JP4577808B2 - エポキシカルボキシレート化合物及びそれを用いた感光性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なエポキシカルボキシレート化合物及びそれを用いた感光性樹脂組成物並びにその硬化物に関するものである。更に詳細には、プリント配線板用ソルダーレジスト、多層プリント配線板用層間電気絶縁材料として有用で、その硬化皮膜が、密着性、半田耐熱性、耐薬品性、耐金メッキ性、フレキシブル性等に優れた硬化物を与える感光性樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【0002】
【従来の技術】
感光性を有するエポキシカルボキシレート化合物は、環境的、熱的、力学的性質や基材に対する接着性など種々特性のバランスに優れた化合物である。このため古くから、塗料・コーティング、接着剤等の分野で用いられてきた。最近では、電気・電子部品製造用途やプリント基板製造用途等、広い工業分野で使用され、ますますその応用範囲が広がりつつあることは良く知られている。この応用分野の拡大に伴って、エポキシカルボキシレート化合物にますます高い機能と新しい機能の付加が要求されるようになり、電気・電子部品製造用途やプリント基板製造用途を中心に種々の新たなエポキシカルボキシレート化合物の開発が積極的に進められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高性能・高機能を有する新規エポキシカルボキシレート化合物、とりわけ密着性及び耐熱性とフレキシブル性を併せ持つエポキシカルボキシレート化合物及びそれを用いた感光性樹脂組成物並びにその硬化物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前期のような特性を有するエポキシカルボキシレート化合物について鋭意研究の結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
(1)分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と分子中にヘテロ環構造を有するモノカルボン酸化合物(b)及び分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物(c)とを反応させて得られることを特徴とするエポキシカルボキシレート化合物(A)、
(2)分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)のエポキシ当量が、90〜600g/当量のエポキシ化合物である(1)に記載のエポキシカルボキシレート化合物(A)、
(3)分子中にヘテロ環構造を有するモノカルボン酸化合物(b)が、フラン環構造もしくは、テトラヒドロフラン環構造を有するモノカルボン酸化合物である(1)または(2)のいずれか一項に記載のエポキシカルボキシレート化合物(A)、
(4)分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物(c)が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物または桂皮酸の中から選択されたモノカルボン酸である(1)ないし(3)のいずれか一項に記載のエポキシカルボキシレート化合物(A)、
(5)ヘテロ環構造を有するモノカルボン酸化合物(b)の反応量が、エポキシ樹脂(a)1当量に対し、10〜40当量%である(1)ないし(4)のいずれか一項に記載のエポキシカルボキシレート化合物(A)、
(6)(1)ないし(5)のいずれか一項に記載のエポキシカルボキシレート化合物(A)、光重合開始剤(B)及び任意成分として架橋剤(C)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物、
(7)(6)に記載の感光性樹脂組成物の硬化物、
(8)(7)に記載の硬化物の層を有する基材を提供することにある。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のエポキシカルボキシレート化合物(A)は、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)と分子中にヘテロ環構造を有するモノカルボン酸化合物(b)及び分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物(c)とを反応させて得られることを特徴とする。
【0006】
本発明のエポキシカルボキシレート化合物(A)を製造するために用いる分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物は、この条件を満たすものであればすべて用いることができるが、特にエポキシ当量が、90〜600g/当量のエポキシ化合物(a)であることが望ましい。エポキシ当量が90未満の場合、エポキシカルボキシレート化合物(A)の分子量が小さく成膜が困難となる恐れや、また、エポキシ当量が600を超える場合、エチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸(c)の導入率が低くなり感光性が低くなる恐れがある。
【0007】
分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の具体例としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−Aノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0008】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN−770(大日本インキ化学工業(株)製)、D.E.N438(ダウ・ケミカル社製)、エピコート154(油化シェルエポキシ(株)製)、RE−306(日本化薬(株)製)等が挙げられる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN−695(大日本インキ化学工業(株)製)、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S(日本化薬(株)製)、UVR−6650(ユニオンカーバイド社製)、ESCN−195(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0009】
トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、例えばEPPN−503、EPPN−502H、EPPN−501H(日本化薬(株)製)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル社製)、エピコートE1032H60(油化シェルエポキシ(株)製)等が挙げられる。ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンEXA−7200(大日本インキ化学工業(株)製)、TACTIX−556(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0010】
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばエピコート828、エピコート1001(油化シェルエポキシ製)、UVR−6410(ユニオンカーバイド社製)、D.E.R−331(ダウ・ケミカル社製)、YD−8125(東都化成社製)等のビスフェノール−A型エポキシ樹脂、UVR−6490(ユニオンカーバイド社製)、YDF−8170(東都化成社製)等のビスフェノール−F型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0011】
ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、NC−3000P、NC−3000S(日本化薬(株)性)等のビフェノール型エポキシ樹脂、YX−4000(油化シェルエポキシ(株)製)のビキシレノール型エポキシ樹脂、YL−6121(油化シェルエポキシ(株)製)等が挙げられる。ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN−880(大日本インキ化学工業(株)製)、エピコートE157S75(油化シェルエポキシ(株)製)等が挙げられる。
【0012】
ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂としては、例えばNC−7000(日本化薬社製)、EXA−4750(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。脂環式エポキシ樹脂としては、例えばEHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。複素環式エポキシ樹脂としては、例えばTEPIC,TEPIC−L,TEPIC−H、TEPIC−S(いずれも日産化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0013】
本発明のエポキシカルボキシレート化合物(A)を製造するために用いる分子中にヘテロ環構造を有するモノカルボン酸化合物(b)は、この条件を満たすものであればすべて用いることができるが、特にその分子中にフラン環構造もしくは、テトラヒドロフラン環構造を有するモノカルボン酸化合物であることが望ましい。フラン環、もしくはテトラヒドロフラン環構造は特に、その構造自身が有する極性のため、金属表面やガラス表面等の基材表面に水素結合され塗膜の密着性を向上させる効果があることが知られている。
【0014】
ヘテロ環構造を有するモノカルボン酸化合物(b)の具体例としては、例えば、2−フランカルボン酸、3−フランカルボン酸、3−(2−フリル)アクリル酸、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸及びそれらの誘導体等が挙げられる。
【0015】
本発明のエポキシカルボキシレート化合物(A)を製造するために用いる分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物(c)としては、例えばアクリル酸類やクロトン酸、α−シアノ桂皮酸、桂皮酸、或いは飽和または不飽和二塩基酸と不飽和基含有モノグリシジル化合物との反応物が挙げられる。
アクリル酸類としては、例えば(メタ)アクリル酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、飽和または不飽和二塩基酸無水物と1分子中に1個の水酸基を有する(メタ)アクリレート誘導体と当モル反応物である半エステル類、飽和または不飽和二塩基酸とモノグリシジル(メタ)アクリレート誘導体類との当モル反応物である半エステル類等が挙げられるが、感光性樹脂組成物としたときの感度の点で(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物または桂皮酸が特に好ましい。
【0016】
本発明のエポキシカルボキシレート化合物(A)の製造は、前述のエポキシ化合物(a)と分子中にヘテロ環構造を有するモノカルボン酸化合物(b)及び分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物(c)とを反応させて得る。この反応は、無溶剤もしくはアルコール性水酸基を有さない溶媒、具体的には例えば、アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のエステル類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤、更には後述する架橋剤(C)等の単独または混合有機溶媒中で反応させることにより得ることができる。
【0017】
分子中にヘテロ環構造を有するモノカルボン酸化合物(b)の反応量(以下xとする)としては、エポキシ樹脂(a)1当量に対し、10〜40当量%、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物(c)としては、エポキシ樹脂(a)1当量に対し、(100−x)当量%であることが望ましい。
xが10当量%未満の場合、塗膜の密着性が不十分になる恐れがあり、また、xが40当量%を超える場合、エチレン性不飽和二重結合の導入量が低くなり、感光性が低下する恐れや、架橋密度が低くなる恐れがあるので好ましくない。
【0018】
反応時には、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、反応物に対して0.1〜10重量%である。その際の反応温度は好ましくは60〜150℃であり、また反応時間は、好ましくは5〜60時間である。この反応で使用する触媒としては、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、トリフェニルフォスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0019】
本発明の感光性樹脂組成物は、前述のエポキシカルボキシレート化合物(A)、光重合開始剤(B)及び任意成分として架橋剤(C)を含有することを特徴とする。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる光重合開始剤(B)の具体例としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシンクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オンなどのアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、4,4'−ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等が挙げられる。
【0021】
これらは、単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等の安息香酸誘導体等の促進剤などと組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる任意成分として架橋剤(C)の具体例としては、例えば、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等)と多カルボン酸化合物の酸無水物(例えば、無コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等)の反応物であるハーフエステル,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX−220、HX−620、等)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、モノ又はポリグリシジル化合物(例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、グリセリンポリエトキシグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリエトキシポリグリシジルエーテル等と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0023】
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる(A)、(B)及び(C)成分の量は、感光性樹脂組成物の不揮発分を100重量%とした場合、(A)成分は、10〜80重量%、(B)成分は、0.5〜30重量%が好ましく、(C)成分は、0〜60重量%の任意の量が好ましい。
【0024】
本発明の感光性樹脂組成物は、電子部品の層間の絶縁材として、またプリント基板用のソルダーレジスト等のレジストインキ、スルーホールなどの永久穴埋めインキとして有用である他、卦止剤、塗料、コーティング剤、接着剤等としても使用できる。
【0025】
本発明の硬化物は、紫外線等のエネルギー線照射により上記の本発明の感光性樹脂組成物を硬化させたものである。紫外線等のエネルギー線照射による硬化は常法により行うことができる。例えば紫外線を照射する場合、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、紫外線発光レーザー(エキシマーレーザー等)等の紫外線発生装置を用いればよい。本発明の感光性樹脂組成物の硬化物は、例えばソルダーレジストやビルドアップ工法用の層間絶縁材としてプリント基板のような電気・電子部品に利用される。この硬化物層の膜厚は0.5〜160μm程度で、1〜60μm程度が好ましい。
【0026】
本発明の硬化物は、例えば次のようにして得ることができる。即ち、液状の樹脂組成物を使用する場合、プリント配線用基板に、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法、カーテンコート法等の方法により5〜160μmの膜厚で本発明の組成物を塗布し、塗膜を60〜110℃、好ましくは60〜100℃の温度で乾燥させることにより、タックフリーの塗膜が形成できる。
その後、紫外線を10〜2000mJ/cm2程度のエネルギーを照射し、更に必要に応じて、100〜200℃の温度で熱硬化させることにより、密着性、半田耐熱性、耐薬品性、耐金メッキ性、フレキシブル性、電気特性等の諸特性を満足する永久保護膜を有する硬化物が得られる。
【0027】
光硬化させるための照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプまたはメタルハライドランプなどが適当である。
その他、レーザー光線なども露光用活性光源として利用できる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでない。
【0029】
実施例1
攪拌装置、還流管をつけた2Lフラスコ中に、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)として、日本化薬(株)製 NER−7000(多官能ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、エポキシ当量:300.72g/当量)を513.3g、分子中にヘテロ環構造を有するモノカルボン酸化合物(b)として、2−フランカルボン酸(分子量:112.08)を38.3g、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物(c)としてアクリル酸(分子量:72.06)を98.4g、反応溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下PGMEAという)を350.0g、熱重合禁止剤として2−メチルハイドロキノンを0.50g、及び反応触媒としてトリフェニルフォスフィンを3.0g仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が、2mg・KOH/g以下になるまで反応させ、本発明のエポキシカルボキシレート化合物 65重量%を含む樹脂液を得た。このときの反応時間は32時間であった。この樹脂液をA−1とする。
【0030】
実施例2
攪拌装置、還流管をつけた2Lフラスコ中に、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)として、日本化薬(株)製 EOCN−104S(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:220.0g/当量)を467.2g、分子中にヘテロ環構造を有するモノカルボン酸化合物(b)として、2−フランカルボン酸(分子量:112.08)を83.3g、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物(c)としてアクリル酸(分子量:72.06)を99.5g、反応溶剤兼架橋剤(C)として、トリメチロールプロパントリアクリレートを278.6g、熱重合禁止剤として2−メチルハイドロキノンを0.46g、及び反応触媒としてトリフェニルフォスフィンを2.8g仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が、2mg・KOH/g以下になるまで反応させ、本発明のエポキシカルボキシレート化合物 70重量%を含む樹脂液を得た。このときの反応時間は24時間であった。この樹脂液をA−2とする。
【0031】
実施例3
攪拌装置、還流管をつけた2Lフラスコ中に、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)として、日本化薬(株)製 EPPN−503H(トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、エポキシ当量:182.0g/当量)を442.6g、分子中にヘテロ環構造を有するモノカルボン酸化合物(b)として、2−テトラヒドロフランカルボン酸(分子量:116.13)を84.7g、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物(c)としてアクリル酸(分子量:72.06)を122.7g、反応溶剤として、メチルエチルケトン(以下MEKという)を278.6g、熱重合禁止剤として2−メチルハイドロキノンを0.46g、及び反応触媒としてトリフェニルフォスフィンを2.8g仕込み、還流温度で反応液の酸価が、2mg・KOH/g以下になるまで反応させ、本発明のエポキシカルボキシレート化合物 70重量%を含む樹脂液を得た。このときの反応時間は48時間であった。この樹脂液をA−3とする。
【0032】
実施例4〜6
前記実施例1〜3で得られた(A−1)、(A−2)及び(A−3)を表1に示す配合割合で混合、必要に応じて3本ロールミルで混練し、本発明の感光性樹脂組成物を得た。これをバーコート法により、15〜25μmの厚さになるように銅配線ポリイミド基板に塗布し、(A−2)以外の組成を用いる場合は、塗膜を80℃の熱風乾燥器で30分乾燥させた。次いで、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用いて、紫外線を照射した。得られた硬化物について、後述のとおり、光感度、表面光沢、基板そり、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性の試験を行なった。それらの結果を表2に示す。なお、試験方法及び評価方法は次のとおりである。
【0033】
(光感度)塗膜に紫外線を照射後、脱脂綿をのせ、表面に脱脂綿が付着するか観察した。
○・・・・照射量 1000mJ/cm2 以下
×・・・・照射量 1000mJ/cm2 以上
【0034】
(表面光沢)500mJ/cm2 の紫外線を照射した塗膜をエタノールに60秒間浸漬させ、乾燥後の硬化膜を観察する。下記の基準を使用した。
○・・・・曇りが全く見られない
×・・・・若干の曇りが見られる
【0035】
(基板そり)塗膜に、500mJ/cm2 の紫外線を照射露光する。下記の基準を使用した。
○・・・・基板にそりは見られない
×・・・・基板のそりが見られる
【0036】
(密着性)塗膜に、500mJ/cm2 の紫外線を照射露光する。JIS K5400に準じて、試験片に1mmのごばん目を100個作りセロテープによりピーリング試験を行った。ごばん目の剥離状態を観察し、次の基準で評価した。
○・・・・剥れのないもの
×・・・・剥離するもの
【0037】
(鉛筆硬度)塗膜に、500mJ/cm2 の紫外線を照射露光する。JIS K5400に準じて評価を行った。
【0038】
(耐溶剤性)500mJ/cm2 の紫外線を照射した塗膜をイソプロピルアルコールに室温で30分間浸漬する。外観に異常がないか確認した後、セロテープによるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○・・・・曇りが全く見られない
×・・・・若干の曇りが見られる
【0039】
(耐酸性)500mJ/cm2 の紫外線を照射した塗膜を10%塩酸水溶液に室温で30分浸漬する。外観に異常がないか確認した後、セロテープによるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○・・・・塗膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの
×・・・・塗膜にフクレや剥離があるもの
【0040】
(耐熱性)500mJ/cm2 の紫外線を照射した塗膜にロジン系プラックスを塗布し260℃の半田槽に5秒間浸漬した。これを1サイクルとし、3サイクル繰り返した。室温まで放冷した後、セロテープによるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
〇・・・・塗膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの
×・・・・塗膜にフクレや剥離のあるもの
【0041】
(耐金メッキ性)500mJ/cm2 の紫外線を照射した塗膜を、30℃の酸性脱脂液(日本マクダーミット製、Metex L−5Bの20vol%水溶液)に3分間浸漬した後、水洗し、次いで、14.4wt%過硫酸アンモン水溶液に室温で3分間浸漬した後、水洗し、更に10vol%硫酸水溶液に室温で試験基板を1分間浸漬した後水洗した。次に、この基板を30℃の触媒液(メルテックス製、メタルプレートアクチベーター350の10vol%水溶液)に7分間浸漬し、水洗し、85℃のニッケルメッキ液(メルテックス製、メルプレートNi−865Mの20vol%水溶液、pH4.6)に20分間浸漬し、ニッケルメッキを行った後、10vol%硫酸水溶液に室温で1分間浸漬し、水洗した。
次いで、試験基板を95℃の金メッキ液(メルテックス製、オウロレクトロレスUP15vol%とシアン化金カリウム3vol%の水溶液、pH6)に10分間浸漬し、無電解金メッキを行った後、水洗し、更に60℃の温水で3分間浸漬し、水洗し、乾燥した。得られた無電解金メッキ評価基板にセロハン粘着テープを付着し、剥離したときの状態を観察した。
○:全く異常が無いもの。
×:若干剥がれが観られたもの。
【0042】
【0043】
【0044】
表2
【0045】
表2の結果から明らかなように、本発明の感光性樹脂組成物は高感度であり、その硬化膜も半田耐熱性、耐薬品性、耐金メッキ性等に優れ、また硬化物表面にクラックが発生せず、薄膜化された基板を用いた場合でも基板にそりの無いプリント基板用感光性樹脂組成物であることは明らかである。
【0046】
【発明の効果】
本発明のエポキシカルボキシレート化合物(A)及びそれを用いた感光性樹脂組成物は、紫外線により露光硬化することによる塗膜の形成において、光感度に優れ、得られた硬化物は、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性等も十分に満足するものであり、特に、プリント配線板用感光性樹脂組成物に適している。
Claims (6)
- 分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)、分子中にヘテロ環構造を有するモノカルボン酸化合物(b)としてのフラン環構造もしくはテトラヒドロフラン環構造を有するモノカルボン酸化合物、及び分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物(c)とを反応させて得られることを特徴とするエポキシカルボキシレート化合物(A)。
- 分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a)のエポキシ当量が、90〜600g/当量のエポキシ化合物である請求項1に記載のエポキシカルボキシレート化合物(A)。
- 分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物(c)が、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとの反応生成物または桂皮酸の中から選択されたモノカルボン酸である請求項1または請求項2に記載のエポキシカルボキシレート化合物(A)。
- ヘテロ環構造を有するモノカルボン酸化合物(b)の反応量が、エポキシ樹脂(a)1当量に対し、10〜40当量%である請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のエポキシカルボキシレート化合物(A)。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のエポキシカルボキシレート化合物(A)、光重合開始剤(B)及び任意成分として架橋剤(C)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
- 請求項5に記載の感光性樹脂組成物の硬化物。
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