===開示の概要===
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
媒体を搬送方向に搬送する搬送ユニットと、前記搬送方向に並ぶ複数のノズルを移動させるキャリッジと、を備え、
前記複数のノズルからインクを吐出して複数の補正用パターンを前記媒体に形成し、
それぞれの前記補正用パターンは、基準となる基準用パターンと、前記基準用パターンと前記搬送方向に隣接して形成される比較用パターンと、を有し、
前記基準用パターン及び前記比較用パターンの一方のパターンは、前記搬送ユニットによる搬送の前に、前記複数のノズルのうちの一部のノズル群により形成され、
他方のパターンは、前記搬送ユニットによる搬送の後に、前記一部のノズル群よりも搬送方向下流側のノズル群により形成される
印刷装置において、
ある補正用パターンの前記比較用パターンの形成に使用される前記ノズル群は、他の補正用パターンの前記比較用パターンの形成に使用される前記ノズル群と異なることを特徴とする印刷装置。
かかる印刷装置によれば、複数の補正用パターンを印刷する際に、基準用パターンと比較用パターンとの間隔を、補正用パターン毎に適正なものにすることができる。
かかる印刷装置であって、前記一方のパターンは、前記複数のノズルのうちの搬送方向上流側のノズル群により形成され、前記他方のパターンは、前記複数のノズルのうちの搬送方向下流側のノズル群により形成されることが望ましい。かかる印刷装置によれば、基準用パターンの形成と比較用パターンの形成との間に行われる搬送ユニットによる搬送を、大きくすることができるので、搬送誤差の検出が容易になる。
かかる印刷装置であって、ある補正用パターンの前記基準用パターンの形成に使用される前記ノズル群は、他の補正用パターンの前記基準用パターンの形成に使用される前記ノズル群と等しいことが望ましい。このような印刷装置によれば、ある補正用パターンの基準用パターンと比較用パターンとの間隔が、他の補正用パターンの基準用パターンと比較用パターンとの間隔と異なることになる。つまり、間隔の異なる複数の補正用パターンを媒体に形成することができる。
かかる印刷装置であって、前記複数のノズルは所定の間隔で並んでおり、前記複数の補正用パターンの前記基準用パターンと前記比較用パターンとの間隔は、前記所定の間隔ずつ段階的に異なることが望ましい。このような印刷装置によれば、補正用パターンの形成の際に使用するノズルを1つずつずらすことによって、基準用パターンと比較用パターンとの間隔が段階的に異なることになる。
かかる印刷装置であって、ある補正用パターンにおける前記基準用パターンの形成と前記比較用パターンの形成との間に行われる前記搬送ユニットによる搬送量は、他の補正用パターンにおける前記搬送量と等しいことが望ましい。また、前記複数の補正用パターンは、前記搬送方向に沿って媒体に形成されることが好ましい。このような印刷装置によれば、補正用パターンの基準用パターンと比較用パターンとの間隔を搬送量によって変えるのではなく、使用するノズルによって変えているので、補正用パターンの間隔を適正なものにすることができる。
かかる印刷装置であって、前記複数の補正用パターンは、前記キャリッジの移動する方向に沿って媒体に形成されることが望ましい。このような印刷装置によれば、媒体上の狭い領域に、より多くの補正用パターンを形成することができる。複数の前記補正用パターンが形成される領域の前記搬送方向の長さは、前記複数のノズルのうちの最上流ノズルから最下流ノズルまでの長さの2倍よりも短いことが好ましい。このような印刷装置によれば、搬送方向に一つの補正用パターンしか形成できない狭い領域に、多くの補正用パターンを形成することができる。
かかる印刷装置であって、前記搬送ユニットは、印刷領域の上流側に位置する上流側ローラと前記印刷領域の下流側に位置する下流側ローラとを有し、前記上流側ローラ及び前記下流側ローラの一方のローラによって前記媒体が搬送される際に、前記補正用パターンを前記媒体に形成することが望ましい。2つのローラによる搬送状態と1つのローラによる搬送状態は異なる搬送状態になる。本印刷装置によれば、1つのローラによって媒体が搬送される状態の狭い印刷領域に、多くの補正用パターンを形成できる。前記上流側ローラと前記下流側ローラとを用いて前記媒体を搬送する際の搬送量に対する補正量は、前記上流側ローラ及び前記下流側ローラの一方のローラを用いて前記媒体を搬送する際の搬送量に対する補正量と異なることが好ましい。2つのローラによる搬送状態と1つのローラによる搬送状態は異なる搬送状態になるので、それぞれの搬送状態に応じた補正量が設定される。前記下流側ローラの形状は、前記上流側ローラの形状と異なることが好ましい。2つのローラの形状が異なれば、2つのローラによる搬送状態と1つのローラによる搬送状態は異なる搬送状態になる。本印刷装置によれば、1つのローラによって媒体が搬送される状態の狭い印刷領域に、多くの補正用パターンを形成できる。前記下流側ローラに対向する従動ローラの形状は、前記上流側ローラに対向する従動ローラの形状と異なることが好ましい。それぞれの従動ローラの形状が異なれば、2つのローラによる搬送状態と1つのローラによる搬送状態は異なる搬送状態になる。本印刷装置によれば、1つのローラによって媒体が搬送される状態の狭い印刷領域に、多くの補正用パターンを形成できる。前記下流側ローラの搬送速度は、前記上流側ローラの搬送速度と異なることが好ましい。2つのローラの搬送速度が異なれば、2つのローラによる搬送状態と1つのローラによる搬送状態は異なる搬送状態になる。本印刷装置によれば、1つのローラによって媒体が搬送される状態の狭い印刷領域に、多くの補正用パターンを形成できる。
かかる印刷装置であって、前記搬送ユニットは、印刷領域の上流側に位置する上流側ローラと、前記印刷領域の下流側に位置する下流側ローラとを有し、前記上流側ローラ及び前記下流側ローラによって前記媒体が搬送される際に、前記補正用パターンを前記媒体に形成しても良い。このように、本印刷装置では、補正用パターンを形成するときの状態が、2つのローラのうちの一方のローラによって搬送されている状態に限られるものではない。
かかる印刷装置であって、前記基準用パターンの形成と前記比較用パターンの形成との間に、前記搬送ユニットが複数回の搬送を行うことが望ましい。このような印刷装置によれば、基準用パターンの形成と比較用パターンの形成との間に行われた複数回の搬送の際に蓄積された搬送誤差を検出することができる。
かかる印刷装置であって、前記ノズルは、複数の大きさのドットを前記媒体に形成可能であって、前記基準用パターン及び前記比較用パターンのうちの少なくとも一方のパターンは、前記複数の大きさのドットから構成されることが望ましい。インクの乾きやインクの滲み具合等の影響によって、大ドットのみで構成したテストパターンの最適な補正用パターンと、小ドットのみで構成したテストパターンの最適な補正用パターンと、が異なることもあり得るので、このような印刷装置によれば、異なる大きさのドットから構成されたテストパターンを用いて最適な補正用パターンを選択することが可能になるので、平均的な補正量を特定することができる。また、前記基準用パターン及び前記比較用パターンのうちの少なくとも一方のパターンは、異なる色の複数のドットから形成されることが望ましい。各色のノズルの取付誤差や寸法の公差等の影響によって、各色のみで構成したテストパターンの最適な補正用パターンがそれぞれ異なることもあり得るので、このような印刷装置によれば、異なる色のドットから構成されたテストパターンを用いて最適な補正用パターンを選択すれば、平均的な補正量を特定することができる。
また、基準となる基準用パターン及び前記基準用パターンと前記搬送方向に隣接して形成される比較用パターンのうちの一方のパターンを、搬送方向に並ぶ複数のノズルのうちの一部のノズル群により媒体に形成し、
前記媒体を前記複数のノズルに対して前記搬送方向に搬送し、
他方のパターンを、前記一部のノズル群よりも搬送方向下流側のノズル群により前記媒体に形成し、
前記基準用パターンと前記比較用パターンとからなる補正用パターンを前記媒体に複数形成する、テストパターンの製造方法であって、
ある補正用パターンの前記比較用パターンを、他の補正用パターンの前記比較用パターンの形成に使用される前記ノズル群とは異なるノズル群を用いて、形成することを特徴とするテストパターンの製造方法。
このようなテストパターンの製造方法によれば、複数の補正用パターンを印刷する際に、基準用パターンと比較用パターンとの間隔を、補正用パターン毎に適正なものにすることができる。
コンピュータ本体と、印刷装置とを有する印刷システムであって、
前記印刷装置は、
媒体を搬送方向に搬送する搬送ユニットと、前記搬送方向に並ぶ複数のノズルを移動させるキャリッジと、を備え、
前記複数のノズルからインクを吐出して複数の補正用パターンを前記媒体に形成し、
それぞれの前記補正用パターンは、基準となる基準用パターンと、前記基準用パターンと前記搬送方向に隣接して形成される比較用パターンと、を有し、
前記基準用パターン及び前記比較用パターンの一方のパターンは、前記搬送ユニットによる搬送の前に、前記複数のノズルのうちの一部のノズル群により形成され、
他方のパターンは、前記搬送ユニットによる搬送の後に、前記一部のノズル群よりも搬送方向下流側のノズル群により形成される
印刷システムにおいて、
ある補正用パターンの前記比較用パターンの形成に使用される前記ノズル群は、他の補正用パターンの前記比較用パターンの形成に使用される前記ノズル群と異なることを特徴とする印刷システム。
このような印刷システムによれば、複数の補正用パターンを印刷する際に、基準用パターンと比較用パターンとの間隔を、補正用パターン毎に適正なものにすることができる。
===印刷システムの構成===
次に、印刷システム(コンピュータシステム)の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、以下の実施形態の記載には、コンピュータプログラム、及び、コンピュータプログラムを記録した記録媒体等に関する実施形態も含まれている。
図1は、印刷システムの外観構成を示した説明図である。この印刷システム100は、プリンタ1と、コンピュータ110と、表示装置120と、入力装置130と、記録再生装置140とを備えている。プリンタ1は、紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する印刷装置である。コンピュータ110は、プリンタ1と電気的に接続されており、プリンタ1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。表示装置120は、ディスプレイを有し、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ等のユーザインタフェースを表示する。入力装置130は、例えばキーボード130Aやマウス130Bであり、表示装置120に表示されたユーザインタフェースに沿って、アプリケーションプログラムの操作やプリンタドライバの設定等に用いられる。記録再生装置140は、例えばフレキシブルディスクドライブ装置140AやCD−ROMドライブ装置140Bが用いられる。
コンピュータ110にはプリンタドライバがインストールされている。プリンタドライバは、表示装置120にユーザインタフェースを表示させる機能を実現させるほか、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換する機能を実現させるためのプログラムである。このプリンタドライバは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなどの記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に記録されている。または、このプリンタドライバは、インターネットを介してコンピュータ110にダウンロードすることも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
なお、「印刷装置」とは、狭義にはプリンタ1を意味するが、広義にはプリンタ1とコンピュータ110とのシステムを意味する。
===プリンタの構成===
<インクジェットプリンタの構成について>
図2は、本実施形態のプリンタの全体構成のブロック図である。また、図3は、本実施形態のプリンタの全体構成の概略図である。また、図4は、本実施形態のプリンタの全体構成の横断面図である。以下、本実施形態のプリンタの基本的な構成について説明する。
本実施形態のプリンタは、搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40、センサ50、およびコントローラ60を有する。外部装置であるコンピュータ110から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ60によって各ユニット(搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラ60は、コンピュータ110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、紙に画像を形成する。プリンタ1内の状況はセンサ50によって監視されており、センサ50は、検出結果をコントローラ60に出力する。センサから検出結果を受けたコントローラは、その検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
搬送ユニット20は、媒体(例えば、紙Sなど)を印刷可能な位置に送り込み、印刷時に所定の方向(以下、搬送方向という)に所定の搬送量で紙を搬送させるためのものである。すなわち、搬送ユニット20は、紙を搬送する搬送機構(搬送手段)として機能する。搬送ユニット20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22(PFモータとも言う)と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。ただし、搬送ユニット20が搬送機構として機能するためには、必ずしもこれらの構成要素を全て必要とするわけではない。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された紙をプリンタ内に自動的に給紙するためのローラである。給紙ローラ21は、D形の断面形状をしており、円周部分の長さは搬送ローラ23までの搬送距離よりも長く設定されているので、この円周部分を用いて紙を搬送ローラ23まで搬送できる。搬送モータ22は、紙を搬送方向に搬送するためのモータであり、DCモータにより構成される。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって給紙された紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラであり、搬送モータ22によって駆動される。プラテン24は、印刷中の紙Sを支持する。排紙ローラ25は、印刷が終了した紙Sをプリンタの外部に排出するローラである。この排紙ローラ25は、搬送ローラ23と同期して回転する。
キャリッジユニット30は、ヘッドを所定の方向(以下、走査方向という)に移動(走査移動)させるためのものである。キャリッジユニット30は、キャリッジ31と、キャリッジモータ32(CRモータとも言う)とを有する。キャリッジ31は、走査方向に往復移動可能である。(これにより、ヘッドが走査方向に沿って移動する。)また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。キャリッジモータ32は、キャリッジ31を走査方向に移動させるためのモータであり、DCモータにより構成される。
ヘッドユニット40は、紙にインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、ヘッド41を有する。ヘッド41は、インク吐出部であるノズルを複数有し、各ノズルから断続的にインクを吐出する。このヘッド41は、キャリッジ31に設けられている。そのため、キャリッジ31が走査方向に移動すると、ヘッド41も走査方向に移動する。そして、ヘッド41が走査方向に移動中にインクを断続的に吐出することによって、走査方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成される。
センサ50には、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、紙検出センサ53、および光学センサ54等が含まれる。リニア式エンコーダ51は、キャリッジ31の走査方向の位置を検出するためのものである。ロータリー式エンコーダ52は、搬送ローラ23の回転量を検出するためのものである。紙検出センサ53は、印刷される紙の先端の位置を検出するためのものである。この紙検出センサ53は、給紙ローラ21が搬送ローラ23に向かって紙を給紙する途中で、紙の先端の位置を検出できる位置に設けられている。なお、紙検出センサ53は、機械的な機構によって紙の先端を検出するメカニカルセンサである。詳しく言うと、紙検出センサ53は搬送方向に回転可能なレバーを有し、このレバーは紙の搬送経路内に突出するように配置されている。そのため、紙の先端がレバーに接触し、レバーが回転させられるので、紙検出センサ53は、このレバーの動きを検出することによって、紙の先端の位置を検出する。光学センサ54は、キャリッジ31に取付けられている。光学センサ54は、発光部から紙に照射された光の反射光を受光部が検出することにより、紙の有無を検出する。そして、光学センサ54は、キャリッジ41によって移動しながら紙の端部の位置を検出する。光学センサ54は、光学的に紙の端部を検出するため、機械的な紙検出センサ53よりも、検出精度が高い。
コントローラ60は、プリンタの制御を行うための制御ユニット(制御手段)である。コントローラ60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェース部61は、外部装置であるコンピュータ110とプリンタ1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU62は、プリンタ全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶手段を有する。CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
<印刷動作について>
図5は、印刷時の処理のフロー図である。以下に説明される各処理は、コントローラ60が、メモリ63内に格納されたプログラムに従って、各ユニットを制御することにより実行される。このプログラムは、各処理を実行するためのコードを有する。
コントローラ60は、コンピュータ110からインターフェース部61を介して、印刷命令を受信する(S001)。この印刷命令は、コンピュータ110から送信される印刷データのヘッダに含まれている。そして、コントローラ60は、受信した印刷データに含まれる各種コマンドの内容を解析し、各ユニットを用いて、以下の給紙処理・搬送処理・インク吐出処理等を行う。
まず、コントローラ60は、給紙処理を行う(S002)。給紙処理とは、印刷すべき紙をプリンタ内に供給し、印刷開始位置(頭出し位置とも言う)に紙を位置決めする処理である。コントローラ60は、給紙ローラ21を回転させ、印刷すべき紙を搬送ローラ23まで送る。コントローラ60は、搬送ローラ23を回転させ、給紙ローラ21から送られてきた紙を印刷開始位置に位置決めする。紙が印刷開始位置に位置決めされたとき、ヘッド41の少なくとも一部のノズルは、紙と対向している。
次に、コントローラ60は、ドット形成処理を行う(S003)。ドット形成処理とは、走査方向に沿って移動するヘッドからインクを断続的に吐出させ、紙上にドットを形成する処理である。コントローラ60は、キャリッジモータ32を駆動し、キャリッジ31を走査方向に移動させる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31が移動している間に、印刷データに基づいてヘッドからインクを吐出させる。ヘッドから吐出されたインク滴が紙上に着弾すれば、紙上にドットが形成される。
次に、コントローラ60は、搬送処理を行う(S004)。搬送処理とは、紙をヘッドに対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。コントローラ60は、搬送モータを駆動し、搬送ローラを回転させて紙を搬送方向に搬送する。この搬送処理により、ヘッド41は、先ほどのドット形成処理によって形成されたドットの位置とは異なる位置に、ドットを形成することが可能になる。
次に、コントローラ60は、印刷中の紙の排紙の判断を行う(S005)。印刷中の紙に印刷するためのデータが残っていれば、排紙は行われない。そして、コントローラ60は、印刷するためのデータがなくなるまでドット形成処理と搬送処理とを交互に繰り返し、ドットから構成される画像を徐々に紙に印刷する。印刷中の紙に印刷するためのデータがなくなれば、コントローラ60は、その紙を排紙する。コントローラ60は、排紙ローラを回転させることにより、印刷した紙を外部に排出する。なお、排紙を行うか否かの判断は、印刷データに含まれる排紙コマンドに基づいても良い。
次に、コントローラ60は、印刷を続行するか否かの判断を行う(S006)。次の紙に印刷を行うのであれば、印刷を続行し、次の紙の給紙処理を開始する。次の紙に印刷を行わないのであれば、印刷動作を終了する。
<ノズルについて>
図6は、ヘッド41の下面におけるノズルの配列を示す説明図である。ヘッド41の下面には、ブラックインクノズル列Kと、シアンインクノズル列Cと、マゼンタインクノズル列Mと、イエローインクノズル列Yが形成されている。各ノズル列は、各色のインクを吐出するための吐出口であるノズルを複数個(本実施形態では 720個)備えている。
各ノズル列の複数のノズルは、搬送方向に沿って、一定の間隔(ノズルピッチ)でそれぞれ整列している。本実施形態では、ノズルピッチが720dpi(1/720インチ)である。
各ノズル列のノズルは、下流側のノズルほど若い番号が付されている(♯1〜♯720)。つまり、ノズル♯1は、ノズル♯720よりも搬送方向の下流側に位置している。各ノズルには、各ノズルを駆動してインク滴を吐出させるための駆動素子としてピエゾ素子(不図示)が設けられている。また、光学センサ54は、紙搬送方向の位置に関して、一番上流側にあるノズル♯720とほぼ同じ位置にある。
<ヘッドの駆動について>
図7は、ヘッドユニット40の駆動回路の説明図である。この駆動回路は、前述のユニット制御回路64内に設けられており、同図に示すように、原駆動信号発生部644Aと、駆動信号整形部644Bとを備えている。このようなノズル♯1〜♯720の駆動回路は、ノズル列ごと、即ち、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロ(Y)の各色のノズル列ごとに各々設けられている。また、ノズルごとに個別にピエゾ素子の駆動が行われるようになっている。図中に各信号名の最後に付されたかっこ内の数字は、その信号が供給されるノズルの番号を示している。
ピエゾ素子は、その両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加すると、電圧の印加時間に応じて伸張し、インクの流路の側壁を変形させる。これによって、インクの流路の体積がピエゾ素子の伸縮に応じて収縮し、この収縮分に相当するインク量が、インク滴となって各色の各ノズル♯1〜♯720から吐出される。
原駆動信号発生部644Aは、各ノズル♯1〜♯720に共通して用いられる原信号ODRVを生成する。この原信号ODRVは、一画素分の主走査期間内(キャリッジ41が一画素の間隔を横切る時間内)に複数のパルスを含む信号である。
駆動信号整形部644Bには、原信号発生部644Aから原信号ODRVが入力されるとともに、印刷信号PRT(i)が入力される。駆動信号整形部644Bは、印刷信号PRT(i)のレベルに応じて、原信号ODRVを整形し、駆動信号DRV(i)として各ノズル♯1〜♯720のピエゾ素子に向けて出力する。各ノズル♯1〜♯720のピエゾ素子は、駆動信号整形部644Bからの駆動信号DRVに基づき駆動される。
<ヘッドの駆動信号について>
図8は、各信号の説明のためのタイミングチャートである。すなわち、同図には、原信号ODRVと、印刷信号PRT(i)と、駆動信号DRV(i)の各信号のタイミングチャートが示されている。
原信号ODRVは、原信号発生部644Aからノズル♯1〜♯720に共通に供給される信号である。本実施形態では、原信号ODRVは、一画素分の主走査期間内(キャリッジが一画素の間隔を横切る時間内)において、第1パルスW1と第2パルスW2の2つのパルスを含む。なお、この原信号ODRVは、原信号発生部644Aから駆動信号整形部644Bに出力される。
印刷信号PRTは、一画素に対して割り当てられている画素データに対応した信号である。つまり、印刷信号PRTは、印刷データに含まれる画素データに応じた信号である。本実施形態では、印刷信号PRT(i)は、一画素に対して2ビットの情報を有する信号になる。なお、この印刷信号PRTの信号レベルに応じて、駆動信号整形部644Bは、原信号ODRVを整形し、駆動信号DRVを出力する。
駆動信号DRVは、印刷信号PRTのレベルに応じて原信号ODRVを遮断することによって得られる信号である。すなわち、すなわち、印刷信号PRTが1レベルのとき、駆動信号整形部644Bは、原信号ODRVの対応するパルスをそのまま通過させて駆動信号DRVとする。一方、印刷信号PRTが0レベルのとき、駆動信号整形部644Bは、原信号ODRVのパルスを遮断する。なお、駆動信号整形部644Bは、ノズル毎に設けられているピエゾ素子に駆動信号DRVを出力する。そして、ピエゾ素子は、この駆動信号DRVに応じて駆動される。
印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「01」に対応しているとき、第1パルスW1のみが一画素区間の前半で出力される。これにより、ノズルから小さいインク滴が吐出され、紙には小さいドット(小ドット)が形成される。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「10」に対応しているとき、第2パルスW2のみが一画素区間の後半で出力される。これにより、ノズルから中サイズのインク滴が吐出され、紙には中サイズのドット(中ドット)が形成される。また、印刷信号PRT(i)が2ビットデータ「11」に対応しているとき、第1パルスW1と第2パルスW2とが一画素区間で出力される。これにより、ノズルから大きいインク滴が吐出され、紙には大きいドット(大ドット)が形成される。
以上説明したとおり、一画素区間における駆動信号DRV(i)は、印刷信号PRT(i)の3つの異なる値に応じて互いに異なる3種類の波形を有するように整形されている。
===搬送処理===
<搬送処理について>
図9は、搬送ユニット20の構成の説明図である。なお、これらの図において、既に説明された構成要素については、同じ符号を付しているので、説明を省略する。
搬送ユニット20は、コントローラからの搬送指令に基づいて、所定の駆動量にて搬送モータ22を駆動させる。搬送モータ22は、指令された駆動量に応じて回転方向の駆動力を発生する。搬送モータ22は、この駆動力を用いて搬送ローラ23を回転させる。また、搬送モータ22は、この駆動力を用いて排紙ローラ25を回転させる。つまり、搬送モータ22が所定の駆動量を発生すると、搬送ローラ23と排紙ローラ25は所定の回転量にて回転する。搬送ローラ23と排紙ローラ25が所定の回転量にて回転すると、紙は所定の搬送量にて搬送される。搬送ローラ23と排紙ローラ25は同期して回転しているため、搬送ローラ23及び排紙ローラ25の少なくとも一方に紙が接触していれば、紙は搬送ユニット20によって搬送可能である。
紙の搬送量は、搬送ローラ23の回転量に応じて定まる。したがって、搬送ローラ23の回転量が検出できれば、紙の搬送量も検出可能である。そこで、搬送ローラ23の回転量を検出するため、ロータリー式エンコーダ52が設けられている。
<ロータリー式エンコーダの構成について>
図10は、ロータリー式エンコーダの構成の説明図である。なお、これらの図において、既に説明された構成要素については、同じ符号を付しているので、説明を省略する。
ロータリー式エンコーダ52はスケール521と検出部522とを有する。
スケール521は、所定の間隔毎に設けられた多数のスリットを有する。このスケール521は、搬送ローラ14に設けられている。つまり、スケール521は、搬送ローラ23が回転すると、一緒に回転する。例えば、搬送ローラ23が紙Sを1/1440インチ分の搬送を行うように回転すると、スケール521は、検出部522に対して、1スリット分だけ回転する。
検出部522は、スケール521と対向して設けられており、プリンタ本体側に固定されている。検出部522は、発光ダイオード522Aと、コリメータレンズ522Bと、検出処理部522Cとを有しており、検出処理部522Cは、複数(例えば、4個)のフォトダイオード522Dと、信号処理回路522Eと、2個のコンパレータ522Fa、522Fbとを備えている。
発光ダイオード522Aは、両端の抵抗を介して電圧Vccが印加されると光を発し、この光はコリメータレンズに入射される。コリメータレンズ522Bは、発光ダイオード522Aから発せられた光を平行光とし、スケール521に平行光を照射する。スケールに設けられたスリットを通過した平行光は、固定スリット(不図示)を通過して、各フォトダイオード522Dに入射する。フォトダイオード522Dは、入射した光を電気信号に変換する。各フォトダイオードから出力される電気信号は、コンパレータ522Fa、522Fbにおいて比較され、比較結果がパルスとして出力される。そして、コンパレータ522Fa、522Fbから出力されるパルスENC−A及びパルスENC−Bが、ロータリー式エンコーダ52の出力となる。
<ロータリー式エンコーダの信号について>
図11Aは、搬送モータ22が正転しているときの出力信号の波形のタイミングチャートである。図11Bは、搬送モータ22が反転しているときの出力信号の波形のタイミングチャートである。
図に示された通り、搬送モータ12の正転時および反転時のいずれの場合であっても、パルスENC−AとパルスENC−Bとは、位相が90度ずれている。搬送モータ22が正転しているとき、すなわち、紙Sが搬送方向に搬送されているときは、パルスENC−Aは、パルスENC−Bよりも90度だけ位相が進んでいる。一方、搬送モータ22が反転しているとき、すなわち、紙Sが搬送方向とは逆方向に搬送されているときは、パルスENC−Aは、パルスENC−Bよりも90度だけ位相が遅れている。各パルスの1周期Tは、搬送ローラ23がスケール521のスリットの間隔(例えば、1/1440インチ(1インチ=2.54cm))分だけ回転する時間に等しい。
コントローラがパルス信号の数をカウントすれば、搬送ローラ23の回転量を検出できるので、紙の搬送量を検出することができる。また、コントローラが各パルスの1周期Tを検出すれば、搬送ローラ23の回転速度を検出できるので、紙の搬送速度を検出することができる。
<搬送フローについて>
図12は、搬送処理のフロー図である。以下に説明される各種の動作は、プリンタ1内のメモリに格納されたプログラムに基づいて、コントローラが搬送ユニット20を制御することによって、実現される。また、このプログラムは、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
まず、コントローラは、目標搬送量を設定する(S041)。目標搬送量とは、搬送ユニット20が目標とする搬送量で紙Sを搬送するため、搬送ユニット20の駆動量を決める値である。この目標搬送量は、コンピュータ側から受信した印刷データの中に含まれている搬送コマンドデータ(目標搬送量に関する情報)に基づいて、決定される。また、この目標搬送量は、コントローラがカウンタの値を設定することによって、設定される。以下の説明では、目標搬送量をXとしているので、コントローラは、カウンタの値をXに設定する。
次に、コントローラは、搬送モータ22を駆動する(S042)。搬送モータ22が所定の駆動量を発生すると、搬送ローラ23が所定の回転量にて回転する。そして、搬送ローラ23が所定の回転量にて回転すると、搬送ローラ23に設けられたスリット521も回転する。
次に、コントローラは、ロータリー式エンコーダのパルス信号のエッジを検出する(S043)。すなわち、コントローラは、パルスENC−A又はENC−Bについて、立ち上がりエッジ又は立ち下りエッジを検出する。例えば、コントローラが1個のエッジを検出すれば、搬送ローラ23が1/1440インチの搬送量にて紙Sを搬送したことを意味する。
コントローラがロータリー式エンコーダのパルス信号のエッジを検出したら、コントローラは、カウンタの値を減算する(S044)。つまり、カウンタの値がXのときに、コントローラがパルス信号のエッジを1つ検出したら、コントローラはカウンタの値をX−1に設定する。
そして、コントローラは、カウンタの値がゼロになるまで、S042〜S044の動作を繰り返す(S045)。つまり、最初にカウンタに設定された値のパルス数が検出されるまで、コントローラは、搬送モータ22を駆動することになる。これにより、搬送ユニット20は、最初にカウンタに設定された値に応じた搬送量で、紙Sを搬送方向に搬送する。
例えば、搬送ユニット20が紙Sを90/1440インチだけ搬送するとき、コントローラは、目標搬送量を設定するため、カウンタの値を90に設定する。そして、コントローラは、ロータリー式エンコーダのパルス信号の立ち上りエッジ又は立ち下りを検出するたびに、カウンタの値を減算する。そして、カウンタの値がゼロになったとき、コントローラは、搬送動作を終了する。90個のパルス信号を検出すれば、搬送ローラ23が90/1440インチで紙Sを搬送したことを意味するからである。したがって、コントローラが目標搬送量の設定としてカウンタの値を90に設定すれば、搬送ユニット20は、90/1440インチで紙Sを搬送することになるのである。
なお、上記の説明では、コントローラは、パルスENC−A又はENC−Bの立ち上がりエッジ又は立ち下りエッジを検出していたが、パルスENC−AとパルスENC−Bの両方のエッジを検出しても良い。パルスENC−AとパルスENC−Bの各々の周期はスケール521のスリット間隔に等しく、かつ、パルスENC−AとパルスENC−Bとは位相が90度ずれているので、コントローラが各パルスの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのいずれかを検出することは、搬送ローラ23が1/5760インチで紙を搬送することを意味する。この場合、コントローラがカウンタの値を90に設定すれば、搬送ユニット20は、90/5760インチで紙Sを搬送することになる。
上記の説明は、1回の搬送動作に関するものである。プリンタが複数回の搬送動作を間欠的に行う場合、コントローラは各搬送動作が終わるたびに目標搬送量を設定し(カウンタの値を設定し)、搬送ユニット20は、設定された目標搬送量に従って紙Sを搬送する。
ところで、ロータリー式エンコーダ52は、直接的には搬送ローラ23の回転量を検出するのであって、厳密にいえば、紙Sの搬送量を検出していない。つまり、搬送ローラ23と紙Sとの間に滑りが生じていれば、搬送ローラ23の回転量と紙Sの搬送量が一致しないため、ロータリー式エンコーダ52は紙Sの搬送量を正確に検出することができず、搬送誤差(検出誤差)が生じる。このように、搬送ローラ23と紙Sとの間に滑りが生じている場合、搬送ユニット20が紙Sを目標搬送量で搬送するためには、コントローラは目標搬送量よりも大きい搬送量で搬送ローラ23を回転させる必要がある。そこで、コントローラは、紙Sを最適な搬送量で搬送するため、目標搬送量を補正し、補正された目標搬送量に応じた値にカウンタを設定することが可能である。
以下に説明する実施形態では、ロータリー式エンコーダは、1/1440インチ単位で搬送ローラ23の回転量を検出可能であるとする。また、コントローラは、1/1440インチを最小の補正量の単位として目標搬送量に対する補正を行うこととする。
===補正量の決定方法===
まず、プリンタの出荷前又はユーザ先において、目標搬送量に対する補正量を予め決定する必要がある。そこで、以下に、補正量の決定方法を説明する。
<補正量の決定手順について>
図13は、補正量の決定手順を説明するためのフロー図である。以下に説明されるプリンタの各種の動作は、プリンタ内のメモリ63に格納されたプログラムによって実現される。そして、このプログラムは、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
プリンタは、まず、搬送量補正用のテストパターンの印刷を指示する指示信号を受ける(S101)。この指示信号は、コンピュータ本体から受信しても良いし、プリンタ本体に設けられたボタンから入力されても良い。コンピュータ本体からテストパターンの印刷を指示する場合、例えば図14に示されるようなユーザインターフェースが、コンピュータ本体に接続された表示装置に表示される。表示装置に表示されたウィンドウW1内には、搬送量補正用のテストパターンの印刷を指示するためのボタンが表示されている。ユーザがこのボタンをクリックすると、コンピュータ本体からプリンタ1側にテストパターンの印刷を指示する信号が送信される。
次に、プリンタは、搬送量補正用のテストパターンを印刷する(S102)。指示信号を受信したプリンタは、メモリ63内にあるテストパターンのうち、搬送量補正用のテストパターンに関する情報を検索する。そして、プリンタは、搬送量補正用のテストパターンに関する情報に従って、紙Sにテストパターンを印刷する。
図15は、紙Sに印刷される搬送量補正用のテストパターンの一例である。紙に印刷されるテストパターンは、複数の補正用パターンを有する。例えば、本実施形態では、紙に印刷されるテストパターンは、5つの補正用パターンを有する。補正用パターンは、2つの帯状のパターンを有する。以下、補正用パターンの上側の帯状のパターンを第1バンドパターンとよび、補正用パターンの下側のパターンを第2バンドパターンとよぶことにする。第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間の距離は、それぞれの補正パターンごとに異なっている。これにより、各補正用パターンは、特定の補正量に対応することになる。例えば、本実施形態では、上の補正用パターンから順に、第1バンドパターンと第2バンドパターンとの距離が小さくなり、対応する補正量も小さくなる。第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間の距離に応じて、第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間に白い縞(白バンディングや明バンディングとも呼ばれる)や黒い縞(黒バンディングや暗バンディングとも呼ばれる)が発生する。ただし、最適な補正量に対応する補正用パターンには、第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間に縞模様があまり発生しない。例えば、本実施形態では、「番号=2」が付された補正用パターンには、縞模様があまり発生していない。搬送量補正用のテストパターンの印刷方法については、後述する。
搬送量補正用のテストパターンの印刷後、ユーザは、テストパターンとして印刷された複数の補正用パターンの中から、最適な補正用パターンの選択を行う(S103)。この最適なパターンの選択は、コンピュータ本体側で行っても良いし、プリンタ本体側で行っても良い。コンピュータ本体側で最適なパターンの選択を行う場合、例えば図16に示されるようなユーザインターフェースが、コンピュータ本体に接続された表示装置に表示される。表示装置に表示されたウィンドウW2内には、印刷された複数の補正用パターンに対応するように、複数のボタンが表示されている。そして、ユーザがこのボタンをクリックすることによって、クリックされたボタンに対応する補正用パターンが、最適なパターンとして選択される。例えば、本実施形態では、ユーザが「番号=2」に対応するボタンをクリックすることになる。
次に、搬送量を補正するための補正量が、プリンタに保存(記憶)される(S104)。コンピュータ本体側で最適なパターンの選択を行った場合、最適パターンに対応する補正量に関する情報(搬送量に関する情報)が、コンピュータ本体側からプリンタ側に送信される。そして、プリンタは、受信した補正量に関する情報をプリンタ内のメモリ63に保存する。
<目標搬送量の補正>
図17は、紙に画像を形成するときの流れを説明するためのフロー図である。以下に説明されるプリンタの各種の動作は、プリンタ内のメモリ63に格納されたプログラムによって実現される。また、以下に説明されるコンピュータ本体の各種の動作は、コンピュータ本体に格納されたプログラムであるプリンタドライバによって実現される。そして、これらのプログラムは、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
まず、ユーザは、プリンタの電源を付け、プリンタを印刷待機状態にする(S211)。
そして、ユーザは、コンピュータ側で動作するアプリケーション上から印刷指示を与える(S201)。ユーザがコンピュータに印刷指示を与える際に、プリンタドライバのユーザインターフェースを介して印刷モード(印刷方式)の設定が行われる。そして、プリンタドライバは、設定された印刷モードに基づいて、目標搬送量を決定することができる(S202)。また、プリンタドライバにより印刷対象となる画像データが、画素データに変換される。この画素データは、設定された印刷モードの解像度に応じた画素に対するデータである。
そして、プリンタドライバは、目標搬送量に関するデータと画素データとを含む印刷データをプリンタ側に送信する(S203)。
印刷データを受信したプリンタは、メモリ内に保存されている補正量に関する情報を読み出す(S212)。次に、プリンタは、読み出された補正量に基づいて、目標搬送量を補正する(S213)。そして、補正された目標搬送量に基づいて、搬送処理の際に設定されるカウンタの値が決定される。例えば、紙Sを1インチ搬送する場合、目標搬送量を補正しなければ前述のカウンタの値は1440になるが、メモリに記憶されている補正量が「+2C(=+2/1440インチ)」に相当する場合、カウンタの値は1442(=1440+2)になる。そして、プリンタは、印刷データに応じて、補正された目標搬送量にて印刷処理を行う(S214)。例えば、カウンタの値が1442にて搬送処理が行われても、搬送誤差と補正量とが相殺されて、実際の紙Sの搬送量は1インチになる。補正された目標搬送量によって紙Sを搬送しながら印刷処理が行われるので、紙Sに形成されるドットの搬送方向の間隔が適正になるため、高精度な画像を紙Sに印刷することができる。
===参考説明===
<参考例のテストパターンについて>
図18は、参考例におけるテストパターンの印刷方法の説明図である。以下に説明される参考例のテストパターンの印刷方法は、前述のS102のときに行われる。なお、図中の左側に描かれた長方形41A〜41Fは、紙Sに対するヘッド41の位置を示すものであって、紙Sに印刷されるものではない。また、ヘッド41を表す長方形内の数字は、何回目のパス(パスとは、S003のドット形成処理を意味する)におけるヘッドの相対位置かを示している。例えば、図中のヘッド41Cは、3回目のパスにおけるヘッド41の相対位置を示している。この図ではヘッド41が紙Sに対して移動しているように見えるが、この図はヘッド41と紙Sとの相対位置を示したものであって、実際には紙Sが搬送方向に搬送されることによって両者の相対位置が移動している。
参考例のテストパターンの各補正用パターンは、2つの帯状のパターン(バンドパターン)から構成されている。2つのバンドパターンのうちの紙先端側(図中上側)のバンドパターン(第1バンドパターン)は、搬送方向に上流側(ノズル♯720側)のノズルによって形成されている。一方、2つのバンドパターンのうちの紙後端側(図中下側)のバンドパターン(第2バンドパターン)は、搬送方向に下流側(ノズル♯1側)のノズルによって形成されている。そして、この第1バンドパターンと第2バンドパターンとは互いに搬送方向に隣接して形成され、この2つのバンドパターンによって境界部が構成される。このように、第1バンドパターンが形成されてから第2バンドパターンが形成されるまでの間に、紙Sは、ほぼヘッド41の幅の分だけ搬送される。また、2つのバンドパターンは、2つのバンドパターンによって構成される境界部の位置が明確になるように、走査方向にずらして形成されている。なお、図中のバンドパターンを表す長方形内の数字は、何回目のパスによって形成されたかを示している。
それぞれの補正用パターンは段階的に搬送量を変化させて形成されているので、それぞれの補正用パターンのバンドパターン間の境界部の状態は異なっている。そのため、それぞれの補正用パターン(又は境界部)は、異なる補正量に対応することになる。参考例のテストパターンの印刷方法では、以下に説明される通り、2C(=2/1440インチ)ずつ段階的に搬送量を変化させて、複数の補正用パターン(つまり境界部)を形成している。
まず、ヘッド41が紙Sに対してヘッド41Aの位置になるように、紙Sを搬送する。そして、1回目の印刷動作(パス1)が行われ、「番号=1」が付される補正用パターンP1の第1バンドパターンP1aが印刷される。
次に、紙Sが目標搬送量F+4Cにて搬送され、ヘッド41が紙Sに対して図中のヘッド41Bの位置になる。ここで、目標搬送量Fは、ほぼヘッド41の幅に相当する搬送量である。例えば、ヘッド31に720個のノズルが720dpiの間隔で配列されている場合、目標搬送量Fは、1インチになる。そして、2回目のドット形成処理(パス2)が行われ、「番号=1」が付される補正用パターンP2の第2バンドパターンP1bが印刷される。これにより、「番号=1」が付される補正用パターンP1が完成する。2回目のパス(パス2:2回目のドット形成処理)が行われるとき、第2バンドパターンP1bが印刷されるとともに、「番号=2」が付される補正用パターンP2の第1バンドパターンP2aが印刷される。つまり、2回目のパスでは、2つのバンドパターン(P1b及びP2a)が印刷される。この2つのバンドパターンは、余白を空けて形成されている。
次に、紙Sが目標搬送量F+2Cにて搬送され、ヘッド41が紙Sに対して図中のヘッド41Cの位置になる。そして、3回目のドット形成処理(パス3)が行われ、「番号=2」が付される補正用パターンP2の第2バンドパターンP2bが印刷される。これにより、「番号=2」が付される補正用パターンP2が完成する。3回目のパス(パス3:3回目のドット形成処理)が行われるとき、第2バンドパターンP2bが印刷されるとともに、「番号=3」が付される補正用パターンP3の第1バンドパターンP3aが印刷される。つまり、3回目のパスでは、2つのバンドパターン(P2b及びP3a)が印刷される。この2つのバンドパターンは、余白を空けて形成されている。
そして、以上説明した動作とほぼ同様の動作によって、他の補正用パターンP3〜P5が紙Sに印刷される。但し、紙Sを搬送する際の目標搬送量は、紙Sがヘッドの幅の分だけ搬送される毎に、2C(=2/1440インチ)ずつ段階的に変化する。これにより、第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間隔が、各補正用パターンによって異なるように印刷される。
参考例のテストパターンの印刷方法では、第1バンドパターンの形成から第2バンドパターンの形成までに行われる搬送の搬送量が補正用パターン毎に異なる。つまり、各補正用パターンを形成する際の搬送量が、一定ではない。そのため、搬送ユニットの搬送量を正確なものにすることは困難である。すなわち、搬送誤差が搬送量に応じて異なるような場合には、補正用パターンP1の2つのバンドパターンの間隔と、補正用パターンP2の2つのバンドパターンの間隔との差が、確実に2Cだけ差があるという確証がない。
===本実施形態のテストパターンの印刷方法1===
次に、本実施形態のテストパターンの印刷方法について、図19を用いて説明する。以下に説明される各動作は、コントローラ60が、メモリ63内に格納されたプログラムに従って、各ユニットを制御することにより実行される。このプログラムは、各処理を実行するためのコードを有する。
図19は、本実施形態のテストパターンの印刷方法の説明図である。以下に説明される本実施形態のテストパターンの印刷方法は、前述のS102のときに行われる。なお、図中の左側に描かれた長方形41A〜41Hは、紙Sに対するヘッド41の位置を示すものであって、紙Sに印刷されるものではない。また、ヘッド41を表す長方形内の数字は、何回目のパス(パスとは、S003のドット形成処理を意味する)におけるヘッドの相対位置かを示している。ただし、本実施形態では、紙Sの後端が搬送ローラを通過した後の最初のドット形成処理のことを「1回目のパス」と呼ぶことにする。例えば、図中のヘッド41Cは、紙Sの後端が搬送ローラを通過した後の3回目のパスにおけるヘッド41の相対位置を示している。この図ではヘッド41が紙Sに対して移動しているように見えるが、この図はヘッド41と紙Sとの相対位置を示したものであって、実際には紙Sが搬送方向に搬送されることによって両者の相対位置が移動している。
本実施形態では、紙に印刷されるテストパターンは、5つの補正用パターンを有する。各補正用パターンは、各補正用パターンは、2つの帯状のパターン(バンドパターン)である第1バンドパターンと第2バンドパターンとから構成されている。ここでは、紙Sの先端側(図中の上側)のバンドパターンを第1バンドパターンと呼び、紙Sの後端側(図中の下側)のバンドパターンを第2バンドパターンと呼ぶ。この第1バンドパターンと第2バンドパターンとは互いに搬送方向に隣接して形成され、この2つのバンドパターンによって境界部が構成される。なお、図中のバンドパターンを表す長方形内の数字は、何回目のパスによって形成されたかを示している。後の説明から明らかになるが、本実施形態では、第1バンドパターンは、搬送ユニットによる搬送の前に形成される搬送前パターンであり、第2バンドパターンは、搬送ユニットによる搬送後に形成される搬送後パターンである。また、後述するとおり、本実施形態では、どの補正用パターンの第1バンドパターンも同じノズル群を用いて形成されているので、第1バンドパターンが基準用パターンとなる。一方、本実施形態では、第2バンドパターンの形成に使用されるノズル群は各補正用パターンによって異なるので、第2バンドパターンは比較用パターンとなる。
(1回目のパス)まず、ヘッド41が紙Sに対してヘッド41Aの位置になるように、紙Sを搬送する。そして、コントローラ60は、キャリッジ31を走査方向に移動させ、ヘッド41からインクを吐出させて、1回目のドット形成処理(パス1)を行う。このとき、ヘッド41は、搬送方向に上流側(ノズル♯720側)のノズルを用いて、「番号=1」が付される補正用パターンP1の第1バンドパターンを形成する。但し、第1バンドパターンの形成に使用されるノズルは、4の倍数の番号のノズル群である。これにより、第1バンドパターンを構成するドットの搬送方向のドットの間隔が1/180インチになる。
(2回目のパス)次に、コントローラ60は、1インチの目標搬送量にて、搬送ユニット20に紙を搬送させる。搬送後、ヘッド41は、紙Sに対して、図中のヘッド41Bの位置になる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31を走査方向に移動させ、ヘッド41からインクを吐出させて、2回目のドット形成処理(パス2)を行う。このとき、ヘッド41は、ノズル♯6とノズル♯6より上流側のノズル♯4N+2(例えば、ノズル♯10等。なお、Nは整数)とからなるノズル群を用いて、「番号=1」が付される補正用パターンP1の第2バンドパターンP1bを形成する。これにより、第2バンドパターンを構成するドットの搬送方向のドットの間隔が1/180インチになり、また、「番号=1」が付される補正用パターンP1が完成する。2回目のパス(パス2:2回目のドット形成処理)が行われるとき、第2バンドパターンP1bが印刷されるとともに、搬送方向に上流側(ノズル♯720側)のノズル群を用いて、「番号=2」が付される補正用パターンP2の第1バンドパターンP2aが印刷される。但し、第1バンドパターンの形成に使用されるノズルは、前述の第1バンドパターンP1aの形成に使用されるノズルと同様に、4の倍数の番号のノズル群である。これにより、第1バンドパターンP2aを構成するドットの搬送方向のドットの間隔が1/180インチになる。以上の説明の通り、2回目のパスでは、2つのバンドパターン(P1b及びP2a)が印刷される。この2つのバンドパターンは、搬送方向に余白をあけて形成されている。
(3回目のパス)次に、コントローラ60は、1インチの目標搬送量にて、搬送ユニット20に紙を搬送させる。この搬送量は、前述の補正用パターンP1の第1バンドパターンP1aの形成から第2バンドパターンP1bの形成までに行われる搬送量と等しい。したがって、同様の搬送誤差を含んだ状態にて、紙Sが搬送されている。搬送後、ヘッド41は、紙Sに対して、図中のヘッド41Cの位置になる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31を走査方向に移動させ、ヘッド41からインクを吐出させて、3回目のドット形成処理(パス3)を行う。このとき、ヘッド41は、ノズル♯5とノズル♯5より上流側のノズル♯4N+1(例えば、ノズル♯9等)とからなるノズル群を用いて、「番号=2」が付される補正用パターンP2の第2バンドパターンP2bを形成する。これにより、第2バンドパターンを構成するドットの搬送方向のドットの間隔が1/180インチになり、また、「番号=2」が付される補正用パターンP2が完成する。3回目のパス(パス3:3回目のドット形成処理)が行われるとき、第2バンドパターンP2bが印刷されるとともに、搬送方向に上流側(ノズル♯720側)のノズル群を用いて、「番号=3」が付される補正用パターンP3の第1バンドパターンP3aが印刷される。但し、第1バンドパターンの形成に使用されるノズルは、前述の第1バンドパターンP1a及び第1バンドパターンP2aの形成に使用されるノズルと同様に、4の倍数の番号のノズル群である。これにより、第1バンドパターンP3aを構成するドットの搬送方向のドットの間隔が1/180インチになる。以上の説明の通り、3回目のパスでは、2つのバンドパターン(P2b及びP3a)が印刷される。この2つのバンドパターンは、搬送方向に余白をあけて形成されている。
(4回目のパス)次に、コントローラ60は、1インチの目標搬送量にて、搬送ユニット20に紙を搬送させる。この搬送量は、前述の補正用パターンP1の第1バンドパターンP1aの形成から第2バンドパターンP1bの形成までに行われる搬送量と等しい。したがって、同様の搬送誤差を含んだ状態にて、紙Sが搬送されている。搬送後、ヘッド41は、紙Sに対して、図中のヘッド41Dの位置になる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31を走査方向に移動させ、ヘッド41からインクを吐出させて、4回目のドット形成処理(パス4)を行う。このとき、ヘッド41は、ノズル♯4とノズル♯4より上流側のノズル♯4N(例えば、ノズル♯8等)とからなるノズル群を用いて、「番号=3」が付される補正用パターンP3の第2バンドパターンP3bを形成する。これにより、第2バンドパターンを構成するドットの搬送方向のドットの間隔が1/180インチになり、また、「番号=3」が付される補正用パターンP3が完成する。4回目のパス(パス4:4回目のドット形成処理)が行われるとき、第2バンドパターンP3bが印刷されるとともに、搬送方向に上流側(ノズル♯720側)のノズル群を用いて、「番号=4」が付される補正用パターンP4の第1バンドパターンP4aが印刷される。但し、第1バンドパターンの形成に使用されるノズルは、前述の第1バンドパターンP1a〜P3aの形成に使用されるノズルと同様に、4の倍数の番号のノズル群である。これにより、第1バンドパターンP3aを構成するドットの搬送方向のドットの間隔が1/180インチになる。以上の説明の通り、4回目のパスでは、2つのバンドパターン(P3b及びP4a)が印刷される。この2つのバンドパターンは、搬送方向に余白をあけて形成されている。
(5回目のパス)次に、コントローラ60は、1インチの目標搬送量にて、搬送ユニット20に紙を搬送させる。この搬送量は、前述の補正用パターンP1の第1バンドパターンP1aの形成から第2バンドパターンP1bの形成までに行われる搬送量と等しい。したがって、同様の搬送誤差を含んだ状態にて、紙Sが搬送されている。搬送後、ヘッド41は、紙Sに対して、図中のヘッド41Eの位置になる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31を走査方向に移動させ、ヘッド41からインクを吐出させて、5回目のドット形成処理(パス5)を行う。このとき、ヘッド41は、ノズル♯3とノズル♯3より上流側のノズル♯4N−1(例えば、ノズル♯7等)とからなるノズル群を用いて、「番号=4」が付される補正用パターンP4の第2バンドパターンP4bを形成する。これにより、第2バンドパターンを構成するドットの搬送方向のドットの間隔が1/180インチになり、また、「番号=4」が付される補正用パターンP4が完成する。5回目のパス(パス5:4回目のドット形成処理)が行われるとき、第2バンドパターンP4bが印刷されるとともに、搬送方向に上流側(ノズル♯720側)のノズル群を用いて、「番号=5」が付される補正用パターンP5の第1バンドパターンP5aが印刷される。但し、第1バンドパターンの形成に使用されるノズルは、前述の第1バンドパターンP1a〜P4aの形成に使用されるノズルと同様に、4の倍数の番号のノズル群である。これにより、第1バンドパターンP5aを構成するドットの搬送方向のドットの間隔が1/180インチになる。以上の説明の通り、5回目のパスでは、2つのバンドパターン(P4b及びP5a)が印刷される。この2つのバンドパターンは、搬送方向に余白をあけて形成されている。
(6回目のパス)次に、コントローラ60は、1インチの目標搬送量にて、搬送ユニット20に紙を搬送させる。この搬送量は、前述の補正用パターンP1の第1バンドパターンP1aの形成から第2バンドパターンP1bの形成までに行われる搬送量と等しい。したがって、同様の搬送誤差を含んだ状態にて、紙Sが搬送されている。搬送後、ヘッド41は、紙Sに対して、図中のヘッド41Fの位置になる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31を走査方向に移動させ、ヘッド41からインクを吐出させて、6回目のドット形成処理(パス6)を行う。このとき、ヘッド41は、ノズル♯2とノズル♯2より上流側のノズル♯4N−2(例えば、ノズル♯6等)とからなるノズル群を用いて、「番号=5」が付される補正用パターンP5の第2バンドパターンP5bを形成する。これにより、第2バンドパターンを構成するドットの搬送方向のドットの間隔が1/180インチになり、また、「番号=5」が付される補正用パターンP5が完成する。
このように形成されたテストパターンは、以下に説明するとおり、複数の補正用パターンが補正量の順に配置されたものとなる。
<各補正用パターンに対応する補正量について>
図20は、搬送誤差がない場合の各補正用パターンの第1バンドパターンと第2バンドパターンとの境界のドット間隔の説明図である。図中の左側は各パスにおけるヘッドの相対位置を示すものである。図中の右側の黒い丸は、各補正用パターンを構成するドットを示すものである。図中の右側において、補正用パターン毎に搬送方向に沿った1列のドットしか示されていないが、実際には、このようなドット列が走査方向に多数並び、図15や図19に示される形の補正用パターンが形成されている(後述)。なお、図中の右側の黒い丸の中の数字は、そのドットを形成するノズルの番号を示すものである。
搬送誤差がない場合、補正用パターンP3の第1バンドパターンを構成するドットの最上流側のドット(パス3におけるノズル♯720が形成するドット)と第2バンドパターンを構成するドットの最下流側のドット(パス4におけるノズル♯4が形成するドット)との間隔D3が、第1バンドパターン内の搬送方向のドット間隔(=1/180インチ)や第2バンドパターン内の搬送方向のドット間隔(=1/180インチ)と等しくなる。そのため、補正用パターンP3の第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間の境界部には、縞模様が発生しない。
「番号=2」が付された補正用パターンP2の第2バンドパターンを形成するノズル(ノズル♯5、9、13…)は、「番号=3」が付された補正用パターンP3の第2バンドパターンを形成するノズル群(ノズル♯4、8、12…)よりも、ノズル1つ分だけ上流側に位置している。一方、ノズルピッチは、1/720インチである。そのため、「番号=2」が付された補正用パターンP2の第2バンドパターンは、第1バンドパターンに対する相対位置について、「番号=3」が付された補正用パターンP3の第2バンドパターンよりも1/720インチだけ上流側に形成される。その結果、補正用パターンP2の間隔D2は、補正用パターンP3の間隔D3よりも、1/720インチだけ広がっている。つまり、補正用パターン2の第1バンドパターンを構成するドットの最上流側のドット(パス2におけるノズル♯720が形成するドット)と第2バンドパターンを構成するドットの最下流側のドット(パス3におけるノズル♯5が形成するドット)との間隔D2は、間隔D3(=1/180インチ)よりも1/720インチだけ広がっている。そのため、搬送誤差がない場合、補正用パターンP2の第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間の境界部には、白い縞模様が発生する。同様に、補正用パターンP1の間隔D1は、間隔D3(=1/180インチ)よりも2/720インチだけ広がっている。そのため、補正用パターンP1の境界部には、太い白い縞模様が発生する。
「番号=4」が付された補正用パターンP4の第2バンドパターンを形成するノズル群(ノズル♯3、7、11…)は、「番号=3」が付された補正用パターンP3の第2バンドパターンを形成するノズル群(ノズル♯4、8、12…)よりも、ノズル1つ分だけ下流側に位置している。一方、ノズルピッチは、1/720インチである。そのため、「番号=4」が付された補正用パターンP4の第2バンドパターンは、第1バンドパターンに対する相対位置について、「番号=3」が付された補正用パターンP3の第2バンドパターンよりも1/720インチだけ下流側に形成される。その結果、補正用パターンP4の間隔D4は、補正用パターンP3の間隔D3よりも、1/720インチだけ広がっている。つまり、補正用パターン4の第1バンドパターンを構成するドットの最上流側のドット(パス4におけるノズル♯720が形成するドット)と第2バンドパターンを構成するドットの最下流側のドット(パス5におけるノズル♯3が形成するドット)との間隔D4は、間隔D3(=1/180インチ)よりも1/720インチだけ狭まっている。そのため、補正用パターンP4の第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間の境界部には、黒い縞模様が発生する。同様に、補正用パターンP5の間隔D5は、間隔D3よりも2/720インチだけ狭まっている。そのため、搬送誤差がない場合、補正用パターンP5の境界部には、太い黒い縞模様が発生する。
このように、各補正用パターンの第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間隔は、1/720インチずつ変化している。そして、目標搬送量が1インチの搬送の際に搬送誤差がなければ、「番号=3」が付された補正用パターンP3に縞模様が発生しないので、この補正用パターンが最適なパターンとして選択される(S103参照)。
図21は、1インチの搬送の際に「−1/720インチの搬送誤差」が生じていた場合の各補正用パターンの第1バンドパターンと第2バンドパターンとの境界のドット間隔の説明図である。ここで、「−1/720インチの搬送誤差」とは、目標搬送量に基づいて紙を搬送したときに、実際の搬送量が目標搬送量よりも1/720インチだけ少ないことを意味する。1インチの搬送の際に「−1/720インチの搬送誤差」が生じているため、第2バンドパターンを形成するときのノズルの相対位置が、図20のノズルの位置と比較して、1/720インチ分だけずれている。
1インチの搬送の際に「−1/720インチの搬送誤差」が生じていた場合、補正用パターンP2の第1バンドパターンを構成するドットの最上流側のドット(パス2におけるノズル♯720が形成するドット)と第2バンドパターンを構成するドットの最下流側のドット(パス3におけるノズル♯5が形成するドット)との間隔D2が、第1バンドパターン内の搬送方向のドット間隔(=1/180インチ)や第2バンドパターン内の搬送方向のドット間隔(=1/180インチ)と等しくなる。そのため、補正用パターンP2の第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間の境界部には、縞模様が発生しない。つまり、1インチの搬送の際に「−1/720インチの搬送誤差」が生じていた場合、「番号=2」が付された補正用パターンP2が、最適なパターンとして選択される(S103参照)。
逆に言えば、補正用パターンP2が最適なパターンであれば、1インチの搬送の際に生じている搬送誤差が、「−1/720インチ」であることが検出される。そのため、補正用パターンP2が最適なパターンとして選択された場合、1インチの目標搬送量に補正量2C(=2/1440インチ)を加算し、補正された目標搬送量に基づいて紙Sを搬送すれば(補正された目標搬送量に基づいてS041のカウンタを設定すれば)、実際の紙の搬送量が目標搬送量になる。つまり、補正用パターンP2は、補正量2Cと対応している。
同様に、補正用パターンP1は補正量4Cと対応し、補正用パターンP3は補正量0と対応し、補正用パターンP4は補正量−2Cと対応し、補正用パターンP5は補正量−4Cと対応している。
参考例のテストパターンによれば、補正用パターン毎に搬送ユニットの搬送量を段階的に変えることによって、補正用パターンの第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間隔を変えていた。しかし、参考例のテストパターンによれば、搬送ユニットの搬送量が適正に段階的に変わっていなければ、各補正用パターンの第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間隔が適正に段階的に変わらないことになる。但し、参考例では、補正ユニットの搬送量が毎回変わるため、全ての搬送について適正な搬送量を維持することは、困難である。
一方、本実施形態によれば、比較用パターンである第2バンドパターンは、それぞれ異なるノズル群を用いて形成されている。そして、ノズルは、1/720インチの間隔にて形成されていることが保証されている。そのため、本実施形態によれば、異なるノズル群を用いて第2バンドパターンを印刷することによって、第2バンドパターンの搬送方向の相対的な位置を適正に変えることができる。
また、本実施形態によれば、どの基準用パターンも、同じノズル群(搬送方向上流側の♯180等のノズル群)を用いて、形成されている。そのため、異なるノズル群を用いて第2バンドパターンを印刷することによって、第1バンドパターンに対する第2バンドパターンの位置が、各補正用パターンによって異なることになる。これにより、補正用パターン毎に、第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間隔がそれぞれ異なることになる。
また、本実施形態によれば、複数のノズルは1/720インチの間隔で並んでおり、各補正用パターンは、ノズルピッチと同じ1/720インチずつ段階的に異なっている。これにより、対応する補正量が1/720インチずつ異なる補正用パターンを複数形成することができる。
また、本実施形態によれば、複数の補正用パターンは、搬送方向に沿って形成されている。そして、ある補正用パターンの第1バンドパターンの形成と第2バンドパターンの形成との間に行われる搬送ユニットの搬送量は、他の補正用パターンの搬送量と等しい。つまり、テストパターンを印刷する際に、目標搬送量に補正量を加味する必要が無く、搬送量を一定にすることができる。これにより、搬送ユニットの搬送量が安定し、いずれの補正用パターンを印刷するときも、同じ搬送状態で搬送されるので、第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間隔が、1/720インチずつ適正に段階的に変化する。
===本実施形態のテストパターンの印刷方法2===
前述の印刷方法では、複数の補正用パターンが、搬送方向に沿って形成されていた。しかし、以下に説明するとおり、搬送方向に沿って複数の補正用パターンを形成することが困難な場合がある。
<下端でのテストパターン印刷の困難性について>
図22Aは、通常の搬送処理時の説明図である。図22Bは、紙の後端が搬送ローラを通過した後の搬送処理時の説明図である。同図において、既に説明された構成要素については同じ符号を付しているので、説明を省略する。
印刷領域の上流側に位置する搬送ローラ23(上流側ローラ)及び印刷領域の下流側に位置する排紙ローラ25(下流側ローラ)は、同期して回転している。そして、通常の搬送処理時には、紙Sは、搬送ローラ23及び排紙ローラ25の2つのローラによって搬送される。紙Sの搬送では、この通常の搬送処理がほとんどである。つまり、この通常の搬送処理を伴う印刷領域は、広く確保される。そのため、通常の搬送処理の際の目標搬送量の補正量は、前述のテストパターンを印刷すれば、決定することができる。
しかし、紙Sの後端が搬送ローラ23を通過する前後の搬送状態は、異なっている。例えば、紙Sの後端が搬送ローラ23を通過した後は、紙Sは排紙ローラ25のみによって搬送されるので、2つのローラによって紙が搬送されている状態(通常の搬送の状態)とは異なる状態となる。また、搬送ローラ23と排紙ローラ25の形状(例えば、半径や断面形状)は異なる。また、排紙ローラ25に対向して設けられるローラは、印刷面との接触を少なくするため、搬送ローラ23側の従動ローラとは異なる形状になっている。また、通常の搬送の際に紙に皺ができないようにするため、排紙ローラ25側の搬送速度は搬送ローラ23側の搬送速度よりも若干速くなるように設計されている。これらの要因によって、紙Sの後端が搬送ローラ23を通過した後の搬送状態は、通常の搬送状態と異なることになる。
そのため、同じ目標搬送量にて紙Sを搬送しても、紙Sの後端が搬送ローラ23を通過した後の紙の搬送量は、通常の搬送の際の紙の搬送量と異なる。つまり、紙Sの後端が搬送ローラ23を通過した後、通常の搬送処理のための補正量に基づいて目標搬送量を補正したとしても、適した搬送が行われない(搬送誤差がある状態で紙Sが搬送される)。したがって、紙Sの後端が搬送ローラ23を通過した後は、紙Sの後端の搬送処理のための補正量に基づいて、目標搬送量を補正する必要がある。
そこで、紙Sの後端の搬送処理の際の補正量を決定するためには、テストパターンを印刷する必要がある。但し、紙Sの後端の搬送処理の補正量を決定するためのテストパターンの印刷は、紙Sの後端の搬送処理のときと同じ状態でテストパターンを印刷する必要がある。つまり、このテストパターンの印刷は、紙Sの後端が搬送ローラ23を通過した後に、行わなければならない。
しかし、紙Sの後端が搬送ローラ23を通過したとき、プリンタが紙Sに印刷できる領域は、狭い。
図23は、紙の後端が搬送ローラ23を通過したときの紙とヘッドとの位置関係の説明図である。同図において、既に説明された構成要素には同じ符号を付しているの、説明を省略する。
図中の斜線部は、紙の後端が搬送ローラ23を通過した後にヘッド41が印刷可能な領域を示している。この斜線部の印刷領域は、搬送方向に長さLしか確保されていない。この長さLは、プリンタの構成要素(特にヘッド41や搬送ローラ23)の設計位置に応じて決まる。通常、プリンタ1を小型にするため、ヘッド41と搬送ローラ23の位置は近接しているため、長さLは、ヘッドの幅(最上流ノズルである♯720から最下流ノズルである♯1までの長さ)の2倍以下である。本実施形態では、ヘッド41の幅Fは1インチ(=2.54cm)であり、長さLは、約3.5cmである。
このように、紙の後端が搬送ローラ23を通過した後、ヘッド41が印刷できる領域は、搬送方向に狭い領域である。前述のテストパターンの印刷には搬送方向に広い印刷領域が必要なので、紙の後端が搬送ローラ23を通過した後に前述のテストパターンの印刷を行うことはできない。仮に、搬送方向の長さLの印刷領域に前述のテストパターンを印刷しようとしても、補正用パターンは1つしか印刷することができない。
そこで、本実施形態では、以下のようにテストパターンを印刷し、複数の補正用パターンが走査方向に並ぶようにしている。
<テストパターンの印刷方法について>
まず、本実施形態のテストパターンの印刷方法について、図24及び図20を用いて説明する。以下に説明される各動作は、コントローラ60が、メモリ63内に格納されたプログラムに従って、各ユニットを制御することにより実行される。このプログラムは、各処理を実行するためのコードを有する。
図24は、本実施形態のテストパターンの印刷方法の説明図である。以下に説明される本実施形態のテストパターンの印刷方法は、前述のS102のときに行われる。なお、図中の左側に描かれた長方形41A〜41Hは、紙Sに対するヘッド41の位置を示すものであって、紙Sに印刷されるものではない。また、ヘッド41を表す長方形内の数字は、何回目のパス(パスとは、S003のドット形成処理を意味する)におけるヘッドの相対位置かを示している。ただし、本実施形態では、紙Sの後端が搬送ローラを通過した後の最初のドット形成処理のことを「1回目のパス」と呼ぶことにする。例えば、図中のヘッド41Cは、紙Sの後端が搬送ローラを通過した後の3回目のパスにおけるヘッド41の相対位置を示している。この図ではヘッド41が紙Sに対して移動しているように見えるが、この図はヘッド41と紙Sとの相対位置を示したものであって、実際には紙Sが搬送方向に搬送されることによって両者の相対位置が移動している。
本実施形態では、紙に印刷されるテストパターンは、5つの補正用パターンを有する。各補正用パターンは、各補正用パターンは、2つの帯状のパターン(バンドパターン)である第1バンドパターンと第2バンドパターンとから構成されている。ここでは、紙Sの先端側(図中の上側)のバンドパターンを第1バンドパターンと呼び、紙Sの後端側(図中の下側)のバンドパターンを第2バンドパターンと呼ぶ。この第1バンドパターンと第2バンドパターンとは互いに搬送方向に隣接して形成され、この2つのバンドパターンによって境界部が構成される。また、2つのバンドパターンは、2つのバンドパターンによって構成される境界部の位置が明確になるように、走査方向にずらして形成されている。なお、図中のバンドパターンを表す長方形内の数字は、何回目のパスによって形成されたかを示している。後の説明から明らかになるが、本実施形態では、第1バンドパターンは、搬送ユニットによる搬送の前に形成される搬送前パターンであり、第2バンドパターンは、搬送ユニットによる搬送後に形成される搬送後パターンである。また、後述するとおり、本実施形態では、どの補正用パターンの第1バンドパターンも同じノズル群を用いて形成されているので、第1バンドパターンが基準用パターンとなる。一方、本実施形態では、第2バンドパターンの形成に使用されるノズル群は各補正用パターンによって異なるので、第2バンドパターンは比較用パターンとなる。
(1回目のパス)紙Sの後端が搬送ローラを通過したとき、ヘッド41は、紙Sに対して、図中のヘッド41Aの位置になる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31を走査方向に移動させ、ヘッド41からインクを吐出させて、1回目のドット形成処理(パス1)を行う。このとき、ヘッド41は、搬送方向に上流側(ノズル♯180側)のノズル群を用いて、5つの第1バンドパターンを形成する。但し、第1バンドパターンの形成に使用されるノズルは、4の倍数の番号のノズル群である。これにより、第1バンドパターンを構成するドットの搬送方向のドットの間隔が1/180インチになる。また、5つの第1バンドパターンの形成に使用されるノズルが同じである。これにより、これらの第1バンドパターンの搬送方向の位置は、同じになる(図20参照)。
(2回目のパス)次に、コントローラ60は、1インチの目標搬送量にて、搬送ユニット20に紙を搬送させる。搬送後、ヘッド41は、紙Sに対して、図中のヘッド41Bの位置になる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31を走査方向に移動させ、ヘッド41からインクを吐出させて、2回目のドット形成処理(パス2)を行う。
ここで、本実施形態では、コントローラ60は、インクを吐出するノズルを異ならせて、複数の補正用パターンの第2バンドパターンを、搬送方向に異なる場所に、ヘッド41に形成させている。以下、この点について詳しく説明する。なお、以下の説明では、ヘッド41は、図中の左から右に移動するものとする。
まず、ヘッド41は、ノズル♯6とノズル♯6より上流側のノズル♯4N+2(例えば、ノズル♯10等。なお、Nは整数)とからなるノズル群を用いて、「番号=1」が付される補正用パターンP1の第2バンドパターンを形成する。これにより、「番号=1」が付される補正用パターンP1が完成する(図20参照)。
続いて、2回目のドット形成処理(パス2)が行われている間に、ヘッド41は、ノズル♯5とノズル♯5より上流側のノズル♯4N+1(例えば、ノズル♯9等)とからなるノズル群を用いて、「番号=2」が付される補正用パターンP2の第2バンドパターンを形成する。これにより、「番号=2」が付される補正用パターンP2が完成する(図20参照)。
更に、2回目のドット形成処理(パス2)が行われている間に、ヘッド41は、ノズル♯4とノズル♯4より上流側のノズル♯4N(例えば、ノズル♯8等)とからなるノズル群を用いて、「番号=3」が付される補正用パターンP3の第2バンドパターンを形成する。これにより、「番号=3」が付される補正用パターンP3が完成する(図20参照)。
また、2回目のドット形成処理(パス2)が行われている間に、ヘッド41は、ノズル♯3とノズル♯3より上流側のノズル♯4N−1(例えば、ノズル♯7等)とからなるノズル群を用いて、「番号=4」が付される補正用パターンP4の第2バンドパターンを形成する。これにより、「番号=4」が付される補正用パターンP4が完成する(図20参照)。
最後に、2回目のドット形成処理(パス2)が行われている間に、ヘッド41は、ノズル♯2とノズル♯2より上流側のノズル♯4N−2(例えば、ノズル6等)とからなるノズル群を用いて、「番号=5」が付される補正用パターンP5の第2バンドパターンを形成する。これにより、「番号=5」が付される補正用パターンP5が完成する(図20参照)。
このように形成されたテストパターンは、以下に説明するとおり、複数の補正用パターンが補正量の順に配置されたものとなる。
「番号=1」が付された補正用パターンP1の第2バンドパターンを形成するノズル群(ノズル♯6、10、14…)は、「番号=2」が付された補正用パターンP2の第2バンドパターンを形成するノズル群(ノズル♯5、9、13…)よりも、ノズル1つ分だけ上流側に位置している。一方、ノズルピッチは、1/720インチである。そのため、「番号=1」が付された補正用パターンP1の第2バンドパターンは、「番号=2」が付された補正用パターンP2の第2バンドパターンよりも、1/720インチだけ上流側に形成される。その結果、補正用パターンP1の間隔D1は、補正用パターンP2の間隔D2よりも、1/720インチだけ広がっている。
このように、各補正用パターンの第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間隔は、1/720インチずつ変化している。そして、パス1からパス2までの間の4回の間欠的な搬送の際に搬送誤差がなければ、「番号=3」が付された補正用パターンP3の間隔D3が1/180インチになるため、この補正用パターンP3には縞模様が発生しないので、この補正用パターンP3が最適なパターンとして選択される(S103参照)。
仮に、4回の間欠的な搬送の際に「−1/720インチの搬送誤差」が生じていた場合、「番号=2」が付された補正用パターンP2の間隔D2が1/180インチになるため、この補正用パターンP2には縞模様が発生しないので、この補正用パターンP2が最適なパターンとして選択される(S103参照)。
逆に言えば、補正用パターンP2が最適なパターンであれば、1インチの搬送の際に生じている搬送誤差が、「−1/720インチ」であることが検出される。そのため、補正用パターンP2が最適なパターンとして選択された場合、1インチの目標搬送量に補正量2C(=2/1440インチ)を加算し、補正された目標搬送量に基づいて紙Sを搬送すれば(補正された目標搬送量に基づいてS041のカウンタを設定すれば)、実際の紙の搬送量が目標搬送量になる。つまり、補正用パターンP2は、補正量2Cと対応している。
同様に、補正用パターンP1は補正量4Cと対応し、補正用パターンP3は補正量0と対応し、補正用パターンP4は補正量−2Cと対応し、補正用パターンP5は補正量−4Cと対応している。
本実施形態によれば、前述の実施形態と同様の理由により、第1パターンと第2パターンとの間隔を、補正用パターン毎に適正なものにすることができる。
また、本実施形態によれば、第1バンドパターンと第2バンドパターンの間隔がそれぞれ異なる補正用パターンが、走査方向に沿って形成される。前述の実施形態のテストパターンでは、補正用パターンが搬送方向に沿って配置されているため、広い印刷領域が必要となっていた。一方、本実施形態のテストパターンでは、補正用パターンが走査方向に沿って配置されるので、搬送方向の長さがLの狭い印刷領域に多くの補正用パターンを形成することができる。
また、本実施形態によれば、5つの補正用パターンが形成される印刷領域の搬送方向の長さはL(約3.5cm)であり、この長さLはヘッドの幅(最上流ノズルであるノズル♯180から最下流ノズルであるノズル♯1までの長さであり、1インチ(=2.54cm)である)の2倍よりも短い。前述のテストパターンでは補正用パターンが搬送方向に沿って配置されているため、搬送方向の長さがLの印刷領域に、1つの補正用パターンしか形成できなかった。しかし、テストパターンは複数の補正用パターンから最適なパターンを選択するためのものであるため、テストパターンには複数の補正用パターンを形成する必要がある。本実施形態によれば、このような狭い印刷領域にも、多くの補正用パターンを形成することができる。
また、本実施形態によれば、搬送ユニットは、印刷領域(ヘッド31と対向する領域)の上流側に位置する上流側ローラ(搬送ローラ)と、印刷領域の下流側に位置する下流側ローラ(排紙ローラ)とを有している。そして、本実施形態では、下流側ローラのみによって紙が搬送される際に(紙の後端が搬送ローラを通過した際に)、補正用パターンを紙に形成している。2つのローラによる搬送状態と1つのローラによる搬送状態は異なる搬送状態になる。そのため、2つのローラによる搬送状態に応じた補正量を、1つのローラによる搬送状態に応じた補正量に適用すると、画質が低下するおそれがある。一方、1つのローラによる搬送状態の印刷領域は狭い。本実施形態によれば、1つのローラによって媒体が搬送される状態の狭い印刷領域に、多くの補正用パターンを形成できる。
また、本実施形態では、通常の搬送状態(2つのローラ(上流側ローラと下流側ローラ)を用いた搬送状態)に応じた補正量は、下流側ローラのみによる搬送状態(紙の後端が搬送ローラを通過したときの搬送状態)に応じた搬送量とは異なっている。これは、2つのローラによる搬送状態に応じた補正量を、1つのローラによる搬送状態に応じた補正量に適用すると、画質が低下するおそれがあるからである。本実施形態では、メモリ63は、通常の搬送状態に応じた補正量に関する情報だけでなく、紙の後端が搬送ローラを通過した後に適用される補正量に関する情報をも記憶している。紙検出センサ53が紙の後端を検出した後、所定の搬送量にて紙を搬送すれば紙の後端が搬送ローラを通過するので、コントローラ60は、紙の後端が搬送ローラを通過した後、目標搬送量を補正する際に、通常の搬送状態に応じた補正量から、排紙ローラのみによる搬送状態に応じた補正量に、補正量を切り換える。
===本実施形態のテストパターンの印刷方法3===
前述の実施形態では、第1バンドパターンの形成から第2バンドパターンの形成までの搬送量は1インチであった。しかし、テストパターンは、実際の印刷の際の搬送誤差を検出するためのものであるため、テストパターンを印刷する際の搬送量は、実際の印刷の際の搬送量と等しいことが望ましい。
図25は、実際の印刷の際の搬送量が1/2インチの場合のテストパターンの印刷方法の説明図である。同図において、既に説明された構成要素については同じ符号を付しているので、説明を省略する。また、各パスにおけるノズルからのインクの吐出は、前述の図19及び図20の実施形態と同様である。なお、図25のヘッド41の位置を示す長方形内に数字が記載されていない場合、その長方形の位置にヘッド41が位置したときに、ドット形成処理が行われないことを意味する。
本実施形態では、第1バンドパターンの形成から第2バンドパターンの形成までの間に、コントローラ60が1/2インチの目標搬送量にて、搬送ユニット20に紙を間欠的に2回搬送させる。このときの目標搬送量は、プリンタの使用目的に沿った印刷(ユーザがテストパターンの印刷後に行う印刷)の際の目標搬送量とほぼ等しい。仮にプリンタの使用目的に沿った印刷の際の目標搬送量が1/4インチであれば、パス1の後、1/4インチの目標搬送量にて、紙を間欠的に4回搬送させる。
なお、上記の間欠的な搬送の際、実際には搬送誤差を含んだ状態にて、紙Sが搬送されている。そして、間欠的な搬送後、紙Sは、2回分の搬送の搬送誤差が蓄積された状態になる。本実施形態のテストパターンは、間欠的な搬送(パス1からパス2までに行われた搬送)の際に蓄積された搬送誤差に対する最適な補正量を求めるためのものとなる。
2回の間欠的な搬送の際に「−1/720インチの搬送誤差」が生じていた場合、補正用パターンP2の第1バンドパターンを構成するドットの最上流側のドット(パス2におけるノズル♯720が形成するドット)と第2バンドパターンを構成するドットの最下流側のドット(パス3におけるノズル♯5が形成するドット)との間隔D2が、1/180インチになるため、補正用パターンP2の第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間の境界部には、縞模様が発生しない。つまり、4回の間欠的な搬送の際に「−1/720インチの搬送誤差」が生じていた場合、「番号=2」が付された補正用パターンP2が、最適なパターンとして選択される(S103参照)。
逆に言えば、補正用パターンP2が最適なパターンであれば、2回の間欠的な搬送の際に生じている搬送誤差が、「−1/720インチ」であることが検出される。その結果、補正用パターンP2が最適なパターンであれば、1回の搬送(目標搬送量が1/2インチの搬送)につき、「−1/1440インチ」の搬送誤差が生じていることが検出される。
そのため、補正用パターンP2が最適なパターンとして選択された場合、1/2インチの目標搬送量に補正量C(=1/1440インチ)を加算し、補正された目標搬送量に基づいて紙Sを搬送すれば(補正された目標搬送量に基づいてS041のカウンタを設定すれば)、実際の紙の搬送量が目標搬送量になる。つまり、補正用パターンP2は、補正量Cと対応している。
同様に、補正用パターンP1は補正量2Cと対応し、補正用パターンP3は補正量0と対応し、補正用パターンP4は補正量−Cと対応し、補正用パターンP5は補正量−2Cと対応している。
本実施形態によれば、前述の実施形態と同様の理由により、第1パターンと第2パターンとの間隔を、補正用パターン毎に適正なものにすることができる。
また、本実施形態では、例えば「番号=1」が付された補正用パターンP1の第1バンドパターンの形成と第2バンドパターンの形成との間に、搬送ユニットが2回の搬送を行っている。これにより、第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間の間隔は、2回の搬送の間に蓄積された搬送誤差(1回の搬送の搬送誤差の2倍)が反映されることになる。つまり、複数の補正用パターンの中から最適な補正用パターンを選択すれば、蓄積された搬送誤差を検出することができる。
===本実施形態のテストパターンの印刷方法4===
前述の実施形態では、補正パターンの間隔がノズルピッチ(=1/720インチ)ずつ段階的に変わるように、複数の補正用パターンが形成されていた。しかし、ノズルピッチよりも細かく補正パターンの間隔が段階的に変わるように印刷することも可能である。
<ヘッドの構成について>
図26は、本実施形態のノズルの配列を示す説明図である。ヘッド41の下面には、ブラックインクノズル列Kと、シアンインクノズル列Cと、マゼンタインクノズル列Mと、イエローインクノズル列Yが形成されている。各ノズル列は、各色のインクを吐出するための吐出口であるノズルを複数個(本実施形態では180個)備えている。そして、本実施形態では、ノズルピッチが前述の実施形態とは異なる。本実施形態では、ノズルピッチが180dpi(1/180インチ)である。
<テストパターンの印刷方法について>
次に、本実施形態のテストパターンの印刷方法について、図27及び図28を用いて説明する。図27は、本実施形態のテストパターンの印刷方法の説明図である。図28は、印刷の際のノズルの相対位置の説明図である。図中の既に説明された構成要素には同じ符号を付しているので、説明を省略する。以下に説明される各動作は、コントローラ60が、メモリ63内に格納されたプログラムに従って、各ユニットを制御することにより実行される。このプログラムは、各処理を実行するためのコードを有する。
(1回目のパス)紙Sの後端が搬送ローラを通過したとき、ヘッド41は、紙Sに対して、図中のヘッド41Aの位置になる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31を走査方向に移動させ、ヘッド41からインクを吐出させて、1回目のドット形成処理(パス1)を行う。このとき、ヘッド41は、搬送方向に上流側(ノズル♯180側)のノズル群を用いて、5つの第1バンドパターンを形成する。1回のパスにて5つの第1バンドパターンが形成されるので、これらの第1バンドパターンの搬送方向の位置は、同じになる。なお、このパス1において、ヘッド41は、搬送方向に下流側(ノズル♯1側)のノズル群を用いて、補正用パターンに付される番号(例えば、「番号=1」等)も紙Sに形成する。
次に、コントローラ60は、約1/4インチ(本実施形態では176/720インチ)の目標搬送量にて、搬送ユニット20に紙を間欠的に4回搬送させる。このときの目標搬送量は、プリンタの使用目的に沿った印刷(ユーザがテストパターンの印刷後に行う印刷)の際の目標搬送量とほぼ等しい。仮にプリンタの使用目的に沿った印刷の際の目標搬送量が1/8インチであれば、パス1の後、約1/8インチ(例えば、176/1440インチ)の目標搬送量にて、紙を間欠的に8回搬送させる。
なお、上記の間欠的な搬送の際、実際には搬送誤差を含んだ状態にて、紙Sが搬送されている。そして、間欠的な搬送後、紙Sは、4回分の搬送の搬送誤差が蓄積された状態になる。本実施形態のテストパターンは、間欠的な搬送(パス1からパス2までに行われた搬送)の際に蓄積された搬送誤差に対する最適な補正量を求めるためのものとなる。
(2回目のパス)間欠的な搬送後、ヘッド41は、紙Sに対して、図中のヘッド41Eの位置になる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31を走査方向に移動させ、ヘッド41からインクを吐出させて、2回目のドット形成処理(パス2)を行う。このとき、ヘッド41は、ノズル♯5とノズル♯5より搬送方向に上流側のノズル(ノズル♯6等)とからなるノズル群を用いて、「番号=3」が付される補正用パターンP3(5つの補正用パターンのうちの真ん中の補正用パターン)の第2バンドパターンを形成する。これにより、「番号=3」が付される補正用パターンP3が完成する。
(3回目のパス)次に、コントローラ60は、3/720インチの目標搬送量にて、搬送ユニット20に紙Sを搬送させる。ただし、このときの紙の搬送量は小さいので、搬送ユニット20が紙を搬送する際に搬送誤差は生じない。つまり、紙は、目標搬送量と同じ3/720インチの搬送量にて搬送されている。これにより、ヘッド41は、紙Sに対して、図中のヘッド41Fの位置になる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31を走査方向に移動させ、ヘッド41からインクを吐出させて、3回目のドット形成処理(パス3)を行う。このとき、ヘッド41は、ノズル♯4とノズル♯4より搬送方向に上流側のノズル(ノズル♯5等)とからなるノズル群を用いて、「番号=4」が付される補正用パターンP4(5つの補正用パターンのうちの右から2番目の補正用パターン)の第2バンドパターンを形成する。これにより、「番号=4」が付される補正用パターンP4が完成する。
(4回目のパス)次に、コントローラ60は、3/720インチの目標搬送量にて、搬送ユニット20に紙Sを搬送させる。ただし、このときの紙の搬送量は小さいので、搬送ユニット20が紙を搬送する際に搬送誤差は生じない。つまり、紙は、目標搬送量と同じ3/720インチの搬送量にて搬送されている。これにより、ヘッド41は、紙Sに対して、図中のヘッド41Gの位置になる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31を走査方向に移動させ、ヘッド41からインクを吐出させて、4回目のドット形成処理(パス4)を行う。まず、ヘッド41は、ノズル♯4とノズル♯4より搬送方向に上流側のノズル(ノズル♯5等)とからなるノズル群を用いて、「番号=1」が付される補正用パターンP1(5つの補正用パターンのうちの1番左側の補正用パターン)の第2バンドパターンを形成する。これにより、「番号=1」が付される補正用パターンP1が完成する。また、ヘッド41は、ノズル♯3とノズル♯3より搬送方向に上流側のノズル(ノズル♯4等)とからなるノズル群を用いて、「番号=5」が付される補正用パターンP5(5つの補正用パターンのうちの1番右側の補正用パターン)の第2バンドパターンを形成する。これにより、「番号=5」が付される補正用パターンP5が完成する。つまり、パス4におけるドット形成処理では、コントローラ60は、インクを吐出するノズルを異ならせて、搬送方向に異なる場所に2つの補正用パターンの第2バンドパターンをヘッド41に形成させている。
(5回目のパス)次に、コントローラ60は、3/720インチの目標搬送量にて、搬送ユニット20に紙Sを搬送させる。ただし、このときの紙の搬送量は小さいので、搬送ユニット20が紙を搬送する際に搬送誤差は生じない。つまり、紙は、目標搬送量と同じ3/720インチの搬送量にて搬送されている。これにより、ヘッド41は、紙Sに対して、図中のヘッド41Hの位置になる。そして、コントローラ60は、キャリッジ31を走査方向に移動させ、ヘッド41からインクを吐出させて、5回目のドット形成処理(パス5)を行う。このとき、ヘッド41は、ノズル♯3とノズル♯3より搬送方向に上流側のノズル(ノズル♯4等)とからなるノズル群を用いて、「番号=2」が付される補正用パターンP4(5つの補正用パターンのうちの左から2番目の補正用パターン)の第2バンドパターンを形成する。これにより、「番号=2」が付される補正用パターンP2が完成する。
このように形成されたテストパターンは、以下に説明するとおり、複数の補正用パターンが補正量の順に配置されたものとなる。
<各補正用パターンに対応する補正量について>
図29は、搬送誤差がない場合の各補正用パターンの第1バンドパターンと第2バンドパターンとの境界のドット間隔の説明図である。図中の左側は各パスにおけるヘッドの相対位置を示すものである。図中の右側の黒い丸は、各補正用パターンを構成するドットを示すものである。図中の右側において、補正用パターン毎に搬送方向に沿った1列のドットしか示されていないが、実際には、このようなドット列が走査方向に多数並び、補正用パターンが形成されている(後述)。なお、図中の右側の黒い丸の中の数字は、そのドットを形成するノズルの番号を示すものである。
搬送誤差がない場合、補正用パターンP3の第1バンドパターンを構成するドットの最上流側のドット(パス1におけるノズル♯180が形成するドット)と第2バンドパターンを構成するドットの最下流側のドット(パス2におけるノズル♯5が形成するドット)との間隔D3が、ノズルの間隔(=1/180インチ)と等しくなる。そのため、補正用パターンP3の第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間の境界部には、縞模様が発生しない。
一方、搬送誤差がない場合、補正用パターン2の第1バンドパターンを構成するドットの最上流側のドット(パス1におけるノズル♯180が形成するドット)と第2バンドパターンを構成するドットの最下流側のドット(パス5におけるノズル♯3が形成するドット)との間隔D2は、ノズルの間隔(=1/180インチ)よりも1/720インチだけ広がっている。そのため、補正用パターンP2の第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間の境界部には、白い縞模様が発生する。同様に、補正用パターンP1の間隔D1は、ノズルの間隔よりも2/720インチだけ広がっている。そのため、補正用パターンP1の境界部には、太い白い縞模様が発生する。
また、搬送誤差がない場合、補正用パターン4の第1バンドパターンを構成するドットの最上流側のドット(パス1におけるノズル♯180が形成するドット)と第2バンドパターンを構成するドットの最下流側のドット(パス3におけるノズル♯4が形成するドット)との間隔D4は、ノズルの間隔(=1/180インチ)よりも1/720インチだけ狭まっている。そのため、補正用パターンP4の第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間の境界部には、黒い縞模様が発生する。同様に、補正用パターンP5の間隔D5は、ノズルの間隔よりも2/720インチだけ狭まっている。そのため、補正用パターンP5の境界部には、太い黒い縞模様が発生する。
このように、各補正用パターンの第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間隔は、1/720インチずつ変化している。そして、パス1からパス2までの間の4回の間欠的な搬送の際に搬送誤差がなければ、「番号=3」が付された補正用パターンP3に縞模様が発生しないので、この補正用パターンが最適なパターンとして選択される(S103参照)。
図30は、4回の間欠的な搬送の際に「−1/720インチの搬送誤差」が生じていた場合の各補正用パターンの第1バンドパターンと第2バンドパターンとの境界のドット間隔の説明図である。ここで、「−1/720インチの搬送誤差」とは、目標搬送量に基づいて紙を搬送したときに、実際の搬送量が目標搬送量よりも1/720インチだけ少ないことを意味する。4回の間欠的な搬送の際に「−1/720インチの搬送誤差」が生じているため、パス2以降のノズルの相対位置が、図29のノズルの位置と比較して、1/720インチ分だけずれている。
4回の間欠的な搬送の際に「−1/720インチの搬送誤差」が生じていた場合、補正用パターンP2の第1バンドパターンを構成するドットの最上流側のドット(パス1におけるノズル♯180が形成するドット)と第2バンドパターンを構成するドットの最下流側のドット(パス5におけるノズル♯3が形成するドット)との間隔D2が、ノズルの間隔(=1/180インチ)と等しくなる。そのため、補正用パターンP2の第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間の境界部には、縞模様が発生しない。つまり、4回の間欠的な搬送の際に「−1/720インチの搬送誤差」が生じていた場合、「番号=2」が付された補正用パターンP2が、最適なパターンとして選択される(S103参照)。
逆に言えば、補正用パターンP2が最適なパターンであれば、4回の間欠的な搬送の際に生じている搬送誤差が、「−1/720インチ」であることが検出される。その結果、補正用パターンP2が最適なパターンであれば、1回の搬送(目標搬送量が約1/4インチの搬送)につき、「−1/2880インチ」の搬送誤差が生じていることが検出される。
そのため、補正用パターンP2が最適なパターンとして選択された場合、2回の搬送につき1回の割合で、約1/4インチの目標搬送量に補正量C(=1/1440インチ)を加算し、補正された目標搬送量に基づいて紙Sを搬送すれば(補正された目標搬送量に基づいてS041のカウンタを設定すれば)、間欠的な搬送の際の実際の紙の搬送量が目標搬送量に近づく。つまり、補正用パターンP2は、補正量0.5Cと対応している。
同様に、補正用パターンP1は補正量1Cと対応し、補正用パターンP3は補正量0と対応し、補正用パターンP4は補正量−0.5Cと対応し、補正用パターンP5は補正量−Cと対応している。
本実施形態によれば、前述の実施形態と同様の理由により、第1パターンと第2パターンとの間隔を、補正用パターン毎に適正なものにすることができる。
===バンドパターンの構成===
補正用パターンのバンドパターン(第1バンドパターン及び第2バンドパターン)は、搬送方向及び走査方向に沿って配列された無数のドットから構成される。以下、バンドパターンを構成するドットについて説明する。
図31A〜図31Dは、バンドパターンを構成するドットの一例である。バンドパターンは、図中に示されるように、搬送方向及び走査方向に沿って配列されている。搬送方向のドットの間隔は、ノズルの間隔に等しく、1/180インチである。但し、走査方向のドットの間隔は、1/180インチでも良いし、他の間隔であっても良い。
図31Aのバンドパターンは、隣接するドットが接触していない。図31Bのバンドパターンは、隣接するドットが接触している。このように、前述のテストパターンのバンドパターンは、隣接するドットが接触しても良いし、接触していなくても良い。
図31Cのバンドパターンは、異なる大きさのドット(大ドット、中ドット、小ドット)から構成されている。前述のテストパターンのバンドパターンは、このように大きさの異なるドットを混在させても良い。大きさの異なるドットを混在させても、バンドパターン全体としては均一な濃度のパターンを構成することが可能である。インクの乾きやインクの滲み具合等の影響によって、大ドットのみで構成したテストパターンの最適な補正用パターンと、小ドットのみで構成したテストパターンの最適な補正用パターンと、が異なることもあり得るので、異なる大きさのドットから構成されたテストパターンを用いて最適な補正用パターンを選択すれば、平均的な補正量を特定することができる。
図31Dのバンドパターンは、異なる色のドット(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)から構成されている。図中の「K」はブラックインクによって構成されたブラックのドットを示す。図中の「C」はシアンインクによって構成されたシアンのドットを示す。図中の「M」はマゼンタインクによって構成されたマゼンタのドットを示す。図中の「Y」はイエローインクによって構成されたイエローのドットを示す。各色のノズルの取付誤差や寸法の公差等の影響によって、各色のみで構成したテストパターンの最適な補正用パターンがそれぞれ異なることもあり得るので、異なる色のドットから構成されたテストパターンを用いて最適な補正用パターンを選択すれば、平均的な補正量を特定することができる。
前述のテストパターンのバンドパターンは、上記のいずれかのバンドパターンであっても良い。また、上記のバンドパターンの考え方を組み合わせたバンドパターンであっても良い。
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、主としてプリンタについて記載されているが、その中には、印刷装置、記録装置、液体の吐出装置、印刷方法、記録方法、液体の吐出方法、印刷システム、記録システム、コンピュータシステム、プログラム、プログラムを記憶した記憶媒体、表示画面、画面表示方法、印刷物の製造方法、等の開示が含まれていることは言うまでもない。
また、一実施形態としてのプリンタ等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<第1バンドパターンと第2バンドパターンについて>
前述の実施形態によれば、第1バンドパターンが基準用パターンとなり、第2バンドパターンが比較用パターンとなっていた。しかし、第1バンドパターンと第2バンドパターンとを逆にしても良い。すなわち、第1バンドパターンの形成に使用されるノズル群を各補正用パターンによって異ならせて、第1バンドパターンを比較用パターンとしても良い。また、第2バンドパターンを同じノズル群を用いて形成し、第2バンドパターンを基準用パターンとしても良い。このようにしても、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
<後端について>
前述の実施形態のテストパターンの印刷方法2等によれば、紙の後端が搬送ローラを通過した後に、紙の後端側にテストパターンを形成していた。しかし、テストパターンを印刷する位置は、これに限られるものではない。他の場合であっても、第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間隔を補正用パターン毎に適正なものにすることができるという効果を得ることができる。
例えば、紙の先端側にテストパターンを形成しても良い。搬送ローラに搬送される紙の先端が排紙ローラを通過する前は、紙は搬送ローラと排紙ローラの両ローラによって搬送されず、搬送ローラのみによって搬送されているので、通常の搬送状態とは異なる搬送状態になるからである。そして、搬送ローラのみによって搬送されている状態の印刷領域は、前述の排紙ローラのみによって搬送されている状態と同様に、搬送方向の長さが短いため、狭い領域である。そこで、前述の実施形態と同様に、紙の先端側の狭い領域に複数の補正用パターンを走査方向に沿って形成すれば、多くの補正用パターンを形成することができ、また、第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間隔を補正用パターン毎に適正なものにすることができるという効果を得ることができる。
この場合、メモリ63は、通常の搬送状態に応じた補正量に関する情報だけでなく、紙の先端が排紙ローラを通過する前に適用される補正量に関する情報をも記憶している。紙検出センサ53が紙の先端を検出した後、所定の搬送量にて紙を搬送すれば紙の先端が排紙ローラを通過するので、コントローラ60は、紙の先端が排紙ローラを通過した後、目標搬送量を補正する際に、搬送ローラのみによる搬送状態に応じた補正量から、通常の搬送状態に応じた補正量に、補正量を切り換える。
さらに、通常の搬送状態(搬送ローラ及び排紙ローラの2つのローラによって紙が搬送されている状態)における印刷領域に、同様のテストパターンを形成しても良い。このような場合でも、狭い印刷領域に多くの補正用パターンを印刷するという効果を得ることができ、また、第1バンドパターンと第2バンドパターンとの間隔を補正用パターン毎に適正なものにすることができるという効果を得ることができる。
<ノズル群について>
前述の実施形態によれば、第1バンドパターンは、搬送方向上流側のノズル群(例えば720個のノズルの場合、ノズル♯361〜ノズル♯720に含まれるノズル群)により形成され、第2バンドパターンは、搬送方向下流側のノズル群(例えば720個のノズルの場合、ノズル♯1〜ノズル♯360に含まれるノズル群)により形成される。しかし、各バンドパターンを形成するノズル群は、これに限られるものではない。
例えば720個のノズルの場合、第1バンドパターンが、搬送方向下流側のノズル群を一部含むノズル群(例えばノズル♯321〜ノズル♯640)により形成されても良い。または、第1バンドパターンが、全て搬送方向下流側のノズル群(例えばノズル♯181〜ノズル♯360)により形成されても良い。要するに、第1バンドパターンを形成するノズル群よりも、第2バンドパターンを形成するノズル群の方が搬送方向下流側に位置していれば良い。
但し、前述の実施形態のように、第1バンドパターンが搬送方向上流側のノズル群により形成され、第2バンドパターンが搬送方向下流側のノズル群により形成されれば、第1バンドパターンの形成と第2バンドパターンの形成の間の搬送処理の搬送量が大きくなるので、補正用パターンによる搬送誤差の検出が、容易になる。
<印刷装置について>
前述の実施形態によれば、印刷装置は、ノズルからインクを吐出するインクジェットプリンタであった。しかし、印刷装置は、インクジェットプリンタに限られるものではない。要するに、紙などの媒体を搬送する搬送ユニットを備え、その搬送ユニットの搬送誤差を相殺するための補正量を設定するような印刷装置であれば良い。そして、このような印刷装置の搬送ユニットの目標搬送量を補正するためのテストパターンを前述の実施形態と同様に紙に形成すれば、紙の狭い領域に多くの補正用パターンを印刷できるので、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
<インクについて>
前述の実施形態は、プリンタの実施形態だったので、染料インク又は顔料インクをノズルから吐出していた。しかし、ノズルから吐出する液体は、このようなインクに限られるものではない。例えば、金属材料、有機材料(特に高分子材料)、磁性材料、導電性材料、配線材料、成膜材料、電子インク、加工液、遺伝子溶液などを含む液体(水も含む)をノズルから吐出しても良い。このような液体を対象物に向かって直接的に吐出すれば、省材料、省工程、コストダウンを図ることができる。
<ノズルについて>
前述の実施形態では、圧電素子を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。