JP3796522B2 - ポリエステル異収縮混繊糸 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ポリエステル異収縮混繊糸に関する。
【0002】
【従来技術】
ポリエステル繊維はその優れた物性及び加工性、コスト等より衣料用、産業資材用を初め多くの分野にて使われている。特に婦人衣料用においては以前よりシルキーポリエステル等としてシルクに代わる素材としてそのシェアが非常に拡大している。特にシルキー、ニューシルキー、新合繊においてはポリマーの変性、紡糸条件の改良、繊維断面、デニール、収縮率差によるバルキー性の付与、及びアルカリ減量加工等による表面改質等数々の新しい技術によりその地位を確固とした物にしている。
【0003】
ところが、新合繊と呼ばれる物はそのフクラミ或いは繊維のループ等による表面感が重要な商品価値の一つになる物である。従ってこれまで数多くの提案が異収縮混繊糸に関して提案されている。例えば、特開昭64−26716号公報では2種類の重合度の異なるポリマーを高速紡糸する事により繊維間に収縮率差を与えるものである。又、特開平4−119134号公報は高収縮側の繊維のポリマー組成と無機物の添加量を特定する事により清涼感を与える異収縮混繊糸を提案している。又、特開平4−100932号公報では2種の繊維のポリマー組成を特定し、収縮率差を大きくする提案である。又、特開昭62−90345号公報では高低収縮性の繊維のデニールを特定する事によって特殊な風合いを発現させようとした物である。
【0004】
この様に従来多くの提案が異収縮混繊糸について提案されている。しかし、従来の提案では、安定した性能をより低コストで得るには問題が多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、かかる従来技術の諸欠点を改善し、工業的に容易且つより低コストで得られる品質の安定した異収縮混繊糸を提案するにある。
【0006】
本発明の目的は、工業的に安価に得られる、豊かなフクラミとハリ、コシを持ち、優れた風合いを有する異収縮混繊糸を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は2・2ビス〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパンを2〜5mol%、イソフタル酸を6〜10mol%含有し、極限粘度が0.65〜0.85,溶融粘度が290℃にて2400〜4000ポアズである芳香族ポリエステルとジエチレングリコール(以下DEGと記す)を1.5〜3.0%含有したポリエチレンテレフタレートよりなるポリマーとをスピンドロー法により紡糸段階にて混繊した混繊糸であり、100℃の熱水中での収縮率が20〜30%,該混繊糸を構成する繊維間の熱水中での収縮率差が15〜25%であり、130℃での乾熱収縮率が18%以上、乾熱下での収縮開始温度が70℃以上、最大収縮応力が0.2g/デニール以上であり、80℃と100℃における熱応力差が0.08g/デニール以上であることを特徴とするポリエステル異収縮混繊糸である。
【0008】
本発明の高収縮側の繊維は2・2ビス〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパンをアルコール成分中に2〜5mol%、好ましくは3〜4mol%含有し且つイソフタル酸成分を酸成分中6〜10mol%、好ましくは7〜8mol%含有する芳香族ポリエステルである。2・2ビス〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパンの含有率がアルコール成分に対して2mol%未満であると、収縮率及び収縮力を十分発現させることができず、また、5mol%を超える場合にはポリマーの耐光性が低下し変色の原因となる。また、イソフタル酸の含有率が酸成分に対して6mol%未満であると収縮率が不十分であり、10mol%を超えるとポリマーの融点が低下し、耐熱性が低下する。芳香族ポリエステルの主成分はテレフタル酸とエチレングリコールよりなるポリエステルであるが、その他の成分として、染色性改善のモノマーや耐熱性改良の化合物を含有してもよい。
【0009】
又、本ポリマーの極限粘度は0.60〜0.90、好ましくは0.65〜0.85、更に好ましくは0.70〜0.80である。極限粘度が0.60に満たない場合は、収縮力が十分でないばかりか操業性も安定しない。又極限粘度が0.90を越えると収縮力は十分であるが、紡糸時の粘度が高過ぎ紡糸での操業性が著しく低下する。
【0010】
同様に290℃での溶融粘度は2400〜4000ポアズ、好ましくは2500〜3500ポアズ、更に好ましくは2600〜3200ポアズである。溶融粘度が2400より低いと収縮力の発現が十分でなく、且つ紡糸・延伸での操業性も不良である。又溶融粘度が4000ポアズを越えるとポリマーの重合に支障があるばかりか、紡糸温度が非常に高くなり繊維の着色やポリマーの解重合等の劣化が生じ問題が多い。
【0011】
本混繊糸の低収縮繊維に使用するポリマーとしては、DEGを1.5〜3.0mol%共重合したポリエチレンテレフタレートである。DEGの量が1.5mol%未満では高収縮繊維に比較して染色性が不十分であり、一方3.0mol%を越えるとポリマーの耐熱性が低下するばかりか、染色堅牢度も低下し品質的な問題が生じる。
【0012】
本混繊糸を構成するポリマーに他に共重合可能な成分としては、本発明の目的を脱しない範囲で、染色性を改善するモノマーとしてスルホン酸基含有モノマー等、親水性を改善するモノマーとしてポリエチレングリコール等を用いる事も出来る。
【0013】
本発明の繊維は紡糸・延伸が連続したスピンドロー法にて行う。これにより、製造にかかるコストの大幅な低減と品質改善・安定化が可能となる。スピンドローでは、複合紡糸口金を使用して同一口金より異種ポリマーを紡出しても良いが、別々の押出機口金を通して紡出する事も出来る。別々の口金より紡出した方が紡出後延伸温度、延伸倍率等の多様な選択が可能であり、多様の製品の製造が出来、好ましい。
【0014】
紡糸条件としては、ポリマーの溶融温度が約280〜310℃、吐出線速度が3〜20m/分、好ましくは4〜15m/分、更に好ましくは5〜10m/分である。第1ゴデットローラー(GR1)の回転速度を1000〜2500m/分、表面温度を60〜120℃、第2ゴデットローラー(GR2)の回転速度を3000m/分以上、表面温度を90〜150℃とする。GR2/GR1の速度比が延伸倍率になるが通常2.5〜5.0、好ましくは3.0〜4.5、更に好ましくはGR2の速度が3500〜5000m/分で、延伸倍率が3.0〜4.5である。
【0015】
別々の口金より紡出した繊維は通常第2ゴデットローラーを出たあとエンタングルノズルを通じてお互いを良く混合する。
【0016】
繊維の大きさは高収縮繊維のデニールをDa、低収縮繊維のデニールをDbとする時、0.1<Da/Db<2、好ましくは0.3<Da/Db<1である。Da/Dbの値が0.1以下であると最終製品の織物中での高収縮糸と低収縮糸の糸長差が十分に現れないため好ましくない。また、2以上の場合は高収縮糸と低収縮糸が潜在的に有する染色性差が拡大し、いらつき発生の原因となり好ましくない。布帛にハリ、コシ、フクラミを付与すると言う点では高収縮繊維の方のデニールを大きくした方が好ましい。高収縮繊維のデニールが0.5〜10デニールが好ましく、更に好ましくは1〜7デニール、特に好ましくは1.5〜5デニールである。又低収縮繊維のデニールを高々3デニール、好ましくは高々1デニール、更に好ましくは0.3〜1デニールである。低収縮側の繊維の太さを小さくする事によって、フクラミをより強調でき且つ、風合いをよりソフトに出来る。
【0017】
混繊後の糸は100℃の熱水中での収縮率が20〜30%,該混繊糸を構成する繊維間の熱水中での収縮率差が15〜25%、好ましくは100℃の熱水中での収縮率が22〜28%,該混繊糸を構成する繊維間の熱水中での収縮率差が17〜23%である。熱水中での収縮率が20%に満たない場合や収縮率差が15%に満たない場合は、織物にした場合布帛のフクラミが不十分で、又熱水中での収縮率が30%を越えたり収縮率差が25%を越えると、織物製造工程中での不均一収縮等のトラブルの発生がある。
【0018】
又本混繊糸の130℃での乾熱収縮率が18%以上、好ましくは収縮率が20%以上である。乾熱収縮率が18%に満たない場合は、布帛の柔らかさ、フクラミが不十分である。熱応力はカネボウエンジニアリング製熱応力測定機KE−2Sに於いて測定する。乾熱下での熱応力挙動測定に於いて収縮開始温度が60℃以上、好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上、又最大収縮応力が0.2g/デニール以上、好ましくは0.25g/デニール以上、更に好ましくは0.30g/デニール以上であり、80℃と100℃における熱応力差が0.08g/デニール以上、好ましくは0.10g/デニール以上、更に好ましくは0.15g/デニール以上である。収縮開始温度が60℃未満では、経糸に使用する場合サイジング時に収縮力が大きく低下する。又最大収縮力が0.2g/デニール未満では加工のリラックス、風合い出し時に十分な収縮が起きずフクラミ、柔らかさを付与できない。
【0019】
本発明で得られた糸は、経糸或いは緯糸としてそのまま、或いは加撚して使用する事も出来る。又、単独或いは他の繊維と混繊或いは仮撚り加工して使用する事もできる。本発明で得られた糸は、風合いを重視する婦人薄地、中肉、厚地分野はもとより、紳士服地用、或いはインテリア、衣料資材用として使用する事が出来る。
【0020】
【発明の効果】
本発明の異収縮混繊糸は、収縮力が大きく且つ途中の工程(例えばサイジング)での収縮力の低下がない。従って、織物、編み物製造時に多少の条件の変動でも所定の風合いを発現させる事が出来る。
しかも紡糸・延伸が直結したスピンドロー法にて紡糸する為に、低コストで且つより安定した、均一の品質を有する混繊糸を製造でき、その工業的メリットは非常に大きい。
【0021】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明する。
本発明の異収縮混繊糸の特性で重要とされる収縮応力や各種収縮率は次のような手順で測定した。
【0022】
極限粘度
極限粘度「η」は、フェノール/テトラクロロエタン=6/4の混合溶剤中20℃で常法により測定した。
熱応力
カネボウエンジニアリング製の熱応力測定機KE−2Sを用い、試料長を100mm、初期荷重として1/50デニールの荷重をかけ、120℃/minの昇温速度で昇温した場合の温度に対する応力の曲線を描き、その曲線から収縮開始温度(Ts)、ピーク応力(S)、ピーク温度(Tp)、80℃と100℃との間の応力差(△S)を求める。
沸水収縮率
荷重を2mg/デニールかけた試料長500mmの糸を沸騰水中に15分間浸漬し、次いで5分間風乾した後、次式により沸水収縮率を求める。
沸水収縮率(%)=(初期試料長−収縮後の試料長)/初期試料長×100乾熱収縮率
荷重を3mg/デニール、初期試料長を150mmとし130℃の加熱体域に10分間入れた後に5分間風乾し、沸水収縮率と同様の方法で乾熱収縮率を計算した。
風合い評価
風合い評価は婦人用薄地を長年扱っている人による触感により行った。◎は優れており、○は並み、△は不足、×は不良を示す。
【0023】
実施例1〜5(試料No.1〜5)
テレフタル酸、イソフタル酸、エチレングリコール、2・ 2ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンをもちいて、これらを常法により重合し、表1に示す組成や極限粘度、溶融粘度をもつ共重合ポリエチレンテレフタレートペレットを得た。
このチップと表1のDEG量になるように重合した低収縮性のポリエチレンテレフタレートチップを別口金により紡糸し、高収縮側のGR2内で初めて高収縮糸と低収縮糸が混繊されるようにスピンドロー紡糸混繊をし、高収縮側が25デニール12フィラメント、低収縮側が35デニール36フィラメント、合わせて60デニール48フィラメントの混繊糸を紡糸した。また、紡糸混繊の際、流体噴射処理により18ヶ/mの交絡を付与した。
組成や極限粘度、収縮開始温度や収縮応力が本発明の範囲内であると布帛の風合いもハリ、コシ、フクラミがあり良好であった。
【0024】
比較例1〜5(試料No.6〜10)
試料No.6〜10は本発明との比較例であり、上記実施例と同様の重合方法及び紡糸方法によって表1に示す組成や極限粘度、溶融粘度をもつポリエチレンテレフタレートペレットを得た。比較例1、2はポリマー組成を本発明範囲外にしたものであるが、それによって熱応力におけるいずれの項目も著しく低く、そのためサイジング工程などで収縮率差が軽減してしまうために布帛としても十分な物ができない。また、比較例3は極限粘度を本発明範囲外としたものであるがその場合も収縮応力が十分でなく、布帛の風合いも不十分となる。比較例4のように、高収縮糸の溶融粘度や低収縮糸のDEG量を本発明範囲外にすると混繊糸の十分な収縮率差を得ることが難しくなり織物はふくらみ感の欠けるものとなった。比較例5は低収縮糸のDEG量を少なくしたものであり、この場合、低収縮糸と高収縮糸の間の染色性の差が大きくなり布帛を染色したときのイラツキの原因となるために望ましくない。
【0025】
【表1】
Claims (2)
- 2・2ビス〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパンを2〜5mol%、イソフタル酸を6〜10mol%含有し、極限粘度が0.60〜0.90,290℃に於ける溶融粘度が2400〜4000ポアズである芳香族ポリエステルと、ジエチレングリコールを1.5〜3.0mol%含有したポリエチレンテレフタレートよりなるポリマーとをスピンドロー法により紡糸段階にて混繊した混繊糸であり、100℃の熱水中での収縮率が20〜30%,該混繊糸を構成する繊維間の熱水中での収縮率差が15〜25%であり、130℃での乾熱収縮率が18%以上、乾熱下での収縮開始温度が60℃以上、最大収縮応力が0.2g/デニール以上であり、80℃と100℃における熱応力差が0.08g/デニール以上であることを特徴とするポリエステル異収縮混繊糸。
- 高収縮側のデニールDaと低収縮側のデニールDbとが下記式を満足する請求項1記載の混繊糸。
0.1<Db/Da<2
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