JP4571281B2 - セメント混和材及びセメント組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、土木・建築業界において使用されるセメント混和材及びセメント組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
セメントは安価であり、大きな構造物を任意の形に造れる優れた材料である。このセメントに、さらに、セメント混和材を併用することによって、造られた構造物の強度や耐久性を向上させることが可能である。セメント混和材は数多く提案されているが、最も使用頻度が高いものとしては、コンクリート構造物に膨張性を付与するセメント混和材が挙げられる。ここで、コンクリートとは、セメント、モルタル及びコンクリートを総称するものである。
【0003】
コンクリート構造物に膨張性を付与するセメント混和材としては、例えば、CaO-Al 2 O 3 -SO 3 系化合物を有効成分とするものが知られている(特公昭42-1840号公報、特公昭4219473-号公報、特公昭53-16007号公報等)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のCaO-Al 2 O 3 -SO 3 系化合物を有効成分とするセメント混和材は、SO 3 含有量が高く、これを製造する際に大気中へ放出されるSO X が問題視されていた。また、最近では、膨張性を付与するセメント混和材に要求される性能は益々高まってきている。即ち、混和率が少なくても優れた膨張性能を付与できるセメント混和材の開発が待たれているのが実状である。また、従来の膨張性を付与するセメント混和材は、貯蔵によって膨張性能が大きく低下するという課題を有していた。これは、水濡れや破袋に起因する風化が大きな原因であるが、比較的貯蔵状態が良好であっても、貯蔵期間が6ヶ月程度になると膨張性能は低下してしまうのである。
本発明者らは、このような状況を鑑み、前記課題を解消すべく種々検討した結果、特定の膨張物質と脂肪酸及び/又はそれらの塩類を配合することによって、膨張性能に優れ、しかも貯蔵安定性も良好なセメント混和材とすることが可能であることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、(1)CaO原料、Al2O3原料、Fe2O3原料、SiO2原料及びCaSO4原料を熱処理して得られる物質であって、セメント混和材100部中、遊離石灰30〜70部、カルシウムアルミノフェライト5〜22.5部、カルシウムシリケート5〜22.5部及び無水セッコウ5〜30部を含有してなる珪酸率が1.0未満である膨張物質95〜99.995部と、脂肪酸及び/又はそれらの塩類0.005〜5部とを含有してなるセメント混和材、(2)セメントと、(1)のセメント混和材とを含有してなり、セメントとセメント混和材の合計100部中、セメント混和材が3〜12部であるセメント組成物である。
【0006】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
本発明の膨張物質とは、遊離石灰、カルシウムアルミノフェライト、カルシウムシリケート及び無水セッコウを含有してなるものであり、その割合については特に限定されるものではないが、セメント混和材100部中、遊離石灰は30〜70部が好ましく、40〜60部がより好ましい。また、カルシウムアルミノフェライトは5〜22.5部が好ましく、10〜15部がより好ましい。カルシウムシリケートは5〜22.5部が好ましく、10〜15部がより好ましい。さらに、無水セッコウは5〜30部が好ましく、10〜25部がより好ましい。セメント混和材中の各化合物の組成割合が前記の範囲にないと、優れた膨張性能が得られない場合がある。
なお、本発明で使用する部、%は質量単位を表す。
【0008】
本発明の遊離石灰とは、通常、f−CaOと呼ばれるものである。本発明のカルシウムアルミノフェライトとは、CaO−Al 2 O 3 −Fe 2 O 3 系化合物を総称するものであり、特に限定されるものではないが、一般的に、CaOをC、Al 2 O 3 をA、Fe 2 O 3 をFとすると、C 4 AFやC 6 A 2 F等の化合物がよく知られている。通常は、C 4 AFとして存在していると考えて良い。本発明では、カルシウムアルミノフェライトを以下、C 4 AFと略記する。本発明のカルシウムシリケートとは、CaO−SiO 2 系化合物を総称するものであり、特に限定されるものではないが、一般的に、CaOをC、SiO 2 をSとすると、C 3 SやC 2 S等の化合物がよく知られている。
【0009】
本発明のセメント混和材を製造する際、CaO原料、Al 2 O 3 原料、Fe 2 O 3 原料、SiO 2 原料及びCaSO 4 原料を熱処理して、遊離石灰、C 4 AF、カルシウムシリケート及び無水セッコウからなる膨張物質を製造することがこの好ましい。即ち、遊離石灰、C 4 AF、カルシウムシリケート及び無水セッコウを別々に合成し、これらを混合したものや、CaO原料、Al 2 O 3 原料及びFe 2 O 3 原料を熱処理して、遊離石灰とC 4 AFからなる物質を合成し、これにカルシウムシリケートと無水セッコウを混合して製造したものや、CaO原料、Al 2 O 3 原料、Fe 2 O 3 原料及びSiO 2 原料を熱処理して、遊離石灰、C 4 AF及びカルシウムシリケートからなる物質を合成して、これに無水セッコウを混合して製造したもの等は、貯蔵することにより膨張性能が低下し易い。
【0010】
CaO原料、Al 2 O 3 原料、Fe 2 O 3 原料、SiO 2 原料及びCaSO 4 原料を熱処理して、遊離石灰、C 4 AF、カルシウムシリケート及び無水セッコウからなる膨張物質を合成してこれを粉砕して製造されたものか否かを確認する方法としては、例えば、セメント混和材の粗粒子、具体的には100μmよりも大きな粒子を顕微鏡(SEM−EDX)等により観察して組成分析を行い、粒子中に遊離石灰、C 4 AF、カルシウムシリケート及び無水セッコウが混在していることを確認することによって容易に判別できる。
【0011】
本発明のセメント混和材を製造する際の熱処理温度であるが、1100〜1600℃の範囲が好ましく、1200〜1500℃の範囲がより好ましい。1100℃未満では、得られたセメント混和材の膨張性能が十分でなく、1600℃を超えると無水セッコウが分解する場合がある。
【0012】
CaO原料としては石灰石や消石灰等が挙げられ、Fe 2 O 3 原料としては銅カラミ、鉄粉及び市販の酸化鉄等が、Al 2 O 3 原料としてはボーキサイトやアルミ残灰等が、SiO 2 原料としては珪石、粘土等が挙げられ、CaSO 4 原料としては二水セッコウ、半水セッコウ及び無水セッコウ等が挙げられる。
【0013】
本発明の膨張物質には不純物が存在する。その具体例としては、MgO、TiO 2 、P 2 O 5 、Na 2 O、K 2 O、フッ素、塩素等が挙げられ、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲では特に問題とはならない。膨張物質中の成分のうちで、特にSiO 2 は珪酸率で1.0未満の範囲であることが好ましい。珪酸率が1.0以上では優れた膨張性能が得られない場合がある。本発明でいう珪酸率とは、膨脹物質中のSiO 2 量、Al 2 O 3 量及びFe 2 O 3 量より次式から算出される。
珪酸率=SiO 2 /(Al 2 O 3 +Fe 2 O 3 )
また、膨張物質中のSiO 2 量は、5.0%以下が好ましく、3.0%以下がより好ましい。5.0%を超えると優れた膨張性能が得られない場合がある。
【0014】
本発明の脂肪酸とは、一般に、RCOOH(Rは飽和または不飽和の炭化水素基)で表される化合物を総称するものであり、特に限定されるものではないが、その具体例としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、パルミチン酸等が挙げられる。また、本発明では、これら脂肪酸の塩類も使用可能であり、その具体例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等が挙げられる。さらに、脂肪酸は天然油脂として入手することもでき、その具体例としては、例えば、大豆油、ヤシ油、パーム油、オリーブ油、アマニ油、綿実油、ナタネ油、キリ油、ヒマシ油、牛脂、スクワラン、ラノリン、硬化油などが挙げられる。本発明ではこれらのうちの1種又は2種以上が使用可能である(以下、脂肪酸類という)。中でも、本発明では、ステアリン酸を使用した場合が最も好ましい。
【0015】
セメント混和材中の膨張物質と脂肪酸類の配合割合は、特に限定されるものではないが、通常、膨張物質はセメント混和材100部中、95〜99.995部が好ましく、99〜99.95部がより好ましい。95部未満では、強度発現性が悪くなる場合があり、99.995部を超えると貯蔵安定性が悪くなる場合がある。脂肪酸類の配合割合は、0.005〜5部が好ましく、0.05〜1部がより好ましい。0.005部未満では、貯蔵安定性が悪くなる場合があり、5部を超えると強度発現性が悪くなる場合がある。
【0016】
本発明のセメント混和材の粒度は、特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積で1500〜6000cm2/gが好ましく、2500〜4000cm2/gがより好ましい。1500cm2/g未満では、強度発現性が悪くなる場合があり、6000cm2/gを超えると優れた膨張性能が得られない場合がある。
【0017】
本発明のセメント混和材の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100部中、3〜12部が好ましく、5〜9部がより好ましい。3部未満では本発明の効果が十分に得られない場合があり、12部を超えて使用すると、強度発現性が悪くなる場合がある。
【0018】
本発明のセメント組成物とは、本発明のセメント混和材と、JIS R 5210に規定される各種ポルトランドセメント、JIS R 5211、JIS R 5212、JIS R 5213に規定される各種混合セメント、JISに規定された以上の混和材混合率にて作製した高炉セメント、フライアッシュセメント及びシリカセメント、石灰石粉末等を混合したフィラーセメント、並びにアルミナセメント等のうちの1種又は2種以上とを併用したものである。
【0019】
本発明では、本発明のセメント混和材とセメント組成物に、砂、砂利等の骨材の他、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、高分子エマルジョン、凝結調整剤、セメント急硬材、ベントナイトやゼオライト等の粘土鉱物、ハイドロタルサイト等のイオン交換体等のうちの1種又は2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0020】
本発明において、各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、予め一部を、或いは全部を混合しておいても差し支えない。混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ及びナウターミキサ等の使用が可能である。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例に基づいて説明する。
【0022】
実施例1
CaO原料、Al 2 O 3 原料、Fe 2 O 3 原料、SiO 2 原料及びCaSO 4 原料を配合して、電気炉中にて1350℃で2時間熱処理することによって、表1に示すような様々な組成の膨張物質を製造した。これら膨張物質99.5部と、脂肪酸a0.5部とをポット式ボールミルを用いて混合粉砕してブレーン比表面積3500±300cm2/gのセメント混和材とした。
【0023】
セメント混和材の貯蔵安定性を確認するために、セメント混和材を紙袋に入れてミシン縫いで閉袋して温度20℃、相対湿度80%の試験室内で貯蔵した。セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100部中、セメント混和材を7部使用し、水/セメント組成物比=50%、セメント組成物/砂比=1/3のモルタルを調製して膨張率の測定を行い、セメント混和材の貯蔵期間と長さ変化率の関係を確認することによってセメント混和材の貯蔵安定性を評価した。
【0024】
なお、セメント混和材を粉末X線回折法(XRD)により同定し、遊離石灰、C 4 AF、カルシウムシリケート及び無水セッコウを主要な構成化合物とすることを確認した。また、化学組成は化学分析により求め、化合物組成は化学分析の結果より、計算によって算出した。
【0025】
長さ変化率の測定結果を表2に示した。比較のため、遊離石灰、C 4 AF、カルシウムシリケート及び無水セッコウを別々に合成して混合したものに脂肪酸類aを配合したものや、市販の膨張材に脂肪酸類aを配合しないものについて、同様の実験を行った。
【0026】
<使用材料>
脂肪酸類a:市販のステアリン酸
セメント:市販の普通ポルトランドセメント
水:水道水
砂:ISO679準拠、標準砂
CaO原料:試薬1級炭酸カルシウム
Al 2 O 3 原料:試薬1級酸化アルミニウム
Fe 2 O 3 原料:試薬1級酸化鉄
SiO 2 原料:試薬1級二酸化珪素
CaSO 4 原料:試薬1級無水セッコウ
遊離石灰:CaO原料を1350℃で3時間焼成し合成したもの。
C4AF:CaO原料4モル、Al2O3原料1モル、Fe2O3原料1モルを混合し、1350℃で3時間焼成し合成したもの。
C3S:CaO原料3モル、SiO2原料1モルを混合し、1600℃で3時間焼成し合成したもの。
無水セッコウ:CaSO4原料を1350℃で3時間焼成したもの。
膨張材▲1▼:市販のカルシウムサルホアルミネート系膨張材
膨張材▲2▼:市販の石灰系膨張材
【0027】
<測定方法>
化学分析:JIS R 5202に準じて測定。
化合物組成:先ず、遊離石灰含有量をJIS R 5202に準じて測定し、それ以外の化合物については計算によって求めた。即ち、Fe 2 O 3 量又はAl 2 O 3 量からC 4 AF量を算出し、次に、SiO 2 量からカルシウムシリケートを算出し、SO 3 量から無水セッコウ量を算出した。
長さ変化率:JIS A 6202に準じて測定。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
表1、表2より、本発明のセメント混和材は、従来の膨張材と比べ、優れた膨張性能を示すと共に、貯蔵期間が長くても膨張性能の低下が極めて少ないことが判る。
【0031】
実施例2
実施例1の膨張物質Dを使用し、脂肪酸類の種類とセメント混和材中の配合割合を表3に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0032】
<使用材料>
脂肪酸類b:市販のオレイン酸
脂肪酸類c:市販のラウリン酸
脂肪酸類d:市販のヤシ油
脂肪酸類e:市販のパーム油
脂肪酸類f:市販の牛脂
脂肪酸類g:市販のステアリン酸ナトリウム
脂肪酸類h:市販のオレイン酸ナトリウム
脂肪酸類i:脂肪酸類aと脂肪酸類dの等量混合物
脂肪酸類j:脂肪酸類aと脂肪酸類dと脂肪酸類hの等量混合物
【0033】
【表3】
【0034】
表3より、本発明のセメント混和材のように脂肪酸類を配合したものは、貯蔵期間が長くても膨張性能の低下が極めて少ないことが判る。
【0035】
実施例3
実施例1の表1の膨張物質Dを99.5部と脂肪酸類a0.5部からなるセメント混和材を使用し、セメント組成物100部中のセメント混和材の使用量を表4に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表4に併記する。
【0036】
【表4】
【0037】
表4より、本発明のセメント混和材の使用量が増加するに従い、膨張性能が向上し、貯蔵期間が長くても膨張性能の低下が極めて少ないことが判る。
【0038】
【発明の効果】
本発明のセメント混和材は、膨張性能に優れるばかりでなく、貯蔵安定性が良好であり、長期に亘って高い品質を保つことができる。
Claims (2)
- CaO原料、Al2O3原料、Fe2O3原料、SiO2原料及びCaSO4原料を熱処理して得られる物質であって、セメント混和材100部中、遊離石灰30〜70部、カルシウムアルミノフェライト5〜22.5部、カルシウムシリケート5〜22.5部及び無水セッコウ5〜30部を含有してなる珪酸率が1.0未満である膨張物質95〜99.995部と、脂肪酸及び/又はそれらの塩類0.005〜5部とを含有してなるセメント混和材。
- セメントと、請求項1に記載のセメント混和材とを含有してなり、セメントとセメント混和材の合計100部中、セメント混和材が3〜12部であるセメント組成物。
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JPH0948614A (ja) * | 1995-08-02 | 1997-02-18 | Okayama Pref Gov Kyodo Sekkai Kk | 表面改質生石灰と表面改質法及び製造装置 |
WO1999007647A1 (fr) * | 1997-08-11 | 1999-02-18 | Maeta Techno-Research, Inc. | Composition de ciment et procede de production de beton, et beton prefabrique obtenu |
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