部品実装装置の1例を図6に示している。図において部品実装装置1は、実装すべき部品を供給する2つの部品供給部2(2aおよび2b)と、各部品供給部2から部品保持部3を利用して部品を取り出し、回路基板14に実装する実装ヘッド4と、実装ヘッド4を所定位置に搬送するロボット5と、部品保持部3に保持された部品を撮像して位置と角度のずれを認識する部品認識装置6と、回路基板14を搬入して保持する基板保持装置7と、全体の動作を制御する制御部9とを備えている。
部品供給部2には、部品トレー8a上に部品を配列して供給するトレー式部品供給部2aと、パーツカセット8bによりテープ状に巻き取られた部品を供給するカセット式部品供給部2bとが含まれる。この内、トレー式部品供給部2aからはBGA(Ball Grid Array)、QFP(Quad Flat Package)、コンデンサなどの主に大型の部品が供給され、カセット式部品供給部2bからはチップ部品などの主に小物部品が供給される。
以上のように構成された部品実装装置1の動作時、実装ヘッド4がロボット5の搬送で部品供給部2(2aまたは2b)に対向する位置に移動し、部品保持部3を利用して部品を取り出す。その後、実装ヘッド4の移動により部品保持部3が部品認識装置6に対向する位置まで移動し、吸着された部品の位置、角度のずれを含む部品の保持状態を認識する。
この間、回路基板14が部品実装装置1内に搬入され、基板保持装置7により所定の実装位置に規制保持される。部品保持部3に部品を保持した実装ヘッド4は、ロボット5の搬送によって回路基板14に対向する位置まで移動する。実装ヘッド4に装着された基板認識装置15が回路基板14を撮像して位置、角度のずれを認識し、その認識結果を制御部9に送信する。制御部9には、あらかじめ回路基板14に実装される各部品の実装位置を記録したNCデータが読み込まれている。部品認識装置6から入力される部品の状態と、基板認識装置15から入力される回路基板14の状態とに基づき、制御部9が部品保持部3の位置と角度についての必要な補正を指令する。
実装ヘッド4は、前記指令に基づいて部品の位置、角度に補正を加え、部品保持部3を下降させて部品10を回路基板14の所定実装位置に実装する。部品実装を終えた実装ヘッド4は、再度ロボット5の搬送によって部品供給部2に対向する位置に移動し、以下、これまでの動作を反復する。所定の全部品の実装を終えた回路基板14は基板保持装置7により部品実装装置1外に搬出され、その後、次の回路基板14が搬入されてこれまでの動作が繰り返される。
一方、部品認識装置6による認識結果、部品保持部3に把持された部品の位置、角度のずれが大きくて実装が困難である場合、あるいは認識された部品が所定部品でないことが判明した場合には、部品保持部3は当該部品を回路基板14に実装することなく、制御部9に指令に基づいて所定の部品廃棄位置まで移動し、当該部品を廃棄する。
図7(a)、(b)は、従来技術に見られる部品実装に使用される2種類の部品保持部3を示している。この内、図7(a)の部品保持部は吸着ノズル3aを示す。吸着ノズル3aは、装着部21と、本体部22と、吸着部23とから構成されている。装着部21は、実装ヘッド4側にワンタッチで着脱可能な従来技術で知られた装着構造に形成されている。本体部22には長手方向に中空穴24が貫通し、当該中空穴24には、図の上方に位置する実装ヘッド4から負圧エア(矢印25)または正圧エアの供給が可能である。部品10を取り出して保持する場合、吸着ノズル3aは吸着部23を部品10の表面に当接させて矢印25に示す負圧エアの作用で部品10を吸着し、又、実装する際には正圧エアの作用で部品10を吸着部23から切り離して回路基板14へ実装する。不具合部品を廃棄する場合には、同じく所定の部品廃棄位置に移動した後、正圧エアの作用により部品10を吸着部23から分離する。部品実装を行う際に作用する前記正圧エアは、実装済みの隣接部品を吹き飛ばすことがないよう低圧の正圧エアが利用され、一方、部品廃棄の際には確実に部品10の分離ができるよう相対的に高い圧力の正圧エアが利用される。
一方、図7(b)は、従来技術に見られる一般に機械式チャックと呼ばれる部品保持部3bを示している(例えば、特許文献1参照。)。機械式チャック3bは、装着部31と、本体部32と、レバーアセンブリ33と、ホルダアーム35とを備えている。本体部32内にはシリンダ36が設けられ、シリンダ36内にはピストン37が嵌装されている。ピストン37はスプリング38によって常時図の下方に向けて付勢されている。
機械式チャック3bで部品10を把持する際には、図示しない上方の実装ヘッド4側から供給される負圧エアの作用で矢印25に示すようにピストン37がスプリング38の付勢力に抗して上昇し、これに連動したレバーアセンブリ33が矢印26に示す方向に動作する結果、ホルダアーム35が部品10を両側から把持する。次に部品実装の際には、負圧エアの供給を停止することでスプリング38の作用によりピストン37が再度下方に付勢され、ホルダアーム35が開放して部品10が分離される。通常の待機時においては、スプリング38の作用でピストン37が下方に付勢され、ホルダアーム35が開いたままの状態で実装ヘッド4に装着されている。
機械式チャック3bの場合、部品が小型であれば上述したように部品10を外側からホルダアーム35で把持することができるが、例えば部品10の幅が約20mmを越えるなどの大型となる場合、スペース的な制約で外側からの部品把持が困難となり得る。従来技術ではこのため、上述した機械式チャック3bのレバーアセンブリ33の構成を変え、通常の待機時にはスプリング38の作用でホルダアーム35を閉じた状態に維持し、部品10を把持する際には負圧エアの作用でホルダアーム35を開いて部品10を内側から把持する部品保持部が知られている。この際、部品10の側にはホルダアーム35による内側からの係合を可能にする溝部、凹部などの被係合部が設けられていなければならない。
実装ヘッド4は、実装すべき部品10に応じて装着する部品保持部3を上述した吸着ノズル3aとするか、あるいは機械式チャック3bとするかを選択している。一般に小物チップ部品を実装する際には図7(a)に示す吸着ノズル3aが、大物の異形部品を実装する際には図7(b)に示す機械式チャック3bが使用される。しかしながら、この他にも部品10の形状(特に被吸着面、被把持面の形状)、実装位置、隣接部品状態などの諸般の事情も考慮され、いずれかの部品保持部3が選択される。吸着ノズル3aと機械式チャック3bとの取替えは、上述した装着部31の着脱構造によりワンタッチで行うことができる。
図8は、これらの部品保持部3(吸着ノズル3a又は機械式チャック3b)を動作するために実装ヘッド4へ負圧エア又は正圧エアを供給するためのエア供給回路50を示している。図において、コンプレッサなどのエア供給源51から供給される正圧エア(圧縮エア)の内、一部は真空エジェクタ52へ、一部はブロー回路53へと導かれる。この内、真空エジェクタ52に供給される正圧エアは、負圧エアを発生させるために使用される。これは正圧エア放出の際に発生する負圧を利用するもので、従来から知られた真空発生技術である。ここで発生した負圧エアは、制御バルブ54を介して部品保持部3へ供給される。一般に、部品実装装置1で使用される負圧エアの設定圧は約−80kPaほどである。
一方、ブロー回路53に供給された正圧エアは2つの圧力調整機構55a、55bに導かれ、2つの異なる圧力の正圧エアを発生させる。図示の例では上側が吸着ノズル3aによる部品廃棄時に使用される設定圧力約30kPaの相対的に高い圧力の正圧エアであり、下側が同じく吸着ノズル3aによる部品実装時に使用される設定圧力約10kPaの相対的に低圧の正圧エアである。これらはいずれも制御バルブ56に導かれ、どちらかが選択された後、さらに次の制御バルブ57に導かれて最終的に部品保持部3へと供給される。全ての制御バルブ54、56、57は制御部9(図6参照)の指令に基づいて制御され、それぞれ最適なタイミングで負圧エア、低正圧エア、高正圧エアのいずれかが選択的に部品保持部3に供給される。
なお、機械式チャック3bで部品把持を行う際、従来技術では部品把持用に−80kPaの負圧エアのみが使用されており、正圧エアは使用されていなかった。これは、部品実装時、部品廃棄時の部品切り離し時には全て図7(b)に示すスプリング38の付勢力が利用されているからである。したがって図8に示すエア供給回路50から部品保持部3に供給される正圧エアは、専ら吸着ノズル3aからの部品の切り離しの際にのみ利用されているものであって、機械式チャック3bが取り付けられている間には正圧エアの供給はされていなかった。
特開平11−340688号公報
しかしながら、従来技術による上記部品保持機構、特に機械式チャック3bを利用した部品保持機構には未だ改善の余地があった。通常、実装される部品10を確実に把持するには、ホルダアーム35が部品10と係合する部分で約250gの把持力が必要とされる。この把持力は、上述したように負圧エア(設定圧約−80kPa)をシリンダ36内に導くことによって得ている。機械式チャック3bを使用する場合、複数のホルダアーム35を対向する側に閉鎖して部品10の一対の係合部を外側から把持するか、複数のホルダアーム35を互いに離れる向きに開放して部品10の一対の係合部を内側から把持するかが選択されるが、このいずれの場合においても前記負圧エアを利用することにより行われていた。これは、上述した部品保持に十分な力を発揮するには高圧の負圧エア(約−80kPa)が必要とされ、正圧エアの設定圧(約30kPa)では不十分であると考えられてきたこと、及び吸着ノズル3aの場合と違って部品10の分離にはスプリング38の付勢力が利用可能であったことによる。
このため、部品10を外側から把持するか内側から把持するかによってそれぞれ専用の機械式チャック3bが必要となり、部品10の大きさ等に応じて機械式チャック3bをその都度外側把持式か内側把持式かに取り替える必要があった。吸着ノズル3a、機械式チャック3bなどの部品保持部3は、一般に部品実装装置1の部品保持部トレー13(図6参照)に保管され、必要に応じて適切な部品保持部3が選択されている。このため、機械式チャック3b使用時には、部品10の外側把持か内側把持かに応じて実装ヘッド4を一旦部品保持部トレー13まで移動させて機械式チャック3bを取替える必要が生じ、作業効率を悪化させ、設備稼働率を低下させるという問題を生じさせていた。
以上より、本発明は上述したような従来技術にある問題を解消し、汎用性の高い部品保持部、部品保持方法を提供することによって実装ヘッドの無駄な移動を排除し、作業タクトの短縮と設備稼働率の向上を図ることを目的としている。
本発明は、部品実装装置が従来から供給可能であった負圧エアと正圧エアの双方を活用し、同一の機械式チャックを使用して部品を外側からでも内側でも把持することを可能にし、部品保持部の取替えに絡む実装ヘッドの移動を不要とすることによって上述した問題を解消している。具体的には、吸着ノズルによる部品保持時の部品吸引用負圧源と、同じく吸着ノズルによる部品廃棄時のエアブロー用正圧源の双方を機械式チャックのホルダアーム開閉駆動に活用するもので、より具体的には以下の内容を含む。
すなわち、本発明にかかる1つの態様は、部品実装装置の実装ヘッドへ着脱する装着部と、前記装着部の中空穴につながるシリンダを内部に備えた本体部と、前記シリンダ内に嵌装されるピストンと、前記ピストンの動きに連動して動作するレバーアセンブリと、前記レバーアセンブリに取り付けられた複数のホルダアームとから構成され、前記ピストンの動きに応じて動作する前記複数のホルダアームにより部品を把持する部品保持機構であって、前記ホルダアームが、前記中空穴を介して前記シリンダ内に導入される正圧エアの作用により部品を把持することを特徴とする部品保持機構に関する。
本発明にかかる他の態様は、同じく装着部、シリンダを備えた本体部、ピストン、レバーアセンブリ、ホルダアームを含み、前記ピストンの動きに応じて動作する前記複数のホルダアームにより部品を把持する部品保持機構であって、前記中空穴を介して前記シリンダ内に導入されるエアを、負圧エアと正圧エアの間で切換えることにより前記複数のホルダアームが閉鎖動作から開放動作へ、または開放動作から閉鎖動作へと切換えられ、前記閉鎖動作におけるホルダアームの部品保持力と、前記開放動作におけるホルダアームの部品把持力とがほぼ等しいことを特徴とする部品保持機構に関する。
本発明にかかるさらに他の態様は、同じく装着部、シリンダを備えた本体部、ピストン、レバーアセンブリ、ホルダアームを含み、前記ピストンの動きに応じて動作する前記複数のホルダアームにより部品を把持する部品保持機構であって、前記本体部が、前記ピストンに対して前記中空穴の反対側に位置するシリンダ内に開口するエア通路をさらに備え、前記シリンダ内に導入される負圧エアまたは正圧エアの導入を前記中空穴側と前記エア通路側との間で切り換えることにより前記複数のホルダアームが閉鎖動作から開放動作へ、または開放動作から閉鎖動作へと切換えられ、前記閉鎖動作におけるホルダアームの部品保持力と、前記開放動作におけるホルダアームの部品把持力とがほぼ等しいことを特徴とする部品保持機構に関する。
前記シリンダ内に導入される負圧エアの圧力は約−80kPa、正圧エアの圧力は約30kPaとすることができる。また、前記ホルダアームによる部品把持力は約250gであることが好ましい。この場合、前記ピストンを、前記負圧エアまたは正圧エアが導入される側のシリンダ容積が拡がる方向に付勢するスプリングをさらに備え、前記スプリングが、前記ホルダアームに対して約110gから約130gの部品把持力に相当する付勢力を前記ピストンに及ぼしていることが好ましい。
次に、本発明にかかるさらに他の態様は、部品を連続的に供給する部品供給部と、前記部品供給部から部品を取り出して回路基板に実装する実装ヘッドと、前記実装ヘッドを搬送するロボットとを備え、前記実装ヘッドに装着された部品保持部を利用して前記部品供給部から部品を取り出し、基板保持装置に保持された回路基板の実装位置に前記部品を実装する部品実装装置であって、上述したいずれか一にかかる部品保持機構を備えた部品実装装置に関する。
本発明にかかるさらに他の態様では、同じく実装ヘッドに装着された部品保持部を利用して部品供給部から部品を取り出し、基板保持装置に保持された回路基板の実装位置に前記部品を実装する部品実装装置であって、部品保持動作時に前記部品保持部に正圧エアを供給するよう制御する制御部を備えていることを特徴とする部品実装装置に関する。この場合、前記実装ヘッドは、機械式チャック式、吸着ノズル式のいずれかの部品保持部を選択的に装着することが好ましい。
本発明にかかるさらに他の態様は、実装される部品の対向する少なくとも一対の被係合部に、機械式チャックに設けられた複数のホルダアームを内側または外側から係合させて当該部品を把持する部品保持方法であって、前記機械式チャックが備えているシリンダに正圧エアを導入することにより前記複数のホルダアームを動作して部品を把持することを特徴とする部品保持方法に関する。
本発明にかかるさらに他の態様は、同じく機械式チャックに設けられた複数のホルダアームを内側または外側から係合させて部品を把持する部品保持方法であって、前記機械式チャックが備えているシリンダに導入されるエアを、正圧エアと負圧エアの間で切り替えることによって前記閉鎖動作、開放動作の間を切換え、前記閉鎖動作と開放動作との間でほぼ等しい部品把持力を提供することを特徴とする部品保持方法に関する。
本発明にかかるさらに他の態様は、同じく機械式チャックに設けられた複数のホルダアームを内側または外側から係合させて部品を把持する部品保持方法であって、前記ホルダアームを駆動するために前記機械式チャックのシリンダ内に導入される負圧エアまたは正圧エアを前記シリンダ内に嵌装されたピストンに対して軸方向いずれか一方の側から反対側の他方の側に切り換えることにより前記閉鎖動作、開放動作の間を切り換え、前記閉鎖動作と開放動作との間でほぼ等しい部品把持力を提供することを特徴とする部品保持方法に関する。
そして、本発明にかかるさらに他の態様は、部品供給部に供給される部品を部品保持機構により取り出し、前記部品を搬送して回路基板の実装位置に実装する部品実装方法であって、上述したいずれか一に記載の部品保持方法を利用する部品実装方法に関する。この場合、実装する部品に応じて吸着ノズル、機械式チャックを取替えて部品の取り出し、部品の実装を行うことが好ましい。
本発明の実施により、部品保持部取替えに要する時間を削減することができ、部品実装タクトの低減と設備稼働率の向上をもたらすことができる。また、機械式チャックの種類が削減される結果、設備投資が低減され、また、在庫管理が合理化されるなどのコストダウンにつながる各種付帯的なメリットを得ることができる。
本発明にかかる第1の実施の形態の部品保持機構につき、図面を参照して説明する。以下の説明において、従来技術で説明したものと同一の構成要素については同一の符号を付するものとする。但し、本実施の形態にかかる部品保持部3は全て機械式チャック3bを対象としているため、以下の説明では単に機械式チャック3と表示するものとする。また、部品保持部に負圧エア、正圧エアを供給して部品を把持又は分離するシステムを部品保持機構と称するものとする。
図1(a)、(b)は、本実施の形態にかかる機械式チャック3を示している。この内、図1(a)は部品10を外側から把持する際の待機状態を、図1(b)は部品10を把持した状態を示している。両図において、機械式チャック3は、装着部31と、本体部32と、レバーアセンブリ33と、ホルダアーム35とから構成されている。装着部31は、図示しない実装ヘッド4(図6参照)に着脱可能なシールジョイント式の着脱機構で、これは従来技術によるものと同様である。本体部32の内部にはシリンダ36が形成され、装着部31に形成された中空穴34を介してシリンダ36内に負圧エア、正圧エアの導入が可能である。
シリンダ36内にはピストン37が長手方向の軸に沿って移動可能に嵌装され、ピストン37にはスプリング38が装着されてピストン37を常時図の下方向に付勢している。ピストン37の下方向への動きは、図示しないストッパにより抜け止め規制されている。レバーアセンブリ33は、左右対称となる一対のレバー41と、当該レバー41に固定されたアームプレート42とから構成されている。各レバー41は、一端を本体部32にある固定支点43に支持され、他端はピストン37の下端に設けられた可動支点44により支持されている。各アームプレート42には、端末にゴムなどの高摩擦材を取り付けたホルダアーム35が固定され、この一対のホルダアーム35によって部品10を把持することができる。この際、部品10の両側面が部品把持時における一対の被係合部を構成する。
以上のように構成された部品保持部3は以下のように動作する。まず図1(a)の待機状態において、スプリング38の作用でピストン37が下方に付勢され、可動支点44で結合された一対のレバー41が固定支点43を中心に回動することによって対向する一対のアームプレート42、及びホルダアーム35が相互に開いた位置で維持される。この状態で実装ヘッド4が部品供給部2へ移動し、部品10に対向する位置で部品保持部3を下降させる。
次に図1(b)において、矢印45に示すように実装ヘッド4に負圧エアが作用し、これによって本体部32のシリンダ36内に負圧エアが導入され、ピストン37がスプリング38の付勢力に抗して上昇する。これに伴って可動支点44が上昇する結果、一対のレバー41はそれぞれ固定支点43を中心に回動し、一対のアームプレート42、さらにホルダアーム35を矢印46に示す閉じる方向に駆動して部品10を把持する。この時の部品把持力(部品10に向けて付加される力)は約250gを確保することが好ましい。この力は負圧エアによるピストン吸引力とスプリング38の付勢力の相殺によって決まる。これまでの動作は従来技術によるものと同様である。
本実施の形態にかかる機械式チャック3は、同一機構を利用してホルダアーム35を開く方向の動作においても部品10の把持を可能としている。図2(a)、(b)はこの状況を示したもので、両図に示す機械式チャック3は、図1(a)、(b)に示すものと全く同一である。この内、図2(a)は待機状態を示し、図2(b)は部品保持状態を示している。図2(a)の待機状態において、装着部31には矢印45に示す負圧エアが作用し、ピストン37がスプリング38の付勢力に抗して上昇する結果レバーアセンブリ33が動作し、ホルダアーム35が相互に接近する方向に閉じている。この結果、ホルダアーム35は部品10に形成された凹部11内に侵入可能となる。
この待機状態で部品10に対向する位置に移動した実装ヘッド4が機械式チャック3を下降させ、次に図2(b)に示すようにシリンダ36内に矢印47に示す正圧エアを供給する。これによってピストン37が押し下げられ、レバーアセンブリ33が図2(a)に示す状態から可動支点44が下降する方向にそれぞれ回動する結果、一対のホルダアーム35が矢印64に示すように相互に開く方向に動作し、部品10の凹部11を内側から把持することができる。部品10を把持する際の一対の被係合部は、凹部11内に形成される。この際においてもホルダアーム35は約250gの把持力を確保することが好ましい。この際の保持力は、正圧エア47によるピストン37の押圧力と、スプリング38による付勢力との和によりもたらされる。
このように、本実施の形態にかかる機械式チャック3を使用する部品保持機構の特徴は、圧力が不十分であるとの理由で正圧エアを全く利用していなかった従来の発想を転換し、正圧エアを積極的に部品把持に活用することにある。正圧エアの不足分を補い、十分な部品把持力を得るための手段として以下の対応を行うことができる。
(1)より高圧の正圧エアをシリンダ36内へ供給する。
現状では、部品保持部3に供給される正圧エアは、吸着ノズル3a(図7(a)参照)に吸着保持された部品10を廃棄することを目的に最大でも約30kPaに抑えられている。これに対し、図8に示すエア供給回路50において、エア供給源51からの正圧エアを圧力調整機構55a、55bに導くことなく制御バルブを介して直接部品保持部3に導くことにより、あるいは別の圧力調整機構に導くことにより、より高圧(最大約500kPaまで)の正圧エアを利用することが可能となる。但し、このような対応策では既存の設備の改修が必要となる。これに対し、項目(2)以降に示す以下の内容は、設備の改修を伴わない対応策となり得る。
(2)本体部32内のシリンダ36の径、及びその内部に嵌装されるピストン37の径を拡大する。
スペース的な制約がある中でも、現状では一般に限界まで利用されているとはいえない。これは、高い負圧エアを利用する場合であれば径が相対的に小さくても部品把持力が十分に確保できたことによる。なお、シリンダ径の拡大は径の二乗に比例して押圧力を増大させるために有効である。
(3)レバーアセンブリ33の各アーム長さを最適化する。
固定支点43と可動支点44の間の距離、及び固定支点43とホルダアーム35先端にある作用点間の距離を調整し、ピストン37のストロークに対するホルダアーム35の移動量を減らすことで部品把持力の強化が可能である。この際、部品10の把持を可能にするために必要なホルダアーム35の移動量は確保する必要がある。
(4)スプリング38の付勢力を強化する。
スプリング28の付勢力としては各種スペックのものが考え得るが、現状では部品把持力に換算して約12gのものが使用されている。従来は単に部品10を分離するためにホルダアーム35を開放する付勢力さえ確保できればよかった。したがって、部品保持を可能にするために必要に応じてこれを数倍まで強化させることは容易である。この強化されたスプリング38の付勢力に抗してピストン37を押し上げる際の力の増大は、ここに列挙されている他の方策(例えば、シリンダ径の増大)を組み合わせることで対応可能である。
上述したいずれか一の対応策を個別に用い、もしくはこれらを任意に組み合わせて用いることによって、現状の正圧エアの圧力不足を十分に補い、ホルダアーム35の開放時においても必要な部品把持力(約250g)を得ることは容易である。1つの例として、現状の負圧エア圧力(約−80kPa)、正圧エア圧力(約30kPa)、シリンダ36の径(10mm)のいずれも変化させることなく、レバーアセンブリ33のアーム長さを調整してホルダアームの移動量を30%低減し(この低減はピストン37のストロークを増大させることで相殺可能)、スプリング38の付勢力を500%増大させることで前記必要な部品把持力の達成が可能である。特に、スプリング38の付勢力による部品把持力への寄与度を現状の約12gから約9〜11倍となる約110g〜約130g程に強化することが好ましい結果につながる。
図1、図2に示す例では、同じ機械式チャック3を使用して外側からの部品把持でも、内側からの部品把持でも可能である。このように、部品把持時におけるホルダアーム35の動作には強力な負圧エアのみを利用するという従来の発想を改め、本実施の形態では、ホルダアーム35の閉鎖、開放のため負圧エアに加えて正圧エアをも積極的に利用し、負圧エア、正圧エアを切り換えることで1つの機械式チャック3を外側からでも内側からでも部品把持が可能となるよう構成している。
図2(b)に示す正圧エアを利用して部品10を把持する際のエアの供給には、図8に示すエア供給回路50がそのまま利用可能である。図8において、部品把持の際に制御部9(図6参照)の指令によって制御バルブ56が動作し、吸着ノズル3aによる部品廃棄時のみに使用されていた約30kPaの正圧エアが機械式チャック3へ供給される。あるいは、エア供給源51より導入されるこれより高い圧力の正圧エアを制御バルブを介して直接機械式チャック3へ供給されてもよい。
図3(a)、(b)は、本実施の形態にかかる機械式チャックの他の態様を示している。図においてこの機械式チャック30では、レバーアセンブリ33aを除く他の構成は先に図1、図2で示したものと同様である。本態様では図1、図2に示すものとは動作が逆になり、正圧エアが作用した際にホルダアーム35が閉じて待機状態となり(図3(a))、負圧エアが作用した際にホルダアーム35が開いて部品把持状態となる(図3(b))。勿論、部品10を外側から把持する場合にはこの待機状態と部品把持状態とが逆となる。
この機構を実現するため、図3(a)、(b)において、レバーアセンブリ33aの一対のレバー41aは、その一端がピストン37aの下方に設けられる可動支点44aに支持され、他端は作用点48によってアームプレート42aに回動可能に取り付けられている。また対向する一対のアームプレート42aは、固定支点43aによって本体部32に回動可能に取り付けられている。図3(a)の状態で正圧エアの作用でピストン37aが押し下げられることによってレバー41aが回動し、レバー41aが一対のアームプレート42aを相互に引き寄せる。これによって各アームプレート42aに固定された一対のホルダアーム35が相互に接近する方向に閉じて待機姿勢となる。図3(b)の状態では、負圧エアによってピストン37aが引き上げられ、可動支点44aを介してレバー41aが回動し、一対のアームプレート42を引き離すことによってホルダアーム35が矢印69に示す方向に開き、部品把持状態となる。
このようにレバーアセンブリ33の構成を変えることで負圧エア、正圧エアを待機状態にも部品保持状態にも任意に利用することができるようになる。負圧エアを利用する場合にも正圧エアを利用する場合にも、ホルダアーム35にはほぼ等しい部品把持力を与えることができ、また、正圧エア、負圧エアの内、どちらを部品の外側からの把持に使用し、どちらを部品の内側からの把持に使用するかも任意に選択することができる。
次に、本発明にかかる第2の実施の形態の部品保持機構について、図面を参照して説明する。図4(a)は、本実施の形態にかかる部品保持機構の機械式チャック60が内側から部品把持する場合の待機状態を示し、図4(b)は、同じく内側から部品把持した状態を示している。両図において、機械式チャック60は、装着部61と、本体部62と、レバーアセンブリ63と、ホルダアーム65とから構成されている。装着部61は先の実施の形態と同様である。本体部62には、内部にはシリンダ66が形成され、シリンダ66の長手方向上方は装着部61を貫通する中空穴64につながり、また下方ではエア通路68につながって、それぞれに負圧エア(正圧エアであってもよい。以下、説明容易化のため負圧エアに統一する。)が導入可能である。
シリンダ66内にはピストン67が軸方向に移動可能に嵌装され、このピストン67は、図からも明らかなように複動式に形成されている。すなわちピストン67上方に中空穴64から矢印45(図4(a))に示す負圧エアが作用した際にはピストン67は上方へ移動し、ピストン67下方にエア通路68から矢印49(図4(b))に示す負圧エアが作用した際にはピストン67は下方へ移動する。レバーアセンブリ63、及びホルダアーム65は先の実施の形態と同様である。
このように構成された機械式チャック60の動作は以下のようである。図4(a)において、上方に位置する実装ヘッド4(図6参照)側から装着部61の中空穴64に負圧エアが導入されることでピストン67が上昇し、これによってレバーアセンブリ63が動作して一対のホルダアーム65が閉じ、待機状態となる。次に、図4(b)において、同じく実装ヘッド4側からエア通路68の側に負圧エアが導入されることによってピストン67が下降し、レバーアセンブリ63が先の場合と逆方向に回動して一対のホルダアーム65が矢印69に示すように開き、部品把持状態となる。この待機状態と部品把持状態とは、部品10を外側から挟んで把持する場合には逆となることは理解されよう。
図5は、本実施の形態で使用されるエア供給回路70を示している。図8に示す従来技術によるエア供給回路50に対して制御バルブ71が追加されている点が異なる。この制御バルブ71は、制御部9の指令によって動作し、複動式ピストン67を備えた機械式チャック60(図4)のいずれかの側のシリンダに選択的に負圧エアの供給が可能である。
なお、図4に示す例では負圧エアを利用して部品把持を行う形式の機械式チャック60を示しているが、同様な機構によって正圧エアを利用することも可能である。この場合、正圧エアの圧力が不足する際には、先に示した圧縮圧力の増大、シリンダ径の増大、レバーアセンブリ63のアーム長変更などの各種対応策が適用可能である。この場合のエア供給は、図5に示す制御バルブ71をブロー回路53の側に接続して正圧エアの供給を制御すればよい。
また、図4に示す例では、ピストン67の上昇の際にホルダアーム65が閉じる形式としているが、図3で例示したものと同様、レバーアセンブリ63の構成を変えることでピストン67が下降する際にホルダアーム65が閉じる形式とすることも勿論可能である。
以上、本発明にかかる各実施の形態の部品保持機構について説明してきたが、本発明は当該部品保持機構を使用する部品保持方法、及び当該部品保持機構または部品保持方法を利用する部品実装装置、部品実装方法をも包含している。この内、本発明にかかる部品保持方法においては、機械式チャックに負圧エア又は正圧エアを選択的に供給することによって部品を外側からでも内側からでも把持できる方法であることを特徴とする。また、本発明にかかる部品実装装置では、各実施の形態で説明した機械式チャック、エア供給回路を備え、制御部は前記機械式チャックの待機状態、部品保持状態に応じてエア回路を制御可能となるプログラムを備えた制御部とされる。また、従来技術のものとは異なり、部品吸着時においても正圧供給が可能な制御部とされる。部品保持部は、部品に応じて吸着ノズルと機械式チャックを取替えて選択的に使用できるものとすることが好ましい。
1.部品実装装置、 2.部品供給部、 3.部品保持部(機械式チャック)、 4.実装ヘッド、 9.制御部、 10.部品、 14.回路基板、 21.装着部、 22.本体部、 23.吸着部、 24.中空穴、 31.装着部、 32.本体部、 33.レバーアセンブリ、 35.ホルダアーム、 36.シリンダ、 37.ピストン、 38.スプリング、 41.レバー、 42.アームプレート、 43.固定支点、 44.可動支点、 50.エア供給回路、 51.エア供給源、 52.真空エジェクタ、 53.ブロー回路、 54.制御バルブ、 55a、55b.圧力調整機構、 56、57.制御バルブ。