JP4567600B2 - 電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア及びその製造方法、並びに該樹脂被覆キャリアを用いた電子写真現像剤 - Google Patents

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Description

本発明は、小粒径で、高い表面均一度及び平均球状率を有し、かつ球状率標準偏差の小さい電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア及びその製造方法、並びに該樹脂被覆キャリアを用いた高画質で、耐久性に優れた電子写真現像剤に関する。
電子写真法に使用される二成分系現像剤はトナーとキャリアとにより構成されており、キャリアは現像剤ボックス内でトナーと混合攪拌され、トナーに所望の電荷を与え、電荷を帯びたトナーを感光体上の静電潜像に運び、トナー像を形成させる担体物質である。キャリアはトナー像を形成した後も、マグネットに保持され現像ロール上に残り、さらに再び現像ボックスに戻り、新たなトナー粒子と再び混合攪拌され、一定期間繰り返し使用される。
この二成分系現像剤は、一成分系現像剤と異なり、キャリアが、トナー粒子を攪拌し、トナー粒子に所望の帯電性を付与すると共に、トナーを搬送する機能を有しており、現像剤設計において制御性がよいため、特に高画質の要求されるフルカラー機並びに画像維持の信頼性及び耐久性の要求される高速機の分野に広く使用されている。
このような二成分系電子写真現像剤においては、高画質画像を得るために、キャリアとして酸化被膜鉄粉、樹脂被覆鉄粉に代えて、Cu−Znフェライト、Ni−Znフェライト等のフェライト粒子が用いられている。これらのフェライト粒子を用いたフェライトキャリアは従来の鉄粉キャリアに比べ、一般に球状であり、磁気特性が調整可能である等の高画質画像を得るのに有利な特性を多く持っている。さらに、このフェライト粒子を芯材として種々の樹脂を被覆した樹脂被覆フェライトキャリアは、耐摩耗性や耐久性等が向上し、また体積固有抵抗の調整が可能となる。
しかし、フェライトはセラミックであるため、フェライト反応後は、高硬度であるものの、衝撃に対して破砕してしまう欠点がある。製造時、フェライト反応を行わせる焼成工程において、特に粒径が小さくなると粒子間の空隙も小さくなり、高温の加熱により粒子同士の融合が生じて球状の維持が困難になってくる。
近年、このような二成分系電子写真現像剤においては、現像性能の高速化やフルカラー化が強く要望されており、このような要望の中で高画質出力を得るために、キャリアやトナーの小粒径化が課題となっている。
トナーに関しては、重合トナー技術等により小粒径で、かつシャープな粒度分布を持つトナーが種々提案されている。
一方、キャリアを小粒径化、すなわち小粒径のフェライト粒子を用いることにより、形成される磁気ブラシがソフトになり、またキャリアの比表面積が大きくなり、保持できるトナーの量が多くなり、この結果、画像濃度、かぶり、トナー飛散、解調性等の画像品質に対して大きな効果が期待されている。
しかし、フェライトキャリアを小粒径化すると、製造工程上、上述したようなフェライト粒子の球状を維持するのが困難になるという問題がある。上述のように、耐摩耗性や耐久性の向上を図るために、キャリア芯材(フェライト粒子)表面に各種樹脂を被覆するが、フェライト粒子の形状が損なわれると、樹脂被覆時に被覆ムラが生じたり、芯材の露出部が生じる。このため、キャリア性能が充分発揮されずに、現像剤に要求される高画質化、長寿命化(高耐久化)が達成されない。
また、フェライト粒子の製造工程において、焼成後の解砕工程で、粒子を解す場合、融合した粒子を強い衝撃で解すと破砕してしまい不定形の粒子が混入してしまう。不定形の粒子は除去が困難であり、このまま次工程で樹脂被覆を行ってしまうと、不定形の粒子には均一な被膜が形成されないこと、流動性の妨げになる等により画像品質への悪影響が生じてくる。
球状を推持させるために、焼成温度を低くすることにより粒子間の融合は防げるものの、キャリア芯材がポーラス(多孔性)になり、キャリア芯材表面への樹脂被覆工程において、樹脂が内部に滲み込みキャリア性能のバラツキ要因になり易い。
また、従来、フェライト形成のための焼成は、アルミナ等のコウ鉢に原料を充填し、トンネル型の焼成炉で焼成されていた。しかし、粒径が小さくなってくると、粒子間の融合が発生し易くなるため、焼成温度をあまり上げられず、それにより、表面性のばらつきが生じてしまう。これは、次工程の樹脂被覆工程において均一な被膜形成の障害となり性能の劣化につながる。
このように球状で、表面性の均一な小粒径フェライト粒子を製造する技術は充分ではなかった。トナーと共に二成分現像剤としたときに、高画質化や長寿命化を達成すべく、小粒径で、かつ球状、表面性の均一なフェライトキャリアを提供する試みは種々なされている。
特許文献1(特開平7−98521号公報)には、50%平均粒径(D50)が15〜45μmで、粒度分布を規定し、さらに異なる測定方法による比表面積の比を一定とした電子写真用キャリアが記載されている。
また、特許文献2(特開2001−117285号公報)には、体積平均粒径が25〜50μm、体積抵抗及び形状指数が一定範囲にある核体粒子(キャリア芯材)を用い、この核体粒子表面に導電性粒子を含む被覆層を形成してなる静電荷像現像用キャリアが記載されている。
特許文献3(特開平8−292607号公報)には、キャリア芯材粒子の表面に樹脂材料からなる被覆層を形成すると共に、キャリア芯材粒子及び樹脂被覆後のキャリア粒子の形状指数を特定し、また前者の形状指数が後者の形状指数より大きいように構成した二成分現像剤が記載されている。
特許文献4(特開平9−197722号公報)には、飽和磁化50〜70Am/kgで、平均粒子径30〜40μm、かつ22μm以下の重量比率2.0〜17.0重量%、さらに形状指数で特定した核体粒子(キャリア芯材)上に被覆層を形成してなる静電荷像現像剤用キャリアが記載されている。
特許文献5(特開平2−255539号公報)には、原料粉末の湿式混合工程と、粒径10μm〜100μmの粒度調整を行う噴霧工程と、1100℃〜1200℃の攪拌焼成工程を順次行ってフェライト粉末を得るフェライト粉末の製造方法が記載されている。この製造方法では、製造工程が簡略化され、また得られるフェライト粉末は球状であり、不定形粉末に比べて比表面積が小さいことから、分散性、流動性の向上が図られるとされている。
上記した特許文献1〜4に係る発明は、フェライト芯材を小粒径化し、かつ形状指数や比表面積等を特定し、主に球状のフェライト芯材を得るものであるが、小粒径で、しかも高い球状度及び表面均一度を有し、また標準偏差の小さいキャリア芯材及びこれを用いた樹脂被覆フェライトキャリア及びその製造方法は得られていない。特許文献5には、製造工程を簡略化したフェライト粉末の製造方法が記載されており、得られるフェライト粉末は球状であることが示されているのみである。
特開平7−98521号公報 特開2001−117285号公報 特開平8−292607号公報 特開平9−197722号公報 特開平2−255539号公報
従って、本発明の目的は、小粒径で、高い球状度及び表面均一度を有し、また標準偏差の小さいキャリア芯材を用いた樹脂被覆フェライトキャリア及びその製造方法、並びに該樹脂被覆フェライトキャリアを用いた高画質で、耐久性に優れた電子写真現像剤を提供することにある。
本発明者らは、上述の課題を鋭意検討した結果、フェライト粒子を流動手段により流動させながら一定温度以上で焼成することによって、上記目的が達成されることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、フェライト原料を秤量、混合後、粉砕し、得られたスラリーを造粒し、次いで焼成、樹脂被覆を行うことによって得られる電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアであって、上記焼成の前に、上記造粒物を500〜700℃、0.1〜5時間予備焼成した後、上記焼成が造粒物を流動手段により流動させながら焼成温度1200〜1400℃、焼成時間0.1〜5時間で行われることにより得られ、平均粒径20〜50μm、表面均一度92〜100%、平均球状率1〜1.3、かつ球状率標準偏差0.125以下の球状フェライト粒子の表面に樹脂を被覆してなることを特徴とする電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアを提供するものである。
上記樹脂被覆キャリアおいて、上記球状フェライト粒子の見掛け密度が2.0〜2.5g/cm、磁場79.5A/mにおける磁化が40〜80Am/kg、本体磁化の80%以上である飛散物磁化を有することが望ましい。
また、本発明は、フェライト原料を秤量、混合後、粉砕し、得られたスラリーを造粒し、次いで焼成、樹脂被覆を行う電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアの製造方法において、上記焼成の前に、上記造粒物を500〜700℃、0.1〜5時間予備焼成した後、上記焼成が造粒物を流動手段により流動させながら焼成温度1200〜1400℃、焼成時間0.1〜5時間で行われることを特徴とする上記電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアの製造方法を提供するものである。
上記製造方法において、上記焼成が回転式焼成炉、すなわちロータリーキルンによりなされることが望ましい。
上記回転式焼成炉(ロータリーキルン)においては、レトルト回転速度が0.5〜10rpm、レトルト勾配が0.5〜4.0度、入口側ハンマー回数が10〜300回/分、出口側ハンマー回転数が10〜300回/分で、あることが望ましい。
また、本発明は、樹脂被覆キャリアとトナーとからなる電子写真現像剤を提供するものである。
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアは、小粒径で、高い球状度及び表面均一度を有し、また標準偏差の小さいキャリア芯材に樹脂を被覆したものであり、被覆ムラや芯材の露出部が生じることがなく、またキャリア飛散も少ない。また、本発明に係る製造方法によって、上記樹脂被覆キャリアが安定して生産性をもって製造できる。さらに、本発明に係る電子写真現像剤は、上記樹脂被覆キャリアを用いているので、高画質で、しかも耐久性に優れる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について述べる。
<本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア>
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアにおいて、キャリア芯材として用いられる球状フェライト粒子の組成は特に限定されないが、好ましくは下記式(1)の組成を有するものである。
(MnO)x(MgO)y(Fe)z …(1)
(式中、x+y+z=100mol%、x=35〜45mol%、y=5〜15mol%、z=40〜55mol%)
また、上記(1)式中の(MnO)及び/又は(MgO)の一部を、SrO、LiO、CaO、TiO、CuO、ZnO、NiOから選ばれる1種類以上の酸化物で置換してもよい。
このような特定組成のフェライトは、磁化が高く、磁化の均一性がよく(磁化のばらつきが少なく)ため、本発明において好ましく用いられる。
本発明に係る球状フェライト粒子の平均粒径は、20〜50μmであり、好ましくは25〜40μmである。平均粒径が20μm未満では、キャリア付着が発生しやすくなり、白斑の原因となる。また、50μmを超えると、画質が粗くなり、所望の解像度が得られにくくなる。
本発明に係る球状フェライト粒子の表面均一度は、92〜100%である。表面均一度が92%未満では、フェライト粒子表面の均一度が劣る。ここでいう表面均一度とは、
(1)SEM(走査型電子顕微鏡)にて倍率200倍で総計200粒子以上カウントできるように視野を変えてキャリア芯材を撮影した。
(2)表面に平滑な部分を半分以上有するキャリア芯材を目視によりチェックした。
(3)キャリア芯材100個をチェックし、上記(2)に示すキャリア芯材の含有率を百分率にて算出した。
ものである。
本発明に係る球状フェライト粒子の平均球状率は、1〜1.3、好ましくは1〜1.25である。平均球状率が1.3を超えると、フェライト粒子の球状性が損なわれる。ここでいう平均球状率とは、
(1)SEMにて倍率300倍で総計100粒子以上カウントできるように視野を変えてキャリア芯材を撮影した。
(2)SEM画像をスキャナーで読み込み、メディアサイパネティクス(MEDIA CYBERNETICS)社製画像解析ソフト「Image−Pro PLUS」を用いて画像解析を行い、各粒子に対する外接円直径、内接円直径を求め、その比を球状率とした。2つの直径が同じであれば比が1となり、真球の場合この比が1となる。
(3)粒子100個に対して求めた球状率より平均球状率と標準偏差を算出した。
である。
また、球状率標準偏差は、0.125以下である。球状率偏差値が0.125を超えると、フェライトの形状のふれ幅が大きくなり、樹脂コート時の被覆状態にバラツキが生じる。
本発明に係る球状フェライト粒子の見掛け密度は2.0〜2.5g/cm、磁場79.5A/mにおける磁化は40〜80Am/kg、本体磁化の80%以上である飛散物磁化を有することが望ましい。このような特性を有することによって、トナーと共に現像剤とした時に良好な画質特性等が得られる。
本発明に係る電子写真現像剤用キャリアは、上記球状フェライト粒子をキャリア芯材とし、その表面に樹脂を被覆する。このようにキャリア芯材の表面に樹脂を被覆するのは、耐久性を上げ、安定した画像特性を長期に渡って得るためである。被覆樹脂としては、従来から知られている各種の樹脂を用いることが可能である。例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、シリコーン樹脂、あるいはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の各樹脂で変性した変性シリコーン樹脂等が挙げられる。
樹脂の被覆量は、キャリア芯材に対して、0.1〜4.0重量%が好ましく、0.5〜3.0重量%がさらに好ましい。被覆量が0.1重量%未満ではキャリア表面に均一な被覆層を形成することが難しく、また4.0重量%を超えるとキャリア同士の凝集が発生してしまい、歩留まり低下等の生産性の低下と共に、実機内での流動性あるいは帯電量等の現像剤特性変動の原因となる。
また、上記被覆樹脂中には、帯電制御剤としてシランカップリング剤を含有することができる。これは被覆によって芯材露出面積を比較的小さくなるように制御した場合、帯電能力が低下することがあるが、各種シランカップリング剤を添加することにより、コントロールできるためである。使用できるカップリング剤の種類は特に限定されないが、負極性トナーの場合はアミノシランカップリング剤が、正極性トナーの場合はフッ素系シランカップリング剤が好ましい。
また、上記被覆樹脂中には、導電性微粒子を添加することができる。これは被覆によって樹脂のコーティング量が比較的多くなるように制御した場合、絶対的な抵抗が高くなりすぎて現像能力が低下することがあるためである。しかし導電性微粒子はそれ自身の持つ抵抗が被覆樹脂や芯材としてのフェライトに比べ低抵抗であるため、添加量が多すぎると急激な電荷リークを引き起こすため、添加量としては、被覆樹脂の固形分に対し0.25〜20.0重量%であり、好ましくは0.5〜15.0重量%、特に好ましくは1.0〜10.0重量%である。導電性微粒子としては、導電性カーボンや酸化チタン、酸化スズ等の酸化物、各種の有機系導電剤等の酸化物が挙げられる。
<本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアの製造方法>
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアの製造方法においては、先ず、所定組成となるように、フェライト原料を適量秤量した後、ボールミル又は振動ミル等で0.5時間以上、好ましくは1〜20時間粉砕、混合する。このようにして得られた粉砕物に水を加えてスラリー化し、スプレードライヤーを用いて造粒する。次いで、造粒物を仮焼した後、粉砕してスラリーを得る。このスラリーを再度スプレードライヤーで造粒し、球状の造粒物を得る。なお、仮焼の工程は見掛け密度を下げたい場合には省略してもよい。
本発明に係る製造方法では、この球状の造粒物を乾燥後、流動手段により流動させながら焼成温度1200〜1400℃で焼成する。造粒物を流動手段により流動させながら焼成することにより、粒子を均一に加熱することができ表面が均一になるだけでなく、フェライト化反応も均一になり、磁気特性分布もシャープになる。このため、キャリア飛散という小粒径キャリアの欠点の解消にも有効である。
また、焼成後の解砕においても、従来のように、コウ鉢に粒子を充填して造粒物を焼成した場合、粒子間の結合により焼成後はブロック状になってしまい解砕が困難になってしまうが、流動手段を用いて造粒物を流動させながら焼成することにより、粒子間の結合が少なく解砕が容易になってくる。フェライトはセラミックと同様に衝撃に対して弱く、解砕工程のストレスが強いと、割れ欠けが発生してしまうので、解砕工程でのストレスを最小化することは非常に重要である。
焼成温度は、上記のように1200〜1400℃、好ましくは1250〜1350℃であり、焼成時間は0.1〜5時間である。焼成時間が1200℃未満では充分なフェライト化反応が生じない。また、焼成時間が0.1時間未満では充分なフェライト化反応が生ぜず、5時間を超える焼成は経済的に無駄である。焼成雰囲気は、酸素ガスを一定量含有する窒素ガス雰囲気が好ましく採用される。
流動手段としては、回転式焼成炉が、すなわちロータリーキルンが好ましく用いられる。このロータリーキルンにおいては、レトルト回転速度が、0.5〜10rpm、レトルト勾配が0.5〜4.0度、入口側ハンマー回数が10〜300回/分、出口側ハンマー回転数が10〜300回/分で操業することが望ましい。このような操業条件を採用することによって、特に、小粒径で、高い球状度及び表面均一度を有し、また標準偏差の小さい球状フェライト粒子が得られる。
図1に、本発明に係る製造方法で採用する焼成工程の概略図を示す。図1中、1は造粒物供給器、2はロータリーキルン、3は熱間部、4は発熱体、5は冷却部、6は冷却体、7は球状フェライト粒子をそれぞれ示す。
本発明に係る製造方法においては、上記焼成の前に造粒物を予備焼成する。予備焼成は、予備焼成温度500〜700℃、予備焼成時間0.1〜5時間、好ましくは0.1〜4時間、さらに好ましくは0.1〜2時間行われる。この予備焼成は、造粒物を流動させても流動させなくてもよい。造粒物を流動させる場合には流動手段として焼成と同様に回転式焼成炉が用いられる。球状のフェライト粒子を経済的に製造するためには、造粒後、分級を行い、造粒物を調製するが、造粒物にバインダー、添加剤等の有機物が存在しているが、焼成工程においては、造粒物に有機物が多く含有されると焼成雰囲気ガスが還元性ガスとなり、焼成に悪影響を与えるため、高温での焼成の前に予備焼成してこれらの有機物を除去する。
このようにして得られた焼成物(球状フェライト粒子)の電子顕微鏡写真(倍率300倍)を図2に示す。図2に示されるように、この球状フェライト粒子は、小粒径で、高い球状度及び表面均一度を有している。
このように焼成して得られた焼成物を、粉砕し、分級する。分級方法としては、既存の風力分級、メッシュ濾過法、沈降法等を用いて所望の粒径に粒度調整する。
その後、必要に応じて、表面を低温加熱することで酸化被膜処理を施し、電気抵抗調整を行うことができる。酸化被膜処理は、一般的なロータリー式電気炉、バッチ式電気炉等を用い、例えば、300〜700℃で熱処理を行う。この処理によって形成された酸化被膜の厚さは、0.1nm〜5μmであることが好ましい。0.1nm未満であると、酸化被膜層の効果が小さく、5μmを超えると、磁化が低下したり、高抵抗になりすぎるため、現像能力が低下する等の不具合が発生しや易くなる。また、必要に応じて、酸化被膜処理の前に還元を行ってもよい。
また、上記球状フェライト粒子(キャリア芯材)に、上述したような被覆樹脂を被覆する方法としては、公知の方法、例えば刷毛塗り法、乾式法、流動床によるスプレードライ方式、ロータリドライ方式、万能攪拌機による液浸乾燥法等により被覆することができる。被覆率を向上させるためには、流動床による方法が好ましい。
樹脂をキャリア芯材に被覆後、焼き付けする場合には、外部加熱方式又は内部加熱方式のいずれでもよく、例えば固定式又は流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉でもよく、もしくはマイクロウェーブによる焼き付けでもよい。焼き付けの温度は使用する樹脂により異なるが、融点又はガラス転移点以上の温度は必要であり、熱硬化性樹脂又は縮合架橋型樹脂等では、充分硬化が進む温度まで上げる必要がある。
<本発明に係る電子写真用現像剤>
本発明に係る電子写真用現像剤について説明する。
本発明に係る電子写真現像剤は、上記した樹脂被覆キャリアとトナーとからなる。
本発明に係る現像剤を構成するトナー粒子には、粉砕法によって製造される粉砕トナー粒子と、重合法により製造される重合トナー粒子とがある。本発明ではいずれの方法により得られたトナー粒子を使用することができる。
粉砕トナー粒子は、例えば、結着樹脂、荷電制御剤、着色剤をヘンシェルミキサー等の混合機で充分に混合し、次いで、二軸押出機等で溶融混練し、冷却後、粉砕、分級し、外添剤を添加後、ミキサー等で混合することにより得ることができる。
粉砕トナー粒子を構成する結着樹脂としては特に限定されるものではないが、ポリスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、さらにはロジン変性マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂等を挙げることができる。これらは単独または混合して用いられる。
荷電制御剤としては、任意のものを用いることができる。例えば正荷電性トナー用としては、ニグロシン系染料及び4級アンモニウム塩等を挙げることができ、また、負荷電性トナー用としては、含金属モノアゾ染料等を挙げることができる。
着色剤(色剤)としては、従来より知られている染料、顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントレッド、クロムイエロー、フタロシアニングリーン等を使用することができる。その他、トナーの流動性、耐凝集性向上のためのシリカ粉体、チタニア等のような外添剤をトナー粒子に応じて加えることができる。
重合トナー粒子は、懸濁重合法、乳化重合法、乳化凝集法、エステル伸長重合法、相転乳化法といった公知の方法で製造されるトナー粒子である。このような重合法トナー粒子は、例えば、界面活性剤を用いて着色剤を水中に分散させた着色分散液と、重合性単量体、界面活性剤及び重合開始剤を水性媒体中で混合攪拌し、重合性単量体を水性媒体中に乳化分散させて、攪拌、混合しながら重合させた後、塩析剤を加えて重合体粒子を塩析させる。塩析によって得られた粒子を、濾過、洗浄、乾燥させることにより、重合トナー粒子を得ることができる。その後、必要により乾燥されたトナー粒子に外添剤を添加する。
さらに、この重合トナー粒子を製造するに際しては、重合性単量体、界面活性剤、重合開始剤、着色剤以外に、定着性改良剤、帯電制御剤を配合することができ、これらにより得られた重合トナー粒子の諸特性を制御、改善することができる。また、水性媒体への重合性単量体の分散性を改善するとともに、得られる重合体の分子量を調整するために連鎖移動剤を用いることができる。
上記重合トナー粒子の製造に使用される重合性単量体に特に限定はないが、例えば、スチレン及びその誘導体、エチレン、プロピレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエステル及びメタクリル酸ジエチルアミノエステル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類等を挙げることができる。
上記重合トナー粒子の調製の際に使用される着色剤(色材)としては、従来から知られている染料、顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントレッド、クロムイエロー及びフタロシアニングリーン等を使用することができる。また、これらの着色剤はシランカップリング剤やチタンカップリング剤等を用いてその表面が改質されていてもよい。
上記重合トナー粒子の製造に使用される界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン性界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を使用することができる。
ここで、アニオン系界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。また、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン、脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等を挙げることができる。さらに、カチオン系界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。また、両イオン性界面活性剤としては、アミノカルボン酸塩、アルキルアミノ酸等を挙げることができる。
上記のような界面活性剤は、重合性単量体に対して、通常は0.01〜10重量%の範囲内の量で使用することができる。このような界面活性剤の使用量は、単量体の分散安定性に影響を与えるとともに、得られた重合トナー粒子の環境依存性にも影響を及ぼすことから、単量体の分散安定性が確保され、かつ重合トナー粒子の環境依存性に過度の影響を及ぼしにくい上記範囲内の量で使用することが好ましい。
重合トナー粒子の製造には、通常は重合開始剤を使用する。重合開始剤には、水溶性重合開始剤と油溶性重合開始剤とがあり、本発明ではいずれをも使用することができる。本発明で使用することができる水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、水溶性パーオキサイド化合物を挙げることができ、また、油溶性重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物、油溶性パーオキサイド化合物を挙げることができる。
また、本発明において連鎖移動剤を使用する場合には、この連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、四臭化炭素等を挙げることができる。
さらに、本発明で使用する重合トナー粒子が、定着性改善剤を含む場合、この定着性改良剤としては、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ワックス等を使用することができる。
また、本発明で使用する重合トナー粒子が、帯電制御剤を含有する場合、使用する帯電制御剤に特に制限はなく、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、含金属モノアゾ染料等を使用することができる。
また、重合トナー粒子の流動性向上等のために使用される外添剤としては、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム、フッ素微粒子、アクリル微粒子等を挙げることができ、これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
さらに、水性媒体から重合粒子を分離するために使用される塩析剤としては、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム等の金属塩を挙げることができる。
上記のようにして製造されたトナー粒子の平均粒径は、2〜15μm、好ましくは3〜10μmの範囲内にあり、重合トナー粒子の方が粉砕トナー粒子よりも、粒子の均一性が高い。トナー粒子が2μmよりも小さくなると、帯電能力が低下しカブリやトナー飛散を引き起こし易く、15μmを超えると、画質が劣化する原因となる。
上記のように製造されたキャリアとトナーとを混合し、電子写真用現像剤を得ることができる。キャリアとトナーの混合比、即ちトナー濃度は、3〜15%に設定することが好ましい。3%未満であると所望の画像濃度が得にくく、15%を超えると、トナー飛散やかぶりが発生し易くなる。
上記のように混合された現像剤は、有機光導電体層を有する潜像保持体に形成されている静電潜像を、バイアス電界を付与しながら、トナー及びキャリアを有する二成分現像剤の磁気ブラシによって反転現像する現像方式を用いたデジタル方式のコピー機、プリンター、FAX、印刷機等に使用することができる。また、磁気ブラシから静電潜像側に現像バイアスを印加する際に、DCバイアスにACバイアスを重畳する方法である交番電界を用いるフルカラー機等にも適用可能である。
以下、実施例等に基づき本発明を具体的に説明する。
酸化物全量基準で、酸化鉄(50mol%)、酸化マンガン(40mol%)及び酸化マグネシウム(10mol%)をそれぞれ秤量し、これらを混合粉砕して粉砕物を得た後、アトライターに水25リットルを加えてさらに粉砕物を1時間粉砕して、固形分50%のスラリーを調製した。調製したスラリーをスプレードライヤーで造粒し、球状の造粒物を得た。
造粒物をロータリーキルンで900℃仮焼した。仮焼後、造粒物20kg、水20リットル、バインダー(ポリビニールアルコールの10%溶液)128g及び分散剤(ポリカルボン酸アンモニウム系)100gを一緒にアトライターで2時間粉砕して固形分50%のスラリーを得た。作製したスラリーをスプレードライヤーで造粒し平均粒径38μmの球状の造粒物を得た。
造粒物をロータリーキルンで700℃、0.5時間予備焼成して、バインダー等の有機物を取り除いた。次に熱間部を1320℃にセットしたロータリーキルンに、予備焼成された造粒物を供給し、さらに焼成を1.5時間行った。焼成時、酸素濃度4.5%に調整した窒素混合ガスを流量50リットル/minでロータリーキルンに供給した。ロータリーキルンの運転条件及びフェライト造拉物の供給量は以下のとおりである。
ロータリーキルンのレトルト回転数:3rpm
ロータリーキルンのレトルト勾配:0.5度
焼成するフェライト造粒物の供給量:3kg/h
入口側ハンマ一回数:30回/分
出口側ハンマー回数:20回/分
焼成後、得られた焼成物をジェットミルで解砕し、そして分級して平均粒径35μmの球状フェライト粒子を得た。球状フェライト粒子の形状、球状率等の物性を後述のように測定した結果を表1に示す。
信越シリコーン社製アクリル変性シリコーン樹脂「KR−9706(商品名)」をトルエンに希釈し、流動床被覆装置を用いて、得られた希釈物を上記球状フェライト粒子(フェライト芯材)に対して0.5重量%被覆した後、230℃で1時間焼付けを行い、冷却後解砕して、樹脂被覆キャリアを得た。得られた樹脂被覆キャリアを用いて後述のように実機評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1と同様に固形分50%のスラリーを得た後、スプレードライヤーで平均粒径27μmの球状の造粒物を得た。造粒物をロータリーキルンで700℃、0.5時間予備焼成して、バインダー等の有機物を取り除いた。次に熱間部を1320℃にセットしたロータリーキルンに予備焼成された造粒物を供給し、さらに焼成を1.5時間行った。焼成時、酸素濃度4.5%に調整した窒素混合ガスを流量50リットル/minでロータリーキルンに供給した。ロータリーキルンの運転条件及びフェライト造粒物の供給量は実施例1と同様である。
焼成後、得られた焼成物をジェットミルで解砕し、そして分級して平均粒径25μmの球状フェライト粒子を得た。球状フェライト粒子の形状、球状率等の物性を後述のように測定した結果を表1に示す。得られた上記球状フェライト粒子(フェライト芯材)を実施例1と同様に樹脂被覆した後、得られた樹脂被覆キャリアを用いて実施例1と同様に実機評価を行った。結果を表2に示す。
比較例
(比較例1)
実施例1と同様に、固形分50%のスラリーを得た後、スプレードライヤーで平均粒径38μmの球状の造粒物を得た。造粒物を予備焼成しないで直接1320℃にセットしたロータリーキルンで0.5時間焼成した。焼成時、酸素濃度15%に調整した窒素混合ガスを流量50リットル/minでロータリーキルンに供給した。
焼成後、得られた焼成物をジェットミルで解砕し、分級し平均粒径35μmの球状フェライト粒子を得た。球状フェライト粒子の形状、球状率等を後述のように測定した結果を表1に示す。得られた上記球状フェライト粒子(キャリア芯材)を実施例1と同様に樹脂コートした後、得られた樹脂コートキャリアを用いて実施例1と同様に実機評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例2)
実施例1と同様に造粒した平均粒径38μmの球状の造粒物を調製した後、造粒物をコウ鉢に充填し、トンネル式の電気焼成炉にて焼成温度1310℃、5時間焼成を行った。焼成時、酸素濃度を4.5%に調整した窒素混合ガスを90リットル/minでトンネル式の電気焼成炉に供給した。焼成後、得られた焼成物をジェットミルで解砕し、そして分級して平均粒径35μmの球状フェライト粒子を得た。
球状フェライト粒子の形状、球状率を後述のように測定した結果を表1に示す。得られた上記球状フェライト粒子(キャリア芯材)を実施例1と同様に樹脂被覆した後、得られた樹脂被覆キャリアを用いて実施例1と同様に実機評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例3)
実施例2と同様に造粒した平均粒径27μmの球状の造粒物を、ロータリーキルンで700℃、0.5時間予備焼成してバインダー等の有機物を取り除いた。次に、比較例1と同様に、焼成した造粒物をコウ鉢に充填し、トンネル式の電気焼成炉にて焼成温度1310℃でさらに5時間焼成した。焼成時、酸素濃度を4.5%に調整した窒素混合ガスを流量50リットル/minでトンネル式の電気焼成炉に供給した。
焼成後、得られた焼成物をジェットミルで解砕し、そして分級して平均粒径25μmの球状フェライト粒子を得た。球状フェライトキャリア粒子の形状、球状率を後述のように測定した結果を表1に示す。得られた上記球状フェライト粒子(キャリア芯材)を実施例1と同様に樹脂被覆した後、得られた樹脂被覆キャリアを用いて実施例1と同様に実機評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例4)
比較例3と同様に造粒した平均粒径27μmの球状の造粒物をコウ鉢に充填し、トンネル式の電気焼成炉にて焼成温度1250℃、5時間焼成した。焼成時、酸素濃度を4.5%に調整した窒素混合ガスを流量90リットル/minでトンネル式の電気焼成炉に供給した。
焼成後、得られた焼成物をジェットミルで解砕し、そして分級して平均粒径25μmの球状フェライト粒子を得た。球状フェライトキャリア粒子の形状、球状率を後述のように測定した結果を表1に示す。得られた上記球状フェライト粒子(キャリア芯材)を実施例1と同様に樹脂被覆した後、得られた樹脂被覆キャリアを用いて実施例1と同様に実機評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例5)
実施例1と同様に造粒した平均粒径38μmの球状の造粒物を、熱間部を1150℃にセットしたロータリーキルンに供給して、5時間焼成を行った。焼成時、酸素濃度4.5%に調整した窒素混合ガスを流量50リットル/minでロータリーキルンに供給した。ロータリーキルンの運転条件及びフェライト造粒物の供給量は実施例1と同様である。
焼成後、得られた焼成物をジェットミルで解砕し、そして分級して平均粒径35μmの球状フェライト粒子を得た。球状フェライトキャリア粒子の形状、球状率等の物性を後述のように測定した結果を表1に示す。信越シリコーン社製アクリル変性シリコーン樹脂「KR−9706(商品名)」をトルエンに希釈し、流動床被覆装置を用いて、得られた希釈物を上記球状フェライト粒子(キャリア芯材)に対して0.5重量%被覆した後、230℃で1時間焼付けを行い、冷却後解砕して、樹脂被覆キャリアを得た。得られた樹脂被覆キャリアを用いて後述のように実機評価を行った。結果を表2に示す。
[球状フェライト粒子(キャリア芯材)の物性評価]
1.平均粒径:
日本レーザー社製レーザー回折式粒子径分布測定装置「HELOS SYSTEM」を用いて測定した。
2.見掛け密度(Apparent Density=AD):
JIS−Z2504(金属粉の見掛け密度試験方法)に準拠して測定した。
3.表面均一度:
(1)SEM(走査型電子顕微鏡)にて倍率200倍で総計200粒子以上カウントできるように視野を変えてキャリア芯材を撮影した。
(2)表面に平滑な部分を半分以上有するキャリア芯材を目視によりチェックした。
(3)キャリア芯材100個をチェックし、上記(2)に示すキャリア芯材の含有率を百分率にて算出した。
4.平均球状率及び球状率標準偏差:
(1)SEMにて倍率300倍で総計100粒子以上カウントできるように視野を変えてキャリア芯材を撮影した。
(2)SEM画像をスキャナーで読み込み、メディアサイパネティクス(MEDIA CYBERNETICS)社製画像解析ソフト「Image−Pro PLUS」を用いて画像解析を行い、各粒子に対する外接円直径、内接円直径を求め、その比を球状率とした。2つの直径が同じであれば比が1となり、真球の場合この比が1となる。
(3)粒子100個に対して求めた球状率より平均球状率と標準偏差を算出した。
5.飽和磁化:
直流磁化特性自動記録装置(理研電子製BHU−60型)で磁場238.7kA/mにおける磁化を読み取った(単位はAm/kg)。
6.飛散物磁化:
(1)キャリア芯材を磁気ブラシにセットする前に、振動型磁気測定器VSM(東栄工業製)で磁場79.5A/mにおける上記キャリア芯材の磁化(本体磁化)を測定した。
(2)キャリア芯材500gを磁気ブラシにセットし、回転数250rpmで5分間、磁気ブラシを回転させ、磁気ブラシから強制的にキャリア芯材を飛散させた。
(3)次に飛散したキャリア芯材を捕集し、振動型磁気測定器VSM(東栄工業製)で磁場79.5A/mにおける磁化を測定し、本体磁化と比較した(単位はAm/kg)。
[トナー調製]
プロポキシ化ビスフェノールとフマル酸を縮合して得られたポリエステル樹脂100重量部、フタロシアニン顔料4重量部、ジ−tert−プチル酸のクロム錯体4重量部を原料とし、これらをヘンシルミキサーにより十分に予備混合し、2軸押し出し式混練機により溶融混練し、得られた混練物を冷却後、ハンマーミルを用いて約1.5mm程度に粗粉砕し、次にジェットミルにより微粉砕を行って微粉砕物を得た。
さらに、得られた微粉砕物を分級して、重量平均粒径が8.6μmのシアン色の紛体を得た。該粉体100重量部と平均粒径0.05μmの酸化チタン1重量部をヘンシルミキサーで混合しシアントナー1を得た。
[実機評価]
上述のように作製した各樹脂被覆キャリアとシアントナー1をトナー濃度[(トナー重量/現像剤(トナー+キャリア)重量)×100]=8%となるよう混合して現像剤を作製し、この現像剤を現像器に充填した後、シャープ社製フルカラー用コピー機「ARC−160(商品名)」本体にセットした(現像剤充填量は、各630g)。コピー初期(1枚目〜13枚目)及び10万枚目の画質評価を下記に示す方法により行い、現像剤の評価を行った。それぞれの結果を表2に示す。
(1)画像濃度
適正露光条件下でコピーし、ID(画像濃度)の評価を行った。ベタ部の画像濃度を濃度計X−Rite(登録商標、日本平版機材製)にて測定し、以下のようにランク付けを行った。
◎:非常に良い。
○:目標画像濃度の範囲である。
△:画像濃度が若干低めであるが、使用可能。
×:目標下限を下回っている。
××:画像濃度が非常に低く使用不可能。
(2)かぶり
画像濃度測定と同様に、X−Rite(登録商標)を用いて予めペーパーペース(コピー前のペーパーの値)を測定しておき、コピー後、白地を測定し、式「コピー後の濃度−ペーパーペース=かぶり」により、かぶりを求め、以下のようにランク付けを行った。
◎:0.5未満
○:0.5〜1.0
△:1.0〜1.5
×:1.5〜2.5
××:2.5以上
(3)キャリア飛散
A3用紙を、初期段階と10万枚コピー後それぞれにおいて10枚レトラトーンでコピーし10枚中の白斑の個数を数え、以下のようにランク付けを行った。
◎:白斑が無いこと
○:1〜5個
△:6〜10個
×:11〜20
××:21個以上
(4)トナー飛散
現像機周辺を目視で確認し、以下のようにランク付けを行った。
◎:全く見られない。
○:ごく微量確認された。
△:限界(使用可能)レベル。
×:多い
××:非常に多い
(5)横細線再現性
目視により判定し、以下のようにランク付けを行った。
◎:非常に良く再現している。
○:ほぼ再現している。
△:限界(使用可能)レベル。
×:切れかすれが目立つ。
××:全く再現していない。
(6)ハーフトーン均一性
ハーフトーンをコピーし目視により判定し、以下のようにランク付けを行った。
◎:非常に均一でムラが無い。
○:均一でムラが無い。
△:若干ムラが見られるが限界(使用可能)レベル。
×:ムラが目立ち不均一。
××:ムラが非常に多く不均一。
表1及び表2から明らかなように、予備焼成した後、造粒物を流動手段で流動させながら1200〜1400℃で焼成することにより得られ、平均粒径、表面均一度、平均球状率及び球状率標準偏差が高い水準にあるフェライト粒子に樹脂を被覆した実施例1及び2は、現像剤として用いた時に、初期及び経時(10万枚耐刷後)において、画像濃度、かぶり、トナー飛散、キャリア飛散、横細線再現性及びハーフトーン均一性のいずれも良好である。これに対して、上記方法以外の方法で焼成することにより得られ、表面均一度や球状率標準偏差等に劣るフェライト粒子に樹脂を被覆した比較例1〜5は、実施例1及び2に比べて、初期及び経時(10万枚耐刷後)において、低画質であり、特に横細線再現性に劣る。
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアは、小粒径で、高い球状度及び表面均一度を有し、また標準偏差の小さいキャリア芯材に樹脂を被覆したものであり、被覆ムラや芯材の露出部が生じることがなく、またキャリア飛散も少ない。このような樹脂被覆キャリアは、本発明に係る製造方法によって、安定して生産性をもって製造できる。そして、上記樹脂被覆キャリアを用いた本発明に係る電子写真現像剤は、高画質が得られ、しかも耐久性に優れることから、特に高画質の要求されるフルカラー機並びに画像維持の信頼性及び耐久性の要求される高速機の分野に広く使用可能である。
図1は、本発明に係る製造方法で用いられる焼成工程を示す概略図である。 図2は、本発明に係る焼成物(球状フェライト粒子)の電子顕微鏡写真(倍率300)である。
1:造成物供給器
2:ロータリーキルン、3:熱間部、4:発熱体、5:冷却部、6:冷却体、7:焼成物(球状フェライト粒子)。

Claims (6)

  1. フェライト原料を秤量、混合後、粉砕し、得られたスラリーを造粒し、次いで焼成、樹脂被覆を行うことによって得られる電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアであって、上記焼成の前に、上記造粒物を500〜700℃、0.1〜5時間予備焼成した後、上記焼成が造粒物を流動手段により流動させながら焼成温度1200〜1400℃、焼成時間0.1〜5時間で行われることにより得られ、平均粒径20〜50μm、表面均一度92〜100%、平均球状率1〜1.3、かつ球状率標準偏差0.125以下の球状フェライト粒子の表面に樹脂を被覆してなることを特徴とする電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア。
  2. 上記球状フェライト粒子の見掛け密度が2.0〜2.5g/cm、磁場79.5A/mにおける磁化が40〜80Am/kg、本体磁化の80%以上である飛散物磁化を有する請求項1記載の電子写真現像剤用樹脂被覆キャリア。
  3. フェライト原料を秤量、混合後、粉砕し、得られたスラリーを造粒し、次いで焼成、樹脂被覆を行う電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアの製造方法において、上記焼成の前に、上記造粒物を500〜700℃、0.1〜5時間予備焼成した後、上記焼成が造粒物を流動手段により流動させながら焼成温度1200〜1400℃、焼成時間0.1〜5時間で行われることを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアの製造方法。
  4. 上記焼成が回転式焼成炉によりなされる請求項3記載の電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアの製造方法。
  5. 上記回転式焼成炉のレトルト回転速度が、0.5〜10rpm、レトルト勾配が0.5〜4度、入口側ハンマー回数が10〜300回/分、出口側ハンマー回数が10〜300回/分である請求項4記載の電子写真現像剤用樹脂被覆キャリアの製造方法。
  6. 請求項1又は2に記載の樹脂被覆キャリアとトナーとからなる電子写真現像剤。
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