JP4562157B2 - 反射防止膜および光学素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学ガラス等を基体とする光学素子の表面にコーテイングされる、反射防止膜及びこれを用いた光学素子に関するものである。本発明の反射防止膜は、例えばリソグラフィ用のi線使用の投影露光装置(ステッパー等)の投影光学系、照明光学系に使用されるレンズ等の光学部材上に設けられる、365nm付近の紫外光に反射防止効果のある反射防止膜や、g線使用のものに使用される、436nm付近の紫外光に反射防止効果のある反射防止膜に特に好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来、波長が400nm以下の紫外光と可視光の領域で反射防止膜として酸化物と弗化物膜を利用したもの(特許第2586527号公報、特許第2586509号公報)が知られている。また、酸化物膜構成の6層膜からなる反射防止膜(特開平7−261002号公報)も知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来技術においては、反射防止帯域幅が狭いという問題点があった。
【0004】
本発明は、365nm(i線)付近、あるいは436nm(g線)付近の紫外光を含む広い帯域において優れた反射防止効果を有する反射防止膜を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基体上に形成される4層構造の多層膜であって、
基体側から順に数えて第1層および第3層は、波長320nmから450nmの範囲における屈折率が2.10以上2.40以下である高屈折率層であり、
第2層および第4層は、波長320nmから450nmの範囲ににおける屈折率が1.42以上1.50以下である低屈折率層であり、かつ、
該第1層から第4層の光学的膜厚をそれぞれd1、d2、d3およびd4と表し、波長320nmから450nmの範囲の使用対象波長をλ0と表したとき、
0.05λ0≦d1≦0.07λ0
0.05λ0≦d2≦0.11λ0
0.50λ0≦d3≦0.56λ0
0.24λ0≦d4≦0.26λ0
である反射防止膜である。
【0006】
ここで、
(光学的膜厚)=(屈折率)×(幾何学的膜厚)
である。この光学膜厚の範囲でこの反射防止膜は、320nmから450nmの範囲で基体の屈折率が1.45から1.94の範囲にあるとき、反射防止特性の観点から好ましい。
【0007】
上記、高屈折率層の材料がTa25を主成分とし、低屈折率層の材料がSiO2を主成分とすることがそれぞれ好ましい。
【0008】
また、本発明は、基体上に形成される4層構造の多層膜であって、
基体側から順に数えて第1層および第3層は、波長320nmから450nmの範囲における屈折率が2.10以上2.40以下である高屈折率層であり、
第2層は、波長320nmから450nmの範囲における屈折率が1.55以上1.65以下である中屈折率層であり、
第4層は、波長320nmから450nmの範囲における屈折率が1.42以上1.50以下である低屈折率層であり、かつ、
該第1層から第4層の光学的膜厚をそれぞれd1、d2、d3およびd4と表し、波長320nmから450nmの範囲の使用対象波長をλ0と表したとき、
0.04λ0≦d1≦0.06λ0
0.06λ0≦d2≦0.14λ0
0.48λ0≦d3≦0.55λ0
0.24λ0≦d4≦0.26λ0
である反射防止膜である。
【0009】
上記光学膜厚範囲において、各層の屈折率と光学膜厚の組み合わせで決まる反射光学特性において反射防止帯の幅が大きくかつ反射率が低い高性能な反射防止膜となることを見出した。
【0010】
上記、高屈折率層の材料がTa25を主成分とすること、中屈折率層の材料がAl23を主成分とすること、低屈折率層の材料がSiO2を主成分とすることがそれぞれ好ましい。
【0011】
尚、主成分とは、少なくとも光学特性が主成分とみなされた材質の純粋物質と同一とみなせる程度まで該物質が主体となって構成されていることを意味している。また、各層の材質としては他の材質で同一の屈折率を持つ物質があれば1層ないし複数層をその材料で置き換えることも可能である。
【0012】
高屈折率層としては、他にTiO2、Nb2O5等が採用できる。低屈折率層としては、他にMgO等が採用できる。
【0013】
また、本発明に係る光学素子によれば、上述反射防止膜を形成される基体となるレンズ等の材質は屈折率を考慮して石英または光学ガラスであることが好ましい。
【0014】
上記本発明の反射防止膜は反射防止帯域幅が大きく良い。
【0015】
尚、本明細書における「基体」とは、反射防止膜がその表面に形成されるべき下地部材(レンズ本体、プリズム本体、透明板等)を指し、「光学素子」は光学系を構成する部材、例えばレンズ、プリズム、平行平板等を意図するものである。またこの基体が320nmから450nmの範囲で屈折率1.45から1.94の範囲にあると反射防止特性の観点から好ましい。
【0016】
【実施例】
[実施例1]
合成石英の基体上(ここではサンプル)に、本実施例の反射防止膜が使用される対象となる露光装置の光源波長365nm(i線)付近の光に反射防止膜効果のある反射防止膜を、表1に示した膜構成及び膜厚で真空蒸着法を用いて製作した。ここでλ0=365nmである。図1に膜構成模式図を示した。製作した反射防止膜の波長300nmから500nmの範囲の反射特性図を図2に示した。365nmで反射率0.3%以下、0.5%反射率波長幅190nm、と広帯域幅で低反射率である良好な反射防止特性である事がわかる。
【0017】
尚、屈折率は波長365nmで測定した値である。以下測定は分光測定装置、及びエリプソメータのいずれかを用いて実行している。
【0018】
【表1】
Figure 0004562157
【0019】
[実施例2]
BK7(BK7はショット社の商品名)ガラス基体上に、本実施例の反射防止膜が使用される対象となる露光装置の光源波長365nm(i線)付近の光に反射防止膜効果のある反射防止膜を、表2に示した膜構成及び膜厚でスパッタ法を用いて製作した。ここでλ0=365nmである。製作した反射防止膜の波長300nmから500nmの範囲の反射特性を測定した結果を図3に示す。365nmで反射率0.3%以下、0.5%反射率波長幅190nm、と広帯域幅で低反射率であり、良好な反射防止特性である事がわかった。
【0020】
尚、屈折率は波長365nmで測定した値である。
【0021】
【表2】
Figure 0004562157
【0022】
[実施例3]
SK10(SK10はショット社の商品名)基体上に、本実施例の反射防止膜が使用される対象となる露光装置の光源波長365nm(i線)付近の光に反射防止膜効果のある反射防止膜を、表3に示した膜構成及び膜厚で真空蒸着法を用いて製作した。ここでλ0=365nmである。製作した反射防止膜の波長300nmから500nmの範囲の反射特性図を図4に示した。
【0023】
365nmで反射率0.2%以下、0.5%反射率波長幅160nm、と広帯域幅で低反射率である良好な反射防止特性である事がわかる。
【0024】
尚、屈折率は波長365nmで測定した値である。
【0025】
【表3】
Figure 0004562157
【0026】
[実施例4]
SF6(SF6はショット社の商品名)基体上に、本実施例の反射防止膜が使用される対象となる露光装置の光源波長365nm(i線)付近の光に反射防止膜効果のある反射防止膜を、表4に示した膜構成及び膜厚でスパッタ法を用いて製作した。ここでλ0=365nmである。製作した反射防止膜の波長300nmから500nmの範囲の反射特性を測定した結果を図5に示す。365nmで反射率0.2%以下、0.5%反射率波長幅150nm、と広帯域幅で低反射率であり、良好な反射防止特性である事がわかった。
【0027】
尚、屈折率は波長365nmで測定した値である。
【0028】
【表4】
Figure 0004562157
【0029】
[実施例5]
合成石英基体上に、本実施例の反射防止膜が使用される対象となる露光装置の光源波長365nm(i線)付近の光に反射防止膜効果のある反射防止膜を、表5に示した膜構成及び膜厚で真空蒸着法を用いて製作した。ここでλ0=365nmである。
【0030】
製作した反射防止膜の波長300nmから500nmの範囲の反射特性図を図6に示した。365nmで反射率0.3%以下、0.5%反射率波長幅190nm、と広帯域幅で低反射率である良好な反射防止特性である事がわかる。
【0031】
尚、屈折率は波長365nmで測定した値である。
【0032】
【表5】
Figure 0004562157
【0033】
[実施例6]
BK7ガラス基体上に、本実施例の反射防止膜が使用される対象となる露光装置の光源波長365nm(i線)付近の光に反射防止膜効果のある反射防止膜を、表6に示した膜構成及び膜厚でスパッタ法を用いて製作した。ここでλ0=365nmである。製作した反射防止膜の波長300nmから500nmの範囲の反射特性を測定した結果を図7に示す。365nmで反射率0.3%以下、0.5%反射率波長幅180nm、と広帯域幅で低反射率であり、良好な反射防止特性である事がわかった。
【0034】
尚、屈折率は波長365nmで測定した値である。
【0035】
【表6】
Figure 0004562157
【0036】
[実施例7]
SK10(SK10はショット社の商品名)基体上に、本実施例の反射防止膜が使用される対象となる露光装置の光源波長365nm(i線)付近の光に反射防止膜効果のある反射防止膜を、表7に示した膜構成及び膜厚で真空蒸着法を用いて製作した。ここでλ0=365nmである。製作した反射防止膜の波長300nmから500nmの範囲の反射特性図を図8に示した。
【0037】
365nmで反射率0.2%以下、0.5%反射率波長幅150nm、と広帯域幅で低反射率である良好な反射防止特性である事がわかる。
【0038】
尚、屈折率は波長365nmで測定した値である。
【0039】
【表7】
Figure 0004562157
【0040】
[実施例8]
SF6(SF6はショット社の商品名)基体上に、本実施例の反射防止膜が使用される対象となる露光装置の光源波長365nm(i線)付近の光に反射防止膜効果のある反射防止膜を、表8に示した膜構成及び膜厚でスパッタ法を用いて製作した。ここでλ0=365nmである。製作した反射防止膜の波長300nmから500nmの範囲の反射特性を測定した結果を図9に示す。365nmで反射率0.2%以下、0.5%反射率波長幅150nm、と広帯域幅で低反射率であり、良好な反射防止特性である事がわかった。
【0041】
尚、屈折率は波長365nmで測定した値である。
【0042】
【表8】
Figure 0004562157
【0043】
[実施例9]
BK7(BK7はショット社の商品名)ガラス基体上に、本実施例の反射防止膜が使用される対象となる露光装置の光源波長436nm(g線)付近の光に反射防止膜効果のある反射防止膜を、表9に示した膜構成及び膜厚でスパッタ法を用いて製作した。ここでλ0=436nmである。製作した反射防止膜の波長300nmから650nmの範囲の反射特性を測定した結果を図10に示す。436nmで反射率0.4%以下、0.5%反射率波長幅250nm、と広帯域幅で低反射率であり、良好な反射防止特性である事がわかった。
【0044】
尚、屈折率は波長436nmで測定した値である。
【0045】
【表9】
Figure 0004562157
【0046】
[実施例10]
BK7(BK7はショット社の商品名)ガラス基体上に、本実施例の反射防止膜が使用される対象となる露光装置の光源波長436nm(g線)付近の光に反射防止膜効果のある反射防止膜を、表10に示した膜構成及び膜厚でスパッタ法を用いて製作した。ここでλ0=436nmである。製作した反射防止膜の波長300nmから650nmの範囲の反射特性を測定した結果を図11に示す。436nmで反射率0.4%以下、0.5%反射率波長幅250nm、と広帯域幅で低反射率であり、良好な反射防止特性である事がわかった。
【0047】
尚、屈折率は波長436nmで測定した値である。
【0048】
【表10】
Figure 0004562157
【0049】
【発明の効果】
本発明の多層反射防止膜によって、波長365nm付近あるいは436nm付近の波長領域に対して極めて低反射でブロードバンドの有効かつ良好な反射防止特性が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射防止膜の構成例を示す模式図である。
【図2】4層膜構成の石英基体上の反射防止膜の波長300nmから500nmの反射特性図である。
【図3】4層膜構成のBK7基体上の反射防止膜の波長300nmから500nmの反射特性図である。
【図4】4層膜構成のSK10基体上の反射防止膜の波長300nmから500nmの反射特性図である。
【図5】4層膜構成のSF6基体上の反射防止膜の波長300nmから500nmの反射特性図である。
【図6】4層膜構成の石英基体上の反射防止膜の波長300nmから500nmの反射特性図である。
【図7】4層膜構成のBK7基体上の反射防止膜の波長300nmから500nmの反射特性図である。
【図8】4層膜構成のSK10基体上の反射防止膜の波長300nmから500nmの反射特性図である。
【図9】4層膜構成のSF6基体上の反射防止膜の波長300nmから500nmの反射特性図である。
【図10】4層膜構成のBK7基体上の反射防止膜の波長300nmから650nmの反射特性図である。
【図11】4層膜構成のBK7基体上の反射防止膜の波長300nmから650nmの反射特性図である。
【符号の説明】
1 第1層
2 第2層
3 第3層
4 第4層
5 基体

Claims (6)

  1. 基体上に形成される4層構造の多層膜であって、
    基体側から順に数えて第1層および第3層は、波長320nmから450nmの範囲における屈折率が2.10以上2.40以下である高屈折率層であり、
    第2層および第4層は、波長320nmから450nmの範囲における屈折率が1.42以上1.50以下である低屈折率層であり、かつ、
    該第1層から第4層の光学的膜厚をそれぞれd1、d2、d3およびd4と表し、波長320nmから450nmの範囲の使用対象波長をλ0と表したとき、
    0.05λ0≦d1≦0.07λ0
    0.05λ0≦d2≦0.11λ0
    0.50λ0≦d3≦0.56λ0
    0.24λ0≦d4≦0.26λ0
    である反射防止膜。
  2. 基体上に形成される4層構造の多層膜であって、
    基体側から順に数えて第1層および第3層は、波長320nmから450nmの範囲ににおける屈折率が2.10以上2.40以下である高屈折率層であり、
    第2層は、波長320nmから450nmの範囲ににおける屈折率が1.55以上1.65以下である中屈折率層であり、
    第4層は、波長320nmから450nmの範囲ににおける屈折率が1.42以上1.50以下である低屈折率層であり、かつ、
    該第1層から第4層の光学的膜厚をそれぞれd1、d2、d3およびd4と表し、波長320nmから450nmの範囲の使用対象波長をλ0と表したとき、
    0.04λ0≦d1≦0.06λ0
    0.06λ0≦d2≦0.14λ0
    0.48λ0≦d3≦0.55λ0
    0.24λ0≦d4≦0.26λ0
    である反射防止膜。
  3. 高屈折率層の材料がTa25を主成分とし、低屈折率層の材料がSiO2を主成分とする請求項1記載の反射防止膜。
  4. 高屈折率層の材料がTa25を主成分とし、中屈折率層の材料がA123を主成分とし、低屈折率層の材料がSiO2を主成分とする請求項2記載の反射防止膜。
  5. 基体が波長320nmから450nmの範囲で屈折率1.45から1.94の範囲にある請求項1〜4いずれか一項記載の反射防止膜。
  6. 石英または光学ガラスを基体とし、請求項1〜5いずれか一項記載の反射防止膜が該基体の表面上に設けられてなることを特徴とする光学素子。
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