本発明の垂直磁気記録媒体は、非磁性基板、
非磁性基板上に形成された一層または二層以上の軟磁性層、
軟磁性層上に形成された第一の非磁性下地層、
第一の非磁性下地層上に形成された第二の非磁性下地層、及び
第二の非磁性下地層上に形成された垂直磁気記録層を具備する。
第一の非磁性下地層は、微細結晶構造を有し、PdまたはPd合金である。
第二の非磁性下地層は、RuまたはRu合金である。
本発明に用いられる微細結晶構造とは、多結晶構造と非晶質の中間の構造であって、多結晶構造がさらに細かく分裂し、例えば1〜3nm程度の結晶質の微粒子が集まったものを指す。
このような微細結晶構造を有する第一の非磁性下地層を形成すると、その上に形成され、結晶構造を有する、第二の非磁性下地層及び垂直磁気記録層は、その結晶粒子が第一の非磁性下地層の粒径に制限を受けることなく、より微細に形成され得る。また、第一の非磁性下地層が、非晶質ではなく微結晶状態に保たれていることで、第二の非磁性下地層は、その結晶配向性の改善が可能となり、さらに、その上に形成する垂直磁気記録層の配向性の改善も可能となる。
このように、本発明によれば、微結晶構造を有する第一の非磁性下地層を用いることにより、垂直磁気記録層の配向性改善および粒径微細化が可能となり、記録再生特性が大幅に向上され、高密度記録が可能な垂直磁気記録媒体を得ることができる。
以下、図面を参照し、本発明をより詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る垂直磁気記録媒体の構成を模式的に表す断面図を示す。
図1において、垂直磁気記録媒体10は、非磁性基板1上に、軟磁性裏打ち層2、第一の非磁性下地層3、第二の非磁性下地層4、垂直磁気記録層5、および保護膜6が順に積層されている。また、保護層6表面には、例えばディップ法等によりパーフルオロポリエーテル等の潤滑剤を塗布し、図示しない潤滑層を形成することができる。
本発明では、まず、非磁性基板上に、軟磁性裏打ち層を形成する。高透磁率な軟磁性裏打ち層を設けることにより、軟磁性裏打ち層上に垂直磁気記録層を有するいわゆる二層膜垂直磁気記録媒体が構成される。この二層膜垂直磁気記録媒体において、軟磁性裏打ち層は、垂直磁気記録層を磁化するための磁気ヘッド、例えば単磁極ヘッドからの記録磁界を、水平方向に通して、磁気ヘッド側へ還流させるという、磁気ヘッドの機能の一部を担っており、磁界の記録層に急峻で充分な垂直磁界を印加させ、記録再生効率を向上させる役目を果たし得る。
軟磁性裏打ち層として用いる軟磁性材料としては、飽和磁束密度が高く、軟磁気特性が良好なCoZrNb、CoTaZr、FeCoB、FeCoN、FeTaC、FeTaN、FeNi、CoB及びFeAlSiなどが用いられる。
本発明に用いられる軟磁性裏打ち層は、単層、または二層以上の積層体である。積層体の場合、各軟磁性層間に任意の非磁性中間層を用いることができる。
次に、軟磁性裏打ち層上に第一の非磁性下地層となる膜を製膜する。この第一の非磁性下地層は、その上に形成される第二の非磁性下地層の結晶粒子の微細化および結晶粒子の結晶配向性を改善する目的で設けられる。第一の非磁性下地層は、PdまたはPd合金から形成される。Pd合金を用いる場合、B,Hf,Si,Ti,Zr,Ge,Al,Cr,MgおよびVから選ばれる少なくとも一種の元素との合金であることが好ましい。
第一の非磁性下地層は、より好ましくは、PdとSiの合金からなることが好ましい。
なお、ここでは、PdとSiの混合材料もPd合金の1つに含むものとする。
第一の非磁性下地層は、微細結晶構造をとることが必要である。
一口に微細結晶構造といっても、多結晶構造と非晶質の間の幅広い範囲の構造を示しているが、本願で用いられる微結晶構造とは、多結晶構造がさらに細かく分裂したような、1〜3nm程度の結晶質の微粒子が集まったものを指しており、微細な粒子の周りに非晶質が偏析しているようないわゆるグラニュラ型の構造(偏析型グラニュラ微結晶)は含んでいない。また、本願の微細結晶構造をX線回折測定で測定すると、明確なピーク構造として検出されない一方、断面TEM構造などでは格子縞がはっきり観測できている。電子線回折等で、非晶質のリング状とは異なり、多数のスポットとして観測できる場合もある。
本発明では、結晶粒子構造を持たない微結晶構造のPdまたはPd合金からなる第一の非磁性下地層を用いて、第一の非磁性下地層の粒径による制限を除去して、第二の非磁性下地層、垂直磁気記録層の微細化を可能とする。同様の効果は粒子構造を持たない非晶質の物質を用いても、第一の非磁性下地層の粒径による制限を除去することはできるが、この場合は非晶質構造のため第二の非磁性下地層の配向性の改善を両立させることができない。また、同じ微結晶でも偏析型グラニュラ微結晶の場合は、グラニュラ微結晶の粒径が小さいため微細化が可能となるが、第一の非磁性下地層の粒径による制限が除去できているわけではなく、本願の技術とは異なっている。また、この場合、配向性の改善の程度は、面心立方構造を有するPd多結晶の下地層を用いた場合に劣らないものとなる。一方、本発明のように、微結晶構造の第一の非磁性下地層を用いると、Pd多結晶構造の下地層を用いたより、さらに第二の非磁性下地層の配向性を改善することができる。Pd多結晶構造の第一の非磁性下地層の上に、RuまたはRu合金の第二の非磁性下地層を用いた場合、第一の非磁性下地層から第二の非磁性下地層にエピタキシャル成長する際に、2層の下地層間に格子定数の違いが存在するために、格子を整合させるための格子緩和層(初期層)が発生してしまう。この格子緩和層は、特にRu,Ru合金からなる第二の非磁性下地層に発生しやすい。一方、本発明に用いられる微細結晶構造の第一の非磁性下地層の場合、微細結晶の体積が小さいために、応力の小さくなった微細結晶内に格子ひずみが押し込められ、上記格子緩和層は第一の非磁性下地層側に形成される。よって、Pd多結晶構造を用いた場合より、さらに第二の非磁性下地層の配向性を改善することが可能となる。このような効果はグラニュラ型微結晶では得ることができない。
このような微結晶のPd膜、Pd合金膜を得るには、例えばPd膜の一部をシリサイド化させてやればよい。これは、SiまたはSi化合物からなる非磁性シード層に接するようにPd、Pd合金膜を製膜することで可能となる。このように製膜することで、Pd、Pd合金層の基板側がシリサイド化され、記録層側のPd、Pd合金層がその粒径を保てなくなり微細結晶化する。
また、この第一の非磁性下地層としてPd−Si合金を用いる場合には、第1のPd−Si層と、第1のPd−Si合金層とはPdとSiの組成比が異なる第2のPd−Si層の積層を用いることができる。必要に応じて、さらにPd−Si層を積層することもできる。この場合、軟磁性層側の第1のPd−Si層は、Si供給層として働くために、Si含有量は、垂直磁気記録層側に形成された第2のPd−Si層のSi含有量より多いことが好ましい。垂直磁気記録層側のPd−Si膜のSi組成量が多くなると、Pd−Si膜が非晶質や偏析型グラニュラ微結晶となってしまい、結晶構造改善効果を得ることが難しくなる傾向がある。
また、垂直磁気記録層側の第2のPd−Si層の望ましいSi組成量は、10at%未満、より好ましくは、3ないし10at%である。10at%より多いと、Pd−Si膜が非晶質、または偏析型グラニュラ微結晶になりやすく、結晶配向性改善効果が得にくい。また、3at%以上であると、Pd−Si膜の微結晶の効果が得やすい。
一方、軟磁性層側の第1のPd−Si層のSi含有量は、好ましくは10at%以上、より好ましくは、10ないし100at%である。10at%未満であるとSi供給量が少なくなるため、垂直磁気記録層側のPd−Si膜で微結晶を得ることが難しくなる。また、シリサイド化反応を利用すると、通常に製膜した場合より膜が平坦化でき、より配向性が改善できるという利点がある。これは、シリサイド化反応に特有のものである。ここで、Pd−Si層として組成比に変化のない一様な単層のPd−Si層を作製してしまうと、Pd粒子の周りにSiが偏析したグラニュラ型の微結晶構造や、Pd−Si膜の本来の構造である斜方晶構造、または結晶構造がうまく形成されずに非晶質になる傾向がある。また、シリサイド化反応特有の平坦化効果も得ることができず、よって、第二の非磁性下地層の配向性を改善することが困難となる傾向がある。一方、本発明のように、異なる組成比を持つPd−Si層を積層することで、微結晶のPd−Si膜を得ることができる。また、シリサイド化を促進させるためには、PdやSiを含む膜を製膜する際に、好ましくは0.5Pa以下、より好ましくは0.3ないし0.05Pa程度の低圧力で製膜してやればよい。これにより、不純物によるSiの酸化を防ぎ、より活性なSiを得られ、シリサイド反応が促進される。これを一般に用いられる0.7Pa程度で製膜すると、Siの一部が酸化されることにより、シリサイド反応が抑制され、Pd膜やPd合金膜が微結晶化されないか、偏析型グラニュラPd合金膜が形成される傾向がある。なお、ここで記載された圧力は、製膜に利用される真空チャンバー全体を計測したものであるが、実質的には基板付近の真空度を指している。すなわち、一般に0.5Pa以下の低圧力下ではスパッタリングが起こりにくくなるが、それを防ぐために、差動排気法を用いて、チャンバーやターゲット付近の圧力は高く保ったまま、基板付近の圧力のみを下げた場合には、上述の望ましい真空度は基板付近の圧力のことを指している。
上述のような作用はPdやPd合金に独特のものであり、例えば、同じ白金族のPt等の他の物質を用いても結晶配向性の改善効果はほとんど見られない。本発明によれば、この所定の第一の非磁性下地層の上に、所定の第二の非磁性下地層、垂直磁気記録層を形成することで、記録再生特性が良好で高密度記録が可能な垂直磁気記録媒体が得ることが可能となる。
第二の非磁性下地層は、積層された下地層の粒径および配向性を磁気記録層まで伝える機能を持っている。第二の非磁性下地層は、第一の非磁性下地層との結晶整合性が適当であること、および磁気記録層がエピタキシャル成長できるような結晶面を持つことが重要である。そのような物質として、第二の非磁性下地層表面に、六方最密構造を有するRuまたはRu合金を使用することができる。これらの物質は、その上に磁気記録層がエピタキシャル成長しやすいという利点をもつ。Ru合金を用いる場合、Cr,Co,Rh,C,SiO2,TiO2およびCr2O3から選ばれる少なくとも一種の元素との合金であることが好ましい。特に、Crとの合金を用いることが好ましい。
なお、ここでは、Ruと、C,SiO2,TiO2またはCr2O3等との混合材料をRu合金の一部に含むものとする。
垂直磁気記録層は、第二の非磁性下地層の上にエピタキシャル的に成長させることで、下地層において得られた微細で配向性のよい結晶構造を垂直磁気記録層に導入することができる。本発明に使用される垂直磁気記録層は、CoとPtを主成分として含有することが望ましい。このような垂直磁気記録層は、比較的結晶配向性がよく、かつ熱揺らぎ耐性に優れているという利点を有する。また、垂直磁気記録層は、異なった組成の磁気記録層を2層以上積層させることもできる。また、製膜前後に加熱・冷却過程を入れてもよい。
垂直磁気記録層を構成する物質として、例えばCoPt合金、CoCr合金、CoCrPt合金、CoCrPtB合金、CoCrPtTa合金、CoCrPt−SiO2合金、CoCrPtO合金およびCoCrPt−TiO2合金等を使用することができる。好ましくは、CoCrPt−SiO2合金、CoCrPtO合金、CoCrPt−TiO2合金を使用することができる。これらの合金は、結晶配向性が良好で、磁気異方性が大きく、かつ熱ゆらぎ耐性に優れているという利点を有する。酸素を含んだ磁気記録層は、結晶粒界相が明確になり、より磁気的相互作用を分断することができる。
垂直磁気記録層上には、少なくとも1層の保護膜を設けることができる。保護膜としては、例えばC,ダイアモンドライクカーボン(DLC),SiNx,SiOx,CNx、およびCHxが挙げられる。
軟磁性裏打ち層、シード層、下地層,第二の非磁性下地層、垂直磁気記録層、および保護膜はいずれも磁気記録媒体の分野で通常用いられる様々な蒸着技術によって形成することが可能である。ここでは、種々のスパッタリング法を蒸着技術の1つとして扱うものとする。このような蒸着技術として、例えばDCマグネトロンスパッタリング法、RFマグネトロンスパッタリング法、真空蒸着法を用いることが出来る。
また、2種類以上の物質を混合させる場合、コンポジットターゲットを用いた単元のスパッタリング法、および、それぞれの物質のターゲットを用いた、多元同時スパッタリング法を用いることもできる。
垂直磁気記録媒体の表面、例えば磁気記録層表面、あるいは保護層表面の上には、例えばディップ法、スピンコート法等によりパーフルオロポリエーテル等の潤滑剤を塗布し、潤滑層を形成することができる。
また、図2は、本発明の一実施形態に係る垂直磁気記録媒体の構成を模式的に表す断面図である。
図2に示す垂直磁気記録媒体20は、軟磁性裏打ち層2と非磁性基板1との間に、例えば面内硬磁性膜及び反強磁性層等のバイアス付与層7、軟磁性裏打ち層2と第一の非磁性下地層3との間に、非磁性シード層8が設けられていること以外は、図1と同様の構成を有する。
軟磁性裏打ち層2は磁区を形成しやすく、この磁区からスパイク状のノイズが発生することから、バイアス付与層7を設け、その半径方向の一方向に磁界を印加することにより、その上に形成された軟磁性裏打ち層2にバイアス磁界をかけて磁壁の発生を防ぐことができる。バイアス付与層7を積層構造として異方性を細かく分散して大きな磁区を形成しにくくすることもできる。
バイアス付与層7に用いるバイアス付与層材料としては、CoCrPt、CoCrPtB、CoCrPtTa、CoCrPtC、CoCrPtCuB、CoCrRuB、CoCrPtWC、CoCrPtWB、CoCrPtTaNd、CoSm、CoPt、CoPtO、CoCrPtO、CoPt−SiO2、及びCoCrPtO−SiO2が挙げられる。
バイアス付与層は、いずれも例えばスパッタ法などの製膜方法により形成することができる。なお、バイアス付与層の結晶性改善や薄膜化のために、基板とバイアス付与層の間に、複数の非磁性層を形成しても良い。
また、軟磁性裏打ち層2と第一の非磁性下地層3との間に、SiまたはSi合金からなる非磁性シード層8を形成することができる。PdまたはPd合金からなる第一の非磁性下地層3の下に接触するように、Si合金からなる非磁性シード層8を形成すると、PdまたはPd合金とSiまたはSi合金との界面でシリサイド反応が起こり、Pd−Si化合物相ができる。PdまたはPd合金層の下にPd−Si化合物相ができることにより、PdまたはPd合金層が微細結晶となり易くなる。
非磁性シード層8のSi合金に用いられる金属としては、Zr,Hf,TaおよびPdから選ばれる少なくとも一種の元素であることが望ましい。これらの金属は、Siと金属シリサイドを形成しやすく、これにより、非磁性シード層と第一の非磁性下地層の間に強固なPd−Si化合物相を形成し得る。
また、非磁性シード層の好ましい厚さは、1nmないし10nmである。非磁性シード層の膜厚が、1nmより薄いと、非磁性シード層の膜面内方向における組成の均一性が不十分となり、第一の非磁性下地層とのPd−Si化合物相の形成が不十分になる傾向がある。また、膜厚が10nmより厚いと、磁気ヘッドから軟磁性裏打ち層までの距離が増大し、スペーシングロスにより、磁気記録媒体の記録再生特性が低下する傾向がある。また、金属シリサイド層の生成を促進するために、ポストアニール等の熱処理を行っても良い。
本発明に用いられる非磁性基板として、アルミノケイ酸ガラス、化学強化ガラス、AlMg基板などのAl系の合金基板や、より高い耐熱温度を有する非磁性基板例えば結晶化ガラス基板、Si基板、C基板、Ti基板、表面が酸化したSi基板、セラミックス,及びプラスチック等を使用することができる。さらに,それら非磁性基板表面にNiP合金などのメッキが施されている場合でも同様の効果が期待される。
図3は、本発明の磁気記録再生装置の一例を一部分解した斜視図を示す。
図3に示されるように、本発明の垂直磁気記録装置30は、上面の開口した矩形箱状の筐体31と、複数のねじにより筐体31にねじ止めされる筐体の上端開口を閉塞する図示しないトップカバーを有している。
筐体31内には、本発明に係る垂直磁気記録媒体32、この垂直磁気記録媒体32を支持及び回転させる駆動手段としてのスピンドルモータ33、磁気記録媒体32に対して磁気信号の記録及び再生を行う磁気ヘッド34、磁気ヘッド34を先端に搭載したサスペンションを有し且つ磁気ヘッド34を垂直磁気記録媒体32に対して移動自在に支持するヘッドアクチュエータ35、ヘッドアクチュエータ35を回転自在に支持する回転軸36、回転軸36を介してヘッドアクチュエータ35を回転、位置決めするボイスコイルモータ37、及びヘッドアンプ回路38等が収納されている。
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例
実施例1
2.5インチ磁気ディスク用のガラス基板からなる非磁性基板を用意した。
この非磁性基板を1×10−5Paの真空度の真空チャンバー内に設置し、ガス圧0.7PaのAr雰囲気中で、以下のようにしてDCマグネトロンスパッタリングを行った。
まず、非磁性基板をターゲットに対向するように配置し、バイアス付与層としてCoCrPtターゲットを用いて、DC500Wをターゲットに放電し厚さ25nmになるように、CoCrPt強磁性層を製膜した。
得られたCoCrPt強磁性層上に、厚さ120nmのCoZrNb軟磁性裏打ち層を形成した。
その後、CoZrNb軟磁性裏打ち層上に、非磁性シード層として、Siターゲットを用いて、通常より低いガス圧0.1PaのAr雰囲気中で、DC500Wで放電し、軟磁性層上に、厚さ5nmになるように製膜して、Si層を形成した。
次に、第一の非磁性下地層として、Pdターゲットを用いて、通常より低いガス圧 0.1PaのAr雰囲気中で、DC500Wで放電し、Siシード層上に、厚さ5nmになるように製膜してPd層を形成した。
ここで、製膜中のガス圧の設定を通常の0.7PaのAr雰囲気中に戻した。
次に、第二の非磁性下地層として、Ruターゲットを用いて、DC500Wで放電し、Pd第一の非磁性下地層上に、厚さ20nmになるように製膜して、Ru層を形成した。
その後、第二の非磁性下地層上に、(Co−16at%Pt−10at%Cr)−8mol%SiO2のコンポジットターゲットを用意し、Ru第二の非磁性下地層上に、CoPtCr−SiO2垂直磁気記録層を15nm製膜した。
最後に、C保護膜を7nm製膜した。このように真空容器内で連続して製膜した基板を大気中に取り出した後、ディップ法によりパーフルオロポリエーテル系潤滑膜を1.5nmの厚さに形成し、垂直磁気記録媒体を得た。
得られた垂直磁気記録媒体は、図2に示す垂直磁気記録媒体と同様の断面構成を有する。
得られた垂直磁気記録媒体に対して、X線回折測定を行ったところ、Ru(00.2)ピークおよびCoCrPt(00.2)ピークを観測したが、Pd(111)ピークは観測できなかった。
これらのピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅はそれぞれ2.5°(Ru)、3.0°(CoCrPt)であった。
これにより、垂直磁気記録層が良好な結晶性を有することがわかった。
また、得られた垂直磁気記録媒体に対して、断面方向の透過型分析電子顕微鏡(TEM)測定を行い、本発明の媒体の結晶構造を調べた。その結果、Siシード層には、結晶格子縞は観測されておらず、非晶質であることが分かった。一方、Pd第一の非磁性下地層は、はっきりと結晶格子縞が観測されていたが、その方向は一様ではなく、微結晶構造を取っていることがわかった。
Ru第二の非磁性下地層、CoCrPt−SiO2記録層は、結晶格子縞が膜面垂直方向に整然と並び、第二の非磁性下地層から記録層にかけて、エピタキシャル成長していることが分かった。
次に、得られた垂直磁気記録媒体の垂直磁気記録層に対して、透過型分析電子顕微鏡(TEM)測定を行い、本発明の媒体の垂直磁気記録層の結晶粒子の粒径分布を調べた。その結果、垂直磁気記録層は、およそ4ないし6nmの平均粒径を有する結晶粒子から形成されていることが分かった。
得られた垂直磁気記録媒体に対し、電磁石を備えた着磁装置を用いて、円板上基板の半径方向外向きに1185A/m(15000 Oe)の磁界を印加し、バイアス付与層の強磁性層の面内半径方向への磁化を行った。着磁された垂直磁気記録媒体について、米国GUZIK社製リードライトアナライザ1632及びスピンスタンドS1701MPを用いて、記録再生特性の評価を行った。
記録再生ヘッドは、記録素子に単磁極ヘッド、再生素子に磁気抵抗効果を利用した、記録トラック幅0.25μm、再生トラック幅0.15μmのヘッドを用いた。また、測定はディスクの回転数は4200rpmで、中心より半径位置22.2mmと一定の位置で行った。その結果、媒体のSNRm(再生信号出力S: 線記録密度119kFCIにおける出力、Nm: 716kFCIで記録した際に測定したノイズのrms値(root mean square))が27.0dBという良好な媒体を得ることができた。
比較例1
比較の垂直磁気記録媒体として、Siシード層を形成しないで、かつPd第一の非磁性下地層を形成する際に、通常のAr圧の0.7Paで形成した以外は、実施例1の垂直磁気記録媒体と同様にして垂直磁気記録媒体を得た。
得られた垂直磁気記録媒体は、Siシード層がない以外は、図2に示す垂直磁気記録媒体と同様の層構成を有する。
次に、得られた垂直磁気記録媒体に対して、X線回折測定を行ったところ、Ru(00.2)ピークおよびCoCrPt(00.2)ピーク、さらにPd(111)ピークを観測した。
RuおよびCoCrPtのピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅はそれぞれ4.2°(Ru)、5.1°(CoCrPt)であった。
得られた垂直磁気記録媒体に対して、断面TEM測定を行い、比較の媒体の結晶構造を調べた。その結果、Pd第一の非磁性下地層は、はっきりと結晶格子縞が観測されておりかつ、その方向は膜面垂直方向にほぼ一様であった。
また、Ru第二の非磁性下地層、CoCrPt−SiO2記録層は、結晶格子縞が膜面垂直方向に整然と並んでいた。
このことにより、第一の非磁性下地層のPd層から記録層にかけて、エピタキシャル成長していることが分かった。
次に、得られた垂直磁気記録媒体の垂直磁気記録層に対して、透過型分析電子顕微鏡(TEM)測定を行い、本発明の媒体の垂直磁気記録層の結晶粒子の粒径分布を調べた。その結果、垂直磁気記録層は、およそ8ないし14nmの平均粒径を有する結晶粒子から形成されていることが分かった。
実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが17.5dBであった。
これにより、比較例1の従来の媒体よりも、低Ar圧でSiシード層、Pd第一の非磁性下地層を製膜した実施例1の本発明の媒体の方が、垂直磁気記録層の結晶粒子が微細でかつ結晶性が良好であり、また記録再生特性も良いことがわかった。
比較例2
比較の垂直磁気記録媒体として、Siシード層を形成しないで、かつ第一の非磁性下地層としてPdの代わりにPtを用いた以外は、実施例1の垂直磁気記録媒体と同様にして垂直磁気記録媒体を得た。得られた垂直磁気記録媒体は、Siシード層がないこと、またPd第一の非磁性下地層の代わりに、Pt第一の非磁性下地層を用いた以外は、図2に示す垂直磁気記録媒体と同様の層構成を有する。
次に、得られた垂直磁気記録媒体に対して、X線回折測定を行ったところ、Ru(00.2)ピークおよびCoCrPt(00.2)ピーク、さらにPt(111)ピークを観測した。
RuおよびCoCrPtのピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、
ピークの半値幅はそれぞれ4.5°(Ru)、5.5°(CoCrPt)であった。
得られた垂直磁気記録媒体に対して、断面TEM測定を行い、比較の媒体の結晶構造を調べた。その結果、Pt第一の非磁性下地層は、はっきりと結晶格子縞が観測されておりかつ、その方向は膜面垂直方向にほぼ一様であった。
また、Ru第二の非磁性下地層、CoCrPt−SiO2記録層は、結晶格子縞が膜面垂直方向に整然と並んでいた。その結果、第一の非磁性下地層のPt層から垂直磁気記録層にかけて、エピタキシャル成長していることが分かった。
次に、得られた垂直磁気記録媒体の垂直磁気記録層に対して、透過型分析電子顕微鏡(TEM)測定を行い、本発明の媒体の垂直磁気記録層の結晶粒子の粒径分布を調べた。その結果、垂直磁気記録層は、およそ9ないし16nmの平均粒径を有する結晶粒子から形成されていることが分かった。
実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが15.5dBであった。
よって、比較例2の従来の媒体よりも、低Ar圧でSiシード層、Pd第一の非磁性下地層を製膜した実施例1の本発明の媒体の方が、垂直磁気記録層の結晶粒子が微細でかつ結晶性が良好であり、また記録再生特性も良いことが分かった。
比較例4
比較の垂直磁気記録媒体として、Siシード層および第一の非磁性下地層としてPdの代わりにPtを用いて、通常のAr圧の0.7Paで形成した以外は、実施例1の垂直磁気記録媒体と同様にして垂直磁気記録媒体を得た。
得られた垂直磁気記録媒体は、Pd第一の非磁性下地層の代わりにPt第一の非磁性下地層を用いた以外は、図2に示す垂直磁気記録媒体と同様の層構成を有する。
次に、得られた垂直磁気記録媒体に対して、X線回折測定を行ったところ、Ru(00.2)ピークおよびCoCrPt(00.2)ピーク、さらにPt(111)ピークを観測した。
RuおよびCoCrPtのピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、
ピークの半値幅はそれぞれ4.7°(Ru)、5.9°(CoCrPt)であった。
得られた垂直磁気記録媒体に対して、断面TEM測定を行い、比較の媒体の結晶構造を調べた。その結果、Siシード層には、結晶格子縞は観測されておらず、非晶質であることが分かった。
Pt第一の非磁性下地層は、はっきりと結晶格子縞が観測されており、かつその方向は膜面垂直方向にほぼ一様であった。
また、Ru第二の非磁性下地層、CoCrPt−SiO2記録層は、結晶格子縞が膜面垂直方向に整然と並んでいた。その結果、第一の非磁性下地層のPt層から記録層にかけて、エピタキシャル成長していることが分かった。
次に、得られた垂直磁気記録媒体の垂直磁気記録層に対して、透過型分析電子顕微鏡(TEM)測定を行い、本発明の媒体の垂直磁気記録層の結晶粒子の粒径分布を調べた。その結果、垂直磁気記録層は、およそ10ないし15nmの平均粒径を有する結晶粒子から形成されていることが分かった。
実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが14.9dBであった。
これにより、比較例4の従来の媒体よりも、低Ar圧でSiシード層、Pd第一の非磁性下地層を製膜した実施例1の本発明の媒体の方が、垂直磁気記録層の結晶粒子が微細でかつ結晶性が良好であり、また記録再生特性も良いことがわかった。
比較例5
比較の垂直磁気記録媒体として、Siシード層および第一の非磁性下地層としてPdの代わりにPtを用いて、通常より低いAr圧の0.1Paで形成した以外は、実施例1の垂直磁気記録媒体と同様にして垂直磁気記録媒体を得た。
得られた垂直磁気記録媒体は、Pd第一の非磁性下地層の代わりにPt第一の非磁性下地層を用いた以外は、図2に示す垂直磁気記録媒体と同様の層構成を有する。
次に、得られた垂直磁気記録媒体に対して、X線回折測定を行ったところ、Ru(00.2)ピークおよびCoCrPt(00.2)ピーク、さらにPt(111)ピークを観測した。
RuおよびCoCrPtのピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、
ピークの半値幅はそれぞれ3.7°(Ru)、3.9°(CoCrPt)であった。
得られた垂直磁気記録媒体に対して、断面TEM測定を行い、比較の媒体の結晶構造を調べた。
その結果、Siシード層には、結晶格子縞は観測されておらず、非晶質であることが分かった。
Pt第一の非磁性下地層は、はっきりと結晶格子縞が観測されていたが、その方向は一様ではなく、微結晶構造を取っていることがわかった。
また、Ru第二の非磁性下地層、CoCrPt−SiO2記録層は、結晶格子縞が膜面垂直方向に整然と並んでいた。
その結果、第二の非磁性下地層から記録層にかけて、エピタキシャル成長していることが分かった。
次に、得られた垂直磁気記録媒体の垂直磁気記録層に対して、透過型分析電子顕微鏡(TEM)測定を行い、本発明の媒体の垂直磁気記録層の結晶粒子の粒径分布を調べた。
その結果、垂直磁気記録層は、およそ7ないし11nmの平均粒径を有する結晶粒子から形成されていることが分かった。
実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが19.1dBであった。
他の比較例に比べて粒径は微細になっているが、配向性の改善が不十分であった。
よって、比較例5の従来の媒体よりも低いAr圧で、Siシード層、Pd第一の非磁性下地層を製膜した実施例1の本発明の媒体の方が、垂直磁気記録層の結晶粒子が微細でかつ結晶性が良好であり、また記録再生特性も良いことがわかった。
実施例2
本発明の媒体の第一の非磁性下地層として、組成量の異なる2種類のターゲット、Pd−34at%Siターゲット(軟磁性側)、及びPd−5at%Siターゲット(垂直磁気記録層側)を用意した。
第一の非磁性下地層としてPdターゲットの代わりに、上記2種類のPd−Siターゲット、Pd−34at%SiターゲットおよびPd−5at%Siターゲットを使用し、Siシード層を用いない以外は、実施例1と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体は、Siシード層がないこと、第一の非磁性下地層として、組成の異なるPd−Si層を2層形成した以外は、図2に示す垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。
図4に、得られた垂直磁気記録媒体の構成を表す概略断面図を示す。
図示するように、この垂直磁気記録媒体50は、非磁性基板11上に、CoCrPt強磁性層17、CoZrNb軟磁性裏打ち層12、第一の非磁性下地層13として、Pd−34at%Si層19及びPd−5at%Si層21の積層、Ru第二の非磁性下地層14、CoPtCr−SiO2垂直磁気記録層15、C保護膜16、及び図示しない潤滑層を順次積層した構造を有する。
本発明の媒体に対して、X線回折測定を行った。
Ru(00.2)ピークおよびCoCrPt(00.2)ピークを観測したが、Pd(111)ピークは観測できなかった。
これらのピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅はそれぞれ2.6°(Ru)、3.2°(CoCrPt)であった。
これにより、垂直磁気記録層が良好な結晶性を有することがわかった。
得られた垂直磁気記録媒体に対して、断面方向の透過型分析電子顕微鏡(TEM)測定を行い、本発明の媒体の結晶構造を調べた。その結果、軟磁性層側のPd−Si第一の非磁性下地層には、はっきりとした結晶格子縞は観測されておらず、非晶質であることが分かった。
垂直磁性層側のPd−Si第一の非磁性下地層は、はっきりと結晶格子縞が観測されていたが、その方向は一様ではなく、微結晶構造を取っていることがわかった。
Ru第二の非磁性下地層、CoCrPt−SiO2記録層は、結晶格子縞が膜面垂直方向に整然と並び、第二の非磁性下地層から記録層にかけて、エピタキシャル成長していることが分かった。
次に、得られた垂直磁気記録媒体の垂直磁気記録層に対して、透過型分析電子顕微鏡(TEM)測定を行い、本発明の媒体の垂直磁気記録層の結晶粒子の粒径分布を調べた。その結果、垂直磁気記録層は、およそ5ないし7nmの平均粒径を有する結晶粒子から形成されていることが分かった。
また、実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが26.0dBであり、良好な特性を持つことが分かった。
比較例6
比較の垂直磁気記録媒体として、Siシード層を形成しないで、かつ第一の非磁性下地層としてPdの代わりにPd−5at%Siを形成した以外は、実施例1の垂直磁気記録媒体と同様にして垂直磁気記録媒体を得た。得られた垂直磁気記録媒体は、Pd第一の非磁性下地層の代わりにPd−Si第一の非磁性下地層を形成し、Siシード層を形成しない以外は、図2に示す垂直磁気記録媒体と同様の層構成を有する。
次に、得られた垂直磁気記録媒体に対して、X線回折測定を行ったところ、Ru(00.2)ピークおよびCoCrPt(00.2)ピークを観測したが、Pd(111)ピークは観測できなかった。RuおよびCoCrPtのピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅はそれぞれ5.0°(Ru)、6.2°(CoCrPt)であった。
得られた垂直磁気記録媒体に対して、断面TEM測定を行い、比較の媒体の結晶構造を調べた。その結果、Pd−Si第一の非磁性下地層は、格子縞は観測されており、微結晶状態ではあったが、微結晶の方位はランダムで、また膜に凹凸が見られ、平坦性に難があった。一方、Ru第二の非磁性下地層からCoCrPt−SiO2記録層にかけては、結晶格子縞が膜面垂直方向に並んでおりエピタキシャル成長していた。ただし、Pd−Si第一の非磁性下地層からRu第二の非磁性下地層にかけて、
特に、エピタキシャル成長はしていないため、Ru第二の非磁性下地層の初期層部において、成長方向や粒径にバラつきが観測されており、よって、Ru第二の非磁性下地層やCoCrPt−SiO2記録層の粒径には大きな粒径分散が観測されていた。
次に、得られた垂直磁気記録媒体の垂直磁気記録層に対して、透過型分析電子顕微鏡(TEM)測定を行い、本発明の媒体の垂直磁気記録層の結晶粒子の粒径分布を調べた。その結果、垂直磁気記録層は、およそ7ないし17nmの平均粒径を有する結晶粒子から形成されていることが分かった。
実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが17.5dBであった。
これにより、比較例6の従来の媒体よりも、実施例2の本発明の媒体の方が、垂直磁気記録層の結晶粒子が微細でかつ結晶性が良好であり、また、良好な記録再生特性を持つことがわかった。
比較例7
比較の垂直磁気記録媒体として、Siシード層を形成しないで、かつ第一の非磁性下地層としてPdの代わりにPd−26at%Siを形成した以外は、実施例1の垂直磁気記録媒体と同様にして垂直磁気記録媒体を得た。得られた垂直磁気記録媒体は、Pd第一の非磁性下地層の代わりにPd−Si第一の非磁性下地層を形成し、Siシード層を形成しない以外は、図2に示す垂直磁気記録媒体と同様の層構成を有する。
次に、得られた垂直磁気記録媒体に対して、X線回折測定を行ったところ、Ru(00.2)ピークおよびCoCrPt(00.2)ピークを観測したが、Pd(111)ピークは観測できなかった。RuおよびCoCrPtのピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅はそれぞれ4.1°(Ru)、5.1°(CoCrPt)であった。
得られた垂直磁気記録媒体に対して、断面TEM測定を行い、比較の媒体の結晶構造を調べた。その結果、Pd−Si第一の非磁性下地層は、Pd粒子とSi粒界に偏析した偏析型のグラニュラ構造をとっていた。
Pd−Si第一の非磁性下地層からCoCrPt−SiO2記録層にかけて、格子縞が整然と並んでおり、エピタキシャル成長していることが分かった。ただし、膜界面には凹凸が見られ、平坦性には難があった。
次に、得られた垂直磁気記録媒体の垂直磁気記録層に対して、透過型分析電子顕微鏡(TEM)測定を行い、本発明の媒体の垂直磁気記録層の結晶粒子の粒径分布を調べた。その結果、垂直磁気記録層は、およそ7ないし10nmの平均粒径を有する結晶粒子から形成されていることが分かった。
実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが19.5dBであった。
これにより、比較例7の従来の媒体よりも、実施例2の本発明の媒体の方が、
垂直磁気記録層の結晶粒子が微細でかつ結晶性が良好であり、また良好な記録再生特性を持つことが分かった。
比較例8
比較の垂直磁気記録媒体として、Siシード層、およびRu第二の非磁性下地層を形成しないで、かつ第一の非磁性下地層としてPdの代わりにPd−26at%Siを形成した以外は、実施例1の垂直磁気記録媒体と同様にして垂直磁気記録媒体を得た。
得られた垂直磁気記録媒体は、Pd第一の非磁性下地層の代わりにPd−Si第一の非磁性下地層を形成し、Siシード層およびRu第二の非磁性下地層を形成しない以外は、図2に示す垂直磁気記録媒体と同様の層構成を有する。次に、得られた垂直磁気記録媒体に対して、X線回折測定を行ったところ、弱いCoCrPt(00.2)ピークを観測した。
CoCrPtのピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅はそれぞれ10.1°(CoCrPt)であった。
得られた垂直磁気記録媒体に対して、断面TEM測定を行い、比較の媒体の結晶構造を調べた。その結果、Pd−Si第一の非磁性下地層は、Pd粒子とSi粒界に偏析した偏析型のグラニュラ構造をとっていた。
Pd−Si第一の非磁性下地層からCoCrPt−SiO2記録層にかけて、格子縞が観測されており、エピタキシャル成長していることが分かった。ただし、膜界面には凹凸が見られ、平坦性には難があった。
次に、得られた垂直磁気記録媒体の垂直磁気記録層に対して、透過型分析電子顕微鏡(TEM)測定を行い、比較の媒体の垂直磁気記録層の結晶粒子の粒径分布を調べた。その結果、垂直磁気記録層は、およそ14ないし20nmの平均粒径を有する結晶粒子から形成されていることが分かった。
さらに、実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが3.8dBであった。
このことから、比較例8の従来の媒体よりも、実施例2の本発明の媒体の方が、
垂直磁気記録層の結晶粒子が微細でかつ結晶性が良好であり、また良好な記録再生特性を持つことが分かった。
比較例9
比較の垂直磁気記録媒体として、第一の非磁性下地層としてPdの代わりにPd−26at%Siを形成した以外は、実施例1の垂直磁気記録媒体と同様にして垂直磁気記録媒体を得た。
得られた垂直磁気記録媒体は、Pd第一の非磁性下地層の代わりにPd−Si第一の非磁性下地層を形成した以外は、図2に示す垂直磁気記録媒体と同様の層構成を有する。次に、得られた垂直磁気記録媒体に対して、X線回折測定を行ったところ、Ru(00.2)ピークおよびCoCrPt(00.2)ピークを観測したが、Pd(111)ピークは観測できなかった。
RuおよびCoCrPtのピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅はそれぞれ4.2°(Ru)、5.7°(CoCrPt)であった。
得られた垂直磁気記録媒体に対して、断面TEM測定を行い、比較の媒体の結晶構造を調べた。その結果、Pd−Si第一の非磁性下地層には、格子縞は観測されずほぼ非晶質状態であった。
一方、Ru第二の非磁性下地層からCoCrPt−SiO2記録層にかけては格子縞が整然と並んでおり、エピタキシャル成長していることが分かった。
次に、得られた垂直磁気記録媒体の垂直磁気記録層に対して、透過型分析電子顕微鏡(TEM)測定を行い、本発明の媒体の垂直磁気記録層の結晶粒子の粒径分布を調べた。その結果、垂直磁気記録層は、およそ8ないし13nmの平均粒径を有する結晶粒子から形成されていることが分かった。
実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが18.1dBであった。
これにより、比較例9の従来の媒体よりも、実施例2の本発明の媒体の方が、
垂直磁気記録層の結晶粒子が微細でかつ結晶性が良好であり、また良好な記録再生特性を持つことが分かった。
実施例3
Siターゲットの代わりに、Al−45at%Siターゲットを用いて非磁性シード層を形成すること以外は、実施例1と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体は、Siシード層の代わりにAlSiシード層が形成されていること以外は、図2に示す垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。
本発明の媒体に対して、X線回折測定を行った。
Ru(00.2)ピークおよびCoCrPt(00.2)ピークを観測したが、Pd(111)ピークは観測できなかった。これらのピークに対してロッキングカーブ測定を行ったところ、ピークの半値幅はそれぞれ2.7°(Ru)、3.4°(CoCrPt)であった。これにより、垂直磁気記録層が良好な結晶性を有することがわかった。
得られた垂直磁気記録媒体に対して、断面方向の透過型分析電子顕微鏡(TEM)測定を行い、本発明の媒体の結晶構造を調べた。その結果、Pd第一の非磁性下地層は、はっきりと結晶格子縞が観測されていたが、その方向は一様ではなく、微結晶構造を取っていることがわかった。
Ru第二の非磁性下地層、CoCrPt−SiO2記録層は、結晶格子縞が膜面垂直方向に整然と並び、第二の非磁性下地層から記録層にかけて、エピタキシャル成長していることが分かった。
次に、得られた垂直磁気記録媒体の垂直磁気記録層に対して、透過型分析電子顕微鏡(TEM)測定を行い、本発明の媒体の垂直磁気記録層の結晶粒子の粒径分布を調べた。
その結果、垂直磁気記録層は、およそ4ないし7nmの平均粒径を有する結晶粒子から形成されていることが分かった。
また、実施例1と同様に記録再生特性の評価を行ったところ、SNRmが27.3dBであり、良好な特性を持つことが分かった。
実施例4
本発明の媒体のSiシード層およびPd第一の非磁性下地層を形成する際に、DCマグネトロンスパッタリング中のAr雰囲気のガス圧を0.05Pa〜1.0Paの様々な圧力に変化させて製膜を行うこと以外は、実施例1と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
得られた垂直磁気記録媒体は、図2に示す垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。本発明の媒体に対して、X線回折測定、および実施例1と同様に記録再生特性の評価を行った。記録層のピークの半値幅および、SNRmの結果を下記表1に示す。
上記表1の結果より、シード層および第一の非磁性下地層を作製する際の圧力として、0.5Pa以下で作製すると良好な特性を持つことが分かった。なお、実用的には、この圧力は、0.05Pa以上であることが好ましく、0.05Pa未満であると、安定してDCスパッタリングができなくなるため、適さない。
実施例5
第一の非磁性下地層としてPdターゲットの代わりに、異なる組成を有する二層のPd−Si層を積層するためのターゲットを使用し、Siシード層を用いない以外は、実施例1と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
二層のPd−Si層を積層するためのターゲットは、軟磁性側をPd−34at%Siターゲットとし、垂直磁気記録層側をPd−x at%Siターゲットとした。xは、3,5,7,10,13,17,20,26,34であるものを各々用意した。
得られた垂直磁気記録媒体は、図4に示す垂直磁気記録媒体と同様の構成を有する。
得られた媒体に対して、X線回折測定を行った。
また、実施例1と同様に記録再生特性の評価を行った。
垂直磁気記録層のピークの半値幅および、SNRmの結果を下記表2に示す。
以上より、本願の媒体として、Pd−Si膜におけるSiの組成量が3ないし10at%において、良好な特性を持つことが分かった。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。