JP4549592B2 - 座席シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の乗員室等に装備される座席シートに関する。
【0002】
【従来技術】
一般に、ローラやボール等の係合子を用いる機械式クラッチにおいては、入力側部材と出力側部材との間にクラッチ部が配設されるが、このクラッチ部は、上記両部材間に形成される楔隙間に係合子を係合・離脱させることによって、入力トルクの伝達・遮断を制御する構成になっている。
【0003】
すなわち、係合子が楔隙間に係合することにより、入力側部材と出力側部材とが係合子を介してロックされ、両部材間で係合子を介して入力トルクが伝達される一方、係合子が楔隙間から離脱することにより、入力側部材と出力側部材とが相対空転可能となり、両部材間で入力トルクが遮断される構成になっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、出力側部材に対する入力トルクの伝達・遮断の切り換えは、例えば本出願人が先の特許出願(特願2000−240213号)で提案したように、入力側部材に取付けられた操作部材を回動操作することにより行われる。
【0005】
また、操作部材の回動操作により出力側機構に対する入力トルクの伝達・遮断を行うものとして、本出願人は、先の特許出願(特願2000−240213号)において、シート高さ調整装置等に使用されるクラッチユニットを提案した。
このクラッチユニットは、上記と同様の作用を行う楔隙間及び係合子を、入力側部材と出力側部材との間のトルク伝達経路の途中(詳しくは、入力側部材と制御部材との間)に介在させ、これにより第1クラッチ部を構成したものである。そして、この装置においても、操作部材は入力側部材に取付けられる。
【0006】
この場合、上記特許出願において提案した入力側部材は何れも、クラッチ部を構成するカム面と操作部材が結合する結合部とを有し、例えば冷間鍛造により一体成型されている。即ち、この入力側部材は、形状の特徴等に鑑みれば、一体成型することが一般的であるとされていた。
【0007】
しかしながら、入力側部材を冷間鍛造等により一体成型していたのでは、製造コストに割高感があると共に、重量増を招く惧れが生じ、クラッチユニットの製品化を図る上で妨げとなることが懸念される。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、座席シートの座席シート調整装置に組み込まれるクラッチユニットにおいて、クラッチ部を構成するカム面と操作部材が結合される結合部とを有する入力側部材の構成に改良を加えることにより、製造コストの削減並びに軽量化を図ることを技術的課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を達成するため、本発明は、着座シートと、背もたれシートと、座席シート調整装置とを有する座席シートにおいて、座席シート調整装置は、その操作レバーと回動部材との間に介装されるクラッチユニットを有し、クラッチユニットは、操作レバーに結合される入力側部材と、回動部材に連結される出力側部材と、入力側部材と出力側部材との間のトルク伝達経路に介在する制御部材と、回転が拘束される静止側部材と、入力側部材と制御部材との間に設けられた第1クラッチ部と、静止側部材と出力側部材との間に設けられた第2クラッチ部とを備え、入力側部材からの正逆方向の入力トルクを第1クラッチ部および制御部材を介して出力側部材に伝達し、出力側部材からの正逆方向の逆入力トルクを第2クラッチ部を介して静止側部材との間でロックするように構成され、入力側部材が、第1クラッチ部を構成するカム面を有すると共に、少なくともカム面に表面硬化処理が施された第1薄肉部材と、操作レバーが取付けられる第2薄肉部材とを相対回転不能に結合して構成され、第2薄肉部材の外径端部に操作レバーの取付部を設けると共に、第1薄肉部材と第2薄肉部材とを、その両者の外径端部で凹凸嵌合構造により結合した構成を提供する。
【0010】
このような構成によれば、入力側部材からの入力トルクによって出力側部材の回転方向の位置を調整することができ、また、出力側部材からの逆入力トルクは第2クラッチ部でロックするので、調整後の出力側部材の位置を保持することができる。しかも、入力側部材と制御部材との間に第1クラッチ部を設けているので、出力側部材の位置調整後に、入力側部材を中立位置(入力トルクが入力される前の位置)に復帰させることが可能であり、その場合でも復帰時の動作が円滑でラチェット機構のような騒音発生の問題も生じない。
【0011】
ここで、「入力側部材」は、クラッチ部を構成するカム面を有し且つ操作レバーを介して入力トルクが入力される部材であり、「出力側部材」は、クラッチ部を構成する例えば係合子の係合・離脱作用を通じて、入力側部材と一体的に回転する機能と、入力側部材に対して相対空転する機能とを備えた部材である。また、「薄肉部材」は、入力側部材を一体成型した場合の肉厚よりも薄い部材であることを意味する。
【0012】
このような構成によれば、入力側部材が、第1薄肉部材と第2薄肉部材との2つの部材に分離されて加工を施されることになるため、冷間鍛造等により一体成型される場合に比して、加工が容易化されて製造コストが安価になる。また、第1薄肉部材と第2薄肉部材とは、それぞれの役割に応じた最小限の肉厚を確保すれば良く、冷間鍛造等により一体成型される場合のような無駄な肉部が存在しないため、入力側部材ひいてはクラッチユニットの軽量化を図ることが可能となる。しかも、第1薄肉部材はクラッチ部の構成要素であるカム面を有しているのに対して、第2薄肉部材は操作部材としての操作レバーとの取付部を有しているため、要求される剛性或いは強度等の特性が両部材で相違している。従って、材質や加工条件或いは処理条件を第1薄肉部材と第2薄肉部材とで相違させることができ、両部材のそれぞれの要求特性に無駄なく対応しつつ、加工や熱処理等を施すことが可能となる。なお、上記の凹凸嵌合構造は、第1薄肉部材と第2薄肉部材との何れか一方に凸部を形成し且つ他方に凹部を形成し、上記凸部を凹部に嵌合させることにより構成することができる。これにより、両薄肉部材の良好な組付け性を確保でき、入力側部材の製作を容易に行えると共に、分解作業をも容易に行うことが可能となる。より具体的には、第1薄肉部材と第2薄肉部材との何れか一方に嵌合爪を形成し、他方にその嵌合爪が嵌合する溝部を形成することができる。このように構成すれば、両薄肉部材の組付け性及び分解性が向上するばかりでなく、両薄肉部材の良好な加工性をも確保することができる。
【0013】
上記構成においては、第1薄肉部材と第2薄肉部材との少なくとも何れか一方をプレス成型品とすることが好ましい。このように構成することにより、加工の容易化、製造コストの低廉化、及び軽量化等の利点が得られる。
【0014】
また、第1薄肉部材は、クラッチ部を構成するカム面が形成されるため、剛性或いは強度を高くしなければ適切なクラッチ機能が得られないのに対して、第2薄肉部材は、それと比較すれば左程高い剛性或いは強度を必要としない。従って、第2薄肉部材を第1薄肉部材と異なる他の材料でなるプレス成型品とし、さらには樹脂の成型品とすることが可能であり、このように構成することにより、加工の容易化、製造コストの低廉化、及び軽量化等の利点が顕著に得られる。
【0017】
しかも、以上の構成において、第1薄肉部材の少なくともカム面に、表面硬化処理を施すことが好ましい。このように構成すれば、第2薄肉部材及び第1薄肉部材の他の部位に比して高硬度特性を要求されるカム面が、熱処理等の表面硬化処理により所要の硬度とされ、良好なクラッチ機能を長期に亘って維持できる。
【0018】
上記の座席シート調整装置には、着座シートの高さを調整するシート高さ調整装置、背もたれシートの傾斜を調整するシート傾斜調整装置、着座シートの前後位置を調整するシートスライド調整装置が含まれるが、本発明は、着座シートのシート高さ調整装置に特に好適である。この構成によれば、着座シートの高さ調整を操作レバーの揺動操作によって行うことが可能になるので、従来装置に比べて操作上の利便性が増すと同時に、車体や座席シートの設計自由度を高めることができ、特に小型車や大衆車のシート高さ調整装置に極めて有用である。
【0019】
上記のシート高さ調整装置は、着座シートをスライド可動部材に対して昇降自在に支持する四節リンク機構と、着座シートに回動自在に枢着され、四節リンク機構にリンク部材を介して連結されるセクターギヤと、クラッチユニットの出力側部材に連結され、セクターギヤと噛合するピニオンギヤとを備えたものとすることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る座席シートのシート高さ調整装置(41:図21及び図22参照)に組み込まれるクラッチユニットの全体構成を示している。この第1の実施形態き係るクラッチユニットは、入力側部材としての外輪1と、出力側部材としての内輪2と、係合子としての複数のローラ3と、ローラ3を保持する保持器4と、保持器4に装着された弾性部材、例えばセンタリングバネ5とを主要な要素として構成される。
【0022】
外輪1は、図2に示す第1薄肉部材1Aと、図3に示す第2薄肉部材1Bとから構成され、この両薄肉部材1A,1Bは、鋼板をプレス成型することにより製作されたものである。なお、必要ならば例えば、第2薄肉部材1Bを樹脂等の成型品で構成してもよい。
【0023】
第1薄肉部材1Aは、内周に複数のカム面1Aaが円周方向等間隔に形成されたドラム部1Abと、ドラム部1Abの一端部より内径側に延出された内径フランジ部1Acと、ドラム部1Abの他端部より外径側に延出された外径フランジ部1Adとを備える。
【0024】
各カム面1Aaは、円周方向中央部が深く、その中央部から円周方向両側に向って傾斜状に浅くなっている。内径フランジ部1Acは、保持器4を軸方向の一方に抜け止め規制すると共に、外輪1の内輪2に対する同軸性を保持する役割を果たすものである。
【0025】
外径フランジ部1Adには、第2薄肉部材1Bとの結合に供せられる複数(図例では6つ)の嵌合溝1Aeが形成されると共に、外径端より軸方向に沿ってドラム部1Abと反対側に延出された複数(図例では3つ)のストッパ爪1Afが形成されている。これらのストッパ爪1Afは、第1薄肉部材1Aの一側方(図1(a)の右側方)に配設されて回転が拘束される静止側部材7(図6(c)参照)の図示しないストッパ突起部と回転方向に係合することにより、外輪1の回動が所定範囲に規制されるようになっている。
【0026】
第1薄肉部材1Aの全部又はカム面1Aaに対しては、例えば、浸炭焼入れ焼戻し、浸炭窒化焼入れ焼戻し、高周波焼入れ焼戻し、ずぶ焼入れ焼戻し等の熱処理(表面硬化処理)が施される。
【0027】
第2薄肉部材1Bには、図3に示すように、外径端より軸方向に沿って第1薄肉部材1A側に延出された複数(図例では6つ)の嵌合爪1Baが形成されており、これらの嵌合爪1Baが図4に示すように第1薄肉部材1Aの嵌合溝1Aeに嵌合圧入されることにより、両薄肉部材1A,1Bの相対回転及び軸方向相対移動が規制されている。そして、この状態の下で、嵌合爪1Baが、その外周に装着される操作部材としての操作レバー6の凹凸部と回転方向に係合することにより、操作レバー6の外輪1に対する相対回転が規制されるようになっている。
なお、図例では、2つの短尺な爪1Bbが形成されているが、これらの爪1Bbは第1薄肉部材1Aとの結合に供せられるものではない(回転方向規制のみの役割を果たすものである)。
【0028】
第2薄肉部材1Bの外径側端部には、軸方向に沿って第1薄肉部材1A側に延出された複数(図例では2つ)のバーリング部1Bcが形成されると共に、これらのバーリング部1Bcにはそれぞれ、ボルト挿通穴(又はネジ穴)1Bdが形成され、これらの穴1Bdを通じて操作レバー6がねじ結合されることにより、操作レバー6の外輪1に対する軸方向相対移動が規制される。
【0029】
従って、操作レバー6を回動操作することにより、第1薄肉部材1Aと第2薄肉部材1Bとが一体回転し、これにより操作レバー6からの入力トルクが外輪1に入力される。また、内輪2は、外輪1(第1薄肉部材1A)のカム面1Aaとの間に楔隙間を形成する円周面2aを備えており、図示されない出力部材に連結されている。
【0030】
保持器4は、図5に示すように、ローラ3を収容する複数(例えば10個)の窓形のポケット4aと、一方の端面から軸方向の一方に突出した係止部4bとを備え、係止部4bは例えば円弧状に形成されている。また、係止部4bの円周方向両側面4b1、4b2には、センタリングバネ5の係合部5a1、5a2がそれぞれ係止される(図6参照)。
【0031】
保持器4の材質は特に問わないが、この実施形態では、保持器4を合成樹脂材料、例えばポリアミド66(PA66)にグラスファイバーを30重量%配合した合成樹脂材料の射出成形品としている。なお、この第1の実施形態では、係止部4bの円周方向側面4b1、4b2のうちの一方と近接するポケット4a’の軸方向寸法を他のポケット4aよりも小さくしている。
【0032】
この第1の実施形態に係るクラッチ部8は、外輪1の第1薄肉部材1Aのカム面1Aaと、内輪2の円周面2aと、カム面1Aaと円周面2aとの間に介在する保持器4と、センタリングバネ5とを主要な要素として構成されている。また、カム面1Aa、円周面2a,及びローラ3によってロック手段が構成され、保持器4及びセンタリングバネ5によって復帰手段が構成されている。
【0033】
センタリングバネ5は、図6に示すように、複数巻き(図例では略3巻き)のねじりコイルバネであって、複数の巻き部5aの両端にそれぞれ内径側に屈曲する係合部5a1,5a2が形成され、この一対の係合部5a1,5a2は、円周方向に所定間隔で対向している。センタリングバネ5の係合部5a1、5a2がそれぞれ係止した状態にある保持器4の係止部4bの外周側には、静止側部材7の係止部7aが位置している。また、このセンタリングバネ5は、断面形状が非丸形例えば矩形の線材で形成され、この実施形態では、線材としてピアノ線材(SWPB)を使用している。さらに、このセンタリングバネ5は、自然状態から巻き戻して使用される巻き戻し型のバネであると共に、同図(e)に示すように巻き部5aの線間に隙間Sを設けて巻かれた所謂ピッチ巻きバネである。
【0034】
同図(b)に示すように、センタリングバネ5が自然状態にある時には、複数巻きの各巻き中心が、巻き戻し変形に伴う各巻き中心の移行の方向と逆方向に偏位している。換言すれば、センタリングバネ5の巻き部5aの各巻き中心は、後述する組付け状態で保持器4の静止側部材7に対する相対回転角が増大した際に各巻き中心が移行する方向と逆方向に偏位している。そして、このセンタリングバネ5を組付ける場合には、同図(c)に示すように、一対の係合部5a1,5a2間の間隔を円周方向に押し広げた状態で、この一対の係合部5a1,5a2を保持器4の係止部4bおよび静止側部材7の係止部7aに係止させる。これにより、保持器4がセンタリングバネ5を介して静止側部材7に回転方向に連結される。
【0035】
このような状態から、同図(d)に示すように、保持器4が例えば静止側部材に対して時計方向に相対回転した場合には、センタリングバネ5の時計方向(回転方向前方)の係合部5a1が保持器4の係止部4bに押されて時計方向に弾性変位する。この時点において、センタリングバネ5の反時計方向(回転方向後方)の係合部5a2は、静止側部材7の係止部7aに係止されている。これにより、センタリングバネ5は、一対の係合部5a1,5a2間の間隔が押し広げられる方向(拡径する方向)に撓み、その撓み量に応じた弾性力が蓄積される。この後、保持器4に作用する回動力が解除されたされた場合には、センタリングバネ5の弾性力によって、保持器4(係止部4b)が同図(c)に示す中立位置にセンタリングされる。なお、保持器4が同図(c)に示す状態から反時計方向に相対回転した場合には、センタリングバネ5の反時計方向の係合部5a2が保持器4の係止部4bに押されて反時計方向に弾性変位し、上記とは逆の動作によってセンタリングバネ5に弾性力が蓄積される。
【0036】
次に、図7〜図9を参照しながら、この実施形態のクラッチユニットの動作について説明する。尚、図7〜図9において、センタリングバネ5および静止側部材7は模式化され、概念的に示されている。また、操作レバー6も記載が省略されている。
【0037】
図7は、クラッチユニットの中立位置を示している(図6(c)に示す状態)。中立位置において、ローラ3はカム面1Aaの中央部に位置し、カム面1Aaと円周面2aとの間に形成される正逆両方向の楔隙間からそれぞれ離脱する。ローラ3の直径は、カム面1Aaの中央部と円周面2aとの間の半径方向距離よりも若干小さく設定されており、ローラ3とカム面1Aaの中央部および円周面2aとの間には半径方向隙間がある。また、この実施形態では、出力側から内輪2に入力される逆入力トルクは正逆両方向にロックするようにしている。従って、内輪2は、操作レバー6(外輪1)から入力される入力トルクに対してのみ回動動作を行い、出力側から逆入力トルクが入力されても回動せず、その位置を保持する。
【0038】
図8は、操作レバー6を回動操作して、外輪1に入力トルクを入力した時の状態を示している。例えば、同図において、外輪1に反時計方向の入力トルクが入力されると、外輪1の回動に伴い、カム面1Aaがローラ3に対して反時計方向に相対移動して、ローラ3が楔隙間に係合する(噛み込む)。これにより、外輪1からの入力トルクがローラ3を介して内輪2に伝達され、外輪1、ローラ3、保持器4、及び内輪2が一体となって反時計方向に回動する。尚、この回動の最大量は、静止側部材7のストッパ突起部と外輪1のストッパ爪1Afとによって規制される。そして、保持器4の回動に伴ってセンタリングバネ5が撓み、その撓み量に応じた弾性力fが蓄積される。
【0039】
図9は、操作レバー6(外輪1)を開放した時の状態を示している。センタリングバネ5に蓄積された弾性力fによって、保持器4に時計方向の回動力が働き、ローラ3が保持器4に押されてカム面1Aaを押圧する。そうすると、外輪1が開放されているので、ローラ3、保持器4、及び外輪1が内輪2に対して時計方向に空転して、図7に示す中立位置に復帰する。また、内輪2は、図8の回動操作によって与えられた回動位置をそのまま維持する。従って、図8の回動操作を繰り返し行った場合では、内輪2に各回動操作ごとの回動量が重畳的に蓄積される。
【0040】
尚、図7〜図9において、外輪1に時計方向の入力トルクが入力された場合も、上記と同様の動作を行う(動作の向きは逆)。また、内輪側から入力トルクを入力する構成とすることもでき、その場合、内輪の外周にカム面を設け、外輪の内周に円周面を設ける。
【0041】
この第1の実施形態によれば、入力側部材としての外輪1が、第1薄肉部材1Aと第2薄肉部材1Bとの2つの部材に対して、プレス加工を施ことにより製作されたものであるため、外輪1が仮に冷間鍛造等により一体成型される場合と比較して、加工が容易化されて製造コストが安価になると共に、外輪1ひいてはクラッチユニットの軽量化を図ることが可能となる。
【0042】
また、第1薄肉部材1Aはクラッチ部の構成要素であるカム面1Aaを有しているのに対して、第2薄肉部材1Bは操作レバー6との結合部である嵌合爪1Baを有しており、要求される剛性或いは硬度が両部材1A,1Bで相違しているが、第1薄肉部材1Aに対してのみ表面硬化処理(熱処理)を施すことにより、それぞれの要求特性に無駄なく対応することができる。
【0043】
次に、クラッチユニットの第2の実施形態を説明する。
【0044】
図10に示すように、この第2の実施形態のクラッチユニットは、入力側部材としての外輪1と、出力側部材としての出力軸12と、制御部材としての内輪13と、静止側部材としての外輪14と、外輪1と内輪13との間に設けられた第1クラッチ部15と、外輪14と出力軸12との間に設けられた第2クラッチ部16とを主要な要素として構成される。
【0045】
入力側部材としての外輪1の構成は、上述の図2〜図4に示すものと同一の構成であるので、その部品単体としての図示及びその説明を省略すると共に、以下に示すクラッチユニットの説明に際しては、図2〜図4及びこれらに付されている符号を使用する。また、保持器4及びセンタリングバネ5の構成についても、上述の図5及び図6に示すものと同一の構成であるので、その部品図としての図示及びその説明を省略すると共に、以下に示すクラッチユニットの説明に際しては、図5及び図6並びにこれらに付されている符号を使用する。
【0046】
図11は、出力側部材としての出力軸12を示している。出力軸12は、一端側にジャーナル部12a、中央側に大径部12b、他端側に連結部12cを備えている。ジャーナル部12aは、後述する内輪(13:図12参照)のラジアル軸受面(13a1)に挿入される。大径部12bの外周には、複数(例えば8つ)のカム面12b1が円周方向に等間隔で形成される。各カム面12b1は、出力軸12の軸心を中心とする円に対して弦をなす平坦面状に形成される。また、大径部12bの一端側部分には軸方向の複数(例えば8つ)のピン孔12b3が円周所定間隔に形成される。これらピン孔12b3には内輪(13)のピン(13b1)が挿入される。また、大径部12bの他端側部分には環状凹部12b4が形成される。この環状凹部12b4には後述する摩擦部材(19:図15参照)が圧入され、また、環状凹部12b4の内周壁12b5は、後述する固定側板(17:図14参照)のラジアル軸受面(17e2)に挿入されるジャーナル面になる。連結部12cには、他の回動部材を連結するための歯型12c1が形成される。
【0047】
出力軸12は、例えば、肌焼鋼、機械構造用炭素鋼、軸受鋼等の鋼材から鍛造加工によって成形され、浸炭焼入れ焼戻し、浸炭窒化焼入れ焼戻し、高周波焼入れ焼戻し、ずぶ焼入れ焼戻し等の適宜の熱処理が施される。この実施形態では、出力軸12を形成する鋼材として肌焼鋼(例えばクロムモリブデン鋼SCM420)を使用し、これに熱処理として浸炭焼入れ焼戻しを行って、表層部の表面硬さを57〜62HRCに調整している。なお、出力軸12は、鋼材の削出し品とすることもできる。
【0048】
図12は、制御部材としての内輪13を示している。内輪13は、筒状部13aと、筒状部13aの一端から外径側に延びたフランジ部13bと、フランジ部13bの外径端から軸方向の一方に延びた複数(例えば8本)の柱部13cとを主体として構成される。筒状部13aは、出力軸12のジャーナル部12aに外挿され、かつ、外輪1の内部に内挿される。筒状部13aの他端側部分の内周には、出力軸12のジャーナル部12aをラジアル方向に支持するラジアル軸受面13a1が形成され、筒状部13aの他端側部分の外周には、外輪1のカム面1Aaとの間に正逆両回転方向に楔隙間を形成する円周面13a2が形成される。
フランジ部13bには、軸方向の一方に突出した複数(例えば8つ)のピン13b1が円周方向に所定間隔で形成される。これらピン13b1は、出力軸12のピン孔12b3にそれぞれ挿入される。また、円周方向に隣接した柱部13c間には、軸方向の一方に向かって開口したポケット13c1が形成され、これらポケット13c1に後述する第2クラッチ部(16:図17参照)のローラ(30)と板ばね(31)が収容される。ローラ(30)と板ばね(31)を、ポケット13c1の軸方向の開口部から該ポケット13c1内に組み入れることができるので、組立作業が容易である。
【0049】
内輪13は、例えば、肌焼鋼、機械構造用炭素鋼、軸受鋼等の鋼材から鍛造加工によって成形され、浸炭焼入れ焼戻し、浸炭窒化焼入れ焼戻し、高周波焼入れ焼戻し、ずぶ焼入れ焼戻し等の適宜の熱処理が施される。この実施形態では、内輪13を形成する鋼材として肌焼鋼(例えばクロムモリブデン鋼SCM420)を使用し、これに熱処理として浸炭焼入れ焼戻しを行って、表層部の表面硬さを57〜62HRCに調整している。なお、内輪13は、鋼材の削出し品、鋼鈑(例えば冷間圧延鋼鈑)のプレス成形品とすることもできる。
【0050】
図13は、静止側部材としての外輪14を示している。外輪14は、半径方向に延びたフランジ部14aと、フランジ部14aの外径端から軸方向の一方に延びた筒状部14cと、筒状部14cの一端から外径側に突出した鍔部14dとを主体として構成される。フランジ部14aには、軸方向の他方に突出した複数(例えば2つ)のストッパ部14a1が円周方向に所定間隔で配列形成される。これらストッパ部14a1は、外輪1のストッパ爪1Afと回転方向に係合して、外輪1の回動範囲を規制する。また、フランジ部14aには、軸方向の他方に突出した一対の係止部14a2と、複数(例えば2つ)の装着部14a3とが形成され、一対の係止部14a2の円周方向外側面には、第1クラッチ部(15)のセンタリングバネ5の係合部5a1、5a2がそれぞれ係止される(図6参照)。また、装着部14a3の外周には、センタリングバネ5の巻き部5aが装着される。
【0051】
筒状部14cの内周には、出力軸12のカム面12b1との間に正逆両回転方向に楔隙間を形成する円周面14c1が形成される。鍔部14dには、複数(例えば6つ)の切欠き部14d1が円周方向に所定間隔で形成される。切欠き部14d1は、後述する固定側板(17)の加締部(17c:図14参照)と適合する。
【0052】
外輪14は、例えば、肌焼鋼、機械構造用炭素鋼、軸受鋼等の鋼材から鍛造加工によって成形され、浸炭焼入れ焼戻し、浸炭窒化焼入れ焼戻し、高周波焼入れ焼戻し、ずぶ焼入れ焼戻し等の適宜の熱処理が施される。この実施形態では、外輪14を形成する鋼材として肌焼鋼(例えばクロムモリブデン鋼SCM420)を使用し、これに熱処理として浸炭焼入れ焼戻しを行って、表層部の表面硬さを57〜62HRCに調整している。なお、外輪14は、鋼材の削出し品、鋼鈑(例えば冷間圧延鋼鈑)のプレス成形品とすることもできる。
【0053】
図14は、外輪14に固定される固定側板17を示している。固定側板17は、半径方向に延びたフランジ部17aと、フランジ部17aの外径端から外径側に突出した複数(例えば4つ)のブラケット部17bと、フランジ部17aの外径端から軸方向の一方に突出した複数(例えば6つ)の加締部17cと、フランジ部17aに穿設された複数(例えば8つ)の係合孔17a1と、フランジ部17aの内径端から軸方向の一方に突出したボス部17eとを主体として構成される。4つのブラケット部17bは円周方向に所定間隔で形成され、それぞれに中空ピン状の加締部17b1が一体(又は別体)に形成される。6つの加締部17cは円周方向に所定間隔で形成され、それぞれ、二股状に分岐した一対の爪部17c1を備えている。この加締部17cを外輪14の切欠き部14d1に装着し、一対の爪部17c1を円周方向の相反する方向に加締めて鍔部14dに当接させることにより、外輪14の固定側板17に対する軸方向相対移動および回転方向相対移動を防止することができる。加締部17b1は、相手側部材の取付け穴に加締固定される。
【0054】
ボス部17eの内周には、ラジアル軸受面17e2が形成される。ボス部17eは出力軸12の環状凹部12b4に挿入され、ボス部17eの外周と環状凹部12b4の外周壁との間に後述する摩擦部材(19:図15参照)が装着される。係合孔17a1は摩擦部材(19)の凸部(19a)と回転方向に係合して、摩擦部材(19)の固定側板17に対する相対回転を防止する。ボス部17eのラジアル軸受面17e2は、環状凹部12b4のジャーナル面12b5に外挿され、ジャーナル面12b5をラジアル方向に支持する。
【0055】
固定側板17は、例えば、冷間圧延鋼鈑等の鋼鈑材からプレス加工によって成形される。この実施形態では、固定側板17を形成する鋼板材として冷間圧延鋼鈑(例えばSPCE)を使用している。また、加締部17c及び17b1を加締加工する際の加工性等に配慮して、熱処理は施していない。なお、加締部17c及び17b1等の加締加工を行う部位に防炭処理(又は防炭防窒処理)を施して、浸炭焼入れ焼戻し(又は浸炭窒化焼入れ焼戻し)を行っても良い。
【0056】
図15は、制動手段としての摩擦部材19を示している。この実施形態において、摩擦部材19はリング状のもので、その一方の端面には複数(例えば8つ)の凸部19aが円周方向に所定間隔で形成される。凸部19aは、固定側板17の係合孔17a1と回転方向に係合して、摩擦部材19の固定側板17に対する相対回転を防止する。
【0057】
摩擦部材19は、ゴムや合成樹脂等の弾性材料で形成され、例えば出力軸12の環状凹部12b4の外周壁に締代をもって圧入される。摩擦部材19の外周と環状凹部12b4の外周壁との間に生じる摩擦力によって、出力軸12に回転方向の制動力(摩擦制動力)が与えられる。この制動力(制動トルク)の大きさは、出力軸12に入力される逆入力トルクの大きさを勘案して適宜設定すれば良いが、逆入力トルクの還流現象を効果的に防止する観点から、想定される逆入力トルクと同程度の大きさに設定するのが好ましい。シート高さ調整装置の場合では、着座シートに着座者が着座した状態で出力軸12に作用する逆入力トルクと同程度(例えば10〜60kgf.cm)の大きさに設定するのが良い。この実施形態のように、制動手段として摩擦部材19を用いると、制動力を摩擦部材19の締代調整によって設定し、また変更できるという利点がある。
【0058】
摩擦部材19の材質は特に問わないが、この実施形態では、摩擦部材19を合成樹脂材料、例えばポリアセタール(POM)にグラスファイバーを30重量%配合した合成樹脂材料の射出成形品としている。
【0059】
図16(図10のB−B断面)は、第1クラッチ部15を示している。第1クラッチ部15は、外輪1に設けられた複数(例えば10個)のカム面1Aaと、内輪13に設けられた円周面13a2と、カム面1Aaと円周面13a2との間に介在する係合子としての複数(例えば9個)のローラ20と、ローラ20を保持する保持器4(図5参照)と、保持器4を外輪(14)に回転方向に連結する弾性部材、例えばセンタリングバネ5(図6参照)とを主要な要素として構成される。カム面1Aa、円周面13a2、及びローラ20によってロック手段が構成され、保持器4およびセンタリングバネ5によって復帰手段が構成される。この実施形態において、カム面1Aaは円周面13a2との間に正逆両回転方向に楔隙間を形成する。また、外輪1には操作レバー23が結合され、操作レバー23から外輪1に正方向又は逆方向の入力トルクが入力される。また、外輪1の内周と内輪13(筒状部13a)の外周との間の空間部、特にカム面1Aaと円周面13a2との間にグリースが封入されている。
【0060】
この第1クラッチ部15の構成は、既述の第1の実施形態のクラッチ部8と比較すれば、内輪13が出力側部材としての出力軸12の外周側に配置されている制御部材である点のみが相違しており、その他の構成は同一である。従って、第1クラッチ部15の作用については、既述の図7〜図9に基づく説明事項と実質的に同一であるため、これらの各図における対応する構成要素の符号に括弧を付してその説明を省略する。
【0061】
図17(図10のA−A断面)は、第2クラッチ部16を示している。第2クラッチ部16は、外輪14に設けられた円周面14c1と、出力軸12に設けられた複数(例えば8つ)のカム面12b1と、各カム面12b1と円周面14c1との間に介在する係合子としての一対(例えば総数8対)のローラ30と、一対のローラ30間に介在する弾性部材、例えば断面N字形の板バネ31と、内輪13の柱部13cと、内輪13のピン13b1および出力軸12のピン孔12b3とを主要な要素として構成される。カム面12b1、円周面14c1、一対のローラ30、および板ばね31によってロック手段が構成され、一対のローラ30の円周方向両側に位置する内輪13の柱部13cによってロック解除手段が構成され、内輪13のピン13b1および出力軸12のピン孔12b3によってトルク伝達手段が構成される。なお、この実施形態において、板バネ31はステンレス鋼(例えばSUS301CPS−H)で形成し、熱処理としてテンパー処理を施している。また、外輪14の内周と出力軸12(大径部12b)の外周との間の空間部、特にカム面12b1と円周面14c1との間にグリースが封入されている。
【0062】
図18に拡大して示すように、中立位置において、一対のローラ30は板ばね31によって、それぞれ、カム面12b1と円周面14c1との間に形成される正逆両回転方向の楔隙間の方向に押圧される。この時、内輪13の各柱部13cと各ローラ30との間にはそれぞれ回転方向隙間δ1が存在する。また、内輪13のピン13b1と出力軸12のピン孔12b3との間には正逆両回転方向にそれぞれ回転方向隙間δ2が存在する。回転方向隙間δ1と回転方向隙間δ2とは、δ1<δ2の関係を有する。回転方向隙間δ1の大きさは、例えば0〜0.4mm(第2クラッチ部16の軸心を中心として0〜1.5°)程度、回転方向隙間δ2の大きさは、例えば0.4〜0.8mm(第2クラッチ部16の軸心を中心として1.8〜3.7°)程度である。
【0063】
同図に示す状態で、例えば、出力軸12に時計方向の逆入力トルクが入力されると、反時計方向(回転方向後方)のローラ30がその方向の楔隙間と楔係合して、出力軸12が外輪14に対して時計方向にロックされる。出力軸12に反時計方向の逆入力トルクが入力されると、時計方向(回転方向後方)のローラ30がその方向の楔隙間と楔係合して、出力軸12が外輪14に対して反時計方向にロックされる。従って、出力軸12からの逆入力トルクは、第2クラッチ部16によって正逆両回転方向にロックされる。
【0064】
図19は、外輪1からの入力トルク(同図で時計方向)が第1クラッチ部15を介して内輪13に入力され、内輪13が同図で時計方向に回動を始めた初期状態を示している。回転方向隙間がδ1<δ2に設定されているため、先ず、内輪13の反時計方向(回転方向後方)の柱部13cがその方向(回転方向後方)のローラ30と係合して、これを板ばね31の弾性力に抗して時計方向(回転方向前方)に押圧する。これにより、反時計方向(回転方向後方)のローラ30がその方向の楔隙間から離脱して、出力軸12のロック状態が解除される。従って、出力軸12は時計方向に回動可能となる。
【0065】
内輪13がさらに時計方向に回動すると、図20に示すように、内輪13のピン13b1が出力軸12のピン孔12b3と時計方向に係合する。これにより、内輪13からの時計方向の入力トルクがピン13b1およびピン孔12b3を介して出力軸12に伝達され、出力軸12が時計方向に回動する。外輪1に反時計方向の入力トルクが入力された場合は、上記とは逆の動作で出力軸12が反時計方向に回動する。従って、外輪1からの正逆両回転方向の入力トルクは、第1クラッチ部15、内輪13、およびトルク伝達手段としてのピン13b1およびピン孔12b3を介して出力軸12に伝達され、出力軸12が正逆両回転方向に回動する。なお、内輪13からの入力トルクがなくなると、板ばね31の弾性復元力によって図18に示す中立位置に復帰する。
【0066】
上述した外輪1、出力軸12、内輪13、外輪14、第1クラッチ部15、第2クラッチ部16、固定側板17および摩擦部材19を図10に示す態様でアッセンブリすると、この実施形態のクラッチユニットが完成する。外輪1には例えば樹脂製の操作レバー23が結合され、出力軸12は図示されていない出力側機構の回動部材に連結される。また、固定側板17は図示されていないケーシング等の固定部材に加締部17b1で加締固定される。なお、外輪1は、第2薄板部材1Bの外側に装着されたワッシャ(又はナット)28と外輪14のフランジ部14aとの間で軸方向の両側に抜け止め規制される。
【0067】
第1クラッチ部15において、センタリングバネ5は外輪1(第1薄肉部材1A)のストッパ爪1Afの内周に収容され、外輪1の一方の端面と外輪14のフランジ部14aとの間で軸方向の両側に抜け止め規制される。また、保持器4およびローラ20は、外輪1の内径フランジ部1Acと外輪14のフランジ部14aとの間で軸方向の両側に抜け止め規制される。第1クラッチ部15の保持器4、ローラ20、およびセンタリングバネ5が外輪1の内部に収容されており、入力側部分に突出した部分がない。また、保持器4が内輪13の円周面13a2に外挿され、保持器4の回動が内輪13の円周面13a2によって案内されるので、回動時の保持器4の傾きがなく、円滑なクラッチ動作が可能である。
【0068】
第2クラッチ部16は、外輪14と固定側板17とで囲まれた空間部に径方向および軸方向にコンパクトに収められている。また、ロック解除手段としての柱部13cと、トルク伝達手段としてのピン13b1が内輪13に一体に設けられているので、部品点数が少なく、構造も簡単である。また、柱部13c間のポケット13c1が軸方向の一方(固定側板17側)に開口した形状であるため、出力軸12、内輪13、外輪14等をアッセンブリした後、ローラ30と板ばね31を、ポケット13c1の軸方向の開口部から該ポケット13c1内に組み入れることができ、組立作業が容易である。
【0069】
さらに、出力軸12を内輪13のラジアル軸受面13a1と固定側板17のラジアル軸受面17e2によって両持ち的に支持する構造であるため、出力軸12の回動動作が安定し、しかも第1クラッチ部15および第2クラッチ部16に偏荷重が作用しにくく、円滑なクラッチ動作が可能である。
【0070】
しかも、入力側部材としての外輪1が、第1薄肉部材1Aと第2薄肉部材1Bとの2つの部材に対して、プレス加工を施ことにより製作されたものであるため、加工が容易化されて製造コストが安価になると共に、外輪1ひいてはクラッチユニットの軽量化を図ることが可能となる。
【0071】
また、第1薄肉部材1Aと第2薄肉部材1Bとでは、要求される剛性或いは硬度が相違しているが、第1薄肉部材1Aに対してのみ表面硬化処理(熱処理)を施すことにより、それぞれの要求特性に無駄なく対応することができる。
【0072】
図21は、自動車の乗員室に装備される座席シート40を示している。座席シート40は着座シート40aと背もたれシート40bとで構成され、着座シート40aの高さHを調整するシート高さ調整装置41、背もたれシート40bの傾斜θを調整するシート傾斜調整装置42、および着座シート40aの前後位置Lを調整するシートスライド調整装置(図示省略)を備えている。着座シート40aの高さHの調整はシート高さ調整装置41の操作レバー41a(図1の操作レバー6、図16の操作レバー23に対応)によって行い、背もたれシート40bの傾斜θの調整はシート傾斜調整装置42の操作レバー42aによって行い、着座シート40aの前後位置Lの調整はシートスライド調整装置の操作レバー(図示省略)によって行う。上述した実施形態のクラッチユニットは、例えばシート高さ調整装置41に組込まれる。
【0073】
図22(a)は、シート高さ調整装置41の一構造例を概念的に示している。
シートスライドアジャスタ41bのスライド可動部材41b1にリンク部材41c、41dの一端がそれぞれ回動自在に枢着される。リンク部材41cの他端はリンク部材41eを介してセクターギヤ41fに回動自在に枢着される。セクターギヤ41fは着座シート40aに回動自在に枢着され、支点41f1回りに揺動可能である。リンク部材41dの他端は着座シート40aに回動自在に枢着される。上述した実施形態のクラッチユニットXは、固定側板7を介して着座シート40aの適宜の部位に固定され、その外輪1に例えば樹脂製の操作レバー41a(図16における操作レバー23に相当)が結合され、出力軸12にセクターギヤ41fと噛合するピニオンギヤ41gが連結される。
【0074】
例えば、図22(b)において、操作レバー41aを反時計方向(上側)に揺動操作すると、その方向の入力トルクがクラッチユニットXを介してピニオンギヤ41gに伝達され、ピニオンギヤ41gが反時計方向に回動する。そして、ピニオンギヤ41gと噛合するセクターギヤ41fが時計方向に揺動して、リンク部材41cの他端をリンク部材41eを介して引っ張る。その結果、リンク部材41cとリンク部材41dが共に起立して、着座シート40aの座面が高くなる。このようにして、着座シート40aの高さHを調整した後、操作レバー41aを開放すると、操作レバー41aが第1クラッチ部15のセンタリングバネ5の弾性力(弾性復元力)によって時計方向に回動して元の位置(中立位置)に戻る。なお、操作レバー41aを時計方向(下側)に揺動操作した場合は、上記とは逆の動作によって、着座シート41aの座面が低くなる。また、高さ調整後に操作レバー41aを開放すると、操作レバー41aが反時計方向に回動して元の位置(中立位置)に戻る。
【0075】
上記構成のシート高さ調整装置41によれば、操作レバー41aの揺動操作のみで着座シート40aの高さHを調整することができ、しかも、高さ調整後の着座シート40aの高さ位置を自動的に保持することができる。また、高さ調整後に操作レバー41aを開放すると、操作レバー41aを中立位置に自動復帰させることができ、その場合でも復帰時の動作が円滑でラチェット機構のような騒音発生の問題も生じない。さらに、摩擦部材19によって出力軸12に回転方向の制動力を与えているので、操作レバー41aの操作時における逆入力トルクの還流現象がなく(又は少なく)、安定した調整操作が可能である。
【0076】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、座席シートの座席シート調整装置に組み込まれるクラッチユニットにおいて、クラッチ部を構成するカム面と、トルクを入力する操作部材が取付けられる取付部とを備えた入力側部材を、カム面を有する第1薄肉部材と、操作部材を取付ける取付部を有する第2薄肉部材とを相対回転不能に結合して構成したから、入力側部材を例えば冷間鍛造等により一体成型する場合と比較して、加工が容易化されて製造コストが安価になる。
【0077】
また、第1薄肉部材と第2薄肉部材とは、それぞれの役割に応じた最小限の肉厚を確保すれば良いため、無駄な肉部が存在しなくなり、入力側部材ひいてはクラッチユニットの軽量化を図ることが可能となる。
【0078】
しかも、第1薄肉部材と第2薄肉部材とでは要求される硬度或いは強度等の特性が相違していることに対応して、材質や加工条件或いは熱処理条件等を両部材で相違させることができ、両部材のそれぞれの要求特性に無駄なく対応しつつ、加工や熱処理等を施すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係るクラッチユニットの全体構成を示す縦断側面図{図1(a)}、図1(a)のB−B断面図{図1(b)}である。
【図2】第1の実施形態に係るクラッチユニットの入力側部材の第1薄肉部材を示す斜視図{図2(a)}、縦断側面図{図2(b)}、正面図{図2(c)}である。
【図3】第1の実施形態に係るクラッチユニットの入力側部材の第2薄肉部材を示す斜視図{図3(a)}、縦断側面図{図3(b)}、正面図{図3(c)}である。
【図4】第1の実施形態に係るクラッチユニットの入力側部材を示す単体斜視図である。
【図5】第1の実施形態に係るクラッチユニットの保持器を示す縦断正面図{図5(a)}、縦断側面図{図5(b)}、正面図{図5(c)}である。
【図6】第1の実施形態に係るクラッチユニットのセンタリングバネを示す側面図{図6(a)}、正面図{図6(b)}、その作用を示す正面図{図6(c)、(d)}、要部拡大一部破断側面図(図6(e))である。
【図7】第1の実施形態及び第2の実施形態に係るクラッチユニットの動作を概念的に説明する模式図である。
【図8】第1の実施形態及び第2の実施形態に係るクラッチユニットの動作を概念的に説明する模式図である。
【図9】第1の実施形態及び第2の実施形態に係るクラッチユニットの動作を概念的に説明する模式図である。
【図10】第2の実施形態に係るクラッチユニットの全体構成を示す縦断側面図である。
【図11】第2の実施形態に係るクラッチユニットの出力軸を示す正面図{図11(a)}、図11(a)のB−B線断面図{図11(b)}である。
【図12】第2の実施形態に係るクラッチユニットの内輪(制御部材)を示す正面図{図12(a)}、図12(a)のB−B線断面図{図12(b)}、要部拡大図{図12(c)}である。
【図13】第2の実施形態に係るクラッチユニットの外輪(静止側部材)を示す正面図{(図13(a)}、図13(a)のB−B線断面図{図13(b)}である。
【図14】第2の実施形態に係るクラッチユニットの固定側板を示す正面図{図14(a)}、図14(a)のB−B線断面図{図14(b)}である。
【図15】第2の実施形態に係るクラッチユニットの摩擦部材(制動手段)を示す正面図{図15(a)}、縦断側面図{図15(b)}である。
【図16】第2の実施形態に係るクラッチユニットの第1クラッチ部を示す図10のB−B線断面図である。
【図17】第2の実施形態に係るクラッチユニットの第2クラッチ部を示す図10のA−A線断面図である。
【図18】上記第2クラッチ部の作用を示す部分拡大正面図である(中立位置)。
【図19】上記第2クラッチ部の作用を示す部分拡大正面図である(ロック解除時)。
【図20】上記第2クラッチ部の作用を示す部分拡大正面図である(トルク伝達時)。
【図21】自動車の座席シートを示す概念図である。
【図22】図22(a)はシート高さ調整装置の一構造例を示す概念図、図22(b)はその要部拡大図である。
【符号の説明】
1 外輪(入力側部材)
1A 第1薄肉部材
1Aa カム面
1Ae 嵌合溝(溝部)
1B 第2薄肉部材
1Ba 嵌合爪
2 内輪(出力側部材)
2a 円周面
3 ローラ(係合子)
4 保持器
5 センタリングバネ(弾性部材)
6 操作レバー(操作部材)
8 クラッチ部
12 出力軸(出力側部材)
13 内輪(制御部材)
14 外輪(静止側部材)
15 第1クラッチ部
16 第2クラッチ部
23 操作レバー(操作部材)

Claims (5)

  1. 着座シートと、背もたれシートと、座席シート調整装置とを有する座席シートにおいて、
    前記座席シート調整装置は、その操作レバーと回動部材との間に介装されるクラッチユニットを有し、
    前記クラッチユニットは、前記操作レバーに結合される入力側部材と、前記回動部材に連結される出力側部材と、前記入力側部材と前記出力側部材との間のトルク伝達経路に介在する制御部材と、回転が拘束される静止側部材と、前記入力側部材と前記制御部材との間に設けられた第1クラッチ部と、前記静止側部材と前記出力側部材との間に設けられた第2クラッチ部とを備え、前記入力側部材からの正逆方向の入力トルクを前記第1クラッチ部および前記制御部材を介して前記出力側部材に伝達し、前記出力側部材からの正逆方向の逆入力トルクを前記第2クラッチ部を介して前記静止側部材との間でロックするように構成され、
    前記入力側部材が、前記第1クラッチ部を構成するカム面を有すると共に、少なくとも該カム面に表面硬化処理が施された第1薄肉部材と、前記操作レバーが取付けられる第2薄肉部材とを相対回転不能に結合して構成され、
    前記第2薄肉部材の外径端部に前記操作レバーの取付部を設けると共に、前記第1薄肉部材と第2薄肉部材とを、その両者の外径端部で凹凸嵌合構造により結合したことを特徴とする座席シート。
  2. 前記第1薄肉部材と第2薄肉部材との少なくとも何れか一方がプレス成型品である請求項1に記載の座席シート。
  3. 前記第2薄肉部材が樹脂成型品である請求項1又は2記載の座席シート。
  4. 前記座席シート調整装置が、着座シートのシート高さ調整装置である請求項1〜のいずれかに記載の座席シート。
  5. 前記シート高さ調整装置は、着座シートをスライド可動部材に対して昇降自在に支持する四節リンク機構と、前記着座シートに回動自在に枢着され、前記四節リンク機構にリンク部材を介して連結されるセクターギヤと、前記クラッチユニットの出力側部材に連結され、前記セクターギヤと噛合するピニオンギヤとを備えている請求項記載の座席シート。
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