JP4567399B2 - 化粧品、およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、化粧品、およびその製造方法に関するものであり、詳しくは、透明性が高く、酸素透過性、皮膜形成性に優れている上、美爪料として長期間に亘って使用しても爪を傷めない化粧品、およびその製造方法に関するものである。
美爪料(いわゆるマニキュアあるいはネイルカバー)は、爪へ直接的に塗布するものであるため、爪への悪影響を与えないために、酸素透過性の高いことが要求される。そのような酸素透過性の高い美爪料として、シリコーン系樹脂を使用した美爪料が開発されているが、シリコーン系樹脂からなる美爪料は、爪へ塗布する際の皮膜形成性が悪い、という不具合がある。また、シリコーン系樹脂からなる美爪料の製造においては、合成後の樹脂をそのまま使用することができないため、一旦合成した後に適当な溶媒に溶解して使用しなければならない、という不具合もある。
それゆえ、そのような不具合を解消するために、美爪料を形成する樹脂中に極性の強い酸性のカルボキシル基を導入することによって、爪への密着性を向上させて皮膜形成性を良好なものとする技術が提案されている(特許文献1)。
特開2003−342128号公報
しかしながら、上記した特許文献1の如きカルボキシル基を含んだシリコーン系樹脂からなる美爪料は、酸素透過性に優れており皮膜形成性も良好であるものの、カルボキシル基を多量に含んでおり酸性であるため、長期間に亘って使用した場合に爪を傷めてしまう可能性がある。
本発明の目的は、上記従来の美爪料の有する問題点を解消し、酸素透過性が高く皮膜形成性も良好である上、美爪料として長期に亘って使用しても爪を傷めない実用的な化粧品を提供することにある。
美爪料の表面自由エネルギーが高く濡れ性が良好であるほど、爪への密着性が良く、皮膜形成性が良好であると考えられている。従来、そのように美爪料の表面自由エネルギーを高くするためには、カルボキシル基の如く極性の高い置換基を美爪料の形成樹脂中に多量に導入することが不可欠と考えられていたが(上記特許文献1参照)、発明者らは、試行錯誤の結果、非イオン性の水酸基を樹脂中に多く導入することにより、極性の高い物質の添加量を多量に導入することなく爪との密着性を高めて皮膜形成性を良好にできることを見出し、本発明をするに至った。
すなわち、本発明の内、請求項1に記載された発明は、ラジカル重合性官能基を1つ有するシリコーン系単量体(A)10〜70重量部と、分子中に少なくとも1つ以上の水酸基とラジカル重合性官能基を有する単量体(B)5〜50重量部と、分子中に少なくとも1つ以上の燐酸基とラジカル重合性官能基を有する単量体(C)0.01〜2重量部と、上記各単量体と共重合可能なラジカル重合性官能基を有する単量体(D)20〜85重量部からなる混合単量体を共重合してなる共重合体を主成分としており、前記シリコーン系単量体(A)が、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレートであり、前記単量体(B)が、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの内のいずれかであり、前記単量体(C)が、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイロキシプロピルアシッドホスフェートの内のいずれかであり、前記単量体(D)が、メチル(メタ)アクリレートであるとともに、0.2mmの厚みの皮膜を形成して36℃の雰囲気下で測定した場合の酸素透過係数が10×10 −11 cm cm/sec・cm ・mmHg以上であることを特徴とする美爪料用の化粧品である。
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の美爪料用の化粧品を製造するための製造方法であって、ラジカル重合性官能基を1つ有するシリコーン系単量体10〜70重量部に、分子中に少なくとも1つ以上の水酸基とラジカル重合性官能基を有する単量体5〜50重量部、分子中に少なくとも1つ以上の燐酸基とラジカル重合性官能基を有する単量体0.01〜2重量部と、上記各単量体と共重合可能なラジカル重合性官能基を有する単量体20〜85重量部とを加えてなる混合単量体を、樹脂濃度が10%〜80%となるように溶液重合することを特徴とする化粧品の製造方法である。
本発明の化粧品は、十分な酸素透過性を有しているので、美爪料として爪を装飾した場合に、爪の劣化がなく、圧迫感を感じることもない。また、透明性が高く、美観に優れている。さらに、良好な皮膜形成性を有しているので、美爪料として爪を装飾する際に、非常にスムーズに途切れることなく皮膜を形成することができる。加えて、極性が小さいので、美爪料として長期間に亘って使用した場合でも、爪を痛めることがない。
加えて、本発明の化粧品は、クリーム、ローション、顔マスク、顔パック、ファンデーション等の基礎化粧品、マスカラ、アイライナー、口紅、毛染め等のカラー化粧品等の美爪料以外の化粧品として用いたり、それらの各種の化粧品を加工する際の結合剤として用いたり、人体の表皮の皮膜剤として用いたりすることも可能であり、そのように用いた場合でも、極性の大きな成分を含んでいないので、人体へ悪影響を及ぼすことがない。
また、本発明の化粧品の製造方法によれば、合成直後の樹脂を溶媒とともにそのまま美爪料として用いることができるので、工程の簡素化された安価な化粧品の生産が可能となる。
本発明の化粧品を得るためには、分子中に少なくとも1つ以上の非イオン性の水酸基とラジカル重合性官能基を有する単量体(モノマー)5〜50重量部と、分子中に少なくとも1つ以上の燐酸基とラジカル重合性官能基を有する単量体0.01〜2重量部とを併用する必要がある。すなわち、本発明では、ケラチンからできている爪が強い酸性下で傷つく事態を防止するため、非イオン性の水酸基を有する単量体を多く用いる必要がある。水酸基を有するラジカル重合性単量体の添加量は、5〜50重量部の範囲であることが必要であり、8〜35重量部の範囲内であるとより好ましい。水酸基を有するラジカル重合性単量体の添加量が8重量部より少ないと、皮膜形成性が不十分となるので好ましくなく、反対に、水酸基を有するラジカル重合性単量体の添加量が35重量部より多いと、酸素透過性が不良となるので好ましくない。
また、本発明においては、良好な皮膜形成性を発現させるために、燐酸基とラジカル重合性官能基を有する単量体をごく少量だけ用いることが必要である。なお、化粧品中の燐酸基は、良好な皮膜形成性を発現させる上で、非イオン性の水酸基を補助する役割を果たすものである。かかる燐酸基とラジカル重合性官能基を有する単量体の添加量は、0.01〜2重量部の範囲であることが必要であり、0.02〜1.0重量部の範囲内であるとより好ましい。燐酸基とラジカル重合性官能基を有する単量体の添加量が0.02重量部より少ないと、皮膜形成性が不十分となるので好ましくなく、反対に、燐酸基とラジカル重合性官能基を有する単量体の添加量が1.0重量部より多いと、美爪料として長期間に亘って使用した場合に爪を傷める可能性が生ずるので好ましくない。
分子中に少なくとも1つ以上の非イオン性の水酸基を有するラジカル重合性単量体としては、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、 2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、 2−ヒドロキシ−3−フェニキシプロピル(メタ)アクリレート、 2−(メタ)アクリロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、 グリセリンモノ(メタ)アクリレート、 2−ヒドロキシ−3−アクリロキシプロピルメタアクリレート等の(メタ)アクリルエステル等を用いることができる。また、それらの(メタ)アクリルエステルを2種以上併用することも可能であるし、それらの(メタ)アクリルエステルの変性物を用いることも可能である。
一方、分子中に少なくとも1つ以上の燐酸基を有するラジカル重合性単量体としては、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイロキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイロキシブチルアシッドホスフェート等を用いることができる。また、それらのラジカル重合性単量体を2種以上併用することも可能であるし、それらのラジカル重合性単量体の変性物を用いることも可能である。
また、本発明では、良好な酸素透過性を発現させるためにシリコーン系単量体を使用する必要がある。本発明に使用されるシリコーン系単量体とは、ラジカル重合性官能基を1つ有するものであり、具体的には、ペンタメチルジシロキサニルメチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルジシロキサニルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレート、イソブチルヘキサメチルトリシロキサニルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルメチル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロール(メタ)アクリレート、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルグリセロール(メタ)アクリレート等を挙げることができる。また、それらのシリコーン系単量体は、共重合成分中において10〜70重量部使用することが必要であり、15〜65重量部使用するのが好ましい。使用量が10重量部より少ないと、十分な酸素透過性を得ることができないので好ましくなく、反対に、使用量が70重量部を超えると、皮膜形成性が悪くなるので好ましくない。
さらに、本発明では、塗布後の皮膜に適当な硬度や柔軟性を持たせたり、塗布後の皮膜の透明性を向上させたり、樹脂に添加される染色用色素の定着性を向上させたりする目的で、上記した水酸基を有するラジカル重合性単量体、燐酸基を有するラジカル重合性単量体、およびシリコーン系単量体と共重合可能なラジカル重合性単量体を使用する必要がある。そのようなラジカル重合性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキルアクリレート等を挙げることができ、それらの中から、目的に応じて、一種または二種以上を選択して用いることができる。それらの共重合可能なラジカル重合性単量体は、共重合成分中において20〜85重量部使用することが必要であり、30〜70重量部使用するのが好ましい。使用量が20重量部より少ないと、十分な硬度や皮膜形成性が得られないので好ましくなく、反対に、使用量が85重量部を超えると、十分な酸素透過性を得ることができなくなるので好ましくない。
また、本発明に係る化粧品の製造方法は、ラジカル重合性官能基を1つ有するシリコーン系単量体10〜70重量部に、分子中に少なくとも1つ以上の水酸基とラジカル重合性官能基を有する単量体5〜50重量部、分子中に少なくとも1つ以上の燐酸基とラジカル重合性官能基を有する単量体0.01〜2重量部と、上記各単量体と共重合可能なラジカル重合性官能基を有する単量体20〜85重量部とを混合してなる混合単量体を、樹脂濃度が10%〜80%となるように溶液重合することを特徴とするものである。
本発明における溶液重合は、常法にしたがって各単量体を溶液(有機溶媒)中に溶解し、重合開始剤を添加し、窒素雰囲気中で加熱攪拌する方法によるのが好ましい。また、使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコールやアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒を挙げることができ、それらの一種または二種以上を適宜混合して用いることができる。また、それらの有機溶媒は、最終的に得られる美爪料中の樹脂濃度が10重量%〜80重量%になるように使用するのが好ましい。有機溶媒の使用量が少ないと(すなわち、樹脂濃度が80重量%を超えると)、得られる化粧品の粘度が高くなって爪への塗布性が悪くなり、塗布時に樹脂が糸をひいたり、塗布後の表面が滑らかにならなくなるので好ましくなく、反対に、多すぎると(すなわち、樹脂濃度が10重量%を下回ると)、十分な厚みを有する皮膜が得られにくくなるので好ましくない。なお、有機溶媒の分子量が小さいと、揮発性が高くなり、塗布時に皮膜の厚み斑を生じさせる上、刺激臭により使用者に不快感を与えることがあるし、逆に、有機溶媒の分子量が大きいと、塗布後の皮膜の乾燥に時間がかかるようになる。したがって、それらの点と、樹脂の溶解性や製造後の化粧品の用途を考慮しつつ、複数種類の有機溶媒を適宜組み合わせて使用するのが望ましい。
さらに、溶液重合は、通常のラジカル重合開始剤を0.01重量部以上5重量部以下の範囲で添加して行うのが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、たとえば、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、1、1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2、2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、2、2’−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル)、2、2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2、2’−アゾビス(2、4、4−トリメチルペンタン)に代表されるアゾ化合物や、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、ビス(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、α−α’−ビス(ターシャリーブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2、5−ジメチル−2、5−ビス(ターシャリーブチルペルオキシ)ヘキサンに代表される過酸化物等を用いることができる。
また、本発明の化粧品の製造においては、各種の着色剤等を添加することができる。たとえば、塗布後の外観を良好なものとするために、真珠光沢を有する真珠層粉末や染色した真珠層粉末を、それぞれ単独で、あるいは適宜混合して添加することも可能である。なお、貝殻から真珠層を取り出す場合には、稜柱層を除去した貝殻を、パール光沢が失われないように0.05〜2mm程度の粒子径となるように破砕する。また、必要に応じて、そのような貝殻の粉砕物を、染料や植物エキスによって染色して用いることもできる(特公平6−43320号公報、特公平6−99152号公報参照)。さらに、本発明の化粧品の製造においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、チタン、ベンガラ等の顔料や各種の紫外線吸収剤等を加えることも可能である。
以下、本発明の化粧品およびその製造方法の具体例として、美爪料およびその製造方法について説明するが、本発明は、これらの態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。なお、以下の実施例で用いた真珠粉末、真珠層粉末の作製方法は、以下の通りである。
[真珠粉末]
採取したアコヤ貝真珠を、ペンチ等の工具で割り、核や異物を除いた後に、ハンマーで砕き、その粉砕物の内の36メッシュを通り50メッシュを通らない部分を収集して、真珠粉末として使用した。
[真珠層粉末]
アコヤ貝の貝殻3.0kg、塩酸3.0kg、水6.0kg、酸化アルミニウムを材質とした研磨石(直径8mm長さ15mmの斜円柱)10.0kgを層内容積65l(リットル)の回転式可傾型バレル研磨機(株式会社TKX社製、NK−65型)に入れ、密封した状態で、回転数38rpmで30分間に亘って回転させた。なお、研磨機の蓋(投入口)には、内径0.8cmと内径1.6cmのバルブを設置し、研磨石の取り出し時には、バルブを徐々に開放してから蓋を開いて研磨石を取り出した。しかる後、振動式選別機(株式会社TKX社製、KEE−3型、選別網2cm角)を用いて貝殻と研磨石とを分別して水洗した。そして、水洗した貝殻を、5%水酸化ナトリウム水溶液5kgに18時間浸漬し、十分に水洗してから、1%塩酸水溶液5kgに2時間浸漬した後に、再度、水洗した。しかる後に、水洗後の貝殻を、75℃の雰囲気下で1時間に亘って乾燥し、カッターミル(株式会社西村機械製作所製、KM−D3型)とアトマイザー(不二パウダル株式会社製、E2W−75型)によって、平均粒子径が約180μmとなるまで粉砕した。そして、それらの貝殻の粉砕物の内の36メッシュを通り50メッシュを通らない部分(粒子径は300〜425μm)を収集し、その粉砕物に約2倍量のエタノールを加えて、30分間攪拌した後、遠心分離機で過剰なエタノールを回収した後、残査をタンブルドライヤー(楠木機械社製バキュームタンブルドライヤー)により150℃の雰囲気下で減圧乾燥させた。さらに、貝殻の粉砕物を脱色するとともに当該粉砕物から不純物を除去するために、貝殻の粉砕物を過酸化水素水中に24時間浸漬した。なお、過酸化水素水は過酸化水素の濃度が2%になるように希釈して用いた。そして、浸漬後の貝殻の粉砕物を、再度、水洗した後に、0.1%カタラーゼ緩衝溶液に24時間に亘って浸漬し、残存している過酸化水素水を除去した。なお、緩衝溶液は、NaHPO−NaHPOのpH6.73の水溶液を用いた。そして、得られた真珠層粉末25gとクチナシグリーン(グリコ栄養食品社製)0.1%水溶液75gとを軽く攪拌した後、12時間に亘ってそのまま静置した。その後、十分に水洗した真珠層粉末を、30℃で5時間送風乾燥した。
また、以下の実施例および比較例における美爪料の物性の評価方法は、以下の通りである。
[酸素透過性]
実施例および比較例で得られた美爪料をガラス板上に塗布し、溶媒を室温下で蒸発させて約0.2mmの厚みの皮膜を作製した。しかる後、作製された皮膜の酸素透過量を、MOCON社製OX−TRAN 100Aを用いて36℃の雰囲気下で測定した。なお、酸素透過量の単位は、DK×10−11(cm/sec)・(mLO×mmHg)である。
[皮膜形成性]
実際に爪に塗布し、皮膜の剥離やひび割れが発生するか否かを、目視によって以下の3段階で官能評価した。
きわめて良好=◎
良好=○
不良=×
[透明性]
実際に爪に塗布した皮膜の透明性を、目視によって以下の2段階で官能評価した。
透明=○
不透明=×
[爪への影響]
実際に爪に塗布して7日間保持した後に、爪の状態が変化したか否かを(すなわち、爪の色が変色したか否か、爪に亀裂が発生したか否か等を)、目視によって以下の2段階で官能評価した。
変化なし=○
変化あり=×
[実施例1]
500mlのフラスコに、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート40重量部、メチルメタクリレート54重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート5重量部、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート1重量部、溶媒として酢酸ブチル110重量部、酢酸エチル70重量部、エタノール30重量部、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5重量部を仕込んだ後に、溶存酸素を除くために窒素ガスバブリングを行ってから、フラスコを密封した。そして、そのフラスコを恒温槽中に移し、攪拌しながら15時間に亘って60℃に加熱することによって、フラスコ内の単量体を重合させた。そして、重合終了後のフラスコを水で冷却した後に、フラスコ内から、重合後の樹脂を溶媒とともに取り出すことによって実施例1の美爪料を得た。なお、実施例1の美爪料の組成を表1に示す。しかる後、得られた実施例1の美爪料を用いて、酸素透過性、皮膜形成性、透明性、爪への影響を評価した。評価結果を表2に示す。
[実施例2]
500mlのフラスコに、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート23重量部、メチルメタクリレート55重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート20重量部、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート2重量部、溶媒として酢酸ブチル100重量部、酢酸エチル80重量部、アセトン20重量部、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5重量部を仕込んだ後に、窒素ガスバブリングを行ってから、フラスコを密封した。そして、そのフラスコを恒温槽中に移し、攪拌しながら18時間に亘って60℃に加熱することによって、フラスコ内の単量体を重合させた。そして、重合終了後のフラスコを水で冷却してから、フラスコ内から、重合後の樹脂を溶媒とともに取り出した後、酸化チタン1重量部およびベンガラ1重量部を添加することによって実施例2の美爪料を得た。なお、実施例2の美爪料の組成を表1に示す。しかる後、得られた実施例2の美爪料を用いて、酸素透過性、皮膜形成性、透明性、爪への影響を評価した。評価結果を表2に示す。
[実施例3]
500mlのフラスコに、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート40重量部、メチルメタクリレート24.5重量部、ヒドロキシプロピルメタクリレート35重量部、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート0.5重量部、溶媒として酢酸ブチル100重量部、酢酸エチル100重量部、エタノール30重量部、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5重量部を仕込んだ後に、窒素ガスバブリングを行ってから、フラスコを密封した。そして、そのフラスコを恒温槽中に移し、攪拌しながら18時間に亘って60℃に加熱することによって、フラスコ内の単量体を重合させた。そして、重合終了後のフラスコを水で冷却した後、フラスコ内から、重合後の樹脂を溶媒とともに取り出し、真珠粉末2重量部を添加することによって実施例3の美爪料を得た。なお、実施例3の美爪料の組成を表1に示す。しかる後、得られた実施例3の美爪料を用いて、酸素透過性、皮膜形成性、透明性、爪への影響を評価した。評価結果を表2に示す。
[実施例4]
500mlのフラスコに、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート40重量部、メチルメタクリレート30重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート10重量部、ヒドロキシプロピルメタクリレート20重量部、2−メタクリロイロキシプロピルアシッドホスフェート0.5重量部、溶媒として酢酸ブチル250重量部、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5重量部を仕込んだ後に、窒素ガスバブリングを行ってから、フラスコを密封した。そして、そのフラスコを恒温槽中に移し、攪拌しながら18時間に亘って60℃に加熱することによって、フラスコ内の単量体を重合させた。そして、重合終了後のフラスコを水で冷却した後、フラスコ内から、重合後の樹脂を溶媒とともに取り出し、真珠層粉末2重量部を添加することによって実施例4の美爪料を得た。なお、実施例4の美爪料の組成を表1に示す。しかる後、得られた実施例4の美爪料を用いて、酸素透過性、皮膜形成性、透明性、爪への影響を評価した。評価結果を表2に示す。
[実施例5]
500mlのフラスコに、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート60重量部、メチルメタクリレート19.95重量部、ヒドロキシブチルメタクリレート20重量部、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート0.05重量部、溶媒としてエタノール200重量部、アセトン60重量部、ジクミルパーオキサイド1重量部を仕込んだ後に、窒素ガスバブリングを行ってから、フラスコを密封した。そして、そのフラスコを恒温槽中に移し、攪拌しながら8時間に亘って50℃に加熱することによって、フラスコ内の単量体を重合させた。そして、重合終了後のフラスコを水で冷却した後、フラスコ内から、重合後の樹脂を溶媒とともに取り出すことによって実施例5の美爪料を得た。なお、実施例5の美爪料の組成を表1に示す。しかる後、得られた実施例5の美爪料を用いて、酸素透過性、皮膜形成性、透明性、爪への影響を評価した。評価結果を表2に示す。
[実施例6]
500mlのフラスコに、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート10重量部、メチルメタクリレート50重量部、ヒドロキシプロピルメタクリレート9重量部、ヒドロキシブチルメタクリレート30重量部、2−メタクリロイロキシプロピルアシッドホスフェート1重量部、溶媒として酢酸ブチル120重量部、エタノール120重量部、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5重量部を仕込み、窒素ガスバブリングを行ってから、フラスコを密封した。そして、そのフラスコを恒温槽中に移し、攪拌しながら18時間に亘って60℃に加熱することによって、フラスコ内の単量体を重合させた。そして、重合終了後のフラスコを水で冷却した後、フラスコ内から、重合後の樹脂を溶媒とともに取り出し、真珠層粉末2重量部を添加することによって実施例6の美爪料を得た。なお、実施例6の美爪料の組成を表1に示す。しかる後、得られた実施例6の美爪料を用いて、酸素透過性、皮膜形成性、透明性、爪への影響を評価した。評価結果を表2に示す。
[比較例1]
500mlのフラスコに、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート40重量部、メチルメタクリレート45重量部、メタクリル酸15重量部、溶媒として酢酸ブチル110重量部、酢酸エチル70重量部、エタノール30重量部、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5重量部を仕込んだ後、窒素ガスバブリングを行ってから、フラスコを密封した。そして、そのフラスコを恒温槽中に移し、攪拌しながら18時間に亘って60℃に加熱することによって、フラスコ内の単量体を重合させた。そして、重合終了後のフラスコを水で冷却した後、フラスコ内から、重合後の樹脂を溶媒とともに取り出すことによって比較例1の美爪料を得た。なお、比較例1の美爪料の組成を表1に示す。しかる後、得られた比較例1の美爪料を用いて、酸素透過性、皮膜形成性、透明性、爪への影響を評価した。評価結果を表2に示す。
[比較例2]
500mlのフラスコに、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート40重量部、メチルメタクリレート60重量部、溶媒として酢酸ブチル120重量部、酢酸エチル100重量部、エタノール50重量部、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5重量部を仕込んだ後、窒素ガスバブリングを行ってから、フラスコを密封した。そして、そのフラスコを恒温槽中に移し、攪拌しながら18時間に亘って60℃に加熱することによって、フラスコ内の単量体を重合させた。そして、重合終了後のフラスコを水で冷却した後、フラスコ内から、重合後の樹脂を溶媒とともに取り出すことによって比較例2の美爪料を得た。なお、比較例2の美爪料の組成を表1に示す。しかる後、得られた比較例2の美爪料を用いて、酸素透過性、皮膜形成性、透明性、爪への影響を評価した。評価結果を表2に示す。
[比較例3]
500mlのフラスコに、水180重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム5重量部、過硫酸カリウム8重量部を仕込んだ後に、溶存酸素を除くために窒素ガスバブリングを行った。しかる後、そのフラスコに、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート50重量部、メチルメタクリレート40重量部、メタクリル酸10重量部を滴下した後、そのフラスコを恒温槽中に移し、攪拌しながら5時間に亘って70℃に加熱することによって、フラスコ内の単量体を重合させた。そして、得られたエマルジョンにエチルセロソルブを80重量部加えることによって、比較例3のポリマーエマルジョン系の美爪料を得た。なお、比較例3の美爪料の組成を表1に示す。しかる後、得られた比較例3の美爪料を用いて、酸素透過性、皮膜形成性、透明性、爪への影響を評価した。評価結果を表2に示す。
[比較例4]
ニトロセルロース樹脂100重量部を、酢酸エチル100重量部、アセトン100重量部からなる混合溶媒に溶解することによって比較例4の美爪料を得た。なお、比較例4の美爪料の組成を表1に示す。しかる後、得られた比較例4の美爪料を用いて、酸素透過性、皮膜形成性、透明性、爪への影響を評価した。評価結果を表2に示す。
Figure 0004567399
Figure 0004567399
表2の評価結果より、本発明の美爪料は、酸素透過性、皮膜形成性、透明性が良好であるばかりでなく、長期間に亘って塗布した場合でも爪への悪影響がないことが分かる。これに対して、比較例1の如くカルボキシル基を有する単量体を配合した美爪料は、長期間に亘って使用した場合に爪の変色が見られた。また、比較例2の如く燐酸基を有する単量体を全く配合しなかった美爪料は、皮膜形成性が不良であった。さらに、比較例3の如きポリマーエマルジョン系の美爪料は、透明性が不良であり、長期間に亘って使用した場合に爪の変色も見られた。一方、比較例4の如きセルロース系の美爪料は、酸素透過性が不良であった。
本発明の化粧品は、上記の如く、酸素透過性、皮膜形成性、透明性が良好である上、爪への悪影響が全くないものであるから、爪を装飾するための美爪料として、好適に利用することができる。加えて、本発明の化粧品は、美爪料のみならず、クリーム、ローション、顔マスク、顔パック、ファンデーション等の基礎化粧品、マスカラ、アイライナー、口紅、毛染め等のカラー化粧品、それらの化粧品中の結合剤、人体の表皮の皮膜剤として、溶液状態あるいは固形状態で好適に利用することができる。また、本発明の化粧品の製造方法は、上記の如く優れた機能を有する美爪料等の化粧品を効率良く製造するための方法として、好適に利用することができる。

Claims (2)

  1. ラジカル重合性官能基を1つ有するシリコーン系単量体(A)10〜70重量部と、分子中に少なくとも1つ以上の水酸基とラジカル重合性官能基を有する単量体(B)5〜50重量部と、分子中に少なくとも1つ以上の燐酸基とラジカル重合性官能基を有する単量体(C)0.01〜2重量部と、上記各単量体と共重合可能なラジカル重合性官能基を有する単量体(D)20〜85重量部からなる混合単量体を共重合してなる共重合体を主成分としており、
    前記シリコーン系単量体(A)が、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル(メタ)アクリレートであり、
    前記単量体(B)が、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの内のいずれかであり、
    前記単量体(C)が、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイロキシプロピルアシッドホスフェートの内のいずれかであり、
    前記単量体(D)が、メチル(メタ)アクリレートであるとともに、
    0.2mmの厚みの皮膜を形成して36℃の雰囲気下で測定した場合の酸素透過係数が10×10 −11 cm cm/sec・cm ・mmHg以上であることを特徴とする美爪料用の化粧品。
  2. 請求項1に記載の美爪料用の化粧品を製造するための製造方法であって、
    ラジカル重合性官能基を1つ有するシリコーン系単量体10〜70重量部に、分子中に少なくとも1つ以上の水酸基とラジカル重合性官能基を有する単量体5〜50重量部、分子中に少なくとも1つ以上の燐酸基とラジカル重合性官能基を有する単量体0.01〜2重量部と、上記各単量体と共重合可能なラジカル重合性官能基を有する単量体20〜85重量部とを加えてなる混合単量体を、樹脂濃度が10%〜80%となるように溶液重合することを特徴とする化粧品の製造方法。
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