JP2004351878A - 圧電インクジェットヘッド - Google Patents

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健一 佐武
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Abstract

【課題】横振動モードの薄板状の圧電素子の、個々の駆動領域、もしくは個別の圧電素子の振動特性を、従来に比べてさらに向上することができる圧電インクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】個別電極10の平面形状を、加圧室2となる凹部の開口の平面形状と略相似形に形成し、かつ個別電極10の面積Aと凹部の開口の面積Aとを式(1):
×0.6≦A≦A×0.9 (1)
の範囲とするとともに、圧電素子9の厚みTpと、振動板7の厚みTvとを式(2):
Tv×0.25≦Tp≦Tv (2)
の範囲とした。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にプリンター、コピア、ファクシミリ、およびそれらの複合機などに好適に用いることのできる圧電インクジェットヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えばオンデマンド型のインクジェットプリンタなどに用いる、圧電素子の電歪効果を駆動源とする圧電インクジェットヘッドとしては、インクが充てんされる加圧室をヘッドの面方向に複数個、配列し、かつそれぞれの加圧室ごとにインク吐出のためのノズル部を連通するとともに、各加圧室ごとに、圧電素子を含み、この圧電素子の変形によって各加圧室の容積を個別に減少させることで、個々の加圧室内のインクを個別に、ノズル部を通してインク滴として吐出させるための駆動部を配設したものが広く用いられる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
そして上記の圧電インクジェットヘッドにおいては、それぞれの加圧室に対応する圧電素子に個別に駆動電圧を印加して変形させることによって、任意の1つまたは2つ以上の加圧室の容積を個別に減少させることで、その加圧室内のインクを、連通するノズル部からインク滴として吐出させて紙面にドットを形成している。
詳しく説明すると、圧電素子と、圧電素子を支持する振動板とを含む駆動部が、圧電素子が発生する力を加圧室内のインクに圧力として伝えることで、この加圧室に連通するノズル部からインク滴を吐出させるための駆動源としての役割を果たしている。それと同時に駆動部は、加圧室内のインクの圧力を受けることによって振動板が撓むため、当該加圧室を含むヘッド内のインクの振動に対して弾性体としての役割も持っている。
【0004】
圧電素子に駆動電圧を印加して力を発生させると、ヘッド内のインクは、振動板を介して駆動部から受けた圧力によって振動を起こす。この振動は、駆動部と加圧室とを弾性、加圧室にインクを供給する供給口、加圧室とノズル部とを繋ぐノズル流路、およびノズル部を慣性として発生する。この振動における、ヘッド内のインクの、体積速度の固有振動周期は、上記各部の寸法とインクの物性値、駆動部の寸法と物性値とによって決まる。
【0005】
そして圧電インクジェットヘッドにおいては、かかるインクの振動による、ノズル部内でのインクメニスカスの振動を利用して、前記のようにインク滴を発生させて、紙面にドットを形成している。
上記圧電インクジェットヘッドの解像度を高め、かつ圧電インクジェットヘッドを小型化するためには、ノズル間のピッチをできる限り小さくしなければならない。
【0006】
またヘッドの解像度が上がりノズル数が増えてくると、各加圧室ごとに個別に、独立した圧電素子を配置することが難しいため、横振動モードの薄板状の圧電素子を、共通電極や振動板とともに、複数の加圧室を覆う大きさに一体形成し、当該圧電素子に駆動電圧を印加するための個別電極のみを、個々の加圧室に対応する所定の形状に分離形成したタイプ(「素子共通タイプ」とする)の圧電インクジェットヘッドが主流になってきた。
【0007】
かかる素子共通タイプの圧電インクジェットヘッドにおいては、圧電素子の面内で個別電極と共通電極とに挟まれた領域(「駆動領域」とする)に、個別電極から駆動電圧を印加して電界を発生させると、当該駆動領域を、あたかも独立した圧電素子と同様に駆動させて、該当する加圧室内のインクを加圧することができる。
上記素子共通タイプのヘッドにおいて個々の駆動領域の振動特性を向上するために、特許文献2では、個別電極の平面形状によって規定される圧電素子の駆動領域を、加圧室となる、基板の片面に形成した凹部の開口の縁にかからないように、その全周にわたって間隔を設けて配置した圧電インクジェットヘッドが提案されている。
【0008】
また特許文献2には、個別電極の平面形状を、上記凹部の開口の平面形状と略相似形に形成するとともに、その面積を、凹部の開口の面積の0.81倍以下とすることも記載されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−318731号公報(第0009欄、第0010欄、図1〜図4)
【特許文献2】
特開平11−34321号公報(請求項1、2、第0006欄〜第0012欄、第0014欄〜第0017欄、図1)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが発明者の検討によると、特に横振動モードの薄板状の圧電素子を用いた圧電インクジェットヘッドにおいては、個別電極の平面形状を特許文献2のように規定するだけでは不十分であり、さらなる振動特性の向上が必要であることが明らかとなった。
本発明の目的は、横振動モードの薄板状の圧電素子の、個々の駆動領域、もしくは個別の圧電素子の振動特性を、従来に比べてさらに向上することができる圧電インクジェットヘッドを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、板状の基板の片面に、インクが充てんされる加圧室となる凹部を、基板の面方向に複数個、配列し、かつそれぞれの凹部ごとにインク供給のための供給路と、インク吐出のためのノズル部とを連通するとともに、この基板の、上記凹部を形成した面に、
横振動モードの薄板状の圧電素子と、
凹部を閉じて加圧室を構成し、かつ圧電素子の変形によって振動して各加圧室の容積を個別に減少させることで、個々の加圧室内のインクを個別に、ノズル部を通してインク滴として吐出させるための振動板と、
圧電素子を上下から挟む、その少なくとも一方を、各加圧室ごとに分離形成して個別電極とした上部および下部の電極と、
を含む駆動部を配設した圧電インクジェットヘッドであって、
上記個別電極の平面形状を、加圧室となる凹部の開口の平面形状と略相似形に形成し、かつ個別電極の面積Aと凹部の開口の面積Aとを式(1):
×0.6≦A≦A×0.9 (1)
の範囲とするとともに、圧電素子の厚みTpと、振動板の厚みTvとを式(2):
Tv×0.25≦Tp≦Tv (2)
の範囲としたことを特徴とする圧電インクジェットヘッドである。
【0012】
【発明の効果】
前記課題を解決するため、発明者は、圧電インクジェットヘッドの駆動部の構造について検討した。
その結果、個別電極の平面形状を、加圧室となる凹部の開口の平面形状と略相似形に形成し、かつ個別電極の面積Aと凹部の開口の面積Aとの比を上記式(1)の範囲に規定して、圧電素子の駆動領域を、加圧室となる、基板の片面に形成した凹部の開口の縁にかからないようにするだけでなく、それに加えてさらに、圧電素子の厚みTpと、振動板の厚みTvとを式(2)の範囲に規定すると、横振動モードの薄板状の圧電素子の、個々の駆動領域、もしくは各加圧室ごとに圧電素子を個別に分離、形成した従来のタイプ(「素子分離タイプ」とする)のヘッドにおける個々の圧電素子の振動特性を、これまでよりもさらに向上できることを見出した。
【0013】
したがってこれらの限定をした請求項1記載の発明によれば、横振動モードの薄板状の圧電素子の、個々の駆動領域、もしくは個別の圧電素子の振動特性を、従来に比べて著しく向上することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を説明する。
図1は、本発明の圧電インクジェットヘッドの一例において、圧電素子と振動板とを含む駆動部を取り付ける前の状態を示す平面図である。
図の例の圧電インクジェットヘッドは、1枚の基板1上に、加圧室2とそれに連通するノズル部3とを含むドット形成部を複数個、配列したものである。
【0015】
また図2(a)は、上記例の圧電インクジェットヘッドにおいて、駆動部を取り付けた状態での、1つのドット形成部を拡大して示す断面図、図2(b)は、1つのドット形成部を構成する各部の重なり状態を示す透視図である。
各ドット形成部の加圧室2、ノズル部3は、図1に白抜きの矢印で示す主走査方向に複数列並んでいる。図の例では4列に並んでおり、同一列内のドット形成部間のピッチは90dpiであって、圧電インクジェットヘッドの全体として360dpiを実現している。
【0016】
各ドット形成部は、基板1の、図2(a)において上面側に形成した凹部からなり、矩形状の中央部の両端に半円形の端部を接続した平面形状を有する加圧室2と、上記基板1の下面側の、加圧室2の一端側の端部の、半円の中心と重なる位置に形成したノズル部3とを、上記端部の半円と同径の断面円形のノズル流路4で繋ぐとともに、上記加圧室2の他端側の端部に形成した供給口5を介して、加圧室2を、基板1内に、各ドット形成部を繋ぐように形成した共通供給路6(図1に破線で示す)に繋ぐことで構成してある。
【0017】
また上記各部は、図の例では、加圧室2を形成した第1基板1aと、ノズル流路4の上部4aと供給口5とを形成した第2基板1bと、ノズル流路4の下部4bと共通供給路6とを形成した第3基板1cと、ノズル部3を形成した第4基板1dとを、この順に積層、一体化することで形成してある。
また第1基板1aと第2基板1bには、図1に示すように、第3基板1cに形成した共通供給路6を、基板1の上面側で、図示していないインクカートリッジからの配管と接続するためのジョイント部を構成するための通孔11を形成してある。
【0018】
さらに各基板1a〜1dは、例えば樹脂や金属などからなり、フォトリソグラフ法を利用したエッチングなどによって上記各部となる通孔を設けた、所定の厚みを有する板体にて形成してある。
基板1の上面側には、少なくとも各ドット形成部を覆う大きさを有する1枚の振動板7と、この振動板7と略同じ大きさを有する1枚の薄膜状の共通電極8と、上記振動板7および共通電極8と略同じ大きさを有する1枚の、横振動モードの薄板状の圧電素子9とをこの順に積層するとともに、圧電素子9上の、図1中に一点鎖線で示すように各ドット形成部の加圧室2の中央部と重なる位置に複数の個別電極10を分離形成することで駆動部を構成してある。
【0019】
このうち個別電極10は、図2(b)に示すように、加圧室2の平面形状と略相似形である、矩形状の中央部の両端に半円形の端部を接続した平面形状に形成してあるとともに、その面積Aを、凹部の開口の面積Aに対して式(1):
×0.6≦A≦A×0.9 (1)
の範囲を満足する大きさに形成してある。
なお、本発明で言うところの略相似形には、例えば図2(c)に示すように個別電極10の本体部分10aに、電気接続のための接点10bと、当該接点10bへの引き出し部10cとを一体に設けた形状を有するものも含むものとする。かかる個別電極10においては、本体部分10aの平面形状が加圧室2の平面形状と略相似形であって、なおかつその面積Aが上記式(1)を満足していればよい。
【0020】
個別電極10を、加圧室2の平面形状と略相似形に形成しない場合には、当該個別電極10の平面形状によって規定される圧電素子9の駆動領域が、加圧室2となる、基板1の片面に形成した凹部の開口の縁にかかったり、かからないまでも極めて接近しすぎたりする結果、当該駆動領域の面方向の収縮にともなう、振動板7と圧電素子9との積層体の、加圧室2の方向への撓み変形が妨げられる。
また個別電極10の面積Aを、凹部の開口の面積Aに対してA>A×0.9とした場合にも、同様に圧電素子9の駆動領域が、加圧室2となる、基板1の片面に形成した凹部の開口の縁にかかったり、かからないまでも極めて接近しすぎたりする結果、上記積層体の、加圧室2の方向への撓み変形が妨げられる。
【0021】
このためこのいずれの場合にも、駆動領域の振動特性が低下する。
一方、個別電極10の面積Aを、凹部の開口の面積Aに対してA×0.6>Aとした場合には、圧電素子の駆動領域が、凹部の開口に対してあまりに小さくなりすぎるため、却って駆動領域の振動特性が低下する。
これに対し、前記のように個別電極10を、加圧室2の平面形状と略相似形に形成するとともに、その面積Aを、前記式(1)を満足する範囲に形成した場合には、これらの問題を全て解決して、駆動領域の振動特性を向上することができる。
【0022】
また圧電素子9と振動板7とは、それぞれの厚みTp、Tvを、式(2):
Tv×0.25≦Tp≦Tv (2)
の範囲を満足する厚みに形成してある。
圧電素子9と振動板7との積層体(圧電素子9を挟む共通電極8、個別電極10はともにごく薄い膜であって、しかも塑性変形性に優れており、駆動領域の振動特性には殆ど影響しないため、以下で述べるシミュレーションでは、振動特性上は、ないものとして扱う)は、共通電極8を接地した状態で、個別電極10によって駆動電圧を印加して、圧電素子9の、個別電極10の直下の駆動領域を面方向に収縮させると、前記のように加圧室2の方向に撓む。この撓んだ状態で、積層体のうち厚み方向の1/2より上側(個別電極10側)の領域は面方向に収縮するが、それより下側(加圧室2側)の領域は、逆に面方向に伸長される。
【0023】
圧電素子9と振動板7とが同じ厚みであると、つまりTp=Tvであると、圧電素子9は、その全体が、積層体の厚み方向の1/2よりちょうど上側に位置することになり、駆動電圧を印加した際の、積層体の撓み量が最大となる。したがって駆動領域の振動特性は最も良好な状態を示す。
なお、より正確には両者のヤング率を考慮する必要がある。すなわち圧電素子9のヤング率をEp、振動板7のヤング率をEvとすると、式(3):
Ep×Tp=Ev×Tv (3)
であるとき、積層体の撓み量が最大となるが、例えば後述するように圧電素子9と振動板7とを同じ圧電体グリーンシートの焼成によって形成する場合はヤング率が等しいため、これを無視することができる。また振動板7を金属で形成する場合、当該振動板7と、圧電体グリーンシートの焼成などによって形成する圧電素子9とではヤング率が異なるが、例えば後述するチタンなどの、振動板7に適した硬質の金属のヤング率と、圧電素子9のヤング率との差は小さいため、やはりこれを無視することができる。
【0024】
つまり前記のように、圧電素子9と振動板7の実際の厚みTp、Tvの比に近似することができる。
圧電素子9の方が振動板7より厚いとき、つまりTp>Tvであるときには、圧電素子9の厚み方向の一部が、積層体の厚み方向の1/2より下側に位置することになる。このため、圧電素子9の駆動領域の収縮により、積層体の、厚み方向の1/2より下側の領域の伸長が妨げられるため、その分だけ駆動電圧を印加した際の積層体の撓み量が小さくなり、駆動領域の振動特性が低下する。
【0025】
また圧電素子9の厚みが振動板7の厚みよりも小さいとき、つまりTp<Tvであるとき、振動板7の厚み方向の一部が、積層体の厚み方向の1/2より上側に位置することになる。しかも、振動板7は面方向の収縮に寄与しない成分である。
このため圧電素子9の厚みが小さくなって、積層体の厚み方向の1/2より上側に存在する振動板7の厚みが大きくなるほど、それと比例して、駆動電圧を印加した際の積層体の撓み量が小さくなり、駆動領域の振動特性が低下する。
【0026】
Tp≦Tvの範囲において、圧電素子9と振動板7との、正確を期するために前記のようにヤング率を考慮した厚みの比xを、式(4):
(Ep×Tp)/(Ev×Tv)=x (4)
のように規定し、かつ上記式(4)で求められる比x=1であるときの、積層体の撓み量をδ(1)〔撓み量の最大値である〕とすると、当該撓み量δ(1)と、xが1未満の任意の値であるときの積層体の撓み量δ(x)との比δ(x)/δ(1)は式(5):
δ(x)/δ(1)=2x/(1+x) (5)
によって求めることができる。
【0027】
実際の印字特性などから判断すると、上記比δ(x)/δ(1)は0.4が限界である。つまり積層体の撓み量δ(x)が初期値δ(1)の40%までであれば実用的な印字が可能であるが、それより撓み量が小さくなると、駆動領域の振動特性が低下しすぎて、良好な印字特性が得られない。そこで、上記式(5)の左辺に0.4を代入してxを求めると0.25となる。
よって圧電素子9の厚みTpと、振動板7の厚みTvとは、Tv×0.25≦Tpである必要がある。
【0028】
つまり圧電素子9の厚みTpと、振動板7の厚みTvとを前記式(2)の範囲としたとき、これまでよりも駆動領域の振動特性を向上することができる。
なお以上の解析は、圧電素子9の厚みTpと振動板7の厚みTvとの合計の厚みTp+Tvを一定に保ち、また圧電素子9の厚みTpに応じて、当該圧電素子9に加わる電界強度を一定に保つべく、印加する電圧を調整した条件で行うのが好ましい。
【0029】
上記の各部からなる駆動部は、焼成によって薄板状の圧電体となる圧電体グリーンシートを用いて製造することができる。
例えば圧電体グリーンシートの片面に、焼成によって共通電極となる導電性のペーストを印刷または塗布し、その上にさらに圧電体グリーンシートを積層した上で焼成して、2層の薄板状の圧電体層間に共通電極8を挟んだ構造を有する積層体を形成した後、この積層体の、一方の圧電体層の表面に複数の個別電極10を形成すると、共通電極8と個別電極10とで挟まれた方の圧電体層を圧電素子9、もう一方の圧電体層を振動板7とした駆動部が得られる。
【0030】
上記の駆動部において振動板7、圧電素子9を形成する圧電材料としては、例えばジルコン酸チタン酸鉛(PZT)や、当該PZTにランタン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガンなどの酸化物の1種または2種以上を添加したもの、例えばPLZTなどの、PZT系の圧電材料を挙げることができる。また、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN)、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、チタン酸鉛、チタン酸バリウムなどを主要成分とするものを挙げることもできる。圧電体グリーンシートは、焼成によって上記いずれかの圧電材料となる化合物を含んでいる。
【0031】
また共通電極8を形成する導電性のペーストとしては、例えば金、銀、白金、銅、アルミニウムなどの導電性に優れた金属の粉末を含むものを用いる。そして、かかる導電性のペーストの層を、前記のように圧電体グリーンシートとともに焼成することで、当該ペースト中の金属の粉末を焼結、ないしは溶融、一体化させて共通電極8を形成する。
また個別電極10は、上記と同様の導電性のペーストを、圧電素子9となる一方の圧電体層の表面に印刷して形成しても良いし、前記の、導電性に優れた金属からなる箔やめっき被膜、真空蒸着被膜などによって形成してもよい。
【0032】
振動板7を金属で形成することもできる。
例えばモリブデン、タングステン、タンタル、チタン、白金、鉄、ニッケルなどの単体金属や、これら金属の合金、あるいはステンレス鋼などの金属材料にて、所定の厚みを有する板状の振動板7を形成する。
一方、前記と同様の圧電体グリーンシートの片面に、焼成によって共通電極となる導電性のペーストを印刷または塗布した積層体を焼成して、共通電極8と、薄板状の圧電体層との積層体を形成した後、この積層体のうち共通電極8側の表面に振動板7を接着し、さらに積層体の反対面である圧電体層の表面に複数の個別電極10を形成すると、圧電体層を圧電素子9とした駆動部が得られる。
【0033】
上記のようにして一体形成した駆動部を、基板1上に、接着剤を介して接着するなどして固定すると、圧電インクジェットヘッドが得られる。
圧電素子9を横振動モードとするためには、圧電材料の分極方向を、当該圧電素子9の厚み方向、より詳しくは個別電極10から共通電極8に向かう方向に配向させる。そのためには、例えば高温分極法、室温分極法、交流電界重畳法、電界冷却法などの従来公知の分極法を採用することができる。また、分極後の圧電素子9をエージング処理してもよい。
【0034】
圧電材料の分極方向を上記の方向に配向させた圧電素子9は、共通電極8を接地した状態で、個別電極10から正の駆動電圧を印加すると、当該個別電極10と共通電極8とに挟まれた駆動領域が、分極方向と直交する面内で収縮する。しかし圧電素子9は、共通電極8を介して振動板7に固定されているため、結果的に、収縮した駆動領域が、前記のように加圧室2の方向に撓むことになる。
このため、撓みが発生する際の力が加圧室2内のインクに圧力変化として伝えられ、この圧力変化によって、供給口5、加圧室2、ノズル流路4、およびノズル部3内のインクが振動を起こす。そして振動の速度が結果的にノズル部3の外に向かうことによって、当該ノズル部3内のインクメニスカスが外部へと押し出されて、いわゆるインク柱が形成される。
【0035】
インク柱は、やがて振動の速度がノズル部内方向に向かうことによってノズル部3内のインクメニスカスに吸収されるが、その際、インク柱の先端部が切り離されて、インク滴となって紙面の方向に飛翔して、紙面にドットを形成する。
インク滴が飛翔して減少した分のインクは、ノズル部3内のインクメニスカスの表面張力によって、インクカートリッジから、当該インクカートリッジの配管、ジョイント部11、共通供給路6、供給口5、加圧室2、およびノズル流路4を介してノズル部3に再充てんされる。
【0036】
なお圧電素子9は、個別電極10と同様に、各加圧室2ごとに分離形成しても良い。
【0037】
【実施例】
以下に本発明を、実施例に基づいて説明する。
圧電インクジェットヘッドの作製
図1および図2(a)(b)に示す構造を有し、なおかつ加圧室2の面積が0.191mm、幅が200μm、深さが100μm、ノズル部3の直径が25μm、長さが30μm、ノズル流路4の直径が200μm、長さが800μm、供給口5の直径が25μm、長さが30μm、振動板7の厚みTvが15μm、圧電素子9の厚みTpが15μm、個別電極10が、図2(b)に見るように加圧室2の平面形状と略相似形で、かつその面積Aが、加圧室2の面積Aの0.5倍、0.6倍、0.7倍、0.8倍、0.9倍および1.0倍である圧電インクジェットヘッドを作製した。
【0038】
上記圧電インクジェットヘッドの個別電極10に、20Vの駆動電圧パルスを印加して、その直下の圧電素子9の駆動領域を駆動した際の撓み量を、個別電極10の中央部の変位量として、レーザードップラー振動計を用いて測定した。
結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
Figure 2004351878
【0040】
表より、圧電素子9の厚みTpが、振動板7の厚みTvと等しい圧電インクジェットヘッドにおいては、個別電極10の面積Aが、加圧室2の面積Aの0.6〜0.9倍であるとき変位量が大きいことから、駆動領域の振動特性が良好であること、特に個別電極10の面積Aが加圧室2の面積Aの0.8倍であるとき、駆動領域の振動特性が最も良好であることが確認された。
また、上記と同じ構造、形状を有し、個別電極10が、図2(b)に見るように加圧室2の平面形状と略相似形で、かつその面積Aが、加圧室2の面積Aの0.8倍であるとともに、圧電素子9の厚みTpと振動板7の厚みTvとが表2の値である圧電インクジェットヘッドを作製した。
【0041】
上記圧電インクジェットヘッドの個別電極10に、表2に示す駆動電圧パルスを印加して、その直下の圧電素子9の駆動領域を駆動した際の撓み量を、個別電極10の中央部の変位量として、レーザードップラー振動計を用いて測定した。
結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
Figure 2004351878
【0043】
表より、圧電素子の厚みTpが、振動板の厚みTvの0.25〜1.0倍であるとき変位量が大きいことから、駆動領域の振動特性が良好であること、特に圧電素子の厚みTpが振動板の厚みTvの1.0倍であるとき、駆動領域の振動特性が最も良好であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電インクジェットヘッドの一例における、圧電素子と振動板とを含む駆動部を取り付ける前の状態を示す平面図である。
【図2】同図(a)は、図1の例の圧電インクジェットヘッドにおいて、駆動部を取り付けた状態での、1つのドット形成部を拡大して示す、図2(b)のA−A線断面図、同図(b)は、1つのドット形成部を構成する各部の重なり状態を示す透視図、同図(c)は、変形例における各部の重なり状態を示す透視図である。
【符号の説明】
1 基板
2 加圧室
3 ノズル部
5 供給口
6 共通供給路
7 振動板
8 共通電極
9 圧電素子
10 個別電極

Claims (1)

  1. 板状の基板の片面に、インクが充てんされる加圧室となる凹部を、基板の面方向に複数個、配列し、かつそれぞれの凹部ごとにインク供給のための供給路と、インク吐出のためのノズル部とを連通するとともに、この基板の、上記凹部を形成した面に、
    横振動モードの薄板状の圧電素子と、
    凹部を閉じて加圧室を構成し、かつ圧電素子の変形によって振動して各加圧室の容積を個別に減少させることで、個々の加圧室内のインクを個別に、ノズル部を通してインク滴として吐出させるための振動板と、
    圧電素子を上下から挟む、その少なくとも一方を、各加圧室ごとに分離形成して個別電極とした上部および下部の電極と、
    を含む駆動部を配設した圧電インクジェットヘッドであって、
    上記個別電極の平面形状を、加圧室となる凹部の開口の平面形状と略相似形に形成し、かつ個別電極の面積Aと凹部の開口の面積Aとを式(1):
    ×0.6≦A≦A×0.9 (1)
    の範囲とするとともに、圧電素子の厚みTpと、振動板の厚みTvとを式(2):
    Tv×0.25≦Tp≦Tv (2)
    の範囲としたことを特徴とする圧電インクジェットヘッド。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008105410A (ja) * 2006-09-29 2008-05-08 Fujifilm Corp 液体吐出ヘッドおよびその製造方法
US7819509B2 (en) 2006-09-29 2010-10-26 Fujifilm Corporation Liquid ejection head and manufacturing method thereof
JP2012206468A (ja) * 2011-03-30 2012-10-25 Kyocera Corp 液体吐出ヘッド、およびそれを用いた記録装置
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