JP4587027B2 - 含窒素炭素系複合材料 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素原子及び窒素原子により骨格が形成されている含窒素炭素系材料からなる多孔体を担体とする複合材料に関する。
従来、多孔体に関する様々な研究がなされており、その吸着性を利用して、触媒、電極材料等の担体への適用が検討されている。このような用途に使用されている多孔体としては様々なものが知られているが、代表的な多孔体の一つとして活性炭が挙げられる。
このような活性炭は、炭素原子により骨格が形成されている多孔体であり、高い比表面積を有しているが、この高い比表面積は従来、製造工程において賦活処理を行い、活性炭となる材料の表面に細孔を形成せしめることによって得られていた。この賦活処理としては、例えば、原料組成物を水蒸気、二酸化炭素等の雰囲気中で600〜1000℃に加熱するか、又は、原料組成物に塩化亜鉛、水酸化カリウム等を混合して不活性雰囲気下で加熱すること等が知られている。この賦活処理の過程において、活性炭となる材料の表面には多数の細孔が形成され、その結果比表面積の高い活性炭が得られるが、比表面積の向上のみでは吸着性の向上に限界があり、未だ十分なものではなかった。
また、近年になっていわゆるメソ孔を有するメソポーラスカーボンが開発されており、A.Vinu et al.,“Adsorption of Cytochrome C on New Mesoporous Carbon Molecular Sieves”, J.Phys.Chem.B, 2003, Vol.107, p.8297〜8299(非特許文献1)には、メソポーラスカーボンモレキュラーシーブにチトクロームCを担持させることが開示されている。
しかしながら、非特許文献1に記載のようなメソポーラスカーボンモレキュラーシーブを担体として用いた場合であっても、そこに担持される成分に対する吸着性の向上に限界があり、また担持成分の安定性及び活性化という点においても未だ十分なものではなかった。
A.Vinu et al.,"Adsorption of Cytochrome C on New Mesoporous Carbon Molecular Sieves", J.Phys.Chem.B, 2003, Vol.107, p.8297〜8299
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、タンパク質、金属錯体又は金属という成分を高い担持量で担持しておりかつ担持成分の安定性及び活性にも優れており、触媒や電極材料等として有用な炭素系複合材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、炭素原子及び窒素原子により骨格が形成されている含窒素炭素系材料からなる多孔体を担体として用いることにより前記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、炭素原子及び窒素原子により骨格が形成されている含窒素炭素系材料からなり、比表面積が300m 2 /g以上、平均細孔径が1〜50nm、窒素原子と炭素原子との原子比(N/C)が0.05〜0.4である多孔体と、前記多孔体に担持されているタンパク質、金属錯体又は金属とを備えることを特徴とする含窒素炭素系複合材料である。
本発明の含窒素炭素系複合材料においては、前記含窒素炭素系材料からなる多孔体が、比表面積が800〜1500m 2 /g、平均細孔径が2〜10nm、窒素原子と炭素原子との原子比(N/C)が0.08〜0.3のものであることが好ましい。
本発明の含窒素炭素系複合材料に用いられる前記タンパク質としては、酸化還元酵素及び電子伝達タンパク質からなる群から選択される少なくとも一つのタンパク質が好ましい。
また、前記金属錯体としては、Pt、Pd、Ru、Os、Ir、Rh、Au、Fe、Ni、Cr、Mn、Co、Cu、Ti、Zn及びVからなる群から選択される少なくとも一つの金属を中心金属としかつ有機配位子を有する金属錯体が好ましい。
さらに、前記金属としては、(i)Pt、Pd、Ru、Os、Ir、Rh、Au、Fe、Ni、Cr、Mn、Co、Cu、Ti、Zn及びVからなる群から選択される少なくとも一つの金属の微粒子、或いは(ii)Fe、Ni、Cr、Mn、Co、Cu、Ti、Zn及びVからなる群から選択される少なくとも一つの金属のイオンが好ましい。
なお、本発明の含窒素炭素系複合材料においてはタンパク質、金属錯体又は金属という成分が高い担持量で担持され、さらにそれらの担持成分の安定性及び活性が優れたものとなる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、先ず、タンパク質を担持した含窒素炭素系複合材料については以下のように推察する。従来のメソポーラスカーボンの細孔表面は炭素分子が規則的に配列した疎水性の高い表面である。この細孔にタンパク質(酵素)を固定化する場合、タンパク質の表面に存在する疎水性領域との相互作用により吸着固定すると考えられる。しかしながら、タンパク質表面には親水性残基を有するアミノ酸も多く存在している。このようなタンパク質表面の親水性領域はメソポーラスカーボンの細孔内にタンパク質を固定化する際には疎水性相互作用を弱めるように働くため、タンパク質の結合性を弱める要因となり得る。これに対し、本発明にかかる含窒素炭素系材料からなる多孔体においては、細孔表面に疎水性領域の他に極性基が点在するため、タンパク質表面の親水基と水素結合等の新たな結合を形成し得る。それによって固定化されるタンパク質と含窒素炭素系材料との間に疎水性結合と親水性結合の両方を生じさせることが可能となり、結果的にタンパク質と含窒素炭素系材料との結合が強められることになる。さらに、タンパク質が制限された細孔内に固定化されることにより、タンパク質が失活する際に生じる構造変化が抑制される。そのため、本発明の含窒素炭素系複合材料においては、タンパク質が高い担持量で担持され、さらにタンパク質の安定性及び活性の向上がもたらされるものと本発明者らは推察する。
また、金属錯体又は金属を担持した含窒素炭素系複合材料については以下のように推察する。本発明にかかる含窒素炭素系材料からなる多孔体においては、炭素と窒素の原子価の違いによって炭素骨格中に電荷の偏りが生じる。それによって固定化される金属錯体又は金属と含窒素炭素系材料との間に電気的相互作用が生じ、結果的に金属錯体又は金属と含窒素炭素系材料との結合が強められることになる。さらに、金属錯体又は金属イオンは炭素骨格中の窒素原子と錯形成することにより安定性及び活性が高まり、また、金属微粒子は凝集が抑制されることによりやはり安定性及び活性が高まる。そのため、本発明の含窒素炭素系複合材料においては、金属錯体又は金属が高い担持量で担持され、さらに金属錯体又は金属の安定性及び活性の向上がもたらされるものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、タンパク質、金属錯体又は金属という成分を高い担持量で担持しておりかつ担持成分の安定性及び活性にも優れており、触媒や電極材料等として有用な含窒素炭素系複合材料を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
(含窒素炭素系多孔体)
本発明において担体として用いる含窒素炭素系多孔体は、炭素原子及び窒素原子により骨格が形成されている含窒素炭素系材料からなる多孔体である。上記窒素原子と炭素原子との原子比(N/C)の上限値は0.4であ、0.3であることがより好ましい。一方、その下限値は0.05であ、0.08であることがより好ましい。窒素原子と炭素原子との原子比(N/C)が0.05未満の場合には、窒素原子が減少し、担持成分と相互作用することが可能な吸着サイトとしての機能が低下するため、十分な吸着性が得られなくなる。また、窒素原子と炭素原子との原子比(N/C)が0.4を超える場合には、多孔体の炭素骨格の強度が低下し、細孔構造を維持することが困難となるため、比表面積の低下を招き、吸着性が低下してしまう。また、電気伝導性の低下をまねく。
なお、本発明にかかる多孔体の窒素原子と炭素原子との原子比(N/C)は、CHN元素分析又はXPSによって求めることができる。
また、上記含窒素炭素系多孔体の骨格は、少なくとも炭素原子及び窒素原子により形成されていればよく、その他の原子として水素原子や酸素原子等を含んでいてもよい。その場合、その他の原子と炭素原子及び窒素原子との原子比((その他の原子)/(C+N))は0.3以下であることが好ましい。
上記含窒素炭素系多孔体の比表面積は、300m2/g以上であ、600m2/g以上であることがより好ましく、800〜1500m2/gであることが更に好ましい。比表面積が300m2/g未満の場合には、担持成分との接触面積の低下及び担持成分を取り込む細孔の減少が生じ、吸着性が低いものとなってしまう。
また、上記含窒素炭素系多孔体の平均細孔径は、1〜50nmであ、2〜10nmであることがより好ましい。平均細孔径が1nm未満の場合には、細孔の大きさが担持成分の大きさよりも小さくなることが多くなり、吸着性が低下してしまう。また、平均細孔径が50nmを超える場合には、比表面積の低下を招き、吸着性が低下してしまう。
なお、担持成分の分子径が1nmより大きいものの場合、その担持量の低減を防止する観点から、含窒素炭素系多孔体の平均細孔径は担持成分の分子径より大きいことが好ましい。
更に、上記含窒素炭素系多孔体の細孔容量は、上記比表面積及び平均細孔径によっても変動するため特に制限されないが、0.1〜50ml/gであることが好ましく、0.2〜2.5ml/gであることがより好ましい。
本発明にかかる多孔体の比表面積、平均細孔径及び細孔容量は、以下に述べる方法により求めることができる。すなわち、多孔体を所定の容器に入れて液体窒素温度(−196℃)に冷却し、容器内に窒素ガスを導入して定容量法又は重量法によりその吸着量を求める。次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットして窒素吸着等温線を得る。この窒素吸着等温線を用い、SPE(Subtracting Pore Effect)法により比表面積、平均細孔径及び細孔容量を算出することができる(K.Kaneko, C.Ishii, M.Ruike, H.Kuwabara, Carbon 30, 1075, 1986)。上記SPE法とは、αS−プロット法、t−プロット法等によってミクロ細孔解析を行い、ミクロ細孔の強いポテンシャル場の効果を取り除いて比表面積等を算出する方法であり、ミクロ細孔性多孔体の比表面積等の算出においてBET法よりも精度の高い方法である。
本発明にかかる含窒素炭素系多孔体の細孔形状は特に制限されず、例えば、多孔体表面のみに細孔が形成されていても、表面のみならず内部にも細孔が形成されていてもよく、内部にも細孔が形成されている場合には、例えば、トンネル状に貫通したものであってもよく、また、球状又は六角柱状等の多角形状の空洞が互いに連結したような形状を有していてもよい。
また、上記含窒素炭素系多孔体の細孔配列構造は特に制限されないが、後述する製造方法によって含窒素炭素系多孔体を製造する場合には、使用する金属酸化物多孔体の細孔配列構造を反映した構造をとる。
(含窒素炭素系多孔体の製造方法)
本発明において担体として用いる含窒素炭素系多孔体を得る方法として好適な方法について以下に説明する。
本発明において好適な含窒素炭素系多孔体の製造方法は、金属酸化物多孔体の細孔内に含窒素有機化合物を導入し、前記含窒素有機化合物を熱分解せしめることによって前記細孔内に炭素原子及び窒素原子により骨格が形成されている含窒素炭素系材料を析出せしめる析出工程と、前記金属酸化物多孔体を溶解除去することによって含窒素炭素系材料からなる多孔体を得る除去工程とを含む。
好適な製造方法において用いられる金属酸化物多孔体としては、金属酸化物及び複合金属酸化物等からなる多孔体が挙げられ、例えば、シリカメソ多孔体、ゼオライト、シリカゲル、架橋粘土等が挙げられる。
上記金属酸化物多孔体の細孔形状は特に制限されず、例えば、多孔体表面のみに細孔が形成されていても、表面のみならず内部にも細孔が形成されていてもよく、内部にも細孔が形成されている場合には、例えば、トンネル状に貫通したものであってもよく、また、球状又は六角柱状等の多角形状の空洞が互いに連結したような形状を有していてもよい。
また、上記金属酸化物多孔体の細孔配列構造は特に制限されず、例えば、ヘキサゴナル構造、キュービック構造、ラメラ構造及び不規則構造等が挙げられる。
ここで、多孔体がヘキサゴナルの細孔配列構造を有するとは、多孔体中の細孔の配置が六方構造であることを意味する。ヘキサゴナルの細孔配列構造としては、2d−ヘキサゴナル(2次元ヘキサゴナル)及び3d−ヘキサゴナル(3次元ヘキサゴナル)が知られている。
2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有する多孔体は、六角柱状の細孔が互いに平行に規則的に配列しており、細孔断面の配置が六方構造になっているものであることを意味する(S.Inagaki, et al., J. Chem. Soc., Chem. Commun., 680, 1993; S.Inagaki, et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 69, 1449, 1996)。また、2次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有する多孔体における細孔の形状は、六角柱状に限られるわけではなく、細孔配列構造が2次元ヘキサゴナルであれば、例えば、多角柱状でも円柱状でもよい。
一方、3次元ヘキサゴナルの細孔配列構造を有する多孔体は、細孔が3次元の周期性で六方構造をとるように配置しているものであることを意味する(Q.Huo et al., Science, 268, 1324, 1995)。
多孔体がキュービックの細孔配列構造を有するとは、多孔体中の細孔の配置が立方構造であることを意味する(J.C.Vartuli et al., Chem. Mater., 6, 2317, 1994; Q.Huo et al., Nature, 368, 317, 1994)。また、前記キュービック構造は、Pm−3n対称性、Ia−3d対称性及びFm−3m対称性のうちの少なくとも一つの対称性を有するものであることが好ましい。なお、前記対称性とは、空間群の表記法に基づいて決定されるものである。
なお、多孔体がヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造を有する場合は、細孔の全てがこれら規則的細孔配列構造である必要はないが、全ての細孔のうち80%以上がヘキサゴナルやキュービック等の規則的細孔配列構造となっていることが好ましい。
更に、上記金属酸化物多孔体の比表面積、平均細孔径及び細孔容量は特に制限されないが、比表面積としては500〜1200m2/g、平均細孔径としては1〜100nm、細孔容量としては0.2〜2.5ml/gであることが好ましい。
このような金属酸化物多孔体としては、上述したような各種金属酸化物多孔体を単独若しくは2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でもシリカメソ多孔体を用いることが好ましい。
また、このような金属酸化物多孔体としては、上述したような各種細孔配列構造を有する多孔体が挙げられ、このような多孔体を単独若しくは2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でもキュービックの細孔配列構造を有する多孔体を用いることが好ましい。
すなわち、金属酸化物多孔体としては、キュービックの細孔配列構造を有するシリカメソ多孔体を用いることが最も好ましく、具体的には、MCM−48と称されるキュービックIa−3d細孔配列構造を有するシリカメソ多孔体等が挙げられる。このような金属酸化物多孔体は、含窒素炭素系多孔体を形成する際の鋳型として好適に働くため、析出工程においては含窒素炭素系材料が細孔内に析出しやすく、除去工程で金属酸化物多孔体を除去した際には、得られる含窒素炭素系多孔体が細孔構造を維持しやすい傾向がある。これによって、含窒素炭素系多孔体は高い比表面積を有し、優れた吸着性が得られる傾向がある。
好適な製造方法において用いられる含窒素有機化合物としては、窒素原子を含む有機化合物であれば特に制限はなく、例えば、含窒素複素環式化合物、アミン類、イミン類、ニトリル類等が挙げられる。
上記含窒素複素環式化合物としては、含窒素複素単環化合物及び含窒素縮合複素環化合物が挙げられ、含窒素複素単環化合物としては、5員環化合物であるピロール及びその誘導体、ピラゾールやイミダゾール等のジアゾール類及びその誘導体、トリアゾール類及びその誘導体、並びに、6員環化合物であるピリジン及びその誘導体、ピリダジンやピリミジンやピラジン等のジアジン類及びその誘導体、トリアジン類及び、メラミンやシアヌル酸等のトリアジン類誘導体等が挙げられる。また、含窒素縮合複素環化合物としては、キノリン、フェナントロリン、プリン等が挙げられる。
上記アミン類としては、第1級〜第3級アミン、ジアミン類、トリアミン類、ポリアミン類及びアミノ化合物等が挙げられる。第1級〜第3級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン及びトリメチルアミン等の脂肪族アミン、並びに、アニリン等の芳香族アミン及びその誘導体等が挙げられ、ジアミン類としては、エチレンジアミン等が挙げられ、アミノ化合物としては、エタノールアミン等のアミノアルコール等が挙げられる。また、上記イミン類としては、ピロリジン及びエチレンイミン等が挙げられる。さらに、上記ニトリル類としては、アセトニトリル等の脂肪族ニトリル及びベンゾニトリル等の芳香族ニトリル等が挙げられる。また、その他の含窒素有機化合物としては、ナイロン等のポリアミド類、ガラクトサミン等のアミノ糖、ポリアクリロニトリル等の含窒素高分子化合物、アミノ酸及びポリイミド類等が挙げられる。
このような含窒素有機化合物としては、上述したような各種化合物を単独若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に窒素原子と炭素原子との原子比(N/C)の向上を目指す場合には、上記含窒素有機化合物の中でも、より窒素含有量が高いものを用いることが好ましい。
以下、本発明に好適な含窒素炭素系多孔体の製造方法にかかる各工程について説明する。
先ず、析出工程について説明する。析出工程は、金属酸化物多孔体の細孔内に含窒素有機化合物を導入し、前記含窒素有機化合物を熱分解せしめることによって前記細孔内に炭素原子及び窒素原子により骨格が形成されている含窒素炭素系材料を析出せしめる工程である。このような工程を行う方法としては特に制限はなく、例えば、熱CVD法、プラズマCVD法等が挙げられるが、中でも熱CVD法が好ましい。以下、熱CVD法によって析出工程を行う手順を示す。
先ず、反応管中に金属酸化物多孔体を設置し、窒素又はアルゴン等の不活性ガスを反応管内に導入しながら所定の温度まで加熱する。次に、加熱状態を維持したまま、気体状態の含窒素有機化合物を反応管内に導入することによって、金属酸化物多孔体の細孔内に含窒素有機化合物を導入せしめながら、所定時間のCVD反応を行う。これによって、金属酸化物多孔体の細孔内に炭素原子及び窒素原子により骨格が形成されている含窒素炭素系材料を析出せしめることができる。
上記熱CVD法による析出工程は、反応雰囲気が酸化雰囲気である場合には炭素の燃焼が起こるため、通常、窒素又はアルゴン等の不活性雰囲気で行われる。
上記熱CVD法による析出工程において、含窒素有機化合物が常温で液体状態である場合には、バブラ、マスフローポンプ等を用い、蒸気蒸発によって含窒素有機化合物を気体状態として反応管内に導入することができる。また、このときに窒素又はアルゴン等をキャリヤガスとして用いて気体状態の含窒素有機化合物の導入を行うことが好ましい。更に、一度反応管内を流通させた気体が、反応管の出口側から逆流しないように、反応管出口側に流動パラフィン等を入れたバブラを設置する等して逆流を防ぐことが好ましい。
上記含窒素有機化合物が常温で固体状態である場合には、加熱蒸発(昇華)器を反応管入口側に設置し、加熱によって含窒素有機化合物を気体状態として反応管へ導入することができる。また、このときの蒸発器の温度は、含窒素有機化合物が熱分解しない温度に調整する必要がある。
また、上記含窒素有機化合物が重合性を有する場合には、予め金属酸化物多孔体の細孔内において重合を行っておき、その後、反応管中、不活性雰囲気下で熱分解するという方法をとることもできる。
更に、上記含窒素有機化合物が加熱によって気化しないものである場合には、溶液吸着法や蒸発乾固法等によって、金属酸化物多孔体の細孔内に予め含窒素有機系化合物を導入し、これを不活性雰囲気下で熱分解することによって、金属酸化物多孔体の細孔内に炭素原子及び窒素原子により骨格が形成されている含窒素炭素系材料を析出せしめることができる。
上記熱CVD法による析出工程における反応温度は、含窒素有機化合物が熱分解及び炭素化する温度であれば特に制限されないが、500〜1000℃であることが好ましく、650〜700℃の範囲であることがより好ましい。反応温度が500℃未満の場合には、含窒素有機化合物の熱分解が起こりにくくなるため、含窒素炭素系材料の析出速度が遅くなってしまい、反応時間及びエネルギー消費が大きくなる傾向がある。また、反応温度が1000℃を超える場合には、炭素骨格中に窒素が残留し難いため、N/C原子比が低下する傾向にある。
このような析出工程において、金属酸化物多孔体の細孔内に析出させる含窒素炭素系材料の析出量は、金属酸化物多孔体1g当りの細孔容量をYmlとした場合、(0.2×Y)g以上であることが好ましく、(0.4×Y)〜(1.4×Y)gであることがより好ましい。含窒素炭素系材料の析出量が(0.2×Y)g未満の場合には、析出量が少ないため、この後に説明する除去工程で金属酸化物多孔体を除去した際に、含窒素炭素系多孔体が細孔構造を維持しにくくなる傾向がある。また、含窒素炭素系材料の析出量が(1.4×Y)gを超える場合には、金属酸化物多孔体の表面部分にまで含窒素炭素系材料が析出しやすい傾向があり、最終的に得られる含窒素炭素系多孔体の比表面積が低下してしまう傾向がある。
また、上記析出量は、熱CVD法によって析出工程を行う場合、CVD反応時間と相関関係があり、CVD反応時間を調整することによって析出量をある程度制御することが可能となる。更に、上記析出量は、CVD反応温度、金属酸化物多孔体の種類、含窒素有機化合物の種類、及び含窒素有機化合物を導入する際の流量等によっても変化するが、それぞれの場合でCVD反応時間を適宜調整することによって析出量をある程度制御することが可能となる。
次に、除去工程について説明する。除去工程は、金属酸化物多孔体を溶解除去することによって含窒素炭素系材料からなる多孔体を得る工程である。除去工程においては、含窒素炭素系材料を溶解することなく金属酸化物多孔体のみを溶解除去することが必要であり、例えば、化学的に溶解させる方法として、フッ酸やアルカリ等を用いて処理する方法が挙げられる。処理方法としては、例えば、析出工程で得られた金属酸化物多孔体−含窒素炭素系材料複合体を上記処理溶液に分散させる方法が挙げられる。分散による処理時間としては特に制限されないが、6〜24時間であることが好ましい。これによって、金属酸化物多孔体のみを溶解除去し、含窒素炭素系材料からなる多孔体を得ることができる。また、処理溶液としてフッ酸を用いる場合には、エタノール等と混合して用いてもよい。このとき、フッ酸とエタノール等との混合比率としては特に制限されないが、体積比として1:2〜2:1であることが好ましい。
また、上記除去工程において、金属酸化物多孔体を溶解除去した後に、必要に応じて、ろ過、洗浄及び乾燥を行ってもよい。洗浄液としては、例えば、水、エタノール及びそれらの混合溶液等を用いることができる。また、上記除去工程における処理温度は特に制限されず、通常、室温で行うことができる。
(含窒素炭素系複合材料)
本発明の含窒素炭素系複合材料は、前述の含窒素炭素系多孔体を担体とし、そこにタンパク質、金属錯体又は金属が担持されてなるものである。
先ず、タンパク質が担持されている本発明の含窒素炭素系複合材料について説明する。ここで用いられるタンパク質としては、特に制限されず、各種の電子伝達タンパク質、各種の酸化還元酵素、各種の転移酵素、蛋白質分解酵素等の加水分解酵素(サチライシン、リパーゼ等)、カルボキシやアルデヒド等の脱離酵素、各種異性化酵素、リガーゼ等が挙げられる。中でも、電子の効率的授受が可能となるという観点から、電子伝達タンパク質及び酸化還元酵素からなる群から選択される少なくとも一つのタンパク質が好ましい。このような電子伝達タンパク質としては、チトクロームC、フェレドキシン等が挙げられる。また、酸化還元酵素としては、(i)電子伝達タンパク質を電子受容体又は電子供与体にする酸化還元酵素として、フェレドキシンNADPレダクターゼ、チトクロームCオキシダーゼ等、(ii)電子伝達分子(補酵素類、メチルビオロゲン類、ABTS等)を電子受容体あるいは電子供与体にする酸化還元酵素として、ラッカーゼ、ジアホラーゼ、リポキシアミドデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、グルコースオキシダーゼ(他の糖を基質にするオキシダーゼを含む)、グルコースデヒドロゲナーゼ(他に糖を基質にするデヒドロゲナーゼを含む)等が挙げられる。
本発明の含窒素炭素系複合材料において含窒素炭素系多孔体に担持されているタンパク質の量は特に制限されないが、得られる含窒素炭素系複合材料においてタンパク質が十分な活性を示すようになるという観点から、酵素活性が示されれば特に制限はないが、含窒素炭素系多孔体100重量部に対してタンパク質の担持量が0.01〜80重量部程度であることが好ましい。
また、含窒素炭素系多孔体にタンパク質を担持せしめて本発明の含窒素炭素系複合材料を得る方法も特に制限されず、昇華法、含浸法等の方法が用いることが可能であるが、以下の含浸法がより好適である。すなわち、先ず、タンパク質を沈殿が生じない濃度(好ましくは0.1mg/ml〜1000mg/ml)となるように水又は緩衝液に溶解させる。そして、その溶液が凍結することなく、またタンパク質が変性することのない温度(好ましくは0℃〜50℃)で含窒素炭素系多孔体を懸濁させて、少なくとも5分以上、好ましくは30分以上タンパク質と含窒素炭素系多孔体とを接触させることにより含窒素炭素系多孔体の細孔内にタンパク質が固定化されて本発明の含窒素炭素系複合材料が得られる。
上記溶液に含窒素炭素系多孔体を懸濁させる際の濃度は特に制限されないが、0.1〜1000mg/ml程度とすることが好ましい。また、上記担持工程の後に、更に、遠心分離等を行って含窒素炭素系複合材料を溶液と分離して取り出す工程を有していてもよく、また、乾燥等を行って液体成分を除去した状態の含窒素炭素系複合材料を得る工程を有していてもよい。
次に、金属錯体が担持されている本発明の含窒素炭素系複合材料について説明する。ここで用いられる金属錯体としては、特に制限されず、炭素骨格中の窒素原子と配位結合を形成することが可能な金属錯体であればよく、Pt、Pd、Ru、Os、Ir、Rh、Au、Fe、Ni、Cr、Mn、Co、Cu、Ti、Zn及びVからなる群から選択される少なくとも一つの金属を中心金属としかつ有機配位子を有する金属錯体が好ましいものとして挙げられる。このような有機配位子も特に制限されないが、ポルフィリン、フタロシアニン、サレン、ビピリジル等が挙げられる。
本発明の含窒素炭素系複合材料において含窒素炭素系多孔体に担持されている金属錯体の量は特に制限されないが、得られる含窒素炭素系複合材料において金属錯体が十分な活性を示すようになるという観点から、含窒素炭素系多孔体100重量部に対して金属錯体の担持量が0.1〜40重量部程度であることが好ましい。
また、含窒素炭素系多孔体に金属錯体を担持せしめて本発明の含窒素炭素系複合材料を得る方法も特に制限されないが、例えば以下の方法が好適に採用される。すなわち、先ず、前記金属錯体を溶媒に溶解及び/又は分散させた溶液を調製する。次に、その溶液に含窒素炭素系多孔体を懸濁させ、溶液中の金属錯体を含窒素炭素系多孔体に担持せしめて本発明の含窒素炭素系複合材料が得られる。
ここで用いられる溶媒は、金属錯体を溶解及び/又は分散させることが可能なものであればよく、特に制限されないが、例えば、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素系溶媒;メタノール、エタノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、2−ブタノン等のアルキルケトン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒が挙げられる。
上記溶液における金属錯体の濃度は特に制限されないが、0.1〜30mM程度とすることが好ましい。また、上記溶液に含窒素炭素系多孔体を溶解及び/又は分散させる際の濃度は特に制限されないが、0.1〜35mg/ml程度とすることが好ましい。
金属錯体を含窒素炭素系多孔体に担持させる際の吸着方法や条件等は特に制限はなく、例えば、溶液中に含窒素炭素系多孔体を投入し、10〜100℃程度で所定時間撹拌することによって金属錯体を含窒素炭素系多孔体に担持させることができる。また、上記担持工程の後に、更に、遠心分離等を行って含窒素炭素系複合材料を溶液と分離して取り出す工程を有していてもよく、また、乾燥等を行って液体成分を除去した状態の含窒素炭素系複合材料を得る工程を有していてもよい。
次に、金属が担持されている本発明の含窒素炭素系複合材料について説明する。ここで用いられる金属としては、特に制限されず、各種の貴金属や卑金属が用いられ、このような金属が含窒素炭素系多孔体に担持される際の状態としては、金属微粒子の状態であっても、金属イオンの状態であってもよい。
先ず、前記金属が金属微粒子の状態で担持されている含窒素炭素系複合材料について説明する。この場合に用いられる金属としては、微粒子を形成するものであればよく、特に制限されないが、Pt、Pd、Ru、Os、Ir、Rh、Au、Fe、Ni、Cr、Mn、Co、Cu、Ti、Zn及びVからなる群から選択される少なくとも一つの金属が好ましく、中でも触媒活性等の観点からPt、Pd、Ru、Os、Ir、Rh及びAuからなる群から選択される少なくとも一つの貴金属が好ましい。
本発明の含窒素炭素系複合材料における金属微粒子の平均粒径も特に制限されないが、10nm以下であることが好ましく、1〜5nmであるとより好ましい。また、本発明の含窒素炭素系複合材料において含窒素炭素系多孔体に担持されている金属微粒子の量は特に制限されないが、得られる含窒素炭素系複合材料において金属微粒子が十分な活性を示すようになるという観点から、含窒素炭素系多孔体100重量部に対して金属微粒子の担持量が0.1〜70重量部程度であることが好ましい。
また、含窒素炭素系多孔体に金属微粒子を担持せしめて本発明の含窒素炭素系複合材料を得る方法も特に制限されないが、例えば以下の方法が好適に採用される。すなわち、先ず、前記金属微粒子を構成する金属(好ましくは金属塩)の溶液を調製する。次に、含窒素炭素系多孔体及び前記金属溶液を含有する懸濁液を調製し、十分に攪拌混合した後、還元剤を加え、含窒素炭素系多孔体表面上に金属を還元析出せしめることにより金属微粒子が担持された本発明の含窒素炭素系複合材料が得られる。
ここで用いられる溶媒としては、前記金属(好ましくは金属塩)を溶解するものであればよく、特に制限されないが、水を用いることが好ましい。また、前記還元剤も特に制限されず、過酸化水素、水素化ホウ素ナトリウム等の水素化合物、次亜リン酸化合物等のリン化合物、硫化ナトリウム等のイオウ化合物、水和ヒドラジン等のヒドラジン誘導体等、従来公知の還元剤を適宜選択して使用することができる。
上記懸濁液における金属の濃度は特に制限されないが、0.01〜100mM程度とすることが好ましい。また、上記懸濁液における含窒素炭素系多孔体の濃度も特に制限されないが、0.01〜50mg/ml程度とすることが好ましい。
前記懸濁液中の金属を含窒素炭素系多孔体に担持せしめる際の吸着方法や条件等は特に制限はなく、例えば、前記懸濁液を20〜100℃程度で所定時間撹拌することによって金属を含窒素炭素系多孔体に担持させることができる。また、上記担持工程の後に、更に、遠心分離等を行って含窒素炭素系複合材料を溶液と分離して取り出す工程を有していてもよく、また、乾燥等を行って液体成分を除去した状態の含窒素炭素系複合材料を得る工程を有していてもよい。さらに、含窒素炭素系複合材料に担持された金属を還元せしめる方法及び条件等も特に制限はなく、例えば、含窒素炭素系複合材料を水素気流中で150〜300℃程度で所定時間還元せしめる方法が好適に採用される。
次に、前記金属が金属イオンの状態で担持されている含窒素炭素系複合材料について説明する。この場合に用いられる金属イオンとしては、炭素骨格中の窒素原子と配位結合を形成することが可能な金属イオンであればよく、Fe、Ni、Cr、Mn、Co、Cu、Ti、Zn及びVからなる群から選択される少なくとも一つの金属が好ましい。
本発明の含窒素炭素系複合材料において含窒素炭素系多孔体に担持されている金属イオンの量は特に制限されないが、得られる含窒素炭素系複合材料において金属イオンが十分な活性を示すようになるという観点から、含窒素炭素系多孔体100重量部に対して金属イオンの担持量が0.1〜50重量部程度であることが好ましい。
また、含窒素炭素系多孔体に金属イオンを担持せしめて本発明の含窒素炭素系複合材料を得る方法も特に制限されないが、例えば以下の方法が好適に採用される。すなわち、先ず、前記金属(好ましくは金属塩)を溶媒に溶解させた溶液を調製する。次に、その溶液に含窒素炭素系多孔体を懸濁させ、溶液中の金属イオンを含窒素炭素系多孔体に担持せしめて本発明の含窒素炭素系複合材料が得られる。
ここで用いられる溶媒は、金属(好ましくは金属塩)を溶解させることが可能なものであればよく、特に制限されないが、例えば、酢酸、水、エチレングリコール、DMSO、DMF等が挙げられる。
上記溶液における金属の濃度は特に制限されないが、0.01〜100mM程度とすることが好ましい。また、上記溶液に含窒素炭素系多孔体を分散させる際の濃度は特に制限されないが、0.01〜100mg/ml程度とすることが好ましい。
金属イオンを含窒素炭素系多孔体に担持させる際の吸着方法や条件等は特に制限はなく、例えば、溶液中に含窒素炭素系多孔体を投入し、好ましくは減圧下で25〜200℃程度で所定時間撹拌することによって金属イオンを含窒素炭素系多孔体に担持させることができる。また、上記担持工程の後に、遠心分離等を行って含窒素炭素系複合材料を溶液と分離して取り出す工程を有していてもよく、また、乾燥等を行って液体成分を除去した状態の含窒素炭素系複合材料を得る工程を有していてもよく、更に、含窒素炭素系複合材料を不活性雰囲気(例えばAr)中で400〜1000℃程度で所定時間熱処理せしめる工程を有していてもよい。
本発明の含窒素炭素系複合材料の使用方法は特に制限されず、例えば、触媒担体、電極材料等の様々な用途においてその一般的な使用方法で適用することが可能である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(合成例1)
先ず、図1に示すような熱CVD装置を用いて析出工程を行った。析出工程における反応雰囲気は全て窒素雰囲気とした。また、第1のバブラ4には含窒素有機化合物であるピロールが、第2のバブラ5には流動パラフィンがそれぞれ入れられている。キュービックIa−3d細孔配列構造を有するシリカメソ多孔体であるMCM−48をアルミナ製ボート3上に1g載せ、これを石英ガラス製の加熱反応管(石英反応管2)内に配置した。なお、MCM−48は、J.Phys.Chem.B 103,7435-7440(1999)に記載の方法に従って作製した。次に、第1の三方コック13を第1の配管8とバイパス9側に開いた状態とし、第2の三方コック14を第2の配管10とバイパス9側に開いた状態として、流量300ml/minで窒素ガスを流通させながら700℃まで昇温加熱した。700℃まで昇温後、加熱状態を1時間維持した後、第1の三方コック13を配管8と第1のバブラ4側に開いた状態とし、第2の三方コック14を第2の配管10と第1のバブラ4側に開いた状態とした。次いで、窒素ガスをキャリヤガスとして流量300ml/minで第1のバブラ4に導入してピロールを蒸気蒸発させ、気体状態のピロールを含有する室温の窒素ガスを上記温度に維持した石英反応管2内に流通させながら、CVD反応を9時間進行せしめた。このとき、MCM−48における含窒素炭素系材料の析出量は1.2gであった。CVD反応後、再び第1の三方コック13を第1の配管8とバイパス9側に開いた状態とし、第2の三方コック14を第2の配管10とバイパス9側に開いた状態として、窒素ガスを流量300ml/minで流通させながら常温まで冷却した。
次に、除去工程を行った。すなわち、上記析出工程で得られたシリカメソ多孔体−含窒素炭素系材料複合体を、46%フッ酸(和光純薬工業社製、特級)とエタノールとの混合溶液(体積比50:50)中に分散させ、25℃で12時間撹拌することによって、シリカメソ多孔体を溶解除去し、含窒素炭素系多孔体を得た。次いで、得られた含窒素炭素系多孔体を1時間吸引ろ過してから、ろ紙上で、水とエタノールとの混合溶液(体積比50:50)を用いて洗浄し、更に前記混合溶液中に含窒素炭素系多孔体を分散させ、25℃で12時間撹拌した。その後、再び含窒素炭素系多孔体を1時間吸引ろ過し、ろ紙上でエタノールを用いて洗浄してから70℃で24時間風乾することで、表1に示す比表面積、平均細孔径、細孔容量及びN/C原子比を有する含窒素炭素系多孔体を得た。
(合成例2)
合成例1で合成された含窒素炭素系多孔体を更に800℃、12時間のCVD反応に供することによって細孔内に含窒素炭素を析出させることにより、表1に示す比表面積、平均細孔径、細孔容量及びN/C原子比を有する含窒素炭素系多孔体を得た。
(合成例3)
前記CVD反応の反応時間を12時間に変更した以外は合成例1と同様にして、表1に示す比表面積、平均細孔径、細孔容量及びN/C原子比を有する含窒素炭素系多孔体を得た。
(合成例4)
CVD原料を導入する前におけるMCM−48の加熱工程の条件を900℃、5時間に変更した以外は合成例1と同様にして、表1に示す比表面積、平均細孔径、細孔容量及びN/C原子比を有する含窒素炭素系多孔体を得た。
(合成例5)
MCM−48をSBA−15に変更した以外は合成例1と同様にして、表1に示す比表面積、平均細孔径、細孔容量及びN/C原子比を有する含窒素炭素系多孔体を得た。
(比較合成例1)
実施例1において用いたピロールに代えて窒素原子を含まない有機化合物であるベンゼンを使用し、析出工程におけるCVD反応時間を12時間とした以外は実施例1と同様にして、表1に示す比表面積、平均細孔径、細孔容量及びN/C原子比を有する炭素多孔体を得た。
Figure 0004587027
(実施例1)
Rhus vernificera由来ラッカーゼ(シグマ製L-2157)を10mg/mlの濃度で緩衝液(MilliQ水)に溶解し、酵素溶液5mlあたり200mgの合成例5で得られた含窒素炭素系多孔体を懸濁して、4℃で2時間、緩やかに攪拌しながら混和した。次に、含窒素炭素系多孔体を遠心分離により回収し、緩衝液(MilliQ水)で3回洗浄し、酵素が担持されている本発明の含窒素炭素系複合材料を得た。
回収した上澄み液と元の酵素溶液中の酵素活性とを比較することにより含窒素炭素系多孔体への酵素の担持量を計算したところ、担持量は19mg/100mg多孔体に達しており、添加したラッカーゼのほぼ80%が含窒素炭素系複合材料に安定的に担持されていることが確認された。
(実施例2〜5)
牛すい臓由来トリプシン(シグマ製T-8003)を15mg/mlの濃度で緩衝液(MilliQ水)に溶解し、酵素溶液5mlあたり200mgの合成例2〜5で得られた含窒素炭素系多孔体をそれぞれ懸濁して、4℃で2時間、緩やかに攪拌しながら混和した。次に、含窒素炭素系多孔体を遠心分離により回収し、緩衝液(MilliQ水)で3回洗浄し、酵素が担持されている本発明の含窒素炭素系複合材料を得た。
回収した上澄み液と元の酵素溶液中の酵素量を280nmの吸光度を指標に測定し、これを比較することにより多孔体への担持量を計算したところ、担持量は表2に示す通りであった。多孔体の細孔径により担持される酵素の量は異なっており、酵素の分子径より大きい細孔を有する多孔体は、酵素の分子径より小さい細孔を有する多孔体より、含窒素炭素系複合材料により多くの酵素が安定的に担持されていることが確認された。
Figure 0004587027
(実施例6〜7)
Cobalt(II)phthalocyanine錯体(実施例6、CoPc、Aldrich製)250mg及びZinc(II)phthalocyanine錯体(実施例7、ZnPc、Aldrich製)250mgをそれぞれトルエン/DMSO又はメタノールの混合溶媒中に溶解し、20mMの溶液を調製した。次に、合成例1で得られた含窒素炭素系多孔体500mgを精秤後、前記溶液に分散させて25℃で8時間撹拌し、含窒素炭素系多孔体上に金属錯体を担持せしめた。反応終了後、遠心分離(5500rpm、30分間)した後、ろ過して純水で洗浄し、更に真空乾燥(室温、24hrs)した後に粉砕し、金属錯体が担持されている本発明の含窒素炭素系複合材料を得た。
得られた上澄み溶液の紫外可視吸収スペクトルを測定し、吸光度変化(λ=700nm)から吸着による濃度変化量を求め、下記式に基づき吸着量を算出した。
吸着量(mg/100mgMPC)={(初期濃度)−(平衡濃度)}×(分子量)×10/1000
その結果、いずれの実施例においても含窒素炭素系複合材料に約31wt%の金属錯体が安定的に担持されていることが確認された。
(比較例1)
実施例1において用いた含窒素炭素系多孔体に代えて比較合成例1で合成した炭素多孔体を用いた以外は実施例6と同様にして金属錯体が担持されている炭素系複合材料を得た。この比較例において得られた炭素系複合材料においては約12wt%の金属錯体しか担持されていないことが確認された。
(実施例8)
ヘキサヒドロキシ白金酸を純水中に分散し、6%亜硫酸(H2SO3)水溶液を100ml投入して1時間攪拌した。その後120℃に加温して残留している亜硫酸を除去し、Pt薬液(4g-Pt/L)を得た。
次に、合成例1で得られた含窒素炭素系多孔体500mgを秤量して水中に分散し、そこに上記Pt薬液をPt重量と多孔体重量のとの比が3:2となるよう投入し、さらに20%H2O2水溶液を加え、120℃に加温して、含窒素炭素系多孔体上に白金を担持せしめた。反応終了後、得られた白金担持含窒素炭素系多孔体をろ過した後、純水で洗浄し、更に真空乾燥(室温、24hrs)した後に粉砕し、最後に水素気流中200℃で2時間還元して白金微粒子が担持されている本発明の含窒素炭素系複合材料を得た。
この実施例において得られた含窒素炭素系複合材料には約54.8wt%の金属微粒子(平均粒径2.1nm)が安定的に担持されており、触媒として有効なものであることが確認された。
(実施例9)
先ず、酢酸(ナカライテスク製、試薬特級)300mL中に0.6g(2.41×10-3mol)の酢酸コバルト(II)四水和物(ナカライテスク製、GR)を溶解した。次に、得られた溶液に合成例1で得られた含窒素炭素系多孔体0.3gを分散し、ロータリーエバポレータにて減圧下で回転させながら室温で1時間攪拌し、更に50℃で溶媒(酢酸)を除去せしめた。そして溶媒が概ね除去された後に、90℃に加熱して1時間、更に120℃に加熱して3時間減圧下で溶媒を完全に除去せしめて含窒素炭素系多孔体上にコバルトを担持せしめた。反応終了後、得られたコバルト担持含窒素炭素系多孔体を真空乾燥(80℃、12hrs)した後に大気中で放冷して粉砕し、最後にアルゴン気流中800℃で2時間熱処理してコバルトイオンが担持されている本発明の含窒素炭素系複合材料を得た。
この実施例において得られた含窒素炭素系複合材料には約29.6wt%のコバルトイオンが安定的に担持されていることが確認された。
(実施例10)
先ず、合成例1で得られた含窒素炭素系多孔体0.5g(乾燥重量)を、1mmol/Lの濃度に調整した硝酸銅(II)水溶液100mLに加え、25℃で48時間振とうを行い、銅イオンが担持されている本発明の含窒素炭素系複合材料を得た。その後、溶液をろ別し、ろ液中の銅イオン濃度を、島津製作所社製、ICPS-2000を用いてICP発光分光分析によって定量した。硝酸銅(II)水溶液の初期濃度とろ液の銅イオン濃度との差から、多孔体への銅イオン吸着量を求めたところ、この実施例において得られた含窒素炭素系複合材料には0.22mmol/gの銅イオンが安定的に担持されていることが確認された。
(比較例2)
実施例10において用いた含窒素炭素系多孔体に代えて比較合成例1で得られた炭素系多孔体を用いた以外は実施例10と同様にして銅イオンが担持されている炭素系複合材料を得た。この比較例において得られた炭素系複合材料においては0.04mmol/gの銅イオンしか担持されていないことが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、タンパク質、金属錯体又は金属という成分を高い担持量で担持しておりかつ担持成分の安定性及び活性にも優れている含窒素炭素系複合材料を得ることができる。したがって、本発明によれば、触媒や電極材料等の様々な用途に対して有用な含窒素炭素系複合材料を提供することが可能となる。
合成例で用いる熱CVD装置の概略図である。
符号の説明
1・・・電気炉、2・・・石英反応管、3・・・アルミナ製ボート、4・・・第1のバブラ、5・・・第2のバブラ、6・・・原料有機化合物、7・・・流動パラフィン、8・・・第1の配管、9・・・バイパス、10・・・第2の配管、11・・・第3の配管、12・・・第4の配管、13・・・第1の三方コック、14・・・第2の三方コック。

Claims (6)

  1. 炭素原子及び窒素原子により骨格が形成されている含窒素炭素系材料からなり、比表面積が300m 2 /g以上、平均細孔径が1〜50nm、窒素原子と炭素原子との原子比(N/C)が0.05〜0.4である多孔体と、前記多孔体に担持されているタンパク質、金属錯体又は金属とを備えることを特徴とする含窒素炭素系複合材料。
  2. 前記含窒素炭素系材料からなる多孔体が、比表面積が800〜1500m 2 /g、平均細孔径が2〜10nm、窒素原子と炭素原子との原子比(N/C)が0.08〜0.3のものであることを特徴とする請求項1に記載の含窒素炭素系複合材料。
  3. 前記タンパク質が、酸化還元酵素及び電子伝達タンパク質からなる群から選択される少なくとも一つのタンパク質であることを特徴とする請求項1又は2に記載の含窒素炭素系複合材料。
  4. 前記金属錯体が、Pt、Pd、Ru、Os、Ir、Rh、Au、Fe、Ni、Cr、Mn、Co、Cu、Ti、Zn及びVからなる群から選択される少なくとも一つの金属を中心金属としかつ有機配位子を有する金属錯体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の含窒素炭素系複合材料。
  5. 前記金属が、Pt、Pd、Ru、Os、Ir、Rh、Au、Fe、Ni、Cr、Mn、Co、Cu、Ti、Zn及びVからなる群から選択される少なくとも一つの金属の微粒子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の含窒素炭素系複合材料。
  6. 前記金属が、Fe、Ni、Cr、Mn、Co、Cu、Ti、Zn及びVからなる群から選択される少なくとも一つの金属のイオンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の含窒素炭素系複合材料。
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