JP4582024B2 - 車両の運動制御装置 - Google Patents
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しかし、人間の加速フィーリングは車両の躍度に対して非線形の特性を示すことが本願の発明者によって確かめられており、従来制御では、アクセル操作に対して運転者の加速フィーリングが非線形的に変化し、アクセル操作に対して期待する加速フィーリングと実際の体感とに乖離を生じ、運転者にとって操作し難いという問題があった。
従って、運転者の操作に対して、加速フィーリングをリニアにすることができ、運転者が意図する通りに車両の運動を制御することが容易になる。
図1は、本発明に係る車両の運動制御装置が適用される車両用内燃機関のシステム図である。
図1に示す内燃機関1は、図示省略した自動車に搭載され、前記内燃機関1のクランク軸から取り出される機関発生トルクが、変速機を介して駆動輪に伝達されるようになっている。
内燃機関1の吸入空気量は、前記吸気ダクト3に介装される電制スロットル7によって調整される。
各気筒の吸気ポート部には、燃料噴射弁9がそれぞれ設けられ、各気筒の吸気ポート内に燃料(ガソリン)を噴射する。
但し、燃料噴射弁9が燃焼室10内に直接燃料を噴射する筒内直接噴射式内燃機関であっても良い。
前記点火プラグ15それぞれには、パワートランジスタを内蔵する点火コイル16が直付けされており、前記点火コイル16への通電を制御することで、前記点火プラグ15の点火時期及び点火エネルギーが調整される。
前記排気ダクト13には、排気中の有害成分を浄化するための触媒コンバータ14が介装される。
前記スロットルモータ8、燃料噴射弁9、及び、点火コイル16への通電を制御するパワートランジスタは、マイクロコンピュータを内蔵するエンジンコントロールユニット(ECU)21によって制御される。
前記各種センサとしては、前記電制スロットル7の上流側で内燃機関1の吸入空気流量Qa(質量流量)を検出するエアフローメータ22、前記触媒コンバータ14の上流側で排気中の酸素濃度に基づいて空燃比を検出する空燃比センサ23、内燃機関1の回転速度Ne(rpm)を検出する回転速度センサ24、運転者が操作するアクセルペダル25の踏み込み量(アクセル開度)APOを検出するアクセル開度センサ26、前記スロットルバルブ7aの開度TVO(deg)を検出するスロットルセンサ27、内燃機関1が搭載される車両の走行速度(車速)VSP(km/h)を検出する車速センサ28などが設けられている。
前記エンジンコントロールユニット21は、前記燃料噴射弁9による燃料噴射量を以下のようにして制御する。
まず、エアフローメータ22で検出される吸入空気流量Qaと、回転速度センサ24で検出される機関回転速度Neとから、そのときのシリンダ吸入空気量において目標空燃比の混合気を形成するための基本燃料噴射量Tpを算出する。
そして、前記最終的な燃料噴射量Tiに相当するパルス幅の噴射パルス信号を、各気筒の行程に合わせてそれぞれの燃料噴射弁9に出力する。
また、前記エンジンコントロールユニット21は、前記基本燃料噴射量Tp(機関負荷)及び機関回転速度Neから点火時期(点火進角値)を算出し、該点火時期及び所定の通電時間に基づいて前記点火コイル16に内蔵されたパワートランジスタのオン・オフを制御する。
図2のフローチャートは、前記スロットル開度制御のメインルーチンを示す。
まず、ステップS1では、アクセル開度センサ26で検出されたアクセル開度APOを入力する。
次のステップS2では、前記アクセル開度APO等に基づいて第1の目標加速度A1を演算する。
前記第2の目標加速度A2は、前記第1の目標加速度A1に基づき算出される第1の目標躍度J1を非線形補正し、該非線形補正後の第2の目標躍度J2に基づいて算出されるようになっている。
上記のステップS2,3の機能が、目標値演算手段に相当する。
ステップS4では、前記第2の目標加速度A2に基づいて目標出力及び目標吸気圧Ptgを演算し、更に、次のステップS5では、前記目標出力及び目標吸気圧Ptgに基づいて目標スロットル開度TVOtgを演算する。
前記エンジンコントロールユニット21は、前記目標スロットル開度TVOtgを演算すると、この目標スロットル開度TVOtgと前記スロットルセンサ27で検出される実際のスロットル開度TVOとを比較し、実際のスロットル開度TVOが前記目標スロットル開度TVOtgに近づくように、前記スロットルモータ(スロットルアクチュエータ)7bの駆動信号をフィードバック制御する。
前記ステップS1では、前記アクセル開度センサ26のアナログ信号をA/D変換して読込み、A/D変換されたセンサ出力値を、予め備えられている変換テーブルによって、アクセル開度APOのデータに変換する。
前記ステップS2では、そのときのアクセル開度APO及び機関回転速度Ne(又は車速VSP)に基づいて、第1の目標加速度A1を演算する。
そして、アクセル開度センサ26で検出されたアクセル開度APOと回転速度センサ24で検出された機関回転速度Ne(又は車速センサ28で検出された車速VSP)とに対応する第1の目標加速度A1を、前記マップから検索する。
前記ステップS3では、下記の数1に従って前記第2の目標加速度A2を所定の演算周期毎に更新演算する。
上記数1は、次のようにして導かれる。
まず、第1の目標躍度J1は、前記第1の目標加速度A1の微分値として、数2によって演算される。
また、第2の目標躍度J2は、図4に示すような非線形関数fによって前記第1の目標躍度J1から導かれる。
人間の加速フィーリングは車両の躍度に対して非線形の特性を示すことが本願の発明者によって確かめられており、アクセル操作に対応する第1の目標躍度J1を前記非線形関数fによって非線形補正し、この非線形補正後の躍度を最終的な目標とすることで、アクセル操作に対して運転者が感じる加速フィーリングをリニアにできるようにしてある。
そこで、本実施形態では、第1の目標躍度J1がマイナスであるときには、J1=J2とし、非線形補正を施さないようにしてある。
また、前記非線形関数fの変換特性は、対数曲線に近似する特性に限定されるものではなく、車両の運動特性等に応じて適宜マッチングされるべきものである。
ところで、アクセル操作に対する躍度を、運転者がリニアな加速フィーリングとして捉えることができる躍度に変換するためには、前述のように、アクセル操作量に対応する第1の目標加速度A1の今回値と前回値との差として第1の目標躍度J1を算出し、該第1の目標躍度J1を非線形補正した値である第2の目標躍度J2を実現すべく、内燃機関を制御させる必要がある。
ここで、延長時間Δtは、前記第1の目標躍度J1と第2の目標躍度J2との差分と、第2の目標躍度J2との比によって演算される。
前記累積延長時間ΔTは、前記延長時間Δtの積分値であり、数5に従って演算される。
また、第2の目標加速度A2を離散系で演算する場合には、前記累積延長時間ΔTが過剰に小さいと、目標躍度が大きくなりすぎることがあるため、所定最低時間以上に制限しても良い。
ステップS3で、最終的な目標加速度である第2の目標加速度A2を前記数1に従って演算すると、前記第2の目標加速度A2を実現するための内燃機関の指令値を決定すべく、ステップS4以降へ進む。
前記第2の目標加速度A2の目標出力(目標仕事率)への変換は、ニュートンの運動方程式F=ma又はP=mvaを用いて行われる。
運動量はmvであり、力Fは、F=d/dt(mv)=maであるから、力Fは運動量(mv)の1階導関数であり、力Fの変化率dF/dtは運動量mvの2階導関数であり、前記第2の目標加速度A2の目標出力(目標仕事率)への変換は、運動量mvの2階導関数への変換であると見なすことができる。
ここで、車両位置の2階導関数である前記第2の目標加速度A2を実現するためには、対応する運動量mvの導関数を操作する必要があるが、運動量mvの導関数として2階導関数である仕事率(kW)を、前記第2の目標加速度A2に対応する目標として設定することで、前記第2の目標加速度A2の変化を体感的に精度良く実現することができる。
前記第2の目標加速度A2を目標出力(目標仕事率)Pに変換すると、次いで、前記目標出力(目標仕事率)Pと機関回転速度Ne(又は車速VSP)とから、目標吸気圧Ptg(目標ブースト)を演算する。
そして、前記第2の目標加速度A2から求めた目標出力(目標仕事率)Pと回転速度センサ24で検出された機関回転速度Ne(又は車速センサ28で検出された車速VSP)とに対応する目標吸気圧Ptgを、前記マップから検索する。
図7のフローチャートにおいて、まず、ステップS51では、前記目標吸気圧Ptgを入力し、次のステップS52では、前記目標吸気圧Ptgを微分することで、目標吸気圧変化ΔPtgを設定する。
ステップS53では、前記吸気コレクタ4(スロットル下流の空間容積)からシリンダ側に流出する空気の流量ΔNout(質量流量:kg/h)を求める。
尚、質量流量(kg/h)を求める代わりに、物質量流量(mol/s)を求めても良い。
ステップS55では、前記流入流量ΔNinを得るための目標スロットル開口面積Atg(m2)を演算し、次のステップS56では、前記目標スロットル開口面積Atg(m2)を目標スロットル開度TVOtg(deg)に変換する。
ここで、前記吸気コレクタ4における圧力の変化を、目標吸気圧変化ΔPtgとするための流出流量ΔNoutと流入流量ΔNinとの相関は、理想気体の状態方程式に用いて以下の数8に示すように表すことができる。
前記流出流量ΔNoutは、シリンダに吸い込まれる空気の流量であるから、以下の数9で表すことができる。
一方、前記流入流量ΔNinの大半は、スロットルバルブ7aを通過して吸気コレクタ4に流入する空気であるから、スロットル前後差圧が前記流入流量ΔNinを実現する条件となる(図9参照)。
但し、スロットル下流側の圧力を、センサで検出した実際値や、運転条件に基づく推定値とすることができる。
また、前記流入流量ΔNinを、スロットルバルブ7aの通過空気量以外を含めてより精度良く演算させても良い。
そして、図10に示すモデルによると、流入流量ΔNinを得るためのスロート面積Aは、以下の数10,数11の方程式によって表現できる。
上記の数10,数11は、流入流量ΔNinを得るためのスロットル開口面積(スロットルチャンバの有効開口面積)を求める式であると見なすことができ、スロットル開口面積(m2)は、スロットル前後差圧比と、スロットル上流全温度T0と、流入流量ΔNinとから算出できることになる。
そして、エンジンコントロールユニット21は、前記目標スロットル開度TVOtgを実現すべく、前記スロットルモータ(スロットルアクチュエータ)7bをフィードバック制御することで、目標吸気圧変化ΔPtg、引いては、第2の目標加速度A2を実現する。
更に、第2の目標加速度A2を実現するための運動量mvの導関数として、搭乗者の加速フィーリングに大きく影響する2階導関数(仕事率)を目標として定め、これを実現すべくスロットル開度TVOを制御する。
尚、上記実施形態では、車両に搭載される内燃機関のスロットル開度を制御対象としたが、燃料供給量などの他の要素を制御することで内燃機関の出力を制御させることができ、更に、制御対象とする動力源を内燃機関に限定するものではなく、電動モータなどを制御対象とすることができ、更に、ブレーキやクラッチなどの摩擦力の制御や発電機の発電量の制御などを併せて行うことができる。
更に、車両位置の3階導関数(躍度)よりも高階の導関数を非線形補正して、該補正された導関数に基づいて車両位置の導関数(例えば加速度)の目標を定めても良く、同様に、運動量mvの2階導関数よりも高階の導関数を目標として定めることができる。
また、車両には、一般的な自動車の他、オートバイ、電車など種々のものが含まれる。
Claims (8)
- アクセルの操作量を検出する操作量検出手段と、
前記アクセルの操作量から第1の目標加速度を演算すると共に、前記第1の目標加速度を微分して、車両位置の3階導関数である躍度を目標値として演算する目標値演算手段と、
前記目標値に補正前と補正後の関係が非線形な特性となる補正である非線形補正を施す補正手段と、
前記第1の目標加速度と前記非線形補正された目標値とから第2の目標加速度を演算し、前記第2の目標加速度に基づいて、前記車両の運動に関わる制御対象の指令値を演算する指令値演算手段と、
を含んで構成され、
前記指令値演算手段が、前記目標値演算手段で演算された目標値での加速度の到達時間に対する前記補正手段で非線形補正が施された目標値での加速度の到達時間の延長分を積算し、該積算した延長時間で前記第1の目標加速度と第2の目標加速度の前回値との偏差を除算し、該除算結果を積分して前記第2の目標加速度を演算する
ことを特徴とする車両の運動制御装置。 - 前記指令値演算手段が、前記延長時間の積算値に制限を加えることを特徴とする請求項1記載の車両の運動制御装置。
- 前記補正手段は、補正前の前記目標値が大きいほど補正前の前記目標値の増加幅に対する補正後の目標値の増加幅を小さくすることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の運動制御装置。
- 前記補正手段は、前記目標値演算手段で演算された目標値の正の成分に対してのみ、非線形補正を施すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両の運動制御装置。
- 前記指令値演算手段が、前記補正手段で非線形補正が施された目標値に基づいて、車両運動量の2階導関数である力の変化率に相当する目標を定め、該目標に基づいて前記指令値を演算することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両の運動制御装置。
- 前記車両が、スロットルバルブで吸入空気量が制御される内燃機関を動力源として走行する車両であって、
前記指令値演算手段が、前記スロットルバルブの開度又は開口面積を前記指令値として演算することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の車両の運動制御装置。 - 前記指令値演算手段が、目標仕事率を演算し、更に、前記目標仕事率から目標吸気圧を演算し、前記目標吸気圧に基づいて前記スロットルバルブの目標開度又は目標開口面積を前記指令値として演算することを特徴とする請求項6記載の車両の運動制御装置。
- 前記指令値演算手段が、前記目標吸気圧の変化量を演算すると共に、前記スロットルバルブ下流の空間容積から流出する空気の流量を演算し、前記目標吸気圧の変化量と前記流出流量とから前記空間容積に対する空気の流入流量を演算し、前記流入流量を得るための前記スロットルバルブの目標開度又は目標開口面積を前記指令値として演算することを特徴とする請求項7記載の車両の運動制御装置。
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