JP4582832B2 - ビタミンe誘導体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なビタミンE誘導体およびその製造方法に関する。詳しくは、2−置換アルコールと多価アルコールとを縮合させることにより得られる、化学的に安定でかつ優れた保湿性および抗酸化作用を有するビタミンE誘導体およびその製造方法である。
【0002】
【従来の技術】
皮膚は、身体の最外部であるため様々な刺激を常に受けており、最も老化が進行しやすい。皮膚の老化を防止するには、酸化、乾燥、紫外線等の外部環境から皮膚を防御することが特に重要であり、酸化からの防御としては抗酸化剤、乾燥からの防御としては保湿剤、紫外線からの防御としては紫外線吸収剤が用いられている。
【0003】
これらの中でも、近年、酸素ストレスや紫外線暴露により生ずる活性酸素と皮膚の老化との関係が明らかになるにつれて、抗酸化剤による皮膚の老化制御が多くの注目を集めている。抗酸化剤としてはビタミンE、C、B2、カロチノイド等が化粧品原料として用いられているが、これらは抗酸化作用は有するものの、乾燥からの防御においては有効ではない。一方、保湿剤としてはグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコールが良く知られているが、上述した抗酸化剤と混合した場合、溶解性および分散性が悪いという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、優れた抗酸化活性と保湿性を兼ね備えた新規なビタミンE誘導体を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、かかるビタミンE誘導体を簡易かつ効率的に製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ビタミンEの優れた抗酸化活性と多価アルコールの保湿性に着目し、これらを兼ね備えたビタミンE誘導体を得るべく鋭意研究を行った結果、2−置換アルコールと、結合させる水酸基に脱離基を導入し他の水酸基を保護基で保護した多価アルコール供与体とを縮合させることにより、目的とするビタミンE誘導体を効率よく合成できることを見出し本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、下記一般式(1)
【0008】
【化4】
【0009】
(式中、R1、R2、R3、およびR4は同一または異なる水素原子、低級アルキル基または低級アシル基を表し、R5は水素原子、低級アルキル基、低級アシル基、ベンジル基、トリメチルシリル基またはトリフェニルメチル基を表し、XはD,L−グリセロール、D,L−エリトリトール、D,L−トレイトール、D,L−アラビニトール、D,L−アリトール、D,L−キシリトール、D,L−リビトール、D,L−イジトール、D,L−ガラクチトール、D,L−ソルビトール、D,L−マンニトール、D,L−タリトール、D,L−リキシトールからなる群から選択される少なくとも1種の多価アルコール(X−OH)のX(該Xに含まれる水酸基の水素原子が低級アルキル基または低級アシル基で置換されていてもよい)を表し、nは0〜4の整数を表す)で示されるビタミンE誘導体である。
【0010】
本発明はまた、2−(1−グリセロキシ)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールである前記ビタミンE誘導体である。
【0011】
本発明はさらに、下記一般式(2)
【0012】
【化5】
【0013】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびnは前記と同義である)で示される2−置換アルコールと、該2−置換アルコールと結合させる水酸基に脱離基を導入し他の水酸基を保護基で保護した多価アルコール供与体とを縮合させることを特徴とする下記一般式(1)
【0014】
【化6】
【0015】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、Xおよびnは前記と同義でる)で示されるビタミンE誘導体の製造方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のビタミンE誘導体は、前記一般式(1)で示される新規な化合物である。前記一般式(1)において、R1、R2、R3、R4およびR5の低級アルキル基としては、炭素原子数が1〜8、好ましくは1〜6の低級アルキル基がよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。これらの中では、メチル基またはエチル基が好ましい。また、低級アシル基としては、炭素原子数が1〜8、好ましくは1〜6の低級アシル基がよく、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル等が挙げられる。これらの中では、アセチル基、プロピオニル基またはブチリル基が好ましい。また、R5は、前記の低級アルキル基または低級アシル基の他にベンジル基、トリメチルシリル基またはトリフェニルメチル基であってもよい。多価アルコール(X−OH)としては、D,L−グリセロール、D,L−エリトリトール、D,L−トレイトール、D,L−アラビニトール、D,L−アリトール、D,L−キシリトール、D,L−リビトール、D,L−イジトール、D,L−ガラクチトール、D,L−ソルビトール、D,L−マンニトール、D,L−タリトール、D,L−リキシトールが挙げられ、これらの中ではグリセロールが好ましい。また、多価アルコール(X−OH)のXに含まれる水酸基の水素原子は低級アルキル基、好ましくは炭素原子数が1〜8の低級アルキル基、または低級アシル基、好ましくは炭素原子数が1〜10の低級アシル基で置換されていてもよい。さらに、nは0〜4、好ましくは1〜2の整数である。一般式(1)で表されるビタミンE誘導体の好ましい例としては、2−(1−グリセロキシ)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、2−(1−グリセロキシ)エチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール等が挙げられる。
【0017】
本発明のビタミンE誘導体は、前記一般式(2)で示される2−置換アルコール(以下、単に「2−置換アルコール」という)と多価アルコール供与体との縮合反応により製造することができる。
【0018】
前記2−置換アルコールとしては、2−ヒドロキシメチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール、2−ヒドロキシエチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール等があげられる。かかる2−置換アルコールはは公知の物質であり、例えば、特公平1−43755号公報や特公平1−49135号公報等に開示された方法により得ることができる。また、例えば、一般式(2)中、R1、R2、R3およびR4がメチル基、R5が水素原子であり、nが1である2−置換アルコールは、α−トコフェロールのクロマン環の2位のフィチル基がカルボキシル基で置換された構造を有する6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸(商品名「トロロックス(Trolox)」)を水素化リチウムアルミニウムの存在下においてジエチルエーテル中で加熱還流処理すること等により容易に得ることができる。
【0019】
前記縮合反応においては、2−置換アルコールはそのまま用いてもよいが、好ましくは、6位水酸基に保護基を導入して用いたほうが、好収率で縮合物が得られる。かかる保護基としては、アセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、クロロアセチル基、及びレブリノイル基のようなエステル系の保護基、またはメチル基、エチル基、メトキシメチル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、アリル基、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、およびトリチル基などのエーテル系の保護基が挙げられる。これらの保護基のなかでは、エーテル系保護基、とくにベンジル基が好ましく使用される。
【0020】
かかる6位水酸基を保護した2−置換アルコールの調製の一実施態様を示せば、次のとおりである。2−置換アルコール1gに対してアセトン5〜20ml、好ましくは10〜15mlの割合で添加して溶解させる。この溶液に、塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル等のハロゲン化ベンジル、好ましくは臭化ベンジル1〜3ml、および、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の塩基、好ましくは炭酸カリウム0.5〜1.5g、好ましくは0.8gから1.2gを加える。還流装置を使用して、4〜24時間、好ましくは6〜10時間、加熱還流を行う。析出したカリウム塩またはナトリウム塩を除去した後、減圧下で濃縮する。
得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、6位水酸基をベンジル基で保護した2−置換アルコールが得られる。
【0021】
一方、前記多価アルコール供与体とは、2−置換アルコールに結合させる水酸基のみに脱離基を導入し、他の水酸基は保護基で保護した多価アルコールの誘導体である。かかる多価アルコールとしては、D,L−グリセロール、D,L−エリトリトール、D,L−トレイトール、D,L−アラビニトール、D,L−アリトール、D,L−キシリトール、D,L−リビトール、D,L−イジトール、D,L−ガラクチトール、D,L−ソルビトール、D,L−マンニトール、D,L−タリトール、D,L−リキシトールが挙げられ、これらの中ではグリセロールが好ましい。前記多価アルコール供与体に使用される脱離基としては、臭素、塩素、ヨウ素等のハロゲン原子、p−トルエンスルホニル基、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基等のスルホニル基等が挙げられ、これらの中ではp−トルエンスルホニル基が好ましく使用される。
【0022】
また、前記多価アルコール供与体において、縮合する水酸基以外の水酸基は保護基で保護しておくことが好ましく、かかる保護基としては、アセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、クロロアセチル基、レブリノイル基等のエステル系の保護基、およびメチル基、エチル基、メトキシメチル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、アリル基、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、およびトリチル基等のエーテル系の保護基が挙げられ、また、多価アルコール中の2個の水酸基を同時に保護する保護基として、イソプロピリデン基、ベンジリデン基等の環状アセタール系の保護基が挙げられる。これらの中ではグリセロールを使用する場合はイソプロピリデン基が好ましい。
【0023】
かかる多価アルコール供与体の調製方法の一実施態様を示せば、次のとおりである。3価の多価アルコールであるグリセロールの場合は、グリセロール中に3個ある水酸基中の2個の水酸基を環状アセタール系の保護基、好ましくはイソプロピリデン基で保護したのち、残った水酸基に脱離基を導入することが好ましい。例えば、グリセロール1gをアセトン5〜20ml、好ましくは10〜15mlに溶解させ、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化スズ等の金属酸触媒、好ましくは塩化アルミニウム1.5mlを添加して、室温で18時間〜48時間、好ましくは20時間〜24時間攪拌する。反応液を水酸化ナトリウム等の塩基で中和した後、沈殿物を除去する。ろ液を減圧下で濃縮し、得られた残査をピリジン5〜20ml、好ましくは10〜15mlの割合で加えて溶解させる。さらにこの溶液に1〜3g、好ましくは1.5〜2gのp−トルエンスルホニルクロリドを加える。室温で4〜24時間、好ましくは8〜16時間攪拌する。反応液に蒸留水を添加した後、生成したグリセロール供与体をクロロホルム、塩化メチレン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、エーテル等の有機溶媒、好ましくは、クロロホルムで抽出する。得られた抽出液を減圧下で濃縮後、残査を結晶化することにより、グリセロール供与体を得る。4価以上の多価アルコールについては、上記した環状アセタール系の保護基、およびアセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、クロロアセチル基、レブリノイル基等のエステル系の保護基、またはメチル基、エチル基、メトキシメチル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、アリル基、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、トリチル基等のエーテル系の保護基を組み合わせて、水酸基を保護した後、結合させる水酸基に脱離基を導入して多価アルコール供与体を調製する。
【0024】
前記縮合反応は、前記多価アルコール供与体と2−置換アルコールを溶媒および塩基の存在下で反応させることにより行われる。
【0025】
前記縮合反応で使用される溶媒としては、エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、スルホラン等のスルホン酸が挙げられる。
これらの中では、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒が好ましく使用される。
【0026】
また、前記縮合反応に添加する塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩または重炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの水酸化アルカリ金属または水酸化アルカリ土類金属、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド、などのアルカリ金属アルコキシド、ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどの有機リチウム化合物、リチウムジイソプロピルアミドなどのリチウムジアルキルアミド、ピリジン、トリエチルアミンなどの有機塩基が挙げられる。この中でも、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどの水酸化アルカリ金属が好ましく使用される。
【0027】
前記縮合反応の一実施態様を、上記で得られた多価アルコール供与体と2−置換アルコールについて示せば次のとおりである。2−置換アルコール好ましくは6位水酸基をベンジル基で保護した2−置換アルコール1gおよびモル比で1〜5等量、好ましくは2.5〜3.5等量の多価アルコール供与体を前述した溶媒、好ましくはジメチルホルムアミド2〜10mlに溶解させる。さらに、この溶液に前述した塩基、好ましくは水酸化カリウム2〜5g加えて、室温で24〜72時間、好ましくは36〜48時間攪拌する。反応液に蒸留水を加えて、縮合物をクロロホルム、塩化メチレン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、及びエーテルなどの有機溶媒、好ましくはトルエンで抽出する。得られた抽出液を減圧下で濃縮して、得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、6位水酸基をベンジル基で保護した2−置換アルコールと多価アルコールとの縮合物を得る。
【0028】
次いで、得られた縮合物の脱保護を行う。かかる脱保護の方法を、グリセロール供与体を用いた場合について示せば次のとおりである。得られた縮合物を酸溶液、このましくは酢酸水溶液(80% w/w)30mlに溶解させて18時間から48時間、好ましくは20時間から24時間攪拌する。減圧下で濃縮して得られた残査を水、低級アルコール、アセトン、酢酸、塩酸等の極性溶媒、好ましくはメタノールに溶解させ、パラジウム活性炭素、ラネーニッケル、白金等の金属触媒、好ましくはパラジウム活性炭素を加えて水素雰囲気下で2時間〜18時間、好ましくは4時間〜8時間攪拌する。反応液から触媒を除去した後、減圧下で濃縮し、得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的とするビタミンE誘導体を得る。4価以上の多価アルコール供与体を使用した場合は、縮合物を保護基の種類により適当な脱保護処理して、目的とするビタミンE誘導体を得る。
【0029】
また上記実施態様においては、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行ったが、この精製方法に制限されるものではなく、公知の精製方法が使用できる。
【0030】
【実施例】
以下に、本発明のビタミン誘導体およびその製造方法について、実施例をもってさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
[参考例1]
6位水酸基をベンジル基で保護した2−置換アルコールの製造
2−ヒドロキシメチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール(2−hydroxymethyl−2,5,7,8−tetramethylchroman−6−ol)5gをアセトン20mlに溶解させ、炭酸カリウム8gおよび臭化ベンジル7mlを添加した後、加熱還流8時間を行った。反応終了後、析出した臭化カリウムを除去した。反応液を減圧下で濃縮した後、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=2:3(v/v))で精製し、下記式(3)で示される6位水酸基をベンジル基で保護した2−置換アルコール5.5gを得た。
【0032】
【化7】
【0033】
[参考例2]
グリセロール供与体の製造
1,2−O−イソプロピリデングリセロール(1,2−O−isopropylideneglycerol)(和光純薬社製)7gをピリジン75mlに溶解させ、この溶液にp−トルエンスルホニルクロリド10.5gを添加して室温で24時間反応させた。冷却しながら反応液に蒸留水75mlを加えた後、クロロホルム150mlを加えて生成物を抽出した。抽出液を減圧下で濃縮した後、残査をベンゼン−ヘキサン混合溶液で結晶化を行い、下記式(4)で示される1,2−O−イソプロピリデングリセロール−3−(p−トルエンスルホネート)[(1,2−O−isopropylideneglycerol−3−(p−toluenesulfonate)]14.3gを得た。
【0034】
【化8】
[実施例1]
ビタミンE誘導体の製造
参考例1で得られた2−置換アルコール5.5gをジメチルホルムアミド30mlに溶解させ、この溶液に水酸化カリウム15gと参考例2で得られた1,2−O−イソプロピリデングリセロール−3−(p−トルエンスルホネート)14.3gを添加し、反応液を室温で48時間攪拌した。蒸留水60mlを加えた後、縮合物をトルエンで抽出した。抽出液を減圧下で濃縮した後、残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=2:3(v/v))で精製した。得られた縮合物3.8gを酢酸水溶液(80% w/w)30mlに溶解させ、24時間攪拌した。エタノールを加え共沸させながら減圧下で濃縮して酢酸を除去した。得られた残査をメタノール20mlに溶解させ、パラジウム−活性炭素2.4gを加えた後、水素雰囲気下で24時間攪拌した。溶液中の触媒を除去した後、反応液を減圧下で濃縮した。得られた残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:メタノール=20:1(v/v))で精製することにより下記式(5)で示される2−(1−グリセロキシ)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オール[2−(1−glyceroxy)methyl−2,5,7,8−tetramethylchroman−6−ol]を1.8g得た。
【0035】
【化9】
上記化合物のNMR測定の結果は以下のとおりである。
13C−NMRδ(75.5MHz,DMSO−d6,プロトンデカップリング):
11.8
11.8
12.8
19.9
22.0
28.3
63.2
70.6および70.7
73.4および73.4
74.3
76.0
116.8
120.3
120.9
122.7
144.4
145.2
また、この化合物の赤外吸収スペクトルを図1に示す。
【0036】
[実施例2]
保湿性試験
実施例1で得られた2−(1−グリセロキシ)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールと、比較対照用としてグリセリン、D−ソルビトール、及びα−トコフェロールを、シリカゲルを入れた真空デシケータ中で24時間乾燥し、シャーレに各100mgずつ正確に計り取った。その後、これらの試料を20℃、相対湿度(RH)75%に調製したデシケーター中に72時間、その後20℃、相対湿度(RH)33%に調製したデシケーター中に24時間置き、その間24時間おきに重量を測定した。各測定量に基づいて次式により重量増加率を求め、保湿能を評価した。その結果を表1に示す。
【0037】
【数1】
【0038】
ここで、Wo=デシケーター中に放置前の重量、Wn=放置後n時間後の重量をそれぞれ表わす。
【0039】
【表1】
【0040】
表1の結果から明らかなとおり、本発明のビタミンE誘導体はD−ソルビトールと同程度の保湿能を示した。また、グリセリンは相対湿度の変化に伴い保湿率が急激に変化したが、本発明のビタミンE誘導体は保湿能が湿度の変化によって影響を受けにくいということが示唆された。
【0041】
【発明の効果】
本発明のビタミンE誘導体は、2−置換アルコールと多価アルコール供与体とを縮合させてなるので、ビタミンEの優れた抗酸化活性と多価アルコールの保湿性を兼ね備えており、皮膚の老化防止に極めて有効である。したがって、本発明のビタミンE誘導体は、色素沈着、シワ、タルミ形成等の皮膚老化や紫外線等により生ずる皮膚炎症、日焼け、早期老化、皮膚癌、光線角化症等の各種皮膚障害の予防および治療剤、および化粧水、ローション、乳液、クリーム、パック、洗浄料、ファンデーション等の各種化粧料等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のビタミンE誘導体の赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
Claims (3)
- 下記一般式(1)
- 2−(1−グリセロキシ)メチル−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−6−オールである請求項1記載のビタミンE誘導体。
- 下記一般式(2)
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