JP4584643B2 - 車椅子用の後付けヘッドレスト支持機構 - Google Patents

Description

本発明は、通常の車椅子に後付けで取付けるようにしたヘッドレストの支持機構に関する。

従来より、通常の車椅子に後付けでヘッドレストを設けるようにした技術は、本発明の発明者が特許取得している技術（特許文献１参照）のほか、特許文献２などにより数多くの提案がなされている。

しかし、従来の後付けヘッドレストは、その取付機構が車椅子を押すために車椅子フレームの後部で背もたれの上方に形成されたハンドルに取付けるようにしたものが大半であるため、使い勝手の上で問題のあることが判った。

即ち、従来の後付けヘッドレストを備えた車椅子に着座している者の姿勢が崩れたりした場合、その車椅子をハンドルを握って押している介助者は、当該車椅子の後部から着座姿勢が崩れた着座者の姿勢を元に戻すための操作やアプローチが、後付けヘッドレストに邪魔をされるために、できない乃至はやり難いという点である。

因みに、上記のようなヘッドレストが無い車椅子では、着座者の姿勢が例えば前方や側方などに崩れても、その車椅子の背もたれの背後から着座者の両脇下に手を入れて着座者を抱えるようにして姿勢の崩れを直すことができる。
特許第３４６３０１７号公報 特開２００３−６２０１５号公報

そこで本発明では、後付けヘッドレストであっても、車椅子の後部背面側から着座者を抱えたりすることが可能な後付けヘッドレストの支持機構を提供することを課題とするものである。

上記課題を解決することを目的としてなされた本発明支持機構の構成は、伸縮自在で決めた長さを固定できる横バー部材と、該バー部材の両端に設けて車椅子後部の左右の縦フレームに緊締固定できると共に開放取外し自在のクランプ部材と、前記横バー部材の中間部に左右にスライドできスライド位置で固定できると共に、縦バー部材を挿脱自在で上下にスライドさせてスライド位置で固定できる当該縦バー部材の支持部を備えたクロスブラケット部材と、ヘッドレストを有するヘッドレスト取付バーを備えた縦バー部材と、該縦バー部材の上部に前後にスライドできスライド位置で固定できるように設けられ、前端部にヘッドレストを首振り固定可能に有するヘッドレスト取付バーとにより形成したことを特徴とするものである。

上記の本発明支持機構は、それを形成する横，縦のバー部材，クロスブラケット部材，ヘッドレスト取付バーは、パイプ材によって、具体的には四角形や六角形、或は、八角形などの角パイプ材や丸パイプ材により形成したものが、支持機構全体の軽量化のために望ましい。角パイプ材は角数の多いパイプが尖鋭部が少ないので好ましい。

また、本発明支持機構において、横バー部材は車椅子後部の左右の縦フレームの下方に、当該横バー部材が備えるクランプ部材などによって着脱自在の構造を実現するが、その機構はいわばワンタッチ操作により着脱できるものが望ましい。
さらに、本発明支持機構では、構成部材や構造の端部に丸味を付けた形状として尖鋭部を無くし、取扱い上の安全性や便宜を図る。

本発明による車椅子用の後付けヘッドレストの支持機構は、この機構のベースとなる横バー部材を車椅子後部の左右の縦フレームの下方にクランプ部材により着脱自在取付け、この横バー部材に、クロスブラケット部材を介してヘッドレスト取付バーを支持した縦バー部材を着脱自在に設けたから、着座者の姿勢を車椅子の背後から抱えて直したい場合、前記縦バー部材を横バー部材から取外せば、介助者が車椅子の背後から着座者を抱えることを邪魔する部材が無くなるので、従来の後付けヘッドレストのような問題を解消できる。

次に本発明支持機構の実施の形態例について、図を参照して説明する。図１は本発明支持機構の一例を車椅子後部の縦フレームに取付けた状態を示す斜視図である。

図１において21，22は通常の車椅子後部における左右の縦フレームで、車椅子後部の左右に２本配置されており、この縦フレームの上部は後方へ向けほぼ水平に曲げられて、介助者が握るためのハンドル（図示せず）に形成されている。

本発明支持機構は、上記の左右の縦フレーム21と22の下部に、図示した態様で着脱自在に取付けられるものである。以下、その支持機構の構造例について述べる。

１は、上記縦フレーム21と22に、その両端に設けた後述するクランプ部材３，４によって着脱自在に取付けられる横バー部材で、ここでは細い角パイプ1aを該パイプ1aに密に遊挿できる太い角パイプ1bに、テレスコピック状に挿装して形成され、両パイプ1aと1bを伸縮させて長さを前記縦フレーム21と22の幅に合わせたら、その長さを固定する固定機構を具備している。固定機構の一例は、外側の角パイプ1bに形成した長穴1cと、この長穴1cに対応して内側の角パイプ1aに緊締，弛緩自在に設けた締付ボルト1dと、該ボルト1dの頭に一体に設けた操作ノブ1eにより形成されている。

上記横バー部材１の外側の太い角パイプ1bには、そのパイプ1bの外面に密に遊挿される短横パイプ2aと該短角パイプ2aに直交する向きで取付けた短縦パイプ2bにより形成したクロスブラケット部材２が装着されている。そして、上記の短横パイプ2aには、縦パイプ2bを挟んで角パイプ1bにこのブラケット部材２を固定開放するための固定用ボルト2c，2dが操作ハンドルとなるノブ2e，2fを具備して設けられている。また、短縦パイプ2bには、後述する縦バー部材５を固定，開放するためのノブ2hを有する固定用ボルト2gが設けられている。上記ブラケット部材２は、短横パイプ2aを横バー部材１に外挿し固定用ボルト2c，2dで止着するようにした例であるが、短横パイプ2aを開閉式で横バー部材１に着脱できる形態とし、このパイプ2aを閉じて横バー部材１に止着するときは、当該パイプ2aの開閉をワンタッチ式のロック部材（図示せず）のロック，アンロックにより着脱できるようにしてもよい。

一方、上記横バー部材１の両外端部には、車椅子後部の前記縦フレーム21と22をクランプ，アンクランプするクランプ部材３と４が設けられている。このクランプ部材３，４は、左右対称形の同一構造であるから、ここでは一方のクランプ部材４について説明する。

クランプ部材４は、角パイプ1bの端部に水平方向に直交した平面から視て大略コ字状（又は逆コ字状）の固定ジョー部材4aと、この固定ジョー部材4aの内側にあって、ボルト4cの回転によりジョー部材4aの内部を進退する平面から視て大略台形状で斜面を有する可動トグル部材4bとから形成されている。4dは前記ボルト4cの頭部に一体に設けられた操作ノブである。

上記クランプ部材４は、トグル部材4bを緩め（ジョー部材4aの内部で進出）ておき、この状態でジョー部材4aとトグル部材4bの隙間に縦フレーム22を入れてからボルト4cを締付方向に回してトグル部材4bを後退させると、その斜面の楔作用で、ジョー部材4aの内壁とトグル部材4bの斜面の間に、前記フレーム22が強固に挟持されることとなって、縦フレーム22に固定されることとなる。

縦フレーム21に対するクランプ部材３も、上記クランプ部材４と同じ作用をする固定ジョー部材3aと可動トグル部材3bと固定用ボルト3cと操作ノブ3dを具備し、上記クランプ部材４と同様の操作により、縦フレーム21に対してクランプ，アンクランプ作用をして、横バー部材１を車椅子後部の縦フレーム21，22に着，脱自在で、かつ、着装時に固定させるものである。なお、上記のクランプ部材３，４と横バー部材１の両端の接合部は、図示した例では角張った形態に現われているが、実際の製品では、横バー部材１の両端部やクランプ部材３，４の外面角部には丸味を付けて尖鋭部が外部に露出しない形態にする。

上記のようにして、車椅子の後部縦フレーム21，22の下部に横架固定される横バー部材１と、該横バー部材１の所望位置に固定されるクロスブラケット部材２において、該ブラケット部材２の短縦パイプ2bには、上部に、ヘッドレスト取付バー６を略水平前方向きにスライド固定自在に保持するブラケット5aを有する縦バー部材５が挿装固定される。この縦バー部材５は、短縦パイプ2bが備える固定用ボルト2gの緊締，弛緩により、任意の高さに上下方向でスライドさせ、その位置で固定することができる。ブラケット5aには取付バー６を前後にストロークさせて調整した位置に固定，開放できる固定用ボルト5bとそのノブ5cが備えられている。

上記ブラケット5aに挿装された、ヘッドレストHRを先端に有する取付バー６は、図２に例示するように、先端にヘッドレストHRを首振り自在に支持すると共に、任意の首振り角度で固定できるヘッドレスト受座6aを備えている。この受座6aは、前面にヘッドレストHRに取付けられる略ドーム状をなし中央部に首振り用穴6cを有する取付座6bを備え、該取付座6bの内部に、固定用ボルト6dの先端に設けられた駒部材6eを備ており、駒部材6eが取付座6bの内面で緩められているとき、ヘッドレストHRと一緒に首を振った取付座6bの傾き角を、駒部材6eをボルト6dによって引張り、傾けた前記取付座6bの外面を受座6aに強固に引付けることにより、取付バー６の先端にヘッドレストHRを所望の傾きで固定できるようになっている。なお、固定用ボルト6dは取付バー６の内部を貫通して当該バー６の後端から外部に露出し、その露出部分に操作ノブ6fを具備している。図２において、6gは固定ボルト6dの後部と取付バー６の後端のネジ螺合部、6hは取付座6bのベース部材である。

上記におけるヘッドレストHRの首振り固定自在の構造は一例であって、本発明では、他の構造による首振り固定自在の構造を採用できることは勿論である。

以上により、本発明支持機構の一例を形成するが、上記のように構成された本発明支持機構の例では、ヘッドレストHRが、(イ)その受座6aからネジ螺合部6gの構成による首振り自在，固定機構の作用によって全方位に首振り固定自在であること、(ロ)取付バー６の前後位置によって前後方向の位置の選択が自在でありること、(ハ)縦バー部材５の上下位置によって上下方向の位置の選択が自在であること、(ニ)クロスブラケット部材２によって横バー部材１の上での左右位置が自在に選択できることの各構成により、高次の自由度を有すると共に、横バー部材１における両端のクランプ部材３，４のアンクランプ作用、或は、縦バー部材５のクロスブラケット部材２からの取外し、又は、開閉式のクロスブラケット部材２と一緒の縦バー部材５の取外しによって、いつでも、どこにおいてもヘッドレストHRを車椅子の後部縦フレーム21，22から取外したり、その縦フレーム21，22着装したりすることができる。

本発明は以上の通りであるから、後付けヘッドレストの本発明支持機構を備えた車椅子では、縦バー部材の取外し、或は、横バー部材のアンクランプによる支持機構全体の取外しによって、介助者は車椅子の背後から着座者を抱えることが可能になり、従って、後付けヘッドレストを備えていてもきわめて使い勝手に優れた車椅子を実現できる。

また、本発明の後付けヘッドレスト支持機構は、構造が至ってシンプルであるから着脱操作や取扱い容易であって故障も少なく、また、シンプルな構造ゆえに容易かつ低コストで供給することが可能である。
なお、本発明のヘッドレスト支持機構は、車椅子に対して後付けにしか使用できないものではなく、当初より車椅子の着脱式のヘッドレスト支持機構として新造される車椅子に採用することができるものである。

本発明支持機構の一例を車椅子後部の縦フレームに取付けた状態を示す斜視図。 ヘッドレストとその取付バーの首振り固定自在の機構例を説明するための断面図。

符号の説明

１ 横バー部材
1a，1b 角パイプ
1c 長穴
1d 締付けボルト
1e 操作ノブ
２ クロスブラケット部材
2a 短横パイプ
2b 短縦パイプ
３，４ クランプ部材
５ 縦バー部材
６ ヘッドレスト取付バー
HR ヘッドレスト
21，22 車椅子後部の左右の縦フレーム

Claims (1)

1. 車椅子の後部に設けられ、上端に車椅子操作用のハンドルを有する左右の縦フレームに、クランプ部材を介して両端部が取り付けられた、伸縮自在で決めた長さに固定できる横バー部材と、
   前記横バー部材の中間部に、左右にスライドできスライド位置で固定できるように架装したクロスブラケット部材を介して、上下にスライドさせて決めた位置に固定でき、かつ、該クロスブラケット部材から上方に取り外し可能に取り付けられた縦バー部材と、
   該縦バー部材の上部で前後にスライドし、そのスライド位置で固定できるように設けられ、かつ前端部に首振り固定手段を介してヘッドレストが取り付けられたヘッドレスト取付バーと、を備え、
   前記首振り固定手段は、
   前記ヘッドレスト取付バーの先端に設けられたヘッドレスト受座と、
   前記ヘッドレストの後部に取り付けられ、前記ヘッドレスト受座に対して全方位の角度で当接する略ドームをなす取付座と、
   前記ヘッドレスト取付バーおよび前記ヘッドレスト受座を貫通し、先端に前記取付座の内面に当接する駒部材を有し、後端に前記ヘッドレスト取付バーの後部に露出する操作ノブを有し、該操作ノブを回転させて前記駒部材を前記取付座に締付けて前記ヘッドレストを全方位の首振り位置で固定する固定用ボルトと、を備えたものであることを特徴とする車椅子用の後付けヘッドレスト支持機構。
   

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