JP4570934B2 - 感熱孔版印刷用マスター及びその製造方法 - Google Patents
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Description
(1)繊維の重なった部分とフィルムが接する部分に接着剤が大量に(鳥の水掻き状に)集積し、その部分のサーマルヘッドによる穿孔が行われにくくなり、インキの通過を妨げて、印刷ムラが発生する。
(2)繊維自体がインキの通過を妨げて、印刷ムラが発生する。
(3)多孔性薄葉紙などが高価であり、また、ラミネート加工によるロスも大きく、マスターが高価となる。
(4)印刷された紙が重なると、インキがその重なった紙の裏面に付着する、いわゆる裏移りが発生する。
これらの問題を解決するため、例えば、特許文献5では、孔版印刷機の版胴周壁部にフィルムが切断されることなく長尺状のまま巻装され、印刷時には版胴の回転と共にフィルム全体も回転させる方法が提案されている。しかし、この方法ではフィルム及び着排版ユニットが印刷時には版胴の回転と共に回転するため、回転のモーメントが大きくなる。また、重力中心の回転軸からの変異が大きく、これらを解決するため、印刷機は重く、大きくなってしまうという問題がある。
また、特許文献7には、W/O(油中水滴)型エマルションを主体とした流動体を熱可塑性樹脂フィルム上に塗布し、乾燥して多孔性樹脂膜を形成した感熱孔版印刷用マスターが提案されている。この提案の流動体は乾燥過程において水滴の部分が乾燥して孔を形成し、多孔性樹脂膜が熱可塑性樹脂フィルム上に形成される。
前記特許文献6及び7の感熱孔版印刷用マスターは、それまで知られたマスターに比べて優れており、普通の使用状態では殆ど問題は生じない。しかし、これらの感熱孔版印刷用マスターは和紙タイプの多孔性支持体を用いたマスターに比べて、曲げ剛度が弱く、また、湿度変化によるカールの発生を防ぐため、吸水率の低い樹脂を多孔性樹脂膜の材料として用いているので導電性が低いという欠点がある。このような低導電性は、印刷機内での搬送やドラムヘの巻装に不利な要因となる。実際に、低温低湿環境下において製版印刷を行った際、搬送時に発生した静電気のためにマスターが印刷機内壁面に貼りついて、スムーズな搬送、印刷ドラムヘの巻装が行えず、マスターがドラム上にシワのある状態で巻かれたり、又は巻装途中でジャムが発生し、印刷機が停止してしまうという問題がある。
<1> 熱可塑性樹脂フィルム上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜をこの順に有してなり、該多孔性繊維膜が導電性物質を含有することを特徴とする感熱孔版印刷用マスターである。該<1>に記載の感熱孔版印刷用マスターは、従来の熱可塑性樹脂フィルム上に多孔性繊維膜を積層したマスターと比較して、熱可塑性樹脂フィルム上に、多孔性樹脂膜と、多孔性繊維膜とをこの順に積層してなり、該多孔性繊維膜が導電性物質を含有するので、フィルム穿孔性やインキ通過性への影響が著しく小さく、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性繊維膜の間の多孔性樹脂膜が導電性物質のフィルムへの接触を防止すると共に、インキ通過量の均一化が図られる。また、従来の熱可塑性樹脂フィルム上に導電性物質を含む層を設けたマスターでは、サーマルヘッドによるフィルムの穿孔に悪影響を与えないようにするために、その層の厚みや導電性物質の量が制限されるが、多孔性繊維膜に導電性物質を含ませる場合には、サーマルヘッドによるフィルムの穿孔に悪影響を与えるおそれがないため、導電性物質を多く使用することができ、優れた帯電防止効果を発揮することができる。
<3> 導電性物質が、電子線硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂から選択される少なくとも1種を含有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターである。該<3>に記載の感熱孔版印刷用マスターにおいては、導電性物質が電子線硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂であり、塗工時には液体であるために塗布が容易であり、電子線や紫外線の照射により架橋し、固化するため、移動による帯電防止性能の低下がなく、経時安定性に優れる。また、電子線硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂は、固化することにより導電性物質自体の働きにより繊維の脱落防止が図られる。ここで、前記繊維の脱落とは、多孔性繊維膜を構成する繊維が多孔性繊維膜から脱落することを意味する。この繊維脱落が生じると、ロール状に巻き取ったマスターを再び巻きだす際にフィルム側に転移し、フィルム穿孔時に、サーマルヘッドの熱で軟化、カス固着となり、穿孔不良に結びつくことがある。
<11> 多孔性繊維膜上に少なくとも導電性物質を含む導電性物質塗布液を塗布する導電性物質塗布工程を含む前記<9>から<10>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法である。該<11>に記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法においては、導電性物質を多孔性繊維膜に容易に含有させることができ、生産性に優れる。
また、本発明のように、多孔性繊維膜のみに導電性物質を含有させた場合には、穿孔性やインキ通過性などの印刷品質へ、ほとんど影響を与えずに、帯電防止効果が得られる。更に、例え使用した帯電防止剤がサーマルヘッドに対する腐食性を有していたとしても、帯電防止剤が直接サーマルヘッドに接触することがないため、サーマルヘッドの腐食が起こらないというメリットがある。腐食性のある帯電防止剤をフィルム面に塗付する場合には、腐食の懸念から帯電防止剤の塗工量が制限されるが、本発明の方法ならばその心配がない。また、液体の帯電防止剤を用いる場合、フィルム面への塗付ならば、摩擦など、何らかの理由で一度、帯電防止剤が除去されてしまうと帯電防止性能は半永久的に失われてしまうが、多孔性繊維膜に含有させた場合には、一度除去されても多孔性繊維膜内部からの帯電防止剤染み出しにより、帯電防止性能が復活するということも期待できる。したがって、多孔性繊維膜に導電性物質を含ませる場合には、サーマルヘッドによるフィルムの穿孔に悪影響を与えるおそれがないために導電性物質を多く使用することができ、帯電防止に有利である。
<13> 導電性物質塗布液の25℃での粘度が2〜100cPである前記<9>から<12>のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法である。
本発明の感熱孔版印刷用マスターは、熱可塑性樹脂フィルム上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜をこの順に有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
ここで、図1は、本発明の感熱孔版印刷用マスターの一例を示す模式断面図であり、このマスターでは、熱可塑性樹脂フィルム1上に、樹脂部2と空隙部3とからなる多孔性樹脂膜、及び多孔性繊維膜4がこの順に積層されている。
前記熱可塑性樹脂フィルムとしては、材料、厚み、大きさ、形状などに特に制限はなく、感熱孔版印刷用マスターに通常使用されている公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。前記材料としては、熱可塑性樹脂が好適であり、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂フィルムとしては、二軸延伸した樹脂フィルムが特に好ましく、例えば、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルム、二軸延伸ポリエチレン樹脂フィルム、二軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムなどが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂フィルムの厚さとしては、0.5〜10μmが好ましく、1.0〜5.0μmがより好ましい。前記厚さが、0.5μm未満であると、薄すぎて多孔性樹脂層塗布液の塗布が困難となることがあり、10μmを超えると、サーマルヘッドでの穿孔が困難となることがある。
前記多孔性樹脂膜の構造は、不定形の棒状、球状、又は枝状に連結した(和紙のような短い構成単位が絡み合っているものではなく、印刷などで形成される単純な形状の組み合わせでもない)複雑な三次元構造を有するもの、いわゆる糸瓜に似た構造、ハニカム状構造、蜂の巣状構造などが好適に挙げられる。
前記フィラーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケイ酸マグネシウム、セピオライト、チタン酸カリウム、ウオラストナイト、ゾノライト、石膏繊維などの鉱物系針状フィラー;非酸化物系針状ウイスカ、複酸化物系ウイスカなどの人工鉱物系針状フィラー;マイカ、ガラスフレーク、タルクなどの板状フィラー;カーボンファイバー、ポリエステル繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維などの天然又は合成の繊維状フィラーなどが挙げられる。
前記顔料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアクリル酸メチル樹脂などからなる有機ポリマー粒子;カーボンブラック、酸化亜鉛、二酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカなどの無機顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記フィラーの添加量は、前記樹脂100質量部に対し5〜200質量部が好ましい。前記フィラーの添加量が、5質量部未満であると、カールが発生し易くなることがあり、200質量部を超えると、多孔性樹脂膜の強度が低下することがある。
前記多孔性繊維膜としては、材料、大きさ、構造などについては特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、前記材料としては、例えば、ガラス、セピオライト、各種金属などの鉱物繊維;羊毛、絹などの動物繊維;綿、マニラ麻、コウゾ、ミツマタ、パルプなどの天然繊維;スフ、レーヨンなどの再生繊維;ポリエステル、ポリビニルアルコール、アクリルなどの合成繊維;カーボンファイバーなどの半合成繊維;ウィスカ構造を有する無機繊維などの薄葉紙が挙げられる。これらの中でも、天然繊維を含むものが好適に挙げられる。
前記繊維状物質の直径(太さ)としては、20μm以下が好ましく、1〜10μmがより好ましい。前記直径が、1μm未満であると引張り強度が弱くなることがあり、20μmを超えるとインキ通過が妨げられて繊維による白抜け画像が生じることがある。
前記繊維状物質の長さとしては、0.1〜10mmが好ましく、1〜6mmがより好ましい。前記繊維状物質の長さが、0.1mm未満であると、引張り強度が弱くなることがあり、10mmを超えると、分散を均一に行うのが困難になることがある。
この場合、前記接着剤として溶剤型接着剤を使用すると多孔性樹脂膜が侵され、孔を閉塞してしまうため、少なくとも多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜とが積層される時点において溶剤はない方が好ましく、この点から、無溶剤型接着剤、水性又はエマルション型接着剤が好適に用いられる。
前記接着剤の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブレードコーティング法、リバースロールコーティング法、グラビアコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコーティング法、オフセットグラビアコーティング法、キスコーティング法、バーコーティング法などが好適に挙げられる。
前記接着強度が、1.4N/m未満であると、ハンドリング及び搬送時に多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜との膜剥離が発生し、シワの原因となるばかりでなく、耐刷時にマスターの伸び、ハガレ、破れといった問題を引き起こすことがある。なお、前記接着強度の上限はインキ通過が阻害されなければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記導電性物質塗布液を塗布し、電子線照射又は紫外線照射して硬化させた多孔性繊維膜はドライヤーなどにより乾燥する。該乾燥の温度としては40〜70℃が好ましい。前記乾燥の温度が、70℃を超えると、前記熱可塑性樹脂フィルムが収縮してしまうおそれがあり、40℃未満であると、前記熱可塑性樹脂フィルムの乾燥に時間がかかることがある。
該バインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子線硬化樹脂、又は紫外線硬化樹脂などのように、多孔性繊維膜への付与時には液体で、その後、電子線照射や紫外線照射などで固化するものが好ましい。前記電子線硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂としては、上述したものの中から目的応じて適宜選択することができる。
該イオン性高分子化合物としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソプレンスルホン酸共重合物ナトリウム塩、オレフィン・マレイン酸共重合物ナトリウム塩、アクリルスルホン酸ナトリウム塩などのアニオン系高分子化合物;4級アンモニウムイオン変性アクリル樹脂、4級アンモニウムイオン変性ウレタン樹脂などのカチオン系高分子化合物、などが挙げられる。これらの中でも、イソプレンスルホン酸共重合物ナトリウム塩、オレフィン・マレイン酸共重合物ナトリウム塩が、特に帯電防止効果が高い点で好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記付着量は、固形分で0.01〜1.0g/m2が好ましく、0.02〜0.5g/m2がより好ましい。
前記スティック防止層におけるスティック防止剤としては、特に制限はなく、従来の感熱孔版印刷用マスターで一般に使用されているものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、リン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。なお、前記スティック防止層には、静電気の発生を防止するため、帯電防止剤を添加することもできる。
本発明の感熱孔版印刷用マスターの製造方法は、多孔性樹脂膜形成工程と、多孔性繊維膜形成工程とを含んでなり、導電性物質塗布工程、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
前記多孔性樹脂膜形成工程は、熱可塑性樹脂フィルム上に、少なくとも樹脂を含む多孔性樹脂膜塗布液を塗布し、乾燥させて多孔性樹脂膜を形成する工程である。
前記多孔性樹脂膜塗布液は、少なくとも樹脂を含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなり、油中水型のものが好ましい。
前記多孔性繊維膜形成工程は、前記多孔性樹脂膜上に多孔性繊維膜を形成する工程である。
前記繊維状物質からなる多孔性繊維膜の形成方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、上述したように、短繊維を湿式抄紙した抄造紙であってもよいし、不織布や織物であってもよいし、スクリーン紗などであってもよく、生産性、コスト面等より抄造紙が好ましく用いられる。
前記導電性物質塗布工程は、前記多孔性繊維膜上に少なくとも導電性物質を含む導電性物質塗布液を塗布する工程である。
前記導電性物質としては、上述したように、電子線硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂の少なくともいずれかの樹脂、界面活性剤、導電性粉体、並びにイオン性高分子化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
一方、前記塗布液粘度が、100cPを超えると、塗工ロールと前記多孔性繊維膜との間のタックにより、前記多孔性繊維膜の繊維が引き抜かれ、塗工ロール上に蓄積し、塗布ムラの原因になるほか、蓄積した繊維が脱落し、多孔性繊維膜に付着すると、その部分が画像白抜けになることがある。また、塗工ロールと前記多孔性繊維膜との間のタックが強いと、塗工時にマスター又は前記多孔性繊維膜が引っ張られシワや塗布ムラが発生することがある。塗工ロールと前記多孔性繊維膜との間のタックを抑えるにはラインスピードを下げることが有効であるが、生産性が低下する。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
まず、タルク(日本タルク株式会社製、ミクロエースL−G)2.4質量部を酢酸エチル36.75質量部中に撹拌分散した後、ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製、エスレックKS1)3.2質量部を溶解した。該溶液にソルビタン脂肪酸エステル(日光ケミカルズ株式会社製、SO−15)0.1質量部、変性シリコーンオイル(信超化学工業株式会社製、KF6012)0.1質量部、及びアクリル系ポリマーO/W型エマルション(ジョンソンポリマー株式会社製、Joncryl−711)0.2質量部を撹拌して溶解した。この溶液を撹拌しながらヒドロキシエチルセルロース(HEC)1質量%水溶液(和光純薬工業株式会社製、ヒドロキシエチルセルロース使用)25質量部を滴下して、油中水型エマルションを作製した。この油中水型エマルションをグラビアロールを用いて厚さ2μmの二軸延伸ポリエステルフィルム上に塗布し、50℃で乾燥して、乾燥後付着量が2.0g/m2の多孔性樹脂膜を作製した。
導電性物質塗布液の粘度は、下記測定パターンで応力を上昇させていき、流動が安定したところの平均値を液粘度とした。
測定装置:Rheometrics社製のDSR−200
測定温度:25℃
センサー:coneplate、直径50mm〜0.02ラジアン
測定パターン:調温のため、2分間静置した後、3分間で応力を0.001Pa〜10Paまでlogモードで上昇させた。
導電性物質や樹脂などを塗布した多孔性繊維膜25cm×25cmと、塗布していない多孔性繊維膜25cm×25cmとの質量差を求め、g/m2に換算したものを前記不揮発分総塗布量とした。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、前記導電性物質塗布液としてポリオキシエチレンモノアクリレートの78質量%水溶液(25℃、粘度95cP)を用い、前記多孔性繊維膜への前記不揮発分塗布量を0.9g/m2とした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、前記導電性物質塗布液としてポリオキシエチレンモノアクリレートの65質量%水溶液(25℃、粘度50cP)を用い、前記多孔性繊維膜への前記不揮発分塗布量を0.3g/m2とした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、前記導電性物質塗布液としてポリオキシエチレンモノアクリレートの20質量%水溶液(25℃、粘度3cP)を用い、前記多孔性繊維膜への前記不揮発分塗布量を0.013g/m2とした以外は、実施例1と同様にして感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、前記導電性物質塗布液としてポリオキシエチレンモノアクリレートの15質量%水溶液(25℃、粘度1.8cP)を用い、前記多孔性繊維膜への前記不揮発分塗布量を0.009g/m2とした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、前記導電性物質塗布液としてのポリオキシエチレンモノアクリレートの82質量%水溶液(25℃、粘度115cP)を用い、前記多孔性繊維膜への前記不揮発分塗布量を1.5g/m2とした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、前記導電性物質塗布液としてのポリオキシエチレンモノアクリレートの8質量%水溶液(25℃、粘度1cP)を用い、前記多孔性繊維膜への前記不揮発分塗布量を0.005g/m2とした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、下記組成の導電性物質塗布液を用い、前記多孔性繊維膜への前記不揮発分総塗布量を0.15g/m2とした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
<導電性物質塗布液>
酸化スズ粉末(三菱マテリアル株式会社製、T−1)30質量部をポリウレタンアクリレートエマルション(荒川化学工業株式会社製、EM90、固形分濃度40質量%)50質量部、及び水20質量部と混合し、ボールミルで分散してなる導電性物質塗布液(固形分濃度50質量%、25℃、粘度30cP)を調製した。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、下記組成の導電性物質塗布液を用い、前記多孔性繊維膜への不揮発分総塗布量を0.3g/m2とした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
<導電性物質塗布液>
カチオン界面活性剤(日本油脂株式会社製、エレガン264A、固形分濃度35質量%)21.7質量部、ポリウレタンアクリレートエマルション(荒川化学工業株式会社製、EM90、固形分濃度40質量%)76質量部、及び水2.3質量部からなる導電性物質塗布液を調製した。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
実施例1において、下記組成の導電性物質塗布液を用い、前記多孔性繊維膜への前記不揮発分総塗布量を0.2g/m2とした以外は、実施例1と同様にして、感熱孔版印刷用マスターを作製した。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
<導電性物質塗布液>
イオン性高分子化合物として、アニオン系高分子化合物水溶液(JSR社製、K106、不揮発分濃度35質量%)を水で希釈し、不揮発分濃度が17質量%となるよう導電性物質塗布液を調製した。なお、K106中のアニオン系高分子化合物は、イソプレンスルホン酸共重合物ナトリウム塩である。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
ポリウレタンアクリレート樹脂(荒川化学工業株式会社製、ビームセット504H)70質量部、及びアクリル酸エステルモノマー(東亜合成株式会社製、アロニックスM−101)30質量部を約80℃で溶融混合を行い、電子線硬化性接着剤を調製した。これを80℃に加熱したロールコーターを用い付着量が0.4g/m2となるように多孔性繊維膜(繊度0.2デニールと1.1デニールの2種類のポリエステル繊維からなる抄造紙(坪量8g/m2、厚み25μm)に塗布した。この多孔性繊維膜の接着剤を塗った面と、前記実施例1の多孔性樹脂膜における多孔性樹脂膜側とが重なるようにラミネートし、5Mradの電子線を照射した。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
ポリウレタンアクリレート樹脂(荒川化学工業株式会社製、ビームセット504H)70質量部、及びアクリル酸エステルモノマー(東亜合成株式会社製、アロニックスM−101)30質量部を約80℃で溶融混合して、電子線硬化性接着剤を調製した。
得られた電子線硬化性接着剤を80℃に加熱したロールコーターを用いて付着量が0.4g/m2なるように多孔性繊維膜(繊度0.2デニールと1.1デニールの2種類のポリエステル繊維からなる抄造紙(坪量8g/m2、厚み25μm)に塗布した。この多孔性繊維膜の接着剤を塗った面と、多孔性樹脂膜の多孔性樹脂膜側とが重なるようにラミネートし、5Mradの電子線を照射した。
−感熱孔版印刷用マスターの作製−
電子線硬化性導電性物質としてのポリオキシエチレンモノアクリレートの65質量%水溶液(25℃、粘度50cP)を、多孔性繊維膜(繊度0.2デニールと1.1デニールの2種類のポリエステル繊維)からなる抄造紙(坪量8g/m2、厚み25μm)に25℃に加温したロールコーターを用いて導電性物質塗布液を塗布し、50℃で乾燥した。不揮発分塗布量は0.3g/m2であった(塗工速度は100m/min、塗工長は1000m)。なお、前記導電性物質塗布液の粘度及び前記不揮発分総塗布量を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
この電子線硬化性接着剤を80℃に加熱したロールコーターを用いて付着量が0.4g/m2となるように上記多孔性繊維膜の導電性物質を含む液を塗ったのと反対側に塗布し、この接着剤を塗った面を、厚さ2μmの二軸延伸ポリエステルフィルムとラミネートし、5Mradの電子線を照射した。
次に、フィルム面(多孔性繊維膜を積層したのと反対側の面)にバーコーターを用いてシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SF8422)0.5質量部、及びトルエン100質量部からなるスティック防止層塗布液を、乾燥後の付着量が0.05g/m2になるように塗布し、50℃で乾燥して感熱孔版印刷用マスターを作製した。
次に、作製した各感熱孔版印刷用マスターについて、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表2に示す。
23℃−65%RH環境下で、各感熱孔版印刷用マスターの多孔性繊維膜側の表面抵抗を測定した。測定装置はセンサー部が、「Hewlett−Packard 16008A Resistivity Cell」、本体が「Yokogawa−Hewlett−Packard 4329A High Resistance Meter」、test voltageは100voltsの設定とした。
各感熱孔版印刷用マスターをシート状態にて23℃−65RH%雰囲気中に4時間吊るし、調湿を行った上で測定した。
各感熱孔版印刷用マスターにおいて、導電性物質塗布液を多孔性繊維膜に塗布した後、ロールコーターの塗工ロール表面を観察し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
○:塗工ロール上に繊維がない。
○△:塗工ロール上に繊維が殆どない。
△:塗工ロール上に繊維が少量あるが実用上問題とならない。
×:実用上問題となるレベルの脱落の繊維が観られる。
各感熱孔版印刷用マスターにおいて、導電性物質塗布液を多孔性繊維膜に塗布した後、ロールコーターの塗工ロール表面を観察し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
○:塗工ロール上に汚れがない。
○△:塗工ロール状に汚れが殆どない。
△:塗工ロール上に汚れが少量あるが実用上問題とならない。
×:実用上問題となるレベルの汚れが観られる。
各感熱孔版印刷用マスターについて、10℃−20%RHの環境下で印刷機(株式会社リコー製、RicohVT3820)を用いて無製版搬送し、ドラムに巻きつけた際、スキューすることなくドラムにまっすぐにまかれるかどうかの試験を行い、下記基準で評価した。なお、マスターの帯電が大きいと搬送過程において静電気によるマスター同士の貼り付きによって不具合が起こる場合がある。
〔評価基準〕
◎:静電気によるマスターの貼り付きが全くなく、マスターがドラムに正常に巻きつけられた。
○:静電気によるマスターの貼り付きがなく、マスターがドラムに正常に巻きつけられた。
○△:静電気によるマスターの貼り付きが殆どなく、マスターがドラムに正常に巻きつけられた。
△:静電気によるマスターの貼り付きが若干観られるものの、マスターがドラムに正常に巻きつけられた。
×:静電気によるマスターの貼り付きが原因で、マスターがドラムに対して斜めに巻きつけられた。
各感熱孔版印刷用マスターを50℃にて1週間保存し、上記同様の搬送試験を行い、下記基準に基づき、保存後の搬送性を評価した。
〔評価基準〕
◎:搬送性に極めて優れている。
○:搬送性に劣化がない。
○△:搬送性に殆ど劣化がない。
△:搬送性にやや劣化は有るものの実用上問題がない。
×:搬送性に劣化が著しく有り、実用上問題となる。
穿孔及び印刷装置としてPRIPORT VT3820(株式会社リコー製:東芝社製サーマルヘッド搭載)を用い、各感熱孔版印刷用マスターに10cm×10cmのベタチャートによる製版及び印刷を行った。得られた印刷画像について、下記基準により印刷画像の白抜けの程度を評価した。
〔評価基準〕
○:印刷画像に白抜けがない。
○△:印刷画像に白抜けが殆どない。
△:印刷画像にやや白抜けが観られるが、実用上問題のないレベルである。
×:実用上問題となるレベルの白抜けが観られる。
*EM90:ポリウレタンアクリレートエマルション(荒川化学工業株式会社製、EM90、固形分濃度40質量%)
*264A:カチオン界面活性剤(日本油脂株式会社製、エレガン264A、固形分濃度35質量%)
*264−WAX:カチオン界面活性剤(日本油脂株式会社製、エレガン264−WAX、固形分濃度100質量%)
比較例1は、フィルム面に液体の導電性物質(低分子界面活性剤)を塗布しているため、経時安定性が低く、印刷画像に悪影響が出るほど多く塗布しても保存後は搬送不良が発生した。
比較例2は、フィルム面に固体の導電性物質(電子線硬化性樹脂)を塗布したためにサーマルヘッドによるフィルム穿孔に不良が発生し、印刷画像に白抜けが多い。
比較例3は、多孔性樹脂膜が存在しないため、多孔性繊維膜に導電性物質を塗布した影響が印刷画像に出易く、印刷画像に白抜けが多い。
2 多孔性樹脂膜樹脂部
3 多孔性樹脂膜空隙部
4 多孔性繊維膜
Claims (11)
- 熱可塑性樹脂フィルム上に多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜をこの順に有してなり、該多孔性繊維膜が導電性物質を含有し、該導電性物質がポリオキシエチレンモノアクリレートであることを特徴とする感熱孔版印刷用マスター。
- 導電性物質が、帯電防止剤を含有する請求項1に記載の感熱孔版印刷用マスター。
- 導電性物質が、導電性粉体を含有する請求項1から2のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
- 導電性物質が、イオン性高分子化合物を含有する請求項1から3のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
- 多孔性繊維膜に導電性物質が固体状態で付着している請求項1から4のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
- 23℃−65%RH環境下での多孔性繊維膜側の表面抵抗値が1×10 6 〜1×10 12 Ωである請求項1から5のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスター。
- 熱可塑性樹脂フィルム上に、少なくとも樹脂を含む多孔性樹脂膜塗布液を塗布し、乾燥させて多孔性樹脂膜を形成する多孔性樹脂膜形成工程と、該多孔性樹脂膜上に多孔性繊維膜を形成する多孔性繊維膜形成工程と、該多孔性繊維膜に少なくとも導電性物質を含む導電性物質塗布液を塗布する導電性物質塗布工程とを含み、該導電性物質がポリオキシエチレンモノアクリレートであることを特徴とする感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
- 多孔性樹脂膜の乾燥後付着量は0.3〜30g/m 2 である請求項7に記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
- 導電性物質が、電子線硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂の少なくともいずれかの樹脂、界面活性剤、導電性粉体、並びにイオン性高分子化合物から選択される少なくとも1種を含有する請求項7から8のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
- 導電性物質塗布液の25℃での粘度が2〜100cPである請求項7から9のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
- 導電性物質塗布液の不揮発分総塗布量が0.01〜1.0g/m 2 である請求項7から10のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
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