JP4586338B2 - 水性顔料分散体用混練物及び水性顔料分散体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水性顔料分散体用混練物の製造方法及び水性顔料分散体用混練物、該混練物を水性媒体に分散させる水性顔料分散体の製造方法及び水性顔料分散体に関し、特にインクジェット記録用に適した前記水性顔料分散体用混練物、及び水性顔料分散体およびそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水性顔料分散体は、水を主成分とする液媒体中に顔料を分散したものであり、種々の製造方法によって得ることができる。例えば、分散体組成の構成成分全てを一括配合し分散機によって分散処理する方法、構成成分中の液状成分の量を減らし固形分濃度を高くし分散機によって分散処理した後に残りの液状成分を追加する方法、構成成分中の顔料、樹脂等の固形成分にわずかな量の液状成分を加えて固体の混練物とした後に該混練物を液媒体中に分散し顔料分散体を得る方法等が挙げられる。
【0003】
中でも、固体の混練物を作りこの混練物を液媒体中に分散し顔料分散体を得る方法は、他の方法に比べて、極めて大きなシェアを顔料粒子へ作用させることができるため、顔料の微粒子化が可能で粗大粒子を少なくできることから、有効な製造方法である。
【0004】
特に、微細なノズルからインク滴を噴射し印刷を行うインクジェット記録用として水性顔料分散体を用いる場合は、インクの長期保存安定性の確保やノズルでの目詰まり防止、印刷品質の向上の観点から、顔料を微分散させる必要がある。
【0005】
そこでたとえば、顔料と水溶性樹脂又は水分散性樹脂と、必要に応じて水および/または有機溶剤とを2本ロールにより混練し固形チップとし、前記固形チップを塩基性化合物を含む水性媒体に分散させることによって水性顔料分散体を製造する方法が提案されている。(特許文献2、特許文献3参照。)
【0006】
しかし顔料は、一般に乾燥粉末として流通しているが、顔料の乾燥工程では顔料粒子同士が二次凝集を起こし、粗大粒子が生じる。乾燥後の二次凝集した顔料粒子を一次粒子の大きさにまで分散させるのは容易ではない。
【0007】
一方、乾燥工程前の顔料の水性ペーストは、顔料が凝集することなく微細な一次粒子を保っており、乾燥顔料に比べて微粒子化し易い。この特性を利用して印刷インキの分野では、顔料の水性ペーストと液状の樹脂(ワニス)を混練し水相の顔料を樹脂相に移行させる顔料フラッシング法が用いられている。
また顔料の水性ペーストと樹脂を混合混練する製造方法として水性の顔料ペーストと樹脂とを混練して水性相の顔料を樹脂相に移行させ、しかる後に水を除去することを特徴とする顔料樹脂組成物の製造方法がある。この方法は有機溶剤を使うことなく、常温で固体の樹脂をフラッシング時に加熱し軟化又は溶融してフラッシングを行うことを特徴としている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−175770号公報(第2頁、左上欄)
【特許文献2】
特開平6−157954号公報
【特許文献3】
特開2000−80299号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらフラッシングを用いたの製造方法で得られた顔料樹脂組成物はプラスチック用の着色剤を目的としており、水性顔料分散体用混練物としては水性媒体へ分散しにくい問題があった。
また、特にインクジェット記録用水性インク組成物への適用を考慮した場合、顔料の分散粒径が充分細かくなっているとは言えず、長期にわたる保存時の安定分散の保持や、吐出性の点で問題がある。
本発明は前記問題を解決するためになされたもので、水性媒体への分散が容易であって、かつ顔料が安定して微分散された水性顔料分散体を作製可能な水性顔料分散体用混練物及びその製造方法を提供することを課題目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、顔料と樹脂と水溶性有機溶剤を含有する水性顔料分散体用混練物の製造方法であって、顔料の水性ペーストと樹脂と、沸点が100℃より高い水溶性有機溶剤を含有する混合物を、脱水処理を行いつつ混練する混練工程を有することを特徴とする水性顔料分散体用混練物の製造方法を提供する。
【0011】
さらにまた本発明は、顔料と樹脂と水溶性有機溶剤を含有する水性顔料分散体用混練物であって、顔料の水性ペーストと樹脂と、沸点が100℃より高い水溶性有機溶剤を含有する混合物を、脱水処理を行いつつ混練する混練工程を経て製造したことを特徴とする水性顔料分散体用混練物を提供する。
【0012】
本発明の水性顔料分散体用混練物の製造方法においては、顔料の水性ペーストと樹脂と水溶性有機溶剤を含有する混合物を脱水処理を行いつつ混練するため、混練途中で被混練物の固形分濃度を適宜上昇させることができる。このため混練中に被混練物に高いシェアをかけながら混練を進行させることができ、しかも乾燥工程による構成粒子の凝集を発生していない顔料の水性ペーストを原料として使用しているため、顔料粒子が樹脂中に良好に微分散した水性顔料分散体用混練物を作製することができる。
【0013】
さらに本発明は前記水性顔料分散体用混練物を水性媒体中に分散させることを特徴とする水性顔料分散体の製造方法、および前記製造方法で製造される水性顔料分散体を提供する。
さらにまた本発明は前記水性顔料分散体を水性媒体を用いて希釈するする工程を経て製造されることを特徴とするインクジェット記録用インク組成物を提供する。
【0014】
本発明の水性顔料分散体は、顔料表面を樹脂で被覆した樹脂被覆顔料粒子が水性溶媒中に微分散しており、本分散体を用いたインクジェット記録用水性インク組成物は、分散安定性、長期保存安定性に優れている。
なお、本明細書では、水性顔料分散体用混練物の製造工程において混練前の原料混合物を混合物、混練中または混練後の原料混合物を混練物とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明における製造方法の混練工程は、撹拌翼と減圧可能な撹拌槽を有した混練装置を用い、該撹拌槽の内部を減圧し顔料ペーストの水分を攪拌槽外へ排出して行われるものであることが好ましい。
【0016】
この様な構成の混練機を用いると、含水率の高い顔料の水性ペーストを含む低粘度の混合物の混練も容易であって、脱水処理と混練を行って良好に水性顔料分散体用混練物を製造することができ、これを同一撹拌槽中で直接水性溶媒で希釈し分散させて、水性顔料分散体を製造することができる。さらに減圧可能な攪拌槽の減圧操作により、減圧度、減圧時間を調整し、さらに加熱温度を調整することにより、脱水速度や混練時における混練物の固形分比、混練粘度などを制御することが可能である。
【0017】
本発明に用いる樹脂はアニオン性基を有する樹脂であることが、水性顔料分散体中の顔料の分散安定性の点で好ましい。
さらに本発明の製造方法に用いる混合物中には塩基性化合物が含有されていることが好ましい。
【0018】
アニオン性基を有する樹脂と塩基性化合物とを混合することにより、前記アニオン性基が中和された樹脂を含有する水性顔料分散体用混練物が得られる。その結果、水性顔料分散体用混練物と水との親和性が向上し、水性顔料分散体の製造時に、水性顔料分散体用混練物が水中に速やかに分散するため製造効率が向上する。また、水性顔料分散体中の樹脂被覆された顔料粒子の分散状態がより安定となり、分散安定性、長期保存安定性も向上する。
また、塩基性化合物を配合すると、塩基性化合物とアニオン性基を有する樹脂との相互作用によって、顔料が樹脂に強固に被覆されやすい状態で混練することができる。また樹脂自体も容易に膨潤あるいは軟化し易くなるため、高シェア下の混練に最適な粘土状の混合物が形成されやすい。このため粗大粒子が減少しやすくなり、後の工程で粗大粒子を除去する工程を省略でき、全体的に収率が向上する。
【0019】
以下、本発明に用いる各構成について以下に詳細に説明する。
(顔料)
本発明で用いる顔料は、公知のものを使用することができる。例えばカーボンブラック、チタンブラック、チタンホワイト、硫化亜鉛、ベンガラなどの無機顔料;モノアゾ系、ジスアゾ系などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、レーキ顔料などの有機顔料などを用いることができる。
【0020】
本発明で使用する顔料の水性ペーストは、水分を含んだ顔料ペーストであって、顔料製造工程の乾燥工程を経る前の形態であり、顔料合成後の水洗やソルトミリング後の水洗等の洗浄工程終了後の顔料が好ましい。顔料の水性ペーストとして洗浄工程終了後の顔料を用いる場合は、ペースト中の含水率が高いため混練工程における脱水量も多くなり、脱水工程への負荷が高くなる。脱水工程への負荷を低減する方法として、顔料製造時の洗浄工程終了後のろ過工程で得られるプレスケーキを用いることが好ましい。顔料によって異なるが、工業的に製造されるプレスケーキの含水率は50%以上である場合がほとんどであり、プレスケーキの含水率を50%未満とするには、ろ過とは異なる手段を用いて顔料を濃縮しなければならず、効率的ではない。また、含水率を低くしすぎると乾燥による凝集が生じるため好ましくない。本発明の顔料ペーストの含水率は50%以上が好ましく、50%〜90%の範囲が特に好ましい。
本発明の水性顔料分散体をインクジェット記録用に用いる場合においては、顔料の水性ペーストとしては、インクジェット記録用に用いられる公知の顔料が利用できる。特に、アゾ顔料は、優れた着色力の面から望ましい。
特に、赤や黄色、オレンジ色の不溶性アゾ顔料が好ましい。これらは、カラーインデックスに色相と化学構造において分類されているものである。
本発明に用いられる不溶性アゾ顔料の水性ペーストとしては、特にモノアゾ顔料水性ペーストが好ましく、具体的には、C.I.ピグメントイエロー74の水性ペースト、C.I.ピグメントイエロー151の水性ペースト、C.I.ピグメントイエロー154の水性ペーストが挙げられる。
特に、C.I.ピグメントイエロー74は、ニトロ基を含有する、高い着色力の顔料であり、高温衝撃による反応性を未然に防ぐためにも、水性ペーストで利用することが好ましい。
【0021】
(樹脂)
本発明において使用する樹脂は、公知のものを使用することができる。例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂、マレイン酸系樹脂、ポリビニール酢酸系樹脂、ポリビニールスルフォン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニールアルコール系樹脂、ポリピロリドン樹脂、セルロース系樹脂などを例示することができる。特にアニオン性基を有する樹脂が好ましい。
【0022】
アニオン性基を有する樹脂は、少なくとも1種以上のアニオン性基を有するモノマーを、モノマー成分の一つとして重合させたものであり、該アニオン性基を含むモノマーは親水性基として機能する。なお重合に用いられる他のモノマー中には、疎水性基を有する疎水性モノマーが含有されていることが好ましく、アニオン性基を有する樹脂としては、アニオン性基からなる親水性基を有するモノマー成分と、疎水性基を有するモノマー成分が共存している樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
アニオン性基を有するモノマーとしては、カルボン酸、スルホン酸、リン酸基を有するモノマーなどを例示することができる。特に分散安定性、長期保存安定性の点から、カルボキシル基を有するモノマーが好ましく、例えば(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸などが挙げられる。
【0024】
本発明においては、特に(メタ)アクリル酸に由来する構造を有している(メタ)アクリル酸系モノマーをアニオン性基を有するモノマーとして用いたアクリル酸系樹脂であることが好ましい。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタアクリレートを示し、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/又はメタアクリル酸を示す。
また、前記樹脂に用いる疎水基を有する疎水性モノマーとしては、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリルエステル;
スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有の(メタ)アクリル酸エステル;
スチレン、αメチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;
アクリロニトリル;アクリルアミド;酢酸ビニル;塩化ビニル;ビニルピロリドン;ビニルアルコール;エチレン;などを例示することができる。
中でもスチレン系モノマー、さらにはスチレンモノマーが好ましい。
これらは1種又は2種以上併用して用いることができる。
【0025】
本発明において用いる樹脂としては疎水性モノマー成分であるスチレンモノマー成分と アニオン性基を有するモノマー成分とからなる共重合体樹脂などが好ましい。
スチレンモノマー成分とアニオン性基を有するモノマー成分からなる共重合体樹脂においては、分散安定性、長期保存安定性の点から、スチレンモノマー成分が50質量%以上、95質量%以下含まれていることが好ましく、さらには好ましくは70質量%以上、95質量%以下含まれていることが好ましい。
共重合体樹脂中のスチレンモノマー成分の含量を50質量%以上とすることにより、共重合樹脂の疎水性が増加し、水系においてはより強固に顔料への樹脂被覆が行われるため好ましい。その結果、水性顔料分散体を経て作製されたインク組成物をインクジェットに用いたときに、樹脂被覆粒子が加熱されても、その粒径が安定であり、粒径安定性が向上する。このため、吐出安定性が向上し、かつ高い印字濃度が得られる。さらに被記録媒体上の塗膜の耐久性の向上にも効果的である。なお、95質量%を超えると分散に寄与するアニオン性基を有するモノマー成分の含有量が低下し、水系での分散安定性、長期保存安定性が低下するおそれがある。
【0026】
なお本発明において、単にモノマーという場合には、重合前のモノマーを指し、モノマー成分という場合には、樹脂中に含まれるモノマー由来の構造を示すものとする。
【0027】
また、長期的な保存安定性と印刷塗膜の耐久性の点から、樹脂の酸価は60〜300mgKOH/gが好ましく、さらに好ましくは100〜180mgKOH/g、最も好ましくは120〜170mgKOH/gの範囲とされる。なお酸価とは、樹脂1gを中和するに必要な水酸化カリウム(KOH)のミリグラム(mg)数でありmgKOH/gにて示す量である。
酸価が60より小さいと、親水性が小さくなり、顔料の分散安定性が低下するおそれがある。一方、酸価が300より大きいと、顔料の凝集が発生し易くなり、またインク組成物を用いた印刷物の耐水性が低下するおそれがある。
【0028】
アニオン性基を有する樹脂の重量平均分子量は3000〜50000が好ましく、さらに好ましくは4000〜40000、最も好ましくは5000〜30000とされる。3000以上とされる理由は、低分子量である程初期的な分散性が優れているが、長期的な保存安定性が低下する傾向があるためである。なお、50000を越えると水性顔料分散体の粘度が高くなるだけでなく、樹脂の分散性、溶解性などが低下する傾向にある。
【0029】
また、樹脂のガラス転移点は90℃以上が好ましく、さらに好ましくは100℃以上、実質的には150℃以下とされる。
ガラス転移点が90℃以上であると、インク組成物によって形成された画像の耐久性が向上し、また、インク組成物の熱安定性が向上する。このため該水性顔料分散体から作製されたインクジェット記録用水性インク組成物をサーマルジェットタイプのインクジェット記録用に用いても、加熱によって吐出不良を起こすような特性変化を生じず、好ましい。なお、樹脂のガラス転移点は分子量などの変更によって調整することができる。
【0030】
(顔料/樹脂の質量比率)
混練のためには樹脂/顔料の質量比率が一定範囲であることが好ましい。すなわち樹脂が少ないと混練機中で混練物がまとまらず、高いシェアをかけての混練がやりにくくなる。一方この範囲を超える過剰の樹脂が多量に含有されていると、顔料の表面に付着せずに、水性媒体中へ粒子状態や溶解状態で存在する樹脂が増加することになり、水性顔料分散体の粘度が上昇したり分散安定性を損なうため好ましくない。樹脂の最適量は顔料の表面を一様に被覆できるだけの量であるが、この顔料表面を一様に被覆できるだけの量は、顔料の構造や表面活性によって異なるため、個々の顔料に合わせて適宜選択する必要がある。
本発明の水性顔料分散体用混練物中の樹脂/顔料の質量比率は1/10〜2/1であることが好ましく、1/10〜1/1であることがさらに好ましい。
【0031】
(塩基性化合物)
塩基性化合物としては、無機系塩基性化合物、有機系塩基性化合物のいずれも用いることができる。アルカリ強度を調整し易い点において、無機系塩基性化合物がより好ましい。
無機系塩基性化合物としては、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム;カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩;などを例示することができる。
中でも、中和によってアニオン性基を含む樹脂の分散性を高めるのに効果的な強アルカリの使用が好ましく、具体的には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物が好ましい。
なお、無機系塩基性化合物は混合性向上の点などから、20〜50質量%濃度程度の水溶液の形態で用いられることが好ましい。
【0032】
有機系塩基性化合物としてはアミンなどが挙げられる。例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどの一般的なアミンを例示することができる。アミンの場合は一般に液体状であるので、特に溶液を作製する必要がなく、そのままの形態で用いることができる。
【0033】
本発明のアニオン性基を有する樹脂に対する塩基性化合物の添加量としては、中和率として20%相当量以上が必要である。塩基性化合物の添加量が20%相当量未満であると、樹脂のアニオン性基の中和が不十分となり、樹脂の分散性、溶解性の不足を生じ混練性が悪化する。40%以上の中和率に相当した塩基性化合物の添加量が好ましく、添加量の上限値については特に限定はしないが200%相当量以下が好ましい。最も好ましい塩基性化合物の添加量としては、中和率で50%から120%相当量である。
なお、本発明の中和率は、下記の式によって計算される値である。
中和率(%)=((塩基性化合物の質量(g)×56×1000)/(樹脂酸価×塩基性化合物の当量×樹脂量(g)))×100
【0034】
(混練時に使用する水溶性有機溶剤)
顔料の水性ペーストと樹脂とともに配合して混合物を構成し、水性顔料分散体用混練物を作製するための水溶性有機溶剤としては、水より沸点の高い公知の水溶性有機溶剤を特に制限なく使用することができる。特に沸点が130℃以上の水溶性有機溶剤は脱水処理時に水とともに揮散する量を抑えることができるため好ましい。
【0035】
本発明において使用できる水溶性有機溶剤としては、
例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールテトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;
ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、およびこれらと同族のジオールなどのジオール類;
ラウリン酸プロピレングリコールなどのグリコールエステル;
エチレングリコールモノブチルエーテル、カルビトールなどのジエチレングリコールエーテル類;
ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシル、プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブなどのモノグリコールエーテル類;
1-ブタノール、2-ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、およびこれらと同族のアルコールなどのアルコール類;
あるいはスルホラン、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンなどのラクタム類、グリセリン及びその誘導体など、その他水溶性有機溶剤として知られる他の各種の溶剤のうち沸点が100℃より高いものを使用することができる。
【0036】
これらの水溶性有機溶剤は1種又は2種以上混合して用いることができる。
水溶性有機溶剤の選択は、使用する樹脂によって決まる。使用する樹脂に対して溶解性の高い水溶性有機溶剤はが、水性顔料分散体中に残存すると、顔料に吸着あるいは顔料を被覆している樹脂を溶解して、顔料の凝集を進行させやすい。このため使用する樹脂に対して溶解性が弱いか、または溶解性がなく、該樹脂を膨潤するにとどまる水溶性有機溶剤を使用することが好ましい。
【0037】
中でも、水性顔料分散体やインク組成物において、乾燥防止剤としての役割も果たすため、高沸点、低揮発性で、高表面張力の多価アルコール類が好ましく、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類が好ましい。グリコール類は一般的にインク組成物に含まれている場合が多く、最終製品中に残留しても問題がないため好ましい。
【0038】
なお、水溶性有機溶剤は、使用する樹脂によっても異なるが、通常は仕込みの混合物中に2〜40質量%配合されることが好ましく、5〜30質量%配合されることがさらに好ましい。その添加量は、樹脂量の1/5〜6倍程度が好ましく、樹脂量の1/2〜4倍程度であることがさらに好ましい。水溶性有機溶剤の量が樹脂量の1/5未満では樹脂を溶解、部分溶解、または膨潤させることが困難となる傾向にあり、顔料の分散安定性が低下する傾向がある。また6倍を超えると脱水後の混練物粘度が低下しやすく、十分な混練が行えなくなる傾向があるため、顔料の分散性が低下しやすく、インク組成物において、吐出不良等の画質低下を生じさせる傾向がある。なお、上述の様に、塩基性化合物などに由来して溶剤の役割を果たすものが他に配合されている場合には、これを考慮して水溶性有機溶剤の組成および配合量を決定することが好ましい。
【0039】
また、水溶性有機溶剤は顔料に対して、質量比で1/10〜6倍以上配合することが好ましく、1/8〜1倍配合するとことがさらに好ましい。これにより、脱水が進むにつれ樹脂が常に半溶解もしくは膨潤状態となりつつ混練工程が進行し、顔料表面への樹脂被覆が良好に行われる。1/10倍未満では、樹脂を溶解、部分溶解、または膨潤させることが困難となりやすく、その効果を充分に得にくくなる傾向がある。
【0040】
(混練方法)
混練用の混合物を構成する顔料の水性ペースト、樹脂、水溶性有機溶剤、好ましくはさらに塩基性化合物の各成分を、前述した配合範囲で適宜混合して混練装置にて混練を行う。
本発明においては、例えばサンドミル等で水性媒体中に上記成分を分散させて低粘度の水性顔料分散体を一度に作製するのではなく、まず、顔料の水性ペーストを樹脂と水溶性有機溶剤と共に脱水しながら混練した後に水性媒体に分散する。脱水をしながら同時に混練することで、顔料の乾燥工程に由来する二次凝集による粗大粒子の発生を防止し、得られた水性顔料分散体用混練物を水性媒体に分散させることによって、一次粒子の微粒子を維持した樹脂被覆顔料粒子の水性顔料分散体が得られる。
【0041】
なお、混練用の混合物には塩基性化合物を添加することが好ましい。塩基性化合物の添加によって樹脂が軟化、あるいは膨潤状態となるため特に樹脂のTg以上に混練物を加温しなくても混練が可能となる。塩基性化合物とアニオン性基を有する樹脂とを用いることによって凝集による粗大粒子の発生を防止することができると同時に、樹脂を吸着または樹脂に被覆された顔料の水性媒体中への易分散が容易となる。そのため、この粗大粒子を除去する工程の省略、水性媒体への混練物の分散時間の短縮をすることができ、製造効率、収率が向上するという効果もある。
【0042】
(混練装置)
効率的に減圧脱水混練するためには、減圧可能な構造の攪拌槽を有する混練装置を用いることが好ましい。減圧脱水中の混練物は発泡するため、減圧度や加熱温度の設定により発泡を抑える必要がある。加熱温度の制御に比べて減圧度の制御の方が追従性が良く微調整が可能であることから、混練物の発泡状況に合わせて可能な限り減圧しながら混練することが効率的であり好ましい。混合物の温度設定は室温〜100℃の範囲が好ましい。この様な混練装置としては、減圧可能な撹拌槽と、一軸あるいは多軸の撹拌羽根を備えた混練装置が好ましい。撹拌羽根の数は特に限定しないが、高い混練作用を得るためには二つ以上の撹拌羽根のものが好ましい。
【0043】
この様な装置としてはヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサーなどが例示され、特にプラネタリーミキサーなどが好適である。本発明においては、顔料の水性ペーストに由来する水分量が変化しながら混練するため、混練物の粘度が広い範囲で変化するが、プラネタリーミキサーは特に低粘度から高粘度まで広範囲に対応することができるためである。
【0044】
プラネタリーミキサーは、互いに自転と公転を行う2軸の撹拌羽根を使用して、撹拌槽中の混練物を撹拌、混練する構造を有しており、撹拌槽中に撹拌羽根の到達しないデッドスペースが少ない。また羽根の形状が肉厚で高負荷をかけることができるが、一方では撹拌羽根を撹拌槽中で回す通常の撹拌機の様に使用することもできる。このため高負荷領域から低負荷領域まで、処理対象にできる被混練物の幅が広く、混練終了後の混練物にそのまま水性媒体を添加し、希釈、撹拌、分散する操作の全てを、プラネタリーミキサーから混練物を取り出さずに、同じミキサーの中で行うことができる。
【0045】
撹拌槽の減圧方法は、公知の方法の中から適宜選択すれば良い。例として真空ポンプを用いた減圧方法、アスピレーターを用いた減圧方法等が挙げられる。混練物から発生する水蒸気中には、顔料や樹脂に由来する揮発性成分が混入する場合があり、脱水された水は何らかの廃水処理が必要となることがある。大気や水の汚染防止の観点から、また真空ポンプを用いる場合は水分混入からポンプを保護するため、トラップを設置し蒸気を回収することが好ましい。また、水分含有量の多い減圧脱水混練の初期には、発泡によって減圧度を上げられない状況が続くため、減圧用以外に大気開放口を1カ所以上設け撹拌槽中へ外気を導入しながら運転すると、発生した水蒸気を効率よく撹拌槽外に排出できるため好ましい。更に大気開放口に流量制御弁を設置すると、外気の流入量を調整することで撹拌槽内の減圧度制御がし易くなるのでより好ましい。前記流量制御弁の制御を撹拌槽内の減圧度を検知しながら行う方法が特に好ましい。
【0046】
図1〜図3はプラネタリーミキサーの構成の一例を示したものである。図中符号1は撹拌槽であって、この中空円筒形の撹拌槽1は上下に略二分割されている。そして、撹拌時には上方部材2と下方部材3とが一体化し、閉鎖系となる。撹拌槽1の上方部材2の内側には図2に拡大図で示した様に、枠型ブレードからなる撹拌羽根4、5が一つのローター6に保持されている。ローター6が回転(公転)すると、撹拌羽根4、5は同一方向に回転(自転)する。そして、図3に示した様に、ローター6の公転運動とともに2本の撹拌羽根4、5がそれぞれ自転運動する、いわゆる遊星運動(プラネタリー運動)をする。なお、図3に示したのは公転一回転における、2本の撹拌羽根4、5の先端の軌跡である。
【0047】
プラネタリーミキサーにおいては、この様な撹拌羽根4、5のプラネタリー運動により、撹拌羽根4、5相互間、および撹拌羽根4、5と撹拌槽1内面との間で強力な剪断力が作用し、高度の撹拌、混練、分散作用が得られる。
すなわち、混合物を所定の温度(例えば70℃)に加温しつつ撹拌槽内を減圧し、混ぜ合わせていると、脱水が進むに従って混練物が液状から粘ちょうとなり混練されることにより、撹拌羽根4、5の回転に大きな負荷がかかる。このとき、撹拌羽根4、5相互間およびこれら撹拌羽根4、5と撹拌槽1との間において、材料に大きな剪断力が印加され、混合物のが効率的に行われる。
【0048】
(水性顔料分散体の製造方法)
水性顔料分散体は混練終了後の混練物を水性媒体中に分散させて作製することができる。本発明で水性媒体とは、水または水と水溶性有機溶剤の混合溶媒であって、水性媒体を構成する水溶性有機溶剤としては、公知のものを特に制限なく使用することができ、特にインクジェット記録用水性インク組成物を作製するときは、乾燥防止剤としての役割も果たすため、高沸点、低揮発性で、高表面張力の多価アルコール類が好ましく、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類が好ましい。このような水性媒体に混練終了後の混練物を分散させるには、公知の混合溶解装置を特に制限なく使用することができる。本発明の水性顔料分散体用混練物は水性媒体に対するなじみが良く、固体の混練物として取り出した後、撹拌機によって混合撹拌し溶解する方法、混練を行った撹拌翼と撹拌槽を有する混練装置から取り出さずに水性媒体を添加しながら溶解する方法等が挙げられる。特に後者は、混練物から水性媒体中への被覆顔料粒子の移行がスムーズに進むため微分散し易いこと、作業効率等の観点から好ましい。
【0049】
とくにアニオン性基を有する樹脂を用い、塩基性化合物を添加した混合物を混練して製造した水性顔料分散体用混練物は、水性媒体への分散が極めて容易に進行するため好ましい。
【0050】
水性顔料分散体の分散には公知の分散機を特に制限なく用いることができる。分散機の運転条件設定は、分散機の特性や水性顔料分散体の特性を考慮し、適宜設定すればよい。分散機の例として、メディアを用いた分散機としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、アジテーターミル等が挙げられる。また、メディアを用いない分散機としては、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機等が挙げられる。中でも、メディアを用いた分散機は分散能力が高く、好ましい。
分散の際の水性顔料分散体中の混練物濃度は、使用する分散機の特性に合わせて適宜選択すれば良いが、10〜30質量%の範囲が好ましい。
【0051】
(インクジェット記録用水性インク組成物)
本発明の水性顔料分散体をインクジェット記録用水性インク組成物に使用すると、インクの分散安定性、長期保存安定性が優れており、ノズルでの目詰まりのないインクが得られる。適用するインクジェットの方式は特に限定するものではないが、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型など)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式など)などの公知のものを例示することができる。
【0052】
インク組成物は上述のようにして得られた水性顔料分散体を更に水性媒体で希釈して製造することができる。インク組成物中に含有される顔料濃度は2〜10質量%が好ましい。
【0053】
水性顔料分散体を希釈する水性媒体は、ノズルでの乾燥防止、粘度調整、顔料濃度調整等を目的に組成を設計する。水性媒体に用いる水溶性有機溶剤としては、前述の水溶性有機溶剤の項目に例示した化合物を挙げることができる。使用する水溶性有機溶剤の種類や量は、目的とするインク組成物に合わせて適宜選択決定することができる。
【0054】
(インク組成物の製造)
本発明の水性顔料分散体体の分散粒子は、既に十分な分散安定性を有しており、インク組成物とする際に分散装置等による分散行程は必要なく、一般的な混合手段によって混合希釈すれば良い。その際、水性顔料分散体と水性有機溶剤、添加剤等とを直接混合するのではなく、水性有機溶剤、添加剤等を水と混合した水性媒体としてから水性顔料分散体と撹拌混合することが好ましい。
【0055】
なおインク組成物には水性顔料分散体と水性媒体の他に、公知の添加剤などを配合することができる。
配合可能なものとしては、アルカリ剤、pH調整剤、界面活性剤、防腐剤、キレート剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線硬化性樹脂などを例示することができる。
【0056】
【実施例】
以下、本発明を実施例を示して詳しく説明する。
なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
本実施例で用いた樹脂は以下の通りのものである。
樹脂A:モノマー組成比において、スチレン/メタアクリル酸/アクリル酸=77/13/10(質量比)であり、質量平均分子量12000、酸価151mgKOH/g、ガラス転移点107℃である樹脂。
【0057】
[実施例1]
(混練装置)
容量50Lの真空仕様のプラネタリーミキサーPLM−50((株)井上製作所製)を使用した。撹拌槽から2本のエアラインを確保し、1本はアスピレーターA−3S型(東京理化器械(株))へ接続し、残りの1本はニードルバルブを介して大気開放とした。脱水開始から一定量の水分を除去するまでの間は混合物の発泡があるため、ニードルバルブの開度によって泡がオーバーフローしないように真空度を調整し、発泡が少なくなってからはニードルバルブから微量の空気を槽内に送り込むことで槽内に対流を作り、発生した水蒸気を効率的に槽外へ排出しながら運転した。撹拌翼は高速モード(自転毎分59回転、公転毎分20回転)で運転し、ジャケットには70℃の温水を流し加温した。
【0058】
(水性顔料分散体用混練物)
下記組成の混合物を仕込み減圧しながらプラネタリーミキサーの運転を行った。
樹脂A 1500g
C.I.ピグメントイエロー74ペースト 15000g
(含水率66.6%、顔料5000g:山陽色素社製Fast Yellow7413A)
ジエチレングリコール 1000g
34質量%水酸化カリウム水溶液 675g
運転開始から20分で混合物は液状となり、17時間後には泡立ちが減少し始めた。アスピレーターの水温は5〜10℃の範囲になるように冷却しながら運転したが、17時間以降は水温上昇が激しくなり冷却が追いつかなくなった。運転開始から23時間後にはプラネタリーミキサーの運転電流値がそれまでの5Aから6Aへと上昇し、運転開始から24時間後には6〜8Aの間で推移するようになった。この時の混練物は当初の液状ではなく固形状であった。運転開始から25時間後に減圧をやめ、常圧にて運転を継続した。運転開始から29時間後に混練を終了し、水性顔料分散体用混練物を得た。
【0059】
(水性顔料分散体)
引き続きプラネタリーミキサーで混練物にイオン交換水を追加し、混練物の溶解を行った。プラネタリーミキサーの運転条件は混練時と同じまま、イオン交換水8000gを2時間掛けて徐々に加えた。当初固形であった混練物は、イオン交換水の追加量が増えるに従い再び液状となり、溶解した。得られた溶液は16.4kg、固形分濃度37%、マイクロトラックUPA−150(日機装(株))を用いた分散顔料の体積平均粒径値は58nmであった。
【0060】
あらかじめイオン交換水とジエチレングリコールを混合した後、得られた溶液に加え、分散撹拌機(淺田鉄工(株))で30分間撹拌し、泡が消えるまで一晩放置した。
混練物溶液 16.4kg
イオン交換水 4.8kg
ジエチレングリコール 3.7kg
この顔料分散液を、ビーズミル(淺田鉄工(株)ナノミルNM−G2L)にて下記条件で2回分散機を通す(2パス)ことで分散を行い黄色水性顔料分散体を得た。
得られた黄色水性顔料分散体は、固形分濃度24%、顔料濃度18%、マイクロトラックUPA−150(日機装(株))を用いた体積平均粒径値は25nmであった。
【0061】
(インクジェット記録用水性インク組成物)
水性顔料分散体を用いて下記配合で混合した後、ポアサイズ5μmのメンブランフィルターにて濾過しインク組成物を得た。配合順序は、水性顔料分散体以外の組成を計量混合した水性媒体中へ水性顔料分散体を撹拌しながら加え均一に混合した。インク組成物の粘度は2.8mPa・s、表面張力は41mN/m、pHは10.1であった。
水性顔料分散体 22.5部
ジエチレングリコール 11.0部
サンニックスGP-600 5.0部
(三洋化成工業(株))
イオン交換水 59.0部
【0062】
(インク組成物の印刷評価)
得られたインク組成物を市販のインクジェットプリンターEM−900C(セイコーエプソン(株))に充填し印刷評価を行った。連続吐出安定性は良好であり、鮮明な印刷物が得られた。
【0063】
[比較例1]
(樹脂水溶液の作製)
下記配合で樹脂Aのメチルエチルケトン溶液を作製した。
メチルエチルケトン(以下、MEKと略記する) 50g
樹脂A 50g
これにイオン交換水267g、34質量%の水酸化カリウム(KOH)水溶液17gを加え、良く撹拌し、樹脂A溶液を得た。
この樹脂A溶液について、ウォーターバス温度45℃、40hPaの減圧条件でMEKを除去し、樹脂溶解アルカリ水溶液を得た。
得られた、樹脂溶解アルカリ水溶液の固形分濃度を測定し、固形分濃度が20質量%となるようにイオン交換水を加えて撹拌し、樹脂溶解アルカリ水溶液H1を得た。
【0064】
(顔料分散)
250mlのポリエチレン製瓶にφ1.2mmのジルコニアビーズ400gを入れ、さらに下記配合物48gを加えて、ペイントコンディショナー((株)東洋精機製作所)で4時間処理した。
樹脂溶解アルカリ水溶液H1 15.0g
C.I.ピグメントイエロー74ペースト 15.0g
(含水率66.6%、顔料10g山陽色素社製Fast Yellow7413A)
イオン交換水 12.0g
ジエチレングリコール 10.0g
処理後の分散液へイオン交換水20gを追加混合してから取り出し、固形分濃度18%の水性顔料分散体を得た。
得られた水性顔料分散体のマイクロトラックUPA−150(日機装(株))を用いた体積平均粒径値は125nmであり、実施例1の水性顔料分散体の5倍であった。また、実施例1の着色混練物をプラネタリーミキサー中で水性媒体に溶解した溶液中の分散粒子の体積平均粒径と比べても2倍以上であった。
【0065】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、水性媒体への分散が容易で顔料が微分散された水性顔料分散体が達成可能な、水性顔料分散体用混練物及びこれを用いた水性顔料分散体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 プラネタリーミキサーの構成の一例を示した斜視図。
【図2】 プラネタリーミキサーの一部拡大図。
【図3】 プラネタリーミキサーにおける撹拌羽根の軌跡を示した説明図。
【符号の説明】
1・・・・・撹拌槽
2・・・・・撹拌槽の上部
3・・・・・撹拌槽の下部
4及び5・・撹拌羽根
6・・・・・ローター
Claims (9)
- 顔料と樹脂と水溶性有機溶剤を含有する水性顔料分散体用混練物の製造方法であって、顔料の水性ペーストと樹脂と沸点が100℃より高い水溶性有機溶剤を含有する混合物を、脱水処理を行いつつ混練する混練工程を有し、前記混練工程が、撹拌翼と減圧可能な撹拌槽を有した混練装置を用い、該撹拌槽の内部を減圧して行われるものであることを特徴とする水性顔料分散体用混練物の製造方法。
- 前記樹脂がアニオン性基を有する樹脂である請求項1に記載の水性顔料分散体用混練物の製造方法。
- 前記混合物がさらに塩基性化合物を含有する請求項1または2に記載の水性顔料分散体用混練物の製造方法
- 顔料が不溶性アゾ顔料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性顔料分散体用混練物の製造方法
- 顔料と樹脂と水溶性有機溶剤を含有する水性顔料分散体用混練物であって、顔料の水性ペーストと樹脂と、沸点が100℃より高い水溶性有機溶剤を含有する混合物を、脱水処理を行いつつ混練する混練工程を経て製造された水性顔料分散体用混練物であって、前記混練工程が、撹拌翼と減圧可能な撹拌槽を有した混練装置を用い、該撹拌槽の内部を減圧して行われるものであることを特徴とする水性顔料分散体用混練物。
- 請求項2から4のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする水性顔料分散体用混練物。
- 請求項1から4のいずれか1項に記載の製造方法によって製造された水性顔料分散体用混練物を、水性媒体中に分散させることを特徴とする水性顔料分散体の製造方法。
- 請求項5または6に記載の水性顔料分散体用混練物を水性媒体に分散して製造されたことを特徴とする水性顔料分散体。
- 請求項8に記載の水性顔料分散体を水性媒体を用いて希釈する工程を経て製造されたことを特徴とするインクジェット記録用水性インク組成物
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