JP4244262B2 - セメント混和材及びセメント組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に、土木・建築分野において使用されるセメント混和材及びセメント組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
セメント・コンクリートのひび割れ低減や曲げ耐力の向上は、コンクリート構造物の信頼性、耐久性、美観等の観点から極めて重要であり、これらを改善する効果のあるセメント混和材である、膨張材の更なる技術の進展が望まれている。従来より、セメント・コンクリートに膨張性を与えるセメント混和材としては、例えば、遊離石灰−アウイン−無水セッコウ系膨張材(特公昭42-21840号公報)や、遊離石灰−カルシウムシリケート−無水セッコウ系膨張材(特公昭53-31170号公報)等があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、コンクリートの高性能化を目的として、高流動コンクリートや高強度コンクリートの開発が盛んに行われているが、これら高性能コンクリートでは膨張材の効果が十分に発揮されないことが指摘されており、混和率が小さくても大きな膨張を付与できる膨張性能の優れた膨張材の開発が待たれているのが実状である。なお、本発明においてコンクリートとは、セメントペースト、モルタル及びコンクリートを総称するものである。
【0004】
また、最近では、従来の仕様規定型の設計体系から、性能規定型の設計体系への移行が検討されており、これまでやや軽視されていた耐久性についても明確な性能規定が定められ、ひび割れの耐久性に対する影響の定量化がなされるものと考えられる。特に、ひび割れを低減するためには膨張材を使用することが有効であり、膨張材の使用量を低減して経済的負担を小さくすることが不可欠である。
【0005】
従来の膨張材は、特に、5℃以下の低温では膨張性能が小さく、30℃以上の高温において流動性の保持性能が劣るという課題があった。
本発明はこれらの膨張材の課題を解決しさらなる進展を試みた結果、特定のセメント混和材を使用することにより、前記課題が解決できるとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、CaO原料、Al23原料、Fe23原料及びCaSO4原料を熱処理して得られる物質であって、遊離石灰、カルシウムアルミノフェライト、カルシウムフェライト及び無水セッコウを含有してなるセメント混和材であり、セメントと、該セメント混和材とを含有してなるセメント組成物である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0008】
本発明のセメント混和材は、遊離石灰、カルシウムアルミノフェライト、カルシウムフェライト及び無水セッコウを含有してなり、その割合については特に限定されるものではないが、セメント混和材100部中、遊離石灰は30〜70部が好ましく、40〜60部がより好ましい。また、カルシウムアルミノフェライトは5〜22.5部が好ましく、10〜15部がより好ましい。カルシウムフェライトは5〜22.5部が好ましく、10〜15部がより好ましい。更に、無水セッコウは5〜30部が好ましく、10〜25部がより好ましい。セメント混和材中の各化合物の割合が前記範囲にないと、膨張性能、凝結性状及び流動性の保持性能が十分でない場合がある。なお、本発明で使用する部、%は質量単位を表す。
【0009】
本発明の遊離石灰とは、通常、f−CaOと呼ばれるものである。
本発明のカルシウムアルミノフェライトとは、CaO−Al23−Fe23系化合物を総称するものであり、特に限定されるものではないが、CaOをC、Al23をA、Fe23をFと表すと、C4AF、C62F、C6AF2等の化合物がよく知られている。通常は、C4AFとして存在していると考えて良い。本発明では、カルシウムアルミノフェライトを以下、C4AFと略記する。
本発明のカルシウムフェライトとは、CaO−Fe23系化合物を総称するものであり、特に限定されるものではないが、CaOをC、Fe23をFと表すと、CFやC2F等の化合物が挙げられる。
【0010】
本発明のセメント混和材を製造する際、CaO原料、Al23原料、Fe23原料及びCaSO4原料を熱処理して、遊離石灰、C4AF、カルシウムフェライト及び無水セッコウからなるクリンカーを合成して製造することが必要である。遊離石灰、C4AF、カルシウムフェライト及び無水セッコウを別々に合成し、混合してセメント混和材を製造したのでは本発明の効果は得られない。即ち、CaO原料、Al23原料及びFe23原料を熱処理して、遊離石灰とC4AFからなるクリンカーを合成し、これにカルシウムフェライトと無水セッコウを混合して製造した場合や、遊離石灰、C4AF及びカルシウムフェライトからなるクリンカーを合成し、これに無水セッコウを混合して製造した場合には、本発明の効果は得られない。CaO原料、Al23原料、Fe23原料及びCaSO4原料を熱処理して、遊離石灰、C4AF、カルシウムフェライト及び無水セッコウからなるクリンカーを合成したかどうかは、例えば、粉砕物中の100μm以上の粗粒子を顕微鏡観察等を行い、その粒子中に遊離石灰、C4AF、C2F及び無水セッコウが混在していることを確認することによって判別できる。
【0011】
原料の熱処理方法は、特に限定されるものではないが、電気炉やキルン等を用いて、1100〜1600℃の温度で焼成することが好ましく、1200〜1500℃がより好ましい。1100℃未満では、得られたセメント混和材の膨張性能が十分でなく、1600℃を超えると無水セッコウが分解する場合がある。
【0012】
CaO原料としては、石灰石や消石灰等が挙げられ、Al23原料としてはボーキサイトやアルミ残灰等が挙げられ、Fe23原料としては、銅カラミや市販の酸化鉄が挙げられ、CaSO4原料としては、二水セッコウ、半水セッコウ及び無水セッコウ等が挙げられる。これら原料中には不純物が存在する。その具体例としては、SiO2、MgO、TiO2、P25、Na2O、K2O等が挙げられ、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲では特に問題とはならない。
【0013】
クリンカー中のSiO2は、珪酸率で0.5未満の範囲であることが好ましい。珪酸率が0.5を超えると優れた膨張性能が得られない場合がある。本発明でいう珪酸率とは、クリンカー中のSiO2量、Al23量及びFe23量より次式から算出される。
珪酸率=SiO2/(Al23+Fe23
また、クリンカー中のSiO2量は、5.0%以下が好ましく、3.0%以下がより好ましい。5.0%を超えると優れた膨張性能が得られない場合がある。
【0014】
本発明のセメント混和材の粒度は、特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積で1500〜9000cm2/gが好ましく、2500〜4000cm2/gがより好ましい。セメント混和材のブレーン比表面積が1500cm2/g未満では、長期耐久性が悪くなる場合があり、9000cm2/gを超えると充分な膨張性能が得られない場合がある。
【0015】
本発明のセメント混和材の使用量は、特に限定されるものではないが、通常、セメントとセメント混和材の合計からなるセメント組成物100部中、3〜12部が好ましく、5〜9部がより好ましい。3部未満では、充分な膨張性能が得られない場合があり、12部を超えて使用すると過膨張となりクラックを生じる場合や、凝結遅延性が現れる場合がある。
【0016】
本発明のセメントとしては、普通セメント、早強、超早強、低熱及び中庸熱等各種ポルトランドセメントと、これらセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカを混合した各種混合セメント、並びに石灰石粉末等を混合したフィラーセメント等がある。
【0017】
本発明では、砂、砂利等の骨材の他に、減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、高分子エマルジョン及び凝結調整剤、並びにセメント急硬材、ベントナイト等の粘土鉱物及びハイドロタルサイト等のアニオン交換体等のうちの1種又は2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0018】
本発明では、各材料の混合方法は、特に限定されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、予めその一部、或いは全部を混合しておいても差し支えない。混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ及びナウタミキサ等が挙げられる。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0020】
実施例1
CaO原料、Al23原料、Fe23原料及びCaSO4原料を配合し、混合粉砕した後、1350℃で熱処理して表2に示すような組成のクリンカーを合成し、ボールミルを用いて、ブレーン比表面積3500±300cm2/gに粉砕してセメント混和材を調製した。セメント混和材を粉末X線回折法(以下、XRD)で同定し、構成化合物を調べた。セメント混和材の化合物組成は、化学組成とXRDの同定結果を基に計算により算出した。化学組成はJIS R 5202に準じて求めた。その結果を表1に示す。
【0021】
セメントと、セメント混和材からなるセメント組成物100部中、セメント混和材を7部使用し、水/セメント組成物比=50%、セメント組成物/砂比=1/3のモルタルを4〜6℃の室内で調製して、長さ変化率を測定した。また、市販の高性能AE減水剤をセメント組成物に対して1%添加し、セメント組成物/砂比=1/2、水/セメント組成物比=38%のモルタルを30〜33℃の室内で調製し、練り上げたモルタルの流動性の保持性能は、タッピングなしのテーブルフロー値(以下、フロー値と略す)を練り直後、及び60分経過後に測定し、フロー値の低下により評価した。その結果を表2に示す。
【0022】
<使用材料>
CaO原料:試薬1級炭酸カルシウム
Al23原料:試薬1級酸化アルミニウム
Fe23原料:試薬1級酸化第二鉄
CaSO4原料:試薬1級二水セッコウ
砂:JIS標準砂(ISO679準拠)
高性能AE減水剤:市販ポリカルボン酸系
市販膨張材:カルシウムサルホアルミネート系
【0023】
<測定方法>
長さ変化率:JIS A 6202に準じ材齢7日の長さ変化率を測定。
フロー低下値:JIS R 5201に準じテーブルフロー値を測定し、練り上がりのフロー値から60分経過後のフロー値を差し引いた値で表示。
【0024】
【表1】
Figure 0004244262
【0025】
【表2】
Figure 0004244262
【0026】
表1、表2より、本発明のセメント混和材を使用したモルタルは、低温での長さ変化率が大きく、優れた膨張性能を示すと共に、高温でのフロー低下値が小さく、良好な流動性の保持性能を有することが判る。
【0027】
実施例2
表1のセメント混和材Dを使用し、セメント組成物100部に対するセメント混和材の使用量を表3に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0028】
【表3】
Figure 0004244262
【0029】
表3より、本発明のセメント混和材の使用量を増加すると、モルタルの低温での長さ変化率が大きくなり、優れた膨張性能を示すと共に、モルタルの高温でのフロー低下値が小さくなる傾向を示し、良好な流動性の保持性能を有することが判る。
【0030】
【発明の効果】
本発明のセメント混和材及びセメント組成物を使用することにより、従来にない膨張性能、及び流動性の保持性能を付与することが可能となる。

Claims (2)

  1. CaO原料、Al23原料、Fe23原料及びCaSO4原料を熱処理して得られる物質であって、遊離石灰、カルシウムアルミノフェライト、カルシウムフェライト及び無水セッコウを含有してなるセメント混和材。
  2. セメントと、請求項1に記載のセメント混和材とを含有してなるセメント組成物。
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