JP4552181B2 - 湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物 - Google Patents
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Description
一液性湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物においては、湿気により硬化反応が進むので、貯蔵安定性が一般に悪く、硬化触媒量の調整などにより貯蔵安定性を向上させれば、硬化性(硬化速さ)が低下してしまい、これらの相反する両面の性質を同時に満たすのは困難であった。
アミン系の硬化剤はウレタンプレポリマーのイソシアネート基を活性化して硬化時間は短縮されるが、その反面、貯蔵安定性が低下してしまう。この問題に対応するためにいくつかの触媒の改良方法が開示されているが、トリアルキルアミンやピペラジン系触媒の改良による方法は見い出せず、いずれもモルホリン系化合物の触媒を改良するものであり、ビス(モルホリノエチル)エーテル系化合物を硬化触媒とするポリウレタン系接着剤(特許文献1)、ビスモルホリノポリエーテル系化合物を硬化触媒とするポリウレタン組成物(特許文献2)、ウレタン骨格を有すモルホリン系化合物を硬化触媒とするウレタン系ホットメルト接着剤組成物(特許文献3)などが知られているが、いずれも硬化性と貯蔵安定性が共に充分に向上されているとは必ずしもいえず、特許文献2,3においては特殊な触媒化合物を必要とするものでもある。
貯蔵安定性をも向上させるために貯蔵安定剤を添加することも行われ、例えば、トリアルキルアミンあるいはN−メチルモルホリンやN−(N´,N´−ジメチルアミノエチル)−モルホリンなどのモルホリン構造を有すアミン系触媒を使用し、特殊な貯蔵安定剤としてバルビツル酸系化合物やポリカルボニル活性メチン化合物を併用する改良方法も提示されているが(特許文献4)、特殊な貯蔵安定剤を必要とする方法であるし硬化性と貯蔵安定性が共に充分に向上されているとはいえない。
したがって、本願発明は、かかる従来技術の状況を踏まえて、一液性湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物において、入手が簡易な触媒化合物を用いて、硬化性と貯蔵安定性の相反する性質をバランスよく同時に充分に向上することを、発明が解決すべき課題とするものである。
このような、簡易なN−アルキルモルホリン系化合物を硬化触媒(硬化促進触媒)とすれば、上記の相反する性質をバランスよく同時に充分に向上することができるのは、予期し得ぬことであり、一液性湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物の塗料や接着剤などにおいて非常に有用な工業的資材として多用されるに至ると思われる。
ポリオキシプロピレンポリオールは、数平均分子量200〜2,000のものが好ましく、有機ジイソシアネートは、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネートが好ましい。
この組成物は、塗料用組成物として木質ボード材ないしはコンクリート材のプライマー又は上塗り塗料に有用である。また、塗料用組成物は、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化促進触媒としてのN−アルキルモルホリンの二成分組み物材料とされ、塗料として使用される際に混合されることをも特徴とする。さらに、塗料用組成物は、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを合成し、次いで硬化促進触媒としてのN−アルキルモルホリン(アルキル基の炭素数が6〜24)を、塗料としての使用前又は使用時に添加し、さらに必要に応じて、溶剤及び希釈剤並びに顔料及び塗料用添加剤を配合することにより製造される。
しかし、本願発明におけるアルキル炭素数が6〜24のN−アルキルモルホリン、特にN−ココモルホリンは、一液性湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物の硬化触媒として従来には全く使用されなかったものであって、さらに、このような簡易なN−アルキルモルホリン系化合物を硬化触媒として、硬化性と貯蔵安定性の相反する性質をバランスよく同時に充分に向上することができるのであるから(この点は、後述する実施例と比較例との対照から明白である)、本願発明が段落0003に記述した従来の先行技術から容易に発明しえたものでないことは明らかであるといえる。
なお、N−ココモルホリンはホウ素化合物との付加物として、イソシアネートと反応性化合物からポリウレタン発泡体を合成するための触媒には使用されており(特開平5−202159号公報の要約及び特許請求の範囲の請求項1,2を参照)、また、既によく知られた化合物で市販されているものでもある。
[2]有機ジイソシアネートが2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネートであることを特徴とする、[1]における湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料用組成物。
[3]硬化触媒のN−アルキルモルホリンとして、アルキル基の炭素数が6〜24であるN−アルキルモルホリンの混合物が使用されることを特徴とする、[1]又は[2]における湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料用組成物。
[4]硬化触媒のN−アルキルモルホリンとして、N−ココモルホリンが使用されることを特徴とする、[1]又は[2]における湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料用組成物。
[5]塗料用組成物が、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化触媒としてのN−アルキルモルホリンの二成分組み物材料であり、塗料として使用される際に二成分が混合されることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載された湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料用組成物。
[6]ポリオキシアルキレンポリオールと有機ジイソシアネートからイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを合成し、次いで硬化触媒としてのN−アルキルモルホリン(アルキル基の炭素数が6〜24)を、塗料としての使用前又は使用時に添加し、さらに必要に応じて、溶剤及び希釈剤並びに顔料及び塗料用添加剤を配合することを特徴とする、[1]における湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料用組成物の製造方法。
なお、貯蔵安定性は製品を開封せずに保存しえる期間、いわゆるポットライフ、で表されるものであるが、開封後に湿気硬化により液状組成物の表面が増粘して硬くなるまでの期間、いわゆる皮張り時間、でも表され、本願発明の組成物は双方の貯蔵安定性に優れるものである。
かかる一液性湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、塗料や接着剤などとして工業的資材に有用なものとなる。
(1)イソシアネート末端ウレタンプレポリマー
一液性湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物における主成分のポリイソシアネート(イソシアネート末端ウレタンプレポリマー)としては、ポリオキシアルキレンポリオールと有機ジイソシアネートから誘導された、2〜5個のイソシアネート基を有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマーが使用される。
以上のジイソシアネートは、1種単独または2種以上の混合で使用される。なお、特に、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネートであることが好ましい。
本願発明においては、硬化触媒(硬化促進触媒)として、N−アルキルモルホリン(アルキル基の炭素数が6〜24)が使用されるが、具体的な態様としては、アルキル基の炭素数が6〜24であるN−アルキルモルホリンの混合物が使用される。
好ましくは、硬化触媒のN−アルキルモルホリン(アルキル基の炭素数が6〜24)として、N−ココモルホリンが使用され、これは既によく知られた化合物であり、エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルス社(米国)から市販されているものでもある。実際は、N−ココモルホリンは、椰子油から抽出して化学的に変質して得られるものであり、アルキル基の炭素数が12〜18であるN−アルキルモルホリンの混合物であるといえる。これは、ポリスチレンを標準サンプルとする検量線を用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による通常の分子量分布測定から確認されている。
硬化触媒の添加量は、樹脂(イソシアネート末端ウレタンプレポリマー)に対して、0.1〜10重量%が好ましい。0.1重量%未満であると所望の硬化促進が達成されず、10重量%を超えると貯蔵安定性に支障をきたす。
本願発明においては、必要に応じて通常の、重付加反応における鎖延長剤を使用してもよい。
ウレタン重合での、鎖延長剤は2個以上の活性水素基を有する通常の低分子化合物が使用され、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが用いられる。
また、各種の添加剤として、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、充填剤、内部離型剤、その他の加工助剤を用いることができる。
本願発明の一液性湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物においては、実際には、主として塗料用組成物又は接着剤用組成物とすると有用であるが、シーラントや建築材料などにも使用しえる。
塗料用組成物としては、木材やコンクリート材への馴染みの良さからして、木質ボード材ないしはコンクリート材のプライマー又は上塗り塗料として好適に使用される。
ポリウレタン樹脂組成物は、具体的には、ポリオキシアルキレンポリオールと有機ジイソシアネートからイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを合成し、次いで硬化触媒としてのN−アルキルモルホリン(アルキル基の炭素数が6〜24)を、塗料としての使用前又は使用時に添加し、さらに必要に応じて、溶剤及び希釈剤並びに顔料及び塗料用添加剤などを配合することによって、一液性湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料用組成物として製造される。
本願発明の一液性湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物における、主成分のポリイソシアネート(イソシアネート末端ウレタンプレポリマー)を、ポリオキシアルキレンポリオールと有機ジイソシアネートから合成して、2〜5個のイソシアネート基を有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得る。
(合成例)
窒素置換した1Lのセパラブルフラスコにトリレンジイソシアネート(2,4−TDI=80%,2,6−TDI=20% T−80 日本ポリウレタン工業)を370g、ソルベッソ100(石油系溶媒:エクソンモービル社)を300g入れ、撹拌しながら50℃まで昇温した。温度が安定したらジエチレングリコール25gを加え、70〜80℃で1時間撹拌した。1時間後反応液を約50℃まで冷却し3官能ポリプロピレンオキサイド(GP−250 三洋化成)155gを発熱に注意しながら(70〜80℃保持)数回に分けてゆっくり加えた。温度が安定(約80℃)してからさらに2時間70〜80℃で撹拌した。2時間後にメチルイソブチルケトン(MIBK ゴードー溶剤)を150g加え、放冷しながらさらに30分間撹拌した。NCO含量8.1%、粘度150mPa・s(25℃)のポリイソシアネートA(PI−A)を得た。
同様な反応装置及び合成法にてポリイソシアネートB(PI−B)、ポリイソシアネートC(PI−C)を得た。組成及び結果を表1に示す。
T−80:トリレンジイソシアネート(2,4−TDI=80%,2,6−TDI=20%) 日本ポリウレタン工業
DEG:ジエチレングリコール 三菱ガス化学
1,3−BG:1,3−ブチレングリコール ダイセル化学工業
TMP:トリメチロールプロパン 広榮化学
GP250:3官能ポリプロピレンオキサイド 三洋化成
PTG−650SN:2官能ポリテトラメチレングリコール 保土谷化学
PP−1000:2官能ポリプロピレンオキサイド 三洋化成
ソルベッソ100:石油系溶剤 エクソンモービル
MIBK:メチルイソブチルケトン ゴードー溶剤
(乾燥性:鉛筆硬度の評価)
大きさ140×180×2mmの透明ガラス板に、ポリイソシアネートを膜厚50μm(ウェット)で塗布し、指触にてタックフリータイムとドライスルータイムを測定した(気温20℃ 湿度65%)。塗膜作成の翌日に鉛筆ひっかき値を評価した(手かき法:JIS K5600−5−4による)。
(気中の皮張り性評価)
ポリイソシアネートを200mlのサンプル瓶に100g(全容量の2/3程度)注ぎ、開放状態で外気暴露した(気温20℃ 湿度65%)。表面に指で軽く触れても付着しない程度に皮が張るまでの時間を測定した。
(ラビング試験)
上記の乾燥性評価の場合の要領で作成した塗膜に対して、MEKラビング試験を行った。MEKに軽く浸した脱脂綿を塗膜上で100回往復させ、塗膜に傷や剥れなどがないかを観察した。塗膜に特に変化がなければ合格として、その時に至るまでの期間(日数)を測定した。
200mlのサンプル瓶に100gのポリイソシアネート(触媒添加量1%)を入れ、瓶内を窒素置換して40℃のギアオーブンに保管した。12日後及び24日後にB型粘度計にて粘度(mPa・s25℃)を測定し、結果を表2に示した。
表3〜5に記載した条件にて、表中の各物性を測定して、実施例1〜4及び比較例1〜10とし、それらの結果を表中に記載した。
表3:触媒量を一定にした場合の比較(使用樹脂:PI−A)
表4:乾燥性を一定にした場合の比較(使用樹脂:PI−A)
表5:その他のポリイソシアネート(PI−B及びPI−C)を使用した場合の比較
以上の各実施例および各比較例を対比することにより、本願発明においては、一液性湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物の硬化触媒としてN−ココモルホリンなどのN−アルキルモルホリン(アルキル基の炭素数が6〜24)を使用するので、硬化性と貯蔵安定性の相反する性質がバランスよく同時に充分に向上されていることが明らかである。貯蔵安定性としては、製品を開封せずに保存しえる期間(ポットライフ)、及び開封後の貯蔵中に液状組成物の表面が増粘して硬くなるまでの期間(皮張り時間)の双方の貯蔵安定性に優れるものである。
具体的には、表2においては、従来の硬化触媒のエチルモルホリンとメチルモルホリンを使用する場合に比べて、本願発明が、製品を開封せずに保存しえる期間(ポットライフ)が極めて優れていることが示されている。
触媒量を一定にした場合の表3において、実施例1と比較例1〜5を対比すると、従来の硬化触媒を使用する各比較例に比べて、本願発明が硬化性(ドライ時間)と貯蔵性(皮張り時間)の相反する性質が共に優れていることが明らかとなる。比較例では本願発明より硬化性が速いもの、あるいは皮張り時間が長いものもあるが、両方の性質が同時に優れているものではない。なお、本願発明においては、タック性(指触速乾性)や鉛筆ひっかき値(乾燥後の塗膜硬度)及びMEKラビング100回往復テスト(塗膜の硬度と耐薬品性指標)においては、従来例に劣るものではない。
乾燥性(ドライ時間)を一定にした場合の表4においても、表3の場合と同様な結果が示され、本願発明では、皮張り時間の貯蔵性が優れていることが明らかである。
その他のポリイソシアネート(PI−B,PI−C)を使用した場合の表5においても、表3について上記した結果と同様な結果が得られている。
以上のデータ結果と考察からして、本願発明の構成要件の合理性と有意性が実証され、本願発明が従来技術に比べて顕著な卓越性を有していることが明確であるといえる。
Claims (6)
- ポリオキシアルキレンポリオールと有機ジイソシアネートから誘導されたイソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化触媒としてのN−アルキルモルホリン(アルキル基の炭素数が6〜24)を必須成分として含有し、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーが、数平均分子量200〜2,000のポリオキシアルキレンポリオールと低分子量ジオール及び有機ジイソシアネートから誘導された、2〜5個のイソシアネート基を有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマーであることを特徴とする、湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料用組成物。
- 有機ジイソシアネートが2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネートであることを特徴とする、請求項1に記載された湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料用組成物。
- 硬化触媒のN−アルキルモルホリンとして、アルキル基の炭素数が6〜24であるN−アルキルモルホリンの混合物が使用されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載された湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料用組成物。
- 硬化触媒のN−アルキルモルホリンとして、N−ココモルホリンが使用されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載された湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料用組成物。
- 塗料用組成物が、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化触媒としてのN−アルキルモルホリンの二成分組み物材料であり、塗料として使用される際に二成分が混合されることを特徴とする、請求項1〜請求項4におけるいずれか1項に記載された湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料用組成物。
- ポリオキシアルキレンポリオールと有機ジイソシアネートからイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを合成し、次いで硬化触媒としてのN−アルキルモルホリン(アルキル基の炭素数が6〜24)を、塗料としての使用前又は使用時に添加し、さらに必要に応じて、溶剤及び希釈剤並びに顔料及び塗料用添加剤を配合することを特徴とする、請求項1に記載された湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料用組成物の製造方法。
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