JP4562907B2 - ストレッチ性織編物用ポリエステル複合繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、膨らみ感のあるソフトな風合いを有し、カチオン染料可染性に優れるストレッチ性織編物用ポリエステル複合繊維及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルは、優れた機械的特性および化学的特性を有しており、広範な分野において使用されている。この用途の1種として、ストレッチ機能を有した織編物を得るために、熱収縮特性の異なる2種類のポリエステルをサイドバイサイド型に接合し、製編織後の加工時に受ける熱により捲縮性能を発現する潜在捲縮性の複合繊維を使用することがよく知られている。
【0003】
最近では、ニーズの多様化により、カラーミックス調織編物や鮮明な染色性を有するストレッチ機能を有した織編物の要求が高まっている。そのため、鮮明な発色性を有するカチオン染料可染性のストレッチ機能を有したポリエステル繊維が必要となっている。特開平11−200155号公報には、一方の成分にカチオン可染性・高染色性・熱収縮性を向上させる有機化合物を共重合したポリエステルを用いる方法が提案されている。
【0004】
このように、複合繊維の一方の成分に機能性共重合ポリエステルを配することで、共重合成分を含まない通常のポリエステル成分との熱収縮率の差が大きくなり、捲縮性能をより促進することができ、カチオン染料による染色性と捲縮性能の両者をともに改良する手法として有効である。しかしながら、共重合成分の影響により、糸条の強度低下となるうえ、両成分での染色性の差が大きいため、鮮明に染色しようとした場合、カチオン染料を吸着しない一方の成分の影響により、単一成分で構成されたカチオン染料可染ポリエステル繊維と比較して、発色性が大きく見劣りしてしまうという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するためには、両成分共に共重合ポリエステルを使用する方法が考えられる。両成分共に共重合ポリエステルを使用した複合繊維については特開昭58−46120号公報等に開示されているが、これらの多くは収縮率差を大きくする目的で第3成分を含有しているものであり、さらには、短繊維に関するものである。また、両成分共に共重合成分を配することで糸条強度が低下するうえ、両成分の熱収縮特性の差が小さくなる方向となり、捲縮性能が低下するという問題がある。このように、未だにカチオン染料可染性のストレッチ性織編物用長繊維として十分な性能を有するものは得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決し、カチオン染料による発色性が良好であると同時に、捲縮性能が良好で、膨らみ感のあるソフトな風合いを有するストレッチ性織編物を得ることができるポリエステル複合繊維及びその製造方法を提供することを技術的な課題とするものである。
【0007】
【発明が解決するための手段】
本発明者らは上記した課題を解決するために検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、次の(1)、(2)を要旨とするものである。
(1)ポリエチレンテレフタレートを主体とし、下記式を満たす熱収縮特性の異なる2種類のポリエステルが互いにサイドバイサイド型に複合された繊維であって、高収縮性のポリエステル(A)は、ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸0.8〜1.8モル%及びイソフタル酸8〜15.0モル%が共重合されたものであり、ポリエステル(B)は、ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸0.8〜1.8モル%が共重合されたものであり、かつ、繊維全体の全酸成分に対して、5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合量が1.0モル%以上であることを特徴とするストレッチ性織編物用ポリエステル複合繊維。
0.05≦〔η〕A−〔η〕B≦0.2
なお、〔η〕A、〔η〕Bは、ポリエステル(A)、ポリエステル(B)の固有粘度である。
(2)ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸0.8〜1.8モル%及びイソフタル酸8〜15.0モル%が共重合されたポリエステル(A)とジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸0.8〜1.8モル%が共重合されたポリエステル(B)とを、紡糸口金上流でサイドバイサイドに張り合わせ紡糸口金から吐出させて紡糸した後、複合繊維の延伸後の残留伸度が15〜30%となる倍率で延伸し、次いで、1〜6%の弛緩状態で熱処理する、(1)記載のストレッチ性織編物用ポリエステル複合繊維の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の複合繊維は、ポリエチレンテレフタレート(エチレンテレフタレートの繰り返し単位が80%以上のものとする)を主体とし、熱収縮特性の異なる2種類のポリエステル(A)とポリエステル(B)が互いにサイドバイサイド型に複合された繊維である。
【0009】
本発明において、ポリエステルAは高収縮性のものであり、両者の固有粘度の関係は、ポリエステルAの方が高く、その差が0.05以上0.2以下とする必要がある。
ここで固有粘度は、ポリエステルをフェノールとテトラクロロエタンの1:1混合溶媒で溶解し、ウベローデ粘度計を使用して、20℃で測定した値である。
【0010】
両ポリエステルの固有粘度差が0.05未満の場合には、捲縮性能の発現が不十分となり、十分なストレッチ性能を有する布帛を得ることができなくなる。
一方、両ポリエステルの固有粘度差が0.2を超えると、各ポリエステルの複合流が紡糸口金から吐出される際、ニーリング大きくなり、紡糸調子が悪化する。
【0011】
ポリエステル(A)、(B)ともに、ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸(以下、SIPという)を共重合する必要がある。両ポリエステル成分にSIPを共重合することで、SIPが繊維中に均一に含有され、カチオン染料での染色時に鮮明な染色性を有する複合繊維が得られる。
【0012】
また、ストレッチ性の面から両成分間の収縮率差を大きくするためには、高収縮ポリエステル(A)の共重合量をポリエステル(B)より多くすることで有利となるため、同等かそれ以上とすることが好ましい。
なお、両ポリエステル成分中にSIPを含有することによって、一方のポリエステル成分のみにSIPを含有する複合繊維と比べ、繊維の強伸度積を高くすることが可能となる。複合繊維の強伸度積を高くするためには、各成分のSIP共重合量は同等程度とすることが好ましいので、ポリエステル(A)、(B)間でSIP量の差が大きくなりすぎないようにすることが好ましい。
【0013】
また、各ポリエステル成分のSIP共重合量は、0.8〜1.8モル%の範囲にあることが必要である。片側成分でも共重合量が0.8モル%未満となると、鮮明な染色性を有する複合繊維とすることができなくなる。片側成分のみSIP共重合量を多くして染色性を向上しようと試みても、各成分にそれぞれ0.8モル%以上含有したもの以上の鮮明さを表現するのは困難である。それは、片側成分の染色性が低いことによる視覚的な寄与が大きいためと考える。
一方、各成分の共重合量が1.8モル%より多いと、複合繊維の強度が極端に低下したり、製糸時の操業性が悪化する。
【0014】
そして、繊維全体の全酸成分に対するSIPの共重合量は1.0モル%以上である必要がある。繊維全体のSIPの共重合量を1.0モル%以上とすることで、単一成分で構成されたカチオン染料可染ポリエステル繊維と同等の優れた染色性を得ることができる。SIPが1.0モル%より少ないと、カチオン染料により十分な染色性が得られず、鮮明性の劣った織編物となる。一方、SIPが多すぎると繊維の強度が極端に低下したり、製糸時の操業性が悪くなるため、繊維全体の共重合量を1.0〜2.5モル%とすることが好ましい。
【0015】
さらに、ポリエステル(A)はSIP以外に、収縮性を高めるため、第3成分としてイソフタル酸を8〜15モル%共重合する必要がある。イソフタル酸が8モル%未満であると熱収縮率差が小さくなり、織編物素材に使用した際、十分なストレッチ性が発現されない。一方、イソフタル酸の共重合量が15モル%を超えると、糸条強度低下・ストレッチ性能低下となるうえ、製糸時の操業性が悪くなる。
【0016】
さらに、本発明のポリエステル複合繊維は次の(1)〜(3)を満足することが好ましい。
(1)複合繊維の強度(cN/dtex)と〔100+伸度(%)〕との積、つまり強伸度積が290以上である。この値が290未満では、製編織時の工程通過性が悪くなり、糸切れや毛羽立ちが発生しやすくなる。そのうえ、製編織後の布帛の膨らみ感が劣り、仕立て映えに劣るものとなりやすい。
【0017】
(2)沸水収縮率が12%以下である。各ポリエステル成分には共重合成分を含有しているため、その後の熱履歴により複合繊維の熱収縮性が高くなる傾向があるため、特に取り扱い性の面で熱収縮率がこの範囲であることが好ましい。
【0018】
(3)筒編み状態とし、カチオン黒色染料で染色した際のL値(色差計での測定値)を14以下とする。この値は複合繊維の染色を行った後の色調を判断する指標となるものである。様々な色調の染料が混在した黒色染料での評価とすることで、他の色調の染色評価の指標となる。この値を14以下とすることで、鮮明な染色性を有するカチオン可染性の複合繊維とすることができ、この複合繊維とカチオン染料以外で染色する繊維との複合織編物の使用において、染め分け用途での使用も可能となる。
【0019】
さらに、本発明の複合繊維においては、捲縮応力が0.013cN/dtex以上であることが好ましい。この値は熱処理後に発現する捲縮特性を表す。つまり、加工工程後の布帛の状態で複合繊維が発現する捲縮性能(潜在捲縮性能)を判断する指標となるものである。捲縮応力が0.013cN/dtex未満であると、複合繊維の潜在捲縮性能が低く、ストレッチ感の乏しい布帛となる。
【0020】
各ポリエステル成分には、本質的な特性を損なわない限り、艶消し剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、難燃剤、抗菌剤、導電性付与剤、防汚剤等、他の機能性成分を少量含有していてもよい。
【0021】
両ポリエステル成分の重量比は、良好な捲縮性能を得るためには、30/70〜70/30とすることが好ましく、さらには40/60〜60/40とすることが好ましい。
【0022】
本発明の複合繊維の繊度および単糸数は特に限定されるものではなく、単糸繊度が1〜10デシテックス、単糸数が5〜100本の範囲で用途に応じて適宜選定すればよい。
【0023】
次に、本発明のポリエステル複合繊維の製造方法について説明する。
本発明のポリエステル複合繊維は、通常の複合紡糸型の溶融紡糸装置を用いて製造することができ、紡糸口金の上流で両ポリエステル成分をサイドバイサイド型になるように合流させ、同一紡糸孔から吐出し紡糸する。その際、紡糸温度は280〜310℃の範囲とすることが好ましい。紡出糸条は冷却固化した後、紡糸油剤を付与して引取り、一旦捲き取ってから延伸機にて延伸を行うか、あるいは引き取った糸条を紡糸に連続して延伸を行い、その後、弛緩熱処理する方法により得ることができる。
【0024】
本発明の製造方法においては、延伸時に、複合繊維の延伸後の残留伸度が15〜30%となるように延伸する。延伸後の残留伸度を15〜30%となるように延伸する理由は、複合繊維の残留伸度がこの範囲より高いと十分な捲縮性能が発現されにくく、一方、残留伸度がこの範囲より低いと延伸時に単糸の切断が発生する等、操業的に好ましくないためである。
【0025】
本発明の複合繊維は、両ポリエステル成分に共重合成分を含有しているが、このような複合繊維は、その後の熱履歴により複合繊維の熱収縮性が高くなり、取扱性が困難となりやすい。特に、各ポリエステル成分の共重合量を増やした複合繊維においては、その後の熱収縮率が下がらないという問題が残る。通常の延伸と熱処理を同時に行う方法では、熱処理温度を極力高くする必要があるが、それでも製糸以降の工程での取扱性が良好な熱収縮率まで下がらないばかりか、複合繊維への熱セット時のダメージが大きくなるため、毛羽立ちなどの欠点を誘発するという問題が残る。
【0026】
そこで、本発明の製造方法においては、熱収縮率を下げるため、延伸後に弛緩状態で熱処理を行うことにより、共重合量が多い複合繊維においても熱収縮率を下げることが可能となり、その後の織編工程において取扱性が良好な複合繊維を得ることができる。
弛緩率は1〜6%とすることが必要で、熱処理温度は150〜180℃とすることが好ましい。弛緩率が6%を超えると、糸条が緩みすぎるため前工程の延伸が困難となる。また、弛緩率が1%未満であると通常の未弛緩での熱処理と同等であり、糸条の熱収縮率をほとんど下げることができない。
また、熱処理温度が180℃を超えると、収縮率は下がるものの複合繊維のダメージが大きくなり、強伸度積が低下しやすい。一方、熱処理温度が150℃未満であると、沸水収縮率を低下させることが困難となりやすい。
【0027】
また、紡糸速度は、溶融粘度差を有する2種のポリエステル成分に分子配向差からくる熱収縮率差を持たせるため、2500m/分以上の高紡糸速度で行うことが好ましい。ただし、4000m/分を超えると、各成分の分子配向差が大きくなりすぎるため、操業調子が悪化し、好ましくない。
【0028】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
なお、実施例中の各種の物性値の測定、評価は次の通り行った。
(a)強度及び伸度
オリエンテック社製万能引張試験機テンシロンRTC1210型を用いて、試料長500mm、引張速度500mm/分で応力−伸長曲線を測定し、繊維の最大点強力から強度と伸度を求めた。
(b)固有粘度
試料をフェノール/テトラクロロエタン(重量比50:50)の混合溶媒に溶解し、ウベローデ粘度計を使用して20℃で測定して求めた。
(c)沸水収縮率
繊維を外周1.125mの検尺機で5回かせ取りして2重にし、1/10g/デシテックスの荷重を掛け試料長aを測定する。その後、1/6000g/デシテックスの荷重をかけて30分間放置した後、30分間沸水処理し、乾燥後、1/10g/デシテックスの荷重を掛け試料長bを測定し、下記式から算出した。
沸水収縮率(%)=〔(a−b)/a〕×100
(d)捲縮回復応力
(c)沸水収縮率で使用した乾燥後の試料を用い、オリエンテック社製万能引張試験機テンシロンRTC1210の引張速度を100mm/分とし、(繊度×2)gの応力まで試料を伸長させ、同じ速度で回復させ、このときの最大応力点から垂線を降ろし、応力0gの線との交点から45度の角度で応力曲線側に引いた線と応力回復曲線との交点での応力測定値を読みとった。(0.013cN/dtex以上のものを捲縮回復応力有りと判断した。)
(e)染色性
得られた複合繊維を栄光産業社製 1口筒編機CR-Aを使用し、28ゲージにて筒編み状とし、精練後、染料として三菱化成社製 Diacryl Black RTL-PF(10%owf)、均染剤として酢酸0.3cc/lを使用し、温度130℃、浴比1:50で、30分間の条件で加圧染色を行った。
染色後の筒編み地が透けないよう8枚重ねとし、色差計(ミノルタ社製CR-300)によりL値を5回測定し、平均値を求めた。
(f)ストレッチ性およびソフト感の評価
染色性評価に使用した試料について、10人のパネラーによる官能評価を行った。各々の試料でストレッチ性が高い、およびソフト感が優れるものを10点満点として1〜10点の10段階で評価し、10人の平均値で示した(7点以上を合格とした)。
【0029】
実施例1〜5、比較例1〜8
ポリエステルAとして、ポリエチレンテレフタレートにSIPとイソフタル酸(表中、IPAと示す)の共重合量を表1に示すように種々変更したものを用い、ポリエステルBとして、ポリエチレンテレフタレートにSIPの共重合量を表1に示すように種々変更したものを用いた。ポリエステルA、Bの固有粘度〔η〕A、〔η〕B、〔η〕A−〔η〕Bの値も表1に示す。
これらのポリエステルA、Bを複合紡糸型溶融押出機に等重量供給し、紡糸温度290℃で溶融させ、紡出孔を24個有する紡糸口金上流で両成分を合流させ、サイドバイサイド型に接合して紡出した。紡出した糸条を冷却固化した後、紡糸油剤を付与しながら糸条を集束し、表面速度が3400m/分の引取ローラを介して、捲取機で捲取った。次いで、得られた繊維を延伸機に供給し、表面温度85℃のローラで熱処理した後、延伸倍率1.6倍で延伸と同時に185℃(ヒートプレート温度)で熱処理(弛緩率0%)し、110デシテックス/24フィラメントの複合繊維を得た。
【0030】
実施例1〜5及び比較例1〜8で得られた複合繊維の評価結果を併せて表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1から明らかなように、実施例1〜5の繊維は、いずれも、十分な強伸度・熱収縮率を有し、得られた編物は、ストレッチ性とソフト感、染色性ともに良好であった。
一方、比較例1の繊維は、繊維中のSIP共重合量が低いため、染色L値が高く、染色時の発色性が劣っていた。比較例2の繊維は、高収縮成分ポリエステルAのIPA量が少ないため、捲縮応力が低く、得られた編物はストレッチ性、ソフト感に劣るものであった。比較例3の繊維はポリエステルAのIPA共重合量が多いため、紡糸溶融時の粘度低下が大きく、各成分の熱収縮差がなくなり、強伸度が低く、捲縮の発現がないものとなり、得られた編物は、ストレッチ性、ソフト感ともに劣っていた。比較例4においては、各成分の固有粘度差が大きすぎたため、紡糸工程で糸切れが多発し、繊維を得ることができなかった。比較例5の繊維は、各成分の固有粘度差が小さすぎたため、捲縮性能の発現が不十分となり、得られた編物はストレッチ性、ソフト感ともに劣っていた。比較例6の繊維は低収縮成分のポリエステルBのSIP共重合量が少なすぎたため、染色性が不十分となった。比較例7においては、ポリエステルAのSIP共重合量が多く、繊維中のSIP共重合量も多いため、紡糸時に糸切れが多発し、繊維を得ることができなかった。比較例8の繊維は、ポリエステルBにSIPを共重合していないため、染色性が不十分となった。
【0033】
実施例6〜10、比較例9〜12
ポリエステルAとして、ポリエチレンテレフタレートにSIPとイソフタル酸の共重合量を表2に示すように種々変更したものを用い、ポリエステルBとして、ポリエチレンテレフタレートにSIPの共重合量を表2に示すように種々変更したものを用いた以外は実施例1と同様に紡糸から捲き取りまでを行った。ポリエステルA、Bの固有粘度〔η〕A、〔η〕Bの値も表2に示すように種々変更し、〔η〕A−〔η〕Bの値も表2に示す。
次に、得られた未延伸糸を延伸機に供給し、表面温度85℃のローラで熱処理した後、表2に示す延伸倍率で延伸し、次いで表2に示す弛緩率と温度(ヒートプレート温度)で熱処理し、110デシテックス/24フィラメントの複合繊維を得た。
【0034】
実施例6〜10及び比較例9〜12で得られた複合繊維の評価結果を併せて表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2から明らかなように、実施例6〜10で得られた繊維は、いずれも、十分な強伸度・熱収縮率を有し、得られた編物は、ストレッチ性とソフト感、染色性ともに良好であった。
一方、比較例9は、弛緩率が高すぎたために糸条が緩み、延伸が困難となり糸の採取ができなかった。比較例10は、延伸倍率が高すぎた(残留伸度が11%であった)ため、弛緩熱処理を行ったにもかかわらず、収縮率が下がらず、得られた編物はソフト感に乏しいものであった。また、単糸切れの生じた繊維となり、強伸度積も低いものとなった。比較例11は、延伸倍率が低すぎた(残留伸度が33%であった)ため、捲縮応力が小さく、得られた編物はストレッチ性に劣るものであった。比較例12は、弛緩率が0%でかつ熱処理温度が高かったため、収縮率は下がるものの強伸度積が低く、得られた織物はストレッチ性、ソフト感ともに劣るものであった。
【0037】
【発明の効果】
本発明の複合繊維は、カチオン染料による発色性が良好であると同時に、捲縮性能が良好であり、膨らみ感のあるソフトな風合いを有するストレッチ性織編物を得ることが可能となる。
そして、本発明の複合繊維の製造方法によれば、本発明の複合繊維を操業性よく得ることが可能となる。
Claims (3)
- ポリエチレンテレフタレートを主体とし、下記式を満たす熱収縮特性の異なる2種類のポリエステルが互いにサイドバイサイド型に複合された繊維であって、高収縮性のポリエステル(A)は、ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸0.8〜1.8モル%及びイソフタル酸8〜15.0モル%が共重合されたものであり、ポリエステル(B)は、ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸0.8〜1.8モル%が共重合されたものであり、かつ、繊維全体の全酸成分に対して、5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合量が1.0モル%以上であることを特徴とするストレッチ性織編物用ポリエステル複合繊維。
0.05≦〔η〕A−〔η〕B≦0.2
なお、〔η〕A、〔η〕Bは、ポリエステル(A)、ポリエステル(B)の固有粘度である。 - 以下の要件(1)〜(3)を同時に満足する、請求項1記載のストレッチ性織編物用ポリエステル複合繊維。
(1)強伸度積290以上
なお、強伸度積は、繊維強度(cN/dtex)×〔100+繊維伸度(%)〕であ る。
(2)沸水収縮率12%以下
(3)筒編み状態での黒色カチオン染料染めL値14以下 - ジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸0.8〜1.8モル%及びイソフタル酸8〜15.0モル%が共重合されたポリエステル(A)とジカルボン酸成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸0.8〜1.8モル%が共重合されたポリエステル(B)とを、紡糸口金上流でサイドバイサイドに張り合わせ紡糸口金から吐出させて紡糸した後、複合繊維の延伸後の残留伸度が15〜30%となる倍率で延伸し、次いで、1〜6%の弛緩状態で熱処理する、請求項1又は請求項2記載のストレッチ性織編物用ポリエステル複合繊維の製造方法。
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JP2000054243A (ja) * | 1998-08-06 | 2000-02-22 | Mitsubishi Rayon Co Ltd | 伸縮性ポリエステル織物及びその製造方法 |
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