。また、Ti(O-i-C
374は、キャリアガスであるArガスによってハブ
リングすることにより、装置のチャンバー内に供給され
る。一方、O2ガスも装置のチャンバー内に供給され
る。
【0216】次に、チャンバー内に2.54GHzのマ
イクロ波を導入して、これらの材料をプラズマ化させ
る。これにより、これらの材料はチャンバー内に配置さ
れた基板の表面に到達し、強誘電体材料から成る強誘電
体薄膜6aが形成される。
【0217】なお、上記では、可動部材6の強誘電体薄
膜6aをスパッタリング法あるいはECRプラズマCV
D法を用いて形成する方法について説明した。しかし、
強誘電体薄膜6aの形成はこれらの製法に限られず、こ
れらの他にもプラズマCVD法、熱CVD法、MOCV
D(Molecular Organic CVD)法等を用いて形成すること
が可能である。
【0218】また、強誘電体薄膜6aの材料には、上記
に示したものの他に、PZT:Pb-Zrx-Ti1-x
3、SBT:Sr-Bi2-Ta25、SrTiO3、B
aTiO3、PLZT:(Pb,La)-(Zr,Ti)
3等を用いることができる。強誘電体薄膜6aの組成
は、膜厚方向に関して、連続的に変化させてもよいし、
断続的に変化させてもよい。
【0219】[本形態の液体吐出ヘッドの液体吐出の基
本原理]次に、本発明のような液体吐出ヘッドによる液
体吐出の基本槻念について、図23を参照して具体的に
説明する。
【0220】図23は、本発明の液体吐出ヘッドによる
吐出方法を説明するための、流路方向の断面図である。
【0221】図23に示すように、吐出口5は液流路7
の端部域に配置され、可動部材6は吐出口5の上流側に
配置されている。吐出口5に直接連通している液流路7
内には、共通液室8から供給される液体が満たされてい
る。可動部材6は、可動部材6に設けられた上下の電極
6b間に電圧を印加することにより、強誘電体薄膜6a
に発生する歪み力によって変位可能である。特に本実施
形態では、液体の流れ方向に関して、上下の電極6b間
に電圧を印加すると強誘電体薄膜6aの長さが伸縮する
のに対し、上部膜6cの長さは電極6b間への電圧の印
加にかかわらず一定であるため、薄膜6aと上部膜6c
との間に生じる長さの差によって可動部材6に歪み力が
発生し、これによって可動部材6を大きく変位させるこ
とができるようになっている。
【0222】可動部材6は、電極6b間に電圧を印加す
ると薄膜6aが収縮して素子基板1側へ変位し、また、
両電極6b間に上記の場合とは正負が逆の電圧を印加す
ると薄膜6aが伸長して天板3側へ変位する。また、可
動部材6は、気泡発生領域10に発生した気泡の成長お
よび収縮に伴っても、天板3側あるいは素子基板1側へ
変位可能である。
【0223】まず最初に、図23(a)に示す初期状態
では、液体自身が有している表面張力により、液体が吐
出口5から少し突出した状態になっている。
【0224】次に、両電極間6bに電圧を印加すること
により強誘電体薄膜6aが収縮し、同図(b)に示すよ
うに、可動部材6が素子基板1側へ変位する。それに伴
って、吐出口5から突出していた液体の液面が液流路7
内に一定距離後退した状態になる。これにより、各液体
吐出動作毎の液体吐出量を安定させることが可能とな
る。
【0225】同図(c)では、発熱体2に熱発生エネル
ギーが与えられ、気泡発生領域10に気泡50が生じる
直前に、可動部材6の両電極6b間に同図(b)の場合
とは逆の電位をかけることにより、強誘電体薄膜6aを
逆方向に歪ませることで、可動部材6を天板3側に変位
させておく。その後、成長した気泡50は、直前に変位
し後方(上流側)の障壁となっている可動部材6の所で
止まっており、発生した圧力波によって流れを持った液
体は、可動部材6よりも後方へは流れないようになって
いる。
【0226】つまり、液体の加熱発泡に先立って、両電
極6b間に上記とは正負が逆の電圧を印加し、可動部材
6を予め天板3側に変位させておくことが好ましい。こ
れにより、上流側への液体の流れが遮断され、液体を下
流側の吐出口5へ効率的に送ることができ、吐出口5か
らの液体吐出効率を向上させることができる。
【0227】発熱体2の表面全体に発生した気泡が急速
に成長していくと膜状となり、その後、発生初期のきわ
めて高い圧力による気泡の膨張を続けていくと、同図
(c)に示す気泡50のように最大発泡径まで成長す
る。
【0228】次に、飛翔液体(液滴)が吐出口5におけ
る液体表面から離別する瞬間に、両電極6b間に当初と
正負が同じ電圧を印加することにより、同図(d)に示
すように可動部材6を素子基板1側に変位させる。この
作用により、吐出口5側から液流路7内に各吐出動作毎
に同一の量の液体が引き戻される。これにより、吐出口
5付近の液体が飛翔液体(液滴)に追随するようにして
尾引き形状となる現象や、主液滴の後にサテライト液滴
である小液滴が飛翔する現象を無くすことができる。さ
らに、上流側からの液体のリフィルがより高速に行われ
る。
【0229】また、同図(c)と(d)とに示す状態の
間において、両電極6b間に当初と正負が同じ電圧を印
加することにより、同図(c)に示す状態から同図
(d)に示す状態へ至る時間、すなわち可動部材6が天
板3側へ最大に変位した状態から可動部材6が素子基板
1側に変位するまでの時間を短くすることができ、液体
吐出周波数を向上させることが可能となる。
【0230】最後に、可動部材6が自身の弾性力で元の
位置に戻ると、液体吐出ヘッドは再び初期状態となる。
【0231】図24は、図23で示した本発明の吐出原
理を実施するために、発熱体2や可動部材6内に設けら
れた電極6b等に入力する信号のタイミングチャートを
示している。
【0232】本実施形態では、まず最初に、VALVE
信号をハイレベル(以下、「Hレベル」という。)にし
て、弁である可動部材6をGNDレベルにする。そし
て、プレヒート信号を印加すると、弁がヒータである発
熱体2側に変位し、吐出口におけるメニスカスを後退さ
せる。その後、プレヒート信号の印加を終了させた後
に、VALVE信号をローレベル(以下、「Lレベル」
という。)にして弁の誘電体膜6aの電荷をディスチャ
ージさせ、弁をGNDレベルに設定することにより、弁
を元の位置に戻す。
【0233】次に、メインヒート信号を印加させること
で吐出口5から液滴を吐出させる。このとき、弁は気泡
の後方成長を止める働きをする。
【0234】次に、VALVE信号をHレベルにして、
弁をGNDレベルにする。そして、プレヒート信号を印
加すると、弁がヒータ側に変位し、液流路への液体のリ
フィル速度を促進させる。その後、VALVE信号をL
レベルにして、弁を元の位置に戻す。
【0235】以上、本発明の基本的な構成についての実
施形態を説明したが、以下に、上述した回路等の具体的
な例について説明する。
【0236】〈発熱体への印加エネルギーを制御する
例〉図25は、センサ出力に応じて発熱体への印加エネ
ルギーを制御する例の素子基板および天板の回路構成を
示す図である。
【0237】図25(a)に示すように、素子基板13
1には、一列に配列された発熱体132と、ドライバと
して機能するパワートランジスタ141と、パワートラ
ンジスタ141の駆動を制御するためのAND回路13
9と、パワートランジスタ141の駆動タイミングを制
御するための駆動タイミング制御ロジック回路138
と、シフトレジスタおよびラッチ回路で構成される画像
データ転送回路142と、発熱体132の抵抗値を検出
するセンサとしての吐出ヒータ用ランクヒータ143と
が形成されている。
【0238】駆動タイミング制御ロジック回路138
は、装置の電源容量を少なくする目的で、全ての発熱体
132を同時に通電するのではなく発熱体132を分割
駆動して時間をずらして通電するためのものであり、こ
の駆動タイミング制御ロジック回路138を駆動するイ
ネーブル信号は、外部コンタクトパッドであるイネーブ
ル信号入力端子145k〜145nから入力される。
【0239】また、素子基板131に設けられる外部コ
ンタクトパッドとしては、イネーブル信号入力端子14
5k〜145nの他に、発熱体132の駆動電源の入力
端子145a、パワートランジスタ141の接地端子1
45b、発熱体132を駆動するエネルギーを制御する
ために必要な信号用の入力端子145c〜145e、ロ
ジック回路の駆動電源端子145f、接地端子145
g、画像データ転送回路142のシフトレジスタに入力
されるシリアルデータの入力端子145iおよびこれに
同期するシリアルクロック信号の入力端子145h、ラ
ッチ回路に入力されるラッチクロック信号の入力端子1
45jがある。
【0240】一方、図25(b)に示すように、天板1
33には、吐出ヒータ用ランクヒータ143を駆動する
ためのセンサ駆動回路147と、吐出ヒータ用ランクヒ
ータ143からの出力をモニタしその結果に応じて発熱
体132への印加エネルギーを制御するための駆動信号
制御回路146と、吐出ヒータ用ランクヒータ143で
検出された抵抗値データあるいは抵抗値からランク分け
されたコード値、および予め測定されている各発熱体1
32による液体吐出量特性(一定温度で、所定のパルス
印加における液体吐出量)をヘッド情報として記憶し駆
動信号制御回路146に出力するメモリ149とが形成
されている。
【0241】また、接続用コンタクトパッドとして、素
子基板131および天板132には、吐出ヒータ用ラン
クヒータ143とセンサ駆動回路147とを接続する端
子144g,144h,148g,148h、外部から
上記発熱体132を駆動するエネルギーを制御するため
に必要な信号用の入力端子145c〜145eと駆動信
号制御回路146とを接続する端子144b〜144
d,148b〜148d、駆動信号制御回路146の出
力をAND回路139の一方の入力端子に入力させるた
めの端子148a等が設けられている。
【0242】以上の構成において、まず、発熱体132
の抵抗値が吐出ヒータ用ランクヒータ143で検出さ
れ、その結果がメモリ149に記憶される。駆動信号制
御回路146では、メモリ149に記憶された抵抗値デ
ータおよび液体吐出量特性に応じて発熱体132の駆動
パルスの立ち上がりデータおよび立ち下がりデータを決
定し、端子148a,144aを介してAND回路13
9に出力する。一方、シリアルで入力された画像データ
は、画像データ転送回路142のシフトレジスタに記憶
され、ラッチ信号によりラッチ回路にラッチされて、駆
動タイミング制御回路138を介してAND回路139
に出力される。これにより、立ち上がりデータおよび立
ち下がりデータに応じてヒートパルスのパルス幅が決定
され、このパルス幅で発熱体132への通電が行われ
る。その結果、発熱体132にはほぼ一定のエネルギー
が印加される。
【0243】上述の説明では、吐出ヒータ用ランクヒー
タ143を抵抗センサとして説明したが、例えば、素子
基板131の温度あるいは発熱体132の蓄熱の程度を
検知するための温度センサとし、この温度センサでの検
出結果に応じてプレヒートパルス幅を制御することもで
きる。
【0244】この場合には、液体吐出装置の電源が投入
された後、予め測定されている液体吐出量特性と、吐出
ヒータ用ランクヒータ143で検出された温度データに
応じて、駆動信号制御回路146は各発熱体132のプ
レヒート幅を決定する。メモリ149には、各発熱体1
32に対応するプレヒート幅を選択するための選択デー
タが記憶されており、実際にプレヒートを行う際に、メ
モリ149に記憶されている選択データに従ってプレヒ
ート信号が選択され、これに応じて発熱体132がプレ
ヒートされる。このようにして、温度状態にかかわらず
液体の吐出量が各吐出口で一定になるようにプレヒート
パルスを設定して印加することができる。なお、プレヒ
ート幅を決定する選択データの保存は、例えば液体吐出
装置の起動時等に一度だけ行えばよい。
【0245】図25に示した例では、1つの吐出ヒータ
用ランクヒータ143を設けた例を説明したが、センサ
として、抵抗センサおよび温度センサの2つのセンサを
設け、それぞれの出力に応じてヒートパルスおよびプレ
ヒートパルスの双方を制御することで、画像品位をより
向上させることもできる。
【0246】さらに、メモリ149に記憶されるヘッド
情報としては、上述した発熱体の抵抗値データ等の他
に、吐出する液体の種類(液体がインクの場合には、イ
ンクの色等)も含めることもできる。液体の種類によっ
てはその物性が異なり、吐出特性が異なるからである。
これらのヘッド情報のメモリ149への記憶は、この液
体吐出ヘッドの組立後に不揮発的に行ってもよいし、こ
の液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出装置の立ち上げ後
に装置側から転送されることで行ってもよい。
【0247】また、図25に示した例では、吐出ヒータ
用ランクヒータ143を素子基板131に設けている
が、吐出ヒータ用ランクヒータ143が温度センサであ
る場合には、天板133に設けてもよい。メモリ149
についても、素子基板131側のスペースが許せは、天
板133ではなく素子基板131に設けてもよい。
【0248】上述のように、良好な画像品位を得るため
に発熱体132の駆動を制御しても、共通液室内に気泡
が発生し、これが液体のリフィルとともに液流路内に移
動してくると、共通液室内には液体が存在するにもかか
わらず、液体が吐出されないという不具合が発生する場
合がある。
【0249】そこで、これに対処するために、詳細は後
述するが、各液流路内(特に発熱体32の近傍)での液
体の有無を検出するセンサを設け、さらに、このセンサ
で液体がないことが検出されたらその結果を外部に出力
させる処理回路を天板133に設けてもよい。そして、
この処理回路からの出力に基づき、液体吐出装置側で、
液体吐出ヘッド内の液体を吐出口から強制的に吸引する
ようにすれば、液流路内の気泡を除去することができ
る。上記の液体の有無を検出するセンサとしては、液体
を介しての抵抗値の変化により検出するものや、液体が
存在しない場合の発熱体の異常昇温を検出するものを用
いることができる。
【0250】次に、上記に説明した液体吐出ヘッドが搭
載された液体吐出ヘッドカートリッジを、図26を参照
して概略説明する。図26は、前述した液体吐出ヘッド
が搭載された液体吐出ヘッドカートリッジを示す斜視図
である。
【0251】本実施形態の液体吐出ヘッドカートリッジ
571は、前述した液体吐出ヘッド572と、液体吐出
ヘッド572に供給されるインク等の液体を収容する液
体容器573とを有している。液体容器573に収容さ
れた液体は、不図示の液体供給路を通って液体吐出ヘッ
ド572の共通液室(図11等参照)に供給される。
【0252】なお、この液体容器573は、液体の消費
後に液体を再充填して使用してもよい。このためには、
液体容器573に液体注入口を設けておくことが望まし
い。また、液体吐出ヘッド572と液体容器573とは
一体であってもよく、あるいは分離可能としてもよい。
【0253】以上、説明した各実施形態の構成が適用さ
れる液体吐出ヘッドの構造は、図示された構造に限られ
るものではなく、熱エネルギーを利用する種々の液体吐
出ヘッドに適用可能である。例えば、記録素子として、
液体を吐出するための熱エネルギーを発する発熱素子、
又は記録紙を発色或いはインク保持体からインクを転写
或いは昇華させるための熱エネルギーを発生する発熱素
子を備える記録ヘッドにも適用することができる。
【0254】また、上述の説明では、強誘電体材料より
なる機能素子を用いたコンデンサ、FeRAM、圧電素
子、可動部材をそれぞれ別々に設けた実施形態を説明し
たが、これら実施形態の構成を組み合わせて液体吐出ヘ
ッドを構成するようにしてもよい。
【0255】強誘電体材料よりなる機能素子は天板、素
子基板のいずれに設けてもよいが、強誘電体材料は温度
によりその誘電率に影響がでることを考慮すると、比較
的温度の影響が小さい天板側に配置することが望まし
い。
【0256】次に、上記説明した液体吐出ヘッドが搭載
された液体吐出装置を、図27を参照して説明する。図
27は、前述の液体吐出ヘッドが搭載された液体吐出装
置の概略構成を示す斜視図である。
【0257】本実施形態の液体吐出装置581は、図2
6を参照して説明した液体吐出ヘッドカートリッジ57
1が、駆動モータ582の正逆回転に連動して駆動力伝
達ギア583,584を介して回転するリードスクリュ
ー585の螺旋溝586に対して係合されたキャリッジ
587上に搭載されている。液体吐出ヘッドカートリッ
ジ571は、駆動モータ582の動力によってキャリッ
ジ587とともにガイド588に沿って矢印aおよびb
方向に往復移動される。図示しない記録媒体供給装置に
よってプラテン589上を搬送される被記録媒体Pを押
さえる紙押さえ板590は、キャリッジ587の全移動
領域に渡って被記録媒体Pをプラテン589に対して押
圧する。
【0258】リードスクリュー585の一端の近傍に
は、フォトカプラ591,592が配設されている。こ
れらはキャリッジ587のレバー587aのこの域での
存在を確認して駆動モータ582の回転方向切り換え等
を行うためのホームポジション検知手段である。図27
において、符号593は、液体吐出ヘッドカートリッジ
571の液体吐出ヘッドのうち、吐出口が設けられてい
る前面を覆うキャップ部材594を支持する支持部材で
ある。また、符号595は、液体吐出ヘッドから空吐出
等されてキャップ部材594の内部に溜まったインクを
吸引するインク吸引手段である。このインク吸引手段5
95により、キャップ内の開口部(不図示)を介して液
体吐出ヘッドの吸引回復が行われる。
【0259】符号596はクリーニングブレードであ
り、符号597はクリーニングブレード596を前後方
向(上記キャリッジ587の移動方向に直交する方向)
に移動可能にする移動部材であり、クリーニングブレー
ド596および移動部材597は本体支持体598に支
持されている。上記のクリーニングブレード596はこ
の形態に限らず、他の周知のクリーニングブレードであ
ってもよい。符号599は吸引回復操作にあたって吸引
を開始するためのレバーであり、キャリッジ587と係
合するカム600の移動に伴って移動し、駆動モータ5
82からの駆動力がクラッチ切り換え等の公知の伝達手
段で移動制御される。液体吐出装置581には、液体吐
出ヘッドに設けられた発熱体(図11等参照)に液体を
吐出させるための駆動信号を付与したり、前述した各機
構の駆動制御を司ったりする記録信号供給手段としての
記録制御部(不図示)が、装置本体内に設けられてい
る。
【0260】液体吐出装置581では、図示しない被記
録媒体搬送装置によりプラテン589上を搬送される被
記録媒体Pに対し、液体吐出ヘッドは被記録媒体Pの全
幅にわたって往復移動しながら液体を吐出し、被記録媒
体Pにその吐出された液体を付着させることで被記録媒
体Pに記録を行う。
【0261】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
ヒーター(エネルギー変換素子)により近い部分で電流
ノイズ対策を行うことができるので、電流ノイズを十分
に除去することができる。よって、ヘッド基板上に形成
された回路または素子への電流ノイズの影響をより効果
的に防止することができ、液体吐出制御をより安定、か
つ、高精度に行うことができる。さらに加えて、大容量
のコンデンサを限られたスペースに形成することができ
るので、大電流ノイズに対応することができるととも
に、ヘッドの小型化を図ることができる。
【0262】また、本発明によれば、強誘電体材料を用
いたことにより、大容量で、高速性に優れた不揮発性メ
モリを形成することができるので、従来のヘッドに比べ
て、より高速に記録を行うことができる。また、各種セ
ンサをヘッド内に配置してその検出結果をリアルタイム
にフィードバックしながら液体吐出用ヒーターの駆動条
件を制御する処理についても高速に行うことができるの
で、上記高速記録に加えて、より安定した液体吐出制御
を行うことができる。
【0263】また、本発明によれば、強誘電体材料より
なる圧電素子によって、液流路での液体の状態が、液体
の流れの影響やエネルギー発生素子が発する熱の影響が
少ない状態で検出される。このように液体の状態を精度
よく検出することができるので、液体を安定して吐出さ
せることができ、ヘッドの駆動制御をより細かくを行う
ことができる。
【0264】また、本発明は、可動部材が、強誘電体体
材料からなる薄膜と、薄膜の両面に設けられた電極とを
有し、両電極間に電圧が印加されると自由端が素子基板
側あるいは素子基板に対して反対側へ変位するように構
成されているので、可動部材を気泡の圧力による変位と
は独立して能動的に変位させることができるため、可動
部材の応答性が向上し、記録速度の高速化を図ることが
できる。
【0265】また、本発明によれば、上記機能素子を構
成する強誘電体材料膜の保護膜であるバリア層を、抵抗
層の発熱に伴う化学的および物理的な衝撃から保護膜を
守るために設けられた耐キャビテーション膜や抵抗層を
含む酸化膜、窒化膜で形成することで、さらにコスト削
減を図ることができる。つまり、強誘電体特性の劣化を
防止するために、液体吐出ヘッド用基板の製造プロセス
を活用することにより、工程の増加を防止し、コスト削
減を図ることができる。
【0266】さらに、配線層に生じる熱によるヒロック
を防止するためのヒロック防止膜をスパッタリングす
る、あるいは窒素、酸素雰囲気中でスパッタリングした
り、密着層を構成する金属を窒素、酸素雰囲気中スパッ
タリングすることにより、ヒロック防止膜や密着層を形
成するために用いた同一のターゲット、同一装置を用い
て同一工程でバリア層を構成できるため量産性に優れ、
製造工程の簡略化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液体吐出ヘッド用基板に形成される、
強誘電体材料よりなる機能素子の概略断面構造図であ
る。
【図2】液体吐出ヘッドに用いられる素子基板の要部の
断面図である。
【図3】素子基板の主要素子を縦断するように素子基板
を切断した模式的断面図である。
【図4】液体吐出ヘッドの回路構成を説明するための図
であり、(a)は素子基板の平面図、(b)は天板の平
面図である。
【図5】本発明の一実施形態の液体吐出ヘッドの素子基
板に形成される回路素子の構成を示す図で、同図(a)
は素子基板を上面から見た場合の各回路素子のレイアウ
ト図、同図(b)は電源層とグランド層がオーバーラッ
プした部分の断面構造図である。
【図6】図5に示す素子基板の等価回路の概略を示す図
である。
【図7】本発明の液体吐出ヘッドの熱作用部とコンデン
サ部の層構成を示す概略断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態の液体吐出ヘッドの素子
基板に形成される回路素子の構成を示す図である。
【図9】強誘電体メモリのセル構造を示す図である。
【図10】FeRAMが天板側に形成された液体吐出ヘ
ッドの一構成例を示す図である。
【図11】本発明のさらに他の実施形態である液体吐出
ヘッドの液流路方向に沿った断面図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る、圧力センサを有
する可動部材を備えたノズルを最もよく表した断面図
で、同図(a)は可動部材の変位前の状態を示す図、同
図(b)は可動部材が気泡に伴って変位する状態を示す
図である。
【図13】各液流路に配設された可動部材の圧力センサ
に対する電気配線を示すために素子基板に平行な方向に
沿って切断した断面図である。
【図14】同図(a)〜(d)は素子基板上に、圧力セ
ンサ素子を有する可動部材を形成する方法を説明するた
めの工程図である。
【図15】同図(a)〜(d)は素子基板上に、圧力セ
ンサ素子を有する可動部材を形成する方法を説明するた
めの工程図である。
【図16】圧力センサ素子からの出力をモニターするた
めの回路の一例を示す図である。
【図17】液流路内における立体構造部の配置の他の例
を説明する斜視図である。
【図18】本発明の液体吐出ヘッドのさらに別の実施形
態の基本的な構造を説明するための、液流路方向に沿っ
た断面図である。
【図19】図18に示した液体吐出ヘッドの一部を破断
して示す斜視図である。
【図20】図18に示した液体吐出ヘッドを搭載した液
体吐出ヘッドユニットの平面図である。
【図21】図18に示した液体吐出ヘッドにおける可動
部材の製造工程を示す、液流路方向に沿った断面図であ
る。
【図22】本発明の液体吐出ヘッドの可動部材の他の製
造方法に用いられるECRプラズマCVD装置を示す概
略図である。
【図23】本発明の液体吐出ヘッドによる吐出方法を説
明するための、流路方向の断面図である。
【図24】図23に示した本発明の吐出原理を実施する
ために、発熱体や可動部材内に設けられた電極部等に入
力する信号のタイミングチャートである。
【図25】センサ出力に応じて発熱体への印加エネルギ
ーを制御する例の素子基板及び天板の回路構成を示す図
である。
【図26】本発明の液体吐出ヘッドが搭載された液体吐
出ヘッドカートリッジを示す斜視図である。
【図27】本発明の液体吐出ヘッドが搭載された液体吐
出装置の概略構成を示す斜視図である。
【図28】従来の液体吐出ヘッドの一形態を示す断面図
である。
【図29】従来のバブルジェット記録装置の概略構成図
である。
【図30】従来の液体吐出ヘッドの他の形態を示す断面
図である。
【符号の説明】
1 素子基板 2 発熱体 2’ 発熱体列 3 天板 3a,3b 溝 3c 供給口 4 オリフィスプレート 5 吐出口 6 可動部材 6a 支点 6b 自由端 6c 強誘電体薄膜 6d 電極 6e 上部膜 7 液流路 7a 第1の液流路 7b 第2の液流路 8 共通液室 9 流路側壁 10 気泡発生領域 11 ドライバ 12 画像データ転送部 13 センサ 14,18 接続用コンタクトパッド 15 外部コンタクトパッド 16 発熱体制御部 17 センサ駆動部 20 液体吐出ヘッドユニット 21 液体吐出ヘッド 22 ベース基板 23 プリント配線基板 24 配線パターン 25 ボンディングワイヤー 30 電源層 31 GND層 32 強誘電材料膜 33 バリア層 34 オーバーラップ部(コンデンサ部) 34’ コンデンサ(オーバーラップ部) 35 FeRAM 36 駆動制御回路 37 センサ処理回路 50 気泡 71a 間隙形成部材 72a,72b SiN膜 76 TiW膜 131 素子基板 132 発熱体 133 天板 138 駆動タイミング制御ロジック回路 139 AND回路 141 パワートランジスタ 142 画像データ転送回路 146 駆動信号制御回路 147 センサ駆動回路 149 FeRAM(メモリ) 200,200’ 圧力センサ素子 200a 圧電素子膜 201 電極 202 リード配線 202a 共通配線 202b セグメント配線 206 電圧計 301 シリコン基板 302 熱酸化膜 303 層間膜 304 抵抗層 305 配線 306 保護膜 307 耐キャビテーション膜 308 熱作用部 350 強誘電体 351 上部電極 352 プレートライン(下部電極) 353 ピットライン 354 ワードライン(ゲート電極) 420 P-Mos 421 N-Mos 422 N型ウェル領域 423 P型ウェル領域 424 酸化膜分離領域 425,432 ソース領域 426,431 ドレイン領域 428 ゲート絶縁膜 430 N-Mosトランジスタ 433,435 ゲート配線 437 Al電極 436,438 層間絶縁膜 501 耐キャビテーション膜 502 配線層 503 中間層 504 PSG膜 505,509 保護層 506,508 電極層 507 強誘電体層 510 上部膜 571 液体吐出ヘッドカートリッジ 572 液体吐出ヘッド 573 液体容器 581 液体吐出装置 582 駆動モータ 583,584 駆動伝達ギア 585 リードスクリュー 586 螺旋溝 587 キャリッジ 587a,599 レバー 588 ガイド 589 プラテン 590 紙押さえ板 591,592 フォトカプラ 593 支持部材 594 キャップ部材 595 インク吸引手段 596 クリーニングブレード 597 移動部材 598 本体支持体 600 カム 601 下部配線層 602 ヒロック防止層 603 層間膜 604 発熱抵抗層 605 上部配線層 606 強誘電体層 P 被記録媒体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01L 27/108 21/8242 (72)発明者 石永 博之 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 久保田 雅彦 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 山中 昭弘 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 須釜 定之 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (69)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液体に吐出エネルギーを与えることによ
    り液体を吐出させる液体吐出ヘッドに用いられ、電気エ
    ネルギーを前記吐出エネルギーに変換するためのエネル
    ギー変換素子が形成された半導体基板を有する液体吐出
    ヘッド用基板において、 前記半導体基板に強誘電体材料よりなる機能素子が形成
    されていることを特徴とする液体吐出ヘッド用基板。
  2. 【請求項2】 前記機能素子は、前記半導体基板上に少
    なくとも第1のバリア層、強誘電体材料膜、第2のバリ
    ア層が積層されてなる請求項1に記載の液体吐出ヘッド
    用基板。
  3. 【請求項3】 前記第1あるいは第2のバリア層が、前
    記液体吐出ヘッドを構成する基板を保護するために設け
    られる耐キャビテーション膜材料を含む膜で構成されて
    いる請求項2に記載の液体吐出ヘッド用基板。
  4. 【請求項4】 前記耐キャビテーション膜の材料がTa
    である請求項3に記載の液体吐出ヘッド用基板。
  5. 【請求項5】 前記耐キャビテーション膜の材料を含む
    膜が、少なくとも酸素、窒素を含有している請求項3ま
    たは4に記載の液体吐出ヘッド用基板。
  6. 【請求項6】 前記耐キャビテーション膜の材料を含む
    酸化物が、Ta25である請求項5に記載の液体吐出ヘ
    ッド用基板。
  7. 【請求項7】 前記第1あるいは第2のバリア層が、前
    記液体吐出ヘッドを構成する基板を保護するために設け
    られる発熱抵抗材料を含む膜で構成されている請求項2
    から6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
  8. 【請求項8】 前記発熱抵抗層の材料がTaN、TaS
    iN、HfB2、TaSiOである請求項7に記載の液
    体吐出ヘッド用基板。
  9. 【請求項9】 前記発熱抵抗材料を含む膜が、少なくと
    も酸素、窒素を含有している請求項7に記載の液体吐出
    ヘッド用基板。
  10. 【請求項10】 前記第1あるいは第2のバリア層が、
    前記液体吐出ヘッドを構成する吐出エネルギー発生素子
    を駆動するための信号を伝達する配線層を保護するヒロ
    ック防止層材料を含む膜で構成されている請求項2から
    9のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド用基板。
  11. 【請求項11】 前記第1あるいは第2のバリア層が、
    熱による作用によって液体に気泡を形成して液体と吐出
    させる形式の記録ヘッドにおける熱作用部保護のための
    保護膜の密着性を向上させる密着層材料を含む膜で構成
    されている請求項2から10のいずれか1項に記載の液
    体吐出ヘッド用基板。
  12. 【請求項12】 前記機能素子が、コンデンサである請
    求項1から11のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド
    用基板。
  13. 【請求項13】 前記コンデンサは、前記半導体基板上
    に形成される電源ラインとグランドラインとの間を接続
    するように形成されている請求項12に記載の液体吐出
    ヘッド用基板。
  14. 【請求項14】 前記電源ラインが、前記エネルギー変
    換素子の電源ラインである請求項13に記載の液体吐出
    ヘッド用基板。
  15. 【請求項15】 前記電源ラインが、前記半導体基板上
    に形成されたエネルギー変換素子を駆動制御するロジッ
    ク回路の電源ラインである請求項13に記載の液体吐出
    ヘッド用基板。
  16. 【請求項16】 前記電源ラインを形成する電源層と前
    記グランドラインを形成するグランド層とが積層されて
    おり、これらの層が重なる部分において前記コンデンサ
    が形成されている請求項13から15のいずれか1項に
    記載の液体吐出ヘッド用基板。
  17. 【請求項17】 前記機能素子が、不揮発性メモリであ
    る請求項1から11のいずれか1項に記載の液体吐出ヘ
    ッド用基板。
  18. 【請求項18】 前記不揮発性メモリがFeRAMであ
    る請求項17に記載の液体吐出ヘッド用基板。
  19. 【請求項19】 前記不揮発性メモリに、前記エネルギ
    ー変換素子の駆動条件を制御するためのヘッド情報が記
    憶される請求項17または18に記載の液体吐出ヘッド
    用基板。
  20. 【請求項20】 前記機能素子が、圧電素子である請求
    項1から11のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド用
    基板。
  21. 【請求項21】 前記圧電素子が、前記液体吐出ヘッド
    内の液体に作用する圧力を検出するように構成されてい
    る請求項20に記載の液体吐出ヘッド用基板。
  22. 【請求項22】 前記液体吐出ヘッド用基板には、前記
    エネルギー発生素子に対面する位置に、前記基板との間
    に間隙をおいて、前記吐出口側を自由端として前記基板
    に支持固定された可動部材が配されており、 前記可動部材が、強誘電体材料からなる薄膜と、該薄膜
    の両面に設けられた電極とを有し、該両電極間に電圧が
    印加されると自由端が前記素子基板側あるいは前記素子
    基板に対して反対の方向へ変位するように構成されてい
    る請求項1から21のいずれか1項に記載の液体吐出ヘ
    ッド用基板。
  23. 【請求項23】 前記薄膜は、Pb-Zrx-Ti1-xO
    3、(Pb,La)-(Zr,Ti)O3、Sr-Bi2-T
    25、SrTiO3、BaTiO3、あるいは(Ba-
    Sr)TiO3からなる請求項22に記載の液体吐出ヘ
    ッド用基板。
  24. 【請求項24】 前記両電極のいずれか一方の表面に、
    電界中に置かれても歪みを生じない材料で形成された変
    位補助層が設けられている請求項22または23に記載
    の液体吐出ヘッド用基板。
  25. 【請求項25】 互いに接合されることで、液体を吐出
    するための複数の吐出口とそれぞれ連通する複数の液流
    路を構成する第1および第2の基板を有し、該第1およ
    び第2の基板の一方または両方に強誘電体材料よりなる
    機能素子が形成されていることを特徴とする液体吐出ヘ
    ッド。
  26. 【請求項26】 前記機能素子は、前記半導体基板上に
    少なくとも第1のバリア層、強誘電体材料膜、第2のバ
    リア層が積層されてなる請求項25に記載の液体吐出ヘ
    ッド。
  27. 【請求項27】 前記第1あるいは第2のバリア層が、
    前記液体吐出ヘッドを構成する基板を保護するために設
    けられる耐キャビテーション膜材料を含む膜で構成され
    ている請求項26に記載の液体吐出ヘッド。
  28. 【請求項28】 前記耐キャビテーション膜の材料がT
    aである請求項27に記載の液体吐出ヘッド。
  29. 【請求項29】 前記耐キャビテーション膜の材料を含
    む膜が、少なくとも酸素、窒素を含有している請求項2
    7または28に記載の液体吐出ヘッド。
  30. 【請求項30】 前記耐キャビテーション膜の材料を含
    む酸化物が、Ta25である請求項29に記載の液体吐
    出ヘッド。
  31. 【請求項31】 前記第1あるいは第2のバリア層が、
    前記液体吐出ヘッドを構成する基板を保護するために設
    けられる発熱抵抗材料を含む膜で構成されている請求項
    26から30のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
  32. 【請求項32】 前記発熱抵抗層の材料がTaN、Ta
    SiN、HfB2、TaSiOである請求項31に記載
    の液体吐出ヘッド。
  33. 【請求項33】 前記発熱抵抗材料を含む膜が、少なく
    とも酸素、窒素を含有している請求項31または32に
    記載の液体吐出ヘッド。
  34. 【請求項34】 前記第1あるいは第2のバリア層が、
    前記液体吐出ヘッドを構成する吐出エネルギー発生素子
    を駆動するための信号を伝達する配線層を保護するヒロ
    ック防止層材料を含む膜で構成されている請求項26か
    ら33のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
  35. 【請求項35】 前記第1あるいは第2のバリア層が、
    熱による作用によって液体に気泡を形成して液体と吐出
    させる形式の記録ヘッドにおける熱作用部保護のための
    保護膜の密着性を向上させる密着層材料を含む膜で構成
    されている請求項26から34のいずれか1項に記載の
    液体吐出ヘッド。
  36. 【請求項36】 前記機能素子が、コンデンサである請
    求項25から35のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッ
    ド。
  37. 【請求項37】 前記コンデンサが、前記第1の基板に
    形成される電源ラインとグランドラインとの間を接続す
    るように形成されている請求項36に記載の液体吐出ヘ
    ッド。
  38. 【請求項38】 前記第1の基板に、電気エネルギーを
    前記液体を吐出するためのエネルギーに変換するエネル
    ギー変換素子が形成されており、前記電源ラインが、前
    記エネルギー変換素子の電源ラインである請求項37に
    記載の液体吐出ヘッド。
  39. 【請求項39】 前記第1の基板に、電気エネルギーを
    前記液体を吐出するためのエネルギーに変換するエネル
    ギー変換素子および該エネルギー変換素子を駆動制御す
    るロジック回路がそれぞれ形成されており、 前記電源ラインが、前記ロジック回路の電源ラインであ
    る請求項37に記載の液体吐出ヘッド。
  40. 【請求項40】 前記電源ラインを形成する電源層と前
    記グランドラインを形成するグランド層とが積層されて
    おり、これらの層が重なる部分において前記コンデンサ
    が形成されている請求項37から39のいずれか1項に
    記載の液体吐出ヘッド。
  41. 【請求項41】 前記機能素子が、不揮発性メモリであ
    る請求項25から35のいずれか1項に記載の液体吐出
    ヘッド。
  42. 【請求項42】 前記不揮発性メモリがFeRAMであ
    る請求項41に記載の液体吐出ヘッド。
  43. 【請求項43】 前記第1の基板に、電気エネルギーを
    前記液体を吐出するためのエネルギーに変換するエネル
    ギー変換素子が形成されており、前記不揮発性メモリ
    に、前記エネルギー変換素子の駆動条件を制御するため
    のヘッド情報が記憶される請求項41または42に記載
    の液体吐出ヘッド。
  44. 【請求項44】 前記機能素子が、圧電素子である請求
    項25から35のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッ
    ド。
  45. 【請求項45】 前記圧電素子が、前記液流路内の液体
    に作用する圧力を検出するように構成されている請求項
    44に記載の液体吐出ヘッド。
  46. 【請求項46】 前記第1の基板に、電気エネルギーを
    熱エネルギーに変換して液体に気泡を発生させるエネル
    ギー変換素子が形成されており、 前記エネルギー変換素子に対面して配され、気泡によっ
    て変位する可動部材をさらに有し、 前記圧電素子が前記可動部材に設けられている請求項4
    5に記載の液体吐出ヘッド。
  47. 【請求項47】 前記可動部材は、液体の流れの方向の
    上流側が固定され下流側端が自由端となって可動する部
    材である請求項46に記載の液体吐出ヘッド。
  48. 【請求項48】 前記可動部材が、強誘電体材料からな
    る薄膜と、該薄膜の両面に設けられた電極とを有し、該
    両電極間に電圧が印加されると自由端が前記素子基板側
    あるいは前記素子基板に対して反対の方向へ変位するよ
    うに構成されていることを特徴とする請求項47に記載
    の液体吐出ヘッド。
  49. 【請求項49】 前記薄膜は、Pb-Zrx-Ti1-xO
    3、(Pb,La)-(Zr,Ti)O3、Sr-Bi2-T
    25、SrTiO3、BaTiO3、あるいは(Ba-
    Sr)TiO3からなる請求項48に記載の液体吐出ヘ
    ッド。
  50. 【請求項50】 前記両電極のいずれか一方の表面に、
    電界中に置かれても歪みを生じない材料で形成された変
    位補助層が設けられている請求項48または49に記載
    の液体吐出ヘッド。
  51. 【請求項51】 前記第1の基板に、電気エネルギーを
    前記液体を吐出するためのエネルギーに変換するエネル
    ギー変換素子が形成され、 前記第2の基板に、前記機能素子が形成されている請求
    項25から35のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッ
    ド。
  52. 【請求項52】 請求項25から51のいずれか1項に
    記載の液体吐出ヘッドと、該液体吐出ヘッドに供給され
    る液体を保持する液体容器とを有するヘッドカートリッ
    ジ。
  53. 【請求項53】 請求項25から51のいずれかに記載
    の液体吐出ヘッドと、該液体吐出ヘッドから液体を吐出
    させるための駆動信号を供給する駆動信号供給手段とを
    有し、記録媒体に液体を吐出して記録を行うことを特徴
    とする液体吐出記録装置。
  54. 【請求項54】 記録素子及び該記録素子とは異なる機
    能素子を備えた記録ヘッドにおいて、 前記機能素子は強誘電体材料を有して構成されているこ
    とを特徴とする記録ヘッド。
  55. 【請求項55】 前記機能素子は、前記記録素子を駆動
    するための駆動回路の要素として半導体基板上に形成さ
    れていることを特徴とする請求項54に記載の記録ヘッ
    ド。
  56. 【請求項56】 前記記録素子は、液体を吐出するため
    の熱エネルギーを発する発熱素子、又は記録紙を発色或
    いはインク保持体からインクを転写或いは昇華させるた
    めの熱エネルギーを発生する発熱素子である請求項54
    または55に記載の記録ヘッド。
  57. 【請求項57】 液滴を吐出するための吐出口と、 該吐出口に液体を供給するために前記吐出口に連通され
    た液流路と、 該液流路に充填された前記液体に気泡を発生させるため
    の気泡発生素子が備えられた基板と、 前記基板の前記気泡発生素子に対面する位置に、前記基
    板との間に間隙を有し、前記吐出口側を自由端として前
    記基板に支持固定された可動部材とを有し、 前記可動部材が、強誘電体材料からなる薄膜と、該薄膜
    の両面に設けられた電極とを有し、該両電極間に電圧が
    印加されると自由端が前記素子基板側あるいは前記素子
    基板に対して反対の方向へ変位するように構成されてお
    り、 前記気泡を発生させることにより生じる圧力によって、
    前記可動部材の自由端を前記基板とは反対の方向に変位
    させて、前記圧力を前記吐出口側に導くことにより前記
    吐出口から前記液体の液滴を吐出させる液体吐出ヘッド
    の駆動方法であって、 前記発熱体の駆動と前記可動部材の駆動とを互いに独立
    して行うことを特徴とする液体吐出ヘッドの駆動方法。
  58. 【請求項58】 前記発熱体を駆動させる前に、前記可
    動部材を駆動させて前記可動部材の自由端を前記素子基
    板に対して反対の方向に変位させる工程を有する請求項
    57に記載の液体吐出ヘッドの駆動方法。
  59. 【請求項59】 前記発熱体を駆動させることによって
    前記液体に発生した気泡が消泡する前に、前記可動部材
    を駆動させて前記可動部材の自由端を前記素子基板側に
    変位させる工程を有する請求項57または58に記載の
    液体吐出ヘッドの駆動方法。
  60. 【請求項60】 液体吐出エネルギー発生素子を備える
    とともに強誘電体材料によって構成される機能素子を備
    えた液体吐出ヘッドの製造方法であって、 前記液体吐出エネルギー発生素子の形成工程と同一工程
    で前記強誘電体材料に対して積層されるバリア層を形成
    することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
  61. 【請求項61】 前記液体吐出エネルギー発生素子の形
    成工程は、発熱抵抗層の形成工程であり、前記バリア層
    は発熱抵抗層と同一装置によって、同一材料、同一工程
    で構成されることを特徴とする請求項60に記載の液体
    吐出ヘッドの製造方法。
  62. 【請求項62】 前記発熱抵抗層と前記バリア層の成膜
    工程は、スパッタリングで行われることを特徴とする請
    求項61に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  63. 【請求項63】 前記液体吐出エネルギー発生素子の形
    成工程は、発熱抵抗層の形成工程であり、前記バリア層
    は発熱抵抗層と同一装置によって、異なる材料、異なる
    工程で構成されることを特徴とする請求項60に記載の
    液体吐出ヘッドの製造方法。
  64. 【請求項64】 前記液体吐出エネルギー発生素子の形
    成工程は、熱による作用によって液体に気泡を形成して
    液体と吐出させる形式の記録ヘッドにおける熱作用部保
    護のための耐キャビテーション膜の形成工程であり、前
    記バリア層は耐キャビテーション膜と同一装置によっ
    て、同一材料、同一工程で構成されることを特徴とする
    請求項60に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  65. 【請求項65】 前記耐キャビテーション膜と前記バリ
    ア層の成膜工程は、スパッタリングで行われることを特
    徴とする請求項64に記載の液体吐出ヘッドの製造方
    法。
  66. 【請求項66】 前記液体吐出エネルギー発生素子の形
    成工程は、吐出エネルギー発生素子を駆動するための信
    号を伝達する配線層を保護するヒロック防止層の形成工
    程であり、前記バリア層はヒロック防止層と同一装置に
    よって、同一材料、同一工程で構成されることを特徴と
    する請求項60に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  67. 【請求項67】 前記ヒロック防止層と前記バリア層の
    成膜工程は、スパッタリングで行われることを特徴とす
    る請求項66に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  68. 【請求項68】 前記液体吐出エネルギー発生素子の形
    成工程は、熱による作用によって液体に気泡を形成して
    液体と吐出させる形式の液体吐出ヘッドにおける熱作用
    部保護のための保護膜の密着性を向上させる密着層形成
    工程であり、前記バリア層は密着層と同一装置によっ
    て、同一材料、同一工程で構成されることを特徴とする
    請求項60に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
  69. 【請求項69】 前記密着層と前記バリア層の成膜工程
    は、スパッタリングで行われることを特徴とする請求項
    68に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。
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