JP4566345B2 - 放射線撮影画像処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線などの放射線を用いて撮影された画像を処理する放射線撮影画像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
被写体を透過した放射線像を撮影する放射線撮影装置として、従来は放射線を蛍光に変換する増感紙と、蛍光で感光するフィルムを密着させた、スクリーン・フィルム系と呼ばれる撮影装置が使用されてきた。また蛍光体とイメージ・インテンシファイア(I.I.)を組み合わせて放射線画像の増倍を行い、この増倍された画像を光学系を介して撮像管で撮影する、I.I.−TV撮影装置も使用されてきた。前者は一般撮影と呼ばれる静止画撮影に、また後者は透視撮影と呼ばれる動画撮影に主に使用されてきた。
【0003】
一方、近年画像デジタル化の要求から、デジタル画像出力を有するデジタル撮影装置が使用され始めている。一般撮影では、スクリーン・フィルム系に代わって、放射線像を潜像として蓄積するイメージングプレートを使用し、このイメージングプレートをレーザ走査することにより潜像を励起し、発生する蛍光を光電子増倍管で読み取る、コンピューテッド・ラジオグラフィ装置も使用されている。また透視撮影では、撮像管の代わってCCD等の固体撮像素子を使用する、I.I.−DR撮影装置も使用されている。コンピューテッド・ラジオグラフィ装置とI.I.−DR撮影装置の両者は、デジタル画像出力を有しており、医療画像のデジタル化に貢献し始めている。
【0004】
また、最近では、蛍光体と大面積固体撮像素子を密着させた放射線平面検出器、いわゆるフラットパネルディテクタを使用し、光学系等を介さずに放射線像を直接デジタル化する、デジタル撮影装置が実用化されている。フラットパネルディテクタは、原理的に静止画のみならず動画も撮影可能なことから、次世代のデジタル撮影装置として期待されている。
【0005】
これらの撮影装置は、診断するための画像を提供することから、その画質は撮影装置の最高性能が保たれるよう保守管理される必要がある。そこで従来は増感紙やイメージングプレートの汚れ、キズ、異物等を放射線技師が目視確認し、画像に異常が発生しないよう保守管理してきた。またI.I.−TVの画像に異常がないか確認するために、チャート等を撮影してその画像を放射線技師が目視確認し、画像に異常が発生しないように保守管理してきた。
【0006】
さらに放射線撮影は患者に負担を掛ける場合があるため、画質のみならず動作安定性も十分に保守管理される必要がある。つまり患者を撮影するには、撮影室に設置されている撮影装置が万全に動作し、患者が長時間待たされるなどの苦痛をできるだけ少なくして、撮影を完了する必要がある。これらの保守管理作業は多岐にわたっており、放射線技師に負担を掛けることから、その自動化が望まれている。
【0007】
放射線撮影装置の保守管理自動化の一例として、各地の病院に設置されたこれら撮影装置と、撮影装置と離れた場所に設置された保守装置を、モデムを通じて電話回線で接続し、撮影装置の動作状況を監視して保守作業を行う遠隔診断システムが提案されている。この遠隔診断システムでは、保守装置から撮影装置を定期的に呼び出し、撮影装置の自己診断プログラムを起動することによって撮影装置の自己診断を行い、その結果を撮影装置ならびに保守装置に伝達している。また撮影装置が定期的に自己診断プログラムを起動することによって自己診断を行い、その結果を保守装置に伝達するシステムもある。
【0008】
自己診断プログラムが行う診断内容は、撮影装置や自己診断システムによって多種多様である。例えば、放射線発生装置の発生線量や撮影装置の機械的動作を自己診断するシステムが挙げられる。またレーザ走査装置およびイメージングプレート搬送装置の、動作安定性を自己診断するシステムも考えられる。さらに光電子増倍管や撮像管のバイアス電圧、感度または暗電流を自己診断するシステムも考えられる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
撮影装置の画質を正確に保守管理する場合は、上記のような撮影装置構成要素の部分的な動作確認による保守管理では足りず、最終的に得られる画質そのものを確認する必要がある。しかしながら、画質異常には多様な形態が存在するため、撮影装置の自己診断プログラムでそのすべてを網羅して自動解析するのは不可能である。また画像データは情報量が大きいために、撮影装置の自己診断プログラムを、撮影業務中にバックグラウンドで動作させた場合は、撮影装置の処理能力が低下する可能性がある。
【0010】
一方、保守装置に画像を転送して解析を依頼する場合は、画像データは情報量が大きいために、電話回線に負荷が掛かり時間とコストの両面から実用的ではない。
【0011】
さらに以上の制限から、自己診断プログラムの動作頻度を低下させた場合は、画質異常の発生から発見までの時間が長くなるため、撮影装置の正常復帰が遅くなる可能性がある。
【0012】
しかし、撮影装置が従来経験したことのない異常が発生した場合に、解析に時間を要するため撮影装置の正常復帰が遅くなる可能性がある。
【0013】
そこで、本発明は、撮影装置と保守装置の間の通信時間と通信コストを削減しながら、撮影装置の画質を保証することができる放射線撮影装置のための、画像処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願の放射線撮影画像処理装置は、放射線画像を撮影する撮影手段と、前記撮影手段の動作状況を診断する診断手段と、前記診断手段の診断結果に応じて、前記撮影手段の動作状況に関する情報を保守装置に対して送信する送信手段と、前記撮影手段の動作状況に関する情報の量を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に説明する本発明の自己診断システムは、撮影装置と該撮影装置の保守を行う保守装置を互いに通信手段を介して接続して、撮影装置の動作状況を自動的に診断する自己診断するシステムであり、その撮影装置は撮影装置の動作状況を自動的に診断する自己診断手段と撮影装置と保守装置の間で送受信すべき情報の大きさを測定する情報量測定手段とその送受信すべき情報を圧縮する情報圧縮手段を備え、情報量測定手段の出力に応じて送受信すべき情報を情報圧縮手段によって圧縮するものである。
【0016】
特に以下の様な特徴を有する。
【0017】
(1)放射線撮影装置と保守装置が画像を送受信することによって放射線撮影装置の自己診断を行う。
【0018】
(2)情報圧縮手段は、多くの情報の中から送受信すべき情報を選択する情報選択手段を用いることによって情報圧縮を行い、送受信に関わる時間と費用を削減する。
【0019】
(3)情報選択手段は、画像表示手段と画像領域指定手段を具備し、表示された画像から解析に必要な異常領域を指定することによって情報圧縮を行う。
【0020】
(4)情報圧縮手段は、圧縮なしと非可逆圧縮と可逆圧縮の少なくとも一つが実行可能にすることによって、送受信する情報を圧縮する。
【0021】
(5)情報圧縮手段は、情報量測定手段の出力が閾値以下のときは可逆圧縮を行い閾値より大きいときは非可逆圧縮を行うことによって、閾値以上に大きい情報を送受信しない。
【0022】
(6)情報圧縮手段は、深さ方向の情報量を圧縮することによって、圧縮に伴う情報損失を最小限に抑える。
【0023】
(7)情報圧縮手段は、画像の空間周波数情報を圧縮することによって、圧縮に伴う情報損失を最小限に抑える。
【0024】
(8)自己診断システムは、撮影装置と保守装置の少なくとも一方に異常データベースを有するものである。
【0025】
(9)自己診断システムは、上記データベースが保有していない異常情報が発生した場合にデータベースを更新することによって、常に最新情報を基に自己診断を行うものである。
【0026】
(10)自己診断システムは、自己診断システムの起動によって撮影装置の処理能力を低下させないために、撮影装置と保守装置の両者にそれぞれ異常解析手段を有し、保守装置の異常解析手段の解析内容は放射線撮影装置の異常解析手段が有するすべての解析内容を内包しかつ放射線撮影装置の異常解析手段より多くの解析内容を有する。
【0027】
(11)自己診断システムは、放射線撮影装置と保守装置の少なくとも一方は画像解析手段を具備し、画像解析を行うことによって放射線撮影装置の異常を自己診断するものである。
【0028】
(12)画像解析手段は、上記撮影装置の画素欠陥解析と統計解析とアーティファクト解析と周波数解析とテンプレートマッチング解析の少なくとも一つの解析手段を具備し、これら解析手段によって放射線撮影装置が出力する画像の自己診断を行うものである。
【0029】
(第1の実施の形態)
図1は第1の実施の形態の自己診断システムを説明するフローチャートである。
【0030】
図1において1は撮影装置、2は保守装置、3は撮影装置1と保守装置2との間で情報を送受信するための、通信手段であり、例えば、電話などの公衆回線やインターネットなどである。
【0031】
撮影装置1は、X線画像を取り込むための撮像部101、後述の処理手順を実現する機能を有する制御部102、モニタによる表示やマウス、キーボードによる入力を行うための操作部103などからなり、保守装置2は、後述の処理手順を実現する機能を有する制御部103、モニタによる表示やマウス、キーボードによる入力を行うための操作部105、自己診断レポートや画質異常が蓄積されているデータベースなどからなる。
【0032】
本実施の形態においては、撮影装置1は病院に設置され、放射線撮影業務に使用されている。一方、保守装置2は撮影装置とは離れた場所の保守会社敷地内に設置されている。この両者は電話回線などの通信手段3を通じて接続されている。
【0033】
図2は、撮像装置1による送信情報作成の手順を示すフローチャートである。
【0034】
撮影装置1は通常は撮影業務を行っているが、撮影装置1に組み込まれたタイマの設定により、所定条件下、制御部102による自己診断プログラムが起動する(ステップS1)。起動するタイミングは、撮影装置起動時、撮影装置1が所定時間使用されなかったとき、定期的に所定の時間間隔で行うなど、撮影装置1において自由に設定が可能である。また保守装置2から電話回線3を通じて撮影装置1の自己診断プログラムを起動する場合もある。
【0035】
自己診断プログラムにより異常が発見されなかったときは、自己診断プログラムの診断結果を診断履歴として記録し、操作部103のモニタに、診断履歴表示する(ステップS16)と共に、保守装置2に診断レポートを送信する(ステップS17)。自己診断プログラムの設定に応じて、レポート送信(S17)を省略することも可能である。
【0036】
一方、自己診断プログラムにより異常が発見されたときは、その異常が撮影装置1の自己診断プログラム10で解析可能かどうか判断する(ステップS12)。解析が可能であるときは解析結果を診断履歴に記録し、診断履歴を撮影装置1の操作部103のモニタに表示する(ステップS16)と共に保守装置にレポート送信する(ステップS17)。この時点で病院と保守会社は、使用している撮影装置1に異常が発生していることに気付く。病院はこの撮影装置1の使用を中断し別の撮影装置を使用することによって、患者の不要な待ち時間発生を回避することができる。また保守会社は異常発生に気付くと、保守担当員を病院に派遣するなどの方策を、直ちに取ることができるため、撮影装置1使用不能の時間が短くなる。なお撮影装置1に異常回復プログラムが組み込まれている場合は、自動的に異常が回復されるとともに診断履歴が更新されることもある。この場合は、病院は撮影装置1を継続的に使用可能であり、保守会社は保守要員を派遣する必要もなくなる。
【0037】
次に撮影装置1の異常が自己診断プログラムで解析不能な場合は、さらに詳しい自己診断を行うために、異常データを保守会社に送信する必要がある。そこで保守会社に送信すべき異常データを選択する(ステップS13)。選択された異常データの情報量が大きい場合は、その異常データを電話回線3を通じて送信するには時間とコストが掛かることが想定される。そこで、まず、選択された異常データの情報量を測定する(ステップS14)。
【0038】
そして、測定された異常データの情報量に応じて、異常データの圧縮を行う(ステップS15)。圧縮された異常データは診断履歴と共に、保守装置2にレポート送信する(ステップS17)また診断履歴を撮影装置1の操作部103のモニタに表示する。
【0039】
図3は、保守装置2による情報受診後の処理手順を示すフローチャートである。
【0040】
ステップS18において、レポートを受信した保守装置2は、使用して圧縮された異常データを復元し(ステップS19)、異常データの解析を行う(ステップS20)。
【0041】
保守装置2にはの制御部104には解析モジュールが搭載されている。また制御部104はデータベース106に接続されている。データベース106には、各施設(複数の撮像装置)から送られてくる診断レポートが逐次蓄積されている。さらにデータベース106には、撮影装置1の制御部102の自己診断モジュールには搭載されていない、多様な形態の画質異常についての情報が蓄積されている。このため制御部104の解析モジュールは最新の異常情報に基づいた、多様な形態の異常データに対応できるように設計されている。この解析モジュールによって、長い時間を要する詳細な異常データ解析が行われる。この解析結果は、保守装置2より、撮影装置1に送信される(ステップS21)。
【0042】
図4は、撮影装置1側でレポートを受信した後の処理手順を示すフローチャートである。
【0043】
ステップS22で保守装置2の解析結果が受信される。
【0044】
そして保守装置2の解析モジュールの解析結果は、撮影装置1のモニタに表示される(ステップS23)。保守会社は解析モジュール20の解析結果に応じて、病院に保守要員を派遣して撮影装置1の早期回復を図る。また病院は保守要員が到着し撮影装置1を回復するまで、他の撮影装置を使用して患者の撮影を行う。
【0045】
本実施例の形態では自己診断プログラムの診断内容について、撮影装置1がフラットパネルディテクタを使用した撮影装置の場合を例に挙げて説明する。一般にフラットパネルディテクタはアモルファス・シリコン(a−Si)センサを利用しており、43cm角程度の面積内に数100万個の画素を行列状に配置している。図5はこのフラットパネルディテクタの部分拡大模式図である。図5において、51は光電変換素子、52はスイッチング素子であるTFT(薄膜トランジスタ)、53は光電変換素子51にバイアス電圧を与えるバイアス線、54aおよび54bはTFTを制御するゲート線、55aおよび55bは各画素の信号を読み出し装置に転送するデータ線、56は複数本のデータ線から1本のデータ線を選択する読み出し装置、57はアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器、58は複数本のゲート線から1本のゲート線を選択するゲート駆動装置である。
【0046】
各々の画素は光電変換素子51とTFT52からなり、撮影を行うことによって信号が各画素に蓄えられる。図5においてゲート線54aがHighになると、ゲート線54aに接続されたTFT52がすべてONになる。するとゲート線54aに接続された各画素に蓄えられた信号は、それぞれ当該画素に接続されているデータ線55に移動する。そして読み出し装置56がデータ線55aを選択することで、データ線55aに移動していた信号が読み取られ、A/D変換器57によってデジタル信号となる。次に読み出し装置56はデータ線55bを選択することで、データ線55bに移動していた信号が読み取られる。一連のデータ線選択が終了すると、ゲート線54aに接続されている画素の信号がすべて読み取られる。次にゲート線54bがHighになり、同様にゲート線54bに接続されている画素の信号がすべて読み取られる。このようにして、フラットパネルディテクタに蓄えられた2次元画像信号が、すべて読み取られる。
【0047】
フラットパネルディテクタを構成する各画素の特性は、可能な限り均一になるように製造されているが、互いに僅かに感度と暗電流が異なる。これらの微小な感度(ゲイン)と暗電流(オフセット)の相違は、それぞれゲイン補正およびオフセット補正と呼ばれる工程により補正可能である。P(x,y)を補正前画像、P′(x,y)を補正後画像、D(x,y)をオフセット画像、G(x,y)をゲイン画像、G(x,y)をG(x,y)の集合平均とすると、ゲイン補正及びオフセット補正はまとめて次式で表させる。
【0048】
【外1】
オフセット補正およびゲイン補正は、高精細な画質を提供するフラットパネルディテクタには必須の工程である。一般にオフセット画像は放射線無曝射撮影により、またゲイン画像は被写体を置かない放射線一様照射撮影により、それぞれ容易に取得可能である。
【0049】
このオフセット画像およびゲイン画像を用いて、撮影装置の自己診断を行うことができる。この自己診断について図6を用いて説明する。図6においてステップS31〜S36は自己診断処理フローを表し、31はオフセット画像およびゲイン画像を取得する試験撮影工程、32はオフセット画像およびゲイン画像から欠陥画素を抽出する欠陥解析工程、33は欠陥解析32の結果と欠陥データ40のデータを比較して、欠陥が増加しているかどうかを判断する工程、34はオフセット画像およびゲイン画像の平均値や標準偏差などの統計量を診断する統計解析工程、35はゲイン画像のパターンからアーティファクト解析する工程、36は以上の解析結果から自己診断結果を総合判定する工程、37は診断履歴を記録する工程である。また44は通常撮影ルーチンを表し、40は欠陥画素の位置が記憶された欠陥テーブル、41は被写体が写った画像データ、42は欠陥データ42を用いて欠陥抽出を行う工程、43は欠陥抽出結果に基づいて欠陥を補正する工程である。
【0050】
試験撮影31においてオフセット画像およびゲイン画像の撮影を行う。オフセット画像撮影は放射線も被写体も必要のないことから、随時取得可能である。本実施例では自己診断プログラムが起動した後に、自己診断プログラムの撮影要求を受けて撮影を行う。一方ゲイン画像撮影は放射線曝射を必要とするため、本実施の形態では予めゲイン補正のために取得したゲイン画像を用いることにする。
なおフラットパネルディテクタの裏面に光源を設けて、随時光源を点灯することによってゲイン画像を撮影する方法は、本発明者より特開平10−186045号公報として提案されている。
【0051】
欠陥解析32は、フラットパネルの数100万個の画素中で特性が異常であり、オフセット補正およびゲイン補正を施しても、この異常特性を補正しきれない画素を抽出する工程である。この欠陥解析を行うに先立って、放射線照射の非均一性を考慮して、フラットパネルの画素を128画素×128画素の関心領域(ROI)に分析する。各ROIにおいて平均値と標準偏差を求め、ROI内の各画素の画素値と比較して各画素の異常を判断する。本実施例では欠陥画素の診断を、画素値とROI内平均値の差が標準偏差の3倍を超えることとしている。ところでオフセット補正とゲイン補正の原理から考えて、画素値とROI内平均値の差がいくつであろうと、本来補正は可能なはずである。しかしながら、実際には周囲画素に比べて特異な反応を示す画素は、応答リニアリティに不具合であったりオフセットに安定性が欠けるなどの不具合を有する確率が高い。そこでこのような特異反応を示す画素は、欠陥画素として除外した方がより安全と言える。
この判断基準はオフセット画像とゲイン画像の両画像に共通して用いることができる。
【0052】
欠陥解析32により抽出された欠陥データは、欠陥増加判断モジュール33にて、予め調べられた欠陥テーブル40と比較され、両者の論理和が新たな欠陥データとして欠陥テーブル40に記憶される。この欠陥テーブルは、通常撮影ルーチン44にて患者の撮影を行うときに、欠陥画素を抽出するために利用される。
なおテーブル40は、欠陥テーブルが書き換えられた際に、欠陥画素の数、連続性および分布をチェックし、欠陥が画像に影響を与えないことを確認している。
【0053】
次に統計解析34はオフセット画像およびゲイン画像のそれぞれの平均値を解析する工程である。その方法としては、まず欠陥解析32の結果を元に、欠陥画素を解析対象から除外する。残された正常画素による画像を複数のROIに分割し、このROI内の統計量を解析する。この統計量が既定の統計量に対して所定の量だけ異なっている場合に、異常と判断する。例えばオフセット画像に関しては、本来平均値はどのROIにおいてもほぼ同一になるべきである。ところが一部のROIにおいて他のROIと平均値が異なる場合は、このROIに何らかの異常が発生したと判断する。さらにROI内の標準偏差もまた重要な情報であり、既定の標準偏差と比較して所定量だけ異なる場合は、異常と判断する。これらの判断を全てのROIに対して行うことで、異常の程度と位置を解析することができる。一方ゲイン画像では、撮影に用いた放射線の線量が既知の場合は、既知のフラットパネルディテクタの感度情報と併せることで、ROI内の期待平均値は決定される。この期待平均値に対して測定平均値が所定量だけ異なっている場合は、放射線線量かフラットパネルディテクタ感度のいずれかが異常であると判断される。またゲイン画像の標準偏差が工場出荷時の標準偏差と異なっている場合は、何らかの画素特性異常が生じていると判断される。
【0054】
続いてアーティファクト解析35を行う。アーティファクトとは人工的模様の意味であり、画像分野では本来被写体には存在しないが、意図せず画像に現れてしまう模様を指す。アーティファクトは画像であるが故に多様な形態が存在し、またそれ故に解析が困難である。本実施例の自己診断モジュールステップS10(図2)には、オフセット画像とゲイン画像について、共通の簡単な解析ルーチンが搭載されている。
【0055】
図5において一本のデータ線に接続された縦方向全画素値の平均値を各データ線について求める。次に各データ線毎の縦方向平均値について全データ線平均値と全データ線標準偏差を求める。あるデータ線の縦方向平均値と全データ線平均値の差が全データ線標準偏差の4倍を超えるとき、このデータ線はアーティファクトを発生させる可能性があると判断する。同様に横方向のゲート線平均値についても解析が行われる。
【0056】
これらの解析を行った後に、総合判定36で各解析結果をまとめ、この撮影装置1が異常であるか正常であるかを判断する。異常がある場合は、図2に示すように保守装置2に送信すべき情報が抽出される。抽出される情報としては、異常が発見されたROIの画像データが考えられる。必要に応じてゲイン画像とオフセット画像の両者または一方が送信される。ROIが複数に及ぶ場合は情報量が大きくなるため、情報圧縮モジュール15にて情報を圧縮してから、保守装置2に送信される。特にROIがほぼ全画像にわたる場合は、非可逆圧縮が適用される。異常がない場合は、診断履歴モジュール37において診断履歴を更新し、自己診断を終了する。
【0057】
次に保守装置2が行う解析について説明する。保守装置2は圧縮された情報を復元し、主にROIの画像データについて解析を行う。解析モジュールの解析機能の一例として、周波数解析とパターンマッチングについて説明する。まず周波数解析は画像データに対して2次元フーリエ変換を行い、縦方向および横方向の空間周波数において、特異的な周波数ピークが現れていないか解析する。例えば電源に50Hz電源を用いている場合は、故障により電源線と信号線の分離が確実に行われず、電源線の50Hz振動が信号に現れることがある。またフラットパネルディテクタは、128画素単位ないし256画素単位で読み出し装置56やゲート駆動装置58が接続されているため、この周期でアーティファクトが発生することがある。このように周波数解析では、撮影装置が置かれている環境やフラットパネルディテクタの構造的特徴を考慮して、特異的な周波数ピークから異常の原因を特定する。一方パターンマッチングは、データベース106に蓄積された情報を元に、異常の解析を行う。データベース106には、これまで発生した異常画像データのパターンとその原因および対策が蓄積されている。このパターンをテンプレートとして利用して、テンプレートと異常画像のパターンが一致するとき、同じ異常が起きていると判断する異常解析手法が、テンプレートマッチングである。テンプレートと異常画像の一致度を計測する方法としては、相関係数などが利用されている。
【0058】
これら周波数解析とテンプレートマッチングは、実行に時間を要し、また特にテンプレートマッチングは多くのデータベースを必要とするため、専用の処理装置が必要である。そこで解析モジュールは撮影装置1には搭載せずに、専用の保守装置2に搭載され、かつ最新の異常情報を随時更新しながら運用される。
【0059】
もちろん以上説明した解析モジュールおよびデータベース106の一部は撮影装置1にも搭載可能であり、撮影装置1において簡単なデータベース参照により、自己診断を行っても良い。また電話回線3を通じて、撮影装置1のデータベースを随時更新することも可能である。撮影装置1の撮影業務の支障を来さない範囲であれば、撮影装置1に搭載する自己診断システムを充実させることにより、通信時間および通信コストの削減が期待される。しかし既に説明したように、複雑な自己診断プログラム(S10)および大規模なデータベースを撮影装置1に搭載するのは、現状の技術では有利とは言えない。撮影装置1および電話回線3の負荷を極力削減するためには、撮影装置1の自己診断プログラム(S10)およびデータベースは比較的小さく、かつデータベースの更新頻度も削減する必要がある。したがってより詳細な解析を行うためには、保守装置2に大規模な解析モジュールおよびデータベースを設置する方が適していると言える。なお撮影装置1の自己診断を保守装置2で再現するために、保守装置2の解析モジュールおよびデータベース106が行うことのできる解析内容は、撮影装置1の自己診断プログラムおよびデータベース106の解析内容のすべてを内包することが望ましい。
【0060】
測定された異常データの情報量に応じて、情報圧縮ステップS15で行われる異常データの圧縮方法について説明する。情報圧縮ステップS15においては、測定された情報量が1Mbyte以上の場合は、情報量が1Mbyte以下になるよう圧縮を行うよう設定されている。例えば情報量が2Mbyteのときは可逆圧縮を行い、特に画像データのように情報量が10Mbyte以上にも及ぶ場合は、非可逆圧縮が使用される。
【0061】
一方、異常データが画像データであっても、情報選択モジュール13が画像の一部分の関心領域(ROI)だけを選択した場合は、情報量が2Mbyte程度になることが想定される。この場合は可逆圧縮を使用して、異常データを1Mbyte以下に圧縮する。また情報量が1Mbyte以下の場合は、圧縮を行う必要がないので、情報圧縮モジュール15は作動しない。
【0062】
このほかに情報に優先順位を付けて情報を取捨選択する方法により、情報を圧縮することも考えられる。例えば複数のROIが異常データとして選択された場合は、このROIのうち代表的なROIのみを選択して送信することも、情報圧縮の一手法として有効である。
【0063】
圧縮方法として、異常データの深さ方向のビット数を減らすことで、情報圧縮を行うことも考えられる。例えば異常データが画像データあり、かつデータの深さ方向の分布が局在している場合は、深さ方向のビット数を減らしても実質的に情報損失することなく圧縮が可能である。このような画像データの例として、放射線無曝射画像(オフセット画像)が挙げられる。オフセット画像は撮影装置1固有の情報を多く含むため、自己診断には有用である。オフセット画像の画像データはほとんどがゼロ近傍であり、画像データの深さ方向の分布は極めて局在していると言える。この画像データを表現するには8ビットで十分である。撮影装置1が出力する画像データの深さ方向のビット数が16ビットである場合、1/256の圧縮が損失なく可能である。放射線一様照射画像(ゲイン画像)もまた、同じ原理で容易に圧縮可能である。
【0064】
さらに圧縮方法として、空間周波数情報を減らすことで情報圧縮することも考えられる。自己診断ステップS10で解析を行った結果、アーティファクトが低空間周波数にのみ存在することが分かったとする。これはアーティファクトに急峻なパターンがないことを示しているので、空間周波数情報を減らすことで情報圧縮を行ってもアーティファクトの特徴情報は損なわない。空間周波数情報を減らす方法として、例えば単純にN画素毎にサンプリングする方法や、縦N画素×横N画素の代表値、例えば平均値を使用する方法や、離散コサイン変換(DCT)を利用した圧縮方法が考えられる。
【0065】
以上説明した実施例では自己診断を行うために必要な情報、特に画像を撮影装置1から保守装置2に送信している。そして送信に先立ち、撮影装置1において情報量を測定し圧縮する動作を行っている。
【0066】
一方、逆に保守装置2から撮影装置1に情報を送信する場合にも本発明は有効である。すなわち保守装置2に送信情報選択モジュール(ステップS13を実行)、情報量測定モジュール(ステップS14を実行)および情報圧縮モジュール(ステップS15を実行)を、撮影装置1に情報復元モジュール(ステップS19を実行)を設け、保守装置2から送信される情報を圧縮して送信する自己診断システムが考えられる。
【0067】
以上説明したように、上述の自己診断システムによれば、撮影装置1に搭載されている自己診断プログラム(ステップS10)が解析できない異常が発生しても、時間とコストを掛けずに保守装置2を用いて解析を行うことができる。また自己診断プログラムの実行によって撮影装置1に負荷を掛けることがない。さらに自己診断プログラムでは対処できない多様な形態の異常データや新規の異常データに対しても、解析が可能になる。この結果として、自己診断プログラムを頻繁に実行することができるようになり、撮影装置1の異常の、早期発見と回復を図ることができる。また、撮影装置1の異常を早期発見し回復が行われるため、病院では患者に不要な待ち時間を強いることなく、撮影業務を遂行することが可能になる。また、ある撮影装置で発生した異常情報をいち早く他の撮影装置に適用できるため、撮影装置1の異常の早期発見と回復を図ることができる。
【0068】
なお、自己診断プログラム(S10)、自己診断結果が異常であるかを判断するモジュール(S11)、発見された異常が撮影装置1内の自己診断プログラムで解析可能かを判断するモジュール(S12)、画像データを含む保守装置2に送信すべき情報を抽出するモジュール(S13)、抽出された情報の大きさを測定するモジュール(S14)、抽出された情報を圧縮するモジュール(S15)、自己診断レポートを撮影装置2のモニタに表示するモジュール(S16)、撮影装置1から管理装置2に自己診断レポートを送信するモジュール(S17)、自己診断レポートを受信するモジュール(S18)、圧縮された情報を復元するモジュール(S19)、受信した情報から撮影装置1の異常を解析するモジュール(S20)、保守装置2から撮影装置1に自己診断レポートを送信するモジュール(S21)、自己診断レポートを受信するモジュール(S22)は、上述の様に、制御部102、104のプログラムとして、コンピュータのソフトウエアにより実現してもよく、また、専用のハードウエアを設けてもよい。
【0069】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、情報抽出モジュール(S13)の動作について例を挙げて説明する。情報抽出モジュール(S13)が画像データを扱う場合に、情報抽出方法として画像を自動解析してROIを抽出する方法と、ユーザに異常を代表するROIを抽出させる方法がある。自動解析してROIを抽出する方法は第1の実施の形態において説明したので、ここではユーザにROIを抽出させる方法について説明する。
【0070】
図7は操作部103のモニタに放射線一様照射画像を表示し、ユーザによるROIの抽出を説明する図面である。図7において701は表示及び位置指定用のモニタ、60は画素値異常部分、61はユーザが指定したROI、62はROI指定手段である。撮影装置1において放射線は一様に照射されているから、表示される画像も一様の筈である。ところが撮影装置1に何らかの不具合が生じた場合、部分的に画素値の異なる画像60が現れる可能性がある。この異常が発生したとき撮影装置1はモニタ701に画像を表示し、ユーザに異常と思われるROI61を指定させることができる。ROIの指定方法としてはタッチパネルとペン型のROI指定手段62を用いる方法、タッチパネルを指で触れる方法、ROI座標値を入力する方法が考えられる。このような方法を用いることで、情報抽出ステップS13において多くの情報の中から異常情報を抽出することが可能になる。
【0071】
なお異常画像候補を表示する始動タイミングは、自己診断ステップS10における解析を行った結果として異常画像候補を自動的に表示する方法と、自己診断における警告に反応したユーザの操作により異常画像候補を表示する方法と、ユーザが自発的に画像を撮影して異常画像候補を表示する方法のいずれも可能である。
【0072】
【発明の効果】
以上の様に、本発明によれば、撮影装置と保守装置の間の通信時間と通信コストを削減しながら、撮影装置の画質を保障しかつ画質異常の発生から発見までの時間を短くし、かつ新しい情報に基づき撮影装置の自己診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実態の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】自己診断システムを説明するフローチャートである。
【図3】自己診断システムを説明するフローチャートである。
【図4】自己診断システムを説明するフローチャートである。
【図5】フラットパネルディテクタの部分拡大模式図である。
【図6】自己診断処理を説明するフローチャートである。
【図7】情報抽出ステップS13を説明する図である。
【符号の説明】
1 撮影装置
2 保守装置
Claims (3)
- 放射線画像を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段のオフセット画像及びゲイン画像から欠陥画像を除いて複数のROIに分割しそれぞれのROIにおける画像の統計量から前記それぞれのROIが異常であるかを診断する診断手段と、
前記診断手段で異常がある場合に異常のあるROI画像データを保守装置に対して送信する送信手段と、
を有することを特徴とする放射線撮影画像処理装置。 - 更に、前記放射線画像を圧縮する圧縮手段を有し、前記送信手段は、該圧縮手段により圧縮された画像データを送信することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影画像処理装置。
- 前記保守装置は前記放射線撮影画像処理装置の画素欠陥解析と統計解析とアーティファクト解析と周波数解析とテンプレートマッチング解析の少なくとも一つの解析手段を具備することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影画像処理装置。
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