JP4565919B2 - 低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒、該触媒の製造方法及び該触媒を用いた低級脂肪族カルボン酸エステルの製造方法 - Google Patents

低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒、該触媒の製造方法及び該触媒を用いた低級脂肪族カルボン酸エステルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭素数3以上6以下の低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とを気相で反応させる低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒、該触媒の製造方法、及び該触媒を用いた低級脂肪族カルボン酸エステルの製造方法に関する。
本発明は、特に、炭素数3以上6以下の低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とを気相で反応させる際に用いることができる触媒において、該触媒が特定の酸性質を持つ酸触媒であり、且つ低級オレフィンを基準とした場合の低級脂肪族カルボン酸エステルへの選択性が高いことを特徴とする低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒、該触媒の製造方法、及び該触媒を用いた低級脂肪族カルボン酸エステルの製造方法に関する。
すでに、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とから低級脂肪族カルボン酸エステルを製造するための触媒として、ヘテロポリ酸触媒が有効であることが知られている。具体的には、例えば、特開平4−139149号公報、特開平4−139148号公報、特開平5−065248号公報、特開平4−305551号公報、特開平5−170698号公報、特開平5−279297号公報、特開平5−301842号公報等に開示されている。
また、ヘテロポリ酸を担体に担持して利用する触媒としては、特開平5−294894号公報、特開平9−118647号公報に開示されている。
これらの従来の技術において、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とから低級脂肪族カルボン酸エステルを製造する方法は、一応の完成を見た。しかし、低級オレフィンとして特に炭素数3以上6以下の低級オレフィンを用いた場合、これらの公知の触媒では該低級オレフィンが重合性が高いという特徴を有していることから、該低級オレフィンのある程度の重合を避けることは困難であり、結果として該低級オレフィンを基準とした場合の低級脂肪族カルボン酸エステルの選択性が低いという課題が残されていた。
もちろん、原料の組成や反応温度、圧力、流通速度等のいわゆる反応条件の制御によりある程度の改善は見られるが、より簡便に目的を達成できることが可能な触媒が求められていた。
特開平4−139149号公報 特開平4−139148号公報 特開平5−065248号公報 特開平4−305551号公報 特開平5−170698号公報 特開平5−279297号公報 特開平5−301842号公報 特開平5−294894号公報 特開平9−118647号公報
本発明は、重合性の高い反応基質である炭素数3以上6以下の低級オレフィン等を原料として用いて、該オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とから低級脂肪族カルボン酸エステルを高選択的に製造することを可能とする低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒の提供をその目的の1つとする。
さらに、該触媒の製造方法及び該触媒を用いた低級脂肪族エステルの製造方法の提供を目的の1つとする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた。その結果、特定の酸性質を有する触媒の存在下に反応を行うことで、炭素数3以上6以下の低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とから高選択的に低級脂肪族カルボン酸エステルを製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明(I)は、炭素数3以上6以下の低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とを気相で反応させて低級脂肪族カルボン酸エステルを製造するのに用いる、ヘテロポリ酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が担体に担持された触媒において、該触媒のアンモニア脱離スペクトルで測定される酸量が該触媒単位質量あたり0.08mmol/g〜10.0mmol/gであり、且つ該スペクトル測定時の温度が100℃〜300℃の範囲でアンモニアが脱離する酸量が全体の70%以上であることを特徴とする低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒である。
また、本発明(II)は、本発明(I)の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒の製造方法である。
さらに、本発明(III)は、本発明(I)の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒を用いた低級脂肪族カルボン酸の製造方法である。
よって、本発明は、例えば、以下の事項からなる。
〔1〕 炭素数3以上6以下の低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とを気相で反応させて低級脂肪族カルボン酸エステルを製造するのに用いる、ヘテロポリ酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が担体に担持された触媒において、該触媒のアンモニア脱離スペクトルで測定される酸量が該触媒単位質量あたり0.08mmol/g〜10.0mmol/gであり、且つ該スペクトル測定時の温度が100℃〜300℃の範囲でアンモニアが脱離する酸量が全体の70%以上であることを特徴とする低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒。
〔2〕 ヘテロポリ酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が、以下のいずれかの式で表される化合物であることを特徴とする上記〔1〕に記載の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒。
z4-nz[SiW1240]・xH2
z3-nz[PW1240]・xH2
z4-nz[SiMo1240]・xH2
z3-nz[PMo1240]・xH2
z4-nz[SiWy Mo12-y40]・xH2
z3-nz[PWy Mo12-y40]・xH2
(式中、xは水和水の数を示し、0〜35の範囲である。yはヘテロポリ酸構造中のW数を示し、1〜11の範囲の整数である。Mはヘテロポリ酸の水素原子の一部又は全部を置換する金属イオン又はオニウムイオンであり、zはMの置換数を示し、0〜4の範囲であり、nはMの価数を示す)
〔3〕 ヘテロポリ酸の水素原子の一部又は全部を置換する金属イオン又はオニウムイオンが、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム及びアンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕に記載の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒。
〔4〕 ヘテロポリ酸の水素原子の置換率が60%以上であることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒。
〔5〕 以下の第1工程及び第2工程を含むことを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載した低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒の製造方法。
第1工程
ヘテロポリ酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を担体に担持して、担体担持触媒を得る工程
第2工程
第1工程で得られた担体担持触媒を乾燥して、低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒を得る工程
〔6〕 第1工程におけるヘテロポリ酸の塩の担持が、該ヘテロポリ酸の塩の均一溶液を用いて行われることを特徴とする上記〔5〕に記載の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒の製造方法。
〔7〕 第1工程におけるヘテロポリ酸の塩の担持が、まずヘテロポリ酸の均一溶液を用いてヘテロポリ酸を担持し、次いで塩を形成する元素を含む化合物の均一溶液を用いて該元素を担持して、結果として担体上にヘテロポリ酸の塩を形成することにより行われることを特徴とする上記〔5〕に記載の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒の製造方法。
〔8〕 第1工程におけるヘテロポリ酸の塩の担持が、まず塩を形成する元素を含む化合物の均一溶液を用いて該元素を担持し、次いでヘテロポリ酸の均一溶液を用いてヘテロポリ酸を担持して、結果として担体上にヘテロポリ酸の塩を形成することにより行われることを特徴とする上記〔5〕に記載の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒の製造方法。
〔9〕 上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載した低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒の存在下に、炭素数3以上6以下の低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とを気相で反応させることを特徴とする低級脂肪族カルボン酸エステルの製造方法。
〔10〕 炭素数3以上6以下の低級オレフィンが、プロピレン、1−ブテン、cis−ブテン、trans−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン及び3−ヘキセンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記〔9〕に記載の低級脂肪族カルボン酸エステルの製造方法。
〔11〕 低級脂肪族カルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記〔9〕に記載の低級脂肪族カルボン酸エステルの製造方法。
本発明(I)の触媒を用いれば、炭素数3以上6以下の低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とから低級脂肪族カルボン酸エステルを製造する際に、該低級オレフィンの重合反応等の副反応を抑えることができ、結果として高選択的に低級脂肪族カルボン酸エステルを製造することができる。
以下に本発明の好ましい態様について詳しく説明する。
本発明(I)−低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒
まず、本発明(I)について説明する。
本発明(I)は、炭素数3以上6以下の低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とを気相で反応させて低級脂肪族カルボン酸エステルを製造するのに用いる、ヘテロポリ酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が担体に担持された触媒において、該触媒のアンモニア脱離スペクトルで測定される酸量が該触媒単位質量あたり0.08mmol/g〜10.0mmol/gであり、且つ該スペクトル測定時の温度が100℃〜300℃の範囲でアンモニアが脱離する酸量が全体の70%以上であることを特徴とする低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒である。
本発明(I)におけるヘテロポリ酸とは、中心元素及び酸素が結合した周辺元素からなるものである。中心元素は通常ケイ素又はリンであるが、これに限定されるものではなく、周期律表(国際純正及び応用化学連合無機化学命名法改訂版(1989年)による、以下同じ。)の1族〜17族の元素から選ばれる任意の1つからなることができる。
具体的には、例えば、第二銅イオン;二価のベリリウム、亜鉛、コバルト又はニッケルイオン;三価のホウ素、アルミニウム、ガリウム、鉄、セリウム、ヒ素、アンチモン、燐、ビスマス、クロム又はロジウムイオン;四価の珪素、ゲルマニウム、錫、チタン、ジルコニウム、バナジウム、硫黄、テルル、マンガン、ニッケル、白金、トリウム、ハフニウム、セリウムイオン及び他の希土類イオン;五価の燐、ヒ素、バナジウム、アンチモンイオン;六価のテルルイオン;及び七価のヨウ素イオン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、周辺元素の具体例としては、タングステン、モリブデン、バナジウム、ニオブ、タンタル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
このようなヘテロポリ酸はまた「ポリオキソアニオン」、「ポリオキソ金属塩」又は「酸化金属クラスター」として知られている。よく知られているアニオン類の幾つかの構造には、この分野の研究者本人にちなんで名前が付けられ、例えば、ケギン、ウエルス−ドーソン及びアンダーソン−エバンス−ペアロフ構造として知られている。ヘテロポリ酸は、通常高分子量、例えば700〜8500の範囲の分子量を有し、二量体錯体も含む。
本発明(I)の触媒に用いることができるヘテロポリ酸及びヘテロポリ酸の塩としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
ケイタングステン酸及びその塩
z4-nz[SiW1240]・xH2
リンタングステン酸及びその塩
z3-nz[PW1240]・xH2
ケイモリブデン酸及びその塩
z4-nz[SiMo1240]・xH2
リンモリブデン酸及びその塩
z3-nz[PMo1240]・xH2
ケイタングストモリブデン酸及びその塩
z4-nz[SiWy Mo12-y40]・xH2
リンタングストモリブデン酸及びその塩
z3-nz[PWy Mo12-y40]・xH2
(式中、xは水和水の数を示し、0〜35の範囲である。yはヘテロポリ酸構造中のW数を示し、1〜11の範囲の整数である。Mはヘテロポリ酸の水素原子の一部又は全部を置換する金属イオン或いはオニウムイオンであり、zはMの置換数を示し、0〜4の範囲であり、nはMの価数を示す)
より好ましくは、ポリ原子がタングステンからなるヘテロポリ酸及びヘテロポリ酸の塩であり、具体的には、例えば、以下のものである。
ケイタングステン酸及びその塩
z4-nz[SiW1240]・xH2
リンタングステン酸及びその塩
z3-nz[PW1240]・xH2
また、本発明(I)におけるヘテロポリ酸の塩としては、上記ヘテロポリ酸の水素原子の一部又は全部を置換した金属塩又はオニウム塩であれば特に制限はない。
具体的には、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム及びマグネシウムなどの金属塩やアンモニアなどのオニウム塩を挙げることができる。もちろん、これらに限定されるわけではない。
本発明(I)の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒は、該触媒のアンモニア脱離スペクトルで測定される酸量が該触媒単位質量あたり0.08mmol/g〜10.0mmol/gの範囲であり、且つ該スペクトル測定時の温度が100℃〜300℃の範囲でアンモニアが脱離する酸量が全体の70%以上であれば、特に制限はない。
ここで言う「アンモニア脱離スペクトル」とは、アンモニアを触媒に化学吸着させ、昇温することにより脱離するアンモニアを測定することで、その脱離温度と吸着量から触媒中の酸性質を測定する方法である。アンモニア脱離スペクトルの一般的な概念は、例えば、「触媒講座第3巻(基礎編3)固体触媒のキャラクタリゼーション」、講談社発行、1985年、160ページ〜162ページに記載されている。
その一般的な手法として、例えば、以下の方法を挙げることができる。
アンモニア脱離スペクトル測定の手順は、一般に前処理工程と本測定とに分けることができる。前処理工程は、触媒をサンプル管に充填し、一定温度で触媒に吸着している水分や有機物を取り除いた後、ガス状のアンモニアを化学吸着させる工程である。本測定は、先に余分なアンモニアを取り除いた後、He等の不活性ガスを流通させながら、一定の昇温速度で昇温し、その時に脱離するアンモニアを熱伝導度検出器(TCD)やマススペクトロスコピー等で検出する工程である。この方法に基づき脱離温度とその時の脱離アンモニア量をプロットすることにより、アンモニア脱離スペクトルを得ることができる。
また、該触媒の酸量とは、上記のアンモニア脱離スペクトルの測定において、アンモニアがサンプルに吸着しなかった場合に示されるベーススペクトルに対して、アンモニアが吸着し、その脱離が認められたスペクトルの面積の差から求めることができる。
本発明(I)の触媒での酸量は、上記のアンモニア脱離スペクトルの測定で該触媒の単位質量あたり0.08mmol/g〜10.0mmol/gの範囲である。好ましくは0.1mmol/g〜8.0mmol/gの範囲であり、さらに好ましくは0.12mmol/g〜5.0mmol/gの範囲である。
酸量が、該触媒単位質量あたり0.08mmol/g未満の場合には、触媒の反応性が乏しく、単位触媒量あたりの生産量が低下し、ひいては効率的な生産が行えなくなる恐れがある。
また、該触媒単位質量あたりの酸量の上限には特に制限はないが、10.0mmol/gを超える量では、触媒上の酸密度が高くなりすぎてオレフィンの異性化や逐次反応が起きる等の恐れがある。
本発明(I)の触媒におけるもう1つの特徴は、該アンモニア脱離スペクトル測定時の温度が100℃〜300℃の範囲でアンモニアが脱離する酸量が全体の70%以上であることである。好ましくは該温度範囲でアンモニアが脱離する酸量が75%以上、さらに好ましくは80%以上、もっとも好ましくは90%以上で100%以下である。
アンモニア脱離スペクトル測定時の温度が100℃〜300℃の範囲でアンモニアが脱離する酸量が全体の70%未満では、炭素数3以上6以下の低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とから高選択的に低級脂肪族カルボン酸エステルを製造できるという当該触媒の特徴を達成することが困難である。
また、当該温度範囲でアンモニアが脱離する酸量に関しては特に上限はなく、本発明(I)の触媒における酸量のうちできるだけ多くが当該温度範囲でアンモニアを脱離する性質を有することが好ましい。
本発明(I)の触媒は上記のような酸量及びそのアンモニア脱離スペクトルの特徴を有するものであれば、他にいかなる制限をも受けるものではない。このような特徴を有する触媒の具体的な実施手段の一例として、該触媒に用いるヘテロポリ酸の水素原子の置換率を制御する方法を挙げることができる。
すなわち、水素原子の置換率が60%以上であるヘテロポリ酸及び/又はその塩を用いることにより、本発明(I)の触媒の特徴の1つであるアンモニア脱離スペクトル測定時の温度が100℃〜300℃の範囲でアンモニアが脱離する酸量が全体の70%以上である触媒を得ることができる。
当該触媒に用いるヘテロポリ酸及び/又はその塩の水素原子の置換率としては、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
本発明(I)の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒において、その酸性質と、さらに低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とから低級脂肪族カルボン酸エステルを高選択的に得られることにおける相関に関しては、現在のところ完全には明らかではないが、次のような理由であると考えられる。
炭素数3以上6以下の低級オレフィンの二量化、さらには炭素数3以上6以下の低級オレフィンの重合反応には高い酸強度の酸点が主に活性点として働いていることが知られている。これに対して、炭素数3以上6以下の低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とからの低級脂肪酸カルボン酸エステルへの反応は、後述する実施例からも理解されるように、比較的弱い酸強度の酸点が主に活性点として働いていると思われる。
従って、触媒単位質量中の酸点の総量は変わらなくても、その酸性質を制御し、高い酸強度を有する酸点を一定の範囲以下に制御することで、炭素数3以上6以下の低級オレフィンの低級脂肪酸カルボン酸エステルに対する選択性を向上させ、且つ充分な活性を維持することができるものと考えられる。
すなわち、本発明(I)の触媒の具体的な実現手段の1つとしてヘテロポリ酸の水素原子の置換率を制御する場合、該触媒の性状としてはヘテロポリ酸の水素原子の置換率が高いほど好ましい傾向を一般的に示す。通常、ヘテロポリ酸の水素原子の置換率を上げると、その酸量は低下する。さらに置換率を上げていき、100%置換した場合は、通常その酸性質は失われることは予想されることである。ところが、担体に担持した場合、アンモニア脱離スペクトル測定における酸点の挙動が、この従来の常識とは異なることを見出した。
図1は、未中和のヘテロポリ酸[H4 SiW1240]のアンモニア脱離スペクトルを示す。図2は、50%中和したヘテロポリ酸塩[H2 Li2 SiW1240]のアンモニア脱離スペクトルを示す。図3は、完全に中和したヘテロポリ酸塩[Li4 SiW1240]のアンモニア脱離スペクトルを示す。担体に担持していないヘテロポリ酸塩の場合、図から明らかなように、その酸量は水素置換率を上げるに従って低下し、完全に中和したLi4 SiW1240では、その酸点はほとんど存在しない(図3)。
これに対して、ヘテロポリ酸を担体に担持した場合の酸性質は担体に担持していない場合と大きく異なる挙動を示すことが既に知られている。具体的には、例えば、「触媒講座第3巻(基礎編3)固体触媒のキャラクタリゼーション」、講談社発行、1985年、160ページ〜162ページ、又は「触媒誌」、触媒学会発行、2003年、Vol.45、No.1、34頁中のFig.4等を挙げることができる。
ここでは、水素が全く置換されていないヘテロポリ酸を、担体に担持することの効果が示されている。従来の常識で考えれば、担体に担持したヘテロポリ酸は該担体と化学的相互作用がなければ単独のヘテロポリ酸と同等の性質を示すものと考えられる。しかしながら、上記の報告によれば、ヘテロポリ酸を担体に担持した場合はそのアンモニア脱離スペクトルが変化することが示されており、これによりヘテロポリ酸と担体との間に何らかの化学的相互作用が存在することが推定される。
本発明者らは、これらの知見に基づき担体に担持されたヘテロポリ酸触媒について鋭意検討を重ねた。
その結果、ヘテロポリ酸の水素置換率が高い場合の担体担時触媒では、そのアンモニア脱離スペクトルが水素置換率の低い場合と異なることを見出した。さらに、理論上、完全に水素を置換した場合であっても、該触媒のアンモニア脱離スペクトルの測定によりかなりの酸量が存在することが判明した。
具体的には、図4に本発明(I)における触媒の一例のアンモニア脱離スペクトルを示す。
そして、炭素数3以上6以下の低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とからの低級脂肪酸カルボン酸エステルへの反応は、比較的弱い酸強度の酸点が活性点として働いていると考えられ、これに対して、炭素数3以上6以下の低級オレフィンの二量化、さらには炭素数3以上6以下の低級オレフィンの重合等は高い酸強度の酸点が活性点として働いているとの推定に基づき、図4に示すアンモニア脱離スペクトルを有する触媒を該低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸との直接エステル化に適用したところ、従来のヘテロポリ酸担時触媒では得ることが困難な低級オレフィンに対する高い選択性を得ることができることが判明した。
本発明(I)の触媒は、触媒活性成分であるヘテロポリ酸及びその塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物が担体に担持されているものであるが、用いることが可能な担体に特に制限はない。一般に担体として用いることが可能な多孔物質のものであればよい。具体的には、例えば、シリカ、珪藻土、モンモリロナイト、チタニア、活性炭、アルミナ及びシリカアルミナ等からなる物を挙げることができる。好ましくはチタニア及びシリカである。
また、その形状についても制限はない。粉末状、球状、ペレット状その他任意の状態のものを用いることができる。好ましくは球状又はペレット状さらに粒径においても特に制限はない。好ましい粒径としては、反応の形態により異なるが、固定床の場合は平均直径が好ましくは2mm〜10mmの範囲、より好ましくは3mm〜7mmの範囲である。一方、流動床の場合は平均直径が、好ましくは100μm以下の範囲、より好ましくは50μm以下の範囲である。
担体としてもっとも好ましくは、シリカよりなる球状、またはペレット状の形状のものである。
担体に担持するヘテロポリ酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量は、担体の全質量に対して、10質量%〜200質量%の範囲が好ましい。より好ましくは50質量%〜150質量%の範囲である。
ヘテロポリ酸及び/又はヘテロポリ酸塩の含有量が10質量%より少なくなると、触媒中の活性成分の含有量が少なすぎて、触媒単位質量あたりの活性が低くなる恐れがある。
ヘテロポリ酸及び/又はヘテロポリ酸塩の含有量が200質量%を超えるとコーキングが発生しやすくなることがあり、そのために触媒寿命が著しく短くなる恐れがある。また、ヘテロポリ酸又はヘテロポリ酸塩の使用量が多くなりすぎて触媒コストが高くなる点や、更に触媒単位体積あたりの重さが重くなるため輸送コストが高くなるなどの点からも好ましくない。
本発明(I)の触媒中に含まれる元素種の特定、定量は、プラズマ発光分光分析法(以下「ICP」と略す)、蛍光X線法、原子吸光法のような化学分析により測定できる。例えば、具体的には、一定量の触媒を、乳鉢等で粉砕して均一な粉末とした後、その触媒粉末をフッ酸、王水等の酸に加えて加熱攪拌し、溶解させ、均一な溶液とする。次に、その溶液を純水によって適当な濃度まで希釈し、分析用の溶液とする。その溶液を高周波誘導結合プラズマ発光分析装置(例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製SPS−1700)によって定量分析することができる。装置の精度は、市販されている各元素の標準試薬によって容易に補正することが可能であり、再現性のある定量が可能である。また、この分析法により、例えば、ヘテロポリ酸の水素原子の置換割合を求めることも可能である。
本発明(II)−低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒の製造方法
本発明(II)は、本発明(I)の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒の製造方法であって、以下の第1工程及び第2工程を含むことを特徴とする方法である。
第1工程
ヘテロポリ酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を担体に担持して、担体担持触媒を得る工程
第2工程
第1工程で得られた担体担持触媒を乾燥して、低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒を得る工程
まず、第1工程について説明する。第1工程は、ヘテロポリ酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を担体に担持して、担体担持触媒を得る工程である。
第1工程で用いることができるヘテロポリ酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物は、本発明(I)の場合に述べたものと同様である。
第1工程で用いることのできる溶媒には特に制限はない。ヘテロポリ酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、用いる担体が吸収できる量以下の溶媒量で均一に溶解できるものであればよい。一般には、水、有機溶媒又はそれらの混合物等を用いることができる。
ヘテロポリ酸は、遊離酸の場合やリチウム、ナトリウム及びマグネシウム等の金属塩の場合、溶媒に対する溶解性が比較的高い。従って、担体が吸収できる量以下の溶媒量で担持に必要な量のヘテロポリ酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の均一溶液を得ることができ、該溶液を用いて担体に担持することができる。
本発明(I)の触媒の具体的な実現手段の1つとして、ヘテロポリ酸の置換率が高い触媒があるが、そのような触媒を製造する際には、ヘテロポリ酸の金属塩が、中和金属の種類及び置換率によって、難溶性になることがある。
しかし、カリウム、セシウム、バリウム等の金属塩の場合は溶媒に対する溶解性が低く、結果として担持に必要な十分な濃度の均一溶液を得ることが困難となる。また、本発明(I)の触媒の具体的な実現手段の1つとして水素原子の置換率が高いヘテロポリ酸の塩を用いる触媒があり、そのような塩ではさらに溶解性が低下することがある。
このような場合、まずヘテロポリ酸のみの溶液を用いてヘテロポリ酸を担体に担持させ、次いで該金属塩を形成する元素を含む化合物の溶液を用いて金属イオンを担持させて、結果として難溶性のヘテロポリ酸の塩を担体に担持させる方法が有効であり且つ実用的である。このように、ヘテロポリ酸とその塩を形成する元素を別々に担体に担持する場合、その担持の順番はどちらが先であってもかまわない。
次に、第2工程について説明する。第2工程は第1工程で得られた担体担持触媒を乾燥して、低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒を得る工程である。
乾燥方法としては、加熱オーブン内に数時間置いて乾燥することが適当であり、その後デシケータ内で周囲温度まで冷却する。乾燥温度は、約400℃を超えるとヘテロポリ酸の骨格の破壊を招く恐れがあり、好ましくない。好ましくは80℃〜350℃の範囲である。
また、工業的にはこのような静置乾燥機ではなく、通気回転乾燥機、連続式流動層乾燥機、連続式熱風搬送型乾燥機等の乾燥機を用いて連続的に乾燥することができる。
ヘテロポリ酸及び/又はその塩の担持量やその組成は、それらの使用量で制御することができる。また、製造後の触媒においてはICP等の化学分析により測定することができる。
本発明(III)−低級脂肪族カルボン酸エステルの製造方法
本発明(III)は、本発明(I)の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒の存在下に、炭素数3以上6以下の低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とを気相で反応させることを特徴とする低級脂肪族カルボン酸エステルの製造方法である。
本発明(III)において、使用することができる炭素数3以上6以下の低級オレフィンには特に制限はない。具体的には、例えば、プロピレン、1−ブテン、cis−ブテン、trans−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン及び3−ヘキセン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、プロピレン、1−ブテン、cis−ブテン及びtrans−ブテンである。
また、これらの2種以上の混合物でも構わない。例えば、1−ブテン、2−ブテン、n−ブタン及びイソブタン等を含む「C4ラフィネートII」と呼ばれる混合物は、安価なブテン原料として優れている。「C4ラフィネート」とは、ナフサ分解より得られるC4留分からブタジエンを分離し、選択的水素化等で除去した成分であり、「C4ラフィネートII」とはC4ラフィネートからイソブテンを除去した混合物である。詳しくは、「工業有機化学(第4版)」(向山光昭監訳、東京化学同人発行、1996年、75ページ脚注)に記載されている。
もちろん、炭素数3以上6以下の低級オレフィンには、メタン、エタン、プロパン及びn−ブタン等の飽和炭化水素が存在していても構わない。
一方、本発明(III)において使用することができる低級脂肪族カルボン酸としては特に制限はないが炭素数1〜4のカルボン酸が好ましい。具体的には、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。好ましくは、酢酸及びプロピオン酸であり、特に酢酸が好ましい。
本発明(III)における原料としての炭素数3以上6以下の低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸との使用割合には特に制限はないが、一般的には炭素数3以上6以下の低級オレフィンを低級脂肪族カルボン酸に対して等モルもしくは過剰モル量使用することが望ましい。
具体的な割合としては、炭素数3以上6以下の低級オレフィン:低級脂肪族カルボン酸が、モル比として、1:1〜20:1の範囲にあるのが好ましく、より好ましくは2:1〜10:1の範囲である。
気相反応の形態としては、固定床、流動床の何れも実施でき担体の形状も実施する形態に合わせて粉末から数mmの大きさに成形したものから選ぶことができる。
また、原料に少量の水を混合することは触媒寿命の観点から好ましい。しかし、あまりに多くの水を加えると、アルコールやエーテル等の副生物も増えてくるので好ましくない。具体的には混合ガス中の水濃度は1質量%〜50質量%の範囲であり、好ましくは2質量%〜40質量%の範囲である。
反応温度、圧力としては、供給媒体が気体状を保つ範囲であることが必要であり、その結果、許容できる範囲は原料により異なってくる。一般に反応温度としては100℃〜250℃の範囲が好ましく、より好ましくは110℃〜220℃の範囲である。
また、圧力としては常圧から2MPaG(ゲージ圧)の範囲が好ましく、より好ましくは常圧から1MPaG(ゲージ圧)までの範囲である。
触媒に供給する原料の空間速度(以下、「GHSV」と記す)としては、100hr-1〜7000hr-1の範囲、より好ましくは300hr-1〜2000hr-1の範囲で触媒層を通すのが好適である。
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの記載により何らの限定を受けるものではない。
担体の前処理
下記の例で用いた全ての担体は、前処理として、110℃、空気下で、4時間乾燥を行ったものである。
水の使用
下記の例で用いた水は、全て脱イオン水である。
担体の使用
下記の例で用いた担体は、全てシリカ担体(富士シリシア化学株式会社製、CARiACT Q−6)(比表面積280m2 /g、細孔容積1.0cm 3 /g)である。
原料化合物の使用
下記の例で用いたケイタングステン酸26水和物[H4 SiW1240・26H2 O]は、日本無機化学工業製のものである。
触媒の製造
実施例1
ケイタングステン酸・26水和物(40.4g)及び硝酸リチウム1水和物(3.35g)を秤り取り、イオン交換水を用いて均一に溶解させ、40mlにメスアップすることにより、ヘテロポリ酸塩の水溶液を得た。次いで、シリカ担体63.2gに含浸し、全量を吸収させた。
液を含浸させた担体を磁性皿に移し、1時間風乾させた後、150℃に調節した熱風式乾燥機で、5時間乾燥した。乾燥後、デシケーター内に移し、室温になるまで放冷して、低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒1を得た。
実施例2
硝酸リチウム1水和物の量(3.35g)を2.51gに変えた以外は、実施例1と同様に操作し、低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒2を得た。
比較例1
硝酸リチウム1水和物の量(3.35g)を1.67gに変えた以外は、実施例1と同様に操作し、低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒3を得た。
比較例2
硝酸リチウム1水和物の量(3.35g)を0.84gに変えた以外は、実施例1と同様に操作し、低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒4を得た。
比較例3
硝酸リチウム1水和物の量(3.35g)を0.01gに変えた以外は、実施例1と同様に操作し、低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒5を得た。
比較例4
シリカ担体を、低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒6とした。
上記の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒の製造に用いた原料の質量及びプロトン置換率を表1に示す。
Figure 0004565919
アンモニア昇温脱離スペクトルの測定
アンモニア昇温脱離スペクトル測定は、日本ベル製TPD−ATを用いて行った。サンプル管として、サンプル充填部が10mmφである石英製サンプル管を使用した。粉砕した低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒を、100mgを正確に秤り取り、サンプル管に充填し、装置に取り付けた。前処理を、150℃のヘリウムを50ml/分で60分間流通させて行い、その後100℃に降温した。サンプル部のガス流通を停止し、0.1Torr以下にまで真空引きを行った。その後、アンモニアを100Torrになるように添加し、100Torrに達した所で、10分間保持した。その後、触媒に吸着されないアンモニアを取り除くために、100℃で120分間真空引きし、次いでマススペクトルの測定を開始し、ヘリウムを50ml/分で30分間流通させた。その際、マススペクトルのベースが安定化することを確認した。次いで、10℃/分で、700℃まで昇温することにより、アンモニア脱離スペクトルの測定を行った。
測定に際しては、4重極子型マススペクトル(アネルバ社製)を用いて、MASS No.16を追跡した。得られた脱離スペクトルからその面積を定量することにより、酸量を測定した。
酸量の総和と100℃〜300℃以内でアンモニアが脱離した酸量の割合を表2に示す。また、アンモニア脱離スペクトルを、図4〜8に示す。
Figure 0004565919
低級脂肪族カルボン酸エステルの製造
実施例1、実施例2、比較例1〜4で得た低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒1〜6を、それぞれ、10ml用い、SUS316L製反応管(内径25mm)に充填し、触媒層の反応ピーク温度150℃、反応圧力0.4MPaG(ゲージ圧)で、1−ブテン:酢酸:水:窒素の容量比=10:8:4.5:77.5の割合で混合したガスを、GHSV2000hr-1にて導入して、1−ブテンと酢酸から酢酸エステルを得る反応を行った。
反応における分析方法として、触媒充填層を通過した出口ガスの全量を冷却し、凝縮した反応捕集液は全量を回収しガスクロマトグラフィーで分析した。凝縮せずに残った未凝縮ガスについては、サンプリング時間内に流出した未凝縮ガスの全量を測定し、その一部を取り出し、ガスクロマトグラフィーで組成を分析した。生成したガスを冷却し、冷却後の凝縮液及びガス成分をそれぞれガスクロマトグラフィーにて分析した。
1.ガス部の分析
ガスクロマトグラフィー:島津ガスクロマトグラフ用ガスサンプラー(MGS−4;計量管1ml)付ガスクロマトグラフィー(島津製作所製GC−14B)
カラム:パックドカラム Unicarbon A−400 80/100メッシュ 長さ2m
キャリアーガス:ヘリウム(流量23ml/分)
温度条件:検出器及び気化室温度が130℃、カラム温度は40℃から95℃へ昇温速度40℃/分で昇温した。
検出器:FID(H2 圧70kPa、空気圧100kPa)
2.捕集液の分析
捕集液の分析分析は内部標準法を用い、反応液10mlに対し、内部標準として1,4−ジオキサンを1ml添加したものを分析液として、その内の0.4μlを注入して行った。
ガスクロマトグラフィー:島津製作所(株)製GC−14B
カラム:キャピラリーカラムTC−WAX(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)
キャリアーガス:窒素(スプリット比20、カラム流量1ml/分)
温度条件:検出器及び気化室温度が200℃、カラム温度は、分析開始から7min間は40℃に保持し、その後10℃/分の昇温速度で230℃まで昇温し、230℃で5分間保持した。
検出器:FID(H2 圧70kPa、空気圧100kPa)
得られた結果を下記の表3に示す。
Figure 0004565919
なお、実施例及び比較例中のSTY、選択率の定義は下記式による。
STY(g/hlcat)
= 生成物の時間当たりの生成量(mol/h)÷触媒量(L)
選択率(%)
= 生成物の生成量÷反応で消費された低級オレフィンの消費量×100
表3中における重合体とは、ブテンが重合したオクテン類を示す。
本発明(I)によれば、高選択的に低級脂肪族カルボン酸エステルを製造することができるので、本発明は産業上極めて有用である。
ヘテロポリ酸[H4 SiW1240]担体未担持品のアンモニア脱離スペクトル。 50%中和したヘテロポリ酸塩[H2 Li2 SiW1240]担体未担持品のアンモニア脱離スペクトル。 完全中和したヘテロポリ酸塩[Li4 SiW1240]担体未担持品のアンモニア脱離スペクトル。 実施例1の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒1(ヘテロポリ酸塩担体担持触媒)のアンモニア脱離スペクトル。 実施例2の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒2(ヘテロポリ酸塩担体担持触媒)のアンモニア脱離スペクトル。 比較例1の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒3(ヘテロポリ酸塩担体担持触媒)のアンモニア脱離スペクトル。 比較例2の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒4(ヘテロポリ酸塩担体担持触媒)のアンモニア脱離スペクトル。 比較例3の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒5(ヘテロポリ酸塩担体担持触媒)のアンモニア脱離スペクトル。 比較例4の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒6(シリカ担体)のアンモニア脱離スペクトル。

Claims (11)

  1. 炭素数3以上6以下の低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とを気相で反応させて低級脂肪族カルボン酸エステルを製造するのに用いる、ヘテロポリ酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が担体に担持された触媒において、該触媒のアンモニア脱離スペクトルで測定される酸量が該触媒単位質量あたり0.08mmol/g〜10.0mmol/gであり、且つ該スペクトル測定時の温度が100℃〜300℃の範囲でアンモニアが脱離する酸量が全体の70%以上であることを特徴とする低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒。
  2. ヘテロポリ酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が、以下のいずれかの式で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒。
    z4-nz[SiW1240]・xH2
    z3-nz[PW1240]・xH2
    z4-nz[SiMo1240]・xH2
    z3-nz[PMo1240]・xH2
    z4-nz[SiWy Mo12-y40]・xH2
    z3-nz[PWy Mo12-y40]・xH2
    (式中、xは水和水の数を示し、0〜35の範囲である。yはヘテロポリ酸構造中のW数を示し、1〜11の範囲の整数である。Mはヘテロポリ酸の水素原子の一部又は全部を置換する金属イオン又はオニウムイオンであり、zはMの置換数を示し、0〜4の範囲であり、nはMの価数を示す)
  3. ヘテロポリ酸の水素原子の一部又は全部を置換する金属イオン又はオニウムイオンが、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム及びアンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒。
  4. ヘテロポリ酸の水素原子の置換率が60%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒。
  5. 以下の第1工程及び第2工程を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載した低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒の製造方法。
    第1工程
    ヘテロポリ酸及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を担体に担持して、担体担持触媒を得る工程
    第2工程
    第1工程で得られた担体担持触媒を乾燥して、低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒を得る工程
  6. 第1工程におけるヘテロポリ酸の塩の担持が、該ヘテロポリ酸の塩の均一溶液を用いて行われることを特徴とする請求項5に記載の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒の製造方法。
  7. 第1工程におけるヘテロポリ酸の塩の担持が、まずヘテロポリ酸の均一溶液を用いてヘテロポリ酸を担持し、次いで塩を形成する元素を含む化合物の均一溶液を用いて該元素を担持して、結果として担体上にヘテロポリ酸の塩を形成することにより行われることを特徴とする請求項5に記載の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒の製造方法。
  8. 第1工程におけるヘテロポリ酸の塩の担持が、まず塩を形成する元素を含む化合物の均一溶液を用いて該元素を担持し、次いでヘテロポリ酸の均一溶液を用いてヘテロポリ酸を担持して、結果として担体上にヘテロポリ酸の塩を形成することにより行われることを特徴とする請求項5に記載の低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒の製造方法。
  9. 請求項1〜4のいずれかに記載した低級脂肪族カルボン酸エステル製造用触媒の存在下に、炭素数3以上6以下の低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とを気相で反応させることを特徴とする低級脂肪族カルボン酸エステルの製造方法。
  10. 炭素数3以上6以下の低級オレフィンが、プロピレン、1−ブテン、cis−ブテン、trans−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン及び3−ヘキセンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項9に記載の低級脂肪族カルボン酸エステルの製造方法。
  11. 低級脂肪族カルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項9に記載の低級脂肪族カルボン酸エステルの製造方法。
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