JP4547845B2 - 管路内におけるエマルジョンの流速設定方法 - Google Patents

管路内におけるエマルジョンの流速設定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、油を水で希釈してなるエマルジョンが管路内を流れ、前記エマルジョンの一部が前記管路に設けられたノズルから噴射されるようになっているる管路内におけるエマルジョンの流速設定方法、特に、冷間圧延において圧延油を水で希釈してエマルジョン状態で供給する際に用いられるスプレーヘッダの外管と内管との間の管路内を流れるエマルジョンの流速設定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷間圧延における圧延機の圧延ロールと被圧延材との間の摩擦を低減させて被圧延材の加工を容易にしたり、被圧延材の表面をきれいな製品となるように仕上たりするため、例えば、図5に示す圧延油供給装置が使用される(特公平7−90251号公報参照)。
【0003】
この圧延油供給装置において、圧延油は給油配管104から給油制御ポンプ106,106’を介してスプレーヘッダ102,102’の内管109,109’の中央部へ直接供給されるようになっている。一方、希釈水は、給水配管105から給水制御ポンプ111を介してスプレーヘッダ102,102’の内管109,109’の両端へ直接供給されるようになっている。
【0004】
そして、このようにスプレーヘッダ102,102’に供給された希釈水は、図6に示すように、端部113、エジェクタ部114、胴部118、絞り部116を通って中央拡大部117に至る。一方、圧延油は、絞り部116を経由して中央拡大部117に至り、ここで希釈水と混合されてエマルジョンとなるようになっている。
【0005】
このエマルジョンは、中央拡大部117に形成された連通孔110を通って外管108,108’と内管109,109’との間の管路内に至り、管路内を流れてその一部が各ノズル103,103’から被圧延材101の表面や裏面に噴射される。又、ノズル103,103’から噴射されなかったエマルジョンは、エジェクタ部114の機能により、孔115を通って胴部118へ導かれる。胴部118へ導かれたエマルジョンは、希釈水と混合され、その後、絞り部116を経由して再び中央拡大部117へ導かれ、ここで圧延油と混合されて新たなエマルジョンとなる。以後、同様の循環動作が繰り返され、スプレーヘッダ102,102’に装着されている全てのノズル103,103’から略同一濃度のエマルジョンが噴出されるようになっている。全てのノズル103,103’から略同一濃度のエマルジョンを噴出することにより、被圧延材101の幅方向において圧延油の塗布量が均一になり、被圧延材101の形状が適切になるように圧延できるとともに、被圧延材101と圧延ロールの焼付き疵の発生を防止することができる。なお、図5において、符号107,107’は給油制御モータ、112は給水制御モータである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の圧延油供給装置にあっては、以下の問題点があった。
即ち、エマルジョンが、中央拡大部117に形成された連通孔110を通って外管108,108’と内管109,109’との間の管路内の中央部から端部へ流れるに際して、エマルジョンの一部が各ノズル103,103’から噴射されるため、エマルジョンの流速が中央部から端部にかけて低下し、このエマルジョンの流速の低下に起因して内管109,109’及び外管108,108’の端部管壁に油成分に起因する異物が付着し、配管詰まりを起こすことがあった。この配管詰まりが発生すると、エマルジョンの循環動作が円滑に行われず、ノズル103,103’からのエマルジョンを均一濃度で噴射することが困難となっていた。
【0007】
従って、本発明は上述の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、油を水で希釈してなるエマルジョンが流れる管路内におけるエマルジョンの流速を所定条件で調整して、油成分に起因する管壁への異物の付着を防止することができる、管路内におけるエマルジョンの流速設定方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、流速の低下に起因する管壁への異物の付着を良好に防止できる、管路内におけるエマルジョンの流速の条件の設定に先立って、流速の低下による何に起因して異物が管壁に付着するかを鋭意研究した。その結果、油と希釈水とを混合し、油を水で希釈してなるエマルジョンが流れる管路内の流速の低下した端部において、管壁付近の層流底層厚みがエマルジョン中の油粒子径よりも厚い場合に異物が管壁に付着することを知見した。
【0009】
即ち、図7に示すように、エマルジョンが、連通孔110を通って外管108と内管109との間の管路内の中央部から端部へ流れるに際して、エマルジョンの一部が各ノズル103から噴射されるため、エマルジョンの流速は中央部から端部にかけて低下する。即ち、エマルジョンの流速Vは、スプレーヘッダ中央部のノズル1031 に対応する長手方向位置P1 におけるV1 から端部に向かうに従って低下し、最端部のノズル1032 、1033 に対応する長手方向位置P2 、P3 においてV2 、V3 となる。このエマルジョンの流速Vが低下すると、逆に層流底層の厚みδは厚くなり、この厚みδは、スプレーヘッダ中央部のノズル1031 に対応する長手方向位置P1 におけるδ1 から端部に向かうに従って厚くなり、最端部のノズル1032 、1033 に対応する長手方向位置P2 、P3 においてδ2 、δ3 となる。ここで、「層流底層」とは、配管内壁付近の流速低下により、層流が保たれる領域をいう。この流速Vの低下した長手方向位置P2 、P3 において、図7(B)に示すように、層流底層厚みδ2 、δ3 がエマルジョン中の油粒子径Rよりも厚い場合に異物が管壁に付着したのである。ここで、「油粒子径」とは、水エマルジョンとして管路に供給された油(圧延油)のエマルジョン粒径をいう。
【0010】
従って、本発明はこの知見に基づいてなされ、請求項1に係る発明は、油を水で希釈してなるエマルジョンが管路内を流れ、前記エマルジョンの一部が前記管路に設けられたノズルから噴射されるようになっている管路内におけるエマルジョンの流速設定方法であって、前記エマルジョンの流速を、前記管路内の層流低層厚みが油粒子径よりも薄くなるように調整することを特徴としている。
【0011】
この流速設定方法によれば、管路内のあらゆる部分、特に流速の低下する管路内の端部において、管路内の層流低層厚みが油粒子径よりも薄くなるようにエマルジョンの流速が調整され、油成分に起因する異物の管壁への付着が防止され、配管詰まりが回避される。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明に係る管路内におけるエマルジョンの流速設定方法が適用される圧延油供給装置の構成図である。図2は図1に示す圧延油供給装置に使用されるスプレーヘッダの断面図である。図3(A)は図2に示したスプレーヘッダの概略図、図3(B)は本発明によるスプレーヘッダの長手方向位置に対するエマルジョンの流速及び層流底層厚さの関係と、層流底層厚さと油粒子径との関係とを示したグラフである。
【0013】
図1に示した圧延油供給装置は、冷間圧延における圧延機の圧延ロール(図示せず)と被圧延材1との間の摩擦を低減させて被圧延材1の加工を容易にしたり、被圧延材1の表面をきれいな製品となるように仕上げたりするために使用されるものであり、この圧延油供給装置において、圧延油は給油配管4から給油制御ポンプ6,6’を介してスプレーヘッダ2,2’の内管11,11’の中央部へ直接供給されるようになっている。一方、希釈水は、給水配管5から給水制御ポンプ8を介してスプレーヘッダ2,2’の内管11,11’の両端へ直接供給されるようになっている。
【0014】
そして、このようにスプレーヘッダ2,2’に供給された希釈水は、図2に示すように、端部13、エジェクタ部14、胴部16、絞り部17を通って中央拡大部18に至る。一方、圧延油は、絞り部17を経由して中央拡大部18に至り、ここで希釈水と混合されてエマルジョンとなるようになっている。
このエマルジョンは、中央拡大部18に形成された連通孔12を通って外管10,10’と内管11,11’との間の管路20内に至り、管路20内を流れてその一部が各ノズル3,3’から被圧延材1の表面や裏面に噴射される。又、ノズル3,3’から噴射されなかったエマルジョンは、エジェクタ部14の機能により、孔15を通って胴部16へ導かれる。胴部16へ導かれたエマルジョンは、希釈水と混合され、その後、絞り部17を経由して再び中央拡大部18へ導かれ、ここで圧延油と混合されて新たなエマルジョンとなる。以後、同様の循環動作が繰り返され、スプレーヘッダ2,2’に装着されている全てのノズル3,3’から略同一濃度のエマルジョンが噴出されるようになっている。
【0015】
ここで、エマルジョンが、中央拡大部18に形成された連通孔12を通って外管10,10’と内管11,11’との間の管路20内の中央部から端部へ流れるに際して、エマルジョンの一部が各ノズル3,3’から噴射されるため、管路20内のエマルジョンの流速は中央部から端部にかけて低下する。このため、このエマルジョンの流速の低下に起因して内管11,11’及び外管10,10’の端部管壁に油成分に起因する異物が付着し、配管詰まりを起こす虞れがある。
【0016】
しかし、本実施形態にあっては、図3(A)及び図3(B)に示すように、外管10,10’と内管11,11’との間の管路20内のエマルジョンの流速Vを、管路内の層流低層厚みδが長手方向のいずれにおいても油粒子径Rよりも薄くなるように調整するようにしている。
即ち、エマルジョンの流速Vは、スプレーヘッダ中央部のノズル31 に対応する長手方向位置P1 におけるV1 から端部に向かうに従って低下し、最端部のノズル32 、33 に対応する長手方向位置P2 、P3 においてV2 、V3 となり、このエマルジョンの流速Vが低下すると、逆に層流底層の厚みδは厚くなり、この厚みδは、スプレーヘッダ中央部のノズル31 に対応する長手方向位置P1 におけるδ1 から端部に向かうに従って厚くなり、最端部のノズル32 、33 に対応する長手方向位置P2 、P3 においてδ2 、δ3 となるが、この最も厚い層流低層厚みδ2 、δ3 であっても油粒子径Rよりも薄くなるように流速Vを調整する。
【0017】
このエマルジョンの流速Vの調整は、給油制御ポンプ6,6’の給油制御モータ7,7’及び給水制御ポンプ8の給水制御モータ8’に接続された流速制御装置19が、給油制御ポンプ6,6’及び給水制御ポンプ8の回転数を制御することにより、達成される。
以下、流速制御装置19によるエマルジョンの流速Vの調整につき詳細に説明する。
【0018】
一般に、「層流底層」とは、配管の内壁付近の流速の低下により層流が保たれる領域と定義され、図4の配管内の流速分布に示すように、層流底層厚さ(配管20の内壁からの距離)δは、
【0019】
【数1】
Figure 0004547845
【0020】
で表される。ここで、aは流体平均深さ(m)/ 4、Reはレイノズル数である。なお、図4中、符号vは配管内における流体の流速である。
そして、図2及び図3に示すようにスプレーヘッダが外管10と内管11とを有する二重管構造の場合には、前述のa及びReは、以下のように表される。
a:流体平均深さ(m)/ 4
二重管において、m=(D−d)/ 4 …(2)
従って、a=((D−d)/ 4)/ 4=(D−d)/ 16 …(3)
ここで、Dは外管10の直径、dは内管11の直径である。
【0021】
Re:(V・L)/ ν
二重管において、L=(D−d) …(4)
従って、Re=(V・(D−d))/ ν …(5)
ここで、Vは流れの代表速度(管路の場合、断面上の平均速度、いわゆる平均流速として可能)、Lは代表長さ(管路の場合、流体平均深さの4倍)、νは流体の動粘性係数である。
【0022】
従って、図2及び図3に示すようにスプレーヘッダが外管10と内管11とを有する二重管構造の場合には、前述の層流底層厚さδは、
【0023】
【数2】
Figure 0004547845
【0024】
となり、層流底層厚さδは平均流速V(この平均流速Vは、前述のエマルジョンの流速Vと同等である)の関数で表すことができる。
一方、「油粒子径」は、水エマルジョンとして管路に供給された油(圧延油)のエマルジョン粒径で定義され、このエマルジョン粒径の測定は、エマルジョン粒径測定装置、例えば、コールターカウンターなどを用いて粒径分布を測定することにより達成される。
【0025】
流速制御装置19は、前記(6)式で表された層流底層厚さδがエマルジョン粒径測定装置により測定された粒径分布における平均粒径の値よりも薄くなるようなエマルジョンの平均流速Vを決定し、この決定された平均流速Vでエマルジョンが外管10,10’と内管11,11’との間の管路20内を流れるように、給油制御ポンプ6,6’及び給水制御ポンプ8の回転数を制御する。なお、エマルジョンの平均流速Vの決定に必要な外管10,10’の直径D、内管11,11’の直径d、及び流体の動粘性係数νは、予め流速制御装置9に入力される。
【0026】
これにより、外管10,10’と内管11,11’との間の管路20内のあらゆる部分、特に流速の低下する管路20内の端部において、層流低層厚みδが油粒子径R(前述の平均粒径の値)よりも薄くなるようにエマルジョンの平均流速Vが調整され、油成分に起因する異物の管壁への付着が防止され、配管詰まりが回避される。このため、エマルジョンの循環動作が円滑に行われ、ノズル3,3’からのエマルジョンを均一濃度で確実に噴射することができる。
【0027】
なお、測定された粒径分布における油粒子径Rの範囲は、3〜50μm程度であり、平均粒径は25μmである。このため、流速制御装置19は、前記(6)式で表された層流底層厚さδが25μmよりも薄くなるようなエマルジョンの平均流速Vを決定し、この決定された平均流速Vでエマルジョンが外管10,10’と内管11,11’との間の管路20内を流れるように、給油制御ポンプ6,6’及び給水制御ポンプ8の回転数を制御することが好ましく、これにより油成分に起因する異物の管壁への付着が防止され、配管詰まりが回避される。より好ましくは、最小粒径近傍の値である3μmよりも薄くなるエマルジョンの平均流速Vとなるように前記給油制御ポンプ6,6’及び給水制御ポンプ8の回転数を制御する。これにより、外管10,10’と内管11,11’との間の管路20内のあらゆる部分、特に流速の低下する管路20内の端部において、層流低層厚みδが油粒子径Rの最小粒径近傍の値である3μmよりも薄くなるようにエマルジョンの平均流速Vが調整され、油成分に起因する異物の管壁への付着が確実に防止される。
【0028】
以上、本発明の実施実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、種々の変更を行うことができる。
例えば、本実施形態にあっては、油を水で希釈したエマルジョンが流れる管路は、外管10と内管11との間の管路20、即ち二重管の管路としてあるが、単一の配管内の管路としてもよい。
【0029】
また、流速制御装置19によるエマルジョンの流速Vの調整に際しては、管路20内のエマルジョンの流速、特に管路20の端部におけるエマルジョンの流速を流速測定装置により測定し、この流速測定装置により測定された流速と前記決定された平均流速Vとを比較し、流速測定装置により測定された流速の前記決定された平均流速Vに対する偏差分をなくすようなフィードバック制御を行ってもよい。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のうち請求項1に係る管路内におけるエマルジョンの流速設定方法によれば、エマルジョンの流速を、管路内の層流底層厚みが油粒子径よりも薄くなるように調整するので、管路内のあらゆる部分、特に流速の低下する管路内の端部において、管路内の層流低層厚みが油粒子径よりも薄くなるようにエマルジョンの流速が調整され、油成分に起因する異物の管壁への付着を防止し、配管詰まりを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る管路内におけるエマルジョンの流速設定方法が適用される圧延油供給装置の構成図である。
【図2】図1に示す圧延油供給装置に使用されるスプレーヘッダの断面図である。
【図3】(A)は図2に示したスプレーヘッダの概略図、(B)は本発明によるスプレーヘッダの長手方向位置に対するエマルジョンの流速及び層流底層厚さの関係と、層流底層厚さと油粒子径との関係とを示したグラフである。
【図4】(A)は配管内の流速分布を示す模式図、(B)は(A)の矢印A部分の拡大図である。
【図5】従来の圧延油供給装置の構成図である。
【図6】図5に示す圧延油供給装置に使用されるスプレーヘッダの断面図である。
【図7】(A)は図6に示したスプレーヘッダの概略図、(B)は従来技術によるスプレーヘッダの長手方向位置に対するエマルジョンの流速及び層流底層厚さの関係と、層流底層厚さと油粒子径との関係とを示したグラフである。
【符号の説明】
1 被圧延材
2,2’ スプレーヘッダ
3,3’ ノズル
1 中央部のノズル
2 最端部のノズル
3 最端部のノズル
4 給油配管
5 給水配管
6,6’ 給油制御ポンプ
7,7’ 給油制御モータ
8 給水制御ポンプ
9 給水制御モータ
10,10’ 外管
11,11’ 内管
12 連通孔
13 端部
14 エジェクタ部
15 孔
16 胴部
17 絞り部
18 中央拡大部
19 流速制御装置
20 管路
21 配管
δ 層流底層厚み
R 油粒子径

Claims (1)

  1. 油を水で希釈してなるエマルジョンが管路内を流れ、前記エマルジョンの一部が前記管路に設けられたノズルから噴射されるようになっている管路内におけるエマルジョンの流速設定方法であって、
    前記エマルジョンの流速を、前記管路内の層流底層厚みが油粒子径よりも薄くなるように調整することを特徴とする管路内におけるエマルジョンの流速設定方法。
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