JP4550986B2 - 等速ジョイントブーツ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として自動車の車軸に駆動軸を連結する等速ジョイントを覆うためのブーツの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、蛇腹形状を有するカバーブーツ類の一般的な材料としてはクロロプレン等のゴムが知られている。ゴムは安価であり、適度な柔軟性を有し、クリープ特性に優れる等の特徴を有しているためカバーブーツに適した材料である。一方で、加硫工程が必要なため製造工程が煩雑になる等の欠点も有している。近年、ポリエステルエラストマーがカバーブーツの材料として使用され始めている。ポリエステルエラストマーは熱可塑性の樹脂であるため、製造工程が簡素化され、屈曲疲労性、耐熱性に優れる等の特徴を有しており、カバーブーツとしての耐久寿命はゴムブーツより長い。しかし、通常のポリエステルエラストマーでは、材料自体のタック性が高いために、ブーツが屈曲した状態で回転した際に摩擦が生じ異音が発生したり、摩耗してカバーブーツに亀裂が発生する問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的とするところは、ブーツ蛇腹部分のこすれによる異音と摩耗を低減し、且つ柔軟性、屈曲疲労性、耐熱性、耐水性、耐熱老化性、耐油性、耐薬品性が優れたポリエステルエラストマー組成物からなる等速ジョイントブーツを提供することを課題とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし脂肪族及び/又は脂環族のジヒドロキシ化合物を主たるグリコール成分とする高融点重合体セグメントと、分子量400〜2000の低融点重合体セグメントからなるポリエステル型ブロック共重合体100重量部に対して、液状ポリブタジエン化合物0.1〜10重量部からなる熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物を使用した等速ジョイントブーツが上記の課題を解決することを見いだし、本発明に到達した。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の等速ジョイントブーツに使用されるポリエステルエラストマーとは、芳香環を有する高融点ポリエステルセグメントと分子量400〜2000の低融点重合体セグメントからなる共重合体であり、高融点ポリエステルセグメント構成成分だけで高重合体を形成した場合の融点が180℃以上あり、低融点重合体セグメント構成成分のみで測定した場合の融点ないし軟化点が80℃以下の構成成分からなるポリエステルエラストマーである。
【0006】
ポリエステルエラストマーをさらに詳しく述べると、芳香環を有する高融点ポリエステルセグメント構成成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと炭素数が1〜25のグリコール及びそのエステル形成性誘導体を用いることができる。炭素数が1〜25のグリコールとは、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールペンタン、トリシクロデカンジメタノール、ビスフェノールXのエチレンオキサイド誘導体(XはA,S,F)及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。なお、高融点ポリエステルセグメント構成成分の酸成分として、テレフタル酸が全酸成分の70モル%以上であることが好ましい。
【0007】
その他の酸成分としては、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などが挙げられる。これらの量は全酸成分の30モル%以下、好ましくは25モル%以下である。尚、融点の下限は特に限定はないが一般的には150℃以上が好ましく、180℃以上が特に好ましい。
【0008】
本発明における分子量400〜4000の低融点重合体セグメントとしては、例えばポリ(エチレンオキサイド)グリコール、ポリ(プロピレンオキサイド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールなどのポリアルキレンエーテルグリコール及びこれらの混合物さらにこれらのポリエーテルグリコール構成を共重合した共重合ポリエーテルグリコールを示すことができる。
【0009】
高融点化や成形性の面から、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールが好ましく、分子量800〜2200が低温特性から特に好ましく、全ポリエステル重量の15〜75%であることが好ましい。特に耐久性、柔軟性の面から15〜60%の範囲が好ましい。共重合体の場合にはテトラメチレンテレフタレートまたはエチレンテレフタレート単位が60モル%以上含まれることが好ましい。
【0010】
本発明のポリエステルエラストマーの製造には、公知の任意の方法が適用できる。例えば、溶融重合法、溶液重合法、固相重合法などいずれも適宜用いられる。溶融重合の場合、エステル交換法でも直接重合法であってもよい。樹脂の粘度を向上させるため、溶融重合後に固相重合を行うことは、成形性、成形体の耐久寿命を上げるため、もちろん望ましいことである。
【0011】
ポリエステルエラストマーの反応に用いる触媒としては、アンチモン触媒、ゲルマニウム触媒、チタン触媒が良好である。特にチタン触媒、詳しくはテトラブチルチタネ−ト、テトラメチルチタネートなどのテトラアルキルチタネート、シュウ酸チタンカリなどのシュウ酸金属塩などが好ましい。またその他の触媒としては公知の触媒であれば特に限定しないが、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジラウリレートなどのスズ化合物、酢酸鉛などの鉛化合物が挙げられる。
【0012】
また得られたポリエステルエラストマーには公知のヒンダードフェノール系、硫黄系、燐系、などの酸化防止剤、ヒンダートアミン系、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ニッケル系、サリチル系などの光安定剤、帯電防止剤、滑剤、過酸化物などの分子調整剤、金属不活性剤、有機及び無機系の核剤、中和剤、制酸剤、防菌剤、蛍光増白剤、ガラス繊維、カーボン繊維シリカ繊維、アルミナ繊維などの無機質繊維状物質、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ケイ酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如きケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸バリウムの如き金属の炭酸塩、その他の各種金属粉などの紛粒状充填剤、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属粉末などの板状充填剤、難燃剤、難燃助剤、有機・無機の顔料などを一種類以上添加することができる。
【0013】
また、良好な成形性と耐久性を得るためには粘度の高いポリエステルエラストマーを用いるのが好ましい。粘度を向上させるためには、ポリエステルの重合後、高分子鎖の末端の反応しうる官能基を2官能以上もつ化合物などで鎖延長させることが好ましい。具体例としては、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル、ビスフェノールS−ジグリシジルエーテル、イソシアヌル酸トリグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型グリシジルエーテル、フェノールノボラック型グリシジルエーテル、無水ピロメリット酸、無水フタル酸、ポリカルボジイミド、ビスオキサゾリン化合物等が挙げられる。特に好ましい例としては、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル、ビスフェノールS−ジグリシジルエーテル、イソシアヌル酸トリグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。
【0014】
摩擦・摩耗特性を改善するために用いられる液状ポリブタジエン化合物の末端はアリル基、水酸基、カルボキシル基等があり、耐熱性および耐候性を考慮し、水添処理した化合物でも構わない。分子量は成形体の表面への移行性を考えると10000未満のものが好ましい。10000以上の化合物を使用した場合は母体であるポリエステルブロック共重合体にブリードアウトを阻害され、その結果摩擦・摩耗特性が乏しくなる。化合物が液状である温度範囲は使用される環境に左右されるが、少なくとも0℃以上、好ましくは−30℃以上で液状である化合物を選択すると、幅広い温度領域での摩擦・摩耗特性の改善が期待される。また、液状化合物の配合量は、用いられるポリエステル型ブロック共重合体との親和性、あるいは最終的に得られる組成物の要求特性によって変わり得る。好ましくは上記ポリエステル型ブロック共重合体100重量部に対して、0.1重量部〜10重量部、より好ましくは0.3重量部〜5重量部である。0.1重量部未満では、このような化合物を添加することによって得られる作用効果、摩擦音や摩耗量の低減効果が有意に発揮されない。また10重量部を超えると、ポリエステルブロック共重合の溶融粘度が著しく下がり成形できなかったり、成形体表面から著しくにじみ出し、外観を損ねる等の悪影響が現れてくる。
【0015】
等速ジョイントブーツの製造方法としては、インジェクション法、インジェクションブロー法、プレスブロー法など、公知の方法を採用することが出来る。また、ブーツの形状としても、2山2谷〜15山15谷程度の任意の形状がとれるが、3山3谷〜8山8谷程度が一般的である。
【0016】
以下に実施例により、本発明を記述する。なお、これら実施例において各測定項目は、以下の方法に従った。
【0017】
(製造例1)ポリエステル型ブロック共重合体の製造
ジメチレンテレフタレート(DMT) 202.7g、1,4−ブタンジオール(BD)154.2g、分子量2000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)260.2g、イルガノックス−1330(チバ社製) 1.20g、テトラブチルチタネート(TBT) 0.6gを4Lのオートクレーブに仕込み、220℃まで昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、250℃、1torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに250℃、1torr以下の状態で2時間重合反応を行い、ポリマーをペレット状に取り出した。得られたポリマーに関して所定の試験を行った。
【0018】
(実施例1)
製造例1で得られたポリエステル型ブロック共重合体のチップ100重量部、液状ポリブタジエン化合物として、分子量が1500のポリブタジエン2重量部、さらに表1に示した顔料、安定剤、増粘剤をドラムタンブラーに入れ、室温にて30分間攪拌した。混合物を40mmφ同方向2軸押出機で230℃にて押出し、水冷後切断チップ化した。得られたチップを100℃にて減圧乾燥してから本発明のポリエステルエラストマー組成物のチップを得た。
【0019】
(比較例1)
液状ポリブタジエン化合部を用いない以外は、実施例1と同様にしてポリエステルエラストマー化合物を得た。
【0020】
(比較例2)
液状ポリブタジエン化合物のかわりに重量平均分子量10万のポリブタジエンゴムを2重量部用いる以外は、実施例1と同様にしてポリエステルエラストマー化合物を得た。
【0021】
【表1】
Figure 0004550986
【0022】
上記実施例1及び比較例1,2で得られたポリエステルエラストマー組成物のそれぞれについて、以下の項目について評価した。
【0023】
[表面硬度]
JIS K7215記載の試験方法に準拠し、デュロメーターのDスケールで測定した。
[引張破断強伸度]
射出成形機(山城精機社model-SAV)を用いて、チップを100mm×100mm×2mmの平板に成形した後、ダンベル状3号形の試験片を平板から打ち抜いた。東洋精機社製テンシロンUTM-IIIを用いて、得られた試験片を500mm/minの速さで伸長し、試験片が破断したときの荷重(N)を初期断面積(m2)を除した値を引張破断強度(MPa)とし、試験片が破断するまでの試料伸びの原試料長に対する割合を引張破断伸度(%)とした。
[溶融粘度]
JIS K6760記載の試験法に準拠し、230℃でのメルトフローレート(MFR)を測定した。
[摩擦係数及び磨耗量]
JIS K7218記載のスラスト摩耗型試験法に準拠し、ポリエステルエラストマー組成物同士をこすりあわせ、摩擦係数及び磨耗量を測定した。
【0024】
実施例1と比較例1,2に関して行った所定の試験結果を表2に示す。
【0025】
【表2】
Figure 0004550986
【0026】
〔異音の評価〕
次ぎに、プレスブロー成形機(オズバーガー社製、SBE機)を使用して上記実施例1及び比較例1,2で得られたポリエステルエラストマー組成物それぞれについて図1に示す6山6谷を有するカバーブーツを成形し、成形後1週間室温にて放置した後、回転試験機に取り付け、駆動を行い異音の発生を確認した。駆動前に予めカバーブーツに水を吹きかけ、取り付けの角度を35゜、回転速度を600rpmとした。
【0027】
試験結果を表3に示す。
【0028】
【表3】
Figure 0004550986
【0029】
〔磨耗の評価〕
異音の評価で成形したものと同形状のブーツにて磨耗試験を実施した。作動角40度、回転数600rpm 室内温度24℃で行った。摩耗深さは、まず、ブーツを縦方向に8等分カットし、ブーツの大口径部から4番目の谷に出来た摩擦による削れ部を投影顕微鏡により測定し、削れた深さの8点の平均値を摩耗深さとした。
試験結果を図2に示す。
【発明の効果】
以上より、ポリエステル型ブロック共重合体に液状ポリブタジエン化合物を配合したポリエステルエラストマー組成物は摩擦・摩耗特性に優れ、この組成物を使用した等速ジョイントブーツは蛇腹部分のこすれによる異音と磨耗が低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の等速ジョイントブーツを異音、摩耗試験装置に装着した状態の断面図である。
【図2】 摩耗試験結果のグラフである。
【符号の説明】
1 等速ジョイントブーツ
2 蛇腹部
3 大口径部
4 小口径部
5 角度可変回転軸
6 固定回転軸
θ 動作角

Claims (3)

  1. 熱可塑性ポリエステルエラストマー組成物からなる等速ジョイントブーツにおいて、熱可塑性ポリエステルエラストマーが芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし脂肪族及び/又は脂環族のジヒドロキシ化合物を主たるグリコール成分とする高融点重合体セグメントと、分子量400〜2000の低融点重合体セグメントからなるポリエステル型ブロック共重合体100重量部に対して、液状ポリブタジエン化合物0.1〜10重量部からなることを特徴とした等速ジョイントブーツ。
  2. 前記低融点重合体セグメントがポリ(オキシテトラメチレン)グリコールからなることを特徴とする請求項1に記載の等速ジョイントブーツ。
  3. 前記ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール成分が全ポリエステル重量の15〜75%であることを特徴とする請求項2に記載の等速ジョイントブーツ。
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