JP4232061B2 - 光ファイバー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、伝送特性に優れ、且つ耐熱性、耐熱老化性、耐水性、柔軟性に優れた特定の構造を有するポリエステルエラストマーを被覆材として用いた光ファイバーに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車やコンピューターなどの光ファイバー被覆材には、機械的性質や耐摩耗性を強化するために、塩化ビニル系樹脂やオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂などからなる光ファイバーなどは公知である。しかしながら、これらの被覆材に用いる塩化ビニル系樹脂やオレフィン系樹脂は、融点が低く、耐熱性が低く、柔軟性に乏しい問題がある。また比較的融点の高いポリエステル系樹脂では、耐加水分解性が劣り、柔軟性に乏しい問題がある。
これらの問題を解決するための提案として、非晶性ポリアミド及び/又はポリアミドエラストマーと酸変成オレフィン共重合体からなる組成物(特公昭59―188603)などが挙げられるが、ナイロン系樹脂を含む組成では、吸水による剛性変化や熱変色が大きく、また近年の光ファイバー径のサイズダウンや光伝送特性の向上を満足することが出来ない問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的とするところは、柔軟で且つ、光伝送特性、耐熱性、耐水性、耐熱老化性、耐油性、耐薬品性が優れた光ファイバー被覆材を提供することを課題とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリエステルエラストマーにおいて、ナフタレン環を有するジカルボン酸成分を主たる酸成分として用いることで、上記の課題が解決されることを見いだし、本発明に到達した。
【0005】
すなわち本発明は、ポリエステルエラストマー組成物を被覆材として用いた光ファイバーにおいて、該ポリエステルエラストマーが2 , 6−ナフタレンジカルボン酸とブタンジオールをグリコール成分とした融点が180℃以上の高融点硬セグメントに、分子量800〜1500の低融点重合体セグメントとしてポリ(オキシテトラメチレン)グリコール成分を全ポリエステル重量の15〜60%共重合したものであって、かつ下記(I)式を満足する熱可塑性ポリエステルエラストマーであり、紫外線吸収剤として2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンズトリアゾール、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕及びペンタエリスリトールテトラキス−(3−ラウリルチオプロピオネート)、増粘剤としてビスフェノール、及び触媒としてトリフェニルフォスフィンを含む組成物であることを特徴とした光ファイバー。
(I) 1.20 ≦ IV ≦ 3.00(dl/g)
(IVは還元粘度を示す。)
【0006】
前記低融点重合体セグメントがポリ(オキシテトラメチレン)グリコールからなることができる。
前記ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール成分が全ポリエステル重量の15〜75%であることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明におけるポリエステルエラストマーとは、ナフタレン環を有する高融点硬ポリエステルセグメントと分子量400〜1700の低融点重合体セグメントからなる共重合体であり、高融点硬ポリエステルセグメント構成成分だけで高重合体を形成した場合の融点が180℃以上あり、低融点重合体セグメント構成成分のみで測定した場合の融点ないし軟化点が80℃以下の構成成分からなるポリエステルエラストマーである。
【0008】
ポリエステルエラストマーをさらに詳しく述べると、ナフタレン環を有する高融点硬ポリエステルセグメント構成成分として、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレン環を有する芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと炭素数が1〜25のグリコール及びそのエステル形成性誘導体を用いることができる。炭素数が1〜25のグリコールとは、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジメチロールヘプタン、ジメチロールペンタン、トリシクロデカンジメタノール、ビスフェノールXのエチレンオキサイド誘導体(XはA,S,F)及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらは1種類または複数の種類を用いることができる。
高融点硬ポリエステルセグメント構成成分の酸成分として、ナフタレン環を有するジカルボン酸が全酸成分の70モル%以上、好ましくは80モル%以上である。
好ましくは、ナフタレン環を有するジカルボン酸としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
【0009】
その他の酸成分としては、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸が挙げられる。脂環族ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などが挙げられる。これらは1種類または複数の種類を用いることができる。これらの量は全酸成分の30モル%以下、好ましくは25モル%以下である。尚、融点の下限は特に限定はないが一般的には150℃以上が好ましく、180℃以上が特に好ましい。
【0010】
本発明における分子量400〜1700の低融点重合体セグメントとしては、例えばポリ(エチレンオキサイド)グリコール、ポリ(プロピレンオキサイド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールなどのポリアルキレンエーテルグリコール及びこれらの混合物さらにこれらのポリエーテルグリコール構成を共重合した共重合ポリエーテルグリコールを示すことができる。これらは1種類または複数の種類を用いることができる。
高融点化や成形性の面から、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールが好ましく、分子量800〜1500が低温特性から特に好ましく、全ポリエステル重量の15〜75%であることが好ましい。特に耐久性、柔軟性の面から15〜60%の範囲が好ましい。
平均分子量400未満のポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールを用いると、結晶融点が低く、また耐熱老化性も低下するので好ましくない。また、分子量1700よりも大きいポリ(アルキレンオキシド)グリコールを用いた場合、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールが全ポリエステル重量の40%以上になると、ポリマー製造時にポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールが相分離し、弾性回復率や機械強度、分子量が低くなるため好ましくない。
【0011】
本発明者は、かかるポリエステルエラストマーの特性と光ファイバー被覆加工性や耐熱老化性や耐水性の耐久性の評価および解析を行い、下記(I)式を満足することが肝要であることを見いだした。IVが1.20dl/g未満では、押出成形時に樹脂のドローダウンが発生し、均一な肉厚の光ファイバーが得られない。またIVが3.00dl/gより大きい場合では、光伝送材料に成形歪みが発生し、光伝送特性が低下するなどの問題があるため、好ましくない。
(I)1.20 ≦ IV ≦ 3.00(dl/g)
(IVは還元粘度を示す。)
【0012】
本発明のポリエステルエラストマーの製造には、公知の任意の方法が適用できる。例えば、溶融重合法、溶液重合法、固相重合法などいずれも適宜用いられる。溶融重合の場合、エステル交換法でも直接重合法であってもよい。樹脂の粘度を向上させるため、溶融重合後に固相重合を行うことはもちろん望ましいことである。また、ポリエステルの重合後、イソシアネート化合物やエポキシ化合物などで鎖延長しても良い。
【0013】
ポリエステルエラストマーの反応に用いる触媒としては、アンチモン触媒、ゲルマニウム触媒、チタン触媒が良好である。特にチタン触媒、詳しくはテトラブチルチタネ−ト、テトラメチルチタネートなどのテトラアルキルチタネート、シュウ酸チタンカリなどのシュウ酸金属塩などが好ましい。またその他の触媒としては公知の触媒であれば特に限定しないが、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジラウリレートなどのスズ化合物、酢酸鉛などの鉛化合物が挙げられる。
【0014】
また得られたポリエステルエラストマーには公知のヒンダードフェノール系、硫黄系、燐系、などの酸化防止剤、ヒンダートアミン系、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ニッケル系、サリチル系などの光安定剤、帯電防止剤、滑剤、過酸化物などの分子調整剤、金属不活性剤、有機及び無機系の核剤、中和剤、制酸剤、防菌剤、蛍光増白剤、ガラス繊維、カーボン繊維シリカ繊維、アルミナ繊維などの無機質繊維状物質、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ケイ酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトの如きケイ酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸バリウムの如き金属の炭酸塩、その他の各種金属粉などの紛粒状充填剤、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属粉末などの板状充填剤、難燃剤、難燃助剤、有機・無機の顔料などを一種類以上添加することができる。また、他のポリマーをブレンドすることもできる。
【0015】
上記記載のポリエステルエラストマー組成物は、本発明の電線において、単層又は二層以上の構成からなる光ファイバーでも特に問題はなく、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂などと上記記載のポリエステルエラストマー組成物の組合せを任意に選ぶことができる。本発明の硬さの異なったポリエステルエラストマー同士を内層、外層と用いても良い。これらの内層と外層の接着性改良にアロイ材やイソシアネート系、フェノール樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン系などの接着剤を用いても問題はない。
【0016】
本発明の光伝送材料としては、ポリメチルメタクリレートなどの光学プラスチックファイバーや石英ガラスや光学ガラスの光ファイバーなどが挙げられ、公知の光伝送材料を用いて良い。また、光ファイバーの耐圧性を改良する目的に補強材の使用しても特に限定されない。補強剤としては、ブレード状で形成されたものでもスパイラル状で形成されたものでもいずれでもよく、用いる材料は糸でもワイヤでもよい。補強糸としては、ビニロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、芳香族ポリアミド繊維などで製造された糸が例示される。補強ワイヤとしては、硬鋼線が例示され、さらに具体的には防錆および接着性付与のため真鍮や亜鉛などのメッキを施した鋼線が挙げられる。これらの補強材に接着性を改良する目的で、接着剤も用いても特に問題はなく、接着剤としてイソシアネート系、フェノール樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン系などの接着剤を挙げることができる。
【0017】
【実施例】
以下に実施例により、本発明を記述する。なお、これら実施例において各測定項目は、以下の方法に従った。
【0018】
(1)還元粘度(IV)
製造例、比較製造例で得られたポリマー0.05gを25mlの混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=60/40)に溶かして、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
【0019】
(2)結晶融点(Tm)
結晶融点はセイコー電子工業(株)製 DSC(示差走査熱量計)を使用し、窒素流量40ml/分、昇温速度20℃/分で昇温しピーク温度を融点とした。
【0020】
重合例1;ポリエステルエラストマー(a-1、a-2 、a-3)の製造
ジメチレンナフタレート(DMN)489.60g、1,4−ブタンジオール(BD)302.89g、分子量1000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)248.00g、イルガノックス−1330(チバ社製) 1.60g、テトラブチルチタネート(TBT) 0.8gを4Lのオートクレーブに仕込み、室温から220℃まで3時間かけて昇温しエステル交換反応を行った。次いで缶内を徐々に減圧すると共に更に昇温し、45分かけて250℃、1torr以下にして初期縮合反応を行った。さらに250℃、1torr以下の状態で2時間重合反応を行い、三種類の異なる溶融粘度のポリエステルエラストマー(a-1、a-2 、a-3)をペレット状に取り出した。得られた各ポリエステルエラストマー(a) に関して所定の試験を行った。
【0021】
重合例2;ポリエステルエラストマー(b) の製造
ジメチレンテレフタレート(DMT) 448.05g、BD349.12g、分子量1000のPTMG280.00g、イルガノックス−1330 1.60g、TBT 0.8gを4Lのオートクレーブに仕込み、ポリエステルエラストマー(b) を重合した。反応温度は適宜適正化した。
【0022】
製造例1
重合例1で得られたポリエステルエラストマー(a-1) を表1に示す配合に従い、2軸押出機を用いて混合し、ペレット化した(ポリエステルエラストマー組成物(A-1) )。
【0023】
比較製造例1
重合例1で得られたポリエステルエラストマー(a-2) を表1に示す配合に従い、2軸押出機を用いて混合し、ペレット化した。(ポリエステルエラストマー組成物(A-2) )。
【0024】
比較製造例2
重合例1で得られたポリエステルエラストマー(a-3) を表1に示す配合に従い、2軸押出機を用いて混合し、ペレット化した(ポリエステルエラストマー組成物(A-3) )。
【0025】
比較製造例3
重合例2で得られたポリエステルエラストマー(b) を表1に示す配合に従い、2軸押出機を用いて混合し、ペレット化した(ポリエステルエラストマー組成物(B) )。
【0026】
実施例1;光ファイバーの製造
40φ単軸押出機を用いて200ミクロンの石英ガラス製光ファイバー心線に厚さ300ミクロンの厚みにポリエステルエラストマー組成物(A-1) の被覆加工を行った。
【0027】
比較例1、2;光ファイバーの製造
40φ単軸押出機を用いて200ミクロンの石英ガラス製光ファイバー心線に厚さ300ミクロンの厚みにそれぞれポリエステルエラストマー組成物(A-2) 、および(A-3) の被覆加工を行った。
【0028】
比較例3;光ファイバーの製造
40φ単軸押出機を用いて200ミクロンの石英ガラス製光ファイバー心線に厚さ300ミクロンの厚みにポリエステルエラストマー組成物(B) の被覆加工を行った。
【0029】
比較例4;光ファイバーの製造
40φ単軸押出機を用いて200ミクロンの石英ガラス製光ファイバー心線に厚さ300ミクロンの厚みにポリアミドエラストマー(ペバックス 5533(東レ(株))の被覆加工を行った。
【0030】
光ファイバーの試験方法
(1)光電送損失
測定温度25℃の環境化で、成形24時間後の光ファイバーを用いて測定を実施した。
【0031】
(2)外観
得られた光ファイバーを肉眼にて、異常がないかを観察した。
【0032】
(3)耐油性
200m長の光ファイバーの端部をシール処理を実施後、140℃のJIS 3号油に20日間浸漬させ、その後取り出し直径80mmの曲げ試験を行い、亀裂や破断の有無を観察した。
【0033】
(3)耐水性
200mm長の光ファイバーを100℃の沸水に20日間浸漬させ、その後取り出し直径80mmの曲げ試験を行い、亀裂や破断の有無を観察した。
【0034】
(4)熱老化
200mm長の光ファイバーを140℃のギアー式老化試験機で30日加熱処理を行い、老化試験を行った。その後取り出し直径80mmの曲げ試験を行い、亀裂や破断の有無を観察した。
【0035】
各ポリエステルエラストマー組成物の配合および特性を表1,2に実施例と比較例の光ファイバーの試験結果を表3,4に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【発明の効果】
以上より、光ファイバーを構成する被覆材を特定の構造を有する芳香族ジカルボン酸と特定の分子量範囲のポリ(アルキレンオキシド)グリコールから構成され、且つ特定の範囲の溶液粘度からなるポリエステルエラストマーを用いる設計を行うことで、光伝送損失、耐油性、耐水性、耐熱老化性と過酷な環境化での安定性、柔軟性などが優れる光ファイバーを提供することができる。
Claims (1)
- ポリエステルエラストマー組成物を被覆材として用いた光ファイバーにおいて、該ポリエステルエラストマーが2 , 6−ナフタレンジカルボン酸を酸成分とし、ブタンジオールをグリコール成分とした融点が180℃以上の高融点硬セグメントに、分子量800〜1500の低融点重合体セグメントとしてポリ(オキシテトラメチレン)グリコール成分を全ポリエステル重量の15〜60%共重合したものであって、かつ下記(I)式を満足する熱可塑性ポリエステルエラストマーであり、紫外線吸収剤として2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンズトリアゾール、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕及びペンタエリスリトールテトラキス−(3−ラウリルチオプロピオネート)、増粘剤としてビスフェノール、及び触媒としてトリフェニルフォスフィンを含む組成物であることを特徴とした光ファイバー。
(I) 1.20 ≦ IV ≦ 3.00(dl/g)
(IVは還元粘度を示す。)
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