JP4559547B2 - 電池ケース用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池の構成材料を収納する電池ケース用シートに係り、特にシート状電池などのケースに好適に用い得るシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電池の構成材料を収納する電池ケースには、大抵の場合、金属製のケースが用いられていた。しかし、ノート型パソコン、携帯電話など各種の電子機器の発達、普及に伴い、その軽量化、薄型化が進められると共に、これらに使用される電池についても、その重量をできるだけ軽くし、また、使用機器における電池用スペースを少なくできるよう軽量化、薄型化が求められている。
【0003】
このような要求に応えるために、例えば、電池の電極や電解質などに、高分子材料を導入し、シート状などに軽量、薄型化した種々のシート状電池が研究開発されている。しかし、これらのシート状電池に用いる電池ケースに関しては、その軽さおよび薄さと共に、強度、水蒸気その他のガスバリヤー性、耐久性、密封性、電極端子との接着性など、総合的に満足できるものは完成されていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軽くて薄く、且つ、その強度、耐久性のほか、水蒸気その他のガスバリヤー性、密封性、電極端子との接着性など、性能および加工性に優れ、軽量、薄型化された電池のケースに好適に使用できる電池ケース用シートを生産性よく提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、以下の本発明により達成することができる。
即ち、本発明は、内部に電池の構成材料を収納し、電池を形成するために用いられる電池ケース用シートであって、該シートが、下記の構成の積層体で形成され、且つ、該積層体の第1の基材フィルム層、第2の基材フィルム層、第3の基材フィルム層が、それぞれ2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムと略記)または2軸延伸ナイロンフィルム(以下ONフィルムと略記)であることを特徴とする電池ケース用シートからなる。
第1の基材フィルム層/第2の基材フィルム層/金属箔層/熱接着性樹脂層
【0006】
上記構成の電池ケース用シートは、その熱接着性樹脂層同士が内側に接するように重ね合わせ、周囲の端縁部をヒートシールして一端が開口する袋状の電池ケースとし、内部に正負の電極や電解質などの電池の構成材料を収納すると共に、電極端子を内部からケースの外側に延長し、開口部をシートの熱接着性樹脂層同士、および熱接着性樹脂層と電極端子とをヒートシールにより熱接着させて封止し、電池を形成するものである。
従って、シートの熱接着性樹脂層には、それ自体同士が互いに熱接着性を有すると同時に、銅箔やアルミニウム箔などの導電性材料で形成される電極端子にも熱接着性を有する樹脂が用いられる。
【0007】
このような構成を採ることにより、中間層の金属箔層が優れた水蒸気その他のガスバリヤー性を付与し、その両側に第1、第2、第3の基材フィルム層、熱接着性樹脂層のいずれかが積層されているため、金属箔層は保護され、ひび割れやピンホールの発生が防止されるので良好なガスバリヤー性が維持される。
そして、金属箔層の外側、または内側に積層される第1、第2、第3の基材フィルム層は、上記のように金属箔層を保護すると同時に、シートの強度その他の性能、各種耐性を向上させ、また、最内層の熱接着性樹脂層がシートに熱封緘性を付与するものである。
また、金属箔層の両側には、少なくとも第1の基材フィルム層、または、熱接着性樹脂層が積層されており、これらはいずれも非導電性材料であるため、電池ケース用シートは非導電性シートとして作用する。
【0008】
本発明は、前記積層体の熱接着性樹脂層が、酸変性ポリオレフィン系樹脂であって、その酸成分含有量が0.01重量%〜10重量%であることを特徴とする。
【0009】
このような構成をとることにより、熱接着性樹脂層の前記酸変性ポリオレフィン系樹脂が、自己同士の熱接着性を有すると同時に、銅やアルミニウムなどの金属に対しても良好な熱接着性を有するため、一端が開口する袋状の電池ケースをヒートシールにより容易に形成できると共に、その内部に電池の構成材料を収納した後、銅やアルミニウムなどの金属箔などで形成される電極端子が通る開口部も同様にヒートシールにより良好に熱接着させ、密封することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の電池ケース用シートの製造に用いる材料、およびその加工方法など実施の形態について説明する。
本発明の電池ケース用シートは、前述のように中間層に水蒸気その他のガスバリヤー性に優れた金属箔層を用い、その外側、または両側に各種の強度および耐性に優れた第1、第2、第3の基材フィルム層を適宜積層し、更に、最内層に熱接着性樹脂層を積層して構成する。
【0011】
上記の構成において、ガスバリヤー性を付与する中間層の金属箔層にはアルミニウム箔、銅箔などを好適に使用することができる。中でもアルミニウム箔は比較的安価であり、貼り合わせなどの加工性にも優れていることから最も好ましく使用できる。このような金属箔層の厚さは5〜25μmが適当である。
【0012】
そして、上記第1〜第3の基材フィルム層としては、例えばPETフィルム、ONフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルムなどを使用することができるが、耐久性なども含めた各種性能と共に加工性、経済性を加味した場合は、PETフィルム、ONフィルムが特に適している。
ここでPETフィルムとONフィルムの特性を比較すると、特別大きな差ではないが、PETフィルムは吸湿性が低く、剛性、耐擦傷性、耐熱性などに優れ、ONフィルムは吸湿性はやや高いが、柔軟性、突き刺し強度、折り曲げ強度、耐寒性などに優れている。
このような基材フィルムの厚さは、5〜100μmが好ましく、12〜30μmが更に好ましい。
【0013】
最内層の熱接着性樹脂層は、先にも説明したように、自己同士の熱接着性に加えて電極端子の金属に対しても良好な熱接着性を有すると共に、電解液への水分の侵入を極力少なくするため、それ自体、吸湿性、或いは水分吸着性の低いものが好ましく、更に、電解液により膨潤したり、浸食されることがなく安定なものが好ましい。
【0014】
このような熱接着性樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体のほか、ポリエチレンもしくはポリプロピレンに前記共重合体の一種または二種以上をブレンドしたようなポリオレフィン系樹脂なども使用できるが、特に、酸変性ポリオレフィン系樹脂、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体のような酸成分を共重合して変性したポリオレフィン系樹脂、或いは、ポリエチレン、ポリプロピレンや、それらの共重合体であるエチレンとプロピレンその他のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、或いは、これらの三元共重合体などのポリオレフィン系樹脂に、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸、或いは、その無水物をグラフト共重合して変性したポリオレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
上記においてカルボン酸基を有するものは、Na + 、Zn2+ などの金属イオンで架橋したもの(例えば、アイオノマー)も好適に使用できる。
【0015】
尚、上記の中、酸変性ポリオレフィン系樹脂の酸成分含有量は、0.01〜10重量%の範囲が好ましい。酸成分含有量が0.01重量%未満の場合は、金属との熱接着性が不足し、酸成分含有量が10重量%を超える場合は、製膜性が劣るため好ましくない。
このような熱接着性樹脂層の厚さは10〜100μmの範囲が適当である。
【0016】
以上のような各層を積層する方法は、例えば、2液硬化型のポリウレタン系接着剤などを使用する公知のドライラミネーション法で貼り合わせてもよく、また、ポリエチレンその他の熱接着性樹脂を、貼り合わせを行う層間に溶融押し出しして圧着する押し出しラミネーション法(サンドイッチラミネーション法とも呼ばれる)で貼り合わせてもよい。
特に、最内層の熱接着性樹脂層は、予めフィルム状に製膜しておくことにより、他の層と同様、ドライラミネーション法または押し出しラミネーション法で貼り合わせることもできるが、積層面に必要に応じてアンカーコート剤(AC剤、プライマーコートの一種)を塗布した後、直接、熱接着性樹脂を溶融押し出しコートして積層することもできる。
【0017】
【実施例】
以下、実施例の図面に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
但し、本発明はこれらの図面に限定されるものではない。また、図面に付した符号は、異なる図面においても同じ名称の部分には同じ符号を用いた。
【0018】
図1、図2、図3、図4は、それぞれ電池ケース用シートの構成を示す模式断面図である。
図1に示した参考例としての電池ケース用シート10は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、金属箔層2、熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
上記構成において、第1の基材フィルム層1aは、PETフィルムまたはONフィルムであり、金属箔層2には、例えばアルミニウム箔を用い、熱接着性樹脂層3には、酸成分含有量が0.01〜10重量%の酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
このような構成を採ることにより、電池ケース用シート10は、最外層の第1の基材フィルム層1a 、即ち、PETフィルムまたはONフィルムにより、引っ張り強度、突き刺し強度、折り曲げ強度などの機械的強度、および、表面の耐擦傷性、耐水性、耐薬品性や、耐熱性、耐寒性などの耐性が付与され、中間層の金属箔層(例えばアルミニウム箔層)により、水蒸気その他の優れたガスバリヤー性が付与され、更に、最内層の熱接着性樹脂層、例えば酸成分含有量が、0.01〜10重量%の酸変性ポリオレフィン系樹脂層により、先に説明したように、優れた熱封緘性が付与される。
また、バリヤー性に関して、金属箔層に例えば厚さ9μmのアルミニウム箔を用いることにより、水蒸気透過度0.01g/(m2 ・24hrs )、(40℃、90%RH)以下の性能を容易に得られ、更にこれをレベルアップすることも容易である。
【0020】
上記積層構成の代表的な具体例としては、例えば下記のような構成が挙げられる。
▲1▼PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
▲2▼ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
【0021】
図2に示した本発明による電池ケース用シート20は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、第2の基材フィルム層1b、金属箔層2、熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
この構成は、前記図1に示した電池ケース用シート10の構成に対して、中間層の金属箔層2の外側の第1の基材フィルム層1aの性能を向上させるため、第2の基材フィルム層を追加し、第1の基材フィルム層1aと第2の基材フィルム層1bとの2層で構成したものである。
【0022】
この場合も、第1の基材フィルム層1a と第2の基材フィルム層1b には、それぞれPETフィルムまたはONフィルムが用いられる。
只、この場合、同種のフィルムを2枚積層してもよいが、第1の基材フィルム層1a にPETフィルムを用いた場合は、第2の基材フィルム層1b にはONフィルムを用いるというように異種のフィルムを組み合わせて積層することが、両者の弱点を補完でき、長所を兼ね備えさせ得る点でより好ましい。
【0023】
上記積層構成の代表的な具体例としては、例えば下記のような構成が挙げられる。
▲1▼PETフィルム(厚さ12μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
▲2▼ONフィルム(厚さ15μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
【0024】
従って、このような構成を採ることにより、電池ケース用シート20は、基材フィルム層がPETフィルムとONフィルムの両方の長所を兼ね備えたものとなり、各種の機械的強度や耐性などにおいて、総合的に優れた性能の電池ケース用シート20を得られる効果を奏する。
【0025】
図3に示した参考例としての電池ケース用シート30は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、金属箔層2、第2の基材フィルム層1b、熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
この構成は、前記図1に示した電池ケース用シート10の構成に対して、中間層の金属箔層の保護効果を一層高めて、より安定したバリヤー性を得るため、第2の基材フィルム層1bを、中間層の金属箔層2とその内側の熱接着性樹脂層3との間に追加して積層し、金属箔層2の両側が、第1の基材フィルム層1aと、第2の基材フィルム層1bとで挟み込まれるように構成したものである。
この場合も、第1の基材フィルム層1aと第2の基材フィルム層1bには、それぞれPETフィルムまたはONフィルムが用いられる。
【0026】
上記積層構成の代表的な具体例としては、下記のような構成が挙げられる。
▲1▼PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
▲2▼PETフィルム(厚さ12μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
▲3▼ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/PETフィルム(厚さ12μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
▲4▼ONフィルム(厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/ONフィルム(厚さ15μm)/酸変性ポリオレフィン系樹脂層(厚さ40μm)
【0027】
このような構成を採ることにより、前記図1に示した構成の電池ケース用シート10と比較して、第2の基材フィルム層1b が追加積層されたことによる各種の機械的強度および耐性の向上と共に、金属箔層2の両側が、第1の基材フィルム層1a と第2の基材フィルム層1b とで挟み込まれるため、外部からの衝撃や摩擦、その他物理的、化学的作用だけでなく、内部からの同様な作用に対しても金属箔層2の保護性が向上し、一層安定したバリヤー性を得られる効果を奏する。
【0028】
図4に示した参考例としての電池ケース用シート40は、外側から順に、第1の基材フィルム層1a、第2の基材フィルム層1b、金属箔層2、第3の基材フィルム層1c、熱接着性樹脂層3を積層して構成したものである。
この構成は、前記図2に示した電池ケース用シート20の構成に対して、中間層の金属箔層2とその内側の熱接着性樹脂層3との間に、第3の基材フィルム層1cを追加して積層した構成に相当する。
【0029】
従って、図示されるように、金属箔層2の外側には、第1、第2の基材フィルム層1a 、1b が積層され、金属箔層2の内側、即ち、金属箔層2と熱接着性樹脂層3との間には、第3の基材フィルム層1c が積層されている。
【0030】
このような構成を採ることにより、上記第1、第2、第3の基材フィルム層1a 、1b 、1c による各種の機械的強度および耐性の向上と共に、金属箔層2の両側が、第1、第2の基材フィルム層1a 、1b と、第3の基材フィルム層1c とで挟み込まれるため、金属箔層2は一層高度に保護され、更に安定したバリヤー性を得られる効果を奏する。
以上、図1〜図4に示した構成の電池ケース用シート10、20、30、40において、表面に文字、絵柄などの印刷を施す場合には、最外層の第1の基材フィルム層の内面(積層面)に所謂裏刷り方式で予め印刷し、この面に次の層を積層して、電池ケース用シートを完成させることにより、表面の摩擦などで損なわれることのない印刷画像を形成することができる。
【0031】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、本発明によれば、軽量で薄く、柔軟性があり、且つ、各種の機械的強度や耐性のほか、水蒸気その他のガスバリヤー性、熱封緘性などの性能および加工性に優れた電池ケース用シートを生産性よく提供できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例としての電池ケース用シートの構成を示す模式断面図である。
【図2】本発明の電池ケース用シートの実施例の構成を示す模式断面図である。
【図3】参考例としての電池ケース用シートの構成を示す模式断面図である。
【図4】参考例としての電池ケース用シートの構成を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1a 第1の基材フィルム層
1b 第2の基材フィルム層
1c 第3の基材フィルム層
2 金属箔層
3 熱接着性樹脂層
10、20、30、40 電池ケース用シート
Claims (2)
- 内部に電極と該電極に接続された電極端子及び電解質を含む電池の構成材料を収納し、内部から外側に延長された前記電極端子と共に端縁部を熱接着して密封することにより電池を形成するために用いられる電池ケース用シートであって、該シートが、外側から順に、下記の構成の積層体で形成され、且つ、該積層体の第1の基材フィルム層が、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、第2の基材フィルム層が2軸延伸ナイロンフィルムからなることを特徴とする電池ケース用シート。
第1の基材フィルム層/第2の基材フィルム層/金属箔層/熱接着性樹脂層 - 前記積層体の熱接着性樹脂層が、酸変性ポリオレフィン系樹脂であって、その酸成分含有量が0.01重量%〜10重量%であることを特徴とする請求項1記載の電池ケース用シート。
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