JP2004066600A - 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置 - Google Patents

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Amamitsu Higuchi
Koji Sumi
樋口 天光
角 浩二
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Seiko Epson Corp
セイコーエプソン株式会社
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Abstract

【課題】高密度な圧力発生室の配列を可能とし且つ圧電体層の圧電特性を実質的に高めることができ、製造効率を向上することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ノズル開口21に連通する圧力発生室12が形成される流路形成基板10と、流路形成基板10の一方面側に振動板を介して設けられる下電極60、圧電体層70及び上電極80からなる圧電素子300とを具備する液体噴射ヘッドにおいて、下電極60の少なくとも圧電体層70側をニッケル酸ランタン(LaNiO)からなる配向制御層60bで構成することにより、流路形成基板10の結晶方位に影響されることなく、配向制御層60bの面方位によって比較的容易且つ確実に圧電体層70の結晶性を制御することができる。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、色材噴射ヘッド、電極材料噴射ヘッド及び生体有機物噴射ヘッド等の液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板の表面に圧電素子を形成して、圧電素子の変位によりインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものの2種類が実用化されている。
【0003】
前者は圧電素子の端面を振動板に当接させることにより圧力発生室の容積を変化させることができて、高密度印刷に適したヘッドの製作が可能である反面、圧電素子をノズル開口の配列ピッチに一致させて櫛歯状に切り分けるという困難な工程や、切り分けられた圧電素子を圧力発生室に位置決めして固定する作業が必要となり、製造工程が複雑であるという問題がある。
【0004】
これに対して後者は、圧電材料のグリーンシートを圧力発生室の形状に合わせて貼付し、これを焼成するという比較的簡単な工程で振動板に圧電素子を作り付けることができるものの、たわみ振動を利用する関係上、ある程度の面積が必要となり、高密度配列が困難であるという問題がある。
【0005】
一方、後者の記録ヘッドの不都合を解消すべく、特開平5−286131号公報に見られるように、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものが提案されている。
【0006】
これによれば圧電素子を振動板に貼付ける作業が不要となって、リソグラフィ法という精密で、かつ簡便な手法で圧電素子を高密度に作り付けることができるばかりでなく、圧電素子の厚みを薄くできて高速駆動が可能になるという利点がある。
【0007】
ここで、圧電素子は、例えば、シリコン単結晶基板の一方面側に下電極、圧電体層及び上電極を順々に積層することによって形成されている。このとき、下電極の結晶性は、その下地であるシリコン単結晶基板の面方位の影響を受けて、シリコン単結晶基板の結晶面方位と同じ配向となる。そして、このような下電極上に積層された圧電体層の結晶性も同様に、その下地の影響を受けて下電極の面方位と同じ配向となる。
【0008】
なお、実際には、シリコン単結晶基板の一方面側には、下電極の下地として、例えば、酸化シリコン層等のアモルファス(非晶質)層が予め設けられている。このため、下電極の結晶性は、シリコン単結晶基板の結晶方位の影響を実質的に免れて、最も結晶の成長エネルギーが小さい配向を示す。具体的には、アモルファス層上の下電極は、例えば、白金(Pt)等で形成すると、面方位(111)がシリコン単結晶基板の法線方向に向かって配向する。そして、このような下電極上に圧電体層を形成すると、圧電体層の結晶面方位は(111)配向となる。
【0009】
また、圧力発生室は、シリコン単結晶基板の圧電素子側とは反対の他方面側を異方性エッチングすることによって形成されている。このように、異方性エッチングを利用して圧力発生室を形成するためには、一般的に、面方位が(110)であるシリコン単結晶基板を用いる必要がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、圧電体層の圧電特性を実質的に高めるためには、圧電体層の結晶面方位は、その結晶系が菱面体晶系であるとき(100)に配向していることが望ましい。
【0011】
そこで、従来では、例えば、シリコン単結晶基板として結晶面方位(110)の基板を用い、このシリコン単結晶基板の一方面側に酸化シリコン層を形成した後、酸化シリコン層上には、例えば、白金、イリジウム等からなる下電極を形成する。そして、下電極上に圧電体層の配向制御の役割を担う島状チタン(結晶種)を形成した後、この島状チタン上に圧電体層を形成するようにしていた。これにより、圧電体層の結晶面方位は、下地である島状チタンによってその大半が(100)配向となる。
【0012】
これにより、圧力発生室を異方性エッチングを利用して容易に形成することができると共に圧電体層の大半を結晶面方位(100)に配向させることができる。
【0013】
しかしながら、圧電体層の配向制御の役割を担う島状チタンを設けたとしても、圧電体層の結晶面方位を(100)に完全に配向させることはできないという問題がある。また、下電極上に島状チタンを形成するためには、厳格な工程管理が要求されるため、製造工程が煩雑となり、製造効率が悪いという問題がある。
【0014】
なお、これら各問題は、インクジェット式記録ヘッドに限って発生するものではなく、勿論、他の液体噴射ヘッドにおいても同様に発生する。
【0015】
本発明は、このような事情に鑑み、高密度な圧力発生室の配列を可能とし且つ圧電体層の圧電特性を実質的に高めることができ、製造効率を向上することができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、ノズル開口に連通する圧力発生室が形成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられる下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子とを具備する液体噴射ヘッドにおいて、前記下電極の少なくとも前記圧電体層側がニッケル酸ランタン(LaNiO)からなる配向制御層で構成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0017】
かかる第1の態様では、流路形成基板の結晶方位に影響されることなく、ニッケル酸ランタンからなる配向制御層自体の面方位によって比較的容易且つ確実に圧電体層の結晶性を制御することができる。これにより、圧電体層の圧電特性を実質的に高めることができる。また、所定の結晶性を有する配向制御層を下地の面方位に関係なく形成できるため、例えば、島状チタン等の結晶種を形成する工程等を省略できる。これにより、製造効率を向上することができる。
【0018】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記配向制御層の結晶面方位が(100)配向となっており、前記圧電体層の結晶面方位が(100)配向となっていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0019】
かかる第2の態様では、ニッケル酸ランタンからなる配向制御層自体が単独で(100)に優先配向しているため、この配向制御層上に圧電体層を所定の薄膜工程で成膜した結果、比較的容易且つ確実に圧電体層が(100)配向となる。
【0020】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記圧電体層は、結晶が菱面体晶であることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0021】
かかる第3の態様では、圧電体層を所定の薄膜工程で成膜した結果、圧電体層の結晶構造が菱面体晶となる。
【0022】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記圧電体層は、結晶が柱状となっていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0023】
かかる第4の態様では、圧電体層が薄膜工程で成膜された結果、圧電体層の結晶構造が柱状となっている。
【0024】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記圧電体層は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0025】
かかる第5の態様では、優れた圧電特性を有する圧電体層を形成することができる。
【0026】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、前記チタン酸ジルコン酸鉛は、その構成元素のうちZrのモル量AとTiのモル量Bとの関係がA/(A+B)≧0.55の条件を満たしていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0027】
かかる第6の態様では、圧電体層の結晶構造が菱面体晶となり、且つ圧電体層の圧電特性を実質的に高めることができる。
【0028】
本発明の第7の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記圧電体層は、マグネシウム酸ニオブ酸鉛(PMN)とチタン酸鉛(PT)との固溶体で形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0029】
かかる第7の態様では、優れた圧電特性を有する圧電体層を形成することができる。
【0030】
本発明の第8の態様は、第7の態様において、前記固溶体は、PMNのモル量CとPTのモル量Dとの関係が0.65≦C/(C+D)≦0.75の条件を満たしていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0031】
かかる第8の態様では、圧電体層の結晶構造が菱面体晶となり、且つ圧電体層の圧電特性を実質的に高めることができる。
【0032】
本発明の第9の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記圧電体層は、亜鉛酸ニオブ酸鉛(PZN)とチタン酸鉛(PT)との固溶体で形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0033】
かかる第9の態様では、優れた圧電特性を有する圧電体層を形成することができる。
【0034】
本発明の第10の態様は、第9の態様において、前記固溶体は、PZNのモル量EとPTのモル量Fとの関係が0.90≦E/(E+F)≦0.965の条件を満たしていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0035】
かかる第10の態様では、圧電体層の結晶構造が菱面体晶となり、且つ圧電体層の圧電特性を実質的に高めることができる。
【0036】
本発明の第11の態様は、第1〜10の何れかの態様において、前記下電極の前記振動板側が、白金(Pt)又はイリジウム(Ir)で形成された金属層、若しくは白金及びイリジウムの各金属層を積層した混合層で構成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0037】
かかる第11の態様では、下電極に所定の電圧を確実に印加でき、圧電体層に所定の駆動電界を発生させることができる。また、下電極全体の機械的強度を高めることができる。
【0038】
本発明の第12の態様は、第1〜11の何れかの態様において、前記振動板が、酸化シリコン膜又は酸化ジルコニウム膜の少なくとも何れか一方を含むことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0039】
かかる第12の態様では、振動板の機械的強度を高めることができる。
【0040】
本発明の第13の態様は、第1〜12の何れかの態様において、前記配向制御層は、スパッタ法、ゾル−ゲル法又はMOD法の何れかによって形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0041】
かかる第13の態様では、配向制御層を製造効率良く形成することができる。特に、ゾル−ゲル法又はMOD法によれば、略均一な厚さの配向制御層を形成することができる。
【0042】
本発明の第14の態様は、第1〜13の何れかの態様において、前記流路形成基板は、その結晶面方位が(110)であるシリコン単結晶基板であることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0043】
かかる第14の態様では、高密度に配列した圧力発生室を形成することができる。
【0044】
本発明の第15の態様は、第14の態様において、前記圧力発生室がシリコン単結晶基板に異方性エッチングにより形成され、前記圧電素子の各層が成膜及びリソグラフィ法により形成されたものであることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0045】
かかる第15の態様では、高密度のノズル開口を有する液体噴射ヘッドを大量に且つ比較的容易に製造することができる。
【0046】
本発明の第16の態様は、第1〜15の何れかの態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
【0047】
かかる第16の態様では、流路形成基板の結晶方位に影響されることなく、ニッケル酸ランタンからなる配向制御層の面方位によって比較的容易且つ確実に圧電体層の結晶性が制御された液体噴射ヘッドを有する液体噴射装置を提供することができる。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0049】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの概略を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及び断面図である。
【0050】
図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる、厚さ1〜2μmの弾性膜50が形成されている。
【0051】
この流路形成基板10には、シリコン単結晶基板をその一方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12が幅方向に並設されている。また、その長手方向外側には、後述する封止基板30のリザーバ部32と連通される連通部13が形成されている。また、この連通部13は、各圧力発生室12の長手方向一端部でそれぞれインク供給路14を介して連通されている。
【0052】
ここで、異方性エッチングは、シリコン単結晶基板のエッチングレートの違いを利用して行われる。例えば、本実施形態では、結晶面方位が(110)であるシリコン単結晶基板をKOH等のアルカリ溶液に浸漬すると、徐々に侵食されて(110)面に垂直な第1の(111)面と、この第1の(111)面と約70度の角度をなし且つ上記(110)面と約35度の角度をなす第2の(111)面とが出現し、(110)面のエッチングレートと比較して(111)面のエッチングレートが約1/180であるという性質を利用して行われる。かかる異方性エッチングにより、二つの第1の(111)面と斜めの二つの第2の(111)面とで形成される平行四辺形状の深さ加工を基本として精密加工を行うことができ、圧力発生室12を高密度に配列することができる。
【0053】
本実施形態では、各圧力発生室12の長辺を第1の(111)面で、短辺を第2の(111)面で形成している。この圧力発生室12は、流路形成基板10をほぼ貫通して弾性膜50に達するまでエッチングすることにより形成されている。ここで、弾性膜50は、シリコン単結晶基板をエッチングするアルカリ溶液に侵される量がきわめて小さい。また各圧力発生室12の一端に連通する各インク供給路14は、圧力発生室12より浅く形成されており、圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。すなわち、インク供給路14は、シリコン単結晶基板を厚さ方向に途中までエッチング(ハーフエッチング)することにより形成されている。なお、ハーフエッチングは、エッチング時間の調整により行われる。なお、このような弾性膜50は、本実施形態では、アモルファス(非晶質)膜であり、流路形成基板10側から順に、酸化シリコン膜(SiO)/酸化ジルコニウム膜(ZrO)で構成されている。
【0054】
このような圧力発生室12等が形成される流路形成基板10の厚さは、圧力発生室12を配設する密度に合わせて最適な厚さを選択することが好ましい。例えば、1インチ当たり180個(180dpi)程度に圧力発生室12を配置する場合には、流路形成基板10の厚さは、180〜280μm程度、より望ましくは、220μm程度とするのが好適である。また、例えば、360dpi程度と比較的高密度に圧力発生室12を配置する場合には、流路形成基板10の厚さは、100μm以下とするのが好ましい。これは、隣接する圧力発生室12間の隔壁11の剛性を保ちつつ、配列密度を高くできるからである。
【0055】
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側で連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。
【0056】
一方、流路形成基板10の開口面とは反対側の弾性膜50の上には、厚さが例えば、約0.4μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.1μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70、及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータと称する。
【0057】
なお、このような各圧電素子300の上電極膜80には、例えば、金(Au)等からなるリード電極85がそれぞれ接続されている。このリード電極85は、各圧電素子300の長手方向端部近傍から引き出され、インク供給路14に対応する領域の弾性膜50上までそれぞれ延設されている。そして、このようなリード電極85は、詳しくは後述するが、駆動ICと電気的に接続される。
【0058】
ここで、上述した下電極膜60の弾性膜50側は、金属層60aで構成されている。このような金属層60aとしては、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の白金族金属からなる単層、これらの金属を積層した混合層等であってもよい。例えば、本実施形態では、弾性膜50上から順に、Pt/Ir/Ptの混合層からなる金属層60aとした。
【0059】
一方、下電極膜60の圧電体層70側の全面は、ニッケル酸ランタン(LaNiO)からなる配向制御層60bで構成されている。なお、ニッケル酸ランタンとしては、例えば、本実施形態では、X=3のLaNiOを用いた。そして、このようなニッケル酸ランタンからなる配向制御層60bの結晶性は、下地である金属層60aの面方位の影響を実質的に受けず、結晶面方位が(100)に優先配向している。
【0060】
具体的には、上述した流路形成基板10は、結晶面方位が(110)であるシリコン単結晶基板で形成されている。そして、弾性膜50上に形成される金属層60aの結晶面方位は、下地である弾性膜50がアモルファス膜であるので結晶が自由成長をして(111)に配向している。すなわち、金属層60aの結晶性は、弾性膜50の下地である流路形成基板10の結晶方位の影響を弾性膜50により実質的に免れて、最も結晶の成長エネルギーが小さい配向を示す。このため、金属層60aは、結晶面方位が(111)に配向している。また、この金属層60a上に形成される配向制御層60bの結晶性は、下地である金属層60aの面方位の影響を実質的に受けず、結晶面方位が(100)に単独で優先配向している。
【0061】
なお、このような配向制御層60bを形成する方法としては、例えば、スパッタ法、ゾル−ゲル法及びMOD(Metal Oganic Decomposition)法を挙げることができる。特に、ゾル−ゲル法又はMOD法を用いれば、配向制御層60bの厚さを略均一に形成することができる。例えば、本実施形態では、配向制御層60bはゾル−ゲル法を用いて形成した。
【0062】
また、上述したように、配向制御層60bは、下地の面方位に関係なく、結晶面方位が(100)単独配向するため、比較的簡易な成膜方法によって形成することができる。これにより、例えば、結晶種を形成する工程等を省略できるため、製造効率を向上させることができる。
【0063】
なお、このようなニッケル酸ランタンは、一般的に、電極材料に用いられる程、優れた導電性を有する材料である。したがって、このような配向制御層60bによって下電極膜60の圧電体層70側が構成されていても、下電極膜60としての機能を阻害することはない。すなわち、配向制御層60bを形成する材料にニッケル酸ランタンを用いたとしても、下電極膜60の抵抗値が大幅に上昇することがなく、圧電体層70に所望の駆動電界を発生させることができる。
【0064】
また、配向制御層60bは、上述したように、それ自体で優れた導電性を有しているため、下電極膜60としての機能を十分に発揮することができる。したがって、下電極膜60を配向制御層60bだけで構成するようにしてもよいが、機械的強度を確保するためには金属層60aを設けておくことが望ましい。
【0065】
このようなニッケル酸ランタンからなる配向制御層60b上に形成される圧電体層70は、配向制御層60bの面方位の影響を受けて、結晶面方位が(100)に配向し、結晶構造が菱面体晶である柱状となる。
【0066】
具体的には、圧電体層70の結晶性は、その下地である配向制御層60bの結晶面方位が単独で(100)に優先配向しているため、金属層60a及び流路形成基板10の結晶方位の影響を実質的に受けず、配向制御層60bの面方位にのみ影響され、結晶面方位が(100)に配向する。
【0067】
このような圧電体層70を形成する材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛〔Pb(Zr、Ti)O;PZT〕や、マグネシウム酸ニオブ酸鉛とチタン酸鉛の固溶体Pb(Mg1/3Nb2/3)O−PbTiO〔PMN−PT〕、亜鉛酸ニオブ酸鉛とチタン酸鉛の固溶体Pb(Zn1/3Nb2/3)O−PbTiO〔PZN−PT〕等を挙げることができる。
【0068】
また、上述した圧電セラミック材料は、例えば、PZTを用いる場合、その構成元素のうちZrのモル量AとTiのモル量Bとの関係がA/(A+B)≧0.55の条件を満たしていることが好ましい。同様に、PMN−PTの場合には、PMNのモル量CとPTのモル量Dとの関係が0.65≦C/(C+D)≦0.75の条件を満たしていることが好ましい。また、PZN−PTの場合には、PZNのモル量EとPTのモル量Fとの関係が0.90≦E/(E+F)≦0.965の条件を満たしていることが好ましい。なお、このような条件を満たした圧電セラミック材料で圧電体層70を形成することによって、圧電体層70の結晶構造が菱面体晶となり且つその圧電特性を実質的に高めることができる。そして、本実施形態では、A/(A+B)≧0.55の条件を満たしたPZTを用いて圧電体層70を形成した。
【0069】
なお、このような圧電体層70は、例えば、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、更に高温で焼成する、いわゆるゾル−ゲル法を用いて配向制御層60b上に形成される。具体的には、配向制御層60bの結晶面方位と同じ配向で結晶が成長し、結晶面方位が(100)配向した圧電体層70が形成される。勿論、この圧電体層70の成膜方法は、特に限定されず、例えば、スパッタ法やMOD法等で形成してもよい。
【0070】
何れにしても、このように成膜された圧電体層70は、バルクの圧電体とは異なり結晶が優先配向しており、且つ上述したように、圧電体層70は、結晶が菱面体晶且つ柱状に形成されている。なお、優先配向とは、結晶の配向方向が無秩序ではなく、特定の結晶面がほぼ一定の方向に向いている状態をいう。また、結晶が柱状の薄膜とは、略円柱体の結晶が中心軸を厚さ方向に略一致させた状態で面方向に亘って集合して薄膜を形成している状態をいう。勿論、優先配向した粒状の結晶で形成された薄膜であってもよい。なお、このように薄膜工程で製造された圧電体層の厚さは、一般的に0.2〜5μmである。
【0071】
以上説明したように、本実施形態では、下電極膜60の圧電体層70側をニッケル酸ランタンからなる配向制御層60bで構成するようにしたので、容易且つ確実に圧電体層70を(100)配向に制御することができ、圧電体層70の圧電特性を実質的に高めることができる。
【0072】
また、このような配向制御層60bの結晶性は、下地である金属層60aの面方位に実質的に影響されず、単独で(100)に配向するため、(110)配向した流路形成基板10を用いて圧力発生室12を高密度に配列することができる。
【0073】
さらに、本実施形態では、配向制御層60bをゾル−ゲル法及びMOD法等の簡易な方法により確実に形成できるため、例えば、配向制御の役割を担う島状チタン等の結晶種を形成する煩雑な工程等を省略できるというメリットもある。これにより、製造効率を向上することができる。
【0074】
なお、このような流路形成基板10の圧電素子300側には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を確保した状態で、その空間を密封可能な圧電素子保持部31を有する封止基板30が接合され、圧電素子300はこの圧電素子保持部31内に密封されている。
【0075】
また、封止基板30には、各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ90の少なくとも一部を構成するリザーバ部32が設けられ、このリザーバ部32は、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ90を構成している。
【0076】
さらに、封止基板30の圧電素子保持部31とリザーバ部32との間、すなわちインク供給路14に対応する領域には、この封止基板30を厚さ方向に貫通する接続孔33が設けられている。また、封止基板30の圧電素子保持部31側とは反対側の表面には外部配線34が設けられている。さらに、この外部配線34上には、各圧電素子300を駆動するための駆動IC35が実装されている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極85は、この接続孔33まで延設されており、例えば、ワイヤボンディング等により外部配線34と接続される。
【0077】
封止基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなる。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ90に対向する領域には、厚さ方向に完全に除去された開口部43が形成され、リザーバ90の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0078】
なお、このようなインクジェット式記録ヘッドは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ90からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、図示しない駆動回路からの記録信号に従い、外部配線34を介して圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0079】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の構成は上述したものに限定されるものではない。
【0080】
例えば、上述した実施形態では、下電極膜60の圧電体層70側の全面に配向制御層60bを設けるようにしたが、これに限定されず、下電極膜の少なくとも圧電体層の下地となる領域だけに配向制御層を設けるようにしてもよい。このような構成であっても、上述した実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0081】
また、上述の実施形態では、成膜及びリソグラフィプロセスを応用して製造される薄膜型のインクジェット式記録ヘッドを例にしたが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型のインクジェット式記録ヘッドにも本発明を採用することができる。
【0082】
さらに、このような本発明のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図3は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0083】
図3に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0084】
そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上に搬送されるようになっている。
【0085】
ここで、上述した実施形態においては、本発明の液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを説明したが、液体噴射ヘッドの基本的構成は上述したものに限定されるものではない。本発明は、広く液体噴射ヘッドの全般を対象としたものであり、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように本発明では、下電極膜の圧電体層側をニッケル酸ランタンからなる配向制御層で構成することにより、比較的容易且つ確実に圧電体層を(100)配向に制御することができる。したがって、圧電体層の圧電特性を実質的に高めることができる。
【0087】
また、このような配向制御層の結晶性は、下地である金属層の面方位に実質的に影響されず、単独で(100)に強く配向するため、結晶面方位が(110)である流路形成基板を用いて圧力発生室を高密度に配列することができる。
【0088】
さらに、配向制御層を簡易な方法により確実に形成できるため、例えば、配向制御の役割を担う島状チタン等の結晶種を形成する煩雑な工程等を省略できる。これにより、製造効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るインクジェット式記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略斜視図である。
【符号の説明】
10 流路形成基板
12 圧力発生室
13 連通部
14 インク供給路
20 ノズルプレート
21 ノズル開口
30 封止基板
31 圧電素子保持部
32 リザーバ部
33 接続孔
34 外部配線
40 コンプライアンス基板
50 弾性膜
60 下電極膜
60a 金属層
60b 配向制御層
70 圧電体層
80 上電極膜
90 リザーバ

Claims (16)

  1. ノズル開口に連通する圧力発生室が形成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられる下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子とを具備する液体噴射ヘッドにおいて、
    前記下電極の少なくとも前記圧電体層側がニッケル酸ランタン(LaNiO)からなる配向制御層で構成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  2. 請求項1において、前記配向制御層の結晶面方位が(100)配向となっており、前記圧電体層の結晶面方位が(100)配向となっていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  3. 請求項1又は2において、前記圧電体層は、結晶が菱面体晶であることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、前記圧電体層は、結晶が柱状となっていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  5. 請求項1〜4の何れかにおいて、前記圧電体層は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  6. 請求項5において、前記チタン酸ジルコン酸鉛は、その構成元素のうちZrのモル量AとTiのモル量Bとの関係がA/(A+B)≧0.55の条件を満たしていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  7. 請求項1〜4の何れかにおいて、前記圧電体層は、マグネシウム酸ニオブ酸鉛(PMN)とチタン酸鉛(PT)との固溶体で形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  8. 請求項7において、前記固溶体は、PMNのモル量CとPTのモル量Dとの関係が0.65≦C/(C+D)≦0.75の条件を満たしていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  9. 請求項1〜4の何れかにおいて、前記圧電体層は、亜鉛酸ニオブ酸鉛(PZN)とチタン酸鉛(PT)との固溶体で形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  10. 請求項9において、前記固溶体は、PZNのモル量EとPTのモル量Fとの関係が0.90≦E/(E+F)≦0.965の条件を満たしていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  11. 請求項1〜10の何れかにおいて、前記下電極の前記振動板側が、白金(Pt)又はイリジウム(Ir)で形成された金属層、若しくは白金及びイリジウムの各金属層を積層した混合層で構成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  12. 請求項1〜11の何れかにおいて、前記振動板が、酸化シリコン膜又は酸化ジルコニウム膜の少なくとも何れか一方を含むことを特徴とする液体噴射ヘッド。
  13. 請求項1〜12の何れかにおいて、前記配向制御層は、スパッタ法、ゾル−ゲル法又はMOD法の何れかによって形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  14. 請求項1〜13の何れかにおいて、前記流路形成基板は、その結晶面方位が(110)であるシリコン単結晶基板であることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  15. 請求項14において、前記圧力発生室がシリコン単結晶基板に異方性エッチングにより形成され、前記圧電素子の各層が成膜及びリソグラフィ法により形成されたものであることを特徴とする液体噴射ヘッド。
  16. 請求項1〜15の何れかの液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
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