JP4094257B2 - 座席シート - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の乗員室等に装備される座席シートに関する。
【0002】
【従来技術】
例えば、自動車の座席シートにおける着座シートのシート高さ調整装置では、着座シートからの荷重(シート自重および着座者の体重等)を支持するためのブレーキ部を出力側機構に設け、該ブレーキ部の入力軸に操作部材から正方向又は逆方向の入力トルクを入力することによって着座シートの高さ調整を行うと共に、操作部材を開放した状態での着座シートの位置をブレーキ部で保持することによって着座シートの高さ位置に変動が生じないようにしている。この場合、操作後の操作部材の位置もブレーキ部によって保持されるので、操作部材としてノブ(円形状の握り)を使用し、ノブの回転操作によってブレーキ部に入力トルクを入力する構成にしている。このような構成の座席シートとして、例えば特開2000−190762号公報に記載された構成が知られており、図22および図23はその主要部を示している。
【0003】
図22に示すように、ロアレール111にアッパレール113がスライド自在に装着され、アッパレール113にフロントリンク331およびリアリンク335を介してロアアーム121が連結される。着座シートはロアアーム121に装着され、フロントリンク331およびリアリンク335のリンク動作に伴って昇降する。
【0004】
また、ロアアーム121の略中央部にドリブンギヤ371が回動自在に枢着され、ドリブンギヤ371の一端がリアリンク335のアーム部335aに連結リンク377を介して連結される。ドリブンギヤ371のギヤ部は減速ギヤ機構のピニオン281と噛合し、ピニオン281へは、減速ギヤ機構のギヤ283を介して、ブレーキ機構401のピニオン403からトルクが入力される。
【0005】
図23に示すように、ブレーキ機構401は、ストッパケース448内に、ストッパケース448の内壁に圧接するようにトーションスプリング449を装着した後、コア450と一体となったハンドル軸451をストッパケース448内に挿入し、コア450の切欠き450aの側端部450b、450cをトーションスプリング449の両端のフック部449a、449bに当接可能とし、その後、ピニオン403の爪部452をフック部449a、449b間に配置し、ピニオン403をハンドル軸451の一端に挿通することにより構成されている。
【0006】
そして、ハンドル軸451の他端にはセレーションが刻設されたセレーション部451aが設けられ、セレーション部451aにリフト操作ハンドル439が取り付けられ、止輪447でもって抜け止めがなされている。
【0007】
リフト操作ハンドル439を操作すると、その回動方向で決まる何れかのフック部449a若しくは449bに、コア450の側端部450b若しくは450cが当接し、それを巻き込んでトーションスプリング449の外径が縮まり、ストッパケース448の内壁との圧接が解除され、トーションスプリング449はコア450と共に回転し、コア450の側端部450b又は側端部450cがピニオン403の爪部452を押してピニオン403が回転する。
【0008】
そして、ピニオン403からのトルクが減速ギヤ機構のギヤ283およびピニオン281を介してドリブンギヤ371に入力され、ドリブンギヤ371が時計方向又は反時計方向に揺動する。これにより、リアリンク335が回動し、フロントリンク331およびリアリンク335がリンク動作を行って、ロアアーム121および着座シートが昇降する。
一方、ピニオン403から回動力を受けた際には、トーションスプリング449の外径が広がり、ストッパケース448の内壁への圧接力がより増大し、ピニオン403は回転しない。従って、ロアアーム121および着座シートはその位置を保持する。
【0009】
さらに、上記公報記載の座席シートには、フロントチルト調整装置、すなわち、着座者の大腿部を支持する着座シートの前部を、着座者の体格や好みなどに応じて傾斜調整するための装置も装備されている。このフロントチルト調整装置は次のようなものである。
クッションフレームは、前部クッションフレーム221と後部クッションフレーム201とで構成され(前部クッションフレーム221と後部クッションフレーム201との間に弾性部材、例えば複数のSばねが橋渡し状に設けられ、前部クッションフレーム221、後部クッションフレーム201、及び複数のSばね251によってクッションパッド521が支持される。)、前部クッションフレーム221はロアアーム121にピン503を介して回動自在に枢着される。また、前部クッションフレーム221には、上述したブレーキ機構401と同一構成のブレーキ機構601が装着され、その出力軸側のピニオン511が、ロアアーム121の先端部に設けられた歯501と噛合する。
ブレーキ機構601のチルト操作ハンドル(ブレーキ機構401のリフト操作ハンドル439と同様のハンドル)を操作すると、ピニオン511が回転し、これにより、前部クッションフレーム221がロアアーム121に対してピン503を中心に回動して、その位置が調整される。また、前部クッションフレーム221の調整後の位置がブレーキ機構601によって保持される。
【0010】
また、シート高さ調整装置の操作部材としてレバーを使用し、レバーとブレーキ部との間にラチェット機構を設けて、レバーの揺動操作によるトルク入力と、操作後のレバーの自動復帰とを可能にしたものある。このような構成の座席シートとして、例えば特開2000−280799号公報に記載された構成が知られており、図24および図25はその主要部を示している。
【0011】
図24に示すように、ロアレール110にアッパレール120がスライド自在に装着され、アッパレール120にフロントリンク210およびリアリンク220を介してロアアーム130が連結される。着座シートはロアアーム130に装着され、フロントリンク210およびリアリンク220のリンク動作に伴って昇降運動する。
【0012】
また、ロアアーム130の略中央部にギヤアーム240が回動自在に枢着され、ギヤアーム240の一端がリアリンク220のアーム部にリンク250を介して連結される。ギヤアーム240のセクタギヤ部241は減速ギヤ機構の小径ギヤ232と噛合し、小径ギヤ232へは、減速ギヤ機構の大径ギヤ231を介して、ピニオン315からトルクが入力される。ピニオン315へは、ハンドル機構300のハンドル301から、ヒンジピン310およびブレーキ機構400を介してトルクが入力される。尚、ハンドル機構300およびブレーキ機構400はロアアーム130の背面側に設けられる。
【0013】
図25に示すように、ロアアーム130に設けられたブレーキ機構400を覆うように、ベースプレート320が配設される。ブレーキ機構400とベースプレート320との間に挿入されるハンドル301の中間部が、ピン321を用いてベースプレート320に回転可能に取り付けられる。
【0014】
ハンドル301の一方の端部側には、樹脂製の取手309が取り付けられる。ヒンジピン310はブレーキ機構400を挿通し、外部に突出し、ベースプレート320に形成された穴に回転可能に嵌合している。
【0015】
ハンドル301の他方の端部には、ハンドル301の回転中心であるピン321を中心とする円弧状の長穴303が形成され、この長穴303にブレーキ機構400から突出したヒンジピン310が遊嵌している。
【0016】
ハンドル301とブレーキ機構400との間のヒンジピン310には、セレーション等の手段によりラチェット330が固着されている。ヒンジピン310には、ベースプレート320に当接可能なEリング360が係合しヒンジピン310のロアアーム130方向の抜け止めがなされる。
【0017】
ベースプレート320には、それらの一方の端部側がラチェット330を挟むように設けられたポール340、340’の中間部がピン341、341’を用いて回動可能に設けられている。
【0018】
各ポール340、340’の一方の端部側には、ラチェット330に噛合可能な歯343、343’が形成される。また、各ポール340、340’の他方の端部側には、ハンドル301に形成されたポール当接部305、305’が当接可能なハンドル当接部347、347’が形成される。
【0019】
さらに、各ポール340,340’の他方の端部側には、ロアアーム130側に折曲された折曲部345、345’が形成され、一方の端部が折曲部345に他方の端部が折曲部345’に係止されたスプリング350によって、ポール340、340’は、歯343、343’がラチェット330より離れる方向に付勢され、各ポール340、340’のハンドル当接部347、347’は、ハンドル301のポール当接部305、305’に当接する。
【0020】
この時、ハンドル301の長穴303の略中間位置に、ヒンジピン310が位置している。ブレーキ機構400の外周を巻回するように設けられたスプリング390の端部391、392は、ハンドルの301の取手309から離れる方向に延出している。
【0021】
ハンドル301の取手309側と反対側のベースプレート320には、折曲してスプリング390の端部391、392間に位置する折曲部323が形成されている。
【0022】
また、ロアアーム130上には、スプリング390の端部391、392間に位置するスプリングフック395が取り付けられている。
【0023】
ブレーキ機構400は、ハンドル301からの回転力に対しては、ヒンジピン310を回転可能とし、ピニオン315からの回転力に対しては、ヒンジピン310の回転を拘束する機能をもったものである。ここでは、ブレーキ機構400の構造の説明は省略する。
【0024】
例えば、図25において、ハンドル301の取手309を上方に引き上げると、ハンドル301はピン321を中心に回転する。そうすると、ハンドル301のポール当接部305がポール340のハンドル当接部347を押し、ポール340はスプリング350の付勢力に抗してピン341を中心に回転し、ポール340の歯343がラチェット330に係合する。略同時に、ハンドル301の長穴303の上部端部がヒンジピン310に当接し、これ以降は、ハンドル301の回転中心はヒンジピン310となり、ハンドル301の回転は、ラチェット330を介して、ラチェット330が固着されたヒンジピン310に伝達され、ヒンジピン310が時計方向に回転する。この時、ベースプレート320もヒンジピン310を中心に回転し、折曲部323がスプリング390の端部392を押し、スプリング390を縮径方向へ弾性変形させる。
【0025】
ヒンジピン310が時計方向に回転すると、図24において、ピニオン315が反時計方向に回転し、これにより、ロアーアーム130はアッパレール120に対して下降する。そして、所望の高さになった時点で、ハンドル301の取手309への操作力を解除すると、スプリング390の弾性復元力によって、ベースプレート320、ハンドル301は中立位置に回転復帰する。さらに、スプリング350の弾性復元力により、ハンドル301は、その長穴303の略中間位置にヒンジピン310が位置するまで回転復帰する。
尚、図1において、ハンドル301の取手309を下方へ押し下げた場合は、上記とは逆の動作を行う。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
特開2000−190762号公報に記載された座席シートでは、着座シート(ロアアーム121)を最下位置と最上位置との間で昇降移動させるのに、操作ノブ(操作ハンドル439)を回転操作するが、通常、自動車のドアと座席シートとの間の間隔部は狭く、操作者はこの狭い間隔部に手を入れて操作ノブを一定量回転させ、一旦持ち替えて、さらに操作ノブを回転させるという操作を繰り返さなければならない。そのため、操作性が良くないという問題点がある。また、円形状の操作ノブでは、操作力を軽くしようとするとノブ外径を大きくする必要があるが、操作者が握って操作することができるノブ外径には限度がある。そのため、操作力が重くなる傾向にある。これらの問題点は、シート高さ調整装置のみならず、フロントチルト調整装置にも該当する。
一方、特開2000−280799号公報に記載された座席シートでは、操作レバー(ハンドル301)を揺動操作して一旦手を離すと、スプリング390の弾性復元力によって操作レバーが中立位置に復帰するが、その際、ポール340、340’の歯がラチェット330の歯の上を滑るので、滑り音が発生するという問題がある。また、スプリング390の端部391、392が外部に露出しているため、操作レバーの揺動操作時に、端部391、392がシートの表皮やバッド等に引っ掛かり、表皮やバッド等の傷付き、操作性の悪化につながる可能性がある。
また、上記2件の公報に記載された座席シートでは、スプリングの圧接力でブレーキ力を与える構造のブレーキ機構を採用しており、強いブレーキ力は期待できない。そのため、着座シート側からの逆入力トルクがドリブンギヤ(セクタギヤ)からブレーキ機構のピニオンに直接入力されると、その逆入力トルクがブレーキトルクよりも大きくなって着座シートの位置を保持できなくなる可能性があり、これを防止するために、ドリブンギヤ(セクタギヤ)とブレーキ機構のピニオンとの間に減速ギヤ機構(図22のギヤ283及びピニオン281、図24の大径ギヤ231及び小径ギヤ232)を介装して、ブレーキ機構のピニオンに入力される逆入力トルクを減少させている。しかしながら、このような減速ギヤ機構を介装することにより、操作部材の操作によるピニオンの回転量に対しドリブンギヤの回転量が減少するため、操作回数が多くなって、操作性が良くないという問題点がある。また、減速ギヤ機構を配置する必要があることで、部品点数が増加すると共に(減速ギヤ機構自身に加え、例えば、減速ギヤ機構のピニオンとドリブンギヤとの噛み合い保持のため、減速ギヤ機構の軸方向移動を規制するプレートなども必要になる。)、組立工数も増加するという問題点がある。さらに、減速ギヤ機構が存在することで、操作部材及びドリブンギヤのレイアウトが制約され、設計上の自由度が小さくなるという問題点もある。
【0027】
本発明の目的は、シートの位置調整操作時の操作性が良く、しかも騒音発生のない座席シートを提供することにある。
本発明の他の目的は、部品点数が少ないため構造が簡単で、設計自由度の高い座席シートを提供することにある。
【0028】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、操作部材からのトルク入力によってシートの位置調整を行うシート調整装置を有する座席シートにおいて、シート調整装置は、操作部材としての操作レバーと、シートの所要部位を調整移動可能とする移動機構と、操作レバーと移動機構の回動部材との間に介在するクラッチユニットとを備え、クラッチユニットが、操作レバーに結合される入力側部材と、移動機構の回動部材に連結される出力側部材と、入力側部材と出力側部材との間のトルク伝達経路に介在する制御部材と、回転が拘束される静止側部材と、入力側部材と制御部材との間に設けられた第1クラッチ部と、静止側部材と出力側部材との間に設けられた第2クラッチ部とを備え、第1クラッチ部は、操作レバーからの入力トルクに対して入力側部材と制御部材とをロックするロック手段と、操作レバーが解放されたときに操作レバーおよび入力側部材を入力トルクが入力される前の中立位置に復帰させる復帰手段とを備え、第1クラッチ部のロック手段は、制御部材に設けられた円周面と、入力側部材に設けられ、円周面との間に正逆両回転方向に楔隙間を形成するカム面と、カム面と円周面との間に介在する係合子とを備え、復帰手段は、係合子を保持する保持器と、保持器を静止側部材に回転方向に連結する弾性部材とを備えた構成を提供する。この構成において、操作レバーからの入力トルクはクラッチユニットの第1クラッチ部および制御部材を介して出力側部材に伝達され、これにより移動機構の回動部材が回動してシートの所要部位が調整移動する。一方、シート(移動機構)からの逆入力トルクはクラッチユニットの第2クラッチ部を介して静止側部材との間でロックされ、これによりシートの位置が保持される。したがって、操作レバーの操作によってシートの位置を調整することができ、また、調整後のシートの位置を保持することができる。また、入力側部材と制御部材との間に第1クラッチ部を設けているので、シートの位置調整後に、操作レバー(及び入力側部材)を中立位置(入力トルクが入力される前の位置)に復帰させることが可能であり、その場合でも復帰時の動作が円滑でラチェット機構のような騒音発生の問題も生じない。
【0029】
ここで、上記の「シート調整装置」には、着座シートの高さを調整するシート高さ調整装置、着座シートの前部を傾斜調整するフロントチルト調整装置、着座シートの前後位置を調整するシートスライド調整装置、背もたれシートを傾斜調整するシート傾斜調整装置が含まれる。第1クラッチ部は、操作レバーからの入力トルクに対して入力側部材と制御部材とをロックするロック手段と、操作レバーが解放されたときに操作レバー(及び入力側部材)を入力トルクが入力される前の中立位置に復帰させる復帰手段とを備えており、シートの位置調整後に操作レバーを解放すると、操作レバー(及び入力側部材)が復帰手段により中立位置まで自動復帰するので、操作性が向上する。
【0032】
上記構成において、入力側部材に入力トルクが入力されると、入力側部材の回動に伴い、カム面が係合子に対して回転方向に相対移動して、係合子が楔隙間に係合する。これにより、入力側部材からの入力トルクが係合子を介して制御部材に伝達され、入力側部材、係合子、保持器、及び制御部材が一体となって回動する。その際、保持器の回動に伴い、保持器を静止側部材に連結する弾性部材が撓み、その撓み量に応じた弾性力が弾性部材に蓄積される。そして、入力側部材を所定量回動させたのち開放すると、弾性部材に蓄積された弾性力によって保持器に回動力が働き、係合子が保持器に押されてカム面を押圧することにより、係合子、保持器、及び入力側部材が制御部材に対して空転して、中立位置に復帰する。
【0033】
上記構成において、入力側部材の回動範囲を規制するストッパ部を静止側部材に設けることにより、入力側部材の回動量が過大となって、弾性部材に無理な力が加わるのを防止することができると同時に、構造の簡略化を図ることができる。さらに、係合子、保持器、および弾性部材を入力側部材の内部に収容した構成とすることにより、入力側部分がコンパクトになると同時に、入力側部分に突起物がなくなるので、操作レバーの動作時に入力側部分の突起物によってシートの表皮やパッド等を噛込むといった不都合がなく、操作性が向上し、また座席シートの設計自由度も向上する。尚、カム面は入力側部材に直接形成しても良いし、カム面を有する部材を入力側部材に装着しても良い。また、係合子としては、ローラを用いるのが好ましい。
【0034】
第2クラッチ部は、シート(移動機構)からの逆入力トルクに対して出力側部材と静止側部材とをロックするロック手段と、操作レバーからの入力トルクに対してロック手段によるロック状態を解除するロック解除手段と、ロック手段によるロック状態が解除された状態のときに制御部材と出力側部材との間で入力トルクを伝達するトルク伝達手段とを備えた構成とすることができる。この構成によれば、シートの位置調整を操作レバーからの入力トルクの入力操作で行い、かつ、調整後のシートの位置を自動的に保持することができるので、操作性が向上する。
【0035】
ここでのロック手段には、楔係合力、凹凸係合力、摩擦力、磁気力、電磁力、流体圧力、流体粘性抵抗力、微粒子媒体などによって回転拘束力を与えるものが含まれるが、構造や制御機構の簡素化、動作の円滑化、コストの面等から楔係合力によって回転拘束力を与えるものが好ましい。また、楔係合力によって回転拘束力を与える構成とすることにより、前述した従来のブレーキ機構に比べて、大きな回転拘束力(ブレーキ力)を得ることができるので、従来構成における減速ギヤ機構を省略することが可能となる。具体的には、出力側部材と静止側部材との間に楔隙間を形成し、この楔隙間に対して係合子を楔係合・離脱させることによって、ロック・空転を切換える構成とするのが良い。また、この構成には、楔隙間を形成するためのカム面を出力側部材又は静止側部材に設けた構成(係合子としてローラ、ボール等の円形断面のものを用いる。)、楔隙間を形成するためのカム面を係合子に設けた構成(係合子としてスプラグ等を用いる。)が含まれる。
【0036】
より好ましくは、ロック手段は、静止側部材に設けられた円周面と、出力側部材に設けられ、円周面との間に正逆両回転方向に楔隙間を形成するカム面と、カム面と円周面との間に介在する一対の係合子と、一対の係合子間をそれぞれ楔隙間の向きに押圧する弾性部材とを備え、ロック解除手段は、一対の係合子のうち何れか一方と択一的に係合して、これを楔隙間の向きと反対方向に押圧する係合要素を備え、トルク伝達手段は、制御部材および出力側部材に設けられた回転方向の係合要素を備えた構成とすることができる。
【0037】
上記構成において、シート(移動機構)から出力側部材に一方向の逆入力トルクが入力されると、一対の係合子のうち一方がその方向の楔隙間と楔係合して、出力側部材を静止側部材に対して一方向にロックし、シート(移動機構)から出力側部材に他方向の逆入力トルクが入力されると、一対の係合子のうち他方がその方向の楔隙間と楔係合して、出力側部材を静止側部材に対して他方向にロックする。従って、シート(移動機構)からの逆入力トルクに対して、出力側部材は一対の係合子を介して静止側部材に対して正逆両回転方向にロックされる。一方、操作レバーから入力側部材に入力トルクが入力されると、先ず、ロック解除手段の係合要素が一対の係合子のうち、その入力トルクの方向に楔隙間と楔係合する係合子を該楔隙間の向きと反対方向に押圧して、該楔隙間から離脱させる。これにより、出力側部材のロック状態がその入力トルクの方向に解除される。次に、出力側部材のロック状態が解除された状態で、制御部材および出力側部材に設けられた回転方向の係合要素が相互に係合する。これにより、操作レバーから入力側部材に入力された入力トルクが、入力側部材→第1クラッチ部→制御部材→トルク伝達手段(係合要素)→出力側部材→移動機構という経路で伝達され、シートが調整移動する。
【0038】
上記のロック解除手段によるロック解除と、トルク伝達手段によるトルク伝達とを逐次的かつ確実に行わせるため、ロック解除手段およびトルク伝達手段の中立位置における、ロック解除手段の係合要素と係合子との間の回転方向隙間δ1と、トルク伝達手段の係合要素間の回転方向隙間δ2とを、δ1<δ2の関係に設定することができる。また、ロック解除手段を制御部材に設けた構成とすることにより、構造や制御機構の簡素化を図ることができる。さらに、トルク伝達手段を、制御部材および出力側部材のうち一方に設けられた凸部と、他方に設けられ、凸部と適合する凹部で構成することができる。具体的には、凸部としてのピンを制御部材に設け、凹部としてのピン孔を出力側部材に設けることができ、その場合、ピンおよびピン孔をクラッチ軸方向に設けることができる。尚、カム面は出力側部材に直接形成しても良いし、カム面を有する部材を出力側部材に装着しても良い。また、係合子としては、ローラを用いるのが好ましい。
【0039】
以上の構成において、出力側部材の回動動作を円滑かつ安定させると共に、第1クラッチ部や第2クラッチ部に偏荷重が加わるのを防止し又は抑制するため、出力側部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受を配置することができる。このラジアル軸受は、別体の転がり軸受や滑り軸受を配置することによって構成することもできるが、構造の簡素化と部品点数削減のため、制御部材、又は静止側部材に固定された固定側板にラジアル軸受部を具備させることができる。また、制御部材および静止側部材の双方にラジアル軸受部を具備させ、出力側部材を両ラジアル軸受部で両持ち的に支持した構造とすることにより、上記の効果を一層高めることもできる。
【0040】
上述のように、出力側部材は逆入力トルクに対して第2クラッチ部でロックされるが、入力トルクに対してこの第2クラッチ部によるロック状態が解除されたとき、逆入力トルクがトルク伝達手段を介して入力側に還流する場合がある。この逆入力トルクの還流現象は、操作レバーを操作する際の抵抗力や着座シートの急激な下降動作等となって現れることがある。そこで、この逆入力トルクの還流現象を防止し又は抑制するため、出力側部材に対して回転方向の制動力を与える制動手段をさらに具備させることができる。ここでの制動力には、摩擦力、磁気力、電磁力、流体圧力、流体粘性抵抗力等が含まれる。
【0041】
上記構成において、制動手段は、静止側部材に固定された固定側板又は静止側部材と出力側部材との間に介装することができる。また、制動手段を、制動力としての摩擦力を出力側部材に与える摩擦部材で構成することができる。
本発明の座席シートは、シートの位置調整を操作レバーの揺動操作によって行うことができるので、従来シートに比べて操作性が良く、しかも騒音発生の問題もない。また、従来シートに比べて部品点数が少ないため構造が簡単で、設計自由度が高く、特に小型車や大衆車用に極めて有用である。
上記の効果は、特に、上述の構成をシート高さ調整装置及び/又はフロントチルト調整装置に適用した場合に顕著に発揮される。前者の場合、移動機構として、着座シートをフロア側に設けられる部材に対して昇降自在に支持する四節リンク機構と、クラッチユニットの出力側部材の回動動作を四節リンク機構のリンク動作に変換するためのギヤ機構とを有する構成を採用することができる。そして、より具体的には、上記のギヤ機構を、クラッチユニットの出力側部材に連結されたピニオンギヤと、ピニオンギヤと噛合し、ピニオンギヤの回動に伴う揺動動作によって四節リンク機構にリンク動作力を与えるセクタギヤとを有するものとすることができ、これにより、前述した従来構成における減速ギヤ機構を省略して、部品点数および組立工数を削減し、設計自由度を高めることが可能となる。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
【0043】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車の座席シートのシート高さ調整装置(31:図18及び図19参照)に組込まれるクラッチユニットXの全体構成を示している。このクラッチユニットXは、入力側部材としての外輪1と、出力側部材としての出力軸2と、制御部材としての内輪3と、静止側部材としての外輪4と、外輪1と内輪3との間に設けられた第1クラッチ部5と、外輪4と出力軸2との間に設けられた第2クラッチ部6とを主要な要素として構成される。
【0044】
図2は、入力側部材としての外輪1を示している。外輪1の外周には、外径側に突出した複数(例えば3つ)のリブ1aと、複数(例えば3つ)のリブ1bとが円周方向に所定間隔で形成される。リブ1aの軸方向一端側部分は凹部1a1によって二股状に分割され、リブ1aの軸方向他端側部分は外輪1の他端から軸方向に突出して、突出部1a2を形成する。リブ1bには、軸方向のねじ孔1b1が形成される。これらリブ1aおよび1bは、外輪1の外周に装着される操作レバー(13:図1、図8参照)と回転方向に係合して、操作レバー(13)の外輪1に対する相対回転を防止する。操作レバー(13)の外輪1に対する軸方向相対移動は、リブ1bのねじ穴1b1に操作レバー(13)をねじ結合することによって防止される。突出部1a2の内周には、後述する第1クラッチ部(5)のセンタリングバネ(12:図10参照)が収容される。また、突出部1a2が後述する外輪(4:図5参照)のストッパ部(4a1)と回転方向に係合することによって、外輪1の回動範囲が規制される。
【0045】
外輪1の一端部内周には、内径側に延びた鍔部1cが形成される。この鍔部1cは、後述する第1クラッチ部(5)の保持器(11:図1、図9参照)を軸方向の一方に抜け止め規制すると共に、外輪1の内輪3に対する同軸性を保持する役割を持つ。また、外輪1の内周には、複数(例えば10個)のカム面1dが円周方向に等間隔で形成される。各カム面1dは、円周方向中央部が深く、そこから円周方向両側に向かって傾斜状に浅くなっている。
【0046】
外輪1は、例えば、肌焼鋼、機械構造用炭素鋼、軸受鋼等の鋼材から鍛造加工によって成形され、浸炭焼入れ焼戻し、浸炭窒化焼入れ焼戻し、高周波焼入れ焼戻し、ずぶ焼入れ焼戻し等の適宜の熱処理が施される。この実施形態では、外輪1を形成する鋼材として肌焼鋼(例えばクロムモリブデン鋼SCM415)を使用し、これに熱処理として浸炭焼入れ焼戻しを行って、少なくともカム面1dにおける表層部の表面硬さをHRC57〜62に調整している。ここで、HRCはロックウェル硬さのCスケールを表し、HVはビッカース硬さを表している。尚、外輪1は、鋼材の削出し品、鋼鈑(例えば冷間圧延鋼鈑)のプレス成形品とすることもできる。
【0047】
図3は、出力側部材としての出力軸2を示している。出力軸2は、一端側にジャーナル部2a、中央側に大径部2b、他端側に連結部2cを備えている。ジャーナル部2aは、後述する内輪(3:図4参照)のラジアル軸受面(3a1)に挿入される。大径部2bの外周には、複数(例えば8つ)のカム面2b1が円周方向に等間隔で形成される。各カム面2b1は、出力軸2の軸心を中心とする円に対して弦をなす平坦面状に形成され、その円周方向中央部には後述する第2クラッチ部(6:図14参照)の板バネ(21)を装着するための軸方向溝2b2が形成される。また、大径部2bの一端側部分には軸方向の複数(例えば8つ)のピン孔2b3が円周所定間隔に形成される。これらピン孔2b3には後述する内輪(3:図4参照)のピン(3b1)が挿入される。また、大径部2bの他端側部分には環状凹部2b4が形成される。この環状凹部2b4には後述する摩擦部材(9:図7参照)が装着され、また、環状凹部2b4の内周壁2b5は、後述する固定側板(7:図6参照)のラジアル軸受面(7e2)に挿入されるジャーナル面になる。連結部2cには、他の回動部材(図19に示すピニオンギヤ31g)を連結するための歯型2c1が形成される。
【0048】
出力軸2は、例えば、肌焼鋼、機械構造用炭素鋼、軸受鋼等の鋼材から鍛造加工によって成形され、浸炭焼入れ焼戻し、浸炭窒化焼入れ焼戻し、高周波焼入れ焼戻し、ずぶ焼入れ焼戻し等の適宜の熱処理が施される。この実施形態では、出力軸2を形成する鋼材として肌焼鋼(例えばクロムモリブデン鋼SCM415)を使用し、これに熱処理として浸炭焼入れ焼戻しを行って、表層部の表面硬さをHRC57〜62に調整している。尚、出力軸2は、鋼材の削出し品とすることもできる。
【0049】
図4は、制御部材としての内輪3を示している。内輪3は、筒状部3aと、筒状部3aの一端から外径側に延びたフランジ部3bと、フランジ部3bの外径端から軸方向の一方に延びた複数(例えば8本)の柱部3cとを主体として構成される。筒状部3aは、出力軸2のジャーナル部2aに外挿され、かつ、外輪1の内部に内挿される。筒状部3aの他端側部分の内周には、出力軸2のジャーナル部2aをラジアル方向に支持するラジアル軸受面3a1が形成され、筒状部3aの他端側部分の外周には、外輪1のカム面1dとの間に正逆両回転方向に楔隙間を形成する円周面3a2が形成される。フランジ部3bには、軸方向の一方に突出した複数(例えば8つ)のピン3b1が円周方向に所定間隔で形成される。これらピン3b1は、出力軸2のピン孔2b3にそれぞれ挿入される。また、円周方向に隣接した柱部3c間には、軸方向の一方に向かって開口したポケット3c1が形成され、これらポケット3c1に後述する第2クラッチ部(6:図14参照)のローラ(20)が収容される。
【0050】
内輪3は、例えば、肌焼鋼、機械構造用炭素鋼、軸受鋼等の鋼材から鍛造加工によって成形され、浸炭焼入れ焼戻し、浸炭窒化焼入れ焼戻し、高周波焼入れ焼戻し、ずぶ焼入れ焼戻し等の適宜の熱処理が施される。この実施形態では、内輪3を形成する鋼材として肌焼鋼(例えばクロムモリブデン鋼SCM415)を使用し、これに熱処理として浸炭焼入れ焼戻しを行って、表層部の表面硬さをHRC57〜62に調整している。尚、内輪3は、鋼材の削出し品、鋼鈑(例えば冷間圧延鋼鈑)のプレス成形品とすることもできる。
【0051】
図5は、静止側部材としての外輪4を示している。外輪4は、半径方向に延びたフランジ部4aと、フランジ部4aの内径端から軸方向の一方に突出した係止部4bと、フランジ部4aの外径端から軸方向の他方に延びた筒状部4cと、筒状部4cの一端から外径側に突出した鍔部4dとを主体として構成される。フランジ部4aには、軸方向の一方に突出した複数(例えば3つ)のストッパ部4a1が円周方向に所定間隔で配列形成される。これらストッパ部4a1は、外輪1の突出部1a2と回転方向に係合して、外輪1の回動範囲を規制する。係止部4bは、例えば円弧状に一対で形成される。係止部4bは、内輪3の筒状部3aの外周に外挿され、かつ、後述する第1クラッチ部(5)の保持器(11:図9参照)の係止部(11b)の内周に内挿される。また、一方の係止部4bの両端には、後述する第1クラッチ部(5)のセンタリングバネ(12:図10参照)の係合部(12a)が係止される。
【0052】
筒状部4cの内周には、出力軸2のカム面2b1との間に正逆両回転方向に楔隙間を形成する円周面4c1が形成される。鍔部4dには、複数(例えば3つ)の円弧状の切欠き部4d1と、複数(例えば6つ)の矩形状の切欠き部4d2とが円周方向に所定間隔で形成される。切欠き部4d1は、後述する固定側板(7)の加締部材(8:図1参照)と適合する。切欠き部4d2は、固定側板(7:図6参照)の凸部(7c)と回転方向に係合して、外輪4の固定側板(7)に対する相対回転を防止する。鍔部4dには、固定側板(7)の爪部(7d)が加締固定される。
【0053】
外輪4は、例えば、肌焼鋼、機械構造用炭素鋼、軸受鋼等の鋼材から鍛造加工によって成形され、浸炭焼入れ焼戻し、浸炭窒化焼入れ焼戻し、高周波焼入れ焼戻し、ずぶ焼入れ焼戻し等の適宜の熱処理が施される。この実施形態では、外輪4を形成する鋼材として肌焼鋼(例えばクロムモリブデン鋼SCM415)を使用し、これに熱処理として浸炭焼入れ焼戻しを行って、表層部の表面硬さをHRC57〜62に調整している。尚、外輪4は、鋼材の削出し品、鋼鈑(例えば冷間圧延鋼鈑)のプレス成形品とすることもできる。
【0054】
図6は、外輪4に固定される固定側板7を示している。固定側板7は、半径方向に延びたフランジ部7aと、フランジ部7aの外径端から外径側に突出した複数(例えば3つ)のブラケット部7bと、フランジ部7aの外径端から軸方向の一方に突出した複数(例えば6つ)の凸部7cおよび複数(例えば3つ)の爪部7dと、フランジ部7aの内径端から軸方向の一方に突出したボス部7eとを主体として構成される。3つのブラケット部7bは円周方向に所定間隔で形成され、それぞれに貫通孔7b1が形成される。貫通孔7b1には、図1に示す中空ピン状の加締部材8が挿入される。尚、加締部材8をブラケット部7bに一体形成しても良い。6つの凸部7cは円周方向に所定間隔で形成され、それぞれ、外輪4の切欠き部4d2と回転方向に係合して、外輪4の固定側板7に対する相対回転を防止する。3つの爪部7dは円周方向に所定間隔で形成され、それぞれ、外輪4の鍔部4dに加締加工されて、外輪4の固定側板7に対する軸方向相対移動を防止する。
【0055】
ボス部7eの外周には、複数(例えば6つ)の凸部7e1が円周方向に所定間隔で形成され、内周にはラジアル軸受面7e2が形成される。ボス部7eは出力軸2の環状凹部2b4に挿入され、ボス部7eの外周と環状凹部2b4の外周壁との間に後述する摩擦部材(9:図7参照)が締代をもって圧入される。ボス部7eの凸部7e1は摩擦部材(9)の凹部(9a)と回転方向に係合して、摩擦部材(9)の固定側板7に対する相対回転を防止する。ボス部7eのラジアル軸受面7e2は、環状凹部2b4のジャーナル面2b5に外挿され、ジャーナル面2b5をラジアル方向に支持する。
【0056】
固定側板7は、例えば、冷間圧延鋼鈑等の鋼鈑材からプレス加工によって成形される。この実施形態では、固定側板7を形成する鋼板材として冷間圧延鋼鈑(例えばSPCE)を使用している。また、爪部7dを加締加工する際の加工性等に配慮して、熱処理は施していない。尚、爪部7d等の加締加工を行う部位に防炭処理(又は防炭防窒処理)を施して、浸炭焼入れ焼戻し(又は浸炭窒化焼入れ焼戻し)を行っても良い。
【0057】
図7は、制動手段としての摩擦部材9を示している。この実施形態において、摩擦部材9はリング状のもので、その内周には複数(例えば6つ)の凹部9aが円周方向に所定間隔で形成される。凹部9aは、固定側板7のボス部7eの凸部7e1と回転方向に係合して、摩擦部材9の固定側板7に対する相対回転を防止する。
【0058】
摩擦部材9は、ゴムや合成樹脂等の弾性材料で形成され、固定側板7のボス部7eの外周と、出力軸2の環状凹部2b4の外周壁との間に締代をもって圧入される。摩擦部材9の外周と環状凹部2b4の外周壁との間に生じる摩擦力によって、出力軸2に回転方向の制動力(摩擦制動力)が与えられる。この制動力(制動トルク)の大きさは、出力軸2に入力される逆入力トルクの大きさを勘案して適宜設定すれば良いが、逆入力トルクの還流現象を効果的に防止する観点から、想定される逆入力トルクと同程度、例えば着座シートに着座者が着座した状態で出力軸2に作用する逆入力トルクと同程度の大きさに設定するのが良い。この実施形態のように、制動手段として摩擦部材9を用いると、制動力を摩擦部材9の締代調整によって設定し、また変更できるという利点がある。
【0059】
摩擦部材9の材質は特に問わないが、この実施形態では、摩擦部材9を合成樹脂材料、例えばポリアセタール(POM)にグラスファイバを30重量%配合した合成樹脂材料の射出成形品としている。
【0060】
図8(図1のB−B断面)は、第1クラッチ部5を示している。第1クラッチ部5は、外輪1に設けられた複数(例えば10個)のカム面1dと、内輪3に設けられた円周面3a2と、カム面1dと円周面3a2との間に介在する係合子としての複数(例えば10個)のローラ10と、ローラ10を保持する保持器11と、保持器4を外輪(4)に回転方向に連結する弾性部材、例えばセンタリングバネ(12:図10参照)とを主要な要素として構成される。カム面1d、円周面3a2、及びローラ10によってロック手段が構成され、保持器11およびセンタリングバネ(12)によって復帰手段が構成される。カム面1dは、円周面3a2との間に正逆両回転方向に楔隙間を形成する。また、外輪1には操作レバー13が結合され、操作レバー13から外輪1に正方向又は逆方向の入力トルクが入力される。また、外輪1の内周と内輪3(筒状部3a)の外周との間の空間部、特にカム面1dと円周面3a2との間にグリースが封入されている。グリースの種類は特に問わないが、この実施形態のクラッチユニットを自動車の座席シート調整装置に用いる場合は、真夏時の炎天下での駐車時等に乗員室内が80°C程度の高温になることを考慮し、リチウム系、ウレア系、ベントン系、ナトリウム系等の潤滑油、又は、極圧添加剤を含まない潤滑油を基油とし、かつ、基油の粘度が10〜1000cSt(at37.8°C)である潤滑グリースを用いるのが好ましい。
【0061】
図9は、保持器11を示している。保持器11は、ローラ10を収容する複数(例えば10個)の窓形のポケット11aと、一方の端面から軸方向の一方に突出した係止部11bを備えている。係止部11bは、例えば円弧状に一対で形成される。係止部11bは外輪4の係止部4bの外周に外挿され、その両端にはセンタリングバネ(12:図10参照)の係合部(12a)が係止される。
【0062】
保持器11の材質は特に問わないが、この実施形態では、保持器11を合成樹脂材料、例えばポリアミド66(PA66)にグラスファイバを30重量%配合した合成樹脂材料の射出成形品としている。
【0063】
図10は、センタリングバネ12を示している。センタリングバネ12は、内径側に屈曲した一対の係合部12aを備えている。一対の係合部12aは、円周方向に所定間隔で対向する。センタリングバネ12は例えば線材で形成され、この実施形態では、線材としてピアノ線材(SWPB)を使用している。
【0064】
センタリングバネ12は、一対の係合部12a間の間隔を自然状態から円周方向に押し広げて(この時、センタリングバネ12は若干縮径する。)、保持器11の係止部11bおよび外輪4の係止部4bに係止する。これにより、保持器11がセンタリングバネ12を介して外輪4に回転方向に連結される。例えば、保持器11が同図(c)で外輪4に対して時計方向に相対回転すると、センタリングバネ12の時計方向(回転方向前方)の係合部12aが保持器11の係止部11bに押されて時計方向に弾性変位する{反時計方向(回転方向後方)の係合部12aは外輪4の係止部4bに係止される。}。これにより、センタリングバネ12は一対の係合部12a間の間隔が押し広げられる方向(縮径する方向)に撓み、その撓み量に応じた弾性力が蓄積される。尚、保持器11が同図(c)で反時計方向に相対回転した場合も、上記とは逆の動作によってセンタリングバネ12に弾性力が蓄積される。
【0065】
次に、図11〜図13を参照しながら、第1クラッチ部5の作用について説明する。尚、図11〜図13において、センタリングバネ12および外輪4は模式化され、概念的に示されている。また、操作レバー13も記載が省略されている。
【0066】
図11は、第1クラッチ部5の中立位置を示している(図8に示す状態)。中立位置において、ローラ10はカム面1dの中央部に位置し、カム面1dと円周面3a2との間に形成される正逆両回転方向の楔隙間からそれぞれ離脱する。ローラ10の直径は、カム面1dの中央部と円周面3a2との間の半径方向距離よりも若干小さく設定されており、ローラ10とカム面1dの中央部および円周面3a2との間には半径方向隙間がある。尚、後述するように、出力軸2から入力される逆入力トルクは第2クラッチ部6で正逆両回転方向にロックされる。従って、内輪3は、操作レバー13(外輪1)から入力される入力トルクに対してのみ回動動作を行い、出力軸2から逆入力トルクが入力されても回動せず、その位置を保持する。
【0067】
図12は、操作レバー13を揺動操作して、外輪1に入力トルクを入力した時の状態を示している。例えば、同図において、外輪1に反時計方向の入力トルクが入力されると、外輪1の回動に伴い、カム面1dがローラ10に対して反時計方向に相対移動して、ローラ10がその方向の楔隙間に楔係合する。これにより、外輪1からの入力トルクがローラ10を介して内輪3に伝達され、外輪1、ローラ10、保持器11、および内輪3が一体となって反時計方向に回動する。そして、保持器11の回動に伴ってセンタリングバネ12が撓み、その撓み量に応じた弾性力fが蓄積される。尚、外輪1の回動量の最大範囲は、外輪1の突出部1a2と外輪4のストッパ部4a1との係合によって規制される。
【0068】
図13は、図12に示す状態から操作レバー13(外輪1)を開放した時の状態を示している。センタリングバネ12に蓄積された弾性力fによって、保持器11に時計方向の回動力が働き、ローラ10が保持器11に押されてカム面1dを押圧する。そうすると、外輪1が開放されているので、ローラ10、保持器11、および外輪1が内輪3に対して時計方向に空転して、図11に示す中立位置に復帰する。その際、内輪3は、図12の回動操作によって与えられた回動位置をそのまま維持する。従って、図12の回動操作を繰り返し行った場合では、内輪3に各回動操作ごとの回動量が重畳的に蓄積される。尚、図11において、外輪1に時計方向の入力トルクが入力された場合は、上記とは逆の動作を行う。
【0069】
図14(図1のA−A断面)は、第2クラッチ部6を示している。第2クラッチ部6は、外輪4に設けられた円周面4c1と、出力軸2に設けられた複数(例えば8つ)のカム面2b1と、各カム面2b1と円周面4c1との間に介在する係合子としての一対(例えば総数8対)のローラ20と、一対のローラ20間に介在する弾性部材、例えば断面U字形の板バネ21と、内輪3の柱部3cと、内輪3のピン3b1および出力軸2のピン孔2b3とを主要な要素として構成される。カム面2b1、円周面4c1、一対のローラ20、および板ばね21によってロック手段が構成され、一対のローラ20の円周方向両側に位置する内輪3の柱部3cによってロック解除手段が構成され、内輪3のピン3b1および出力軸2のピン孔2b3によってトルク伝達手段が構成される。尚、この実施形態において、板バネ21はステンレス鋼(例えばSUS301CPS−H)で形成し、熱処理としてテンパー処理を施している。また、外輪4の内周と出力軸2(大径部2b)の外周との間の空間部、特にカム面2b1と円周面4c1との間にグリースが封入されている。グリースの種類は特に問わないが、真夏時の炎天下での駐車時等に自動車の乗員室内が80°C程度の高温になることを考慮し、リチウム系、ウレア系、ベントン系、ナトリウム系等の潤滑油、又は、極圧添加剤を含まない潤滑油を基油とし、かつ、基油の粘度が10〜1000cSt(at37.8°C)である潤滑グリースを用いるのが好ましい。
【0070】
図15に拡大して示すように、中立位置において、一対のローラ20は板ばね21によって、それぞれ、カム面2b1と円周面4c1との間に形成される正逆両回転方向の楔隙間の方向に押圧される。この時、内輪3の各柱部3cと各ローラ20との間にはそれぞれ回転方向隙間δ1が存在する。また、内輪3のピン3b1と出力軸2のピン孔2b3との間には正逆両回転方向にそれぞれ回転方向隙間δ2が存在する。回転方向隙間δ1と回転方向隙間δ2とは、δ1<δ2の関係を有する。回転方向隙間δ1の大きさは、例えば0〜0.4mm(第2クラッチ部6の軸心を中心として0〜1.5°)程度、回転方向隙間δ2の大きさは、例えば0.4〜0.8mm(第2クラッチ部6の軸心を中心として1.8〜3.7°)程度である。
【0071】
同図に示す状態で、例えば、出力軸2に時計方向の逆入力トルクが入力されると、反時計方向(回転方向後方)のローラ20がその方向の楔隙間と楔係合して、出力軸2が外輪4に対して時計方向にロックされる。出力軸2に反時計方向の逆入力トルクが入力されると、時計方向(回転方向後方)のローラ20がその方向の楔隙間と楔係合して、出力軸2が外輪4に対して反時計方向にロックされる。従って、出力軸2からの逆入力トルクは、第2クラッチ部6によって正逆両回転方向にロックされる。
【0072】
図16は、外輪1からの入力トルク(同図で時計方向)が第1クラッチ部5を介して内輪3に入力され、内輪3が同図で時計方向に回動を始めた初期状態を示している。回転方向隙間がδ1<δ2に設定されているため、先ず、内輪3の反時計方向(回転方向後方)の柱部3cがその方向(回転方向後方)のローラ20と係合して、これを板ばね21の弾性力に抗して時計方向(回転方向前方)に押圧する。これにより、反時計方向(回転方向後方)のローラ20がその方向の楔隙間から離脱して、出力軸2のロック状態が解除される{尚、時計方向(回転方向前方)のローラ20は、その方向の楔隙間とは楔係合しない。}。従って、出力軸2は時計方向に回動可能となる。
【0073】
内輪3がさらに時計方向に回動すると、図17に示すように、内輪3のピン3b1が出力軸2のピン孔2b3と時計方向に係合する。これにより、内輪3からの時計方向の入力トルクがピン3b1およびピン孔2b3を介して出力軸2に伝達され、出力軸2が時計方向に回動する。外輪1に反時計方向の入力トルクが入力された場合は、上記とは逆の動作で出力軸2が反時計方向に回動する。従って、外輪1からの正逆両回転方向の入力トルクは、第1クラッチ部5、内輪3、およびトルク伝達手段としてのピン3b1およびピン孔2b3を介して出力軸2に伝達され、出力軸2が正逆両回転方向に回動する。尚、内輪3からの入力トルクがなくなると、板ばね21の弾性復元力によって図15に示す中立位置に復帰する。
【0074】
上述した外輪1、出力軸2、内輪3、外輪4、第1クラッチ部5、第2クラッチ部6、固定側板7および摩擦部材9を図1に示す態様でアッセンブリすると、クラッチユニットXが完成する。外輪1には例えば樹脂製の操作レバー13が結合され、出力軸2は後述するピニオンギヤ(31g:図19参照)に連結される。また、固定側板7は図示されていないケーシング等の固定部材に加締部材8で加締固定される。尚、外輪1は、鍔部1cの外側に装着されたワッシャ18と外輪4のフランジ部4aとの間で軸方向の両側に抜け止め規制される。
【0075】
第1クラッチ部5において、センタリングバネ12は外輪1の突出部1a2の内周に収容され、外輪1の一方の端面と外輪4のフランジ部4aとの間で軸方向の両側に抜け止め規制される。また、保持器11およびローラ10は、外輪1の鍔部1cと外輪4のフランジ部4aとの間で軸方向の両側に抜け止め規制される。第1クラッチ部5の保持器11、ローラ10、およびセンタリングバネ12が外輪1の内部に収容されており、入力側部分に突出した部分がない。また、保持器11の係止部11bが外輪4の係止部4bの外周に外挿され、保持器11の回動が外輪4の係止部4bによって案内されるので、回動時の保持器11の傾きがなく、円滑なクラッチ動作が可能である。
【0076】
第2クラッチ部6は、外輪4と固定側板7とで囲まれた空間部に径方向および軸方向にコンパクトに収められている。また、ロック解除手段としての柱部3cと、トルク伝達手段としてのピン3b1が内輪3に一体に設けられているので、部品点数が少なく、構造も簡単である。
【0077】
また、出力軸2を内輪3のラジアル軸受面3a1と固定側板7のラジアル軸受面7e2によって両持ち的に支持する構造であるため、出力軸2の回動動作が安定し、しかも第1クラッチ部5および第2クラッチ部6に偏荷重が作用しにくく、円滑なクラッチ動作が可能である。
【0078】
図18は、自動車の乗員室に装備されるこの実施形態の座席シート30を示している。座席シート30は着座シート30aと背もたれシート30bとで構成され、着座シート30aの高さHを調整するシート高さ調整装置31、背もたれシート30bの傾斜θを調整するシート傾斜調整装置32、および着座シート30aの前後位置Lを調整するシートスライド調整装置(図示省略)を備えている。着座シート30aの高さHの調整はシート高さ調整装置31の操作レバー31a(図8の操作レバー13に対応する。)によって行い、背もたれシート30bの傾斜θの調整はシート傾斜調整装置32の操作レバー32aによって行い、着座シート30aの前後位置Lの調整はシートスライド調整装置の操作レバー(図示省略)によって行う。上述したクラッチユニットXは、シート高さ調整装置31に組込まれる。
【0079】
図19(a)は、シート高さ調整装置31の一構造例を概念的に示している。フロア側に設けられたシートスライドアジャスタ31bのスライド可動部材31b1(図22のアッパレール113に対応する。)にリンク部材31c、31dの一端がそれぞれ回動自在に枢着され、リンク部材31c、31dの他端がそれぞれ着座シート30aに回動自在に枢着される(図22のロアアーム121に対応する部位に枢着される。)。これにより、着座シート30aがスライド可動部材31b1に対して四節リンク機構で昇降自在に支持される。セクタギヤ31fは、例えば着座シート30aに回動自在に枢着され(図22のロアアーム121に対応する部位に枢着される。)、支点(ピン)31f1回りに揺動可能である。また、セクタギヤ31fは、リンク部材31eを介してリンク部材31cの他端に回動自在に枢着される。この実施形態では、リンク部材31c及び31dを有する四節リンク機構と、セクタギヤ31f及びこれに直接噛合するピニオンギヤ31gからなるギヤ機構と、セクタギヤ31fを四節リンク機構のリンク部材31cに連結するリンク部材31eとによって、着座シート30aの昇降移動機構が構成される。上述したクラッチユニットXは、固定側板7を介して着座シート30aの適宜の部位(例えば、図22のロアアーム121に対応する部位)に固定され、その外輪1に例えば樹脂製の操作レバー31aが結合され、出力軸2に昇降移動機構の回動部材、この実施形態ではピニオンギヤ31gが連結される。
【0080】
例えば、図19(b)において、操作レバー31aを反時計方向(上側)に揺動操作すると、その方向の入力トルクがクラッチユニットXを介してピニオンギヤ31gに伝達され、ピニオンギヤ31gが反時計方向に回動する。そして、ピニオンギヤ31gと噛合するセクタギヤ31fが時計方向に揺動して、リンク部材31cの他端をリンク部材31eを介して引っ張る。その結果、リンク部材31cとリンク部材31dが共に起立して、着座シート30aの座面が高くなる。すなわち、クラッチユニットXの出力軸2の回動動作が、ピニオンギヤ31gを介してセクタギヤ31fの揺動動作に変換され、このセクタギヤ31fの揺動動作がリンク部材31eを介して四節リンク機構のリンク動作に変換される。このようにして、着座シート30aの高さHを調整した後、操作レバー31aを開放すると、操作レバー31aが第1クラッチ部5のセンタリングバネ12の弾性力(弾性復元力)によって時計方向に回動して元の位置(中立位置)に戻る。尚、操作レバー31aを時計方向(下側)に揺動操作した場合は、上記とは逆の動作によって、着座シート31aの座面が低くなる。また、高さ調整後に操作レバー31aを開放すると、操作レバー31aが反時計方向に回動して元の位置(中立位置)に戻る。
【0081】
上記構成のシート高さ調整装置31によれば、操作レバー31aの揺動操作のみで着座シート30aの高さHを調整することができるので操作性が良く、しかも、高さ調整後の着座シート30aの高さ位置を自動的に保持することができる。また、高さ調整後に操作レバー31aを開放すると、操作レバー31aを中立位置に自動復帰させることができ、その場合でも復帰時の動作が円滑でラチェット機構のような騒音発生の問題も生じない。また、第2クラッチ部6は、着座シート30aからの逆入力トルクに対して、ローラ20とカム面2b1及び円周面4c1との楔係合力によって回転拘束力を与えるので、前述した従来のブレーキ機構に比べて、大きな回転拘束力(ブレーキ力)を得ることができる。そのため、従来構成における減速ギヤ機構を省略して、セクタギヤ31fをピニオンギヤ31gに直接噛合させることができる。これにより、操作性を向上させ、部品点数および組立工数を削減し、設計自由度を高めることが可能となる。さらに、摩擦部材9によって出力軸2に回転方向の制動力を与えているので、操作レバー31aの操作時における逆入力トルクの還流現象がなく(又は少なく)、安定した調整操作が可能である。
【0082】
尚、上記のシート高さ調整装置31では、セクタギヤ31fの揺動動作によるリンク動作力をリンク部材31cに入力する構成にしているが、セクタギヤ31fを他のリンク部材を介してリンク部材31dに連結し、セクタギヤ31fの揺動動作によるリンク動作力をリンク部材31dに入力する構成としても良い。
また、上記構成のクラッチユニットXは、図22に示すようなフロントチルト調整装置に用いることもできる。この場合、クラッチユニットXは前部クッションフレーム(221)に装着し、その出力軸側のピニオン(511)を、ロアアーム(121)の先端部に設けられた歯(501)と噛合させる。
上述したクラッチユニットXに代えて、図20に示すクラッチユニットY、あるいは、図21に示すクラッチユニットZを用いることもできる。
【0083】
図20に示すクラッチユニットYが、上述したクラッチユニットXと異なる点は、ゴムや合成樹脂等の弾性材料からなる摩擦部材9に代えて、バネ弾性を有する摩擦部材15を制動手段として用いている点にある。摩擦部材15はバネ鋼等の金属材料で形成され、出力軸2の環状凹部2b4の外周壁に装入される装着部15aと、装着部15aの一端に連続した鍔部15bと、鍔部15bから外径側に突出した複数(例えば8つ)の突出部15cとを備えている。装着部15aは出力軸2の環状凹部2b4の外周壁に締り嵌めで装着され、摩擦部材15の出力軸2に対する相対回転を防止する。突出部15cは、半径方向に延びた半径方向部15c1と、半径方向部15c1の先端から傾斜状に延びた舌片部15c2とを備え、舌片部15c2が外輪4の内周に締代をもって圧接する。摩擦部材15の舌片部15c2が外輪4の内周に締代をもって圧接することにより、出力軸2に回転方向の制動力(摩擦制動力)が与えられる。尚、摩擦部材15の装着部15aは、出力軸2の環状凹部2b4の外周壁に相対回転を防止しうる態様で装着すれば良く、上記の締り嵌めによる装着(圧入)の他、回転方向に凹凸係合する態様で装着しても良い。その他の事項は上述したクラッチユニットXと同様であるので、説明を省略する。
【0084】
図21に示すクラッチユニットZが、上述したクラッチユニットXと異なる点は、ゴムや合成樹脂等の弾性材料からなる摩擦部材9に代えて、バネ弾性を有する摩擦部材16を制動手段として用いている点にある。摩擦部材16はバネ鋼等の金属材料で形成され、固定側板7のボス部7eに装着される装着部16aと、装着部16aの一端に連続した鍔部16bと、鍔部16bから外径側に突出した複数(例えば12個)の突出部16cとを備えている。装着部16aには複数(例えば12個)の切欠き部16a1が形成され、これら切欠き部16a1は固定側板7のボス部7eに形成された凸部と回転方向に係合して、摩擦部材16の固定側板7に対する相対回転を防止する。突出部16cは、円弧状に湾曲した湾曲部16c1と、湾曲部16c1の先端から傾斜状に延びた舌片部16c2とを備え、舌片部16c2が出力軸2の環状凹部2b4の外周壁に締代をもって圧接する。摩擦部材16の舌片部16c2が出力軸2の環状凹部2b4の外周壁に締代をもって圧接することにより、出力軸2に回転方向の制動力(摩擦制動力)が与えられる。尚、摩擦部材16の装着部16aは、固定側板7のボス部7eに相対回転を防止しうる態様で装着すれば良く、上記の回転方向に凹凸係合する態様の他、締り嵌めによる装着(圧入)としても良い。その他の事項は上述したクラッチユニットXと同様であるので、説明を省略する。
【0085】
【発明の効果】
本発明によれば、シートの位置調整操作時の操作性が良く、かつ、騒音発生がなく、しかも部品点数が少ないため構造が簡単で、設計自由度の高い座席シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るクラッチユニットXを示す縦断面図である。
【図2】外輪(入力側部材)の背面図{図2(a)}、縦断面図{図2(b)}、部分正面図{図2(c)}である。
【図3】出力軸(出力側部材)の正面図{図3(a)}、縦断面図{図3(b)}である。
【図4】内輪(制御部材)の正面図{図4(a)}、縦断面図{図4(b)}である。
【図5】外輪(静止側部材)の正面図{図5(a)}、縦断面図{図5(b)}である。
【図6】固定側板の縦断面図{図6(a)}、正面図{図6(b)}である。
【図7】摩擦部材(制動手段)の縦断面図{図7(a)}、正面図{図7(b)}である。
【図8】第1クラッチ部を示す横断面図{図1のB−B断面}である。
【図9】第1クラッチ部の保持器を示す正面図{図9(a)}、縦断面図{図9(b)}、横断面図{図9(c)}である。
【図10】第1クラッチ部のセンタリングバネを示す側面図{図10(a)}、正面図{図10(b)}、装着図{図10(c)}である。
【図11】第1クラッチ部の作用を説明する概念図である(中立位置)。
【図12】第1クラッチ部の作用を説明する概念図である(トルク伝達時)。
【図13】第1クラッチ部の作用を説明する概念図である(復帰時)。
【図14】第2クラッチ部を示す横断面図{図1のA−A断面}である。
【図15】第2クラッチ部の作用を説明する部分拡大横断面図である(中立位置)。
【図16】第2クラッチ部の作用を説明する部分拡大横断面図である(ロック解除時)。
【図17】第2クラッチ部の作用を説明する部分拡大横断面図である(トルク伝達時)。
【図18】本発明の実施形態に係る自動車の座席シートを示す概念図である。
【図19】シート高さ調整装置の一構造例を示す概念図{図19(a)}、クラッチユニット周辺部の拡大図{図19(b)}である。
【図20】他の実施形態に係るクラッチユニットYを示す縦断面図{図20(a)}、摩擦部材の正面図{図20(b)}、断面図{図20(c)}である。
【図21】他の実施形態に係るクラッチユニットZを示す縦断面図{図21(a)}、摩擦部材の正面図{図21(b)}、断面図{図21(c)}である。
【図22】従来の座席シートの要部側面図である。
【図23】図22の座席シートにおけるブレーキ機構の分解斜視図である。
【図24】従来の他の座席シートの要部側面図である。
【図25】図24の座席シートにおけるハンドル機構の側面図である。
【符号の説明】
1 外輪(入力側部材)
2 出力軸(出力側部材)
3 内輪(制御部材)
4 外輪(静止側部材)
5 第1クラッチ部
6 第2クラッチ部
7 固定側板
9 摩擦部材(制動手段)
13 操作レバー
30 座席シート
30a 着座シート
30b 背もたれシート
31 シート高さ調整装置
31g ピニオンギヤ

Claims (10)

  1. 操作部材からのトルク入力によってシートの位置調整を行うシート調整装置を有する座席シートにおいて、
    前記シート調整装置は、前記操作部材としての操作レバーと、シートの所要部位を調整移動可能とする移動機構と、前記操作レバーと前記移動機構の回動部材との間に介在するクラッチユニットとを備え、
    前記クラッチユニットは、前記操作レバーに結合される入力側部材と、前記移動機構の回動部材に連結される出力側部材と、前記入力側部材と前記出力側部材との間のトルク伝達経路に介在する制御部材と、回転が拘束される静止側部材と、前記入力側部材と前記制御部材との間に設けられた第1クラッチ部と、前記静止側部材と前記出力側部材との間に設けられた第2クラッチ部とを備え
    前記第1クラッチ部は、前記操作レバーからの入力トルクに対して前記入力側部材と前記制御部材とをロックするロック手段と、前記操作レバーが解放されたときに前記操作レバーおよび前記入力側部材を入力トルクが入力される前の中立位置に復帰させる復帰手段とを備え、
    前記第1クラッチ部のロック手段は、前記制御部材に設けられた円周面と、前記入力側部材に設けられ、前記円周面との間に正逆両回転方向に楔隙間を形成するカム面と、前記カム面と前記円周面との間に介在する係合子とを備え、前記復帰手段は、前記係合子を保持する保持器と、前記保持器を前記静止側部材に回転方向に連結する弾性部材とを備えていることを特徴とする座席シート。
  2. 前記第1クラッチ部の前記係合子、前記保持器、および前記弾性部材が、前記入力側部材の内部に収容されている請求項記載の座席シート。
  3. 前記第2クラッチ部は、前記移動機構からの逆入力トルクに対して前記出力側部材と前記静止側部材とをロックするロック手段と、前記操作レバーからの入力トルクに対して前記ロック手段によるロック状態を解除するロック解除手段と、前記ロック手段によるロック状態が解除された状態のときに前記制御部材と前記出力側部材との間で入力トルクを伝達するトルク伝達手段とを備えている請求項1記載の座席シート。
  4. 前記第2クラッチ部のロック手段は、前記静止側部材に設けられた円周面と、前記出力側部材に設けられ、前記円周面との間に正逆両回転方向に楔隙間を形成するカム面と、前記カム面と前記円周面との間に介在する一対の係合子と、前記一対の係合子をそれぞれ前記楔隙間の向きに押圧する弾性部材とを備え、前記ロック解除手段は、前記一対の係合子のうち何れか一方と択一的に係合して、これを前記楔隙間の向きと反対方向に押圧する係合要素を備え、前記トルク伝達手段は、前記制御部材および前記出力側部材に設けられた回転方向の係合要素を備えている請求項3記載の座席シート。
  5. 前記第2クラッチ部のロック解除手段および前記トルク伝達手段の中立位置における、前記ロック解除手段の係合要素と前記係合子との間の回転方向隙間δ1と、前記トルク伝達手段の係合要素間の回転方向隙間δ2が、δ1<δ2の関係を有する請求項記載の座席シート。
  6. 前記クラッチユニットは、前記出力側部材に対して回転方向の制動力を与える制動手段をさらに備えている請求項1からの何れかに記載の座席シート。
  7. 前記シート調整装置は、着座シートの高さを調整するシート高さ調整装置である請求項1からの何れかに記載の座席シート。
  8. 前記移動機構は、前記着座シートをフロア側に設けられる部材に対して昇降自在に支持する四節リンク機構と、前記クラッチユニットの出力側部材の回動動作を前記四節リンク機構のリンク動作に変換するためのギヤ機構とを有する請求項記載の座席シート。
  9. 前記ギヤ機構は、前記クラッチユニットの出力側部材に連結されたピニオンギヤと、前記ピニオンギヤと噛合し、前記ピニオンギヤの回動に伴う揺動動作によって前記四節リンク機構にリンク動作力を与えるセクタギヤとを有する請求項記載の座席シート。
  10. 前記シート調整装置は、着座シートの前部を傾斜調整するフロントチルト調整装置である請求項1からの何れかに記載の座席シート。
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