近年の無線ネットワークインフラの急速な発展により、PDAや携帯電話等のモバイル機器を用いてインターネットにアクセスして、何時でも何処でも情報が入手できるようになっている。このようなユビキタスシステムでは、コンピュータプログラムの格納用やデータを保存するストレージ用のメモリとして、不揮発性メモリの性能が、システム性能に大きな影響を与えると考えられる。
不揮発性半導体メモリには、フラッシュメモリやFeRAM(Ferroelectric RAM)が既に実用化されているが、これらは高速性、書き換え耐性、消費電力等の点に関して相互にトレードオフの関係を有しており、全ての要求仕様を満たす理想的な不揮発性半導体メモリを追求した研究開発が行われている。そのため、不揮発性半導体メモリの高性能化を目指し、シリコン以外の材料を使用したMRAM(Magnetic RAM)、やPRAM(Phase change RAM)等の不揮発性半導体メモリが数多く提案されている。
これらの既存技術に対して、米国ヒューストン大のShangquing LiuやAlex Ignatiev等によって、超巨大磁気抵抗効果で知られるペロブスカイト型結晶構造を有する材料に電気的パルスを印加することによって可逆的に電気抵抗を変化させる方法が下記の特許文献1及び非特許文献1に開示されている。これらの文献によると、ペロブスカイト型材料の抵抗値が磁場の印加なしで室温において数桁に亘る抵抗変化が現れるという極めて画期的な現象である。この現象を不揮発性半導体メモリに用いたものがRRAM(Resistance RAM)であり、MRAMと異なり抵抗変化に磁場を一切必要としないので、消費電力が極めて少なく、微細化、高集積化も容易であり、また、抵抗変化のダイナミックレンジがMRAMに比べて格段に広いため、多値記憶の可能性を有している。
RRAMの実デバイスとしての基本構造は極めて単純で、基板表面に対して垂直方向に下部電極、ペロブスカイト型酸化物、上部電極の順に積層された構造となっている。尚、特許文献1に例示する素子構造では、下部電極材料はランタン・アルミニウム酸化物LaAlO3(LAO)の単結晶基板上に堆積されたイットリウム・バリウム・銅酸化物YBa2Cu3O7(YBCO)膜、ペロブスカイト型金属酸化物は結晶性プラセオジウム・カルシウム・マンガン酸化物Pr1−xCaxMnO3(PCMO)膜、上部電極材料はスパッタリングで堆積されたAg膜で、夫々形成されている。この記憶素子の動作は、上部及び下部電極間に印加する電圧を51ボルトとして正、負に印加することで抵抗値を可逆的に変化させることができることが報告されている。この可逆的な抵抗変化動作(以下、『スイッチング動作』と称す)における抵抗値の差を読み出すことによって新規不揮発性メモリの実現が可能であることを意味する。
上記PCMO膜等で構成される可変抵抗素子を備え、可変抵抗素子の電気抵抗の変化により情報を記憶するメモリセルを、行方向及び列方向に夫々複数、マトリクス状に配列してメモリセルアレイを形成して、該メモリセルアレイの周辺に、メモリセルアレイの各メモリセルに対するデータの書き込み、消去、及び、読み出しを制御する回路を配置して、不揮発性半導体記憶装置を構成することができる。
当該可変抵抗素子を備えたメモリセルの構成として、各メモリセルが、可変抵抗素子と選択トランジスタが直列に接続された直列回路で構成される場合、また、可変抵抗素子だけで構成される場合等がある。前者の構成によるメモリセルを1T/1R型メモリセルと称し、後者の構成によるメモリセルを1R型メモリセルと称す。
1T/1R型メモリセルによりメモリセルアレイを形成して、大容量の不揮発性半導体記憶装置を構成した場合の構成例を、図面を用いて説明する。
図22は、1T/1R型メモリセルのメモリセルアレイの一構成例を模式的に示したものであり、本出願人による特許出願(特願2003−168223)に同様のメモリセルアレイ構成を提案している。このメモリセルアレイ構成において、メモリセルアレイ501は列方向に延伸するビット線m本(BL1〜BLm)と行方向に延伸するワード線n本(WL1〜WLn)の交点にメモリセル2がm×n個配置した構成となっている。また、ソース線がn本(SL1〜SLn)で、ワード線と平行に配置される構成となっている。各メモリセルは、可変抵抗素子3の上部電極と選択トランジスタ4のドレイン電極が接続され、ビット線に可変抵抗素子3の下部電極が接続され、ワード線に選択トランジスタ4のゲート電極が接続し、ソース線に選択トランジスタ4のソース電極が接続している。尚、可変抵抗素子3の下部電極と選択トランジスタ4のドレイン電極が接続され、ビット線に可変抵抗素子3の上部電極が接続されて、可変抵抗素子3の上部電極と下部電極の関係が反転しても構わない。
このように、メモリセル2を選択トランジスタ4と可変抵抗素子3の直列回路で構成することにより、ワード線の電位によって選択されたメモリセル2の選択トランジスタ4がオン状態となり、更に、ビット線の電位によって選択されたメモリセル2の可変抵抗素子3にのみ選択的に書き込み或いは消去電圧が印加され、可変抵抗素子3の抵抗値を変化可能にする構成となっている。
図23に、1T/1R型メモリセルのメモリセルアレイ501を備えた不揮発性半導体記憶装置の一構成例を示す。アドレス線502から制御回路506に入力された、アドレス入力に対応したメモリセルアレイ501内の特定のメモリセルが、ビット線デコーダ505、ソース線デコーダ510、及び、ワード線デコーダ504によって選択され、データの書き込み、消去、読み出しの各動作が実行され、選択されたメモリセルにデータが記憶され、且つ、読み出される。外部装置(図示せず)との間のデータの入出力は、データ線503を介して行われる。
ワード線デコーダ504は、アドレス線502に入力された信号に対応するメモリセルアレイ501のワード線を選択し、ビット線デコーダ505は、アドレス線502に入力されたアドレス信号に対応するメモリセルアレイ501のビット線を選択し、更に、ソース線デコーダ510は、アドレス線502に入力されたアドレス信号に対応するメモリセルアレイ501のソース線を選択する。制御回路506は、メモリセルアレイ501の書き込み、消去、読み出しの各動作における制御を行う。制御回路506は、アドレス線502から入力されたアドレス信号、データ線503から入力されたデータ入力(書き込み時)、制御信号線509から入力された制御入力信号に基づいて、ワード線デコーダ504、ビット線デコーダ505、ソース線デコーダ510、電圧スイッチ回路508、メモリセルアレイ501の読み出し、書き込み、及び、消去動作を制御する。図23に示す例では、制御回路506は、図示しないが一般的なアドレスバッファ回路、データ入出力バッファ回路、制御入力バッファ回路としての機能を具備している。
電圧スイッチ回路508は、メモリセルアレイ501の読み出し、書き込み、消去時に必要なワード線、ビット線及びソース線の各電圧を動作モードに応じて切り替え、メモリセルアレイ501に供給する。ここで、Vccは不揮発性半導体記憶装置の電源電圧、Vssは接地電圧、Vwrt、Vrstは書き込み及び消去用の電圧、Vrは読み出し電圧である。また、データの読み出しは、メモリセルアレイ501からビット線デコーダ505、読み出し回路507を介して実行される。読み出し回路507は、データの状態を判定し、その結果を制御回路506に転送し、データ線503へ出力する。
次に、1R型メモリセルによりメモリセルアレイを形成して、大容量の不揮発性半導体記憶装置を構成した場合の構成例を、図面を用いて説明する。図24に示すように、メモリセル1は、選択トランジスタと可変抵抗素子の直列回路で構成せずに、可変抵抗素子3の単体で構成し、当該1R型メモリセル1をマトリクス状に配列してメモリセルアレイ601を構成しており、例えば、下記の特許文献2に開示されているものと同様である。具体的には、メモリセルアレイ601は列方向に延伸するビット線m本(BL1〜BLm)と行方向に延伸するワード線n本(WL1〜WLn)の交点にメモリセル1がm×n個配置した構成となっている。各メモリセル1は、ワード線に可変抵抗素子3の上部電極が接続され、ビット線に可変抵抗素子3の下部電極が接続している。尚、ワード線に可変抵抗素子3の下部電極が接続され、ビット線に可変抵抗素子3の上部電極が接続されて、可変抵抗素子3の上部電極と下部電極の関係が反転しても構わない。
1T/1R型メモリセル2で構成されたメモリセルアレイ501(図22及び図23参照)では、データの読み出し、書き込み、消去の対象となるメモリセルを選択する際に、選択ワード線と選択ビット線へ夫々所定の電圧を印加し、選択ワード線と選択ビット線の両方に接続する選択メモリセルに含まれる選択トランジスタだけをオン状態にすることによって、選択メモリセルに含まれる可変抵抗素子だけに読み出し電流を流すことができる。一方、1R型メモリセル1で構成されたメモリセルアレイ601では、データの読み出し対象となるメモリセルを選択する際に、読み出し対象メモリセルと共通のワード線、ビット線に接続する選択メモリセルにも、同様のバイアス電圧が印加されるので、読み出し対象メモリセル以外にも読み出し電流が流れる。行単位または列単位で選択された選択メモリセルを流れる読み出し電流は、列選択或いは行選択によって、読み出し対象メモリセルの読み出し電流として検知される。1R型メモリセル1で構成されたメモリセルアレイ601では、読み出し対象メモリセル以外にも読み出し電流が流れることになるが、メモリセル構造が単純であり、メモリセル面積とメモリセルアレイ面積が小さくなるという利点がある。
図25に、1R型メモリセル1のメモリセルアレイ601を備えた不揮発性半導体記憶装置の一構成例を示す。アドレス線602から制御回路606に入力されたアドレス入力に対応したメモリセルアレイ601内の特定のメモリセルが、ビット線デコーダ605、及び、ワード線デコーダ604によって選択され、データの書き込み、消去、読み出しの各動作が実行され、選択されたメモリセルにデータが記憶され、且つ、読み出される。外部装置(図示せず)との間のデータの入出力は、データ線603を介して行われる。
ワード線デコーダ604は、アドレス線602に入力された信号に対応するメモリセルアレイ601のワード線を選択し、ビット線デコーダ605は、アドレス線602に入力されたアドレス信号に対応するメモリセルアレイ601のビット線を選択する。制御回路606は、メモリセルアレイ601の書き込み、消去、読み出しの各動作における制御を行う。制御回路606は、アドレス線602から入力されたアドレス信号、データ線603から入力されたデータ入力(書き込み時)、制御信号線609から入力された制御入力信号に基づいて、ワード線デコーダ604、ビット線デコーダ605、電圧スイッチ回路608、メモリセルアレイ601の読み出し、書き込み、及び、消去動作を制御する。図25に示す例では、制御回路606は、図示しないが一般的なアドレスバッファ回路、データ入出力バッファ回路、制御入力バッファ回路としての機能を具備している。
電圧スイッチ回路608は、メモリセルアレイ601の読み出し、書き込み、消去時に必要なワード線、ビット線及びソース線の各電圧を動作モードに応じて切り替え、メモリセルアレイ601に供給する。ここで、Vccは不揮発性半導体記憶装置の電源電圧、Vssは接地電圧、Vwrt、Vrstは書き込み及び消去用の電圧、Vrは読み出し電圧である。また、データの読み出しは、メモリセルアレイ601からビット線デコーダ605、読み出し回路607を介して実行される。読み出し回路607は、データの状態を判定し、その結果を制御回路606に転送し、データ線603へ出力する。
1T/1R型メモリセルと1R型メモリセルを構成する可変抵抗素子としては、カルコゲナイド化合物の結晶/アモルファス化の状態変化によって抵抗値を変化させる相変化メモリ素子、トンネル磁気抵抗効果による抵抗変化を用いるMRAM素子、導電性ポリマーで抵抗素子が形成されるポリマー強誘電性RAM(PFRAM)のメモリ素子、電気パルス印加によって抵抗変化を起こすRRAM素子等がある。
メモリセルの構成が1T/1R型や1R型等の構成形態の違いに拘わらず、書き込み状態及び消去状態にある可変抵抗素子の抵抗値が書き込み・消去動作を繰り返す度にばらつくと、書き込み・消去動作に要する電気的パルスの印加時間がばらつき、書き込み時間・消去時間が長くなり、また、各動作時の消費電力が大きくなるという問題が生じる。更に、可変抵抗素子の書き込み状態及び消去状態における各抵抗値に大きなバラツキが生じると、読み出し動作の動作マージンや読み出し速度が低下することになる。つまり、可変抵抗素子の書き込み状態及び消去状態間の抵抗変化比が大きくても、夫々の状態における抵抗値のバラツキが大きいと、書き込み・消去・読み出しの各メモリ動作において記憶装置としての性能の低下を招くことになり、上記バラツキを抑制する必要が生じる。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気的ストレスによる電気抵抗の変化により情報を記憶する可変抵抗素子を備えてなるメモリセルを行方向及び列方向に夫々複数配列してなるメモリセルアレイを備えた不揮発性半導体記憶装置において、可変抵抗素子の記憶状態のバラツキを抑制可能で、高性能なメモリ動作を実現する不揮発性半導体記憶装置を提供する点にある。
上記目的を達成するための本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、電気的ストレスによる電気抵抗の変化により情報を記憶する可変抵抗素子を備えてなるメモリセルを行方向及び列方向に夫々複数配列してなるメモリセルアレイと、前記メモリセルアレイの中から少なくとも1つの前記メモリセルを選択するメモリセル選択回路と、前記メモリセル選択回路により選択された選択メモリセルの前記可変抵抗素子に対する情報の書き込み、消去、及び、読み出しの制御を行う制御回路と、前記選択メモリセルに印加する書き込み電圧、消去電圧、及び、読み出し電圧を生成するための複数の電圧を切り替えて前記メモリセルアレイに供給する電圧スイッチ回路と、前記メモリセルから情報の読み出しを行う読み出し回路と、を少なくとも備えてなる不揮発性半導体記憶装置であって、前記可変抵抗素子が、電気的ストレスの積算印加時間の増加に対して抵抗値が単調に変化する領域において、前記抵抗値の時間変化率の絶対値が前記積算印加時間の増加に対して極大値を有し、前記極大値を通過後に所定値以下となる抵抗変化特性を有し、前記制御回路が、前記選択メモリセルに対する情報の書き込み動作において、前記可変抵抗素子の抵抗値が、前記抵抗値の時間変化率の絶対値が前記極大値を通過後に前記所定値以下となる抵抗値範囲に含まれる第1領域内にある場合を書き込み状態として書き込み制御を行うことを第1の特徴とする。
更に、上記第1の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、前記制御回路が、前記選択メモリセルに対する情報の消去動作において、前記可変抵抗素子の抵抗値が、前記抵抗値の時間変化率の絶対値が前記極大値を通過後に前記所定値以下となるまでの抵抗値範囲に含まれる第2領域内にある場合を消去状態として消去制御を行うことを特徴とする。
更に、上記第1の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、前記読み出し回路が、前記選択メモリセルに対する情報の読み出し動作において、前記可変抵抗素子の抵抗値が、前記抵抗値の時間変化率の絶対値が前記極大値を通過後に前記所定値となる抵抗値またはその近傍値を参照抵抗値として、前記選択メモリセルの前記可変抵抗素子の抵抗値に対応する読み出し電圧または読み出し電流と、前記参照抵抗値に対応する参照電圧または参照電流を比較して、前記選択メモリセルから情報を読み出すことを特徴とする。
上記目的を達成するための本発明に係る不揮発性半導体記憶装置は、電気的ストレスによる電気抵抗の変化により情報を記憶する可変抵抗素子を備えてなるメモリセルを行方向及び列方向に夫々複数配列してなるメモリセルアレイと、前記メモリセルアレイの中から少なくとも1つの前記メモリセルを選択するメモリセル選択回路と、前記メモリセル選択回路により選択された選択メモリセルの前記可変抵抗素子に対する情報の書き込み、消去、及び、読み出しの制御を行う制御回路と、前記選択メモリセルに印加する書き込み電圧、消去電圧、及び、読み出し電圧を生成するための複数の電圧を切り替えて前記メモリセルアレイに供給する電圧スイッチ回路と、前記メモリセルから情報の読み出しを行う読み出し回路と、を少なくとも備えてなる不揮発性半導体記憶装置であって、前記可変抵抗素子が、電気的ストレスの積算印加時間の増加に対して定電圧印加時に流れるメモリセル電流が単調に変化する領域において、前記メモリセル電流の時間変化率の絶対値が前記積算印加時間の増加に対して極大値を有し、前記極大値を通過後に所定値以下となる電流変化特性を有し、前記制御回路が、前記選択メモリセルに対する情報の書き込み動作において、前記可変抵抗素子のメモリセル電流が、前記メモリセル電流の時間変化率の絶対値が前記極大値を通過後に前記所定値以下となるメモリセル電流範囲に含まれる第1領域内にある場合を書き込み状態として書き込み制御を行うことを第2の特徴とする。
更に、上記第2の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、前記制御回路が、前記選択メモリセルに対する情報の消去動作において、前記可変抵抗素子のメモリセル電流が、前記メモリセル電流の時間変化率の絶対値が前記極大値を通過後に前記所定値以下となるまでのメモリセル電流範囲に含まれる第2領域内にある場合を消去状態として消去制御を行うことを特徴とする。
更に、上記第2の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、前記読み出し回路が、前記選択メモリセルに対する情報の読み出し動作において、前記可変抵抗素子のメモリセル電流が、前記メモリセル電流の時間変化率の絶対値が前記極大値を通過後に前記所定値となるメモリセル電流またはその近傍値を参照電流値として、前記選択メモリセルの前記可変抵抗素子のメモリセル電流に対応する読み出し電流と、前記参照電流値に対応する参照電流を比較して、前記選択メモリセルから情報を読み出すことを特徴とする。
更に、上記第1または第2の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、前記可変抵抗素子が、ペロブスカイト型結晶構造を有する可変抵抗材料を用いて形成されていることを特徴とする。
更に、上記第1または第2の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、前記可変抵抗素子が、少なくとも2つ以上の金属元素を含み、遷移金属とアルカリ土類金属と希土類金属の3つグループのうち少なくとも2つ以上のグループの金属元素から構成される可変抵抗材料を用いて形成されていることを特徴とする。
更に、上記第1または第2の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、前記可変抵抗素子が、Pr(プラセオジウム)とLa(ランタン)の少なくとも何れか一方、Ca(カルシウム)とSr(ストロンチウム)の少なくとも何れか一方、及び、Mn(マンガン)を含む酸化物として構成される可変抵抗材料を用いて形成されていることを特徴とする。
更に、上記第1または第2の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、前記可変抵抗素子が、Pr0.7Ca0.3MnO3またはPr0.5Ca0.5MnO3で示される化学構造式を有する可変抵抗材料を用いて形成されていることを特徴とする。
更に、上記第1または第2の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、前記メモリセルが、前記可変抵抗素子のみで構成されていることを特徴とする。
更に、上記第1または第2の特徴の不揮発性半導体記憶装置は、前記メモリセルが、前記可変抵抗素子とスイッチング素子の直列回路で構成されていることを特徴とする。
上記目的を達成するための本発明に係る不揮発性半導体記憶装置の制御方法は、上記何れかの特徴の不揮発性半導体記憶装置の制御方法であって、前記メモリセル選択回路により選択された選択メモリセルに対する書き込み処理が、前記選択メモリセルの記憶状態を読み出す第1ステップと、前記第1ステップで読み出した記憶状態が前記書き込み状態であるか否かにより書き込み動作を行うか否かを判定する第2ステップと、前記記憶状態が前記書き込み状態でない場合に、書き込み用の第1書き込み電圧を前記選択メモリセルの前記可変抵抗素子の両端に印加して書き込み動作を行う第3ステップと、を有することを第1の特徴とする。
更に、上記第1の特徴の不揮発性半導体記憶装置の制御方法は、前記メモリセル選択回路により選択された選択メモリセルに対する書き込み処理が、前記第1ステップと前記第2ステップと前記第3ステップに加えて、前記選択メモリセルの書き込み動作後の記憶状態を読み出して、前記記憶状態が前記書き込み状態であるかを判断する第4ステップと、前記記憶状態が前記書き込み状態である場合は書き込み終了とし、前記記憶状態が前記書き込み状態でない場合、再度書き込み用の第2書き込み電圧を前記選択メモリセルの前記可変抵抗素子の両端に印加して書き込み動作を行う第5ステップと、を有し、前記記憶状態が前記書き込み状態になるまで前記第4ステップと前記第5ステップを繰り返すことを特徴とする。
更に、上記第1の特徴の不揮発性半導体記憶装置の制御方法は、前記メモリセル選択回路により選択された選択メモリセルに対する消去処理が、前記選択メモリセルの記憶状態を読み出す第1ステップと、前記第1ステップで読み出した記憶状態が前記消去状態であるか否かにより消去動作を行うか否かを判断する第2ステップと、前記記憶状態が前記消去状態でない場合に、消去用の第1消去電圧を前記選択メモリセルの前記可変抵抗素子の両端に印加して消去動作を行う第3ステップと、を有することを特徴とする。
上記目的を達成するための本発明に係る不揮発性半導体記憶装置の制御方法は、上記何れかの特徴の不揮発性半導体記憶装置の制御方法であって、前記メモリセル選択回路により選択された選択メモリセルに対する消去処理が、前記選択メモリセルの記憶状態を読み出す第1ステップと、前記第1ステップで読み出した記憶状態が前記消去状態であるか否かにより消去動作を行うか否かを判断する第2ステップと、前記記憶状態が前記消去状態でない場合に、消去用の第1消去電圧を前記選択メモリセルの前記可変抵抗素子の両端に印加して消去動作を行う第3ステップと、を有することを第2の特徴とする。
上記第1の特徴の不揮発性半導体記憶装置によれば、可変抵抗素子の抵抗値が書き込み動作における電気的ストレスの印加により増加する場合を仮定すると、抵抗値は電気的ストレスの印加により急峻に増加するが、その後緩やかに増加するようになり、電気的ストレスの積算印加時間が増加しても抵抗値は大幅に増加しなくなる。従って、書き込み状態と定義される第1領域内の抵抗値範囲は、電気的ストレスの印加による抵抗値の全変化範囲の半分より更に狭い範囲内に収まることになり、過剰に電気的ストレスが可変抵抗素子に印加されても書き込み状態での抵抗値は第1領域内に制限され、そのバラツキが抑制される。また、書き込み状態から元の抵抗状態へ戻す消去動作を考えてみた場合、消去動作における初期状態における抵抗値のバラツキが抑制されているので、一定の消去用の電気的ストレスの印加した場合の抵抗値のバラツキも抑制される結果となる。
尚、書き込み動作と消去動作における抵抗値の変化方向(増減)を逆転しても同様であり、更に、上記説明の書き込み動作は消去動作に、また、消去動作は書き込み動作に夫々置き換えて考えることも可能である。
上記第2の特徴の不揮発性半導体記憶装置によれば、可変抵抗素子のメモリセル電流が書き込み動作における電気的ストレスの印加により減少する場合を仮定すると、メモリセル電流は電気的ストレスの印加により急峻に減少するが、その後緩やかに減少するようになり、電気的ストレスの積算印加時間が増加してもメモリセル電流は大幅に減少しなくなる。従って、書き込み状態と定義される第1領域内のメモリセル電流範囲は、電気的ストレスの印加によるメモリセル電流の全変化範囲の半分より更に狭い範囲内に収まることになり、過剰に電気的ストレスが可変抵抗素子に印加されても書き込み状態でのメモリセル電流は第1領域内に制限され、そのバラツキが抑制される。また、書き込み状態から元の抵抗状態へ戻す消去動作を考えてみた場合、消去動作における初期状態におけるメモリセル電流のバラツキが抑制されているので、一定の消去用の電気的ストレスの印加した場合のメモリセル電流のバラツキも抑制される結果となる。
尚、書き込み動作と消去動作におけるメモリセル電流の変化方向(増減)を逆転しても同様であり、更に、上記説明の書き込み動作は消去動作に、また、消去動作は書き込み動作に夫々置き換えて考えることも可能である。
尚、上記第1または第2の特徴の不揮発性半導体記憶装置によるバラツキ抑制効果は、メモリセルの構成形態の如何に関係なく発揮されるものである。
更に、上記第1の特徴の不揮発性半導体記憶装置の制御方法によれば、書き込み動作において書き込み状態にない選択メモリセルだけを選択的に書き込むために、既に書き込み状態にあるメモリセルの可変抵抗素子に対する書き込み動作が回避されるため、既に書き込み状態にあるメモリセルの書き込み状態が徐々に過書き込みとなるのを防止でき、書き込み状態のバラツキを更に抑制できる。また、不要な書き込み動作を回避できるので、書き込み動作に伴う低消費電力化が図れる。
更に、上記第2の特徴の不揮発性半導体記憶装置の制御方法によれば、消去動作において消去状態にない選択メモリセルだけを選択的に消去するために、既に消去状態にあるメモリセルの可変抵抗素子に対する消去動作が回避されるため、既に消去状態にあるメモリセルの消去状態が徐々に過消去となるのを防止でき、消去状態のバラツキを更に抑制できる。また、不要な消去動作を回避できるので、消去動作に伴う低消費電力化が図れる。ここで、消去状態と定義される第2領域内での電気的ストレスの印加時間の増加に対する抵抗値変化は、書き込み状態と定義される第1領域内の抵抗値範囲での同抵抗値変化と比較して大きいため、既に消去状態にあるメモリセルの可変抵抗素子に対する過消去動作を抑制する効果は大きいと言える。
以下、本発明に係る不揮発性半導体記憶装置及びその制御方法(以下、適宜「本発明装置」及び「本発明方法」と略称する)の実施形態を図面に基づいて説明する。
〈第1実施形態〉
図1は、本発明装置100の全体的な概略構成を示すブロック図である。本発明装置100は、メモリセルアレイ101内に情報が記憶され、メモリセルアレイ101はメモリセルを行方向及び列方向に夫々複数配列して構成され、メモリセルアレイ101内の各メモリセルに記憶した情報を読み出すことができる。本実施形態では、メモリセルアレイ101は、図24に示す従来技術の1R型メモリセルのメモリセルアレイ601と同様の構成となっている。
アドレス線102から入力されたアドレスに対応したメモリセルアレイ101内の特定のメモリセルに情報が記憶され、その情報はデータ線103を通り、外部装置に出力される。ワード線デコーダ104は、アドレス線102に入力されたアドレス信号に対応するメモリセルアレイ101のワード線を選択し、ビット線デコーダ105は、アドレス線102に入力されたアドレス信号に対応するメモリセルアレイ101のビット線を選択する。本実施形態では、ワード線デコーダ104が、メモリセルアレイ101の中からメモリセルを行単位で選択するメモリセル選択回路として機能し、ビット線デコーダ105が、メモリセルアレイ101の中からメモリセルを列単位で選択するメモリセル選択回路として機能する。
制御回路106は、メモリセルアレイ101の書き込み、消去、読み出しの制御を行う。制御回路106は、アドレス線102から入力されたアドレス信号、データ線103から入力されたデータ入力(書き込み時)、制御信号線109から入力された制御入力信号に基づいて、ワード線デコーダ104、ビット線デコーダ105、電圧スイッチ回路108を制御して、メモリセルアレイ101の読み出し、書き込み、及び、消去動作を制御する。図1に示す例では、制御回路106は、図示しないが一般的なアドレスバッファ回路、データ入出力バッファ回路、制御入力バッファ回路としての機能を具備している。
電圧スイッチ回路108は、メモリセルアレイ101の読み出し、書き込み、消去時に必要なビット線とワード線の電圧を与える。Vccはデバイスの供給電圧、Vssはグランド電圧、Vwrt、Vrstは書き込み及び消去用の電圧、Vrは読み出し電圧である。
データの読み出しは、メモリセルアレイ101からビット線デコーダ105、読み出し回路107を通って行われる。読み出し回路107は、データの状態を判定し、その結果を制御回路106に送り、データ線103へ出力する。
図1に示す本発明装置は、図25に示す1R型メモリセルのメモリセルアレイを備えた従来の不揮発性半導体記憶装置と基本的に同じ構成であるが、制御回路106及び読み出し回路107が、後述するようにメモリセルを構成する可変抵抗素子の抵抗変化特性の特徴を活かした書き込み制御、消去制御、読み出し動作を実行可能に構成されている点で相違する。
図2に、メモリセルアレイの立体的な構成を模式的に示す。図2では、説明の便宜上、2×2構成のメモリセルアレイ200を例示してある。メモリセルアレイ200は、2本のビット線8と2本のワード線9の各交点にメモリセル1が挟持され構成されている。
図3に、ビット線方向に沿ったメモリセル1の断面図を示す。電気的ストレスによる電気抵抗の変化により情報を記憶する可変抵抗体5が上部電極6と下部電極7に挟まれて、可変抵抗素子3を形成している。本実施形態では、メモリセル1は可変抵抗素子3だけで形成されている。また、ビット線8は可変抵抗素子3の上部電極6と電気的に接続されており、ワード線9は可変抵抗素子3の下部電極7と電気的に接続されている。
可変抵抗素子3は、電圧(電気的ストレスの一つ)の印加により電気抵抗が変化し、電圧印加解除後も、変化した電気抵抗が保持されることにより、その抵抗変化でデータの記憶が可能な不揮発性の記憶素子である。可変抵抗素子3を構成する可変抵抗体5としては、上記非特許文献1に示すように、下部電極7と格子整合した単結晶または多結晶のペロブスカイト型結晶構造の材料が用いられ、2以上の金属元素を含んでおり、その金属元素は、遷移金属とアルカリ土類金属と希土類金属の中から選択される。更に、マンガン、チタン、ジルコニア、高温超伝導材料を含む様々な構成をとる。特に、LaまたはPrの希土類やLaとPrの混晶とCaやSrのアルカリ土類金属やCaとSrの混晶とMnO3を組み合わせたマンガン酸化物が特に可変抵抗体材料として有効である。また、可変抵抗体5は、組成がPr1−xCaxMnO3(x=0.3,0.5)であるものが最も広い抵抗値変化幅を持つとされており、よく用いられている。
下部電極7は、ペロブスカイト型酸化物との格子整合性が高く、高導電性および高耐酸化性をもつPtが望ましく、Ir、Ph、Pd等の白金族金属の貴金属単体または貴金属をベースとした合金、或いは、Ir、Ru等の酸化物導電体、或いは、SRO(SrRu3)やYBCO(YbBa2Cu3O7)等の酸化物導電体などを用いることができるが、下部電極7上に形成されるペロブスカイト型酸化物の形成温度が400℃から600℃であって、且つ、高酸素雰囲気に暴露されるため、材料の選択幅は狭められる。上部電極6は、導電性材料で且つ加工が容易であれば、特に指定はなく、より効率よく作製するためには、下部電極と同じ材料が好ましい。
次に、本実施形態で使用する可変抵抗素子3の書き込み特性(抵抗変化特性に該当)について説明する。図4及び図5に、可変抵抗素子3を構成する可変抵抗体5としてPr0.7Ca0.3MnO3を用いた場合における、書き込み電圧が3.5Vで、最初1μsのパルス幅で10回、その後(積算印加時間10μs以降)、10μsのパルス幅で、可変抵抗素子3の上部電極6と下部電極7間に電圧パルスを複数回印加した場合の抵抗値[Ω]の推移と、抵抗値の時間変化率[Ω/μs]の推移の様子を示す。
可変抵抗素子3に電圧パルスを複数回に分割して印加すると、製造時の初期状態からでは、図4に示すように、電圧パルスの積算印加時間の増加に対して、抵抗値は一旦僅かに低下した後、最初急峻にその後緩やかに最大値に到達するまで単調に増加する。また、図5に示すように、この単調増加期間における積算印加時間の増加に対して、抵抗値の時間変化率[Ω/μs]の絶対値が、極大値まで上昇し、該極大値を通過後に所定値(例えば、極大値の50%値)以下まで低下する。図4及び図5に示す例では、抵抗値の時間変化率は極大値まで上昇した後、0[Ω/μs]まで低下する。大体、抵抗値の時間変化率が極大値を通過して、極大値の約50%値に低下するまでが、抵抗値が急峻に且つ積算印加時間の増分に対して概ね比例して増加する線形領域で、それ以降が、抵抗値が緩やかに増加する飽和領域となる。ここで、抵抗値の時間変化率が極大値を通過後、極大値の50%値となる時点での抵抗値を臨界抵抗値Rcと定義すると、可変抵抗素子3の抵抗値Rが臨界抵抗値Rc以上の領域が概ね飽和領域に該当する。尚、臨界抵抗値Rcの定義は、極大値の50%値となる時点での抵抗値に限定されるものではなく、実際に抵抗変化特性に応じて適正な値に変更可能である。
書き込み動作の制御に際し、可変抵抗素子3の抵抗値Rが書き込み状態であることを判定する書き込み参照抵抗値Rwを臨界抵抗値Rc以上(Rw≧Rc)の臨界抵抗値Rcの近傍値に設定し、可変抵抗素子3の抵抗値Rが書き込み状態と判定される第1領域R1を、上記飽和領域内のR>Rwとなる抵抗値範囲と定義する。図4及び図5に示す例では、臨界抵抗値Rcが約45kΩ、抵抗値の最大値が約62kΩである。抵抗値の初期値が約10kΩであるので、抵抗値の総変化幅52kΩに対し、第1領域R1の抵抗値範囲は17kΩ以下となる。書き込み動作の制御において、可変抵抗素子3の抵抗値RがR>Rwとなるまで電圧パルスを印加することで、書き込み状態での抵抗値のバラツキを第1領域R1内に抑制することができる。
図6及び図7に、可変抵抗素子3を構成する可変抵抗体5としてPr0.7Ca0.3MnO3を用い、書き込み電圧が4Vと4.5Vの場合における、電圧パルス(最初1μsのパルス幅10回、その後10μsのパルス幅)の積算印加時間に対する抵抗値[Ω]の推移の様子を示す。図4、図6及び図7に示すように、書き込み電圧が変化しても、電圧パルスの積算印加時間の増加に対して、抵抗値は一旦僅かに低下した後、最初急峻にその後緩やかに最大値に到達するまで単調に増加するという抵抗変化特性は同じであり、到達する抵抗値の最大値も概ね62kΩ〜68kΩと等しいことが分かる。従って、書き込み電圧の設定値に関係なく、第1領域R1を上記要領で設定することで、書き込み状態での抵抗値のバラツキを抑制できる。
次に、本実施形態で使用する可変抵抗素子3の消去特性(抵抗変化特性)について説明する。図8に、可変抵抗素子3を構成する可変抵抗体5としてPr0.7Ca0.3MnO3を用いた場合における、書き込み電圧パルス印加後に、書き込み電圧パルスとは逆極性に消去電圧パルスを3回連続して可変抵抗素子に印加した場合の抵抗値[Ω]の推移の様子を示す。図8の例では、書き込み電圧及び消去電圧の絶対値は4Vで、書き込み電圧パルスの印加時間は、20μs、30μs、40μsの3通りである。また、消去電圧パルスの各パルス幅は3μsである。この3通りの書き込み電圧パルス印加後の可変抵抗素子の抵抗状態は、図6に示すように、何れも飽和状態の第1領域R1内にある。図8に示すように、3通りの異なる印加時間の書き込み状態から同じ消去動作を行った場合、書き込み状態での抵抗値が夫々略等しいため、消去後の抵抗値は略同じ様に減少する。つまり、書き込み状態での抵抗値のバラツキが十分に抑制されていると、消去電圧パルスの電圧振幅やパルス幅を制御することにより、消去動作後の抵抗値のバラツキも十分に抑制可能であることを示している。
ここで、消去動作の制御に際し、可変抵抗素子3の抵抗値Rが消去状態であることを判定する消去参照抵抗値Reを臨界抵抗値Rc以下(Re≦Rc)の臨界抵抗値Rcの近傍値に設定し、可変抵抗素子3の抵抗値Rが消去状態と判定される第2領域R2を、上記線形領域内のR<Reとなる抵抗値範囲と定義する。尚、消去参照抵抗値Reを書き込み参照抵抗値Rwより一定値以上低く設定することで、その差分を読み出しマージンとして確保できる。消去電圧パルスの電圧振幅やパルス幅を制御することにより、消去動作後の抵抗値の分布範囲を第2領域R2内の消去参照抵抗値Reに近い領域内に更に抑制すると、次回の書き込み動作における書き込み電圧の印加時間を短縮でき、書き込み動作の高速化及び低消費電力化が図れる。但し、後述するように、第2領域R2は上記線形領域内に存在するため、消去電圧パルスの印加時間に対する抵抗値の変動幅が大きいため、書き込み後の抵抗値と比較した場合、消去後の抵抗値のバラツキは必然的に大きくなる。
しかしながら、仮に、臨界抵抗値Rcを抵抗値の総変化幅の中央付近に設定し、第1領域R1の一部が上記線形領域を含むように設定すると、書き込み状態における抵抗値のバラツキが広がるために、その後の消去動作後の抵抗値のバラツキも広がる結果となる。従って、書き込みと消去を繰り返すことにより、当該バラツキが累積して広がることになる。これに比較して、第1領域R1を上記飽和領域内に制限することにより、書き込み動作毎に、抵抗値のバラツキが抑制されるため、書き込みと消去を繰り返しても抵抗値のバラツキが累積的に拡大することはない。
次に、本発明方法に基づく制御回路106による書き込み制御及び消去制御のための処理手順について、図9及び図10を用いて説明する。
先ず、書き込み制御の処理手順について説明する。図9に示すように、ワード線デコーダ104とビット線デコーダ105によって選択されたメモリセルアレイ101内の選択メモリセルに対して、選択メモリセルの記憶状態を読み出し(#1:第1ステップ)、読み出した記憶状態が書き込み状態(R>Rw)であるか否かにより書き込み動作を行うか否かを判定する(#2:第2ステップ)。記憶状態が書き込み状態(R>Rw)である場合は、書き込み動作を行う必要がないため、書き込み制御を終了し、記憶状態が書き込み状態(R>Rw)でない場合は、書き込み条件を設定し(#3)、設定条件の書き込み電圧パルスを選択メモリセルの可変抵抗素子に印加する(#4:第3ステップ)。尚、書き込み条件の設定では、書き込み電圧パルスの印加回数を示す変数Nを0に設定し、書き込み電圧Vwを第1書き込み電圧Vw1(例えば、4V)に、書き込みパルス幅Twを第1書き込みパルス幅Tw1(例えば、3μs)に設定する。
引き続き、書き込み電圧パルス印加後の選択メモリセルの記憶状態を読み出し(#5)、記憶状態が書き込み状態(R>Rw)であるかを判断する(#6)。ここで、記憶状態が書き込み状態である場合は書き込み制御を終了し、記憶状態が書き込み状態でない場合には、再度、書き込み条件を設定し(#7)、書き込み電圧パルスの印加回数Nが所定の最大値Nmaxに至っているかを確認し(#8)、印加回数Nが所定の最大値Nmaxに至っていない場合は、ステップ#4に戻って、再設定された条件での書き込み電圧パルスを選択メモリセルの可変抵抗素子に印加する。尚、書き込み条件の再設定(ステップ#7)では、印加回数を示す変数Nに1を加算し、書き込み電圧Vwを第2書き込み電圧Vw2(例えば、第1書き込み電圧Vw1と同じ4V)に、書き込みパルス幅Twを第2書き込みパルス幅Tw2(例えば、第1書き込みパルス幅Tw1と同じ3μs)に設定する。ここで、ステップ#4〜#8の処理は、印加回数Nが最大値Nmaxに至るまでの積算印加時間範囲内において、ステップ#6で記憶状態が書き込み状態であると判定されるまで繰り返される。また、ステップ#8の判定で印加回数Nが所定の最大値Nmaxに至っている場合は、書き込み不良として書き込み制御を終了する。尚、第2書き込み電圧Vw2は第1書き込み電圧Vw1と同電圧に設定することで、書き込み電圧パルスの積算印加時間の連続性を維持するためには好ましいが、必ずしも両者を同電圧に設定する必要はない。ところで、上記処理手順において、ステップ#5及び#6が、選択メモリセルの書き込み動作後の記憶状態を読み出して、その記憶状態が書き込み状態(R>Rw)であるかを判断する第4ステップに該当し、ステップ#7及び#4が、記憶状態が書き込み状態でない場合に、再度書き込み用の第2書き込み電圧を選択メモリセルの可変抵抗素子の両端に印加して書き込み動作を行う第5ステップに該当する。
次に、消去制御の処理手順について説明する。図10に示すように、ワード線デコーダ104とビット線デコーダ105によって選択されたメモリセルアレイ101内の選択メモリセルに対して、選択メモリセルの記憶状態を読み出し(#1:第1ステップ)、読み出した記憶状態が消去状態(R<Re)であるか否かにより消去動作を行うか否かを判定する(#2:第2ステップ)。記憶状態が消去状態(R<Re)である場合は、消去動作を行う必要がないため、消去制御を終了し、記憶状態が消去状態(R<Re)でない場合は、消去条件を設定し(#3)、設定条件の消去電圧パルスを選択メモリセルの可変抵抗素子に印加する(#4:第3ステップ)。尚、消去条件の設定では、消去電圧パルスの印加回数を示す変数Nを0に設定し、消去電圧Veを第1消去電圧Ve1(例えば、−4V)に、消去パルス幅Teを第1消去パルス幅Te1(例えば、3μs)に設定する。
引き続き、消去電圧パルス印加後の選択メモリセルの記憶状態を読み出し(#5)、記憶状態が消去状態(R<Re)であるかを判断する(#6)。ここで、記憶状態が消去状態である場合は消去制御を終了し、記憶状態が消去状態でない場合には、再度、消去条件を設定し(#7)、消去電圧パルスの印加回数Nが所定の最大値Nmaxに至っているかを確認し(#8)、印加回数Nが所定の最大値Nmaxに至っていない場合は、ステップ#4に戻って、再設定された条件での消去電圧パルスを選択メモリセルの可変抵抗素子に印加する。尚、消去条件の再設定(ステップ#7)では、印加回数を示す変数Nに1を加算し、消去電圧Veを第2消去電圧Ve2(例えば、第1消去電圧Ve1と同じ−4V)に、消去パルス幅Teを第2消去パルス幅Te2(例えば、第1消去パルス幅Te1と同じ3μs)に設定する。ここで、ステップ#4〜#8の処理は、印加回数Nが最大値Nmaxに至るまでの積算印加時間範囲内において、ステップ#6で記憶状態が消去状態であると判定されるまで繰り返される。また、ステップ#8の判定で印加回数Nが所定の最大値Nmaxに至っている場合は、消去不良として消去制御を終了する。尚、第2消去電圧Ve2は第1消去電圧Ve1と同電圧に設定することで、消去電圧パルスの積算印加時間の連続性を維持するためには好ましいが、必ずしも両者を同電圧に設定する必要はない。
次に、上記書き込み制御及び消去制御の各処理手順における記憶状態を読み出し(#1、#5)、書き込み状態(R>Rw)または消去状態(R<Re)であるかを判断する(#2、#6)処理について、具体的に説明する。
一般に、選択メモリセルの可変抵抗素子の抵抗値と或る参照抵抗値Rref(例えば、書き込み参照抵抗値Rwまたは消去参照抵抗値Re)と比較して、選択メモリセルの記憶状態を読み出す場合、当該参照抵抗値Rrefに設定された参照用抵抗素子(通常は、同じ温度特性を備える同じ材料の可変抵抗素子を利用する)を用い、その参照用抵抗素子と選択メモリセルの可変抵抗素子に同電圧の電圧を夫々印加して、その電流値を比較するか、或いは、その参照用抵抗素子と選択メモリセルの可変抵抗素子に同じ電流値の電流を夫々流して、その電圧値を比較する。
前者の電流比較による場合は、例えば、図11に示すような回路構成を用いる。尚、図11中、図1のブロック図と共通する回路ブロックには同じ符号を付して説明する。図11では、説明の簡単のため、メモリセルアレイ101中の選択メモリセルMと選択メモリセルMに接続する選択ワード線WLと選択ビット線BLだけを表示し、選択メモリセルMの一方側(図中、下側)に接続する選択ワード線WLを選択するワード線デコーダ104は選択用のMOSFETだけを表示し、選択メモリセルMの他方側(図中、上側)に接続する選択ビット線BLを選択するビット線デコーダ105は選択用のMOSFETだけを表示してある。また、参照用抵抗素子Mref側も、選択メモリセルMとの対称性を維持するために同様のワード線デコーダ104’とビット線デコーダ105’を設けてある。選択メモリセルMと参照用抵抗素子Mrefの夫々の一方端(選択ワード線WL側)はワード線デコーダ104,104’を介して略接地電位となり、選択メモリセルMと参照用抵抗素子Mrefの夫々の他方端(選択ビット線BL側)は、ビット線デコーダ105,105’を介して、定電圧回路300,300’によって供給されるバイアス電圧VBIASに近い定電圧VCOが印加される。従って、選択メモリセルMには、IREAD=VCO/Rの読み出し電流が流れ、参照用抵抗素子Mrefには、Iref=VCO/Rrefの参照電流が流れる。センスアンプ301は、2つの入力端子から流れ出す電流差を検知して増幅する電流センスアンプであり、定電圧回路300,300’の各トランスファーゲートを介して2つの入力端子から流れ出す読み出し電流IREADと参照電流Irefの大小比較を行う。読み出し電流IREADが参照電流Irefより大きい場合は、選択メモリセルMの抵抗値Rが参照抵抗値Rref(書き込み参照抵抗値Rwまたは消去参照抵抗値Re)より低いと判定され、逆に、読み出し電流IREADが参照電流Irefより小さい場合は、選択メモリセルMの抵抗値Rが参照抵抗値Rref(書き込み参照抵抗値Rwまたは消去参照抵抗値Re)より高いと判定される。
後者の電圧比較による場合は、例えば、図12に示すような回路構成を用いる。尚、図12中、図1のブロック図と共通する回路ブロックには同じ符号を付して説明する。図12では、説明の簡単のため、メモリセルアレイ101中の選択メモリセルMと選択メモリセルMに接続する選択ワード線WLと選択ビット線BLだけを表示し、選択メモリセルMの一方側(図中、下側)に接続する選択ワード線WLを選択するワード線デコーダ104は選択用のMOSFETだけを表示し、選択メモリセルMの他方側(図中、上側)に接続する選択ビット線BLを選択するビット線デコーダ105は選択用のMOSFETだけを表示してある。また、参照用抵抗素子Mref側も、選択メモリセルMとの対称性を維持するために同様のワード線デコーダ104’とビット線デコーダ105’を設けてある。選択メモリセルMと参照用抵抗素子Mrefの夫々の一方端(選択ワード線WL側)はワード線デコーダ104,104’を介して略接地電位となり、選択メモリセルMと参照用抵抗素子Mrefの夫々の他方端(選択ビット線BL側)には、ビット線デコーダ105,105’を介して、カレントミラー回路400によって供給される定電流ICOが供給される。従って、選択メモリセルMの他方端には、VREAD=ICO×Rの読み出し電圧が発生し、参照用抵抗素子Mrefの他方端には、Vref=ICO×Rrefの参照電圧が発生する。センスアンプ401は、2つの入力端子に入力される電圧差を検知して増幅する電圧センスアンプであり、ビット線デコーダ105,105’の各電圧降下が等しいので、等価的に読み出し電圧VREADと参照電圧Vrefの大小比較を行うことになる。読み出し電圧VREADが参照電圧Vrefより大きい場合は、選択メモリセルMの抵抗値Rが参照抵抗値Rref(書き込み参照抵抗値Rwまたは消去参照抵抗値Re)より高いと判定され、逆に、読み出し電圧VREADが参照電圧Vrefより小さい場合は、選択メモリセルMの抵抗値Rが参照抵抗値Rref(書き込み参照抵抗値Rwまたは消去参照抵抗値Re)より低いと判定される。
尚、通常の読み出し動作においては、参照抵抗値Rrefを書き込み参照抵抗値Rwと消去参照抵抗値Reの中間値、例えば、臨界抵抗値Rcに設定することで、書き込み状態の読み出し、消去状態の読み出しの何れに対しても適正な読み出しマージンを確保して安定した読み出し動作を実行できる。但し、前者の電流比較による読み出し動作の場合は、参照抵抗値Rrefは、参照電流Irefが書き込み参照抵抗値Rwで決まる参照電流と消去参照抵抗値Reで決まる参照電流の中間値となるように設定するのが好ましい。
〈第2実施形態〉
次に、本発明装置及び本発明方法の別実施形態(第2実施形態)について、図面に基づいて説明する。
第2実施形態の本発明装置100の全体的な概略構成は、図1に示す第1実施形態の構成と同じであるので、重複する説明は割愛する。また、メモリセルアレイ101及びメモリセルアレイ101内の各メモリセルの構成も第1実施形態の構成と同じであるので、重複する説明は割愛する。
第1実施形態では、可変抵抗素子3の書き込み特性及び消去特性を、書き込み電圧及び消去電圧の積算印加時間に対して抵抗値が変化する抵抗変化特性として捉え、積算印加時間の増加に対して、抵抗値が急峻に且つ積算印加時間の増分に対して概ね比例して増加する線形領域と、それ以降の抵抗値が緩やかに増加する飽和領域とに2分して、書き込み状態と判定される抵抗値範囲を飽和領域内の第1領域R1とし、消去状態と判定される抵抗値範囲を線形領域内の第2領域R2として、書き込み及び消去の各制御を行うようにした。これに対し、第2実施形態では、可変抵抗素子3の書き込み特性及び消去特性を、書き込み電圧及び消去電圧の積算印加時間に対して、可変抵抗素子3に一定電圧を印加した場合に流れるメモリセル電流が変化する電流変化特性として捉え、積算印加時間の増加に対して、メモリセル電流が急峻に且つ積算印加時間の増分に対して概ね比例して減少する線形領域と、それ以降のメモリセル電流が緩やかに減少する飽和領域とに2分して、書き込み状態と判定されるメモリセル電流範囲を飽和領域内の第1領域I1とし、消去状態と判定されるメモリセル電流範囲を線形領域内の第2領域I2として、書き込み及び消去の各制御を行う。
従って、第2実施形態では、書き込み動作の検証、消去動作の検証、及び、通常の読み出し動作において、読み出し回路107は、例えば、図11に示すような回路構成を用いて電流比較によって記憶状態の判定を行う。また、電流比較に用いる参照電流Irefの設定方法が第1実施形態と異なる。
以下、第2実施形態で使用する可変抵抗素子3の書き込み特性及び消去特性(電流変化特性に該当)について説明する。先ず、可変抵抗素子3の書き込み特性について説明する。図13及び図14に、可変抵抗素子3を構成する可変抵抗体5としてPr0.7Ca0.3MnO3を用いた場合における、書き込み電圧が3.5Vで、最初1μsのパルス幅で10回、その後(積算印加時間10μs以降)、10μsのパルス幅で、可変抵抗素子3の上部電極6と下部電極7間に電圧パルスを複数回印加した場合のメモリセル電流[μA]の推移と、メモリセル電流の時間変化率[μA/μs]の絶対値の推移の様子を示す。尚、メモリセル電流は、可変抵抗素子3の両端に一定電圧を印加した場合に流れる電流値で定義される。本実施形態では、一定電圧として、可変抵抗素子3の記憶状態を書き換えない程度に低電圧の0.8Vを使用している。
可変抵抗素子3に電圧パルスを複数回に分割して印加すると、製造時の初期状態からでは、図13に示すように、電圧パルスの積算印加時間の増加に対して、メモリセル電流は一旦僅かに上昇した後、最初急峻にその後緩やかに最小値に到達するまで単調に減少する。また、図14に示すように、この単調減少期間における積算印加時間の増加に対して、メモリセル電流の時間変化率[μA/μs]の絶対値が、極大値まで上昇し、該極大値を通過後に所定値(例えば、極大値の50%値)以下まで低下する。図13及び図14に示す例では、メモリセル電流の時間変化率(絶対値)は極大値まで上昇した後、0[μA/μs]まで低下する。大体、メモリセル電流の時間変化率(絶対値)が極大値を通過して、極大値の約50%値に低下するまでが、メモリセル電流が急峻に且つ積算印加時間の増分に対して概ね比例して減少する線形領域で、それ以降が、メモリセル電流が緩やかに増加する飽和領域となる。ここで、メモリセル電流の時間変化率(絶対値)が極大値を通過後、極大値の50%値となる時点でのメモリセル電流を臨界電流値Icと定義すると、可変抵抗素子3のメモリセル電流Iが臨界電流値Ic以下の領域が概ね飽和領域に該当する。尚、臨界電流値Icの定義は、極大値の50%値となる時点でのメモリセル電流値に限定されるものではなく、実際に電流変化特性に応じて適正な値に変更可能である。
書き込み動作の制御に際し、可変抵抗素子3のメモリセル電流Iが書き込み状態であることを判定する書き込み参照電流値Iwを臨界電流値Ic以下(Iw≦Ic)の臨界電流値Icの近傍値に設定し、可変抵抗素子3のメモリセル電流Iが書き込み状態と判定される第1領域I1を、上記飽和領域内のI<Iwとなる電流値範囲と定義する。図13及び図14に示す例では、臨界電流値Icが約28μA、メモリセル電流の最小値が約13μAである。メモリセル電流の最大値が約100μAであるので、メモリセル電流の総変化幅87μAに対し、第1領域I1の電流値範囲は15μA以下となる。書き込み動作の制御において、可変抵抗素子3のメモリセル電流IがI<Iwとなるまで電圧パルスを印加することで、書き込み状態でのメモリセル電流のバラツキを第1領域I1内に抑制することができる。
図15及び図16に、可変抵抗素子3を構成する可変抵抗体5としてPr0.7Ca0.3MnO3を用い、書き込み電圧が4Vと4.5Vの場合における、電圧パルス(最初1μsのパルス幅10回、その後10μsのパルス幅)の積算印加時間に対するメモリセル電流[μA]の推移の様子を示す。図13、図15及び図16に示すように、書き込み電圧が変化しても、電圧パルスの積算印加時間の増加に対して、メモリセル電流は一旦僅かに上昇した後、最初急峻にその後緩やかに最小値に到達するまで単調に減少するという電流変化特性は同じであり、到達するメモリセル電流の最小値も概ね12μA〜13μAと等しいことが分かる。従って、書き込み電圧の設定値に関係なく、第1領域I1を上記要領で設定することで、書き込み状態でのメモリセル電流のバラツキを抑制できる。
次に、本実施形態で使用する可変抵抗素子3の消去特性(電流変化特性)について説明する。図17に、可変抵抗素子3を構成する可変抵抗体5としてPr0.7Ca0.3MnO3を用いた場合における、書き込み電圧パルス印加後に、書き込み電圧パルスとは逆極性に消去電圧パルスを3回連続して可変抵抗素子に印加した場合のメモリセル電流[μA]の推移の様子を示す。図17の例では、書き込み電圧及び消去電圧の絶対値は4Vで、書き込み電圧パルスの印加時間は、20μs、30μs、40μsの3通りである。また、消去電圧パルスの各パルス幅は3μsである。この3通りの書き込み電圧パルス印加後の可変抵抗素子の抵抗状態は、図15に示すように、何れも飽和状態の第1領域I1内にある。図17に示すように、3通りの異なる印加時間の書き込み状態から同じ消去動作を行った場合、書き込み状態でのメモリセル電流が夫々略等しいため、消去後のメモリセル電流は略同じ様に増加する。つまり、書き込み状態でのメモリセル電流のバラツキが十分に抑制されていると、消去電圧パルスの電圧振幅やパルス幅を制御することにより、消去動作後のメモリセル電流のバラツキも十分に抑制可能であることを示している。
ここで、消去動作の制御に際し、可変抵抗素子3のメモリセル電流Iが消去状態であることを判定する消去参照電流値Ieを臨界電流値Ic以上(Ie≧Ic)の臨界電流値Icの近傍値に設定し、可変抵抗素子3のメモリセル電流Iが消去状態と判定される第2領域I2を、上記線形領域内のI>Ieとなる電流値範囲と定義する。尚、消去参照電流値Ieを書き込み参照電流値Iwより一定値以上大きく設定することで、その差分を読み出しマージンとして確保できる。消去電圧パルスの電圧振幅やパルス幅を制御することにより、消去動作後のメモリセル電流の分布範囲を第2領域I2内の消去参照電流値Ieに近い領域内に更に抑制すると、次回の書き込み動作における書き込み電圧の印加時間を短縮でき、書き込み動作の高速化及び低消費電力化が図れる。
但し、図18に示すように、第2領域I2は上記線形領域内に存在するため、消去電圧パルスの印加時間に対するメモリセル電流の変動幅が大きいため、書き込み後のメモリセル電流と比較した場合、消去後のメモリセル電流のバラツキは必然的に大きくなる。尚、図18は、30回連続的にスイッチング動作(書き込み動作と消去動作の繰り返し)させたときのメモリセル電流の分布状態を示している。
ここで、仮に、臨界電流値Icをメモリセル電流の総変化幅の中央付近に設定し、第1領域I1の一部が上記線形領域を含むように設定すると、書き込み状態におけるメモリセル電流のバラツキが広がるために、その後の消去動作後のメモリセル電流のバラツキも広がる結果となる。従って、書き込みと消去を繰り返すことにより、当該バラツキが累積して広がることになる。これに比較して、第1領域I1を上記飽和領域内に制限することにより、書き込み動作毎に、メモリセル電流のバラツキが抑制されるため、書き込みと消去を繰り返しても抵抗値のバラツキが累積的に拡大することはない。
次に、本発明方法に基づく制御回路106による書き込み制御及び消去制御のための処理手順について、図19及び図20を用いて説明する。
先ず、書き込み制御の処理手順について説明する。図19に示すように、ワード線デコーダ104とビット線デコーダ105によって選択されたメモリセルアレイ101内の選択メモリセルに対して、選択メモリセルの記憶状態を読み出し(#1:第1ステップ)、読み出した記憶状態が書き込み状態(I<Iw)であるか否かにより書き込み動作を行うか否かを判定する(#2:第2ステップ)。記憶状態が書き込み状態(I<Iw)である場合は、書き込み動作を行う必要がないため、書き込み制御を終了し、記憶状態が書き込み状態(I<Iw)でない場合は、書き込み条件を設定し(#3)、設定条件の書き込み電圧パルスを選択メモリセルの可変抵抗素子に印加する(#4:第3ステップ)。尚、書き込み条件の設定では、書き込み電圧パルスの印加回数を示す変数Nを0に設定し、書き込み電圧Vwを第1書き込み電圧Vw1(例えば、4V)に、書き込みパルス幅Twを第1書き込みパルス幅Tw1(例えば、3μs)に設定する。
引き続き、書き込み電圧パルス印加後の選択メモリセルの記憶状態を読み出し(#5)、記憶状態が書き込み状態(I<Iw)であるかを判断する(#6)。ここで、記憶状態が書き込み状態である場合は書き込み制御を終了し、記憶状態が書き込み状態でない場合には、再度、書き込み条件を設定し(#7)、書き込み電圧パルスの印加回数Nが所定の最大値Nmaxに至っているかを確認し(#8)、印加回数Nが所定の最大値Nmaxに至っていない場合は、ステップ#4に戻って、再設定された条件での書き込み電圧パルスを選択メモリセルの可変抵抗素子に印加する。尚、書き込み条件の再設定(ステップ#7)では、印加回数を示す変数Nに1を加算し、書き込み電圧Vwを第2書き込み電圧Vw2(例えば、第1書き込み電圧Vw1と同じ4V)に、書き込みパルス幅Twを第2書き込みパルス幅Tw2(例えば、第1書き込みパルス幅Tw1と同じ3μs)に設定する。ここで、ステップ#4〜#8の処理は、印加回数Nが最大値Nmaxに至るまでの積算印加時間範囲内において、ステップ#6で記憶状態が書き込み状態であると判定されるまで繰り返される。また、ステップ#8の判定で印加回数Nが所定の最大値Nmaxに至っている場合は、書き込み不良として書き込み制御を終了する。尚、第2書き込み電圧Vw2は第1書き込み電圧Vw1と同電圧に設定することで、書き込み電圧パルスの積算印加時間の連続性を維持するためには好ましいが、必ずしも両者を同電圧に設定する必要はない。ところで、上記処理手順において、ステップ#5及び#6が、選択メモリセルの書き込み動作後の記憶状態を読み出して、その記憶状態が書き込み状態(I<Iw)であるかを判断する第4ステップに該当し、ステップ#7及び#4が、記憶状態が書き込み状態でない場合に、再度書き込み用の第2書き込み電圧を選択メモリセルの可変抵抗素子の両端に印加して書き込み動作を行う第5ステップに該当する。
次に、消去制御の処理手順について説明する。図20に示すように、ワード線デコーダ104とビット線デコーダ105によって選択されたメモリセルアレイ101内の選択メモリセルに対して、選択メモリセルの記憶状態を読み出し(#1:第1ステップ)、読み出した記憶状態が消去状態(I>Ie)であるか否かにより消去動作を行うか否かを判定する(#2:第2ステップ)。記憶状態が消去状態(I>Ie)である場合は、消去動作を行う必要がないため、消去制御を終了し、記憶状態が消去状態(I>Ie)でない場合は、消去条件を設定し(#3)、設定条件の消去電圧パルスを選択メモリセルの可変抵抗素子に印加する(#4:第3ステップ)。尚、消去条件の設定では、消去電圧パルスの印加回数を示す変数Nを0に設定し、消去電圧Veを第1消去電圧Ve1(例えば、−4V)に、消去パルス幅Teを第1消去パルス幅Te1(例えば、3μs)に設定する。
引き続き、消去電圧パルス印加後の選択メモリセルの記憶状態を読み出し(#5)、記憶状態が消去状態(I>Ie)であるかを判断する(#6)。ここで、記憶状態が消去状態である場合は消去制御を終了し、記憶状態が消去状態でない場合には、再度、消去条件を設定し(#7)、消去電圧パルスの印加回数Nが所定の最大値Nmaxに至っているかを確認し(#8)、印加回数Nが所定の最大値Nmaxに至っていない場合は、ステップ#4に戻って、再設定された条件での消去電圧パルスを選択メモリセルの可変抵抗素子に印加する。尚、消去条件の再設定(ステップ#7)では、印加回数を示す変数Nに1を加算し、消去電圧Veを第2消去電圧Ve2(例えば、第1消去電圧Ve1と同じ−4V)に、消去パルス幅Teを第2消去パルス幅Te2(例えば、第1消去パルス幅Te1と同じ3μs)に設定する。ここで、ステップ#4〜#8の処理は、印加回数Nが最大値Nmaxに至るまでの積算印加時間範囲内において、ステップ#6で記憶状態が消去状態であると判定されるまで繰り返される。また、ステップ#8の判定で印加回数Nが所定の最大値Nmaxに至っている場合は、消去不良として消去制御を終了する。尚、第2消去電圧Ve2は第1消去電圧Ve1と同電圧に設定することで、消去電圧パルスの積算印加時間の連続性を維持するためには好ましいが、必ずしも両者を同電圧に設定する必要はない。
次に、上記書き込み制御及び消去制御の各処理手順における記憶状態を読み出し(#1、#5)、書き込み状態(I<Iw)または消去状態(I>Ie)であるかを判断する(#2、#6)処理について、具体的に説明する。
本実施形態では、選択メモリセルの可変抵抗素子を流れるメモリセル電流と或る参照電流値Iref(例えば、書き込み参照電流値Iwまたは消去参照電流値Ie)と比較して、選択メモリセルの記憶状態を読み出す。つまり、一定電圧が印加された状態で当該参照電流値Irefを流すように設定された参照用抵抗素子(通常は、同じ温度特性を備える同じ材料の可変抵抗素子を利用する)を用い、その参照用抵抗素子と選択メモリセルの可変抵抗素子に同電圧の上記一定電圧を夫々印加して、その電流値を比較する。
当該電流比較による記憶状態の読み出しには、例えば、第1実施形態と同様に図11に示すような回路構成を用いる。尚、図11中、図1のブロック図と共通する回路ブロックには同じ符号を付して説明する。図11では、説明の簡単のため、メモリセルアレイ101中の選択メモリセルMと選択メモリセルMに接続する選択ワード線WLと選択ビット線BLだけを表示し、選択メモリセルMの一方側(図中、下側)に接続する選択ワード線WLを選択するワード線デコーダ104は選択用のMOSFETだけを表示し、選択メモリセルMの他方側(図中、上側)に接続する選択ビット線BLを選択するビット線デコーダ105は選択用のMOSFETだけを表示してある。また、参照用抵抗素子Mref側も、選択メモリセルMとの対称性を維持するために同様のワード線デコーダ104’とビット線デコーダ105’を設けてある。選択メモリセルMと参照用抵抗素子Mrefの夫々の一方端(選択ワード線WL側)はワード線デコーダ104,104’を介して略接地電位となり、選択メモリセルMと参照用抵抗素子Mrefの夫々の他方端(選択ビット線BL側)は、ビット線デコーダ105,105’を介して、定電圧回路300,300’によって供給されるバイアス電圧VBIASに近い一定電圧VCOが印加される。従って、選択メモリセルMには、メモリセル電流Iが流れ、参照用抵抗素子Mrefには、参照電流Irefが流れる。センスアンプ301は、2つの入力端子から流れ出す電流差を検知して増幅する電流センスアンプであり、定電圧回路300,300’の各トランスファーゲートを介して2つの入力端子から流れ出すメモリセル電流Iと参照電流Irefの大小比較を行う。メモリセル電流Iが参照電流Irefより小さい場合は、参照電流Irefが書き込み参照電流値Iwであれば、書き込み状態と判定される。また、メモリセル電流Iが参照電流Irefより大きい場合は、参照電流Irefが消去参照電流値Ieであれば、消去状態と判定される。
尚、通常の読み出し動作においては、参照電流値Irefを書き込み参照電流値Iwと消去参照電流値Ieの中間値、例えば、臨界電流値Icに設定することで、書き込み状態の読み出し、消去状態の読み出しの何れに対しても適正な読み出しマージンを確保して安定した読み出し動作を実行できる。
図21は、図18に示すスイッチング動作を行ったときの各サイクルでの書き込み電圧パルスと消去電圧パルスの印加回数を示している。各電圧パルスの電圧振幅及びパルス幅は、上述の書き込み制御及び消去制御のための処理手順で使用するものと同じである。図21より、2サイクル目以降は、2または3回の書き込み電圧パルス印加で書き込み動作が完了し、1回の消去電圧パルスの印加で消去動作が完了していることが分かる。この結果、書き込み電圧パルスの印加条件を更に最適化することで、書き込み動作及び消去動作を夫々1回の電圧パルス印加で完了させることが可能となり、書き込み制御及び消去制御のための処理手順を大幅に簡単化できる。
次に、本発明装置及び本発明方法の別実施形態について説明する。
上記各実施形態において、メモリセル構造が1R型メモリセルのメモリセルアレイ構成を例示して説明したが、メモリセル構造は、1R型メモリセル以外であっても、可変抵抗素子の抵抗変化特性或いは電流変化特性が上述のような線形領域と飽和領域を有するものであれば、他のメモリセル構造、例えば、図22に示すような1T/1R型メモリセルであっても構わない。この場合、本発明装置は、例えば、図23に示すような構成となる。但し、制御回路506及び読み出し回路507は、上記各実施形態の制御回路106及び読み出し回路107と同様に、メモリセルを構成する可変抵抗素子の抵抗変化特性の特徴を活かした書き込み制御、消去制御、読み出し動作を実行可能に構成される。
また、メモリセル構造は、1T/1R型メモリセルの選択トランジスタがN型MOSFETに限らず、P型MOSFETであっても構わず、更には、選択トランジスタに代えて、バイポーラトランジスタ、ダイオード、バリスタ等の他のスイッチング素子であっても構わない。
また、メモリセル構造が1T/1R型メモリセルのメモリセルアレイ構成の場合、図22に示すような行方向に延伸するソース線を各行に設ける構成に限らず、例えば、列方向にビット線と平行に延伸するソース線を設ける構成であっても構わない。
更に、上記各実施形態において、書き込み制御、消去制御、及び、通常の読み出し動作時にメモリセルの記憶状態の読み出しにおいて、図11及び図12に例示する回路構成を使用する場合を説明したが、読み出しに使用する回路構成は、図11または図12に示す回路構成に限定されるものではない。例えば、図11の回路構成において、センスアンプ301を電圧センスアンプとし、センスアンプ301の2つの入力端子に電流負荷を設けて、2つの入力端子から各別に流れ出す電流を夫々電圧変換して、センスアンプ301でその電圧差を、読み出し電流IREAD(メモリセル電流I)と参照電流Irefの差として検知するようにしても構わない。