本発明者らは、トナー粒子中に磁性酸化鉄微粉体を分散させる場合において、トナーの帯電性を損なうことなく分散助剤として作用する物質として、特定の酸化マグネシウム微粉体を併せて内包することで、トナー中での磁性酸化鉄微粉体の分散状態を均一で且つ微分散性に優れたものとすることができることを見出した。すなわち、本発明の磁性トナーにおいては、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2deg)の42.9degにピークを有し、該ピークの半値幅が0.40deg以下である酸化マグネシウム微粉体を内包することにより、トナー粒子中での磁性酸化鉄微粉体の微分散性を改善できる。この効果は磁性トナーの帯電極性が正帯電性の場合において最も効果的に発現する。以降、本発明に至る経緯を含め詳細に説明する。
まず始めに、本発明における磁性酸化鉄微粉体の分散性及び微分散性の定義について説明する。本発明においては、トナー粒子中に分散した磁性酸化鉄微粉体の含有割合均一性を「分散性」と表現し、トナー粒子中に分散した磁性酸化鉄微粉体の凝集状態を「微分散性」と表現する。すなわち、例えば、トナー粒子中において、磁性酸化鉄微粉体が凝集した状態で均一分散している場合には、磁性酸化鉄微粉体の分散性は良いが、微分散性は悪い状態となる。
本発明者らは、正帯電性のトナー粒子中における磁性酸化鉄微粉体の微分散性(つまり凝集状態)改善を目指すにあたり、まず始めにトナー粒子中に各種無機微粉体を内包させた場合の磁性酸化鉄微粉体の分散性(つまり含有割合の均一性)について検討を行った。
この結果、トナー粒子中に体積平均粒径(DV)が1μm前後の各種無機微粉体を内包させることにより、磁性酸化鉄微粉体の分散性はやや改善される傾向を示すことがわかった。この分散性改善効果は、添加した物質による依存度が比較的低いことから、添加した無機微粉体の粒径因子による作用が強いと推測される。また、トナー帯電性に及ぼす影響については、内包させる無機微粉体によりその程度は異なっており、酸化マグネシウム微粉体を添加した場合には、トナーの帯電阻害を起こし難いことがわかった。酸化マグネシウム微粉体を添加した場合にトナー帯電性が阻害され難い理由としては、酸化マグネシウムは電気陰性度が低い、つまり正帯電能が強いことが関係していると思われる。つまり正帯電性の磁性トナー粒子中に無機微粉体を内包させる場合、酸化マグネシウムのような正帯電能の強い物質を分散させることにより、トナー粒子の帯電性への悪影響を比較的少なくすることができると考えられる。
一方、トナー粒子中での磁性酸化鉄微粉体の分散性に問題がない場合においても、微分散性(つまりトナー粒子中に分散した磁性酸化鉄微粉体の凝集状態)が悪い場合は、プリント耐久枚数が進行した段階で、画像カブリの悪化を招く傾向が見られる。本発明者らの検討によれば、トナー粒子中での磁性酸化鉄微粉体の微分散性の差は、高温高湿環境下において高速連続過酷プリント耐久(以降、過酷プリント耐久と記す)を行うことで、加速シミュレーション的に画像カブリ(反転カブリ)差として現れることがわかっている。具体的には、トナー粒子中において磁性酸化鉄微粉体の微分散性が向上するほど、つまりトナー粒子中に分散した磁性酸化鉄微粉体粒子の凝集径が小さくなるほど、過酷プリント耐久時の画像カブリが抑制されるという関係があり、この関係から磁性酸化鉄微粉体の微分散性を評価することができる。
この関係を用いてトナー粒子中における磁性酸化鉄微粉体の微分散性を評価したところ、各種無機微粉体を内包させたトナーは、磁性酸化鉄微粉体の分散性がやや改善される傾向が見られたものの、その微分散性については無機微粉体を内包しない場合に対して明確な改善効果が認められないことが明らかになった。そこで本発明者らは、無機微粉体に対し何らかの最適化を施すことで、磁性酸化鉄微粉体の微分散性を改善できるのではないかと考え検討を進めた。
この結果、トナーに内包させる無機微粉体として、異種金属の混入や結晶格子欠陥が少なく、結晶の単一性が高い高純度の酸化マグネシウム微粉体を用いる場合において、過酷プリント耐久時の画像カブリ抑制効果が顕著に現れることを確認した。この効果は、酸化マグネシウムの物質由来の特性が最大限に発揮されるために発現するものと考えており、安定した正帯電能の発現、及び酸化マグネシウムと磁性酸化鉄間の相互作用によりもたらされた効果であると推測している。また本発明に用いられる酸化マグネシウム微粉体は、結晶の単一性が高いことから、その形状は比較的キュービック状となる傾向が強く、結着樹脂に対する親和性の高さと、この形状因子との相乗効果により、トナー粒子中における酸化マグネシウム微粉体自体の微分散性が非常に優れる特徴を持つ。
酸化マグネシウム微粉体の結晶性や純度は、X線回折により見積もることができる。すなわち、本発明における酸化マグネシウム微粉体は、CuKα線を用いたX線回折において、ブラッグ角(2θ±0.2deg)の42.9degにそれぞれ酸化マグネシウム結晶の(200)面による特徴的なピークを有し、且つ、該ブラッグ角(2θ±0.2deg)=42.9degにおけるX線回折ピークの半値幅が0.40deg以下であることを特徴とし、この条件を満たす場合においてトナー粒子中での磁性酸化鉄微粉体の微分散性を改善することができる。
X線ピーク半値幅が0.40degを超える場合は、酸化マグネシウム微粉体の結晶性が悪い、つまり格子欠陥や不純物の存在が示唆され、また、酸化マグネシウム微粉体の形状が不明確且つ不均一になり易く、粒度分布がブロードになり、トナー粒子中での磁性酸化鉄微粉体の微分散性改善効果が妨げられる。また、本発明においては、酸化マグネシウム微粉体中のMgO含有量が98.0質量%以上、特には99.0質量%以上であることが、X線ピーク半値幅を0.40deg以下に制御する上で好ましい。
本発明における酸化マグネシウム微粉体のX線回折測定は、CuKα線を用い次の条件で測定した。
[X線回折測定条件]
測定機器:リガク社製/試料水平型強力X線回折装置(RINT TTR II)
管球:Cu
平行ビーム光学系
電圧:50kV
電流:300mA
開始角度:30°
終了角度:50°
サンプリング幅:0.02°
スキャンスピード:4.00°/min
発散スリット:開放
発散縦スリット:10mm
散乱スリット:開放
受光スリット:1.0mm
測定により得られたX線回折ピークの帰属及び半値幅の算出は、リガク社製解析ソフト「Jade6」を用いて行った。
また、本発明における酸化マグネシウム微粉体中のMgO含有量は、EDTA法に従い、EDTA標準溶液を用いて滴定し、そこからCaO質量%(実測値)を差し引き、MgO質量%として求めた。
更に本発明の磁性トナーにおいては、酸化マグネシウム微粉体の体積平均粒径(DV)が0.1〜2.0μmであり、該体積平均粒径(DV)の1/2倍径以下の体積分布累積値が10体積%以下、好ましくは7.0体積%以下、該体積平均粒径(DV)の2倍径以上の体積分布累積値が10体積%以下、好ましくは7.0体積%以下であることが磁性酸化鉄微粉体の微分散性改善の点で好ましい。
磁性トナー粒子が酸化マグネシウム微粉体を内包する場合において、酸化マグネシウム微粉体の体積平均粒径(DV)が0.1μmよりも小さい場合は、磁性酸化鉄微粉体の微分散性改善効果は若干低下し、2.0μmを超える場合には、磁性酸化鉄微粉体の微分散性改善効果は低下傾向を示す。これは、酸化マグネシウム微粉体自体のトナー粒子中への分散性の臨界を反映していると考えられ、体積平均粒径(DV)が0.1μmよりも小さい場合には酸化マグネシウム微粉体自体が自己凝集し、微分散性が十分でなくなる傾向があり、また2.0μmを超える場合は粒径因子として均一分散性自体が難しくなるものと推測される。そして、これらの結果として磁性酸化鉄微粉体の微分散性改善効果が低下する場合がある。また、酸化マグネシウム微粉体の粒度分布も酸化マグネシウム微粉体自体の分散性に影響していることが窺われ、体積平均粒径(DV)の1/2倍径以下の体積分布累積値が10体積%を超える、或いは体積平均粒径(DV)の2倍径以上の体積分布累積値が10体積%を超える場合においては、結果的に磁性酸化鉄微粉体の微分散改善効果が低下することがある。
酸化マグネシウム微粉体の体積平均粒径(DV)及び粒度分布を上述の範囲にする手段としては、酸化マグネシウム生成時での制御の他、一般的な粉砕装置や分級装置を用いることが可能である。
本発明における酸化マグネシウム微粉体の粒度分布は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(HORIBA社製)を用いて測定することができる。測定方法の一例を以下に示す。サンプル調整として、分散液となるイオン交換水200mlに、サンプル濃度が透過率80%前後になるように酸化マグネシウム微粉体を数mg入れ、この分散液を超音波分散機で1分間分散処理した。次に、前記測定装置を酸化マグネシウムと水の相対屈折率の1.32に設定し、酸化マグネシウム微粉体の体積基準の粒度分布を測定し、体積平均粒径(DV)、体積平均粒径(DV)の1/2倍径以下の体積分布累積値及び、該体積平均粒径(DV)の2倍径以上の体積分布累積値を求めた。
更に本発明の磁性トナーにおいては、酸化マグネシウム微粉体の等電点が8〜14であることが好ましく、更には9〜14、特に12〜14であることが磁性酸化鉄微粉体の微分散性改善及びトナーの帯電性阻害抑制の点から好ましい。酸化マグネシウム微粉体の等電点が8より低い場合は、酸化マグネシウム微粉体自体の正帯電能が低下する傾向があり、この影響でトナー帯電性が阻害され、過酷プリント耐久時に画像濃度が低下する場合がある。また、酸化マグネシウム微粉体の等電点は、磁性酸化鉄微粉体の等電点よりも若干高めに設定される場合においてトナー粒子中での磁性酸化鉄微粉体の微分散性改善効果がより強く発揮される傾向が見られるため、等電点は14を超えないことが好ましい。この現象のメカニズムについては解明できていないが、おそらくトナー粒子中に酸化マグネシウム微粉体が分散することにより磁性酸化鉄微粉体の微分散性が改善されるメカニズムと関連しているものと推測している。
一般的に、無機微粉体の等電点は、ゼータ電位より求めることができる。本発明における酸化マグネシウム微粉体の等電点は、例えば、超音波方式ゼータ電位測定装置DT−1200(Dispersion Technology社製)を用いてゼータ電位を測定することにより求めることができる。測定方法の一例を以下に示す。分散液として純水を用い、酸化マグネシウム微粉体の0.5Vol%水溶液を調整し、超音波分散機(Sonic&Materials社製 VCX−750)を用い3分間分散させた後、約10分間脱泡しながら撹拌し、サンプル分散液とした。上記装置を用い、この分散液に対しゼータ電位のpH依存性を測定し、この結果得られたグラフよりゼータ電位が0となる時のpHの値、すなわち等電点を算出した。
更に本発明の磁性トナーにおいては、酸化マグネシウム微粉体の比表面積が1.0〜15.0m2/gであることが好ましい。酸化マグネシウム微粉体の比表面積がこの範囲にある場合において、磁性酸化鉄微粉体の微分散性改善効果が更に有効に発揮される。これは、酸化マグネシウム微粉体自体のトナー粒子中への分散性を直接反映した結果であると考えられ、酸化マグネシウム微粉体が如何にトナー粒子中へ分散するかによって、磁性酸化鉄微粉体に対する分散助剤としての効果がある程度決まるという面を持つことが窺われる。
本発明における酸化マグネシウム微粉体の比表面積の測定法としては、BET比表面積法に従い、例えば、比表面積測定装置ジェミニ2375(島津製作所)を用い、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET比表面積多点法を用いて比表面積を求めることができる。
尚、本発明の磁性トナーに用いられる酸化マグネシウム微粉体は、公知の処理剤により表面処理を施しても良く、その場合は、既述の等電点及び比表面積の範囲であることが好ましい。また、本発明の磁性トナーにおける酸化マグネシウム微粉体の内包量は、トナー粒子の0.05質量%〜15質量%の範囲であることが適当である。酸化マグネシウム微粉体の内包量がトナー粒子の0.05質量%未満の場合は、磁性酸化鉄微粉体の微分散性改善効果が発現しない場合があり、また15質量%を超える場合には、磁性酸化鉄微粉体の分散助剤としては割合が多過ぎ、かえって磁性体微分散性を阻害する場合がある。
更に本発明の磁性トナーにおいては、トナーの酸価が0.5mgKOH/g〜20mgKOH/gの範囲であることが好ましく、トナーの酸価がこの範囲を満足する場合において酸化マグネシウム微粉体を内包することによる磁性酸化鉄微粉体の微分散性改善効果が最も効果的に発現する。この理由は、トナー粒子に含まれる結着樹脂がカルボキシル基を有することで酸化マグネシウム微粉体との間で親和性が向上し、トナー粒子中での酸化マグネシウム微粉体自体の微分散性が向上することにより磁性酸化鉄微粉体に対する分散助剤としての効果を発揮し易くなると共に、磁性酸化鉄微粉体自体の結着樹脂に対する親和性も向上することから、これらの相乗効果により磁性酸化鉄微粉体の微分散性が更に向上すると考えられる。トナーの酸価が0.5mgKOH/g未満の場合は、トナー粒子に含まれる結着樹脂と酸化マグネシウム微粉体との間に働く親和性向上効果が得られにくく、トナー粒子中における酸化マグネシウム微粉体自体の微分散性が若干低下する場合がある。また、トナーの酸価が20.0mgKOH/gを超える場合は、トナー粒子に含まれる結着樹脂と酸化マグネシウム微粉体の間に十分な親和力が作用し、結果として磁性酸化鉄微粉体の微分散性を改善することはできるが、負帯電性が発現する傾向があり、過酷プリント耐久時に画像濃度の低下や画像カブリの増加を招く場合がある。
本発明において、トナー或いは結着樹脂の酸価は以下の方法を用いて測定した。
基本操作はJIS K−0070に準ずる。
1)トナー或いは結着樹脂の粉砕品0.5〜2.0(g)を精秤し、試料の重さW(g)とする。
2)300(ml)のビーカーに試料を入れ、トルエン/エタノール(4/1)の混合液150(ml)を加え溶解する。
3)0.1規定のKOHのメタノール溶液を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットを用い、自動滴定することができる。)
4)この時のKOH溶液の使用量S(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時のKOH溶液の使用量をB(ml)とする。
5)次式によりトナー或いは結着樹脂の酸価を算出した。fはKOHのファクターである。
酸価(mgKOH/g)=((S−B)×f×5.61)/W
本発明の磁性トナーにおいて用いられる結着樹脂の種類としては、スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂が挙げられる。
この中でも、本発明においては正帯電性に好適に適用できる点、また、酸化マグネシウム微粉体との親和性を容易に制御しやすいという点から、結着樹脂としてスチレン系重合体を用いることが好ましい。更に、スチレン系重合体はカルボキシル基含有ビニル樹脂とグリシジル基含有ビニル樹脂の混合物あるいは反応物であっても良い。
スチレン系共重合体のスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、ビニルトルエンの如きスチレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチルの如きメタクリル酸エステル;マレイン酸;マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルの如き二重結合を有するジカルボン酸エステル;アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン;塩化ビニル;酢酸ビニル、安息香酸ビニルの如きビニルエステル;エチレン、プロピレン、ブチレンの如きエチレン系オレフィン;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンの如きビニルケトン;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテルが挙げられる。これらのビニル系単量体が単独もしくは2つ以上用いられる。
本発明の磁性トナーに用いられる結着樹脂は、0.5〜40mgKOH/gの範囲で酸価を有することが好ましく、特に0.5〜30mgKOH/gの範囲で酸価を有することが好ましい。結着樹脂の酸価が上記の範囲にある場合は、結着樹脂中のカルボキシル基と酸化マグネシウム微粉体との間で親和性が向上し、トナー粒子中での酸化マグネシウム微粉体自体の微分散性が向上することにより磁性酸化鉄微粉体に対する分散助剤としての効果を発揮し易くなると共に、磁性酸化鉄微粉体自体の結着樹脂に対する親和性も向上することから、これらの相乗効果により磁性酸化鉄微粉体の微分散性が更に向上すると考えられる。結着樹脂の酸価が0.5mgKOH/g未満の場合は、結着樹脂と酸化マグネシウム微粉体との間に働く親和性向上効果が得られにくく、酸化マグネシウム微粉体自体の微分散性が若干低下する場合がある。また、結着樹脂の酸価が40.0mgKOH/gを超える場合は、結着樹脂と酸化マグネシウム微粉体の間に十分な親和力が作用し、結果として磁性酸化鉄微粉体の微分散性を改善することはできるが、負帯電性が発現する傾向があり、トナー帯電性のバランスを乱す場合がある。
結着樹脂の酸価を調整するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、ビニル酢酸、イソクロトン酸、アンゲリカ酸などのアクリル酸及びそのα−或いはβ−アルキル誘導体、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、イタコン酸、メサコン酸、ジメチルマレイン酸、ジメチルフマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体又は無水物などがあり、このようなモノマーを単独、或いは混合し、他のモノマーと共重合させることにより所望の重合体を作ることができる。この中でも、特に不飽和ジカルボン酸のモノエステル誘導体を用いることが酸価値をコントロールする上で好ましい。
より具体的には、例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノフェニル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノフェニルなどのようなα,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステル類;n−ブテニルコハク酸モノブチル、n−オクテニルコハク酸モノメチル、n−ブテニルマロン酸モノエチル、n−ドデセニルグルタル酸モノメチル、n−ブテニルアジピン酸モノブチルなどのようなアルケニルジカルボン酸のモノエステル類などが挙げられる。
以上のようなカルボキシル基含有モノマーは、結着樹脂を構成している全モノマー100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜15質量部添加すればよい。
本発明の磁性トナーに用いられる結着樹脂の合成方法としては、溶液重合法、乳化重合法や懸濁重合法が挙げられる。
このうち、乳化重合法は、水にほとんど不溶の単量体(モノマー)を乳化剤で小さい粒子として水相中に分散させ、水溶性の重合開始剤を用いて重合を行う方法である。この方法では反応熱の調節が容易であり、重合の行われる相(重合体と単量体からなる油相)と水相とが別であることから停止反応速度が小さく、その結果重合速度が大きく、高重合度のものが得られる。更に、重合プロセスが比較的簡単であること、及び重合生成物が微細粒子であるために、トナーの製造時において、磁性酸化鉄微粉体や酸化マグネシウム微粉体、その他の内包物との混合が容易であること等の理由から、トナー用結着樹脂の製造方法として有利な点があるが、添加した乳化剤のため生成重合体が不純になり易く、重合体を取り出すには塩析などの操作が必要で、この不便を避けるためには懸濁重合が好都合である。
懸濁重合においては、水系溶媒100質量部に対して、モノマー100質量部以下(好ましくは10〜90質量部)で行うのが良い。使用可能な分散剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分ケン化物、リン酸カルシウム等が用いられ、一般に水系溶媒100質量部に対して0.05〜1質量部で用いられる。重合温度は50〜95℃が適当であるが、使用する開始剤、目的とするポリマーによって適宜選択される。
本発明の磁性トナーに用いられる結着樹脂は、以下に例示する様な多官能性重合開始剤単独あるいは単官能性重合開始剤と併用して生成することが好ましい。
多官能構造を有する多官能性重合開始剤の具体例としては、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−t−ブチルパーオキシオクタン及び各種ポリマーオキサイド等の1分子内に2つ以上のパーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基を有する多官能性重合開始剤、及びジアリルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート及びt−ブチルパーオキシイソプロピルフマレート等の1分子内に、パーオキサイド基などの重合開始機能を有する官能基と重合性不飽和基の両方を有する多官能性重合開始剤から選択される。
これらの内、より好ましいものは、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート及び2,2−ビス−(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、及びt−ブチルパーオキシアリルカーボネートである。
これらの多官能性重合開始剤は、トナー用結着樹脂として要求される種々の性能を満足する為に、単官能性重合開始剤と併用されることが好ましい。特に該多官能性重合開始剤の半減期10時間を得る為の分解温度よりも低い半減期10時間の分解温度を有する重合開始剤と併用することが好ましい。
具体的には、ベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシクメン、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノアゾベンゼン等のアゾおよびジアゾ化合物等が挙げられる。
これらの単官能性重合開始剤は、前記多官能性重合開始剤と同時にモノマー中に添加しても良いが、該多官能性重合開始剤の効率を適正に保つ為には、重合工程において該多官能性重合開始剤の示す半減期を経過した後に添加するのが好ましい。
これらの開始剤は、効率の点からモノマー100質量部に対し0.05〜2質量部で用いるのが好ましい。
結着樹脂は架橋性モノマーで架橋されていることも好ましい。
架橋性モノマーとしては主として2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが用いられる。具体例としては、芳香族ジビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等);アルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);エーテル結合を含むアルキル鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート、ポリエチレングリコール#600ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類(例えば、ポリオキシエチレン(2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、ポリオキシエチレン(4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート、及び、以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの);更には、ポリエステル型ジアクリレート化合物類(例えば、商品名MANDA(日本化薬))が挙げられる。多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及び以上の化合物のアクリレートをメタクリレートに代えたもの;トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート;等が挙げられる。
これらの架橋剤は、他のモノマー成分100質量部に対して、0.00001〜1質量部、好ましくは0.001〜0.05質量部の範囲で用いることが好ましい。
これらの架橋性モノマーのうち、トナーの定着性,耐オフセット性の点から好適に用いられるものとして、芳香族ジビニル化合物(特にジビニルベンゼン)、芳香族基及びエーテル結合を含む鎖で結ばれたジアクリレート化合物類が挙げられる。
その他の合成方法としては、塊状重合方法、溶液重合方法を用いることができる。しかし、塊状重合法では、高温で重合させて停止反応速度を速めることで、低分子量の重合体を得ることができるが、反応をコントロールしにくい問題点がある。その点、溶液重合法は、溶媒によるラジカルの連鎖移動の差を利用して、また、開始剤量や反応温度を調整することで、所望の分子量の重合体を温和な条件で容易に得ることができるので好ましい。特に、開始剤使用量を最小限に抑え、開始剤が残留することによる影響を極力抑えるという点で、加圧条件下での溶液重合法も好ましい。
本発明の磁性トナーの結着樹脂として用いられるポリエステル樹脂の組成は以下の通りである。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また(E)式で表わされるビスフェノール及びその誘導体;
(式中Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x,yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0〜10である。)
また(F)式で示されるジオール類;
2価の酸成分としては、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸などのアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、又はその無水物、低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;等のジカルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
また架橋成分として働く3価以上のアルコール成分と3価以上の酸成分を併用することが好ましい。
3価以上の多価アルコール成分としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
また、本発明における三価以上の多価カルボン酸成分としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;次式
(式中Xは炭素数3以上の側鎖を1個以上有する炭素数5〜30のアルキレン基又はアルケニレン基)
で表わされるテトラカルボン酸等、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル等の多価カルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。
本発明の磁性トナーの結着樹脂に用いられるアルコール成分としては40〜60mol%、好ましくは45〜55mol%、酸成分としては60〜40mol%、好ましくは55〜45mol%であることが良い。また三価以上の多価の成分は、全成分中の5〜60mol%であることが好ましい。
該ポリエステル樹脂も通常一般に知られている縮重合によって得られる。
本発明の磁性トナーに用いられる磁性酸化鉄微粉体は、トナー粒子中における微分散性改善の観点から八面体形状あるいは複核形状であることが好ましい。更に、本発明の磁性トナーに用いられる磁性酸化鉄微粉体は、トナー粒子中に分散した時の凝集径を小さくするために、製造時の磁性体スラリーにせん断をかける等の処理を施すことが好ましい。
また、本発明の磁性トナーに用いられる磁性酸化鉄微粉体の等電点は、5.0〜6.5の範囲であることが好ましく、この範囲である時において、酸化マグネシウム微粉体による微分散性改善効果が好ましく発揮される。これは、結着樹脂に対する磁性酸化鉄微粉体の親和性が高くなる他に、酸化マグネシウム微粉体の等電点が磁性酸化鉄微粉体の等電点よりやや高めに設定されることにより、トナー粒子中での磁性酸化鉄微粉体の微分散性が特異的に向上するためである。
また、本発明の磁性トナーに用いられる磁性酸化鉄微粉体は、個数平均粒径が0.1〜0.4μmであることが微分散性の点で好ましい。磁性酸化鉄微粉体の個数平均粒径が0.1μm未満の場合は、トナー粒子中において自己凝集する傾向が見られ、また磁気特性の低下や色味の赤褐色へのシフトが見られる。一方、磁性酸化鉄微粉体の個数平均粒径が0.4μmを超える場合は、トナー粒子中における磁性酸化鉄微粉体の含有割合均一性が不安定になる傾向がある。
本発明において、磁性酸化鉄微粉体の個数平均粒径は、透過型電子顕微鏡により得られた4万倍の磁性体の写真からランダムに300個の磁性体を選び、その径をデジタイザーにより実測し、その径と個数から、個数平均として求めることができる。尚、径は水平方向フエレ径である。
本発明の磁性トナーにおいて、磁性酸化鉄微粉体の内包量は、結着樹脂100質量部に対して20〜200質量部が好ましく、更には30〜150質量部であることが好ましい。磁性酸化鉄微粉体の内包量が200質量部を超える場合は、酸化マグネシウム微粉体が内包されている状況においても磁性酸化鉄微粉体の自己凝集を抑制しきれない場合がある。
尚、本発明において、トナー粒子中における磁性酸化鉄微粉体の分散性(含有割合均一性)は、トナー粒子(分級品)と、分級工程で除去されたトナー微粉(分級微粉)との密度比として求めることができる。例えば錠剤成型器を用い、トナー粒子(M)及び分級微粉(F)をペレット状に成型し、それぞれ密度(Md、Fd)を求め、その比(Fd/Md)を算出することにより分散性を求めることができる。
また、磁性酸化鉄微粉体の微分散性(分散時の凝集状態)については、トナー誘電正接(tanδ)を求め、その値を相対比較することで評価することができる。トナー誘電正接(tanδ)とは、トナーの誘電率(ε’)及び誘電損率(ε’’)を実測し、それをもとに計算し、分散性の良し悪しを示す指標として導き出したものであり、
tanδ=ε’’/ε’
の関係がある。物理的意味としては、ε’は1サイクルあたりに貯蔵されるエネルギー、ε’’は1サイクルあたりに放逸するエネルギー、tanδは誘電分散の特徴を示す。
例えば、トナーの誘電正接は以下のようにして求めることができる。
<トナー誘電正接の求め方>
トナーを1.0g秤量し、19,600kPa(200kgf/cm2)の荷重を1分間かけてペレット状に成型し、直径25mm、厚さ2mm以下(好ましくは0.5mm〜1.5mm)の円盤状の試料に調整する。この試料を直径25mmの誘電率測定治具(電極)を装着したARES(レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー社製)に装着し、温度80℃まで加熱し、溶融固定する。その後、温度40℃まで冷却し、0.49〜1.96N(50〜200g)の荷重をかけた状態で、温度40℃一定とし、周波数1,000Hz〜100,000Hzの範囲で測定する。
4284AプレシジションLCRメータ(ヒューレット・パッカード社製)を用いて、1,000Hz及び1MHzの周波数で校正後、周波数10,000Hzにおける複素誘電率の測定値より誘電正接を算出(tanδ=ε’’/ε’)することができる。
例えば、40℃、周波数1.0×105Hzにおける誘電正接(tanδ)の値に着目し、比較したいトナーサンプルのtanδ値を相対比較した場合、より低い値を示すサンプルの方が、磁性酸化鉄微粉体の微分散性に優れることを示している。
但し、この手法が適用できるのは、トナー原材料組成が同等の場合であり、例えばトナー粒子に内包する無機微粉体の種類や内包量が大きく変化すれば、相対比較は意味を持たなくなる点に注意が必要である。
既に述べた通り、本発明者らは、過去にトナー粒子中における磁性酸化鉄微粉体の微分散性をトナー誘電正接(tanδ)を用いて評価検討しており、その結果、相対的に誘電正接が低い値をとる場合、すなわち磁性酸化鉄微粉体の微分散性が優れる場合において過酷プリント耐久時の画像カブリ抑制効果として現れるという関係を見出している。従って、本発明においてトナー粒子中における磁性酸化鉄微粉体の微分散性は、過酷プリント耐久時の画像カブリにより評価した。
本発明の磁性トナーにおいては、荷電制御剤を含有することができ、それにより正帯電性または負帯電性を保持させ、トナー帯電性を制御することが好ましい。
トナーを正帯電性に制御するものとして下記の物質がある。例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートの如き四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩の如きオニウム塩及びこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドの如きジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート類;グアニジン化合物、イミダゾール化合物がある。これらを単独あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。本発明においては、これらの中でも、特にトリフェニルメタン化合物、カウンターイオンがハロゲンでない四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。
また、トナーを負帯電性に制御するものとして下記の物質がある。例えば有機金属錯体、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸金属錯体、芳香族ジカルボン酸金属錯体がある。トナーを負帯電性に制御するものとして他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類がある。
荷電制御剤をトナーに含有させる方法として、トナー粒子に内包させる方法、および外部添加する方法があり、いずれの方法を用いてもよい。これらの荷電制御剤の使用量は結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので一義的に決定されるものではないが、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いられる。
本発明の磁性トナーにおいては、着色剤を含有することができ、着色剤としては任意の顔料または染料が挙げられる。例えば顔料として、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、ナフトールイエロー、ハンザイエロー、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、ベンガラ、フタロシアニンブルー、インダンスレンブルー等がある。これらは定着画像の光学濃度を維持するために必要な量が用いられ、その量は顔料の種類によって異なるが、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.2〜10質量部の添加量が用いられる。また、同様の目的で、更に染料が用いられる。例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、メチン系染料があり、その使用量も染料の種類によって異なるが、結着樹脂100質量部に対し0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜10質量部の添加量が良い。一方、本発明においては、既に述べたように磁性酸化鉄微粉体を着色剤として用いることができる。
本発明の磁性トナーにおいては、離型性を与えるために次のようなワックス類を含有することが好ましい。本発明において用いられるワックスには次のようなものがある。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;または、それらのブロック共重合物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろうの如き植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムの如き鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部又は全部脱酸化したものが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸の如き飽和直鎖;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコールの如き飽和アルコール;ソルビトールの如き多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪族アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
好ましく用いられるワックスとしては、オレフィンを高圧下でラジカル重合したポリオレフィン;高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン;低圧下でチーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン;放射線、電磁波又は光を利用して重合したポリオレフィン;高分子ポリオレフィンを熱分解して得られる低分子量ポリオレフィン;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フッシャートロプシュワックス;ジンドール法、ヒドロコール法、アーゲ法等により合成される合成炭化水素ワックス;炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス、水酸基又はカルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素系ワックス;炭化水素系ワックスと官能基を有するワックスとの混合物;これらのワックスを母体としてスチレン、マレイン酸エステル、アクリレート、メタクリレート、無水マレイン酸の如きビニルモノマーをグラフト変性したワックスが挙げられる。
また、これらのワックスをプレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法または融液晶法を用いて分子量分布をシャープにしたものや、低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
また、上記ワックスの添加量は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。尚、2種類以上のワックスを併用して添加しても良い。
これらのワックスを添加したトナーは、DSCにより測定される吸熱曲線において、60〜120℃の領域に最大ピークを有することが定着性能の点で好ましい。
本発明において、トナー粒子に帯電安定性、現像性、流動性、耐久性向上のため、シリカ微粉体を外添することが好ましい。シリカ微粉体としてはケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能であるが、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 -等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能でありそれらも包含する。本発明の磁性トナーに用いられるシリカ微粉体は、窒素吸着によるBET法による比表面積が30m2/g以上、特に40〜400m2/gの範囲内のものが良好な結果を与える。前記シリカ微粉体は、トナー粒子100質量部に対して0.01〜8質量部、好ましくは0.1〜5質量部使用するのが良い。シリカ微粉体の比表面積は、例えば比表面積測定装置ジェミニ2375(島津製作所)等の通常の測定装置を用い、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET比表面積多点法から求めることができる。
本発明において、トナー粒子に外添されるシリカ微粉体は、必要に応じ、疎水化、帯電性のコントロール等の目的で、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシラン化合物、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤で、或いは種々の処理剤を併用して処理しても良い。
本発明において、トナー粒子には、必要に応じて他の外部添加剤を添加しても良い。このような外部添加剤としては、例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラ定着時の離型剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子等が挙げられる。
例えば滑剤としては、ポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末等が挙げられ、中でもポリフッ化ビニリデン粉末が好ましい。また研磨剤としては、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末等が挙げられ、中でもチタン酸ストロンチウム粉末が好ましい。流動性付与剤としては、酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末等が挙げられ、疎水性のものが好ましい。導電性付与剤としては、カーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化アンチモン粉末、酸化スズ粉末等が挙げられる。また更に、逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を、現像性向上剤として少量用いることもできる。
本発明の磁性トナーは、任意の公知のトナー製造法に従って製造することができ、例えば、結着樹脂、磁性酸化鉄微粉体及び酸化マグネシウム微粉体、その他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により十分混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練し、冷却固化後粉砕及び分級を行い、更に必要に応じて所望の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合機により十分混合することにより製造することができる。本発明においては、少なくとも結着樹脂、磁性酸化鉄微粉体及び、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2deg)の42.9degにピークを有し該ピークの半値幅が0.40deg以下である酸化マグネシウム微粉体が、溶融混練工程において共存していれば良く、混練工程前にこれら原材料を粉体混合する、溶融混練中に各々原材料を段階的に添加していく、或いは結着樹脂製造時に溶融状態の樹脂中に磁性酸化鉄微粉体や酸化マグネシウム微粉体を添加する等、いずれの段階で配合しても良い。本発明においては、これら原材料を溶融混練することによりトナー粒子中における磁性酸化鉄微粉体の微分散性を改善することができるものであり、その結果、トナー粒径の小粒径化や高速プリント適用時に対しても良好なトナーの帯電安定性が得られ、長期安定的に高画質化を維持することができる。
本発明の磁性トナーの製造装置としては、例えば以下に示すものが使用できる。混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサ一(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられ、混練機としては、KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられ、粉砕機としては、カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボエ業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)が挙げられ、分級機としては、クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチックエ業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられ、粗粒などをふるい分けるために用いられる篩い装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボエ業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
尚、本発明において、磁性トナーの粒度分布の測定は、コールターマルチサイザーIIE(コールター社製)を用いて測定した。この装置による測定で使用される電解液は、1級塩化ナトリウムを用いて調整された約1%NaCl水溶液や、市販の電解液、例えば、ISOTON(R)−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定方法としては、前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を、0.1〜5ml加え、さらに測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、トナー粒子の体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出する。このとき、測定されたデータは粒径1.59〜64.0μmを256分割したチャンネルで得られる。その256Chで得られたデータを16分割で処理し、本発明に係るところの体積分布から求めた重量基準の重量平均粒径D4(各チャンネルの中央値をチャンネル毎の代表値とする)を求めた。
以上、本発明の基本的な構成と特徴について述べたが、以下に示す実施例に基づき更に具体的に説明する。
本発明の磁性トナーに用いられる酸化マグネシウム微粉体の製造例を以下に示す。尚、本発明における酸化マグネシウム微粉体は、既述の要件を満足する必要があるが、その調整法については特に制限を受けない。
<酸化マグネシウム微粉体Aの製造例>
予め精製処理を施した水溶性マグネシウム塩1当量に対し、アルカリ性物質0.80当量を40℃で混合して反応させ、その後反応物を反応母液とともに約5.9MPaの加圧下に約4時間加熱させて水酸化マグネシウムを得た。この水酸化マグネシウムをカンタル炉を用い1450℃で3時間焼成した。得られた焼成物を粉砕(解砕)、分級し、本発明における酸化マグネシウム微粉体Aを得た。得られた酸化マグネシウム微粉体Aの物性値を表1に示す。
<酸化マグネシウム微粉体B〜E、Gの製造例>
酸化マグネシウム微粉体Aの製造例において、合成条件や焼成条件、粉砕分級条件を適宜選択することにより、酸化マグネシウム微粉体B〜E、及びGを得た。得られた酸化マグネシウム微粉体B〜E、Gの物性値を表1に示す。
<酸化マグネシウム微粉体Fの製造例>
Mg源として海水、アルカリ源として生石灰を用いた海水法により酸化マグネシウム微粉体Fを得た。得られた酸化マグネシウム微粉体Fの物性値を表1に示す。
尚、得られた酸化マグネシウム微粉体の形状についてSEM観察した結果、A〜Eについては比較的キュービック形状を呈す粒子が多く見られたが、F及びGについてはキュービック形状の粒子を確認することはできなかった。
本発明の磁性トナーの製造例を以下に示す。
<磁性トナー1の製造例>
・スチレン−ブチルアクリレート−メタクリル酸−グリシジルメタクリレート共重合体( 70/20/3/6、ピーク分子量1.25万、Mw11.3万、Mn0.8万、Tg 56℃、酸価10.2mgKOH/g) 80質量部
・スチレン−ブタジエン共重合体(ピーク分子量2.7万、Mw27万、Mn2万、Tg 43℃、酸価0.2mgKOH/g) 20質量部
・マグネタイト(八面体、個数平均粒径0.15μm) 90質量部
・酸化マグネシウム微粉体A 5質量部
・フィッシャートロプシュワックスワックス(融点:101℃) 3質量部
・パラフィンワックス(融点:75℃) 3質量部
・荷電制御剤(下記トリフェニルメタンレーキ顔料) 2質量部
上記材料をヘンシェルミキサーで前混合した後、二軸混練押し出し機を用い、混練物の温度が120℃になるように制御しながら溶融混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕し、得られた微粉砕物を風力分級機を用いて分級し、トナー分級品粒子1を得た。このトナー分級品粒子1;100質量部に対し、乾式法で製造されたシリカ微粉体(比表面積200m2/g)100質量部あたりアミノ変性シリコーンオイル(アミノ当量=830、25℃における粘度=70mm2/s)17質量部で処理した疎水性シリカ微粉体を0.8質量部加え、ヘンシェルミキサーを用いて外添混合し、目開き150μmのメッシュで篩い、重量平均粒径(D4)が7.0μmの磁性トナー1を得た。この磁性トナー1の酸価は5.4mgKOH/gであった。
<磁性トナー2の製造例>
磁性トナー1の製造例において、スチレン−ブチルアクリレート−メタクリル酸−グリシジルメタクリレート共重合体(70/20/3/6、ピーク分子量1.25万、Mw11.3万、Mn0.8万、Tg56℃、酸価10.2mgKOH/g)の替わりに、スチレン−ブチルアクリレート共重合体(ピーク分子量1.9万、Mw28万、Mn0.9万、Tg56℃、酸価0.5mgKOH/g)を用い、酸化マグネシウム微粉体Aの替わりに酸化マグネシウム微粉体Bを2質量部用いること以外は磁性トナー1の製造例と同様にし、重量平均粒径(D4)が6.8μmの磁性トナー2を得た。この磁性トナー2の酸価は0.2mgKOH/gであった。
<磁性トナー3の製造例>
磁性トナー1の製造例において、酸化マグネシウム微粉体Aの替わりに酸化マグネシウム微粉体Cを10質量部用いること以外は磁性トナー1の製造例と同様にし、重量平均粒径(D4)が7.3μmの磁性トナー3を得た。この磁性トナー3の酸価は5.4mgKOH/gであった。
<磁性トナー4の製造例>
磁性トナー1の製造例において、マグネタイト(八面体、個数平均粒径0.15μm)の替わりにマグネタイト(複核形状、個数平均粒径0.13μm)を用い、酸化マグネシウム微粉体Aの替わりに酸化マグネシウム微粉体Dを20質量部用いること以外は磁性トナー1の製造例と同様にし、重量平均粒径(D4)が7.4μmの磁性トナー4を得た。この磁性トナー4の酸価は5.3mgKOH/gであった。
<磁性トナー5の製造例>
磁性トナー1の製造例において、スチレン−ブチルアクリレート−メタクリル酸−グリシジルメタクリレート共重合体(70/20/3/6、ピーク分子量1.25万、Mw11.3万、Mn0.8万、Tg56℃、酸価10.2mgKOH/g)の替わりに、スチレン−ブチルアクリレート−メタクリル酸−グリシジルメタクリレート共重合体(70/20/4/6、ピーク分子量1.53万、Mw20.1万、Mn0.9万、Tg56℃、酸価18.9mgKOH/g)を用い、マグネタイト(八面体、個数平均粒径0.15μm)の替わりにマグネタイト(複核形状、個数平均粒径0.13μm)を用い、酸化マグネシウム微粉体Aの替わりに酸化マグネシウム微粉体Eを10質量部用いること以外は磁性トナー1の製造例と同様にし、重量平均粒径(D4)が5.3μmの磁性トナー5を得た。この磁性トナー5の酸価は14.3mgKOH/gであった。
<磁性トナー6の製造例>
磁性トナー1の製造例において、酸化マグネシウム微粉体Aの替わりに酸化マグネシウム微粉体Fを10質量部用いること以外は磁性トナー1の製造例と同様にし、重量平均粒径(D4)が7.2μmの磁性トナー6を得た。この磁性トナー6の酸価は5.4mgKOH/gであった。
<磁性トナー7の製造例>
磁性トナー1の製造例において、酸化マグネシウム微粉体Aの替わりに酸化マグネシウム微粉体Gを5質量部用いること以外は磁性トナー1の製造例と同様にし、重量平均粒径(D4)が6.9μmの磁性トナー7を得た。この磁性トナー7の酸価は5.4mgKOH/gであった。
<磁性トナー8の製造例>
磁性トナー1の製造例において、マグネタイト(八面体、個数平均粒径0.15μm)の替わりにマグネタイト(複核形状、個数平均粒径0.13μm)を用い、酸化マグネシウム微粉体Aの替わりに気相法で製造したシリカ(体積平均粒径(DV)0.3μm、比表面積9m2/g)を10質量部用いること以外は磁性トナー1の製造例と同様にし、重量平均粒径(D4)が7.2μmの磁性トナー8を得た。この磁性トナー8の酸価は5.4mgKOH/gであった。
<磁性トナー9の製造例>
磁性トナー1の製造例において、マグネタイト(八面体、個数平均粒径0.15μm)の替わりにマグネタイト(球状、個数平均粒径0.17μm)を用い、酸化マグネシウム微粉体Aの替わりにタルク(体積平均粒径(DV)1.0μm、比表面積35m2/g)を10質量部用いること以外は磁性トナー1の製造例と同様にし、重量平均粒径(D4)が5.1μmの磁性トナー9を得た。この磁性トナー9の酸価は5.4mgKOH/gであった。
<磁性トナー10の製造例>
磁性トナー1の製造例において、酸化マグネシウム微粉体Aの替わりにアルミナ(体積平均粒径(DV)1.9μm、比表面積4m2/g)を5質量部用いること以外は磁性トナー1の製造例と同様にし、重量平均粒径(D4)が7.5μmの磁性トナー10を得た。この磁性トナー10の酸価は5.4mgKOH/gであった。
<磁性トナー11製造例>
磁性トナー1の製造例において、酸化マグネシウム微粉体Aを除くこと以外は磁性トナー1の製造例と同様にし、重量平均粒径(D4)が7.1μmの磁性トナー11を得た。この磁性トナー11の酸価は5.4mgKOH/gであった。
〔実施例1〜5〕
磁性トナー1〜5について、以下に示す評価を実施した。
<トナー粒子中における磁性酸化鉄微粉体の分散性(含有割合均一性)の評価>
錠剤成型器を用い、トナー粒子(M)と、分級工程で除去されたトナー微粉(F)をペレット化し、それぞれ密度(Md、Fd)を求め、その比(Fd/Md)を算出することにより磁性酸化鉄微粉体の分散性を求め、以下に示す評価ランクに分類した。
A;(Fd/Md)値が0.995〜1.004
B;(Fd/Md)値が0.985〜0.994、1.005〜1.014
C;(Fd/Md)値が0.984以下、1.015以上
結果を表2に示す。
<トナーに対する帯電阻害性の評価>
トナーに対する帯電阻害性については、トナー摩擦帯電量を測定することにより評価した。測定方法を以下に示す。各磁性トナーと、鉄粉キャリア(#200メッシュパス#300メッシュオン)とをトナー濃度が5質量%になるように混合し、更にターブラミキサーで1分間混合する。この混合粉体を底部に#500メッシュの導電性スクリーンを装着した金属製の容器に入れ、底部から2kPaの吸引圧で吸引し磁性トナーのみ吸引除去し、吸引前後の金属製容器の質量差(m)と、発生した電荷量(q)を測定し、トナーの帯電量(q/m)を求め、以下に示す評価ランクに分類した。
A;9mC/kg以上
B;7mC/kg以上、9mC/kg未満
C;5mC/kg以上、7mC/kg未満
D;5mC/kg未満
結果を表2に示す。
<トナー粒子中における磁性酸化鉄微粉体の微分散性(凝集状態)の評価>
既に述べた通り、トナー粒子中での磁性酸化鉄微粉体の微分散性(つまりトナー粒子中に分散した磁性酸化鉄微粉体の凝集状態)差は、トナー組成が同等である場合には、トナー誘電正接(tanδ)により評価することができる。但し、トナー組成が大きく異なる場合にはこの手法は適用し難い。そこで、本発明においては、磁性酸化鉄微粉体の微分散性を反映することが明らかになっている、高温高湿(30℃/80%RH)環境下における高速連続両面プリント耐久時の画像カブリ(反転カブリ)を測定することで代用評価した。尚、本発明で用いた評価法は、トナー粒子中において磁性酸化鉄微粉体の微分散性が悪い場合に、通常プリント耐久進行時に発生する画像カブリ悪化現象を、加速シミュレーション的に再現できるものであり、この評価法による結果が良好なものは、長期安定的に高画質を維持できるものである。
評価機としては市販のデジタル複写機iR105+(105cpm、a−Si感光体ドラム搭載、磁性一成分反転ジャンピング現像方式採用、キヤノン株式会社製)を用い、現像ローラの周速比を1.6倍に改造して評価に使用した。現像方式としては、磁性一成分ジャンピング現像方式による反転現像方式を用いた。現像器の設定条件としては、現像ローラの周速比を製品条件の1.6倍とし、磁性ドクターブレードと現像ローラとの間隔を210〜220μmとし、現像ローラからa−Si感光体ドラム表面までの距離を190〜210μmに設定し、非接触現像条件とした。画出し耐久現像条件としては、マグネットローラを内包した回転可能な現像ローラ上に本発明の磁性トナー1〜5を薄層にコートさせ、+300VのDCバイアス、およびVpp=1.0kV、周波数2.7kHz、Duty40%の矩形波ACバイアスを重畳印加した。感光体ドラムの表面電位は、VDを+380〜+420V、VLを+30〜+50Vに設定し、現像を行った。
高温高湿環境下(30℃/80%RH)において、画像比率5%の文字画像をA4横送りで50,000枚両面連続モードで耐久画出しを行った後、現像ローラに印加したDCバイアスを調整することで感光体表面のVDバイアスとの差を300Vに設定し、A3ベタ白画像を3枚プリントし、その時の画像カブリを反射濃度計(リフレクトメーターモデル TC−6DS(東京電色社製))を用い測定(画像の白地部反射濃度平均値をDsとし、画像転写前の転写紙の反射濃度平均値をDrとした時に、Ds−Dr)し、以下に示す評価ランクに分類した。
AA;1.2未満
A ;1.2以上、1.5未満
B ;1.5以上、1.8未満
C ;1.8以上、2.0未満
D ;2.0以上
結果を表2に示す。
尚、磁性酸化鉄微粉体の微分散性に関する参考データとして、磁性トナー1、2、4及びRef.である磁性トナー11について、40℃、周波数1.0×105Hzにおける誘電正接(tanδ)を測定したところ、相対的に以下の関係が確認された。
tanδ低←磁性トナー1<磁性トナー2≒磁性トナー4<磁性トナー11→tanδ高
また、高温高湿環境下(30℃/80%RH)での50,000枚両面連続モード耐久画出し終了時の画像濃度(φ5mm)をマクベス反射濃度計(マクベス社製)を用いSPIフィルターを使用して測定し、以下に示す評価ランクに分類した。
A;1.3以上
B;1.1以上、1.3未満
C;0.9以上、1.1未満
D;0.9未満
結果を表2に示す。
〔比較例1〜6〕
磁性トナー6〜11について、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表3に示す。