JP4563726B2 - 圧電インクジェットヘッド - Google Patents
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詳しく説明すると、圧電素子と、圧電素子を支持する振動板とを含む駆動部が、圧電素子が発生する力を加圧室内のインクに圧力として伝えることで、この加圧室に連通するノズルからインク滴を吐出させるための駆動源としての役割を果たしている。すなわち駆動部は、圧電素子の、駆動電圧の印加による変形によって、振動板を、加圧室の方向に突出するように撓ませて、加圧室の容積を減少させることにより、加圧室内のインクを加圧して、ノズルの先端からインク滴として吐出させる。
圧電素子に駆動電圧を印加して力を発生させると、ヘッド内のインクは、振動板を介して駆動部から受けた圧力によって振動を起こす。この振動は、駆動部と加圧室とを弾性、加圧室にインクを供給する供給口、加圧室とノズルとを繋ぐノズル流路、およびノズルを慣性として発生する。この振動における、ヘッド内のインクの、体積速度の固有振動周期は、上記各部の寸法とインクの物性値、駆動部の寸法と物性値とによって決まる。
圧電インクジェットヘッドの解像度を高め、かつ圧電インクジェットヘッドを小型化するためには、ノズル間のピッチをできる限り小さくしなければならない。また、ヘッドの解像度が上がりノズル数が増えてくると、各加圧室ごとに個別に、独立した圧電素子を配置することが難しい。そのため最近では、横振動モードの薄板状の圧電素子を、当該圧電素子を挟んで配置される、圧電素子に駆動電圧を印加するための一対の電極のうち下側(振動板側)の電極(共通電極)や振動板と共に、複数の加圧室を覆う大きさに一体形成したタイプ(「素子共通タイプ」とする)の圧電インクジェットヘッドが主流になってきた。なお、一対の電極のうち、圧電素子の上側に配置される電極(個別電極)は、個々の圧電素子に個別に駆動電圧を印加するため、個々の加圧室に対応する所定の形状に分離形成される。
例えば圧電素子9の、1つの駆動領域を挟む両側の駆動領域をともに駆動させた状態で、その間に挟まれた駆動領域を駆動させた際には、当該駆動領域の正方向の変形量は、上記の場合よりもさらに小さくなる。
このため、特定の1つの駆動領域について見てみると、その周囲の複数の駆動領域の駆動状態に応じて、つまり形成する画像のドットパターンに応じて、当該駆動領域の正方向の変形量が変化するため、ドット径やドット形状がばらついてしまう。
本発明の目的は、個々の駆動領域、もしくは個別の圧電素子の駆動状態が、その周囲の、他の複数の駆動領域または圧電素子の駆動状態の影響を受けることがないため、形成する画像のドットパターンに応じてドット径やドット形状がばらつくおそれのない圧電インクジェットヘッドを提供することにある。
その結果、従来の圧電インクジェットヘッドにおいては、前述したように加圧室が近接しすぎて、隣り合う加圧室間を隔てる隔壁の、基板の厚み方向の高さよりも面方向の幅が小さいため、前記の現象を生じることを見出した。
W1≧H (1)
を満足し、かつ上記幅W1と、基板の、凹部の底側の下端部の、面方向の幅W2とが、式(2):
W1≦W2 (2)
を満足する断面形状に形成することによって倒れこみの変形を防止することを検討した。そうしたところ、個々の駆動領域の駆動状態が、その周囲の駆動領域の駆動状態の影響を受けるのを防止できることを見出した。素子分離タイプの圧電インクジェットヘッドにおいても同様であった。
横振動モードの薄板状で、上記複数の凹部を覆う大きさの圧電素子と、
上記複数の凹部を閉じて上記加圧室を構成し、かつ上記圧電素子の変形によって振動して任意の上記加圧室の容積を減少させることで、当該加圧室内のインクを、上記ノズルを通してインク滴として吐出させるための振動板と、
上記圧電素子を上下から挟む上部および下部の電極と、
を含む駆動部が配設された圧電インクジェットヘッドにおいて、
上記基板は、上記複数の凹部および上記隔壁が形成されている第1の基板と、上記ノズル流路および上記共通供給路が形成されている第2の基板と、上記ノズルが形成されている第3の基板とがこの順に積層されて構成されており、
隣り合う上記凹部間を隔てる上記隔壁は、上記基板の、上記駆動部が積層される面側の上端部の、面方向の幅W1と、上記基板の厚み方向の高さHとが、式(1):
W1≧H (1)
を満足し、かつ上記幅W1と、上記基板の、上記凹部の底側の下端部の、面方向の幅W2とが、式(2):
W1≦W2 (2)
を満足する断面形状に形成されていることを特徴とする圧電インクジェットヘッドである。
したがって、請求項2記載の発明は、上記隔壁の一部が、上記ノズル流路および上記共通供給路が形成されている上記第2の基板の中実部の上に積層されている請求項1記載の圧電インクジェットヘッドである。
また同様の効果を得るためには、隔壁が、その上端部側の幅W1よりも下端部側のW2の方が大きい、台形の断面形状を有しているのも好ましい。
したがって、請求項3記載の発明は、上記隔壁は、上記幅W1、W2が、式(2-1):
W1<W2 (2-1)
を満足する断面形状に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の圧電インクジェットヘッドである。
ただし、隔壁のごく一部が、例えば加圧室の突出や加圧室への配管などの影響で、前記式(1)(2)を満足しない薄肉である場合も考えられる。その場合でも、この薄肉部と繋がるその他の大部分が式(1)(2)を満足していて、隔壁の全体としてみたときに、上記の薄肉部が倒れこみを生じない場合は、本発明に包含するものとする。
図の例の圧電インクジェットヘッドは、1枚の基板1上に、加圧室2とそれに連通するノズル部3とを含むドット形成部を複数個、配列したものである。
また図2は、上記例の圧電インクジェットヘッドにおいて、駆動部を取り付けた状態での、1つのドット形成部を拡大して示す断面図、図3は1つのドット形成部を構成する各部の重なり状態を示す透視図である。
各ドット形成部の加圧室2、ノズル部3は、図1に白抜きの矢印で示す主走査方向に複数列並んでいる。図の例では4列に並んでおり、同一列内のドット形成部間のピッチは90dpiであって、圧電インクジェットヘッドの全体として360dpiを実現している。
また上記各部は、図の例では、加圧室2を形成した第1基板1aと、ノズル流路4の上部4aと供給口5とを形成した第2基板1bと、ノズル流路4の下部4bと共通供給路6とを形成した第3基板1cと、ノズル部3を形成した第4基板1dとを、この順に積層、一体化することで形成してある。
さらに各基板1a〜1dは、例えば樹脂や金属などからなり、フォトリソグラフ法を利用したエッチングなどによって上記各部となる通孔を設けた、所定の厚みを有する板体にて形成してある。隔壁1eは、第1基板1aの、各加圧室2となる通孔を形成した残りの部分である。
W1≧H (1)
を満足し、なおかつ上記幅W1と、基板の、凹部の底側の下端部の、面方向の幅W2とが、式(2-2):
W1=W2 (2-2)
を満足する断面形状に形成されている。
隔壁1eを上記の断面形状とすれば、特定の駆動領域の駆動時に、当該駆動領域の面方向の収縮に伴って、かかる駆動領域を囲む隔壁1eが倒れ込むように変形するのを防止することができる。このため、形成する画像のドットパターンに応じてドット径やドット形状がばらつくのを防止して、良好な画像を形成することが可能となる。
例えば圧電体グリーンシートの片面に、焼成によって共通電極となる導電性のペーストを印刷または塗布し、その上にさらに圧電体グリーンシートを積層した上で焼成して、2層の薄板状の圧電体層間に共通電極8を挟んだ構造を有する積層体を形成した後、この積層体の、一方の圧電体層の表面に複数の個別電極10を形成すると、共通電極8と個別電極10とで挟まれた方の圧電体層を圧電素子9、もう一方の圧電体層を振動板7とした駆動部が得られる。
また個別電極10は、上記と同様の導電性のペーストを、圧電素子9となる一方の圧電体層の表面に印刷して形成しても良いし、前記の、導電性に優れた金属からなる箔やめっき被膜、真空蒸着被膜などによって形成してもよい。
例えばモリブデン、タングステン、タンタル、チタン、白金、鉄、ニッケルなどの単体金属や、これら金属の合金、あるいはステンレス鋼などの金属材料にて、所定の厚みを有する板状の振動板7を形成する。
一方、前記と同様の圧電体グリーンシートの片面に、焼成によって共通電極となる導電性のペーストを印刷または塗布した積層体を焼成して、共通電極8と、薄板状の圧電体層との積層体を形成した後、この積層体のうち共通電極8側の表面に振動板7を接着し、さらに積層体の反対面である圧電体層の表面に複数の個別電極10を形成すると、圧電体層を圧電素子9とした駆動部が得られる。
圧電素子9を横振動モードとするためには、圧電材料の分極方向を、当該圧電素子9の厚み方向、より詳しくは個別電極10から共通電極8に向かう方向に配向させる。そのためには、例えば高温分極法、室温分極法、交流電界重畳法、電界冷却法などの従来公知の分極法を採用することができる。また、分極後の圧電素子9をエージング処理してもよい。
インク滴が飛翔して減少した分のインクは、ノズル部3内のインクメニスカスの表面張力によって、インクカートリッジから、当該インクカートリッジの配管、ジョイント部11、共通供給路6、供給口5、加圧室2、およびノズル流路4を介してノズル部3に再充てんされる。
図5は、本発明の圧電インクジェットヘッドの他の例において、図2と直交する方向に、加圧室を複数個、配列した状態を拡大して示す断面図である。
図の例では、隔壁1eは、幅W1と高さHとが、式(1):
W1≧H (1)
を満足し、なおかつ幅W1、W2が、式(2-1):
W1<W2 (2-1)
を満足する台形の断面形状に形成されている。
幅W2を、幅W1に対してどの程度まで大きくするか、すなわち幅W2の上限については特に限定されない。しかし、幅W2が大きすぎると、加圧室2の容積が小さくなるため、幅W2は、式(2-3):
W2≦W1+2H (2-3)
を満足する範囲内であるのが好ましい。
また、第1基板1aを厚み方向に細かく分割した多数の薄い板材にて形成してもよい。その際、個々の板材に、加圧室2となる通孔と隔壁の断面形状を厚み方向に分割した平面形状を有する通孔を係止しておき、それを積み重ねて一体化することによって、台形の断面形状を有する隔壁1eを形成することができる。
この例でも、圧電素子9は、個別電極10と同様に、各加圧室2ごとに分離形成することができる。
実施例1
図1〜図4に示す構造を有し、なおかつ加圧室2の面積が0.2mm2、幅が200μm、深さが80μm、ノズル部3の直径が25μm、長さが30μm、ノズル流路4の直径が200μm、長さが800μm、供給口5の直径が25μm、長さが30μmで、かつ加圧室2間を隔てる隔壁1eの幅W1が82μm、幅W2が82μmである圧電インクジェットヘッドを作製した。隔壁1eの高さHは、加圧室2の深さと同じ80μmであった。
図1〜3、図5に示す構造を有し、なおかつ加圧室2の面積が0.2mm2、幅が200μm、深さが80μm、ノズル部3の直径が25μm、長さが30μm、ノズル流路4の直径が200μm、長さが800μm、供給口5の直径が25μm、長さが30μmで、かつ加圧室2間を隔てる隔壁1eの幅W1が82μm、幅W2が98μmである圧電インクジェットヘッドを作製した。隔壁1eの高さHは、加圧室2の深さと同じ80μmであった。
図1〜図4に示す構造を有し、なおかつ加圧室2の面積が0.2mm2、幅が200μm、深さが80μm、ノズル部3の直径が25μm、長さが30μm、ノズル流路4の直径が200μm、長さが800μm、供給口5の直径が25μm、長さが30μmで、かつ加圧室2間を隔てる隔壁1eの幅W1が50μm、幅W2が50μmである圧電インクジェットヘッドを作製した。隔壁1eの高さHは、加圧室2の深さと同じ80μmであった。
上記で作成した実施例、比較例の圧電インクジェットヘッドをインクジェットプリンタに装着して、図1に白抜きの矢印で示すヘッドの主走査方向と平行なラインと、上記主走査方向と直交するラインとを複数本ずつ、それぞれ1cm間隔で配置した格子状の印刷パターンを印刷した。ライン幅は両方向で等しくした。
1e 隔壁
2 加圧室
3 ノズル部
7 振動板
9 圧電素子
Claims (3)
- 板状の基板を備え、該基板の片側の面には、インクが充填される複数の加圧室となる複数の凹部が、上記基板の一部である隔壁を隔てて、上記基板の面方向に配列されていると共に、上記基板の内部には、上記複数の凹部ごとに、上記加圧室に充填されるインクをインク滴として吐出させるためのノズルが、ノズル流路を介して連通され、かつ上記各加圧室にインクを供給するための共通供給路が、供給口を介して上記複数の凹部に連通されており、上記基板の、上記複数の凹部を形成した面に、
横振動モードの薄板状で、上記複数の凹部を覆う大きさの圧電素子と、
上記複数の凹部を閉じて上記加圧室を構成し、かつ上記圧電素子の変形によって振動して任意の上記加圧室の容積を減少させることで、当該加圧室内のインクを、上記ノズルを通してインク滴として吐出させるための振動板と、
上記圧電素子を上下から挟む上部および下部の電極と、
を含む駆動部が配設された圧電インクジェットヘッドにおいて、
上記基板は、上記複数の凹部および上記隔壁が形成されている第1の基板と、上記ノズル流路および上記共通供給路が形成されている第2の基板と、上記ノズルが形成されている第3の基板とがこの順に積層されて構成されており、
隣り合う上記凹部間を隔てる上記隔壁は、上記基板の、上記駆動部が積層される面側の上端部の、面方向の幅W1と、上記基板の厚み方向の高さHとが、式(1):
W1≧H (1)
を満足し、かつ上記幅W1と、上記基板の、上記凹部の底側の下端部の、面方向の幅W2とが、式(2):
W1≦W2 (2)
を満足する断面形状に形成されていることを特徴とする圧電インクジェットヘッド。 - 上記隔壁の一部が、上記ノズル流路および上記共通供給路が形成されている上記第2の基板の中実部の上に積層されている請求項1記載の圧電インクジェットヘッド。
- 上記隔壁は、上記幅W1、W2が、式(2-1):
W1<W2 (2-1)
を満足する断面形状に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の圧電インクジェットヘッド。
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