JP4557838B2 - 垂直磁気記録媒体及び磁気記録再生装置 - Google Patents

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Description

本発明は、磁気記録技術を用いたハードディスク装置等に用いられる垂直磁気記録媒体、及びそれを用いた磁気記録再生装置に関する。
近年、ハードディスク装置の大容量化が求められている中で、記録密度の向上に伴い記録ビットサイズがますます小さくなっている。大容量のハードディスク媒体を形成するためには、記録ビットサイズの微細化するばかりでなく、記録再生特性の向上、すなわち媒体から発生するノイズを低減させる必要がある。媒体ノイズの主たる原因は、ビット境界部のジグザグ状の磁壁に起因すると考えられている。ビット境界部から発生するノイズを低減する一つの方法として、より明確な記録ビット境界を形成するという方法がある。これにより、記録ビット間の磁気的相互作用が低減され、一つ一つの記録ビットに正確に記録再生が行えるようになる。
磁性粒子(記録ビット)を微細にしつつ、かつ明確な記録ビット境界を形成する一つの方法として、グラニュラ型の記録層を用いた技術が開示されている。この技術では磁気記録層が、CoPtからなる磁性粒子とCr,Co,Si,Al,Ti,Ta,Hf,Zrから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物からなる粒界相とから形成されており、この酸化物からなる粒界相によって、明確な記録ビット境界を形成することが可能となる。またCrまたはCr合金下地層を用いることも開示されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、記録層ではなく下地層にグラニュラを用いた技術も公開されている。この技術では、下地層の粒界相としてAl,BeO,Cr,MgO,SiO,TiO,ThO,ZrO,CeO,Y,SiN,TiN,AlN,ZrN,NbN,CrN,BN,CrMoN,HfN,VN,TaN,CrN等を用いて、下地層の段階から明確な粒子境界を形成し、下地層上の磁性層の結晶粒子を微細化および分離を実現するというものである。また、この技術では、上記グラニュラ型下地層と基体側側面にさらにTiやTa等のシード層を形成する技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、単電子トランジスタや単電子メモリなどの量子電子デバイス分野で、微細で均一な膜を得る技術として、AlとSiで形成された微細で均一なナノ構造体を作製する技術が開示されている。この技術によると、基板上にAlを優先的に成長させるための規則的領域を形成し、その後、Si又は/及びGeの総量が20at%ないし70at%の割合で含まれたAlとSi又は/及びGeとを主成分とした混合膜を形成することにより、直径が1nmないし30nmであり、間隔が30nm以下であるAlを主成分とした複数のシリンダーと、複数のシリンダーを取り囲むSi又は/及びGeを主成分としたマトリックス領域とを有する混合膜を作製することができる(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、上記のようにグラニュラ構造を導入した場合、粒界相形成物質が結晶粒子の内部まで拡散して、通常の金属膜より結晶粒子の配向性が乱れてしまうという問題が生じていた。また、グラニュラ膜の成長開始時(初期層部)において、充分に相分離が行われないために、初期層部の結晶配向性が非常に悪いという問題点もあった。
以上の問題点のために、グラニュラ構造膜は微細で粒界相が明確であるという利点はあるものの、その結晶性の悪さから実際にはほとんど実用できていなかった。また、膜厚を充分厚くすることで結晶配向性の悪さは軽減されるものの、特に垂直二層媒体と呼ばれる軟磁性裏打ち層(ヘッド磁界を還流させる役割を持つ)を持つ垂直磁気記録媒体において、磁気記録ヘッドと軟磁性裏打ち層との間の距離を広げることにつながり、磁気ヘッドの実質的な磁界を弱めてしまう(スペーシングロス)。これは、垂直磁気記録媒体の記録再生特性を大きく悪化させてしまう。よって、膜厚を厚くすることなく、グラニュラ構造膜の結晶配向性を改善する必要があった。
特開2000−322726号公報 特開2003−36525号公報 特開2004−193523号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は結晶粒界相としてSiまたはSiOを主成分として用いたグラニュラ型下地膜に対して、Si合金を主成分とするシード層を、該下地層の非磁性基板側に接触するように形成することで、スペーシングロスを発生させずに、(1)Si/SiOグラニュラ型下地膜の初期層の除去、(2)下地膜の結晶粒子の配向性の大幅な改善、(3)グラニュラ構造膜による磁気記録層の改善(微細化および結晶粒界明確化)、などの効果が可能となる。これにより、配向性が大幅に改善され、結晶粒子微細化および結晶粒界明確化によって、記録再生特性が大幅に向上した垂直磁気記録媒体を得ることができる。
本発明の垂直磁気記録媒体は、非磁性基板と、該非磁性基板上に形成された少なくとも一層の軟磁性層と、該軟磁性層上に形成された、柱状の結晶粒子とそれを取り囲むSiまたはSiOを主成分とする結晶粒界相から構成される下地層と、該軟磁性層と該下地層の間に、該下地層と接触するように形成されたSi合金を主成分とするシード層と、前記下地層上に形成された垂直磁性層とを具備することをを特徴とする。
また、本発明の磁気記録再生装置は、非磁性基板と、該非磁性基板上に形成された少なくとも一層の軟磁性層と、該軟磁性上に形成され、該下地層と接触するように形成されたSi合金を主成分とするシード層と、該シード層上に接触して形成され、柱状の結晶粒子とそれを取り囲むSiまたはSiOから選ばれる少なくとも一種を主成分とする結晶粒界相から構成される下地層と、該下地層上に形成された垂直磁性層を具備することを特徴とする垂直磁気記録媒体、及び再生ヘッドを具備することを特徴とする。
本発明によれば、結晶粒界相としてSiまたはSiOを主成分として用いたグラニュラ型下地膜に対して、Si合金を主成分とするシード層を、該下地層の非磁性基板側に接触するように形成することで、スペーシングロスを発生させずに、(1)Si/SiOグラニュラ型下地膜の初期層の除去、(2)下地膜の結晶粒子の配向性の大幅な改善、(3)グラニュラ構造膜による磁気記録層の改善(微細化および結晶粒界明確化)、などの効果が可能となる。これにより、配向性が大幅に改善され、結晶粒子微細化および結晶粒界明確化によって、記録再生特性が大幅に向上した垂直磁気記録媒体を得られる。
本発明者らは、鋭意研究の結果、非磁性基板上に、少なくとも1層の軟磁性層、シード層、シード層に接触するように形成されたグラニュラ構造を持つ下地層、磁気記録層を形成することにより、微細で結晶性の良好な磁性結晶粒子を有し、明確な結晶粒界相を持ち、転移ノイズが小さくより薄い膜厚で高密度記録が可能な垂直磁気記録媒体を得ることができることを見出し、本発明をなすに至った。
本発明の垂直磁気記録媒体は、非磁性基板上に、軟磁性層、シード層、下地層、及び磁気記録層を順に積層した構成を有する。
シード層は、Si合金を主成分として形成される。Si合金は、Ti,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,W,Ni,Pd,PtおよびCoから選ばれる少なくとも一種の元素との合金であることが好ましい。下地層は、柱状の結晶粒子とこれを取り囲む結晶粒界相から構成され、結晶粒界相はSiまたはSiOを主成分として含有する。ここで主成分とは、物質を構成する成分の中で成分比が一番多い元素または元素群をいう。
本発明では、シード層を用いて、SiまたはSiOを主成分とするグラニュラ型下地膜の初期層を除去、および下地膜の結晶粒子の配向性を改善することができる。また、グラニュラ下地層を用いて、その微細で柱状に成長した結晶粒子とそれを取り囲む結晶粒界相とから、主に垂直磁気記録層の粒径及び粒径分布を決定することができる。
本発明によれば、この下地層の上に垂直磁気記録層を形成することで、配向性が良く記録再生特性が良好で高密度記録が可能な垂直磁気記録媒体が得ることが可能となる。
以下、図面を参照し、本発明を具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る垂直磁気記録媒体の構成を模式的に表す断面図である。
図1において、垂直磁気記録媒体10は、非磁性基板1上に、軟磁性裏打ち層2、シード層3、下地層4、垂直磁気記録層5、および保護膜6が順に積層されている。また、保護層6表面には、例えばディップ法等によりパーフルオロポリエーテル等の潤滑剤を塗布し、図示しない潤滑層を形成することができる。
本発明では、まず、非磁性基板1上に、軟磁性裏打ち層2を形成する。高透磁率な軟磁性裏打ち層2を設けることにより、軟磁性裏打ち層2上に垂直磁気記録層5を有するいわゆる二層膜垂直磁気記録媒体が構成される。
この二層膜垂直磁気記録媒体において、軟磁性裏打ち層2は、垂直磁気記録層5を磁化するための磁気ヘッド34、例えば単磁極ヘッドからの記録磁界を、水平方向に通して、磁気ヘッド34側へ還流させるという、磁気ヘッド34の機能の一部を担っており、磁界の記録層に急峻で充分な垂直磁界を印加させ、記録再生効率を向上させる役目を果たし得る。
軟磁性裏打ち層2として用いる軟磁性材料としては、飽和磁束密度が高く、軟磁気特性が良好なCoZrNb、CoTaZr、FeCoB、FeCoN、FeTaC、FeTaN、FeNi、CoB及びFeAlSiなどが用いられる。
次に、軟磁性裏打ち層2上にシード層3となる膜を製膜する。
このシード層3は、主にグラニュラ下地層4の初期層除去および結晶粒子の結晶配向性を改善する目的で設けられる。このシード層3は、その上に形成される下地層4の結晶配向を制御する機能を有し、さらに、その上に形成される垂直磁気記録層5の垂直配向性を向上し得る。
通常、下地層4の厚さが薄いと、垂直磁気記録層5の垂直配向性が低下する傾向があるけれども、本発明によれば、シード層3を設けることにより、例え下地層4の厚さが比較的薄い場合でも垂直磁気記録媒体の垂直配向性を改善することができる。
シード層3に主成分として用いられる物質は、Si合金が望ましいことが分かった。その推測される改善のメカニズムについて説明する。
一般に、Si/SiOを主成分とするグラニュラ下地膜を用いると、しばしば余剰のSiが発生し、それが膜内を拡散して下地膜(特に初期層部)の結晶配向性が乱れてしまう。ところが、Si/SiO下地膜の下に接触するように、Si合金からなるシード層3を形成すると、下地膜から拡散してきたSiと、Si合金がその界面において反応し、金属シリサイド層が生まれる。これにより、シード層3と下地層4の間に強固な結合が生まれ、直上の下地層4の結晶配向性が改善する。
さらに、この余剰Siが、Si合金シード層3との界面の金属シリサイド層で利用されることで、シード層3と下地層4の強固な結合を生みつつ、下地層4の初期層を除去する役目を果たす。これによって、スペーシングロスを発生させずに、グラニュラ下地膜の配向性を大幅に改善することが可能となる。
シード層3のSi合金に用いられる金属としては、Ti,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,W,Ni,Pd,PtおよびCoから選ばれる少なくとも一種の元素であることが望ましい。
これらの金属は、Siと金属シリサイドを形成しやすく、結果シード層3と下地層4の間に強固な界面を形成しやすいためである。特に、Ta,Zr,PdおよびCoから選ばれる少なくとも一種の元素を用いた場合、下地層4の結晶粒子の配向性を改善する効果が大きい。
また、シード層3の好ましい厚さは、1nmないし10nmである。シード層3の膜厚が、1nmより薄いとシード層3の膜面内方向における組成の均一性が不十分となり、下地層4との界面形成が不十分になる傾向がある。また、膜厚が10nmより厚いと、磁気ヘッド34から軟磁性裏打ち層2までの距離が増大し、スペーシングロスにより、磁気記録媒体の記録再生特性が低下する傾向がある。
シード層3に含まれるSiの含有量は、10ないし70at%であることが望ましい。Si含有量が10at%未満であると、下地層4との界面形成が不十分で、下地層4に初期層が発生して、配向性が劣化しやすくなる。一方、Si含有量が70at%より多いと、逆にシード層3から下地層4へSiの拡散が発生し、下地層4の配向性が劣化してしまう。
シード層3として、軟磁気特性をもつ膜を利用した場合は、スペーシングロスが発生しないという利点がある。また、金属シリサイド層の生成を促進するために、ポストアニール等の熱処理を行っても良い。
次に、下地層4を、シード層3の直上に粒径を制御する目的で形成する。下地層4の結晶粒径を微細に形成することにより、垂直磁気記録層5の結晶粒子も微細にすることができる。
下地層4は2種類以上の物質からなり、柱状の結晶粒子と、それを取り囲む結晶粒界相から構成される。この下地層4は、粒径が微細でかつ粒界相が明確であることが望まれる。よって、下地層4の結晶粒子の粒子径として、1nmないし10nmであることが望ましい。
粒子径が1nm未満であると、垂直磁気記録層5の磁性粒子から発生する信号が少なすぎて、充分な記録再生特性を確保できない。また粒子径が10nmより大きいと、垂直磁気記録層5の磁性粒子が大きすぎるために、高密度化に対応できず、大容量磁気記録媒体として利用できない。
また一方で、下地層4に求められる特性として、比較的薄い膜厚で良い結晶性が実現できることが挙げられる。そのためには、シード層3との結合を強固なものにすることが望ましい。このため、本発明では、結晶粒子としてAl,Mg,Pd,PtおよびRuから選ばれる少なくとも一種を主成分とし、それを取り囲む結晶粒界相としてSiまたはSiOを使用することができる。これらの物質は互いにほとんど固溶しないため、比較的容易に結晶粒子と結晶粒界相に分離させることができる。
また、結晶粒子を主として構成する物質として、AlSi合金またはMgSi合金を用いることができる。これらの物質は、粒界相構成物質であるSiやSiOが粒内に拡散してきても、良い結晶配向性を維持できるという特徴を持っている。このとき、AlSiまたはMgSiにおいて、Siの組成量は、1at%ないし15at%であることが望ましい。
Siが1at%以下だと、Si量が不十分で結晶粒子内に組成ムラが発生する。Siが15at%以上であると、AlやMg内に固溶するSi量が飽和状態となり、粒界相からのSiの拡散に対し結晶構造が乱れてしまう。
また、結晶粒界相を構成するSiまたはSiOは、その含有量が下地層4の全組成に対し、原子百分率または分子百分率で10ないし60%であることが好ましい。
10%より少ないと、粒界面積が減少して粒界による粒子同士の分断が不十分となる傾向がある。一方、粒界構成物質が60%より多量に含まれると、下地層4の結晶配向性が低下する傾向がある。
また、下地層4の膜厚としては、1nmないし15nmであることが好ましい。1nmより薄いと、結晶粒子と結晶粒界との相分離がうまく進まず、下地層4による粒径分離効果が損なわれる傾向がある。また、15nmより厚いと、磁気ヘッド34と軟磁性裏打ち層2との距離が広がり、いわゆるスペーシングロスにより、磁気記録媒体としての記録再生特性が劣化する傾向がある。
得られた下地層4上に、第二下地層を形成してもよい。この第二下地層は、下地層4の粒径および配向性を垂直磁気記録層5まで伝える機能を持っている。また、第二下地層は、下地層4からの不純物の拡散を防ぐ機能ももっている。
第二下地層は、垂直磁気記録層5がエピタキシャル成長できるような結晶面を持つことが重要である。そのような物質として、第二下地層表面に、面心立方格子や六方最密構造などの最密面が出ていることが望ましい。このような利点を有する合金として、例えばPt,Pd,Ru,Rh,Co,Ti,Re,Hfを含む合金やCoCr,CoCrPtおよびCoCrPtBなどを使用することができる。これらの物質は、その上に垂直磁気記録層5がエピタキシャル成長しやすいという利点をもつ。
垂直磁気記録層5の結晶性を向上させるという観点から、第二下地層上に、さらに第三下地層、第四下地層を形成しても良い。その際には、スペーシングロスの影響を考慮し、記録再生特性が改善する範囲で用いることが重要である。
垂直磁気記録層5は、第二下地層の上にエピタキシャル的に成長させることで、これらの下地層4において得られた均一でかつ微細な結晶粒径の構造を垂直磁気記録層5に導入することができる。本発明に使用される垂直磁気記録層5は、CoとPtを主成分として含有することが望ましい。このような垂直磁気記録層5は、比較的結晶配向性がよく、かつ熱揺らぎ耐性に優れているという利点を有する。また、垂直磁気記録層5は、異なった組成の磁気記録層を2層以上積層させることもできる。また、製膜前後に加熱・冷却過程を入れてもよい。
垂直磁気記録層5を構成する物質として、例えばCoPt合金、CoCr合金、CoCrPt合金、CoCrPtB合金、CoCrPtTa合金、CoCrPt−SiO合金、CoCrPtO合金およびCoCrPt−TiO合金等を使用することができる。好ましくは、CoCrPt−SiO合金、CoCrPtO合金、CoCrPt−TiO合金を使用することができる。
これらの合金は、結晶配向性が良好で、磁気異方性が大きく、かつ熱ゆらぎ耐性に優れているという利点を有する。酸素を含んだ磁気記録層は、結晶粒界相が明確になり、より磁気的相互作用を分断することができる。
垂直磁気記録層5上には、少なくとも1層の保護膜6を設けることができる。保護膜6としては、例えばC,ダイアモンドライクカーボン(DLC),SiNx,SiOx,CNx、およびCHxが挙げられる。
軟磁性裏打ち層2、シード層3、下地層4,第二下地層、垂直磁気記録層5、および保護膜6はいずれもスパッタリング法などの磁気記録媒体の分野で通常用いられる様々な製膜技術によって形成することが可能である。例えば、DCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法、真空蒸着法を用いることが出来る。
また、2種類以上の物質を混合させる場合、コンポジットターゲットを用いた単元のスパッタリング法、および、それぞれの物質のターゲットを用いた、多元同時スパッタリング法を用いることもできる。
垂直磁気記録媒体10の表面、例えば磁気記録層5表面、あるいは保護層6表面の上には、例えばディップ法、スピンコート法等によりパーフルオロポリエーテル等の潤滑剤を塗布し、潤滑層を形成することができる。
また、図2は、本発明の一実施形態に係る垂直磁気記録媒体の構成を模式的に表す断面図である。
図2に示す垂直磁気記録媒体20は、軟磁性裏打ち層2と非磁性基板1との間に、例えば面内硬磁性膜及び反強磁性層等のバイアス付与層7が設けられていること以外は、図1と同様の構成を有する。
軟磁性裏打ち層2は磁区を形成しやすく、この磁区からスパイク状のノイズが発生することから、バイアス付与層7の半径方向の一方向に磁界を印加することにより、その上に形成された軟磁性裏打ち層2にバイアス磁界をかけて磁壁の発生を防ぐことができる。バイアス付与層7を積層構造として異方性を細かく分散して大きな磁区を形成しにくくすることもできる。
バイアス付与層7に用いるバイアス付与層材料としては、CoCrPt、CoCrPtB、CoCrPtTa、CoCrPtC、CoCrPtCuB、CoCrRuB、CoCrPtWC、CoCrPtWB、CoCrPtTaNd、CoSm、CoPt、CoPtO、CoCrPtO、CoPt−SiO2、及びCoCrPtO−SiO2が挙げられる。
バイアス付与層7は、いずれも例えばスパッタ法などの製膜方法により形成することができる。
本発明に用いられる非磁性基板1として、アルミノケイ酸ガラス、化学強化ガラス、AlMg基板などのAl系の合金基板や、より高い耐熱温度を有する非磁性基板例えば結晶化ガラス基板、Si基板、C基板、Ti基板、表面が酸化したSi基板、セラミックス,及びプラスチック等を使用することができる。さらに、それら非磁性基板表面にNiP合金などのメッキが施されている場合でも同様の効果が期待される。
図3は、本発明の磁気記録再生装置の一例を一部分解した斜視図を示す。
図3に示されるように、本発明の垂直磁気記録装置30は、上面の開口した矩形箱状の筐体31と、複数のねじにより筐体31にねじ止めされる筐体の上端開口を閉塞する図示しないトップカバーを有している。
筐体31内には、本発明に係る垂直磁気記録媒体32、この垂直磁気記録媒体32を支持及び回転させる駆動手段としてのスピンドルモータ33、磁気記録媒体32に対して磁気信号の記録及び再生を行う磁気ヘッド34、磁気ヘッド34を先端に搭載したサスペンションを有し且つ磁気ヘッド34を垂直磁気記録媒体32に対して移動自在に支持するヘッドアクチュエータ35、ヘッドアクチュエータ35を回転自在に支持する回転軸36、回転軸36を介してヘッドアクチュエータ35を回転及び位置決めするボイスコイルモータ37、ヘッドアンプ回路38が収納されている。
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例)
実施例1
2.5インチ磁気ディスク用のガラス基板からなる非磁性基板を用意した。
この非磁性基板を1×10−5Paの真空度の真空チャンバー内に設置し、基板温度を250℃まで加熱して、ガス圧0.6PaのAr雰囲気中でDCマグネトロンスパッタリングを行った。
まず、非磁性基板をターゲットに対向するように配置し、DC500Wをターゲットに放電し、裏打ち非磁性層として、Cr層を厚さ40nm形成した。その上に厚さ25nmになるようにバイアス付与層として、CoCrPt強磁性層を製膜した。
得られたCoCrPt強磁性層上に、厚さ150nmのCoZrNb軟磁性裏打ち層を形成した。
その後、室温まで冷却し、CoZrNb軟磁性裏打ち層上に、シード層としてTa−50at%Siターゲットを用いて、500Wで放電し、厚さ10nmになるように製膜してTaSiシード層を形成した。
次に、下地層として、Ru−10mol%SiOコンポジットターゲットを用いて、DC500Wで放電し、シード層上に、膜中においてRu−10mol%SiOの組成比でかつ厚さ10nmになるように製膜してRu−SiO層を形成した。
ここで、膜中組成は、透過型分析電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分光装置(TEM−EDX)や、エックス線光電子分光法を用いた深さ方向組成分析(XPS)、誘導結合プラズマ発光分析(ICP−AES)、質量分析(ICP−MS)などの分析法で調べることが出来る。
次に、下地層上に、(Co−16at%Pt−10at%Cr)−8mol%SiOのコンポジットターゲットを用意し、Ru−SiO下地層上に、CoPtCr−SiO垂直磁気記録層を15nm製膜した。
最後に、C保護膜を7nm製膜した。
このように真空容器内で連続して製膜した基板を大気中に取り出した後、ディップ法によりパーフルオロポリエーテル系潤滑膜を1.5nmの厚さに形成し、直磁気記録媒体を得た。
図4に、得られた垂直磁気記録媒体の構成を表す概略断面図を示す。
図示するように、この垂直磁気記録媒体40は、非磁性基板1上に、Cr非磁性膜18、CoCrPt強磁性層17、CoZrNb軟磁性裏打ち層12、TaSiシード層13、Ru−SiO下地層14、CoPtCr−SiO垂直磁気記録層15、C保護膜16、および図示しない潤滑層を順次積層した構造を有する。
まず得られた媒体の下地層14および垂直磁気記録層15に対して、X線回折測定を行ったところ、Ru(00.2)ピークおよびCoCrPt(00.2)ピークを観測した。
これらのピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅はそれぞれ3.5°(Ru)、4.5°(CoCrPt)であった。
これにより、垂直磁気記録層15が良好な結晶性を有することがわかった。
得られた垂直磁気記録媒体の垂直磁気記録層に対して透過型分析電子顕微鏡(TEM)測定を行い、本実施形態における媒体の下地層14および垂直磁気記録層15の結晶粒子の粒径分布を調べた。
その結果、下地層14および垂直磁気記録層15は、それぞれおよそ4ないし6nmの平均粒径を有する結晶粒子から形成されていることが分かった。また、結晶粒子間には1ないし2nm程度の厚さを持った結晶粒界相を観測することができた。
得られた垂直磁気記録媒体に対し、電磁石を備えた着磁装置を用いて、円板上基板の半径方向外向きに1185A/m(15000Oe)の磁界を印加し、バイアス付与層の強磁性層の面内半径方向への磁化を行った。
着磁された垂直磁気記録媒体について、米国GUZIK社製リードライトアナライザ1632及びスピンスタンドS1701MPを用いて、記録再生特性の評価を行った。
記録再生ヘッドは、記録部に単磁極、再生素子に磁気抵抗効果を利用した、記録トラック幅0.25μm、再生トラック幅0.15μmのヘッドを用いた。また、測定はディスクの回転数は4200rpmで、中心より半径位置22.2mmと一定の位置で行った。
その結果、媒体のSNRm(再生信号出力S:線記録密度119kFCIにおける出力、Nm:716kFCIにおけるrms値(root mean square))が27.2dBという良好な媒体を得ることができた。
比較例1
比較の垂直磁気記録媒体として、Taターゲットを用いて、TaSiシード層の代わりにTaシード層を形成した以外は、実施例1の垂直磁気記録媒体と同様にして垂直磁気記録媒体を得た。
得られた垂直磁気記録媒体は、TaSiシード層の代わりにTaシード層を形成した以外は、図4示す垂直磁気記録媒体と同様の層構成を有する。
下地層および垂直磁気記録層に対してX線回折測定を行ったところ、Ru(00.2)ピークおよびCoCrPt(00.2)ピークを観測した。これらのピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅はそれぞれ6.5°(Ru)、7.5°(CoCrPt)であった。
次に、下地層および垂直磁気記録層に対してTEM測定を行い、それぞれの結晶粒子の粒径分布を調べた。その結果、下地層および垂直磁気記録層において、10ないし20nmの粒径分布を持つことがわかった。
実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが18.3dBであった。よって、Taシード層を形成した比較例1の従来の媒体よりも、TaSiシード層を用いた実施例1の本実施形態の媒体の方が、下地層及び垂直磁気記録層の結晶粒子が微細でかつ結晶性が良好であった。
実施例2
本実施形態の媒体の下地層として、Pd−10mol%SiOターゲットを用意した。Ru−10mol%SiOターゲットの代わりに、上記Pd−10mol%SiOターゲットを使用する以外は、実施例1と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体は、下地層が異なること以外は、図4に示す垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。
次に、垂直磁気記録層に対してX線回折測定を行ったところ、CoCrPt(00.2)ピークを観測した。このピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅は4.8°(CoCrPt)であった。
また、垂直磁気記録層に対してTEM測定を行い、それぞれの結晶粒子の粒径分布を調べた。その結果、垂直磁気記録層において、6ないし8nmの粒径分布を持つことがわかった。
また、実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが26.4dBであり、比較例1の従来の媒体に比べて、良好な特性を持つことが分かった。
実施例3
本実施形態の媒体の下地層として、Pd−10mol%SiOターゲットを用意し、さらに、第二下地層として、Ruターゲットを用意した。
Ru−10mol%SiOターゲットの代わりに,上記Pd−10mol%SiOターゲット,およびRuターゲットを使用する以外は,実施例1と同様にして,垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体は、下地層を2層形成した以外は、図4に示す垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。
図5に、得られた垂直磁気記録媒体の構成を表す概略断面図を示す。
図示するように、この垂直磁気記録媒体50は、非磁性基板1上に、Cr非磁性膜18、CoCrPt強磁性層17、CoZrNb軟磁性裏打ち層12、TaSiシード層13、Pd−SiO下地層14、Ru第二下地層19、CoPtCr−SiO垂直磁気記録層15、C保護膜16、および図示しない潤滑層を順次積層した構造を有する。
次に、第二下地層および垂直磁気記録層に対してX線回折測定を行ったところ、Ru(00.2)ピークおよびCoCrPt(00.2)ピークを観測した。 これらのピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅はそれぞれ3.3°(Ru)、4.3°(CoCrPt)であった。
また、第二下地層および垂直磁気記録層に対してTEM測定を行い、それぞれの結晶粒子の粒径分布を調べた。その結果、下地層および垂直磁気記録層において、4ないし6nmの粒径分布を持つことがわかった。
また、実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが27.4dBであり、比較例1の従来の媒体に比べて、良好な特性を持つことが分かった。
実施例4
本実施形態の媒体の下地層として、Al−45at%Siターゲットを用意し、さらに、第二下地層として、Pdターゲットを用意した。
Pd−10mol%SiOターゲットの代わりにAl−45at%Siターゲット、およびRuターゲットの代わりにPdターゲットを使用する以外は、上述の実施例3と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体は、下地層として、Pd−SiO下地層の代わりにAl−Si下地層を、Ru第二下地層の代わりにPd第二下地層を形成した以外は、図5に示す垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。
次に、垂直磁気記録層に対してX線回折測定を行ったところ、CoCrPt(00.2)ピークを観測した。このピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅は4.6°(CoCrPt)であった。
また、第二下地層および垂直磁気記録層に対してTEM測定を行い、それぞれの結晶粒子の粒径分布を調べた。その結果、下地層および垂直磁気記録層において、5ないし8nmの粒径分布を持つことがわかった。
また、実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが27.5dBであり、比較例1の従来の媒体に比べて、良好な特性を持つことが分かった。
実施例5
本実施形態の媒体の下地層として、Mg−45at%Siターゲットを用意し、さらに、第二下地層として、Pdターゲットを用意した。
Pd−10mol%SiOターゲットの代わりにMg−45at%Siターゲット、およびRuターゲットの代わりにPdターゲットを使用する以外は、上述の実施例3と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体は、下地層として、Pd−SiO下地層の代わりにMg−Si下地層を、Ru第二下地層の代わりにPd第二下地層を形成した以外は、図5に示す垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。
次に、垂直磁気記録層に対してX線回折測定を行ったところ、CoCrPt(00.2)ピークを観測した。このピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅は4.7°(CoCrPt)であった。
また、第二下地層および垂直磁気記録層に対してTEM測定を行い、それぞれの結晶粒子の粒径分布を調べた。その結果、下地層および垂直磁気記録層において、5ないし7nmの粒径分布を持つことがわかった。
また、実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが27.1dBであり、比較例1の従来の媒体に比べて、良好な特性を持つことが分かった。
実施例6
本実施形態の媒体の下地層としてAl−45at%Siターゲットを用意し、第二下地層としてPdターゲットを用意し、さらに、第三下地層として、Ruターゲットを用意した。
第二下地層と垂直磁性層の間に、Ru第三下地層を形成する以外は、上述の実施例4と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体は、第二下地層と垂直磁性層の間に、Ru第三下地層を形成した以外は、図5に示す垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。
図6に、得られた垂直磁気記録媒体の構成を表す概略断面図を示す。
図示するように、この垂直磁気記録媒体60は、非磁性基板1上に、Cr非磁性膜18、CoCrPt強磁性層17、CoZrNb軟磁性裏打ち層12、TaSiシード層13、Al−Si下地層14、Pd第二下地層19、Ru第三下地層20、CoPtCr−SiO垂直磁気記録層15、C保護膜16、および図示しない潤滑層を順次積層した構造を有する。
次に、第三下地層および垂直磁気記録層に対してX線回折測定を行ったところ、Ru(00.2)ピークおよびCoCrPt(00.2)ピークを観測した。
これらのピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅はそれぞれ3.0°(Ru)、4.0°(CoCrPt)であった。
また、第三下地層および垂直磁気記録層に対してTEM測定を行い、それぞれの結晶粒子の粒径分布を調べた。その結果、下地層および垂直磁気記録層において、4ないし6nmの粒径分布を持つことがわかった。
また、実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが27.9dBであり、比較例1の従来の媒体に比べて、良好な特性を持つことが分かった。
実施例7
本実施形態の媒体のシード層としてTi−50at%Siターゲットを用意した。シード層として、TaSiシード層の代わりに、TiSiシード層を形成する以外は、上述の実施例1と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体は、シード層が異なること以外は、図4に示す垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。
次に、下地層および垂直磁気記録層に対してX線回折測定を行ったところ、Ru(00.2)ピークおよびCoCrPt(00.2)ピークを観測した。これらのピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅は3.7°(Ru)、4.7°(CoCrPt)であった。
また、垂直磁気記録層に対してTEM測定を行い、それぞれの結晶粒子の粒径分布を調べた。その結果、垂直磁気記録層において、7ないし9nmの粒径分布を持つことがわかった。
また、実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが24.8dBであり、比較例1の従来の媒体に比べて、良好な特性を持つことが分かった。
同様にして、シード層として、ZrSi,HfSi,NbSi,MoSi,WSi,NiSi,PdSi,PtSiおよびCoSiのターゲットを各々用意し、TiSiターゲットの代わりに、これら種々のターゲットを各々使用する以外は実施例1と同様にして、種々の垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体に対して、実施例1と同様にして、TEMによる粒径観察、およびスピンスタンドを用いた記録再生特性評価を行った。その結果を下記表1に示す。
Figure 0004557838
上記表1から、シード層を構成する物質としてZrSi,HfSi,NbSi,MoSi,WSi,NiSi,PdSi,PtSi,CoSi、TiSiおよびTaSiより選ばれる少なくとも一種を用いると、得られた磁気記録層の平均粒径は4ないし9nmであり、そのSNRmは、21.2dBないし27.3dBという良好な値であることわかった。これらの結果は、比較例1の媒体よりも、十分に良好であった。
実施例8
本実施形態の媒体のシード層として、Taシード層、下地層として、Al−45at%Siターゲットを用意し、さらに第二下地層として、Pdターゲットを用意した。
Ta−50at%Siターゲットの代わりにTaターゲット、Pd−10mol%SiOターゲットの代わりにAl−45at%SiターゲットおよびRuターゲットの代わりにPdターゲットを用い、かつ、Taシード層製膜前に、加熱処理として媒体を250℃に加熱した以外は、上述の実施例3と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体は、シード層として、Ta−Siシード層の代わりにTaシード層、下地層として、Pd−SiO下地層の代わりにAl−Si下地層、Ru第二下地層の代わりにPd第二下地層を形成した以外は、図5に示す垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。
得られた媒体の垂直磁気記録層に対してX線回折測定を行ったところ、CoCrPt(00.2)ピークを観測した。このピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅は4.0°(CoCrPt)であった。
また、実施例1と同様に、TEM測定および記録再生特性評価を行った。すると、垂直磁気記録層において、6ないし8nmの粒径分布を持つことがわかった。
また、実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが27.2dBであった。
実施例9
本実施形態の媒体のシード層として、Ta−50at%Siターゲットを用意し、シード層の膜厚を様々に変化させた以外は実施例1と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体は、シード層の膜厚が異なること以外は、図4に示す垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。図7に、Ta−50at%Siシード層膜厚とSNRmおよび垂直磁気記録層の平均粒径との関係を表すグラフ図を示す。
図7において、曲線101は、シード層膜厚が0〜30nmの時のSNRmのグラフを、曲線111は、シード層膜厚が0〜30nmの時の垂直磁気記録層の平均粒径のグラフを各々表す。
グラフから分かるように、シード層の膜厚を1〜10nmの範囲で用いた方が、垂直磁気記録層の平均粒径が微細となり、また良好なSNRmを示すことがわかった。
実施例10
本実施形態の媒体のシード層として、様々な組成比を持つ、Ta−x at%Si(x=5ないし90)ターゲットを用意した。
シード層として、Ta−50at%Siシード層の代わりに、様々な組成比を持つTa−x at%Siシード層を形成する以外は、上述の実施例1と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体は、シード層が異なること以外は、図4に示す垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。
本実施形態の媒体の下地層および垂直磁気記録層に対して、TEM測定および記録再生特性の評価を行った。その結果をグラフに示す。
図8に、Ta−x at%Siシード層におけるSi含有量とSNRmおよび垂直磁気記録層の平均粒径との関係を表すグラフ図を示す。
図8において曲線121は、シード層におけるSi含有量が5at%ないし90at%の時のSNRmのグラフを、曲線131は、シード層におけるSi含有量が5〜90at%の時の垂直磁気記録層の平均粒径のグラフを各々表す。
グラフから分かるように、シード層におけるSi含有量が10at%ないし79at%で用いた方が、垂直磁気記録層の平均粒径が微細となり、また良好なSNRmを示すことがわかった。
実施例11
本実施形態の媒体の下地層として、RuターゲットおよびSiOターゲットを用意した。
下地層として、Ru−10mol%SiOコンポジットターゲットの代わりに、上述の2種類のターゲットを用いてコスパッタリングを行い、様々な組成比を持つRu−x mol%SiO(x=5ないし80)下地層を形成する以外は、上述の実施例1と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体は、下地層が異なること以外は、図4に示す垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。
本実施形態の媒体の下地層および垂直磁気記録層に対して、TEM測定および記録再生特性の評価を行った。その結果を図9のグラフに示す。
図9に、Ru−x mol%SiO下地層におけるSi含有量とSNRmおよび垂直磁気記録層の平均粒径との関係を表すグラフ図を示す。
図9において曲線141は、下地層におけるSiO含有量が5ないし80mol%の時のSNRmのグラフを、曲線151は、下地層におけるSiO含有量が5ないし80mol%の時の垂直磁気記録層の平均粒径のグラフを各々表す。
グラフから分かるように、下地層におけるSiO含有量が10ないし60Mol%で用いた方が、垂直磁気記録層の平均粒径が微細となり、また良好なSNRmを示すことがわかった。
実施例12
本実施形態の媒体の下地層として、Al−10at%SiターゲットおよびSiOターゲットを用意した。
下地層として、Ru−10mol%SiO下地層の代わりに、上述の2種類のターゲットを用いてコスパッタリングを行い、様々な組成比を持つ(Al−10at%Si)−x mol%SiO(x=5ないし80)下地層を形成する以外は、上述の実施例1と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体は、下地層が異なること以外は、図4に示す垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。
本実施形態の媒体の下地層および垂直磁気記録層に対して、TEM測定および記録再生特性の評価を行った。その結果を図10のグラフに示す。
図10に、(Al−10at%Si)−x mol%SiO下地層におけるSi含有量とSNRmおよび垂直磁気記録層の平均粒径との関係を表すグラフ図を示す。
図10において曲線161は、下地層におけるSiO含有量が5ないし80mol%の時のSNRmのグラフを、曲線171は、下地層におけるSiO含有量が5ないし80mol%の時の垂直磁気記録層の平均粒径のグラフを各々表す。
グラフから分かるように、下地層におけるSiO含有量が10ないし60mol%で用いた方が、垂直磁気記録層の平均粒径が微細となり、また良好なSNRmを示すことがわかった。
また、下地層としてMg−10at%SiターゲットおよびSiOターゲットを使用してコスパッタリングを行い、(Mg−10at%Si)−SiO下地層を用いても同様の改善効果が確認された。
実施例13
本実施形態の下地層として、Ru−10mol%SiOターゲットを用意し、下地層の膜厚を様々に変化させた以外は実施例1と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体は、下地層の膜厚が異なること以外は、図4に示す垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。
図11に、Ru−10mol%SiO下地層膜厚とSNRmおよび垂直磁気記録層の平均粒径との関係を表すグラフ図を示す。
図11において曲線181は、下地層膜厚が0〜30nmの時のSNRmのグラフを、曲線191は、下地層膜厚が0〜30nmの時の垂直磁気記録層の平均粒径のグラフを各々表す。
グラフから分かるように、下地層の膜厚を1〜15nmの範囲で用いた方が、垂直磁気記録層の平均粒径が微細となり、また良好なSNRmを示すことがわかった。
本発明の一実施形態に係る垂直磁気記録媒体の構成を模式的に表す断面図 本発明の一実施形態に係る垂直磁気記録媒体の構成を模式的に表す断面図 本発明の磁気記録再生装置の一例を一部分解した斜視図 本発明の一実施形態に係る垂直磁気記録媒体の構成を模式的に表す断面図 本発明の一実施形態に係る垂直磁気記録媒体の構成を模式的に表す断面図 本発明の一実施形態に係る垂直磁気記録媒体の構成を模式的に表す断面図 Ta−50at%Siシード層膜厚とSNRmおよび垂直磁気記録層の平均粒径との関係を表すグラフ図 Ta−x at%Siシード層におけるSi含有量とSNRmおよび垂直磁気記録層の平均粒径との関係を表すグラフ図 Ru−x mol%SiO下地層におけるSi含有量とSNRmおよび垂直磁気記録層の平均粒径との関係を表すグラフ図 (Al−10at%Si)−x mol%SiO下地層におけるSi含有量とSNRmおよび垂直磁気記録層の平均粒径との関係を表すグラフ図 Ru−10mol%SiO下地層膜厚とSNRmおよび垂直磁気記録層の平均粒径との関係を表すグラフ図
符号の説明
1,11…非磁性基板
2,12…軟磁性裏打ち層
3,13…シード層
4,14…下地層
5,15…垂直磁気記録層
6,16…保護膜
10,20,40,50,60,32…垂直磁気記録媒体
7…バイアス付与層
17…強磁性層
18…非磁性層
19…第二下地層
20…第三下地層
30…磁気記録再生装置
31…筐体
33…スピンドルモータ
34…磁気ヘッド
35…ヘッドアクチュエータ
36…回転軸
37…ボイスコイルモータ
38…ヘッドアンプ回路

Claims (14)

  1. 非磁性基板と,
    該非磁性基板上に形成された少なくとも一層の軟磁性層と,
    該軟磁性層上に形成された,柱状の結晶粒子とそれを取り囲むSiまたはSiOを主成分とする結晶粒界相から構成される下地層と,
    該軟磁性層と該下地層の間に,該下地層と接触するように形成され,かつTi,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,W,Ni,Pd,PtおよびCoから選ばれる少なくとも一種との金属シリサイドを主成分とするシード層と,
    前記下地層上に形成された垂直磁性層と
    を具備することを特徴とする垂直磁気記録媒体。
  2. 前記金属シリサイドが,Ta,Zr,PdおよびCoから選ばれる少なくとも一種との金属シリサイドであることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体。
  3. 前記シード層におけるSi含有量が,前記シード層を形成する全物質に対して,原子百分率において10ないし70%であることを特徴とする請求項1または2に記載の垂直磁気記録媒体。
  4. 前記シード層において,その膜厚が1nmないし10nmであることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体。
  5. 前記シード層が,非磁性であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体。
  6. 前記下地層の結晶粒子の粒子径が,1nmないし10nmであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体。
  7. 前記下地層の結晶粒子が,非磁性でかつAl,Mg,Pd,PtおよびRuから選ばれる少なくとも一種を主成分とすることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体。
  8. 前記下地層の結晶粒子が,AlSi合金またはMgSi合金を主成分とすることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体。
  9. 前記下地層の結晶粒子を構成するAlSi合金またはMgSi合金におけるSiの占める割合が原子百分率で1ないし15%であることを特徴とする請求項に記載の垂直磁気記録媒体。
  10. 前記下地層において,結晶粒界相を主として形成するSiまたはSiOの組成比が,前記下地層を構成する全物質に対して原子百分率または分子百分率で10ないし60%であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体。
  11. 前記下地層の膜厚が1nmないし15nmであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体。
  12. 前記下地層と前記垂直磁性層との間に,面心立方構造または六方稠密構造からなる第二下地層を有することを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体。
  13. 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の垂直磁気記録媒体と,前記垂直磁気記録媒体を支持および回転駆動する機構と,前記垂直磁気記録媒体に対して情報の記録を行うための素子及び記録された情報の再生を行うための素子を有する磁気ヘッドと,前記磁気ヘッドを前記垂直磁気記録媒体に対して移動自在に支持したキャリッジアッセンブリとを具備することを特徴とする磁気記録再生装置。
  14. 前記磁気ヘッドの記録ヘッドとして,単磁極記録ヘッドを有することを特徴とする請求項13に記載の磁気記録再生装置。
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