JP4606615B2 - 感熱孔版印刷用マスターの製造方法 - Google Patents

感熱孔版印刷用マスターの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フラッシュバルブなどによる閃光照射や赤外線照射、レーザー光線等のパルス的照射、あるいはサーマルヘッド等によって穿孔製版される感熱孔版印刷用マスター及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、熱可塑性フィルムにインキ通過性の支持体として、天然繊維、合成繊維の単独又は混抄した多孔性薄葉紙を接着剤で貼り合わせた感熱孔版印刷用マスターが用いられている。しかし、こうした繊維から成る多孔性薄葉紙を支持体として用いた感熱孔版印刷用マスターには、次のような問題点がある。
(1)接着剤を用い多孔性薄葉紙とフィルムを貼り合わせることにより、接着剤が多孔性薄葉紙の繊維間に鳥の水掻きのように集積し、その部分においてサーマルヘッドによる穿孔が行われにくくなり、インキの通過が妨げられ印刷ムラが発生しやすくなる。
(2)多孔性薄葉紙の繊維自体がインキの通過を妨げ、印刷ムラが発生しやすくなる。
(3)多孔性薄葉紙の繊維目によりフィルム面の平滑性が低下しサーマルヘッドとの密着が悪く未穿孔部ができるため印刷ムラが発生する。
【0003】
こうした問題を改善するためにいくつかの提案がなされているが、いまだ満足するものは得られていない。例えば、特開平3−193445号公報には、多孔性支持体として、繊度1デニール以下の合成繊維から成る薄葉紙を用いることが提案されているが前記の問題解決には十分とはいえない。
【0004】
特開昭62−198459号公報には、熱可塑性樹脂フィルムに、実質的に閉じた形状の放射線硬化型樹脂パターンをグラビア、オフセット、フレキソ等の印刷法により多孔性支持体を形成する方法が提案されている。しかし、この印刷法では樹脂パターンの線幅を50μm以下にすることは困難であり、印刷部が穿孔できず、印刷ムラとなる。
【0005】
また、特開平3−240596号公報には、水分散性ポリマーとコロイダルシリカから成る分散液を熱可塑性樹脂フィルムの表面に塗布、乾燥し、多孔性支持体を設け、粘度の低いインキジェット用インキで印刷する方法が提案されている。しかし、この方法では多孔層の開孔径が小さく、従来用いられている孔版印刷用インキではインキの通過が悪く、十分な印刷濃度が得られない。
【0006】
一方、特開昭54−33117号公報には、多孔性支持体を用いない実質的に熱可塑性樹脂フィルムのみから成る感熱孔版印刷用マスターが提案されている。この方法では熱収縮率が高く、フィルム厚み3μm以下のフィルムについてはサーマルヘッドによる穿孔性も良好で印刷品質は優れているが、コシが弱く印刷機での搬送ができない問題が有る。搬送性を良くするため厚いフィルムを使用するとサーマルヘッドによる穿孔性が低下し、印刷ムラが発生する。
【0007】
本発明者等は先に熱可塑性樹脂フィルムの片面に多孔性樹脂膜を設けた感熱孔版印刷用マスターを提案した(特開平8−332785号公報、特開平10−24667号公報)。しかしながら、熱可塑性樹脂フィルム上に流動体を塗布、乾燥して形成される多孔性樹脂膜は、従来のフィルムとの貼り合わせに用いられてきた薄葉紙よりも、強度が低く、マスターの耐刷性が不足しやすいという問題が有った。特に、良好な穿孔感度を得るために、多孔性樹脂膜の空隙率を高く、幹を細くした場合には、多孔性樹脂膜が脆くなり、印刷中のマスターの伸び、多孔性樹脂膜のつぶれや崩れによる印刷濃度の低下という問題が有った。
【0008】
また、この多孔性樹脂膜の強度不足を補うために、本発明者等は特開平10−147075号公報、特開平10−236011号公報にて、熱可塑性樹脂フィルムの一方の面上に多孔性樹脂膜を有し、更にその表面に繊維状物質からなる多孔性繊維膜を積層してなる感熱孔版印刷用マスターを提案しており、印刷時のマスターの伸びを改善しているが、多孔性樹脂膜の強度が低い場合にはマスターが多孔性繊維膜の凹凸に習いやすく、フィルム面の平滑性が低下し、穿孔感度を低下させるため、多孔性樹脂膜の強化は必須である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術の実情に鑑みてなされたものであって、熱可塑性樹脂フィルムの一方の面上に多孔性樹脂膜を有する感熱孔版印刷用マスターにおいて、裏移りやにじみなどの印刷品質画像と耐刷性の双方に優れた感熱孔版印刷用マスター及びその製造方法を提供することをその課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、下記の感熱孔版印刷用マスター及びその製造方法が提供される。
(1)熱可塑性樹脂フィルム上に、流動体を塗布、乾燥して成る多孔性樹脂膜を少なくとも有する感熱孔版印刷用マスターにおいて、多孔性樹脂膜の空隙孔を円とみなして真円換算した場合、フィルムの無い側から観察した多孔性樹枝膜の平均孔径(DB)がフィルム側から観察した多孔性樹枝膜の平均孔径(DF)よりも大きいことを特徴とする感熱孔版印刷用マスター。
(2)多孔性樹脂膜の空隙孔を円とみなして真円換算した場合、フィルムの無い側から観察した平均孔径(DB)が、フィルム側から観察した平均孔径(DF)の1.2〜4.0倍であることを特徴する上記(1)の感熱孔版印刷用マスター。
(3)フィルムの無い側から観察した多孔性樹脂膜の空隙面積率(PB)及びフィルム側から観察した多孔性樹脂膜の空隙面積率(PF)が、ともに30〜90%である上記(1)〜(2)の感熱孔版印刷用マスター。
(4)熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜との間に機能性薄層を有することを特徴とする上記(1)〜(3)の感熱孔版印刷用マスター。
(5)熱可塑性樹脂フィルムの一方の面上に設けた多孔性樹脂膜の表面に、繊維状物質からなる多孔性繊維膜を積層してなることを特徴とする上記(1)〜(4)の感熱孔版印刷用マスター。
(6)熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜の接着強度が1.4N/m以上であることを特徴とする上記(1)〜(5)の感熱孔版印刷用マスター。
(7)熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜の接着強度、及び多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜の接着強度がそれぞれ1.4N/m以上であることを特徴とする上記(5)の感熱孔版印刷用マスター。
(8)多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜がポリウレタン系接着剤を主成分とする接着剤を用いて接着されていることを特徴とする上記(5)の感熱孔版印刷用マスター。
(9)合成樹脂を溶解度の異なる複数の溶剤に混合して可溶化状態とした流動体を、熱可塑性樹脂フィルム上に一定厚みで塗布し乾燥させることにより、上記(1)の感熱孔版印刷用マスターを製造することを特徴とする感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
(10)溶解した合成樹脂を含む油中水型乳化液を、熱可塑性樹脂フィルム上に一定厚みで塗布し乾燥させることにより、上記(1)の感熱孔版印刷用マスターを製造することを特徴とする感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の感熱孔版印刷用マスターは、熱可塑性樹脂フィルム上に、流動体を塗布、乾燥して成る多孔性樹脂膜を少なくとも有する感熱孔版印刷用マスターにおいて、多孔性樹脂膜の空隙孔を円とみなして真円換算した場合、フィルムの無い側から観察した多孔性樹脂膜の平均孔径(DB)がフィルム側から観察した多孔性樹枝膜の平均孔径(DF)よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
裏移りやにじみの少ない印刷画像を得るためには、多孔性樹脂膜の幹を細くし、小さい孔を多数形成させることが好ましい。必要なインキ転移量を確保できる範囲で、孔が小さく、数が多ければ、印刷用紙上へのインキ転移量がより均一になり、インキの盛り高さが低くなるので、裏移りやにじみ、更にはベタ埋りにも有利である。しかし、多孔性樹脂膜の幹を細くし、小さい孔を多数設けた場合には膜強度が不足しやすく、印刷の最中に、マスターが伸びやすくなってしまう。
【0013】
そこで本発明者は、多孔性樹脂膜のフィルムに近い部分の空隙を小さく、幹を細くし、その反対側のフィルムの無い側の空隙を大きく、幹を太くしたマスターを開発した。フィルムの無い側の幹が太く、強度が高いので耐刷性能が高く、その一方でフィルム側は幹が細く、十分にインキ通過量を制御することができる。印刷時にはフィルムの無い側からインキが入り、フィルム方向に進み、予めフィルムに設けた穿孔部から印刷用紙に転移する。このとき、多孔性樹脂膜のフィルムの無い側の大きい孔から入ったインキが紙に転移する前に、フィルム側の目の細かい部分で拡散される。その結果、転移した瞬間の紙へのインキ盛り高さが低くなり、裏移りやにじみの抑制に効果が有る。
【0014】
本発明では、通常、平均孔径を小さくすると幹も細くなり、幹の太さは平均孔経とほぼ比例関係にある。
多孔性樹脂膜の空隙孔を円とみなして真円換算した場合、フィルムの無い側から観察した多孔性樹脂膜の平均孔径(DB)がフィルム側から観察した多孔性樹脂膜の平均孔径(DF)の1.2〜4.0倍である場合に、優れた印刷品質画像と耐刷性を両立させることができ、前記課題を解決した感熱孔版印刷用マスターが得られることを見出し、本発明に到達することができた。
前記DBとDFの比が1.2倍未満の場合には効果が小さく、従来のマスターに比べて明確な効果を得ることが難しい。逆に4.0を超える場合にはインキ通過性が不足したり、印刷画像に白抜けが出たりすることがある。
なお、本明細書中において「幹」とは、多孔性樹脂により膜中に形成される柱状部分を指す。
【0015】
また、本発明では、フィルム側から観察した多孔性樹脂膜の空隙面積率(PF)及びフィルムの無い側から観察した多孔性樹脂膜の空隙面積率(PB)が共に30〜90%であることが好ましい。どちらか一方でも30%未満である場合にはインキ通適性が不足しやすく、どちらか一方でも90%を超えた場合には膜強度が不足し、印刷中に多孔性樹脂膜が潰れ、印刷画像濃度の低下が起こりやすい。
なお、本明細書中において「空隙面積率」とは、測定した多孔性樹脂膜の面積範囲におけるそれぞれの空隙部面積の合計の割合であり、空隙率に代わる特性値となるものである。
【0016】
フィルム
本発明における熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン又はその共重合体など従来公知のものが用いられるが、穿孔感度の点からポリエステルフィルムが特に好ましく用いられる。ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルとしては、好ましくはポリエチレンテレフタレート、エチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートとの共重合体、ヘキサメチレンテレフタレートとシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの共重合体等を挙げることができる。穿孔感度を向上するために、特に好ましくは、エチレンテレフタレートとエチレンイソフタレートとの共重合体、ヘキサメチレンテレフタレートとシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの共重合体等を挙げることができる。
【0017】
本発明における熱可塑性樹脂フィルムには、必要に応じて、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤あるいはポリシロキサン等の消泡剤等を配合することができる。
さらには必要に応じて易滑性を付与することもできる。易滑性付与方法としては特に制限はないが、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、湿式あるいは乾式シリカなどの無機粒子、アクリル酸類、スチレン等を構成成分とする有機粒子等を配合する方法、内部粒子による方法、界面活性剤を塗布する方法等がある。
【0018】
本発明における熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、通常、好ましくは0.1〜5.0μmであり、さらに好ましくは0.1〜3.0μmである。厚さが5.0μmを超えると穿孔性を低下する場合があり、0.1μmより薄いと製膜安定性が悪化したり、耐刷性が低下する場合がある。
【0019】
機能性薄層
本発明で言う機能性薄層とは、例えば以下の機能の少なくとも1つを有する機能を有する薄層をいう。
1.熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜との接着性を向上する機能。
2.カールを改善する機能。
3.マスターの剛度を向上させる機能。
4.マスターをサーマルヘッドにより穿孔する際、穿孔感度を阻害しないか、更には穿孔性を改善する機能。
5.フィルムの強度を向上する機能。
【0020】
機能薄層を構成する樹脂材料としては、例えばポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー等のようなビニル系樹脂、ポリブチレン、ナイロン等のポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、これらの共重合体、混合物、変性体などが用いられる。
【0021】
機能性薄層の材料、乾燥後の厚さは、実際のところいくつかの実験で決定する。フィルムとして2軸延伸したポリエステル、多孔性樹脂膜としてブチラール樹脂を用いた場合、薄層としてはポリエステル、ポリオールとイソシアネートの反応生成物、イソシアネート重合体などが好適に用いることができる。
【0022】
さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、各種フィラー、帯電防止剤、スティック防止剤、界面活性剤、防腐剤、消泡剤、可塑剤、改質剤などを併用することができる。
【0023】
また、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜との接着性を改善するために、ポリイソシアネートを併用することが好ましい。特に好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタン樹脂とポリイソシアネートを併用することが好ましい。サーマルヘッドでの穿孔性を改善するためには軟化点が40〜150℃のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタン樹脂とイソシアネートを併用すると良い。ここでOH基/NCO基のモル比は1/0.1〜1/20であるが、必要とする特性に応じて適宜選択すれば良い。
さらに、機能性薄層の軟化点を低下させるには軟化点の低い樹脂を使用しても、可塑剤等を添加しても良い。
【0024】
機能性薄層の乾燥後の厚さは0.01〜2.0μmが好ましく、さらには0.1〜1.0μmがより好ましい。0.01μmより薄いと接着性、コシ、カールに対する改善効果が小さく、2.0μmを超えると熱穿孔感度に悪影響を及ぼす。
【0025】
界面薄層
多孔性樹脂膜はフィルムとの界面に空隙を持たない薄層を有する場合があるが、本発明ではこの薄層の有無は問わず、多孔性樹脂膜の孔径を測定するものとする。多孔性樹脂膜とフィルムの間に機能性薄膜が存在する場合にも、同様に多孔性樹脂膜の孔径を測定する。
光学顕微鏡で観察すると、特にフィルム側から観察した場合には、顕微鏡の被写界深度の関係でマスターの穿孔感度に直接影響を与えない部分まで視界に入ってくる場合があるが、本発明では多孔性樹脂膜の孔径は表面に見える孔径での測定とする。
【0026】
多孔性樹脂膜
本発明における多孔性樹脂膜は、膜の内部及び表面に多数の空隙を持つ構造を有するものであれば良く、該空隙がインキの通過性の点から多孔性樹脂膜内において厚さ方向に連続構造であるものが望ましい。
本発明において、多孔性樹脂膜の平均孔径は一般に2〜50μm、望ましくは5〜30μmである。平均孔径が2μmに満たない場合には、インキ通過性が悪い。そのため、十分なインキ通過量を得るために低粘度インキを用いれば、画像にじみや印刷中に印刷ドラムの側部や巻装されているマスターの後端から印刷インキがしみ出す現象が発生する。一方、平均孔径が50μmを超える場合には、多孔性樹脂膜によるインキの抑制効果が低くなり、印刷時に印刷ドラムとフィルムの間のインキが過剰に押し出され、裏汚れやにじみ等の不具合が発生する。即ち、平均孔径は小さすぎても大きすぎても良好な印刷品質が得られない。
特に、多孔性樹脂膜内の空隙の平均孔径が20μm以下である場合、多孔性樹脂膜層が厚い程印刷インキが通りにくくなるので、この層の厚みによってインキの印刷用紙への転写量を制御することができる。そして、層の厚さが不均一であると印刷ムラを生じることがあるので、厚みは均一であることが望ましい。
【0027】
本発明の多孔性樹脂膜の厚みは、2〜100μm、好ましくは5〜50μmである。2μmに満たない場合は、サーマルヘッドによる穿孔後に穿孔部の背後に多孔性樹脂膜が残りにくく、インキ転写量が制御されずに印刷物の裏汚れが発生しやすい。また、多孔性樹脂膜のインキ転写量抑制効果は膜が厚いほど大きく、印刷時の紙へのインキ転写量は多孔性樹脂膜の厚みによって調節できる。
【0028】
多孔性樹脂膜の密度は、通常0.01〜1g/cm3で、好ましくは0.1〜0.7g/cm3である。密度が0.01g/cm3未満だと膜の強度が不足し、また膜自体も壊れやすい。0.7g/cm3を超えると印刷時のインキの通過性が悪くなる。多孔性樹脂膜の付着量は、0.1〜35g/m2、好ましくは0.5〜25g/m2、特に好ましくは1〜11g/m2である。0.1g/m2未満ではインキ転写量の制御が困難となり、逆に35g/m2を超えるとインキの通過を妨げて画像を悪くする。
【0029】
多孔性樹脂膜を構成する樹脂材料としては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー等のようなビニル系樹脂、ポリブチレン、ナイロン等のポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、(メタ)アクリル酸エステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、アセチルプロピルセルロース等のセルロース誘導体等が挙げられる。
前記の各樹脂は2種以上を混合して用いても良い。
【0030】
多孔性樹脂膜の形成、強度、孔径の大きさ等を調節するために、多孔性樹脂膜中に必要に応じてフィラーなどの添加剤を添加することが望ましい。ここにおいてフィラーとは顔料、粉体や繊維状物質も含まれる概念である。その中で特に針状のフィラーが好ましい。その具体例としては、ケイ酸マグネシウム、セピオライト、チタン酸カリウム、ウオラストナイト、ゾノトライト、石膏繊維等の鉱物系針状フィラー、非酸化物物系針状ウイスカ、酸化物系ウイスカ、複酸化物系ウイスカ等の人工鉱物系針状フィラー、マイカ、ガラスフレーク、タルク等の板状フィラーが挙げられる。
顔料としては、無機のみならず有機の顔料、あるいはポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸メチル等の有機ポリマー粒子そして酸化亜鉛、二酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカを用いることができる。
これら添加剤の添加量としては好ましくは樹脂に対して5〜200%である。
5%未満では添加剤を加えることによる曲げ剛度が高くならない。逆に200%を超えるとフィルムとの接着性が悪くなる。
【0031】
本発明の多孔性樹脂膜には、本発明の効果を阻害しない範囲内で帯電防止剤、スティック防止剤、界面活性剤、防腐剤、消泡剤などを併用することができる。
【0032】
析出法
次に、感熱孔版印刷用マスターの多孔性樹脂膜の形成方法について説明する。
第1の多孔性樹脂膜の形成方法は、互いに良く溶け合う樹脂の良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中に溶解及び/又は分散して得た塗工液を塗布し乾燥過程で多孔質膜を形成するものである。このとき、良溶媒は相対的に貧溶媒より低温で蒸発しやすい組み合わせが必要である。良溶媒と貧溶媒をそれぞれ一種ずつ用いる場合には、良溶媒の沸点は相対的に貧溶媒の沸点より低くなければならない。良溶媒と貧溶媒の選定は任意であるが、一般には沸点差が15〜40℃である場合に所望の特性を持つ多孔性樹脂膜が形成されやすい。沸点差が10℃未満の場合には、両溶媒の蒸発時間差が小さく、形成される膜が多孔性構造になりにくい。貧溶媒の沸点が高すぎる場合には、乾燥に時間がかかり生産性に劣るため、貧溶媒の沸点は150℃以下であることが望ましい。
【0033】
塗布液中の樹脂濃度は使用する材料によって異なるが5〜30%(重量基準)である。5%未満では開口径が大きくなり過ぎたり、多孔性樹脂膜の厚みのムラが生じたりしやすい。逆に、30%を超えると多孔性樹脂膜が形成されにくく、あるいは形成されても孔径が小さくなり所望の特性は得られにくい。
【0034】
多孔性樹脂膜の平均孔径の大きさは雰囲気中の貧溶媒の影響を受け、一般にその良溶媒に対する割合が高いほど凝結量が多くなり、平均孔径は大きくなる。貧溶媒の添加比率は樹脂、溶媒により異なるので実験により適宜決定する必要がある。一般的に、貧溶媒の添加量が多くなるに従い多孔質樹脂膜の孔径が大きくなる。貧溶媒の添加量が多すぎると樹脂が析出し塗布液が不安定になる。
【0035】
多孔性樹脂膜のフィルム側から観察した孔径とフィルムの無い側から観察した孔径の比率は以下のようにして制御することができる。
多孔性樹脂膜形成塗布液の乾燥時にフィルム側を暖めると、フィルム側の空隙の成長が遅れ、フィルム側から遠い多孔性樹脂膜の孔径が相対的に大きくなり、また、多孔性樹脂膜形成塗布液の乾燥時間を短くしても、フィルムに近い側の空隙の成長が進みにくく、フィルム側から遠い多孔性樹脂膜の孔径が相対的に大きくなる。また、塗布液の粘度が高い場合にもフィルム側から遠い多孔性樹脂膜の空隙が大きくなる傾向がある。
塗布液の乾燥時間は、乾燥時の雰囲気温度、風の吹きつけ量などで制御することができ、また、塗布液の粘度は固形分濃度、樹脂の分子量など、処方で決定される。
空隙孔径は貧溶媒量を多くすると大きくなる傾向がある。
また、空隙面積率は塗布液の固形分濃度を下げると高くなる傾向がある。
【0036】
エマルション法
第2の多孔性樹脂膜の形成方法としては、多孔性樹脂膜を形成する樹脂の良溶媒と貧溶媒が互いに良く混ざり合わない場合に用いられ、W/O型エマルションを主体とする流動体を薄層上に塗布、乾燥して形成されるものであり(例えば、特開平11−235885号公報)、主として水の部分が乾燥後インクが通過する孔となり、溶剤中の樹脂(フィラー、乳化剤等の添加物が含まれていてもよい)が構造体となる方法である。この方法においても多孔性樹脂膜の形成、強度、孔径の大きさ、コシ等を調節するために、多孔性樹脂膜中に必要に応じて、中空フィラーに加えて、前記フィラーなどの添加剤を添加することができる。その中で特に針状、板状、もしくは繊維状のフィラーが好ましい。
【0037】
W/O型エマルションの形成には比較的親油性の強い、HLB(Hydrophiric-Lyophiric Balance)が4〜6の界面活性剤が有効であるが、水層にもHLBが8〜20の界面活性剤を使用すると、より安定で均一なW/Oエマルションが得られる。高分子界面活性剤の使用も、より安定で均一なエマルションを得る方法の一つである。また水系にはポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の増粘剤の添加がエマルションの安定化に有効である。
【0038】
多孔性樹脂膜のフィルム側から観察した孔径とフィルムの無い側から観察した孔径の比率は以下のようにして制御することができる。
多孔性樹脂膜形成塗布液の乾燥時にフィルム側を暖めると、フィルム側の空隙の成長が遅れ、フィルム側から遠い多孔性樹脂膜の孔径が相対的に大きくなる。
また、W/Oエマルションでは粒径の大きい水相が沈降する特徴を有するので、孔径を大きくしたい側を下にして乾燥すれば良い。
前記の現象は、多孔性樹脂膜形成塗布液の粘度が低い場合、エマルションの安定性が低い場合などにより顕著になる傾向がある。これは、塗布液の粘度が低い場合には水相の移動が容易になり、エマルションの安定性が低い場合にはエマルション中で水相の癒合が起こりやすく、癒合して粒径の大きくなった水相が沈降しやすい結果、フィルム側から観察した孔径がフィルムの無い側から観察した孔径に比べて大きくなりやすい。
塗布液の粘度は固形分濃度、樹脂の分子量、水相と油相の比率など、処方で決定される。また、塗布液の安定性は乳化方法の他、処方、特に界面活性剤の種類と量で制御できる。
空隙孔径は水相量を多くすると大きくなる傾向がある。
また、空隙面積率は塗布液の固形分濃度を下げると高くなる傾向がある。
ただし、本発明の多孔性樹脂膜の形成方法は上記に例示した方法に限定されるものではない。
【0039】
塗工法
本発明の多孔性樹脂膜形成用塗布液の熱可塑性樹脂フィルムへの塗布方式としては、ブレード、トランスファーロール、ワイヤーバー、リバースロール、グラビア、ダイ等の従来一般的に用いられている塗布方式が使用でき、特に限定されるものではない。
【0040】
多孔性繊維膜
本発明のマスターを使用した印刷で印刷画像濃度を安定化させるには、多孔性樹脂膜の空隙を小さくしたり、空隙率を下げたりすると効果があるが、それではマスターのインキ通過性が悪くなり、印刷画像濃度が低くなってしまう。そこで、多孔性樹脂膜の付着量を少なくすると多孔性樹脂膜の厚みが小さくなって印刷中につぶれ難くなり印刷濃度の変化が小さくなる。ただし、このままではマスターの搬送性や耐刷性に問題が起こる恐れがあるため、多孔性樹脂膜に多孔性繊維膜を積層させると良い。
多孔性繊維膜を積層させたマスターは高インキ通過性と印刷濃度安定性を両立する手段ともなりうる。
【0041】
本発明における多孔性繊維膜としては、▲1▼ガラス、セピオライト、各種金属などの鉱物繊維、▲2▼羊毛、絹などの動物繊維、▲3▼綿、マニラ麻、コウゾ、ミツマタ、パルプ等の天然繊維、▲4▼スフ、レーヨンなどの再生繊維、▲5▼ポリエステル、ポリビニルアルコール、アクリルなどの合成繊維、▲6▼カーボンファイバなどの半合成繊維、▲7▼ウィスカ構造を有する無機繊維などの薄葉紙が挙げられる。
【0042】
前記繊維状物質の太さは、熱可塑性樹脂フィルムの穿孔直径、フィルムの厚さなどにより適当なものを選択する必要があるが、直径20μm以下、好ましくは1〜10μmである。直径が1μmより小さいと引張り強度が弱く、20μmより大きいとインキ通過が妨げられて、画像にいわゆる繊維による白抜けが現われたりする。また繊維状物質の長さは0.1〜10mm程度が好ましく、更に好ましくは1〜6mm程度である。0.1mmより短いと引張り強度が弱くなり、10mmより長いと分散が均一に行い難くなる。
【0043】
本発明における多孔性繊維層の坪量は、通常好ましくは3〜20g/m2、更に好ましくは5〜15g/m2である。坪量が20g/m2を超えると、インキの通過性が低下して画像鮮明性が低下する。また坪量が3g/m2より少ないと支持体として十分な強度を得られない場合がある。
【0044】
本発明における繊維状物質からなる多孔性繊維層は、短繊維を抄紙した抄造紙であっても良いし、不織布や織物であっても良いし、スクリーン紗などであっても良いが、生産性、コスト面等より抄造紙が好ましく用いられる。
【0045】
本発明の感熱孔版印刷用マスターの熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜の接着強度、及び、多孔性繊維膜を設けた場合には、多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜の接着強度は、それぞれ1.4N/m以上であることが望ましく、更に好ましくはそれぞれ2.8N/m以上である。接着強度が1.4N/mより小さいと、ハンドリング及び搬送時に剥離が発生し、シワの原因となるばかりでなく、耐刷時に伸び、ハガレ、破れといった問題も引起こす。接着強度の上限はインキ通過が阻害されなければ特に限定されるものではない。
【0046】
フィルムと多孔性樹脂膜の接着強度は機能性薄層の有無、ある場合にはその種類や量、多孔性樹脂膜の成分、多孔性樹脂膜の空隙率を含めた形状などの影響を受ける。
多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜の接着強度は接着剤の種類や量、多孔性樹脂膜の成分、多孔性樹脂膜の空隙率を含めた形状などの影響を受ける。
【0047】
本発明で、多孔性繊維膜をラミネートする場合に用いる接着剤としては、インキ通過性の面より多孔性樹脂膜の孔を塞がないよう高粘度の状態のものが良く、好ましくは接着剤が完全に硬化するまでの粘度が100cps以上であり、更には300cps以上が好ましい。
【0048】
本発明によれば、多孔性繊維層を貼り合わせる場合の感熱孔版印刷用マスターの製造方法としては、熱可塑性樹脂フィルムの一方の面上に多孔性樹脂膜を形成するための塗布液を塗布し、少なくとも該多孔性樹脂膜の最外表層が乾燥・皮膜化した後に、接着剤が塗布された多孔性繊維層と貼り合せることが望ましい。多孔性樹脂膜が形成される前に多孔性繊維膜を積層すると、多孔性樹脂膜の形成を阻害し望ましい多孔性樹脂膜が得られない。また接着剤は多孔性樹脂膜の孔を閉塞する恐れが有るため、多孔性繊維膜に塗布した方が望ましい。
【0049】
本発明の目的であるインキ通過性の優れる多孔性樹脂膜を形成するためには、熱可塑性の樹脂が好ましく用いられる。この場合、接着剤として溶剤型接着剤を使用すると多孔性樹脂膜が侵され孔を閉塞してしまうため、少なくとも多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜とが積層される時点において溶剤は無い方が好ましく、この面より無溶剤型接着剤、水性・エマルション型接着剤が用いられる。
【0050】
本発明の接着強度を得るため及び上記条件を満たすために、ポリウレタン系接着剤が用いられる。本発明のポリウレタン系接着剤としては、低付着量にて所望の接着強度が得られる無溶剤型ポリウレタン接着剤が用いられる。また多孔性繊維膜としては安価な天然繊維を含むものが好ましく用いられるので、水性・エマルション型ポリウレタン接着剤では塗工時、多孔性繊維層の伸縮が発生し、カール等を悪化させるという面からも無溶剤型ポリウレタン接着剤が用いられる。
【0051】
無溶剤型ポリウレタン接着剤としては、両末端に水酸基を有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等のポリオール成分とイソシアネート成分の反応により得られる一液湿気硬化型のウレタンプレポリマーや、ポリオール成分とイソシアネート成分に分かれた二液硬化型の接着剤が挙げられるが、特に限定されるものではない。イソシアネート成分としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、2,4−ジイソシアネート−1−メチルシクロヘキサン、2,6−ジイソシアネート−1−メチルシクロヘキサン、ジイソシアネートシクロブタン、テトラメチレンジイソシアネート、o−、m−、及びp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサヒドロメタキシリデンジイソシアネート(HXDI)、及びリジンジイソシアネートアルキルエステル(該アルキルエステルのアルキル部分は1〜6個の炭素原子を有すことが望ましい)等のような脂肪族又は脂環式ジイソシアネート:トルイレン−2,4−ジイソシアネート(TD1)、トルイレン−2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、m−及びp−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ナフタリン1,5−ジイソシアネート、ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート及びジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート:並びにこれらの混合物が用いられる。
【0052】
接着剤の塗布方法は、ブレードコーティング方法、リバースロールコーティング方法、グラビアコーティング方法、ナイフコーティング方法、スプレーコーティング方法、オフセットグラビアコーティング方法、キスコーティング方法、バーコーティング方法等いずれの方法でも良く、特に限定されない。
接着剤を塗布する面としては、多孔性樹脂膜、多孔性繊維膜どちらに塗布しても良いが多孔性樹脂膜の開口部を閉塞しないためには多孔性繊維膜に塗工した方が良い。
【0053】
多孔性繊維膜に無溶剤型ポリウレタン接着剤を塗布する場合、あまり粘度が高いと繊維が脱落し塗工不良が発生するので、ロールを加熱することで粘度を下げ3000cps以下で塗工するのが好ましい。更に好ましくは300〜1500cpsの間で塗工するのが好ましい。粘度が300cps未満であると多孔性樹脂膜と貼り合せ後に開口部を閉塞し、インキ通過性を阻害する可能性があり、3000cpsを超えると多孔性繊維層の繊維脱落が起こり易くなる。
【0054】
無溶剤型接着剤を用いた場合、ロール状に巻かれた感熱孔版印刷用マスターを反応を促進させる目的で、キュアを行うことが好ましい。キュアの温度として好ましくは50℃以下であり、更に好ましくは40℃以下である。50℃を超えると熱可塑性樹脂フィルムの収縮が発生しカールの問題が起こる。キュア時間は目的とする接着力が得られるまで行われれば良く、特に限定されるものでは無い。
【0055】
本発明の接着剤の塗工方法としては、酢酸エチル等の有機溶剤で希釈された塗工液を多孔性繊維層に塗布し乾燥した後、多孔性樹脂膜と貼り合せる方法もあるが、環境面及び残留溶剤の問題より、無溶剤のまま塗工する方法が好ましい。
【0056】
上記した接着剤の付着量としては、従来の様な構成の感熱孔版印刷用マスター(熱可塑性樹脂フィルムと多孔性繊維膜との積層品)とは異なり穿孔阻害の影響を考慮する必要は無く、所望の接着強度が得られていれば特に限定されるものでは無いが、多孔性樹脂膜及び多孔性繊維膜の孔を閉塞しない範囲であれば良く、好ましくは0.05〜5.0g/m2、更に好ましくは0.1〜3.0g/m2の範囲である。
【0057】
ASL
本発明の感熱孔版印刷用マスターは、フィルムのサーマルヘッドに接触すべき片面に穿孔時の融着を防止するため、シリコーンオイル、シリコーン系樹脂、フッソ系樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、耐熱剤、酸化防止剤、有機粒子、無機粒子、顔料、分散助剤、防腐剤、消泡剤等からなる薄層を設けることが望ましい。該融着防止の薄層の厚みは好ましくは0.005〜0.4μm、より好ましくは0.01〜0.4μmである。
【0058】
本発明の感熱孔版印刷用マスターにおいて融着防止の薄層を設ける方法は特に限定されないが、水、溶剤等に希釈した溶液をロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、バーコーター等を用いて塗布し、乾燥するのが好ましい。
【0059】
(特性の測定方法)
多孔性樹脂膜平均孔径、空隙面積率
マスターの多孔性樹脂膜をフィルム側及び、フィルムの無い側からそれぞれ光学顕微鏡(Olympus BX60 倍率200倍。照明は反射光、レベル9。偏光フィルターを最もメリハリの効く位置で使用。)で観察、コンピュータに画像を取り込む。ピントは多孔性樹脂膜の各表面に合わせる。(サンプルを光学顕微鏡の接眼レンズに徐々に近づけていき、多孔性樹脂膜の最初にピントの合った部分)これを、画像処理ソフト「WinROOF」(三谷商事株式会社製)を用いて画像を二値化し、平均孔径(真円換算)、空隙面積率を求める。
二値化の手順は、次の通り。グレー画像化、濃度変換(デフォルト)、自動二値化(Pタイル法、デフォルト)、穴埋め、削除(100以下)、計測(形状特徴−面積)。
なお、多孔性樹脂膜に多孔性繊維膜を積層させるマスターの場合には、マスターの作成段階において、多孔性繊維膜を積層させる前にフィルムの無い側からの写真撮影を済ませておく。
【0060】
接着強度
▲1▼熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜との接着強度
本発明の感熱孔版印刷用マスターが多孔性繊維膜を有する場合には、該マスターから多孔性繊維膜のみを剥離する。マスターが多孔性繊維膜を持たない場合にはこの作業は不要である。
次に、多孔性樹脂膜のフィルムとは反対側の面にセロハンテープを空気が入らないように貼り付け、JIS K6854−1に準拠した90度剥離試験により測定する。尚この際、セロハンテープを貼り付けた多孔性樹脂膜を固定し、熱可塑性樹脂フィルムを引張り、測定を行う。多孔性繊維膜のみを剥離できない場合は、セロハンテープを貼り付けず、多孔性繊維膜と多孔性樹脂膜の積層物を固定して測定する。
熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜の間に機能性薄膜が存在する場合にも、機能性薄膜の存在を気にせずに、上記方法で熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜との接着強度を測定できるものとする。
【0061】
多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜との接着強度
(本発明の感熱孔版印刷用マスターが多孔性繊維膜を有する場合のみ)
本発明の感熱孔版印刷用マスターから熱可塑性樹脂フィルムのみを剥離し、多孔性樹脂膜の熱可塑性樹脂フィルムを剥離した面にセロハンテープを空気が入らないように貼り付け、JIS K6854−1に準拠した90度剥離試験により測定する。尚この際、セロハンテープを貼り付けた多孔性樹脂膜を固定し、多孔性繊維膜を引張り測定を行う。熱可塑性樹脂フィルムのみを剥離できない場合は、セロハンテープを貼り付けず、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性繊維膜の積層物を固定して測定する。
【0062】
2)印刷性の評価
作成したマスターを(株)リコー製“プリポートJP4000”(サーマルヘッド解像度400dpi)に供給してサーマルヘッド式製版方式により、50mm×50mmの黒ベタを有する原稿を用い製版、標準速度で100枚印刷した。印刷速度は黒ベタ部の画像濃度が1.2(Macbeth社製濃度計R915で測定)になるように設定した。
穿孔感度:マスターのフィルム部分がサーマルヘッドによって全く正常に穿孔され穿孔径が大きいものを◎、まったく正常に穿孔されるものを○、穿孔されるが部分的に穿孔径が小さくなるものを△、部分的に穿孔されないものを×で示す。画質:該印刷物を目視判定により、黒ベタ部で白抜けの目立つものを×、○と×の中間程度で実用上なんとか使用できるレベルのものを△として評価した。
裏移り:裏移りの無いものを○、両面印刷に耐えられないレベルの裏移りのものを×、その中間程度で実使用上なんとか使用できるレベルのものを△として評価した。
【0063】
3)耐刷性の評価
伸び、ハガレ
作成したマスターを(株)リコー製“プリポートJP4000”に供給して、サーマルヘッド式製版方式により、6ポイントの文字と50mm×50mmの黒ベタを有する原稿を用い製版、印刷を行った。印刷の速度は標準で3000枚印刷した。
画像伸び等の異常画像が発生した場合は×、画像に不具合は見られないが、印刷終了後のマスターにフィルム剥がれや多孔性繊維膜のハガレが見られた場合には△、マスターに全く異常が見られなかったものは○とした。
画像濃度変化
上記耐刷試験の印刷物で3000枚目の画像濃度を50枚目の画像濃度で割った値が、0.95未満の場合には×、0.95以上0.98未満なら△、0.98以上0.99未満なら○、0.99以上1.01以下なら◎とした。
【0064】
4)搬送性の評価
上記した2)及び3)の評価を行う際、問題なく搬送できたものを○、搬送時にシワ等が発生したものを×、搬送時にシワは発生したが画像上には影響のなかったものは△として評価した。
【0065】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下の実施例、参考例及び比較例の各組成の数値は重量部を表す。
【0066】
参考例1(塗布液1)
ポリビニルアセタール樹脂
(積水化学工業株式会社 エスレックKS−1) 3.0
タルク(日本タルク株式会社 ミクロエースL−G) 2.0
ソルビタン脂肪酸エステル
(日光ケミカルズ株式会社SO−10) 0.2
アクリル系ポリマーO/W型エマルション
(ジョンソンポリマー株式会社Joncryl−711) 0.2
酢酸エチル 30
HEC(ヒドロキシエチルセルロース)1%水溶液 25
【0067】
参考例2(塗布液2)
ポリビニルアセタール樹脂
(積水化学工業株式会社 エスレックKS−1) 3.0
タルク(日本タルク株式会社 ミクロエースL−G) 2.0
ソルビタン脂肪酸エステル
(日光ケミカルズ株式会社SO−10) 0.2
アクリル系ポリマーO/W型エマルション
(ジョンソンポリマー株式会社Joncryl−711) 0.2
酢酸エチル 30
HEC1%水溶液 15
【0068】
参考例3(塗布液3)
ポリビニルアセタール樹脂
(積水化学工業株式会社 エスレックKS−1) 3.0
タルク(日本タルク株式会社 ミクロエースL−G) 2.0
ソルビタン脂肪酸エステル
(日光ケミカルズ株式会社SO−10) 0.2
アクリル系ポリマーO/W型エマルション
(ジョンソンポリマー株式会社Joncryl−711) 0.2
酢酸エチル 30
HEC1%水溶液 40
【0069】
参考例4(塗布液4)
ポリビニルアセタール樹脂
(積水化学工業株式会社 エスレックKS−1) 3.0
タルク(日本タルク株式会社 ミクロエースL−G) 2.0
ソルビタン脂肪酸エステル
(日光ケミカルズ株式会社SO−10) 0.2
アクリル系ポリマーO/W型エマルション
(ジョンソンポリマー株式会社Joncryl−711) 0.2
酢酸エチル 50
HEC1%水溶液 25
【0070】
参考例5(塗布液5)
ポリビニルアセタール樹脂
(積水化学工業株式会社 エスレックKS−1) 3.0
タルク(日本タルク株式会社 ミクロエースL−G) 2.0
ソルビタン脂肪酸エステル
(日光ケミカルズ株式会社SO−10) 0.2
アクリル系ポリマーO/W型エマルション
(ジョンソンポリマー株式会社Joncryl−711) 0.2
酢酸エチル 55
HEC1%水溶液 25
各処方、ポリビニルアセタール樹脂、タルク、ソルビタン脂肪酸エステル、アクリル系ポリマーO/Wエマルションを酢酸エチルに溶解、分散し、これを攪拌しながらHECl%水溶液をゆっくり添加して白濁した多孔性樹脂膜形成塗布液を得た。
【0071】
参考例6(塗布液6)
ポリビニルブチラール
(電気化学工業社製PVB3000−2) 8.0
メチルアルコール 71.0
水 21.0
【0072】
参考例7(塗布液7)
ポリビニルブチラール
(電気化学工業社製PVB3000−2) 8.0
メチルアルコール 71.0
水 23.0
ポリビニルブチラールをメチルアルコールに溶解した後、攪拌しながら水を滴下し、混合して多孔性樹脂膜形成塗布液を得た。
【0073】
実施例1〜7、11、13、15、比較例1〜4
上記各塗布液を20℃、50%RHの雰囲気中で、厚さ2.0μmの2軸延伸ポリエステルフィルム上にダイヘッドにて、乾燥後の付着量が表1に示した値になるように塗布、50℃、50%RH雰囲気中で乾燥し多孔性樹脂膜を形成しロール状に巻き取った。塗工時にフィルムを挟んでダイヘッドの反対側にあるバックロールの温度(BR温度)は表1に示した。
【0074】
融着防止剤塗布液処方
シリコーンオイル(信越化学工業社製 SF8422) 0.5
界面活性剤(第一工業製薬社製 プライサーフA208) 0.5
トルエン 100.0
次いで前記の融着防止剤塗布液を熱可塑性樹脂フィルムの多孔性樹脂膜と反対側の面にバーコーターを用いて塗布・乾燥し、感熱孔版印刷用マスターを得た。
作成した感熱孔版印刷用マスターについて前記した評価方法にて評価を行った。結果を表2に示す。
【0075】
実施例8
機能性薄層塗布液
ポリエステル樹脂30%酢酸エチル溶液
(東洋紡績株式会社バイロン50AS) 25.0
酢酸エチル 185
ポリエステル樹脂酢酸エチル溶液(東洋紡績株式会社 バイロン50AS)を酢酸エチルで希釈し、機能性薄層塗布液を得た。
厚さ2.0μmの2軸延伸ポリエステルフィルム上に上記の機能性薄層塗布液を塗布、50℃で乾燥し、厚みが0.05μmである機能性薄層を得た。
さらにその上に多孔性樹脂膜形成塗布液1を20℃50%RHの雰囲気中で、ダイヘッドにて乾燥後付着量が6.0g/m2となるように塗布、50℃50%RH雰囲気中で乾燥し多孔性樹脂膜を形成しロール状に巻き取った。次いで実施例1の融着防止剤を熱可塑性樹脂フィルムの多孔性樹脂膜と反対側の面にバーコーターを用いて塗布・乾燥し、本発明の感熱孔版印刷用マスターを得た。
作成した感熱孔版印刷用マスターについて前記した評価方法にて評価を行った。結果を表2に示す。
【0076】
実施例9
多孔性樹脂膜形成塗布液1を20℃50%RHの雰囲気中で、ダイヘッドにて乾燥後付着量が3.0g/m2となるように塗布、50℃50%RH雰囲気中で乾燥し多孔性樹脂膜を形成しロール状に巻き取った。塗工時のバックロールの温度は25℃とした。続いて多孔性繊維膜として天然繊維100%からなる抄造紙(坪量10g/m2、厚み33μm)に、100℃に加温したロールコーターを用いて一液型ウレタン接着剤(武田薬品工業社製タケネートA260)を塗布量が0.2g/m2となるように延転後塗布し、先に作成したロールの多孔性樹脂膜面とラミネートを行った。塗布時の接着剤の粘度は約1000cpsであった。
次いで実施例1で用いた融着防止剤塗布液を熱可塑性樹脂フィルムの多孔性樹脂膜と反対側の面にバーコーターを用いて塗布し、乾燥した後巻取り、これを30℃で3日間キュアし、本発明の感熱孔版印刷用マスターを得た。
作成した感熱孔版印刷用マスターについて前記した評価方法にて評価を行った。結果を表2に示す。
【0077】
実施例10
多孔性樹脂膜形成塗布液1を20℃50%RHの雰囲気中で、ダイヘッドにて乾燥後付着量が3.0g/m2となるように塗布、50℃50%RH雰囲気中で乾燥し多孔性樹脂膜を形成しロール状に巻き取った。塗工時のバックロールの温度は25℃とした。続いて多孔性繊維膜として繊度0.2デニールと1.1デニールの2種類のポリエステル繊維からなる抄造紙(坪量8g/m2、厚み25μm)に、接着剤として2液反応型ウレタン接着剤(武田薬品工業社製ポリオール成分:タケラックA230、イソシアネート成分:A30、混合比率10:8)を70℃に加熱したロールコーターを用いて塗布量が0.7g/m2となるように延転後塗布し、先に作成したロールの多孔性樹脂膜面とラミネートを行った。塗布時の接着剤の粘度は約800cpsであった。
次いで実施例1で用いた融着防止剤塗布液を熱可塑性樹脂フィルムの多孔性樹脂膜と反対側の面にバーコーターを用いて塗布し、乾燥した後巻取り、これを30℃で3日間キュアし、本発明の感熱孔版印刷用マスターを得た。
作成した感熱孔版印刷用マスターについて前記した評価方法にて評価を行った。結果を表2に示す。
【0078】
実施例12
多孔性樹脂膜形成塗布液1を20℃50%RHの雰囲気中で、ダイヘッドにて乾燥後付着量が3.0g/m2となるように塗布、50℃50%RH雰囲気中で乾燥し多孔性樹脂膜を形成しロール状に巻き取った。塗工時のバックロールの温度は25℃とした。
飽和ポリエステル接着剤(ユニチカ社製 UE3500) 15.0
トルエン 75.0
以上を溶解、混合した塗工液を、ダイレクトグラビアコーターを用いて乾燥後の塗布量が0.2g/m2となるように天然繊維100%からなる抄造紙(坪量10g/m2、厚み33μm)に塗布し、先に作成したロールの多孔性樹脂膜面と重ね合わせた後、50℃で乾燥を行った。次いで実施例1で用いた融着防止剤塗布液を熱可塑性樹脂フィルムの多孔性樹脂膜と反対側の面にバーコーターを用いて塗布・乾燥し、本発明の感熱孔版印刷用マスターを得た。
作成した感熱孔版印刷用マスターについて前記した評価方法にて評価を行った。結果を表2に示す。
【0079】
実施例14
多孔性樹脂膜形成塗布液6を20℃50%RHの雰囲気中で、ダイヘッドにて乾燥後付着量が6.0g/m2となるように塗布、20℃50%RH雰囲気中で乾燥し多孔性樹脂膜を形成しロール状に巻き取った。塗工時のバックロールの温度は25℃とした。続いて多孔性繊維膜として天然繊維100%からなる抄造紙(坪量10g/m2、厚み33μm)に、100℃に加温したロールコーターを用いて一液型ウレタン接着剤(武田薬品工業社製 タケネートA260)を塗布量が0.05g/m2となるように延転後塗布し、先に作成したロールの多孔性樹脂膜面とラミネートを行った。塗布時の接着剤の粘度は約1000cpsであった。
次いで実施例1で用いた融着防止剤塗布液を熱可塑性樹脂フィルムの多孔性樹脂膜と反対側の面にバーコーターを用いて塗布し、乾燥した後巻取り、これを30℃で3日間キュアし、本発明の感熱孔版印刷用マスターを得た。
作成した感熱孔版印刷用マスターについて前記した評価方法にて評価を行った。結果を表2に示す。
【0080】
【表1】
Figure 0004606615
【0081】
【表2】
Figure 0004606615
【0082】
評価結果
比較例1:多孔性樹脂膜によるインキ拡散効果が小さく、裏移りが悪い
実施例1:(DF)を小さくしたのでインキ拡散効果が得られて比較例1よりも裏移りが良い
実施例2:実施例1より(DF)を小さくしたので更にインキ拡散効果が得られて裏移りが向上した
実施例3:本発明の標準的なサンプル、印刷性、耐刷性、搬送性、何れにも問題が無い
実施例4:(DB)/(DF)の値が大きく、画像にやや白抜けが見られるものの、使用上問題は無い
実施例5:多孔性樹脂膜側がやや粗く、画像にやや白抜けが見られるものの、使用上問題は無い
比較例2:多孔性樹脂膜の強度が低く、印刷中に伸びと画像濃度の低下が見られた
比較例3:多孔性樹脂膜が粗く、画像に白抜けが見られ、裏移りも良くない
実施例6:多孔性樹脂膜の空隙率が高く、やや画像濃度低下が見られたが、使用上問題は無い
実施例7:多孔性樹脂膜の空隙率が高く、やや画像濃度低下が見られたが、使用上問題は無い
実施例8:機能性薄層の効果でF−P接着強度が高い
実施例9:多孔性樹脂膜の付着量を減らして多孔性繊維膜を積層させたことで印刷濃度安定性が高い
実施例10:多孔性樹脂膜の付着量を減らして多孔性繊維膜を積層させたことで印刷濃度安定性が高い
実施例11:多孔性樹脂膜の付着量を減らしたが、多孔性繊維膜を積層させていないので耐刷性がやや劣るものの、使用上問題は無い
実施例12:飽和ポリエステルの接着力が低いため耐刷性と搬送性がやや劣るものの、使用上問題は無い
実施例13:請求項9の製法によるマスター。印刷性、耐刷性、搬送性、何れにも問題が無い
実施例14:印刷品質に問題は無く、耐刷試験後にフィルムと多孔性樹脂膜、及び多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜の間にそれぞれ若干のハガレが見られたものの、使用上問題は無い
比較例4:多孔性樹脂膜が粗く、画像に白抜けが見られ、裏移りも良くない
実施例15:フィルムと多孔性樹脂膜の接着強度が低くためややハガレがあるものの、使用上問題は無い
【0083】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、裏移り、白抜けなどが少ない優れた印刷画像品質と優れた耐刷性を兼ね備えたマスターが得られる。
請求項2に記載の発明によれば、裏移り、白抜けなどが少ない優れた印刷画像品質と優れた耐刷性を兼ね備えたマスターが得られる。
請求項3に記載の発明によれば、インキ通過性や膜強度に問題の無い印刷品質と耐刷性の双方に優れたマスターが得られる。
請求項4に記載の発明によれば、多孔性樹脂膜と熱可塑性樹脂フィルムの接着が良好なマスターが得られる。機能性薄層はその成分により、マスターのカール、剛度、強度などを改善する効果が期待できる。
請求項5に記載の発明によれば、積層する多孔性繊維膜によって耐刷性が確保されるので、多孔性繊維膜を積層しない場合よりも多孔性樹脂膜を構成する樹脂の選択肢が広がり、また、マスターの搬送性や耐刷性に問題を生じることなく、多孔性樹脂膜の樹脂付着量を少なくできるので、インキ通過性の高い多孔性樹脂膜を形成させやすい感熱孔版印刷用マスターが得られる。
請求項6に記載の発明によれば、製版時や印刷時にハガレのないマスターが得られる。
請求項7に記載の発明によれば、製版時や印刷時にハガレのないマスターが得られる。
請求項8に記載の発明によれば、良好な印刷画象品質を損なうことなく、多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜の間に十分な接着強度を与えることができるマスターが得られる。
請求項9に記載の発明は、多孔性樹脂膜を形成する樹脂の溶解度の異なる複数の溶剤(良溶媒と貧溶媒)が互いによく溶ける場合に用いられる。有機溶媒は互いによく溶けることが多いので溶媒の選択肢が広く、結果的に樹脂の選択範囲も広くなる。また、任意に溶剤の混合比を変更することによって容易に糸瓜状の多孔性樹脂膜が形成される。更にエーテルやアセトンなど、蒸発の速い溶剤を選択して生産性を高められる。
請求項10に記載の発明は、互いに混ざり合わない良溶媒と貧溶媒を選びエマルションを形成させる。請求項9の方法と比べ、樹脂の溶解度に依存しないので温度や湿度の影響を受けにくく、形成される膜形状の再現性が高い。処方の自由度が高く、多孔性樹脂膜の形成できる範囲が広いので、油相水相の比率や樹脂濃度、樹脂分子量などで塗布液の粘度を調整しやすい。また、本請求項の発明は一般に固形分濃度が同じならば、請求項9の方法よりも塗布液が高粘度になる
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の感熱孔版印刷用マスターの一例の模式断面図である。
【符号の説明】
1 熱可塑性樹脂フィルム
2 多孔性樹脂膜
3 多孔性繊維膜

Claims (9)

  1. 熱可塑性樹脂フィルム上に、ポリビニルアセタール樹脂及びポリビニルブチラールのいずれか、酢酸エチル及びメチルアルコールのいずれか、並びに水を含有する流動体を塗布、乾燥して多孔性樹脂膜を形成し、感熱孔版印刷用マスターを製造する感熱孔版印刷用マスターの製造方法であって、多孔性樹脂膜の空隙孔を円とみなして真円換算した場合、フィルムの無い側から観察した多孔性樹脂膜の平均孔径(DB)がフィルム側から観察した多孔性樹脂膜の平均孔径(DF)の1.2〜4.0倍であることを特徴とする感熱孔版印刷用マスターの製造方法
  2. 流動体が、ポリビニルアセタール樹脂、酢酸エチル、及び水を含有する流動体、並びにポリビニルブチラール、メタノール、及び水を含有する流動体のいずれかである請求項1に記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
  3. フィルムの無い側から観察した多孔性樹脂膜の空隙面積率(PB)及びフィルム側から観察した多孔性樹脂膜の空隙面積率(PF)が、ともに30〜90%である請求項1又は2記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法
  4. 熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜との間に機能性薄層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法
  5. 熱可塑性樹脂フィルムの一方の面上に設けた多孔性樹脂膜の表面に、繊維状物質からなる多孔性繊維膜を積層してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法
  6. 熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜の接着強度が1.4N/m以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法
  7. 熱可塑性樹脂フィルムと多孔性樹脂膜の接着強度、及び多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜の接着強度が、それぞれ1.4N/m以上であることを特徴とする請求項5記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法
  8. 多孔性樹脂膜と多孔性繊維膜がポリウレタン系接着剤を主成分とする接着剤を用いて接着されていることを特徴とする請求項5記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法
  9. 流動体が油中水型乳化液である、請求項1から8のいずれかに記載の感熱孔版印刷用マスターの製造方法。
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