JP4573756B2 - 車両の防振装置 - Google Patents
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Description
図10に示す車両Tは、鉄道車両であり、乗客などを搭載する車体101と、軌道に沿って走行する台車102と、台車102上に車体101を弾性支持する空気ばね103と、車体101と台車102とを連結するけん引リンクやヨーダンパなどの連結部材104などを備えている。鉄道車両では、輪軸アンバランスや台車ピッチングなどに起因してけん引リンクやヨーダンパを介して入力される加振力によって生じる車体振動が乗り心地の観点から問題になる場合がある。例えば、図10(A)に示すように、輪軸のアンバランスや軌道の高低狂いなどによって車両Tが上下に加振されるとともに台車102が前後方向に振動すると、車体101に上下曲げ振動が発生する。また、図10(B)に示すように、輪軸のアンバランスや軌道の高低狂いなどによって車両Tが上下に加振されるとともに台車102がピッチング振動するときにも、車体101に上下曲げ振動が発生する。このような車体101の上下曲げ振動は、人間が上下振動加速度に対して敏感とされる周波数領域において発生することが多いため、この上下曲げ振動を低減することが乗り心地の向上のために重要となる。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、振動の伝達と衝撃とを緩和する緩衝ゴム(6)を有する車両の防振装置であって、前記緩衝ゴムは、外筒(7)の内周部(7b)とゴム筒(9)の外周部(9a)とが一体となって接合し、ピン(8)の外周部(8b)とこのゴム筒の内周部(9b)との間に間隙部(10)が形成されており、前記緩衝ゴムは、前記ゴム筒と前記ピンとの相対振動の振動周波数が低いときには、このゴム筒の内周部とこのピンの外周部との密着度が高くなって剛性が高くなり、前記ゴム筒と前記ピンとの相対振動の振動周波数が高いときには、このゴム筒の内周部とこのピンの外周部との密着度が低くなって剛性が低くなることを特徴とする車両(T)の防振装置(5)である。
を特徴とする車両の防振装置。
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る車両の防振装置を備える鉄道車両の模式図である。図2は、この発明の第1実施形態に係る車両の防振装置を備えるけん引装置の外観図である。図3は、この発明の第1実施形態に係る車両の防振装置を備えるヨーダンパ装置の外観図である。
図1に示す車両Tは、軌道に沿って走行する鉄道車両である。車両Tは、例えば、電車又は気動車などである。車両Tは、図1に示す車体1と、台車2と、図1及び図2に示すけん引装置3と、図1及び図3に示すヨーダンパ装置4と、図2及び図3に示す防振装置5などを備えている。
図4に示す防振装置5は、振動を低減するための装置である。防振装置5は、図2に示すけん引装置3のブシュ孔3d,3eと、図3に示すヨーダンパ装置4のブシュ孔4e,4fとに挿入される。防振装置5は、図4に示すように、緩衝ゴム6を備えている。
図5(A)〜(C)に示す縦軸はばね定数であり、図5(A)に示す横軸は振動周波数であり、図5(B)に示す横軸は加振力を受けたときの変位量であり、図5(C)に示す横軸は振動の振幅である。緩衝ゴム6は、図5(A)に示すように、振動周波数が低いときに比べて、振動周波数が高いときには剛性が低くなる特性を有する。このため、緩衝ゴム6は、図5(A)に示すように、振動周波数が低いときにはばね定数が大きく通常の剛性であるが、振動周波数が高いときにはばね定数が小さくなり柔らかくなる。また、緩衝ゴム6は、図5(B)に示すように、加振力を受けたときの変位量が大きいときに比べて、加振力を受けたときの変位量が小さいときには剛性が低くなる特性を有する。このため、緩衝ゴム6は、加振力を受けたときの変位量が大きいときにはばね定数が大きく通常の剛性であるが、加振力を受けたときの変位量が小さいときにはばね定数が小さくなり柔らかくなる。さらに、緩衝ゴム6は、図5(C)に示すように、振動の振幅が大きいときに比べて、振動の振幅が小さいときには剛性が低くなる特性を有する。このため、緩衝ゴム6は、図5(C)に示すように、振動の振幅が大きいときにはばね定数が大きく通常の剛性であるが、振動の振幅が小さいときにはばね定数が小さくなり柔らかくなる。
図10に示すような輪軸アンバランスや台車ピッチングなどに起因する車体1の上下曲げ振動のうち乗り心地の観点から問題となる周波数は一般に5〜20Hz程度である。このような輪軸アンバランスや台車ピッチングなどが発生しているときには、車体1と台車2との間には比較的小さな力が伝達されている。このため、図4(B)に示すように、防振装置5に作用する加振力が小さくゴム筒9とピン8との相対振動の振動周波数が高くなり、ゴム筒9とピン8との相対変位が大きくなるとともにこれらの相対振動の振幅も大きくなり、間隙部10の減少量が小さくなる。その結果、内周部9bと外周部8bとの密着度が低くなって緩衝ゴム6の剛性が低くなる。このため、図5(B)に示すように、変位量が小さくなるとばね定数が小さくなるという関係により、外筒7とピン8との間で加振力が伝達されるのを抑制し、図5(A)に示すように、振動周波数が高くなるとばね定数が小さくなるという関係により、振動周波数が高くて振幅の小さい上下曲げ振動のような弾性振動を含む振動が外筒7とピン8との間で伝達されるのを抑制する。
(1) この第1実施形態では、振動周波数が小さいときに比べて、振動周波数が高いときには剛性が低くなる特性を緩衝ゴム6が有する。また、この第1実施形態では、加振力を受けたときの変位量が大きいときに比べて、加振力を受けたときの変位量が小さいときには剛性が低くなる特性を緩衝ゴム6が有する。さらに、この第1実施形態では、振動の振幅が大きいときに比べて、振動の振幅が小さいときには剛性が低くなる特性を緩衝ゴム6が有する。このため、振動周波数が高い場合や変位量が小さい場合には、緩衝ゴム6の剛性を柔らかくすることができる。その結果、輪軸アンバランスや台車ピッチングなどに起因してけん引装置3やヨーダンパ装置4から車体1に伝わる加振力が低減されて、車体1の上下曲げ振動などの弾性振動のような振動周波数が高くて振幅の小さい振動が抑制され、乗り心地を向上させることができる。一方、けん引装置3やヨーダンパ装置4が本来の機能の発揮を求められている振動周波数が低い場合や変位量が大きい場合には、緩衝ゴム6の剛性を十分に剛にすることができる。その結果、けん引装置3によって駆動力や制動力を伝達することができるとともに、ヨーダンパ装置4によって台車2のヨーイング運動を減衰させることができる。
図6は、この発明の第2実施形態に係る車両の防振装置の外観図であり、図6(A)は正面図であり、図6(B)は側面図であり、図6(C)は図6(B)のVI-VIC線で切断した状態を示す断面図である。以下では、図4に示す部分と同一の部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
図6に示す緩衝ゴム6は、ゴム筒9に空隙部11を有し、ピン8の外周部8bとゴム筒9の内周部9bとの間が接着されている。空隙部11は、ゴム筒9内に形成された隙間であり、図6(B)に示すようにゴム筒9の周方向に所定長さ及び幅でスリット状に形成されている。空隙部11は、図1に示す間隙部10と同様に、ゴム筒9が弾性変形することによって隙間が変化する。
この第2実施形態では、緩衝ゴム6がゴム筒9に空隙部11を有する。その結果、図5(B)に示す加振力が大きくゴム筒9とピン8との相対振動の振動周波数が低いときには、ゴム筒9とピン8との相対変位が大きくなるとともに振動の振幅も大きくなる。このため、空隙部11の減少量が大きくなり緩衝ゴム6の剛性を高くすることができる。一方、図5(B)に示す加振力が小さくゴム筒9とピン8との相対振動の振動周波数が高いときには、ゴム筒9とピン8との相対変位が小さくなるとともにこれらの相対振動の振幅も小さくなる。このため、空隙部11の減少量が小さくなり緩衝ゴム6の剛性を低くすることができる。
図7は、この発明の実施例に係る車両の防振装置の外観図であり、図7(A)は正面図であり、図7(B)は側面図である。以下では、図4に示す部分と対応する部分については、対応する番号を付して詳細な説明を省略する。
図7に示す防振装置50は、図4に示す防振装置5と同一構造であり、図7に示すφ1=130mm,φ2=70mm,L1=80mm,L2=110mm,L3=180mm,L4=260mm,H=40mmである。
図8に示す縦軸は、荷重(N)であり、横軸は変位(mm)である。図9に示す縦軸は、動的ばね定数(N/mm)であり、横軸は周波数(Hz)である。先ず、図7に示すピン80とゴム筒90との間の間隙部100を測定したところ、隙間は0.40〜0.45mmであった。次に、図7に示す防振装置50のZ方向の静的ばね定数(ks)を測定したところ、図8に示すように静的ばね定数(ks)は5.6(kN/mm)であった。また、図7に示す防振装置50のZ方向の動的ばね定数(kd)を、測定条件としてZ方向プレロード0(N)、加振振幅±0.5mm(周波数によらず一定)で加振させて測定したところ、図9に示すように動的ばね定数(kd)は10Hz以上の周波数では0.4〜0.5(kN/mm)であった。その結果、図7に示す防振装置50の動倍率(kd/ks)は、1/10以下であることが確認された。一般に防振ゴムの動倍率は1以上であるが、この防振装置50では動倍率が0.1程度に低下しており、振動周波数が高くなるに従ってばね定数が低下する効果が確認された。
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、緩衝ゴム6がピン付きゴムブシュである場合を例に挙げて説明したが、ピン付きゴムブシュ以外の緩衝ゴムについてもこの発明を適用することができる。例えば、車体側の中心ピンを台車側のけん引梁に回転自在に嵌合させ、複数のゴムを積層した心皿ゴムによってけん引梁と台車枠とを連結する心皿積層ゴム式けん引装置などについてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、この実施形態では、鉄道車両のけん引装置3及びヨーダンパ装置4に防振装置5が使用される場合を例に挙げて説明したが、自動車、構造物、機械類などのサスペンション装置、ダンパ装置、免振装置、制振装置などについてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、けん引装置3及びヨーダンパ装置4を備える車両Tを例に挙げて説明したが、けん引装置3のみを備える車両Tについてもこの発明を適用することができる。
2 台車(第2の部材)
3 けん引装置(連結部材)
4 ヨーダンパ装置(連結部材)
5 防振装置
6 緩衝ゴム
7 外筒
8 ピン(接触部)
8b 外周部
9 ゴム筒(ゴム部)
9a 外周部
9b 内周部
9c 抜け止め部
10 間隙部
11 空隙部
T 車両
Claims (9)
- 振動の伝達と衝撃とを緩和する緩衝ゴムを有する車両の防振装置であって、
前記緩衝ゴムは、外筒の内周部とゴム筒の外周部とが一体となって接合し、ピンの外周部とこのゴム筒の内周部との間に間隙部が形成されており、
前記緩衝ゴムは、前記ゴム筒と前記ピンとの相対振動の振動周波数が低いときには、このゴム筒の内周部とこのピンの外周部との密着度が高くなって剛性が高くなり、前記ゴム筒と前記ピンとの相対振動の振動周波数が高いときには、このゴム筒の内周部とこのピンの外周部との密着度が低くなって剛性が低くなること、
を特徴とする車両の防振装置。 - 振動の伝達と衝撃とを緩和する緩衝ゴムを有する車両の防振装置であって、
前記緩衝ゴムは、外筒の内周部とゴム筒の外周部とが一体となって接合し、ピンの外周部とこのゴム筒の内周部との間に間隙部が形成されており、
前記緩衝ゴムは、加振力を受けたときの前記ゴム筒と前記ピンとの相対変位が大きいときには、このゴム筒の内周部とこのピンの外周部との密着度が高くなって剛性が高くなり、加振力を受けたときの前記ゴム筒と前記ピンとの相対変位が小さいときには、このゴム筒の内周部とこのピンの外周部との密着度が低くなって剛性が低くなること、
を特徴とする車両の防振装置。 - 振動の伝達と衝撃とを緩和する緩衝ゴムを有する車両の防振装置であって、
前記緩衝ゴムは、外筒の内周部とゴム筒の外周部とが一体となって接合し、ピンの外周部とこのゴム筒の内周部との間に間隙部が形成されており、
前記緩衝ゴムは、前記ゴム筒と前記ピンとの相対振動の振幅が大きいときには、このゴム筒の内周部とこのピンの外周部との密着度が高くなって剛性が高くなり、前記ゴム筒と前記ピンとの相対振動の振幅が小さいときには、このゴム筒の内周部とこのピンの外周部との密着度が低くなって剛性が低くなること、
を特徴とする車両の防振装置。 - 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両の防振装置において、
前記ゴム筒の内周部又は前記ピンの外周部のいずれか一方には、突起状の抜け止め部が形成されていること、
を特徴とする車両の防振装置。 - 振動の伝達と衝撃とを緩和する緩衝ゴムを有する車両の防振装置であって、
前記緩衝ゴムは、外筒の内周部とゴム筒の外周部とが一体となって接合し、ピンの外周部とこのゴム筒の内周部との間が接着されているとともに、このゴム筒に空隙部が形成されており、
前記緩衝ゴムは、前記ゴム筒と前記ピンとの相対振動の振動周波数が低いときには、前記空隙部の密着度が高くなって剛性が高くなり、前記ゴム筒と前記ピンとの相対振動の振動周波数が高いときには、前記空隙部の密着度が低くなって剛性が低くなること、
を特徴とする車両の防振装置。 - 振動の伝達と衝撃とを緩和する緩衝ゴムを有する車両の防振装置であって、
前記緩衝ゴムは、外筒の内周部とゴム筒の外周部とが一体となって接合し、ピンの外周部とこのゴム筒の内周部との間が接着されているとともに、このゴム筒に空隙部が形成されており、
前記緩衝ゴムは、加振力を受けたときの前記ゴム筒と前記ピンとの相対変位が大きいときには、前記空隙部の密着度が高くなって剛性が高くなり、加振力を受けたときの前記ゴム筒と前記ピンとの相対変位が小さいときには、前記空隙部の密着度が低くなって剛性が低くなること、
を特徴とする車両の防振装置。 - 振動の伝達と衝撃とを緩和する緩衝ゴムを有する車両の防振装置であって、
前記緩衝ゴムは、外筒の内周部とゴム筒の外周部とが一体となって接合し、ピンの外周部とこのゴム筒の内周部との間が接着されているとともに、このゴム筒に空隙部が形成されており、
前記緩衝ゴムは、前記ゴム筒と前記ピンとの相対振動の振幅が大きいときには、前記空隙部の密着度が高くなって剛性が高くなり、前記ゴム筒と前記ピンとの相対振動の振幅が小さいときには、前記空隙部の密着度が低くなって剛性が低くなること、
を特徴とする車両の防振装置。 - 請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の車両の防振装置において、
前記緩衝ゴムは、前記車両が鉄道車両であるときにこの鉄道車両の車体と台車とを連結する連結部材に使用されること、
を特徴とする車両の防振装置。 - 請求項8に記載の車両の防振装置において、
前記緩衝ゴムは、前記車体と前記台車とを連結するけん引装置及び/又はヨーダンパ装置に使用されること、
を特徴とする車両の防振装置。
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