JP2001064054A - セメント混和材及びセメント組成物 - Google Patents

セメント混和材及びセメント組成物

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた膨張性能を有するセメント混和材及び
セメント組成物を提供すること。 【解決手段】 CaO原料、Al23原料、Fe23
料及びCaSO4原料を熱処理して得られる物質であっ
て、遊離石灰、カルシウムアルミノフェライト及び無水
セッコウを含有してなるセメント混和材であり、珪酸率
が0.5未満であることを特徴とする該セメント混和材
であり、更にセメントと、該セメント混和材とを含有し
てなるセメント組成物を構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に、土木・建築
分野において使用されるセメント混和材及びセメント組
成物に関する。
【0002】
【従来の技術】セメント・コンクリートのひび割れ低減
や曲げ耐力の向上は、コンクリート構造物の信頼性、耐
久性、美観等の観点から最も重要であり、これらを改善
するためセメント系膨張材の開発が行われてきたが、更
なる技術の進展が望まれている。セメント系膨張材とし
ては、例えば、遊離石灰−アウイン−無水セッコウ系膨
張材(特公昭42-21840号公報)や遊離石灰−カルシウム
シリケート−無水セッコウ系膨張材(特公昭53-31170号
公報)等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】近年、コンクリートの
高性能化を目的に、高流動コンクリートや高強度コンク
リートの開発が盛んに行われているものの、これら高性
能コンクリートにおいては、セメント系膨張材の効果が
十分に発揮されない点が指摘され、膨張材の混和率が小
さくても大きな膨張性を付与できる、膨張性能の優れた
膨張材の開発が待たれている。
【0004】又、最近では従来の仕様規定型の設計体系
から、性能規定型の設計体系への移行が検討されてお
り、これまでやや軽視されていたコンクリートの耐久性
についても明確な性能規定が定められる方向にある。即
ち、ひび割れに対する耐久性について、その影響を定量
化することが検討されているため、ひび割れの低減は一
層重要な課題となってきている。従って、使用量が少な
く、経済的負担が小さく、ひび割れ低減に効果のある優
れた膨張性能を有するセメント系膨張材が不可欠であ
る。
【0005】本発明者らは、これらの課題を解決すべく
種々の検討を重ねた結果、特定のセメント混和材を使用
することにより、前記課題が解決できるとの知見を得て
本発明を完成するに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、CaO
原料、Al23原料、Fe23原料及びCaSO4原料
を熱処理して得られる物質であって、遊離石灰、カルシ
ウムアルミノフェライト、及び無水セッコウを含有して
なるセメント混和材であり、珪酸率が0.5未満である
ことを特徴とする該セメント混和材であり、更にセメン
トと、該セメント混和材とを含有してなるセメント組成
物である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を更に詳細に説明す
る。
【0008】本発明のセメント混和材は、遊離石灰、カ
ルシウムアルミノフェライト及びセッコウ類を含有して
なるものであり、その割合については特に限定されるも
のではないが、セメント混和材100重量部中、遊離石
灰は30〜60重量部が好ましく、40〜50重量部が
より好ましい。カルシウムアルミノフェライトは10〜
40重量部が好ましく、15〜35重量部がより好まし
い。さらに、セッコウ類は10〜40重量部が好まし
く、20〜35重量部がより好ましい。セメント混和材
中の各化合物の組成割合が前記範囲を外れると、優れた
膨張性能が得られない場合がある。
【0009】本発明のカルシウムアルミノフェライトと
は、CaO−Al23−Fe23系化合物を総称するも
のであり、特に限定されるものではないが、CaOを
C、Al23をA、Fe23をFと略記すると、C4
FやC62Fと表せる化合物等が挙げられる。通常はC
4AFとして存在していると考えられ、本発明では、カ
ルシウムアルミノフェライトを以下、C4AFという。
【0010】本発明のセメント混和材は、CaO原料、
Al23原料、Fe23原料及びCaSO4原料を熱処
理して、遊離石灰、C4AF及び無水セッコウからなる
クリンカーを合成してこれを粉砕して製造される。遊離
石灰、C4AF及び無水セッコウを別々に合成し、これ
らを混合したものでは、本発明のような効果は得られな
い。CaO原料、Al23原料、Fe23原料及びCa
SO4原料を熱処理して、遊離石灰、C4AF及び無水セ
ッコウからなるクリンカーを合成したかどうかは、例え
ば、粉砕物中の100μm以上の粗粒子を顕微鏡観察等
を行い、その粒子中に遊離石灰、C4AF及び無水セッ
コウが混在していることを確認することによって判別で
きる。
【0011】本発明のセメント混和材を製造する際の熱
処理温度であるが、1100〜1600℃の範囲が好ま
しく、1200〜1500℃の範囲がより好ましい。1
100℃未満では、得られたセメント混和材の膨張性能
が十分でなく、1600℃を超えると無水セッコウが分
解する場合がある。
【0012】CaO原料としては、石灰石や消石灰等が
挙げられ、Al23原料としては、ボーキサイトやアル
ミ残灰等が挙げられ、Fe23原料としては、銅カラ
ミ、鉄粉及び市販の酸化鉄等が挙げられ、CaSO4
料としては、二水セッコウ、半水セッコウ及び無水セッ
コウ等が挙げられる。これら原料中には、各種の不純物
が存在し、その具体例としては、SiO2、MgO、T
iO2、P25、Na2O及びK2O等が挙げられ、本発
明の目的を実質的に阻害しない範囲では特に問題とはな
らないが、これらのうちで、特に、SiO2は珪酸率で
0.5未満の範囲であることが好ましい。珪酸率が0.
5以上では、優れた膨張性能が得られない場合がある。
本発明でいう珪酸率とは、セメント混和材中のSiO2
量、Al2 3量及びFe23量より次式から算出され
る。 珪酸率=SiO2/(Al23+Fe23
【0013】又、本発明のセメント混和材中のSiO2
量は、5.0重量%以下が好ましく、3.0重量%以下
がより好ましい。5.0重量%を超えると優れた膨張性
能が得られない場合がある。
【0014】本発明のセメント混和材の粒度は、特に限
定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積で15
00〜9000cm2/gが好ましく、2500〜4000cm2/gがより好ま
しい。セメント混和材の粒度がブレーン比表面積で1500
cm2/g未満では、長期耐久性が悪くなる場合があり、900
0cm2/gを超えると充分な膨張性能が得られない場合があ
る。
【0015】本発明のセメント混和材の配合量は、特に
限定されるものではないが、通常、セメントとセメント
混和材からなるセメント組成物100重量部中、3〜1
2重量部が好ましく、5〜9重量部がより好ましい。3
重量部未満では、充分な膨張性能が得られない場合があ
り、12重量部を超えて使用すると長期耐久性が悪くな
る場合がある。
【0016】本発明のセメントとしては、普通セメン
ト、早強、超早強、低熱及び中庸熱等各種ポルトランド
セメントと、これらセメントに、高炉スラグ、フライア
ッシュ及びシリカを混合した各種混合セメント、並びに
石灰石粉末等を混合したフィラーセメント等がある。
【0017】本発明では、本発明のセメント混和材及び
セメント組成物に、砂や砂利等の骨材の他、減水剤、高
性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化
剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、高
分子エマルジョン及び凝結調整剤、並びにセメント急硬
材、ベントナイト等の粘土鉱物及びハイドロタルサイト
等のアニオン交換体等のうちの一種又は二種以上を、本
発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが
可能である。
【0018】本発明では、各材料の混合方法は特に限定
されるものではなく、それぞれの材料を施工時に混合し
ても良いし、予めその一部、或いは全部を混合しておい
ても差し支えない。混合装置としては、既存の如何なる
装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサー、オムニ
ミキサー、ヘンシェルミキサー、V型ミキサー及びナウ
ターミキサー等が挙げられる。
【0019】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明す
る。
【0020】実施例1 CaO原料、Al23原料、Fe23原料及びCaSO
4原料を配合し、混合粉砕した後、電気炉を用いて、1
350℃で3時間熱処理して表1に示すような組成のク
リンカーを合成し、ボールミルでブレーン比表面積3500
±300cm2/gに粉砕して、セメント混和材を調製した。セ
メント混和材を粉末X線回折法で同定したところ、遊離
石灰、C4AF及び無水セッコウを含有していた。セメ
ント混和材の化合物組成は、化学組成を基に計算により
算出した。化学組成はJIS R 5201に準じて求めた。セメ
ントと、セメント混和材からなるセメント組成物100
重量部中、セメント混和材を8重量部使用し、水/セメ
ント組成物比=50%、セメント組成物/砂比=1/3
のモルタルを調製し、膨張率の測定を行った。尚、比較
のため、遊離石灰、C4AF及び無水セッコウを別々に
合成した後、混合粉砕し、実験No.1-4と同じ化合物組成
となるように配合したセメント混和材についても、同様
の実験を行った。その結果を表1に示す。
【0021】<使用材料> CaO原料:試薬1級炭酸カルシウム。 Al23原料:試薬1級酸化アルミニウム。 Fe23原料:試薬1級酸化鉄。 CaSO4原料:試薬1級二水セッコウ。 遊離石灰:CaO原料を1350℃で3時間熱処理して
合成。 C4AF:CaO原料4モル、Al23原料1モル及び
Fe23原料1モルの割合で配合した原料を混合粉砕し
た後、1350℃で3時間熱処理して合成。 無水セッコウ:試薬1級の二水セッコウを1350℃で
3時間焼成して得た無水セッコウ。 砂:JIS標準砂(ISO679準拠)。 <測定方法> 膨張率:JIS A 6202(B)に準じて測定。
【0022】
【表1】
【0023】本発明のセメント混和材を配合したモルタ
ルは、比較例の遊離石灰、C4AF及び無水セッコウを
別々に合成し混合して調製したセメント混和材を配合し
たモルタルと比べ、優れた膨張性能を示した。
【0024】実施例2 CaO原料、Al23原料、Fe23原料、CaSO4
原料及びSiO2原料を配合し、混合粉砕した後、電気
炉を用いて、1350℃で熱処理して表2に示すように
珪酸率の異なる種々の組成のクリンカーを合成し、ボー
ルミルでブレーン比表面積3500±300cm2/gに粉砕して、
セメント混和材を調製したこと以外は、実施例1と同様
に行った。その結果を表2に示す。
【0025】<使用材料> SiO2原料:試薬1級二酸化珪素。
【0026】
【表2】
【0027】本発明のSiO2量5重量%以下、珪酸率
0.5未満のセメント混和材を配合したモルタルは、何
れも優れた膨張性能を示した。
【0028】実施例3 工業原料であるCaO原料、Al23原料、Fe23
料及びCaSO4原料を配合し、ロータリーキルンを用
いて、1400℃で焼成して表3に示すような組成のク
リンカーを合成し、ボールミルでブレーン比表面積3500
±300cm2/gに粉砕してセメント混和材を調製したこと以
外は、実施例1と同様に行った。化学組成を基に算出し
た化合物組成を表4に示す。比較のため、市販の膨張材
についても膨張率の測定を行った。その結果を表5に示
す。
【0029】<使用材料> CaO原料:新潟県青海鉱山産石灰石。 Al23原料:中国産ボーキサイト。 Fe23原料:鉄粉。 CaSO4原料:排煙脱硫二水セッコウ。 膨張材A:市販カルシウムサルホアルミネート系膨張
材、ブレーン比表面積2940cm2/g。 膨張材B:市販生石灰系膨張材、ブレーン比表面積3610
cm2/g。
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】
【表5】
【0033】本発明のセメント混和材を配合したモルタ
ルは、市販のカルシウムサルホアルミネート系膨張材及
び生石灰系膨張材を配合したモルタルと比べ、優れた膨
張性能を示した。
【0034】実施例4 実験No.3-1のセメント混和材を使用し、セメントと、セ
メント混和材からなるセメント組成物100重量部中の
セメント混和材の配合量を変えたこと以外は、実施例1
と同様に行った。その結果を表6に示す。
【0035】
【表6】
【0036】本発明のセメント混和材を配合したモルタ
ルは、本発明のセメント混和材を配合していないモルタ
ルと比べ、優れた膨張性能を示した。
【0037】
【発明の効果】本発明のセメント混和材を使用すること
により、優れた膨張性能を有するセメント組成物が得ら
れる。
フロントページの続き (72)発明者 坂井 悦郎 千葉県市川市東大和田2丁目5番1号503 (72)発明者 大門 正機 東京都町田市つくし野1丁目5番3号 Fターム(参考) 4G012 MA00 MB00 MB23 PA04 PB03 PB05 PB11 PC09 PC12

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 CaO原料、Al23原料、Fe23
    料及びCaSO4原料を熱処理して得られる物質であっ
    て、遊離石灰、カルシウムアルミノフェライト及び無水
    セッコウを含有してなるセメント混和材。
  2. 【請求項2】 珪酸率が0.5未満であることを特徴と
    する請求項1に記載のセメント混和材。
  3. 【請求項3】 セメントと、請求項1又は2に記載のセ
    メント混和材とを含有してなるセメント組成物。
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